JP3229292B2 - 加工部と端面の耐食性に優れためっき鋼板および塗装鋼板 - Google Patents

加工部と端面の耐食性に優れためっき鋼板および塗装鋼板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、めっき鋼板と塗装
鋼板に係わり、更に詳しくは優れた耐食性を有し、種々
の用途、例えば家電用や建材用鋼板として適用できるめ
っき鋼板と塗装鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】耐食性の良好なめっき鋼板として最も使
用されるものに亜鉛系めっき鋼板がある。この亜鉛系め
っき鋼板は自動車、家電、建材分野など種々の製造業に
おいて使用されている。特に建材分野では、めっき鋼板
を加工したまま塗装を行わずに使用している。こうした
建材分野に使用される亜鉛系めっき鋼板としては、溶融
亜鉛めっき鋼板が最も多く使用されている。しかし、耐
食性向上に対する要請は更に高まる傾向にあり、従来の
亜鉛めっき鋼板では需要者の要求を十分に満たすことが
できなくなってきた。このため55%Al−Zn合金め
っき鋼板が開発されたが、亜鉛めっき鋼板に比べて犠牲
防食性能が劣るため加工部耐食性などに問題が残ってい
る。
【0003】また、塗装金属板は、金属板を先に成形加
工して複雑な形状物とした後に塗装を加える方式に比
べ、塗装工程が合理化できる、品質が均一になる、塗料
の消費量が節約される等の利点があることから、これま
で多く使用されており、今後とも使用量は増加すると考
えられる。一般に塗装金属板は、冷延鋼板、亜鉛めっき
系鋼板、その他の金属板に予め塗装をした後、任意の形
状に成形加工して最終の用途に供するものであり、たと
えば冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの家電製品、自動
販売機、事務機器、自動車、エアコン室外機などの金属
製品に用いられている。
【0004】このような多様な用途において、特に屋外
で使用される家電用や建材用製品の場合には、塗装鋼板
の加工部での腐食や端面の発生は商品価値を落とすもの
として嫌われる傾向にある。このため、塗装鋼板におい
てはこれまで耐食性を向上させる様々な提案がなされて
きた。例えば、特開昭61−152444号において
は、Zn−Niめっき鋼板にクロメート層とジンクリッ
チ塗料を形成することによって加工部の耐食性を向上さ
せている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】発明者らは、特開平4
−147955号公報において加工後の耐赤錆性が通常
の溶融亜鉛めっき鋼板よりも大幅に優れたZn−Mg−
Alめっき鋼板の製造法を開示している。しかしなが
ら、上記及びその他これまで開示されためっき鋼板や塗
装鋼板では、加工部耐食性が必ずしも十分に確保されて
いない。そこで、本発明は、上記問題点を解決して加工
部耐食性を向上させると共に端面耐食性に優れためっき
鋼板、塗装鋼板の提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】さらに、発明者らは、耐
食性に優れる塗装鋼板の開発について鋭意研究を重ねた
結果、鋼板の表面に、In,Bi,Snの1種以上を含
むの添加元素の添加量を最適化したZn合金めっきを形
成した後に、好ましくは、クロメート処理、塗装を行う
ことによってさらに優れた塗装後耐食性を得られること
を見いだした。すなわち,本発明は、 (1)鋼板の表面に、Mg:2〜10重量%、Al:2
〜19重量%、Si:0.01〜2重量%を含有し、さ
らに、In:0.01〜1重量%、Bi:0.01〜1
重量%、Sn:1〜10重量%の1種または2種以上を
含有し、残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn系
複合めっき層を有することを特徴とする加工部と端面の
耐食性に優れためっき鋼板。
【0007】(2)Zn系複合めっき層の下に、さらに
Niめっき層を有することを特徴とする前記(1)に記
載の加工部と端面の耐食性に優れためっき鋼板。 (3)前記(1)または(2)に記載のめっき鋼板のZ
n系複合めっき層の上に、中間層としてクロメート皮膜
層を有し、さらに上層として厚さ1〜100μmの有機
被膜層を有することを特徴とする前記(1)または
(2)に記載の加工部と端面の耐食性に優れた塗装鋼
板。 (4)有機被膜が、熱硬化型の樹脂塗膜であることを特
徴とする前記(3)に記載の加工部と端面の耐食性に優
れた塗装鋼板、をその要旨とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。本発明において、めっき鋼板とは鋼板上にZn系複
合めっき層を付与したものである。また、塗装鋼板と
は、鋼板上にZn系複合めっきとクロメート皮膜、及び
有機皮膜からなる層を順次付与したものである。本発明
の下地鋼板としては、Alキルド鋼,Ti,Nb等を添
加した極低炭素鋼、及びこれらにP,Si,Mn等の強
化元素を添加した高強度鋼等種々のものが適用できる。
【0009】Zn系複合めっき層は、Mg:2〜10重
量%、Al:2〜19重量%、Si:0.01〜2重量
%を含有し、さらにIn:0.01〜1重量%、Bi:
0.01〜1重量%、Sn:1〜10重量%の1種また
は2種以上を含有するとともに、残部がZn及び不可避
的不純物よりなるZn系複合めっき層である。Mgの含
有量を2〜10重量%に限定した理由は、2重量%未満
では耐食性を向上させる効果が不十分であるためであ
り、10重量%を超えるとめっき層が脆くなって密着性
が低下するためである。
【0010】Alの含有量を2〜19重量%に限定した
理由は、2重量%未満では耐食性を向上させる効果が不
十分であるためであり、19重量%を超えると耐食性を
向上させる効果が認められなくなるためである。Siの
含有量を0.01〜2重量%に限定した理由は、0.0
1重量%未満ではめっき中のAlと鋼板中のFeが反応
しめっき層が脆くなって密着性が低下するためであり、
2重量%を超えると密着性を向上させる効果が認められ
なくなるためである。好ましくは、Al含有量の3%以
上である。
【0011】さらに、耐食性を向上させるためIn,B
i,Snの1種または2種以上の元素を添加する。 これらの元素の添加により、めっきの腐食生成物が安
定化し、めっき層の腐食速度を小さくする。 めっき層表面に生成する薄膜が不働態化傾向を示し、
めっき層と塗膜の界面での反応を抑え、塗膜の安定化に
寄与する。という2点が、これらの元素を添加し、耐食
性が向上する主な理由であると考えられる。
【0012】耐食性を向上させる効果は、In,Bi,
Snにおいて各々0.01,0.01,1重量%以上で
その効果が顕著になり始め、それ以上の添加ではほぼ効
果が飽和する。しかし、添加量が多くなるとめっき後の
外観が粗雑になり、例えば、ドロス、酸化物の付着など
により外観不良が発生するため、各元素の上限は、I
n,Bi,Snにおいて各々1,1,10重量%であ
る。Zn系複合めっきの付着量については特に制約は設
けないが、耐食性の観点から10g/m2 以上、加工性
の観点から350g/m2 以下で有ることが望ましい。
【0013】本発明において、めっき鋼板の製造方法に
ついては、特に限定するところはなく、通常の無酸化炉
方式の溶融めっき法が適用できる。前処理としてNiプ
レめっきを施す場合も通常行われているプレめっき方法
を適用すればよく、プレNiめっきを施した後、無酸化
あるいは還元雰囲気中で急速低温加熱を行い、そののち
に溶融めっきを行う方法等が好ましい。
【0014】さらに、加工部の耐食性を向上させる場合
には、下層にNiめっき層を設ける。この下層Niめっ
き付着量は2g/m2 以下が好ましい。2g/m2 を超
えるとめっき密着性が劣化する。また、付着量の下限
は、0.2g/m2 が好ましい。めっき下層にNiめっ
き層を有する場合に加工部の耐食性が良好となる理由
は、めっき層−地鉄界面に生成したNi−Al−Fe−
Zn化合物が一種のバインダーの役割を果たすことによ
るものと考えられる。
【0015】このめっき鋼板は塗装鋼板の下地として使
用することにより、塗装鋼板で問題となる加工部や端面
の耐食性に優れた特性を発揮できる。Zn系複合めっき
の上層に、上層有機塗膜の中間層として施されるクロメ
ート皮膜は、電解クロメート、塗布型クロメート、反応
型クロメート等、どの方法で付与しても良い。クロメー
ト皮膜の役割はめっきと有機被膜の間の密着性を向上さ
せるためであり、これは耐食性の向上にも効果がある。
【0016】塗装鋼板の上層の有機被膜としては、ポリ
エステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹
脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等が例として挙げられ、
特に限定されるものではないが、特に加工が厳しい製品
に使用する場合、熱硬化型の樹脂塗膜が最も好ましい。
熱硬化型の樹脂塗膜としては、エポキシポリエステル塗
料、ポリエステル塗料、メラミンポリエステル塗料、ウ
レタンポリエステル塗料等のポリエステル系塗料や、ア
クリル塗料が挙げられる。
【0017】ポリエステル樹脂の酸成分の一部を脂肪酸
に置き換えたアルキッド樹脂や、油で変性しないオイル
フリーアルキッド樹脂に、メラミン樹脂やポリイソシア
ネート樹脂を硬化剤として併用したポリエステル系の塗
料、及び各種架橋剤と組み合わせたアクリル塗料は、他
の塗料に比べて加工性が良いため、厳しい加工の後にも
塗膜に亀裂などが発生しないためである。
【0018】膜厚は、1〜100μmが適正である。膜
厚を1μm以上とした理由は、膜厚が1μm未満では耐
食性が確保できないためである。また、膜厚を100μ
m以下とした理由は、膜厚が100μmを超えるとコス
ト面から不利になるためである。望ましくは、20μm
以下とする。有機被膜層は,単層でも複層でもかまわな
い。なお、本発明の方法に使用される有機被膜には、必
要に応じ、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、無機粒子、
顔料、有機潤滑などの添加剤を配合しても良い。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (実施例1)まず、厚さ0.8mmの冷延鋼板を準備
し、これを500〜650℃の浴温で浴中の添加元素量
を変化させたZn系複合めっき浴に3秒間浸漬して溶融
めっきを行い、その後N2 ワイピングでめっき付着量を
135g/m2 に調整した。得られためっき鋼板のめっ
き層中組成を表1〜3に示す。なお、一部の試料につい
ては、下層にNiめっき層を設けた。以上のようにして
作製した後150×70mmに切断し、180度折り曲
げためっき鋼板のCCT40サイクル後の曲げ部と端面
の赤錆発生状況を以下に示す基準により評価した。評点
は3以上を合格とした。なお、CCTは、SST6hr
→乾燥4hr→湿潤4hr→冷凍4hrを1サイクルと
した。
【0020】赤錆発生状況 5:5%未満 4:5%以上10%未満 3:10%以上20%未満 2:20%以上30%未満 1:30%以上 評価結果は表4〜6に示す通りであり、本発明材はいず
れも良い耐食性を示した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】(実施例2)まず、厚さ0.8mmの冷延
鋼板を準備し、これを500〜650℃の浴温で浴中の
添加元素量を変化させたZn系複合めっき浴に3秒間浸
漬して溶融めっきを行い,その後N2 ワイピングでめっ
き付着量を135g/m2 に調整した。得られためっき
鋼板のめっき層中組成を表1〜3に示す。なお、一部の
試料については、下層にNiめっき層を設けた。次に、
このZn系複合めっきを行った鋼板を塗布型のクロメー
ト処理液に浸漬して,クロメート処理を行った。クロメ
ート皮膜の付着量はCr換算量で50mg/m2 とし
た。その上に、プライマーとしてエポキシポリエステル
塗料をバーコーターで塗装し、熱風乾燥炉で焼き付けて
膜厚を5μmに調整した。トップコートは、ポリエステ
ル塗料をバーコーターで塗装し、熱風乾燥炉で焼き付け
て膜厚を20μmに調整した。
【0028】以上のようにして作製した後、150×7
0mmに切断し、180度折り曲げた塗装鋼板のCCT
40サイクル後の曲げ部の赤錆発生状況と端面の膨れ発
生状況を以下に示す基準により評価した。評点は3以上
を合格とした。なお、CCTは、SST6hr→乾燥4
hr→湿潤4hr→冷凍4hrを1サイクルとした。
【0029】赤錆発生状況 5:5%未満 4:5%以上10%未満 3:10%以上20%未満 2:20%以上30%未満 1:30%以上
【0030】膨れ発生状況 5:1mm未満 4:1mm以上3mm未満 3:3mm以上5mm未満 2:5mm以上10mm未満 1:10mm以上 評価結果は表4〜6に示す通りであり、本発明材はいず
れも良い耐食性を示した。
【0031】(実施例3)まず、厚さ0.8mmの冷延
鋼板を準備し、これに600℃のZn系複合めっき浴に
3秒間浸漬して溶融めっきを行い、その後N2 ワイピン
グでめっき付着量を135g/m2 に調整した。なお、
下層にはNiめっき層を設けた。得られためっき鋼板の
めっき層中組成は重量%で、Mg:3%、Al:5%、
Si:0.1%、In:0.2%、Bi:0.2%、S
n:2%であった。次に、このZn系複合めっき鋼板を
塗布型のクロメート処理液に浸漬して、クロメート処理
を行った。クロメート皮膜の付着量はCr換算量で50
mg/m2とした。塗装は、エポキシポリエステル塗
料、ポリエステル塗料、メラミンポリエステル塗料、ウ
レタンポリエステル塗料、アクリル塗料をそれぞれバー
コーターで塗装し、熱風乾燥炉で焼き付けて表7〜8に
示す膜厚に調整した。
【0032】
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】比較例として、溶融亜鉛めっき鋼板に同様
の塗装を施して使用した。以上のようにして作製した後
150×70mmに切断し、180度折り曲げた塗装鋼
板のCCT40サイクル後の曲げ部の赤錆発生状況と端
面の膨れ発生状況を以下に示す基準により評価した。評
点は3以上を合格とした。なお、CCTは、SST6h
r→乾燥4hr→湿潤4hr→冷凍4hrを1サイクル
とした。
【0035】赤錆発生状況 5:5%未満 4:5%以上10%未満 3:10%以上20%未満 2:20%以上30%未満 1:30%以上
【0036】膨れ発生状況 5:1mm未満 4:1mm以上3mm未満 3:3mm以上5mm未満 2:5mm以上10mm未満 1:10mm以上 評価結果は表7〜8に示す通りであり、本発明材はいず
れも良い耐食性を示した。
【0037】
【発明の効果】本発明のめっき鋼板は、めっき層をM
g:2〜10重量%、Al:2〜19重量%、Si:
0.01〜2重量%以上、さらに、In:0.01〜1
重量%、Bi:0.01〜1重量%、Sn:1〜10重
量%の1種または2種以上を含有するとともに、残部が
Zn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層とす
ることにより、優れた加工部と端面の耐食性を有する。
【0038】また、本発明の塗装鋼板は、下層のめっき
層をMg:1〜10重量%、Al:2〜19重量%、S
i:0.01〜2重量%以上、さらに、In:0.01
〜1重量%、Bi:0.01〜1重量%、Sn:1〜1
0重量%の1種または2種以上を含有するとともに、残
部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層
とすること、中間層をクロメート皮膜とし、上層を有機
樹脂層とすることにより、優れた加工部と端面の耐食性
を有する。したがって、本発明は、使用性能の優れため
っき鋼板と塗装鋼板を安価に市場に提供することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // C22C 18/00 C22C 18/00 (56)参考文献 特開 平3−97840(JP,A) 特開 平10−265901(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B05D 7/14 B05D 5/00 B05D 7/24 301 B32B 15/08 C23C 2/06 C23C 18/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の表面に、 Mg:2〜10重量%、 Al:2〜19重量%、 Si:0.01〜2重量%を含有し、さらに、 In:0.01〜1重量%、 Bi:0.01〜1重量%、 Sn:1〜10重量%の1種または2種以上を含有し、
    残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn系複合めっ
    き層を有することを特徴とする加工部と端面の耐食性に
    優れためっき鋼板。
  2. 【請求項2】 Zn系複合めっき層の下に、さらにNi
    めっき層を有することを特徴とする請求項1に記載の加
    工部と端面の耐食性に優れためっき鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載のめっき鋼板の
    Zn系複合めっき層の上に、中間層としてクロメート皮
    膜層を有し、さらに上層として厚さ1〜100μmの有
    機被膜層を有することを特徴とする加工部と端面の耐食
    性に優れた塗装鋼板。
  4. 【請求項4】 有機被膜が、熱硬化型の樹脂塗膜である
    ことを特徴とする請求項3に記載の加工部と端面の耐食
    性に優れた塗装鋼板。
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