JP3643475B2 - 耐食性に優れた表面処理鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面処理鋼板に係わり、更に詳しくは優れた耐食性を有し、種々の用途、例えば家電用や建材用鋼板として適用できる表面処理鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、建材分野では、住宅の柱や梁、あるいは2次部材としての溶融亜鉛系めっき鋼板の使用が増加している。このように用途が拡大していくに従い、需要家から種々の性能を要求されるようになってきた。
一般に建材分野では、鋼板をコイルあるいは切り板のままで一定期間、室外あるいは倉庫などに保存しておき、用途に応じて加工し使用する。こうした保管中あるいは加工後に白錆が発生すると、商品価値を著しく損ねることになるため、耐食性の向上は重要な課題となっている。
耐食性を向上させる方法の1つとして、亜鉛系めっき鋼板の上にさらにクロメート処理を行う技術がある。例えば特開昭52−68036号、特開昭63−171685号、特開昭63−218279号公報では、このクロメート処理の塗布条件を最適にすることにより耐食性を向上させる方法を開示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、特開平4−147955号公報において加工後の耐赤錆性が通常の溶融Znめっき鋼板よりも大幅に優れたZn−Mg−Alめっき鋼板の製造法を開示しているが、こうした前記建材分野における耐食性の課題が十分に解決されているとはいえなかった。
本発明の目的は、上記の問題点を解決して、耐食性に優れた表面処理鋼板を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、さらに低コストで耐食性に優れる表面処理鋼板の開発について鋭意研究を重ねた結果、鋼板の表面にこのZn−Mg−Alめっきを形成し、その後に適切なクロメート処理を行うことによって極めて優れた耐食性を得られることを見いだして本発明をなした。
すなわち、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
【0005】
(1)鋼板の表面に、下層として、Mg:0.05〜3重量%、Al:0.1〜1重量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を有し、上層として、クロム還元率{Cr3+/(Cr3++Cr6+)×100(%)}が70重量%以下の水溶性クロム化合物を用い、H3 PO4 /CrO3 (クロム酸換算)比が1以上、かつ、H3 PO4 /Cr6+(クロム酸換算)比が5以下となるようにリン酸と水溶性クロム化合物を共存させ、さらに有機樹脂/CrO3 (クロム酸換算)比が1以上となるような有機樹脂、及び、水性コロイドからなる樹脂クロメート組成物を塗布、乾燥して形成したクロメート皮膜を、金属クロム換算で、10〜300mg/m2 有することを特徴とする耐食性に優れた表面処理鋼板。
(2)前記Zn合金めっき層の下層としてNiめっき層を有することを特徴とする(1)に記載の耐食性に優れた表面処理鋼板である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、表面処理鋼板とは、鋼板上にZn−Mg−Alめっきとクロメート皮膜からなる層を順次付与したものである。本発明の下地鋼板としては、Alキルド鋼、Ti、Nb等を添加した極低炭素鋼、及びこれらにP、Si、Mn等の強化元素を添加した高強度鋼等種々のものが適用できる。
【0007】
下層のZn−Mg−Alめっきは、Mg:0.05〜3重量%、Al:0.1〜1重量%、残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層である。Mgの含有量を0.05〜3重量%に限定した理由は、0.05重量%未満では耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、3重量%を超えるとめっき層が脆くなって密着性が低下するためである。Alの含有量を0.1〜1重量%に限定した理由は、0.1重量%未満ではめっき層が脆くなって密着性が低下するためであり、1重量%を超えると耐食性を向上させる効果が認められなくなるためである。
めっき層中には、これ以外にFe、Sb、Pbを単独あるいは複合で1重量%以内含有してもよい。Zn−Mg−Alめっきの付着量については特に制約は設けないが、耐食性の観点から10g/m2 以上、加工性の観点から350g/m2 以下であることが望ましい。
【0008】
本発明において、めっき鋼板の製造方法については特に限定するところはなく、通常の無酸化炉方式の溶融めっき法が適用できる。下層としてNiプレめっきを施す場合も通常行われているプレめっき方法を適用すればよく、プレNiめっきを施した後、無酸化あるいは還元雰囲気中で急速低温加熱を行い、そののちに溶融めっきを行う方法等が好ましい。
【0009】
さらに、加工部の耐食性を向上させる場合には、下層にNiめっき層を設ける。このプレNiめっき量は2g/m2 以下が好ましい。2g/m2 を超えるとめっき密着性が劣化する。プレめっき量の下限は、0.2g/m2 が好ましい。めっき下層にNiめっき層を有する場合に加工部の耐食性が良好となる理由は、めっき層−地鉄界面に生成したNi−Al−Fe−Zn化合物が1種のバインダーの役割を果たすことによるものと考えられる。
【0010】
次に、上層としてのクロメート皮膜は、クロム還元率{Cr3+/(Cr3++Cr6+)×100(%)}が70重量%以下の水溶性クロム化合物を添加し、 H3 PO4 /CrO3 (クロム酸換算)比が1以上、かつ、H3 PO4 /Cr6+(クロム酸換算)比が5以下となるようにリン酸と水溶性クロム化合物を共存させ、さらに有機樹脂/CrO3 (クロム酸換算)比が1以上となるように有機樹脂を配合した樹脂クロメート浴を塗布、乾燥して形成した皮膜を、金属クロム換算で、10〜300mg/m2 付与する。
【0011】
ここで、本発明における水溶性クロム化合物としては、無水クロム酸、(重)クロム酸カリウム、(重)クロム酸ナトリウム、(重)クロム酸アンモニウム等の重クロム酸塩やクロム酸塩をでんぷん等で還元した部分還元クロム酸を用いることができるが、好ましくは無水クロム酸を還元した部分還元クロム酸を用いるとよい。
水溶性クロム化合物のクロム還元率は、70重量%を越えると塗布時の浴安定性に劣るため、70重量%以下とする。
【0012】
リン酸と水溶性クロム化合物の共存については、まずH3 PO4 /CrO3 (クロム酸換算)比が1未満では、浴温40℃において1ケ月前後までの浴寿命が得られないので、その比を1以上とする。好ましくは1.5〜3.0程度が望ましい。
次に、H3 PO4 /Cr6+(クロム酸換算)比は5を越えると、浴を亜鉛めっき鋼板上に塗布した際に表面が黒化するので、5以下とする。この比は、1.5〜5が好適である。
次に、樹脂クロメート浴中の有機樹脂は、前記水溶性クロム化合物との量的比を特定して配合する。その比は、有機樹脂/CrO3 (クロム酸換算)比で、1未満だと樹脂によるバリヤー効果が十分でなく耐食性に劣るため、1以上とする。この比は、1〜20程度が望ましい。
【0013】
樹脂の種類としては、特に限定はしないが、例えばエポキシ樹脂、アクリル酸、ポリウレタン樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの2種以上の混合物や他の樹脂との共重合体などが使用可能である。エマルジョンの形態は官能基との組み合わせにもよるが、低分子量の界面活性剤を用いて乳化重合したもの、あるいは界面活性剤を用いずに無乳化重合したものが使用可能である。
なお、表面処理鋼板の耐食性、耐傷つき性等の性能をさらに向上させるため、本発明のクロメート処理浴にSiO2 コロイド、TiO2 コロイド等の水性コロイドを添加しても差し支えない。
【0014】
鋼板表面への樹脂クロメート浴の付着量は、金属クロム換算で10〜300mg/m2 であることが好ましい。10mg/m2 未満では耐食性が十分ではなく、300mg/m2 を越えると経済的ではない。
鋼板へのクロメート処理方法としては、ロールコーターによる塗布、リンガーロールによる塗布、浸漬およびエアナイフ絞りによる塗布、バーコーターによる塗布、スプレーによる塗布、刷毛塗りなどが使用可能である。また、塗布後の乾燥も通常の方法でよい。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
まず、厚さ0.8mmの冷延鋼板を準備し、これに450℃の浴中のMg量、Al量を変化させたZn−Mg−Alめっき浴で3秒溶融めっきを行い、N2 ワイピングでめっき付着量を135g/m2 に調整した。得られためっき鋼板のめっき層中組成を表1に示す。なお、一部の試料については、下層にNiプレめっき層を施した。
【0016】
次に、このZn−Mg−Alめっきを行った鋼板に、クロム還元率{Cr3+/(Cr3++Cr6+)×100(%)}が40重量%の水溶性クロム化合物を 添加し、H3 PO4 /CrO3 (クロム酸換算)比が2、かつ、H3 PO4 /Cr6+(クロム酸換算)比が3.3となるようにリン酸と水溶性クロム化合物を共存させ、さらに有機樹脂/CrO3 (クロム酸換算)比が6.7となるように有機樹脂を配合し、SiO2 /CrO3 (クロム酸換算)比が3となるようにSiO2 コロイドを配合した樹脂クロメート浴を塗布、乾燥して、クロメート処理を行った。クロメート皮膜の付着量はCr換算量で50mg/m2 とした。なお、有機樹脂としては、無乳化型アクリルエマルジョンを使用した。
【0017】
以上のようにして作製した表面処理鋼板を150×70mmに切断し、5%、35℃の塩水を120時間噴霧した後の白錆面積率を調べた。以下の評価で、◎および〇を良好と判定した。
◎:白錆発生なし
〇:白錆発生率 5%未満
△:白錆発生率 5%以上、20%未満
×:白錆発生率 20%以上、
【0018】
また同じく150×70mmに切断した表面処理鋼板を、真中で180度折り曲げ、塩水噴霧2hr→乾燥4hr→湿潤2hrを1サイクルとして30サイクルのCCTを行った。耐食性は、赤錆発生状況を以下に示す評点づけで判定した。◎および〇を良好とした。
◎:赤錆発生率 5%未満
〇:赤錆発生率 5%以上、15%未満
△:赤錆発生率 15%以上、30%未満
×:赤錆発生率 30%以上
評価結果は表1に示す通りであり、本発明材はいずれも良い耐食性を示した。
【0019】
【表1】
【0020】
(実施例2)
まず、厚さ0.8mmの冷延鋼板を準備し、これに450℃の浴中のMg量、Al量を変化させたZn−Mg−Alめっき浴で3秒溶融めっきを行い、N2 ワイピングでめっき付着量を135g/m2 に調整した。なお、下層にはNiプレめっき層を施した。得られためっき鋼板のめっき層中組成は、Mg:0.5%、Al:0.3%であった。
次に、このZn−Mg−Alめっきを行った鋼板に、表2及び表3に示した組成に調整した樹脂クロメート浴を塗布、乾燥して、クロメート処理を行った。クロメート浴には、SiO2 /CrO3 (クロム酸換算)比が3となるようにSiO2 コロイドを配合した。なお、有機樹脂としては、無乳化型アクリルエマルジョンと水性アクリル樹脂を使用した。付着量は金属クロム換算で3〜300g/m2 とした。
【0021】
以上のようにして作製した表面処理鋼板について、以下の項目の性能評価を行った。
(1)浴安定性:樹脂クロメート浴を40℃の乾燥機に入れて、ゲル化・沈降・分離等が発生するまでの日数を記録した。浴安定性としては、25日以上の日数のものを良好と判定した。
(2)色調:サンプルの黄色度YIを色差計で測定した。YIが小さいほど、白色外観を呈する。以下の評価ランクで、◎および〇を良好と判定した。
◎: YI<−1.0
〇: −1<YI<1
△: 1<YI<5
×: 5<YI
【0022】
(3)耐食性:150×70mmに切断し、5%、35℃の塩水を120時間噴霧した後の白錆面積率を調べた。以下の評価で、◎および〇を良好と判定した。
◎:白錆発生なし
〇:白錆発生率 5%未満
△:白錆発生率 5%以上、20%未満
×:白錆発生率 20%以上
評価結果は表2及び表3に示す通りであり、本発明材はいずれも良い耐食性を示した。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の表面処理鋼板は、下層としてMg:0.05〜3重量%、Al:0.1〜1重量%、残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を有し、上層として、クロム還元率{Cr3+/(Cr3++Cr6+)×100(%)}が70重量%以下の水溶性クロム化合物を用い、H3 PO 4 /CrO3 (クロム酸換算)比が1以上、かつ、H3 PO4 /Cr6+(クロム酸換算)比が5以下となるようにリン酸と水溶性クロム化合物を共存させ、さらに有機樹脂/CrO3 (クロム酸換算)比が1以上となるように有機樹脂を配合した樹脂クロメート浴を塗布、乾燥して形成したクロメート皮膜を、金属クロム換算で、10〜300mg/m2 有することにより、優れた耐食性を有する。
従って、使用性能の優れた表面処理鋼板を安価に市場に提供することができる。
Claims (2)
- 鋼板の表面に、下層として、Mg:0.05〜3重量%、Al:0.1〜1重量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を有し、上層として、クロム還元率{Cr3+/(Cr3++Cr6+)×100(%)}が70重量%以下の水溶性クロム化合物を用い、H3 PO4 /CrO3 (クロム酸換算)比が1以上、かつ、H3 PO4 /Cr6+(クロム酸換算)比が5以下となるようにリン酸と水溶性クロム化合物を共存させ、さらに有機樹脂/CrO3 (クロム酸換算)比が1以上となるような有機樹脂、及び、水性コロイドからなる樹脂クロメート組成物を塗布、乾燥して形成したクロメート皮膜を、金属クロム換算で、10〜300mg/m2 有することを特徴とする耐食性に優れた表面処理鋼板。
- Zn合金めっき層の下層としてNiめっき層を有することを特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた表面処理鋼板。
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JPH11229155A JPH11229155A (ja) | 1999-08-24 |
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