JP3271485B2 - クロメート処理Al−Zn系合金めっき鋼板 - Google Patents
クロメート処理Al−Zn系合金めっき鋼板Info
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建材や家電等の用
途に主として無塗装で用いられるAl−Zn系合金めっ
き鋼板の表面処理材、特に、所謂55%Al−Zn系合
金めっき鋼板に代表される高Al−Zn系合金めっき鋼
板に好適な表面処理材に関する。
途に主として無塗装で用いられるAl−Zn系合金めっ
き鋼板の表面処理材、特に、所謂55%Al−Zn系合
金めっき鋼板に代表される高Al−Zn系合金めっき鋼
板に好適な表面処理材に関する。
【0002】
【従来の技術】所謂55%Al−Zn系合金めっき鋼板
に代表される高Al−Zn系合金めっき鋼板はめっき外
観が美麗で且つ耐食性にも優れていることから、建材用
途として建屋の屋根材や外壁材等に、また家電用途とし
て例えば冷蔵庫の裏板等に、いずれも無塗装のままで用
いられている。これらの用途ではめっき鋼板に長期にわ
たる防食性が要求されるだけでなく、めっき表面が直接
目に触れる部分に用いられることから、めっき鋼板の表
面が変色することなく美麗な表面外観が長期間にわたっ
て維持されることが必要である。
に代表される高Al−Zn系合金めっき鋼板はめっき外
観が美麗で且つ耐食性にも優れていることから、建材用
途として建屋の屋根材や外壁材等に、また家電用途とし
て例えば冷蔵庫の裏板等に、いずれも無塗装のままで用
いられている。これらの用途ではめっき鋼板に長期にわ
たる防食性が要求されるだけでなく、めっき表面が直接
目に触れる部分に用いられることから、めっき鋼板の表
面が変色することなく美麗な表面外観が長期間にわたっ
て維持されることが必要である。
【0003】また、建材用途の場合にはめっき鋼板がロ
ールフォーミングにより成形されるため、めっきがロー
ルにピックアップしないこと(すなわち、ロールフォー
ミング性が良好であること)が求められ、また家電用途
の場合には粘着テープによりめっき鋼板表面と部品とを
接着する方法が汎用的に採られているため、めっき鋼板
表面から粘着テープが容易に剥離しないような接着強度
(粘着テープ密着性)が必要とされる。したがって、A
l−Zn系合金めっき鋼板には耐食性、粘着テープ密着
性、ロールフォーミング性に優れ、しかもめっき面が黒
変等の変色を生じることなく長期間にわたって美麗な外
観を維持できることが要求される。
ールフォーミングにより成形されるため、めっきがロー
ルにピックアップしないこと(すなわち、ロールフォー
ミング性が良好であること)が求められ、また家電用途
の場合には粘着テープによりめっき鋼板表面と部品とを
接着する方法が汎用的に採られているため、めっき鋼板
表面から粘着テープが容易に剥離しないような接着強度
(粘着テープ密着性)が必要とされる。したがって、A
l−Zn系合金めっき鋼板には耐食性、粘着テープ密着
性、ロールフォーミング性に優れ、しかもめっき面が黒
変等の変色を生じることなく長期間にわたって美麗な外
観を維持できることが要求される。
【0004】従来、このようなAl−Zn系合金めっき
鋼板の特性改善を目的として以下のような提案がなされ
ている。 特公平4−2672号公報:ロールフォーミング性
及び耐食性を向上させることを目的として、特定の水溶
性または水分散性樹脂に6価Crを特定の割合で配合
し、且つpHを3〜10に調整した処理液をAl−Zn
系合金めっき鋼板表面に塗布する処理方法が示されてい
る。この方法によれば、めっき表面が樹脂で被覆される
ことで金型とめっき表面との直接接触がなくなるため、
ロールへのめっきの凝着が防止され、ロールフォーミン
グ性が改善される。
鋼板の特性改善を目的として以下のような提案がなされ
ている。 特公平4−2672号公報:ロールフォーミング性
及び耐食性を向上させることを目的として、特定の水溶
性または水分散性樹脂に6価Crを特定の割合で配合
し、且つpHを3〜10に調整した処理液をAl−Zn
系合金めっき鋼板表面に塗布する処理方法が示されてい
る。この方法によれば、めっき表面が樹脂で被覆される
ことで金型とめっき表面との直接接触がなくなるため、
ロールへのめっきの凝着が防止され、ロールフォーミン
グ性が改善される。
【0005】 特公平1−53353号公報:耐食性
と耐黒変性を改善することを目的として、水溶性または
水分散性樹脂とクロム酸化合物とを配合した処理液をA
l−Zn系合金めっき鋼板表面に塗布し、所定のクロム
付着量の樹脂皮膜を形成させる方法が示されている。 特開平4−371585号公報:耐黒変性の改善を
目的として、Al−Zn系合金めっき鋼板の表面にNi
またはCoを含む塗布層を形成し、その上層に6価Cr
を含む樹脂層を形成した表面処理Al−Zn系合金めっ
き鋼板が示されている。
と耐黒変性を改善することを目的として、水溶性または
水分散性樹脂とクロム酸化合物とを配合した処理液をA
l−Zn系合金めっき鋼板表面に塗布し、所定のクロム
付着量の樹脂皮膜を形成させる方法が示されている。 特開平4−371585号公報:耐黒変性の改善を
目的として、Al−Zn系合金めっき鋼板の表面にNi
またはCoを含む塗布層を形成し、その上層に6価Cr
を含む樹脂層を形成した表面処理Al−Zn系合金めっ
き鋼板が示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
の方法は用いられるクロム酸が6価Crで且つ処理液の
pHが3以上であるが故に、めっき皮膜と6価Crとの
反応が十分に進行しないか若しくは反応速度が非常に遅
いために表面処理皮膜中からCrが溶解し易く、例えば
結露等が生じた場合にはCrが著しく溶解して外観ムラ
が生じ易い。この外観ムラの発生を軽減するには、Cr
付着量を少なくしてCrの溶解量を低減することが有効
であるが、耐食性はCr付着量に依存するためCr付着
量を少なくしたのでは十分な耐食性が得られない。ま
た、いずれにしても表面処理皮膜からCrが溶解し易い
傾向があるため、Cr付着量を多くしても耐食性の大幅
な改善は見込めない。
の方法は用いられるクロム酸が6価Crで且つ処理液の
pHが3以上であるが故に、めっき皮膜と6価Crとの
反応が十分に進行しないか若しくは反応速度が非常に遅
いために表面処理皮膜中からCrが溶解し易く、例えば
結露等が生じた場合にはCrが著しく溶解して外観ムラ
が生じ易い。この外観ムラの発生を軽減するには、Cr
付着量を少なくしてCrの溶解量を低減することが有効
であるが、耐食性はCr付着量に依存するためCr付着
量を少なくしたのでは十分な耐食性が得られない。ま
た、いずれにしても表面処理皮膜からCrが溶解し易い
傾向があるため、Cr付着量を多くしても耐食性の大幅
な改善は見込めない。
【0007】また、上記の方法については、Al−Z
n系合金めっき鋼板はコイルやシートの状態で屋外に放
置されるケースがあり、屋外で結露等により表面が濡れ
た状態のまま放置された場合には、の方法で皮膜を形
成しても黒変が生じ、実際的な使用環境に耐えられるほ
どの効果は得られない。また、同公報に示されるように
Crに対して樹脂の比率が高い皮膜を家電用途に適用し
た場合、十分な粘着テープ密着性が得られないという問
題もある。また、上記の表面処理Al−Zn系合金め
っき鋼板は、製造に2段階の工程が必要となるため製造
コストの点で不利であり、また、この鋼板は耐黒変性以
外の特性については何ら改善がない。
n系合金めっき鋼板はコイルやシートの状態で屋外に放
置されるケースがあり、屋外で結露等により表面が濡れ
た状態のまま放置された場合には、の方法で皮膜を形
成しても黒変が生じ、実際的な使用環境に耐えられるほ
どの効果は得られない。また、同公報に示されるように
Crに対して樹脂の比率が高い皮膜を家電用途に適用し
た場合、十分な粘着テープ密着性が得られないという問
題もある。また、上記の表面処理Al−Zn系合金め
っき鋼板は、製造に2段階の工程が必要となるため製造
コストの点で不利であり、また、この鋼板は耐黒変性以
外の特性については何ら改善がない。
【0008】このように従来提案されている処理方法で
は、耐食性、粘着テープ密着性、ロールフォーミング
性、耐黒変性等の諸特性を総て満足できるAl−Zn系
合金めっき鋼板の表面処理材は得られない。したがって
本発明の目的は、耐食性、粘着テープ密着性、ロールフ
ォーミング性に優れ、しかも黒変や結露による外観ムラ
が生じにくく、美麗なめっき表面外観を長期間にわたっ
て維持することができるAl−Zn系合金めっき鋼板の
表面処理材を提供することにある。
は、耐食性、粘着テープ密着性、ロールフォーミング
性、耐黒変性等の諸特性を総て満足できるAl−Zn系
合金めっき鋼板の表面処理材は得られない。したがって
本発明の目的は、耐食性、粘着テープ密着性、ロールフ
ォーミング性に優れ、しかも黒変や結露による外観ムラ
が生じにくく、美麗なめっき表面外観を長期間にわたっ
て維持することができるAl−Zn系合金めっき鋼板の
表面処理材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこのような
課題に対し、Al−Zn系合金めっき皮膜の表面に水溶
性クロム酸化合物と水溶性または水分散性の有機樹脂と
リン酸系化合物とを含む処理液を塗布することで、クロ
ム、有機樹脂及びリン酸を特定の割合で含有するクロメ
ート皮膜を形成させることにより、上述した諸特性を総
て満足し得るAl−Zn系合金めっき鋼板の表面処理材
が得られることを見い出した。
課題に対し、Al−Zn系合金めっき皮膜の表面に水溶
性クロム酸化合物と水溶性または水分散性の有機樹脂と
リン酸系化合物とを含む処理液を塗布することで、クロ
ム、有機樹脂及びリン酸を特定の割合で含有するクロメ
ート皮膜を形成させることにより、上述した諸特性を総
て満足し得るAl−Zn系合金めっき鋼板の表面処理材
が得られることを見い出した。
【0010】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その特徴とする構成は以下の通りである。
もので、その特徴とする構成は以下の通りである。
【0011】
【0012】(1) Alを25〜75wt%含有するAl−Zn系合金
めっき皮膜の表面に、水溶性クロム酸化合物と水溶性ま
たは水分散性の有機樹脂とリン酸系化合物とを含み且つ
Niイオンを含まないクロメート処理液を塗布し、水洗
することなく乾燥して形成されたクロメート皮膜であっ
て、金属Cr換算でのCr付着量が10〜40mg/m
2、有機樹脂付着量が1.0〜3.0g/m2、PO4
換算でのリン酸付着量が金属Cr換算でのCr付着量と
の重量比でPO 4 /Cr=0.5〜4.0である皮膜を
有することを特徴とするクロメート処理Al−Zn系合
金めっき鋼板。(2) Alを25〜75wt%含有するAl−Zn系合金
めっき皮膜の表面に、下層として水溶性クロム酸化合物
を含み且つ有機樹脂を含まないクロメート処理液を塗布
し、水洗することなく乾燥して形成されたクロメート皮
膜を有し、その上層に水溶性クロム酸化合物と水溶性ま
たは水分散性の有機樹脂とリン酸系化合物とを含み且つ
Niイオンを含まないクロメート処理液を塗布し、水洗
することなく乾燥して形成されたクロメート皮膜を有
し、前記下層及び上層のクロメート皮膜の金属Cr換算
でのCr付着量が合計で10〜40mg/m2、PO4
換算での合計のリン酸付着量が金属Cr換算でのCr付
着量との重量比でPO 4 /Cr=0.5〜4.0であ
り、且つ上層のクロメート皮膜の有機樹脂付着量が1.
0〜3.0g/m2であることを特徴とするクロメート
処理Al−Zn系合金めっき鋼板。(3) 上記(1)または(2)のめっき鋼板において、Al−Z
n系合金めっき皮膜がAlを50〜60wt%含有する
ことを特徴とするクロメート処理Al−Zn系合金めっ
き鋼板。(4) 上記(1)〜(3)のいずれかのめっき鋼板において、ク
ロメート皮膜中の有機樹脂付着量が1.2〜2.0g/
m2であることを特徴とするクロメート処理Al−Zn
系合金めっき鋼板。(5) 上記(1)〜(4)のいずれかのめっき鋼板において、ク
ロメート皮膜が、pH:3.0未満に調整された処理液
を塗布して形成された皮膜であることを特徴とするクロ
メート処理Al−Zn系合金めっき鋼板。
めっき皮膜の表面に、水溶性クロム酸化合物と水溶性ま
たは水分散性の有機樹脂とリン酸系化合物とを含み且つ
Niイオンを含まないクロメート処理液を塗布し、水洗
することなく乾燥して形成されたクロメート皮膜であっ
て、金属Cr換算でのCr付着量が10〜40mg/m
2、有機樹脂付着量が1.0〜3.0g/m2、PO4
換算でのリン酸付着量が金属Cr換算でのCr付着量と
の重量比でPO 4 /Cr=0.5〜4.0である皮膜を
有することを特徴とするクロメート処理Al−Zn系合
金めっき鋼板。(2) Alを25〜75wt%含有するAl−Zn系合金
めっき皮膜の表面に、下層として水溶性クロム酸化合物
を含み且つ有機樹脂を含まないクロメート処理液を塗布
し、水洗することなく乾燥して形成されたクロメート皮
膜を有し、その上層に水溶性クロム酸化合物と水溶性ま
たは水分散性の有機樹脂とリン酸系化合物とを含み且つ
Niイオンを含まないクロメート処理液を塗布し、水洗
することなく乾燥して形成されたクロメート皮膜を有
し、前記下層及び上層のクロメート皮膜の金属Cr換算
でのCr付着量が合計で10〜40mg/m2、PO4
換算での合計のリン酸付着量が金属Cr換算でのCr付
着量との重量比でPO 4 /Cr=0.5〜4.0であ
り、且つ上層のクロメート皮膜の有機樹脂付着量が1.
0〜3.0g/m2であることを特徴とするクロメート
処理Al−Zn系合金めっき鋼板。(3) 上記(1)または(2)のめっき鋼板において、Al−Z
n系合金めっき皮膜がAlを50〜60wt%含有する
ことを特徴とするクロメート処理Al−Zn系合金めっ
き鋼板。(4) 上記(1)〜(3)のいずれかのめっき鋼板において、ク
ロメート皮膜中の有機樹脂付着量が1.2〜2.0g/
m2であることを特徴とするクロメート処理Al−Zn
系合金めっき鋼板。(5) 上記(1)〜(4)のいずれかのめっき鋼板において、ク
ロメート皮膜が、pH:3.0未満に調整された処理液
を塗布して形成された皮膜であることを特徴とするクロ
メート処理Al−Zn系合金めっき鋼板。
【0013】
【発明の実施の形態】本願発明のクロメート処理Al−
Zn系合金めっき鋼板のベースとなるめっき鋼板は、め
っき皮膜中にAlが25〜75重量%含まれるAl−Z
n系合金めっき鋼板であり、所謂55%Al−Zn系合
金めっき鋼板が最も代表的なものとして知られている。
通常、この種のAl−Zn系めっき鋼板のめっき皮膜中
にはSiがAl量の0.5wt%以上含まれている。ま
た、所謂55%Al−Zn系合金めっき鋼板とは、通
常、めっき皮膜中にAl量が50〜60wt%程度含ま
れるAl−Zn系合金めっき鋼板(以下の説明におい
て、55%Al−Zn系合金めっき鋼板という場合、上
記Al含有量のAl−Zn系合金めっき鋼板を指すもの
とする)を指し、そのめっき皮膜中には通常Siが1〜
3wt%前後含まれている。以下に述べるように、本発
明による特性改善効果はめっき皮膜中のAl量が25〜
75wt%のAl−Zn系合金めっき鋼板において顕著
に得られるものであるが、そのなかでも上記55%Al
−Zn系合金めっき鋼板において特に顕著な特性改善効
果が得られる。
Zn系合金めっき鋼板のベースとなるめっき鋼板は、め
っき皮膜中にAlが25〜75重量%含まれるAl−Z
n系合金めっき鋼板であり、所謂55%Al−Zn系合
金めっき鋼板が最も代表的なものとして知られている。
通常、この種のAl−Zn系めっき鋼板のめっき皮膜中
にはSiがAl量の0.5wt%以上含まれている。ま
た、所謂55%Al−Zn系合金めっき鋼板とは、通
常、めっき皮膜中にAl量が50〜60wt%程度含ま
れるAl−Zn系合金めっき鋼板(以下の説明におい
て、55%Al−Zn系合金めっき鋼板という場合、上
記Al含有量のAl−Zn系合金めっき鋼板を指すもの
とする)を指し、そのめっき皮膜中には通常Siが1〜
3wt%前後含まれている。以下に述べるように、本発
明による特性改善効果はめっき皮膜中のAl量が25〜
75wt%のAl−Zn系合金めっき鋼板において顕著
に得られるものであるが、そのなかでも上記55%Al
−Zn系合金めっき鋼板において特に顕著な特性改善効
果が得られる。
【0014】上記のAl−Zn系めっき鋼板のめっき皮
膜表面には、水溶性クロム酸化合物、水溶性または水分
散性の有機樹脂及びリン酸系化合物を含み且つNiイオ
ンを含まないクロメート処理液を塗布し、水洗すること
なく乾燥して得らるクロメート皮膜であって、金属Cr
換算でのCr付着量が10〜40mg/m2、有機樹脂
付着量が1.0〜3.0g/m2、PO4換算でのリン
酸付着量が金属Cr換算でのCr付着量との重量比でP
O 4 /Cr=0.5〜4.0である皮膜を形成する。ま
た、より優れた耐黒変性を得るためには、めっき皮膜表
面に下層として水溶性クロム酸化合物を含むクロメート
処理液を塗布し、水洗することなく乾燥して得られるク
ロメート皮膜を形成し、その上層に水溶性クロム酸化合
物と水溶性または水分散性の有機樹脂とリン酸系化合物
とを含み且つNiイオンを含まないクロメート処理液を
塗布し、水洗することなく乾燥して得られるクロメート
皮膜を形成し、これら下層及び上層のクロメート皮膜の
金属Cr換算でのCr付着量を合計で10〜40mg/
m2とし、且つ上層のクロメート皮膜中の有機樹脂付着
量を1.0〜3.0g/m2、PO4換算でのリン酸付
着量を金属Cr換算でのCr付着量との重量比でPO 4
/Cr=0.5〜4.0とする。
膜表面には、水溶性クロム酸化合物、水溶性または水分
散性の有機樹脂及びリン酸系化合物を含み且つNiイオ
ンを含まないクロメート処理液を塗布し、水洗すること
なく乾燥して得らるクロメート皮膜であって、金属Cr
換算でのCr付着量が10〜40mg/m2、有機樹脂
付着量が1.0〜3.0g/m2、PO4換算でのリン
酸付着量が金属Cr換算でのCr付着量との重量比でP
O 4 /Cr=0.5〜4.0である皮膜を形成する。ま
た、より優れた耐黒変性を得るためには、めっき皮膜表
面に下層として水溶性クロム酸化合物を含むクロメート
処理液を塗布し、水洗することなく乾燥して得られるク
ロメート皮膜を形成し、その上層に水溶性クロム酸化合
物と水溶性または水分散性の有機樹脂とリン酸系化合物
とを含み且つNiイオンを含まないクロメート処理液を
塗布し、水洗することなく乾燥して得られるクロメート
皮膜を形成し、これら下層及び上層のクロメート皮膜の
金属Cr換算でのCr付着量を合計で10〜40mg/
m2とし、且つ上層のクロメート皮膜中の有機樹脂付着
量を1.0〜3.0g/m2、PO4換算でのリン酸付
着量を金属Cr換算でのCr付着量との重量比でPO 4
/Cr=0.5〜4.0とする。
【0015】本発明においてめっき皮膜表面に形成され
るクロメート皮膜は、皮膜中のCr付着量が増加する程
耐黒変性及び耐食性が向上する。Cr付着量の増加によ
り耐黒変性が向上するのは本発明が素材とする高Al−
Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al−Zn系合金
めっき鋼板)に特有の現象であり、他のめっき鋼板にお
いてはCr付着量増加による耐黒変性の改善効果は認め
られない。ここで、Cr付着量が金属Cr換算で10m
g/m2未満では耐黒変性及び耐食性の十分な改善効果
が得られない。一方、Cr付着量が金属Cr換算で40
mg/m2を超えると、耐黒変性、耐食性の改善効果が
飽和するため付着量に見合う大きな改善効果が得られ
ず、却って経済性を損う。
るクロメート皮膜は、皮膜中のCr付着量が増加する程
耐黒変性及び耐食性が向上する。Cr付着量の増加によ
り耐黒変性が向上するのは本発明が素材とする高Al−
Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al−Zn系合金
めっき鋼板)に特有の現象であり、他のめっき鋼板にお
いてはCr付着量増加による耐黒変性の改善効果は認め
られない。ここで、Cr付着量が金属Cr換算で10m
g/m2未満では耐黒変性及び耐食性の十分な改善効果
が得られない。一方、Cr付着量が金属Cr換算で40
mg/m2を超えると、耐黒変性、耐食性の改善効果が
飽和するため付着量に見合う大きな改善効果が得られ
ず、却って経済性を損う。
【0016】また、同じCr付着量であっても、先に有
機樹脂を含まないクロメート処理液(リン酸系化合物は
含んでよい)を塗布して下層のクロメート皮膜を形成
し、その上に有機樹脂とリン酸系化合物を含むクロメー
ト処理液を塗布して上層のクロメート皮膜を形成した場
合の方が、特に耐黒変性については優れた効果が得られ
る。但し、このようにクロメート皮膜を2層に設ける場
合も、上述した理由から上層および下層の合計のCr付
着量を10〜40mg/m2、リン酸付着量をCr付着
量との重量比でPO 4 /Cr=0.5〜4.0とする必
要がある。なお、通常の亜鉛めっき鋼板に対して行われ
るクロメート処理と同様に、6価Crの効果が失われな
い範囲で6価Crの一部を3価Crに還元した処理液を
用いることができる。処理液中の6価Crの割合は特に
限定しないが、本発明が前提とする6価Crによる作用
を良好なものとするには、6価Crは重量%で全Crの
50%以上とすることが望ましい。なお、処理液中に含
まれる水溶性クロム酸化合物としては、無水クロム酸、
二クロム酸カリウム、二クロム酸アンモニウム等を用い
ることができる。
機樹脂を含まないクロメート処理液(リン酸系化合物は
含んでよい)を塗布して下層のクロメート皮膜を形成
し、その上に有機樹脂とリン酸系化合物を含むクロメー
ト処理液を塗布して上層のクロメート皮膜を形成した場
合の方が、特に耐黒変性については優れた効果が得られ
る。但し、このようにクロメート皮膜を2層に設ける場
合も、上述した理由から上層および下層の合計のCr付
着量を10〜40mg/m2、リン酸付着量をCr付着
量との重量比でPO 4 /Cr=0.5〜4.0とする必
要がある。なお、通常の亜鉛めっき鋼板に対して行われ
るクロメート処理と同様に、6価Crの効果が失われな
い範囲で6価Crの一部を3価Crに還元した処理液を
用いることができる。処理液中の6価Crの割合は特に
限定しないが、本発明が前提とする6価Crによる作用
を良好なものとするには、6価Crは重量%で全Crの
50%以上とすることが望ましい。なお、処理液中に含
まれる水溶性クロム酸化合物としては、無水クロム酸、
二クロム酸カリウム、二クロム酸アンモニウム等を用い
ることができる。
【0017】上記クロメート皮膜に含まれる水分散性ま
たは水溶性の有機樹脂は、めっき面を被覆することによ
りロールフォーミング性を向上させる作用がある。Al
−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al−Zn系合
金めっき鋼板)の表面は、Al主体のα層とZnが多く
含まれるβ層の混在組織であり、この組織のために表面
に凹凸が形成されている。有機樹脂を含むクロメート皮
膜は、このような凹凸を有するめっき皮膜表面において
凹部からめっきを被覆することになる。
たは水溶性の有機樹脂は、めっき面を被覆することによ
りロールフォーミング性を向上させる作用がある。Al
−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al−Zn系合
金めっき鋼板)の表面は、Al主体のα層とZnが多く
含まれるβ層の混在組織であり、この組織のために表面
に凹凸が形成されている。有機樹脂を含むクロメート皮
膜は、このような凹凸を有するめっき皮膜表面において
凹部からめっきを被覆することになる。
【0018】クロメート皮膜中の有機樹脂の付着量が
1.0g/m2未満では、めっき表面の被覆が不十分と
なるためロールフォーミング性が劣り、また加工時にめ
っき表面に傷が生じて外観性が損なわれやすい。一方、
有機樹脂の付着量が過剰になるとめっき表面の明度が低
下し、Al−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al
−Zn系合金めっき鋼板)特有の外観を維持できなくな
る。Al−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al−
Zn系合金めっき鋼板)特有の意匠性のある外観は、光
がめっき表面の凹凸で散乱することにより得られるもの
と考えられ、有機樹脂の付着量が過剰になると光が樹脂
により吸収されるため、めっきの外観が維持できなくな
るもの考えられる。
1.0g/m2未満では、めっき表面の被覆が不十分と
なるためロールフォーミング性が劣り、また加工時にめ
っき表面に傷が生じて外観性が損なわれやすい。一方、
有機樹脂の付着量が過剰になるとめっき表面の明度が低
下し、Al−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al
−Zn系合金めっき鋼板)特有の外観を維持できなくな
る。Al−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al−
Zn系合金めっき鋼板)特有の意匠性のある外観は、光
がめっき表面の凹凸で散乱することにより得られるもの
と考えられ、有機樹脂の付着量が過剰になると光が樹脂
により吸収されるため、めっきの外観が維持できなくな
るもの考えられる。
【0019】本発明者らの検討によれば、有機樹脂の付
着量が3.0g/m2以下であればクロメート皮膜の表
面からめっき面のスパングルが確認され、めっき鋼板が
本来持っている外観性が維持できる。したがって、有機
樹脂の付着量は1.0〜3.0g/m2とすることが必
要であり、また、めっき表面の被覆性とめっき面のスパ
ングルによる外観性をより確実に確保するためには、付
着量を1.2〜2.0g/m2とすることが好ましい。
着量が3.0g/m2以下であればクロメート皮膜の表
面からめっき面のスパングルが確認され、めっき鋼板が
本来持っている外観性が維持できる。したがって、有機
樹脂の付着量は1.0〜3.0g/m2とすることが必
要であり、また、めっき表面の被覆性とめっき面のスパ
ングルによる外観性をより確実に確保するためには、付
着量を1.2〜2.0g/m2とすることが好ましい。
【0020】有機樹脂としては水溶性または水分散性の
ものが用いられるが、このなかでも特に、乾燥により水
に対して難溶化する水分散性の樹脂を用いることが望ま
しく、例えば、pH:1.0〜3未満のクロム酸溶液中
に安定して分散可能な水分散性樹脂、例えばアクリル系
樹脂をポリオキシエチレン等のノニオン系乳化剤、硫酸
アルキルフェニルポリオキシエチレン塩、カルボン酸塩
等のアニオン系乳化剤を用いて分散させたものを用いる
ことができる。また、有機樹脂としては、一般的に用い
られているポリメタクリル酸系ポリマー、或いはこれに
アクリロニトリル系ポリマーを混合、共重合させたもの
を用いることもできる。なお、クロメート皮膜は経済性
の観点から通常80℃程度の板温での乾燥が行われてお
り、したがって、有機樹脂としては比較的低温で造膜で
きるものを用いることが好ましい。
ものが用いられるが、このなかでも特に、乾燥により水
に対して難溶化する水分散性の樹脂を用いることが望ま
しく、例えば、pH:1.0〜3未満のクロム酸溶液中
に安定して分散可能な水分散性樹脂、例えばアクリル系
樹脂をポリオキシエチレン等のノニオン系乳化剤、硫酸
アルキルフェニルポリオキシエチレン塩、カルボン酸塩
等のアニオン系乳化剤を用いて分散させたものを用いる
ことができる。また、有機樹脂としては、一般的に用い
られているポリメタクリル酸系ポリマー、或いはこれに
アクリロニトリル系ポリマーを混合、共重合させたもの
を用いることもできる。なお、クロメート皮膜は経済性
の観点から通常80℃程度の板温での乾燥が行われてお
り、したがって、有機樹脂としては比較的低温で造膜で
きるものを用いることが好ましい。
【0021】クロメート皮膜中に含まれるリン酸は耐黒
変性と粘着テープ密着性を向上させる作用がある。また
このリン酸の作用により、高耐食性と優れた耐黒変性を
得るためにCr付着量を増加してもクロムによる着色が
抑制され、めっき外観が維持される。クロメート皮膜中
へのリン酸の添加による耐黒変性の改善は、本発明が素
材とする高Al−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%
Al−Zn系合金めっき鋼板)に特有の現象であり、そ
れ以外のめっき鋼板(例えば、亜鉛系めっき鋼板)にお
いては、クロメート皮膜中にリン酸を添加すると耐黒変
性が逆に劣化する。
変性と粘着テープ密着性を向上させる作用がある。また
このリン酸の作用により、高耐食性と優れた耐黒変性を
得るためにCr付着量を増加してもクロムによる着色が
抑制され、めっき外観が維持される。クロメート皮膜中
へのリン酸の添加による耐黒変性の改善は、本発明が素
材とする高Al−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%
Al−Zn系合金めっき鋼板)に特有の現象であり、そ
れ以外のめっき鋼板(例えば、亜鉛系めっき鋼板)にお
いては、クロメート皮膜中にリン酸を添加すると耐黒変
性が逆に劣化する。
【0022】この理由は必ずしも明らかではないが、リ
ン酸の添加によりめっき表面のエッチング効果が増すた
め、高Al−Zn系合金めっき鋼板以外のめっき鋼板で
は上記エッチング効果の増大が耐黒変性を低下させる方
向に作用するのに対し、高Al−Zn系合金めっき鋼板
の場合には、エッチング効果の増大によってめっき表面
での6価Crとの反応量が増大し、強固な不働態化皮膜
が形成されたほうが耐黒変性の向上に有効であるためで
あると推定される。また、本願発明が対象とする高Al
−Zn系めっき鋼板においては、クロメート皮膜中への
リン酸の添加は粘着テープ密着性を向上させる効果があ
る。
ン酸の添加によりめっき表面のエッチング効果が増すた
め、高Al−Zn系合金めっき鋼板以外のめっき鋼板で
は上記エッチング効果の増大が耐黒変性を低下させる方
向に作用するのに対し、高Al−Zn系合金めっき鋼板
の場合には、エッチング効果の増大によってめっき表面
での6価Crとの反応量が増大し、強固な不働態化皮膜
が形成されたほうが耐黒変性の向上に有効であるためで
あると推定される。また、本願発明が対象とする高Al
−Zn系めっき鋼板においては、クロメート皮膜中への
リン酸の添加は粘着テープ密着性を向上させる効果があ
る。
【0023】これらの効果はリン酸のCrに対する添加
比率により大きく左右され、PO4換算でのリン酸付着
量が金属Cr換算でのCr付着量に対する重量比でPO
4 /Cr=0.5未満では十分な効果が得られない。一
方、PO 4 /Cr=4.0超では粘着テープ密着性が再
び低下する傾向を示す。したがって、クロメート皮膜中
でのリン酸付着量は、上記PO4/Crの重量比で0.
5〜4.0、好ましくは1.0〜3.0の範囲にするこ
とが必要である。処理液中へのリン酸の添加方法につい
ては特に限定しないが、例えば正リン酸、縮合リン酸ま
たは有機物と結合した状態での添加が可能である。
比率により大きく左右され、PO4換算でのリン酸付着
量が金属Cr換算でのCr付着量に対する重量比でPO
4 /Cr=0.5未満では十分な効果が得られない。一
方、PO 4 /Cr=4.0超では粘着テープ密着性が再
び低下する傾向を示す。したがって、クロメート皮膜中
でのリン酸付着量は、上記PO4/Crの重量比で0.
5〜4.0、好ましくは1.0〜3.0の範囲にするこ
とが必要である。処理液中へのリン酸の添加方法につい
ては特に限定しないが、例えば正リン酸、縮合リン酸ま
たは有機物と結合した状態での添加が可能である。
【0024】クロメート皮膜はpH:3.0未満の処理
液を塗布することにより形成することが好ましい。その
理由は以下の通りである。すなわち、めっき表面にクロ
メート処理液を塗布すると処理液中に含まれる6価Cr
がめっき組成物と反応して3価Crが生成され、これに
よりめっき表面が不働態化されることで耐食性が向上
し、さらにCrが不溶化する。そして、pH:3以上の
クロメート処理液を用いてクロメート皮膜を形成した場
合には、Al−Zn系合金めっき鋼板表面での反応が十
分に生じないために耐食性、結露した場合の耐Cr溶解
性、耐黒変性に劣った皮膜になる。これに対して、p
H:3.0未満、好ましくはpH:2.5未満の処理液
を用いてクロメート皮膜を形成した場合には、めっき鋼
板表面での反応性が良好となり、耐食性、結露した場合
の耐Cr溶解性及び耐黒変性が改善される。
液を塗布することにより形成することが好ましい。その
理由は以下の通りである。すなわち、めっき表面にクロ
メート処理液を塗布すると処理液中に含まれる6価Cr
がめっき組成物と反応して3価Crが生成され、これに
よりめっき表面が不働態化されることで耐食性が向上
し、さらにCrが不溶化する。そして、pH:3以上の
クロメート処理液を用いてクロメート皮膜を形成した場
合には、Al−Zn系合金めっき鋼板表面での反応が十
分に生じないために耐食性、結露した場合の耐Cr溶解
性、耐黒変性に劣った皮膜になる。これに対して、p
H:3.0未満、好ましくはpH:2.5未満の処理液
を用いてクロメート皮膜を形成した場合には、めっき鋼
板表面での反応性が良好となり、耐食性、結露した場合
の耐Cr溶解性及び耐黒変性が改善される。
【0025】このようなクロメート処理液のpH調整に
よる効果、特に耐黒変性の改善効果は、本発明が対象と
する高Al−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al
−Zn系合金めっき鋼板)において顕著であり、その他
の亜鉛系めっき鋼板やAl−Zn系合金めっき鋼板にお
いては同様の効果は得られず、逆に耐黒変性は低下する
傾向が認められる。一方、クロメート処理液のpHが過
剰に低くなると処理液の安定性が低下するのみならず、
処理液とめっき皮膜が過剰に反応し、この結果塗布時に
ムラが生じやすくなる。これはめっき皮膜組織のα層と
β層での反応性の違いにより、反応し易いと推定される
β層で選択的に反応が起きるためであると推定される。
通常、pHが1.0以上であればこのような問題を生じ
ることなく塗布が可能であり、したがってクロメート処
理液のpHは1.0以上、3.0未満、望ましくは1.
5〜2.5に調整することが好ましい。
よる効果、特に耐黒変性の改善効果は、本発明が対象と
する高Al−Zn系合金めっき鋼板(特に、55%Al
−Zn系合金めっき鋼板)において顕著であり、その他
の亜鉛系めっき鋼板やAl−Zn系合金めっき鋼板にお
いては同様の効果は得られず、逆に耐黒変性は低下する
傾向が認められる。一方、クロメート処理液のpHが過
剰に低くなると処理液の安定性が低下するのみならず、
処理液とめっき皮膜が過剰に反応し、この結果塗布時に
ムラが生じやすくなる。これはめっき皮膜組織のα層と
β層での反応性の違いにより、反応し易いと推定される
β層で選択的に反応が起きるためであると推定される。
通常、pHが1.0以上であればこのような問題を生じ
ることなく塗布が可能であり、したがってクロメート処
理液のpHは1.0以上、3.0未満、望ましくは1.
5〜2.5に調整することが好ましい。
【0026】クロメート処理液の塗布方法に特別な制約
はなく、例えばロールコーター等をはじめとする任意の
方法を用いて塗布することが可能である。また、塗布後
の乾燥方法は電気炉、熱風炉、誘導加熱炉等を用いるこ
とができ、処理液中に添加した有機樹脂の最低造膜温度
以上で乾燥することによりクロメート皮膜を形成でき
る。乾燥温度も特に限定されないが、過剰に高い温度で
乾燥すると耐食性や耐黒変性が低下する傾向があるた
め、通常到達板温60〜150℃、炉内乾燥時間120
秒以内で乾燥することが望ましい。なお、本発明のクロ
メート皮膜を得るに当り、処理液を塗布した後、水洗す
ることなく乾燥させるのは、乾燥直後のクロメート皮膜
は溶解し易い状態にあり、水洗すると6価Crが溶出す
るため排水処理が必要になること、また、本処理液で処
理した場合、乾燥後間もなく難溶性の皮膜が形成される
ため、水洗を特に必要としないことによる。
はなく、例えばロールコーター等をはじめとする任意の
方法を用いて塗布することが可能である。また、塗布後
の乾燥方法は電気炉、熱風炉、誘導加熱炉等を用いるこ
とができ、処理液中に添加した有機樹脂の最低造膜温度
以上で乾燥することによりクロメート皮膜を形成でき
る。乾燥温度も特に限定されないが、過剰に高い温度で
乾燥すると耐食性や耐黒変性が低下する傾向があるた
め、通常到達板温60〜150℃、炉内乾燥時間120
秒以内で乾燥することが望ましい。なお、本発明のクロ
メート皮膜を得るに当り、処理液を塗布した後、水洗す
ることなく乾燥させるのは、乾燥直後のクロメート皮膜
は溶解し易い状態にあり、水洗すると6価Crが溶出す
るため排水処理が必要になること、また、本処理液で処
理した場合、乾燥後間もなく難溶性の皮膜が形成される
ため、水洗を特に必要としないことによる。
【0027】
【実施例】めっき皮膜中にAlをそれぞれ0.3wt
%、5wt%、55wt%含有する溶融Zn系めっき鋼
板または溶融Al−Zn系合金めっき鋼板に、表1及び
表2に示す組成のクロメート処理液をロールコーターを
用いて塗布した後、熱風乾燥炉を用いて到達板温80℃
で乾燥し、供試材を得た。クロメート処理液中に添加し
た有機樹脂としては、一般的に用いられているポリメタ
クリル酸系樹脂を主としてノニオン系乳化剤を用いて水
分散性としたものを用いた。クロメート皮膜中のCrお
よびPO4の付着量は、蛍光X線を用いて皮膜中のP及
びCrの強度を測定することにより求めた。同じく有機
樹脂の付着量は、EPMAを用いてCの強度を測定する
ことにより求めた。
%、5wt%、55wt%含有する溶融Zn系めっき鋼
板または溶融Al−Zn系合金めっき鋼板に、表1及び
表2に示す組成のクロメート処理液をロールコーターを
用いて塗布した後、熱風乾燥炉を用いて到達板温80℃
で乾燥し、供試材を得た。クロメート処理液中に添加し
た有機樹脂としては、一般的に用いられているポリメタ
クリル酸系樹脂を主としてノニオン系乳化剤を用いて水
分散性としたものを用いた。クロメート皮膜中のCrお
よびPO4の付着量は、蛍光X線を用いて皮膜中のP及
びCrの強度を測定することにより求めた。同じく有機
樹脂の付着量は、EPMAを用いてCの強度を測定する
ことにより求めた。
【0028】各供試材について以下のような特性試験を
実施した。 (a) 耐食性 塩水噴霧試験を240時間実施し、錆発生の程度に応じ
て下記の評価基準により評価した。 10:錆発生なし 8:錆発生面積が10%未満 6:錆発生面積が10%以上、25%未満 4:錆発生面積が25%以上、50%未満 1:錆発生面積が50%以上
実施した。 (a) 耐食性 塩水噴霧試験を240時間実施し、錆発生の程度に応じ
て下記の評価基準により評価した。 10:錆発生なし 8:錆発生面積が10%未満 6:錆発生面積が10%以上、25%未満 4:錆発生面積が25%以上、50%未満 1:錆発生面積が50%以上
【0029】(b) 耐黒変性、耐結露性 50℃,湿度98%以上の湿潤試験器(HCT)に15
0mm×150mmの供試材を鋼板表面が濡れた状態に
なるようにスタック状態で6日間放置し、黒変による変
色の程度またはCr溶解による外観異常の程度にに応じ
て下記の評価基準により評価した。 ・耐黒変性の評価基準 10:外観の変化なし 8:斜めから見て若干の変色有り 6:直視して10%未満の面積で変色有り 4:直視して10%以上、25%未満の面積で変色有り 1:直視して25%以上の面積で変色有り ・耐結露性の評価基準 ○:サンプル表面の結露水に黄色い着色なし △:サンプル表面の結露水に若干黄色い着色有り(乾く
と殆どムラ無し) ×:サンプル表面の結露水に黄色い着色有り(乾くと黄
色いムラ発生)
0mm×150mmの供試材を鋼板表面が濡れた状態に
なるようにスタック状態で6日間放置し、黒変による変
色の程度またはCr溶解による外観異常の程度にに応じ
て下記の評価基準により評価した。 ・耐黒変性の評価基準 10:外観の変化なし 8:斜めから見て若干の変色有り 6:直視して10%未満の面積で変色有り 4:直視して10%以上、25%未満の面積で変色有り 1:直視して25%以上の面積で変色有り ・耐結露性の評価基準 ○:サンプル表面の結露水に黄色い着色なし △:サンプル表面の結露水に若干黄色い着色有り(乾く
と殆どムラ無し) ×:サンプル表面の結露水に黄色い着色有り(乾くと黄
色いムラ発生)
【0030】(c) Cr溶解性 供試材を沸騰水中に120秒間浸漬し、浸漬前後でのC
r付着量を比較することにより溶出したCr量を測定し
た。 (d) 粘着テープ密着性 気温20℃以上の雨天の日に供試材を直接濡れない場所
に24時間放置し、供試材表面に粘着テープ( Scotch
Brand Tape Core Series 2-0300 )を貼着し、その引き
剥がし強度を測定した。 (e) ロールフォーミング性 先端径5Rのビードを用いて幅30mmの供試材に対し
て100kgfの荷重で押し付けた状態でビード引き抜
き試験を行い、外観の状態に応じて下記の評価基準によ
り評価した。 ○:目視では傷を確認できないレベル △:うっすらと傷が入っているのが確認できるが、実用
上問題ないレベル ×:明らかな傷が生じているレベル
r付着量を比較することにより溶出したCr量を測定し
た。 (d) 粘着テープ密着性 気温20℃以上の雨天の日に供試材を直接濡れない場所
に24時間放置し、供試材表面に粘着テープ( Scotch
Brand Tape Core Series 2-0300 )を貼着し、その引き
剥がし強度を測定した。 (e) ロールフォーミング性 先端径5Rのビードを用いて幅30mmの供試材に対し
て100kgfの荷重で押し付けた状態でビード引き抜
き試験を行い、外観の状態に応じて下記の評価基準によ
り評価した。 ○:目視では傷を確認できないレベル △:うっすらと傷が入っているのが確認できるが、実用
上問題ないレベル ×:明らかな傷が生じているレベル
【0031】表1及び表2に、クロメート処理液及び各
供試材の構成と上記特性試験により得られた皮膜特性を
示す。表1及び表2に示される各実施例のうち、No.
1とNo.2はクロメート皮膜中にリン酸が添加されて
いない比較例であり、耐食性、耐黒変性、耐結露性、耐
Cr溶解性、粘着テープ密着性のいずれの特性にも劣っ
ている。特にNo.1は、高pHの処理液でクロメート
皮膜を形成しているため諸特性が著しく劣っている。N
o.3はクロメート皮膜中にリン酸は添加されているも
のの、その付着量が本発明条件を下回る比較例であり、
耐黒変性、耐結露性、耐Cr溶解性、粘着テープ密着性
に劣っている。これらの比較例に対し、No.22とN
o.23の本発明例では、クロメート皮膜中へのリン酸
の添加によって粘着テープ密着性が明かに向上してい
る。また、No.4はさらにpH:3.0未満に調整し
た処理液でクロメート皮膜を形成した本発明例であり、
リン酸添加とpH調整の効果によって、耐食性、耐黒変
性、耐結露性、耐Cr溶解性、粘着テープ密着性の全て
において優れた性能が得られている。
供試材の構成と上記特性試験により得られた皮膜特性を
示す。表1及び表2に示される各実施例のうち、No.
1とNo.2はクロメート皮膜中にリン酸が添加されて
いない比較例であり、耐食性、耐黒変性、耐結露性、耐
Cr溶解性、粘着テープ密着性のいずれの特性にも劣っ
ている。特にNo.1は、高pHの処理液でクロメート
皮膜を形成しているため諸特性が著しく劣っている。N
o.3はクロメート皮膜中にリン酸は添加されているも
のの、その付着量が本発明条件を下回る比較例であり、
耐黒変性、耐結露性、耐Cr溶解性、粘着テープ密着性
に劣っている。これらの比較例に対し、No.22とN
o.23の本発明例では、クロメート皮膜中へのリン酸
の添加によって粘着テープ密着性が明かに向上してい
る。また、No.4はさらにpH:3.0未満に調整し
た処理液でクロメート皮膜を形成した本発明例であり、
リン酸添加とpH調整の効果によって、耐食性、耐黒変
性、耐結露性、耐Cr溶解性、粘着テープ密着性の全て
において優れた性能が得られている。
【0032】No.5、No.6、No.7、No.2
4、No.25は処理液中に3価Crを含有させた処理
液でクロメート皮膜を形成した本発明例であり、これら
は上記の本発明例に較べて耐Cr溶解性がさらに向上し
ており、このなかでも特に、pH:3.0未満に調整し
た処理液でクロメート皮膜を形成したNo.5、No.
6、No.7がより優れた耐Cr溶解性を示している。
また、No.6、No.7はPO4/Crの値が大きい
ため、耐食性、耐黒変性、耐Cr溶解性、粘着テープ密
着性がさらに向上している。No.8は、クロメート皮
膜中にリン酸が過剰に含まれた比較例であり、粘着テー
プ密着性に劣っている。No.11、No.13はクロ
メート皮膜中の有機樹脂付着量が本発明条件外である比
較例であり、耐ロールフォーミング性に劣っている。
4、No.25は処理液中に3価Crを含有させた処理
液でクロメート皮膜を形成した本発明例であり、これら
は上記の本発明例に較べて耐Cr溶解性がさらに向上し
ており、このなかでも特に、pH:3.0未満に調整し
た処理液でクロメート皮膜を形成したNo.5、No.
6、No.7がより優れた耐Cr溶解性を示している。
また、No.6、No.7はPO4/Crの値が大きい
ため、耐食性、耐黒変性、耐Cr溶解性、粘着テープ密
着性がさらに向上している。No.8は、クロメート皮
膜中にリン酸が過剰に含まれた比較例であり、粘着テー
プ密着性に劣っている。No.11、No.13はクロ
メート皮膜中の有機樹脂付着量が本発明条件外である比
較例であり、耐ロールフォーミング性に劣っている。
【0033】No.16はクロメート皮膜中のCr付着
量が過剰な比較例であり、耐結露性、耐Cr溶解性に劣
っている。No.17、No.25、No.26は、下
層にCr付着量10mg/m2のクロメート皮膜を形成
させた後、上層に有機樹脂を含むクロメート皮膜を形成
した例であり、上層のクロメート皮膜にリン酸を含むN
o.17、No.25はテープ密着性に優れ、且つ耐C
r溶解性も良好である。No.18、19は、本発明条
件外のめっき鋼板に本発明条件を満足するクロメート皮
膜を形成した比較例であり、No.20、No.21と
の比較から、クロメート皮膜中へのリン酸の添加により
耐黒変性が逆に低下していることが判る。
量が過剰な比較例であり、耐結露性、耐Cr溶解性に劣
っている。No.17、No.25、No.26は、下
層にCr付着量10mg/m2のクロメート皮膜を形成
させた後、上層に有機樹脂を含むクロメート皮膜を形成
した例であり、上層のクロメート皮膜にリン酸を含むN
o.17、No.25はテープ密着性に優れ、且つ耐C
r溶解性も良好である。No.18、19は、本発明条
件外のめっき鋼板に本発明条件を満足するクロメート皮
膜を形成した比較例であり、No.20、No.21と
の比較から、クロメート皮膜中へのリン酸の添加により
耐黒変性が逆に低下していることが判る。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、耐食
性、耐黒変性、ロールフォーミング性、粘着テープ密着
性、耐Cr溶解性に優れ、しかも、長期間にわたってめ
っきの外観が損なわれないクロメート処理Al−Zn系
合金めっき鋼板を安価に提供することができる。
性、耐黒変性、ロールフォーミング性、粘着テープ密着
性、耐Cr溶解性に優れ、しかも、長期間にわたってめ
っきの外観が損なわれないクロメート処理Al−Zn系
合金めっき鋼板を安価に提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鷺山 勝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−11453(JP,A) 特開 平5−287548(JP,A) 特開 昭64−87783(JP,A) 特開 昭53−100139(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86 C23C 28/00
Claims (5)
- 【請求項1】 Alを25〜75wt%含有するAl−
Zn系合金めっき皮膜の表面に、水溶性クロム酸化合物
と水溶性または水分散性の有機樹脂とリン酸系化合物と
を含み且つNiイオンを含まないクロメート処理液を塗
布し、水洗することなく乾燥して形成されたクロメート
皮膜であって、金属Cr換算でのCr付着量が10〜4
0mg/m2、有機樹脂付着量が1.0〜3.0g/m
2、PO4換算でのリン酸付着量が金属Cr換算でのC
r付着量との重量比でPO 4 /Cr=0.5〜4.0で
ある皮膜を有することを特徴とするクロメート処理Al
−Zn系合金めっき鋼板。 - 【請求項2】 Alを25〜75wt%含有するAl−
Zn系合金めっき皮膜の表面に、下層として水溶性クロ
ム酸化合物を含み且つ有機樹脂を含まないクロメート処
理液を塗布し、水洗することなく乾燥して形成されたク
ロメート皮膜を有し、その上層に水溶性クロム酸化合物
と水溶性または水分散性の有機樹脂とリン酸系化合物と
を含み且つNiイオンを含まないクロメート処理液を塗
布し、水洗することなく乾燥して形成されたクロメート
皮膜を有し、前記下層及び上層のクロメート皮膜の金属
Cr換算でのCr付着量が合計で10〜40mg/
m2、PO4換算での合計のリン酸付着量が金属Cr換
算でのCr付着量との重量比でPO 4 /Cr=0.5〜
4.0であり、且つ上層のクロメート皮膜の有機樹脂付
着量が1.0〜3.0g/m2であることを特徴とする
クロメート処理Al−Zn系合金めっき鋼板。 - 【請求項3】 Al−Zn系合金めっき皮膜がAlを5
0〜60wt%含有することを特徴とする請求項1また
は2に記載のクロメート処理Al−Zn系合金めっき鋼
板。 - 【請求項4】 クロメート皮膜中の有機樹脂付着量が
1.2〜2.0g/m2であることを特徴とする請求項
1、2または3に記載のクロメート処理Al−Zn系合
金めっき鋼板。 - 【請求項5】 クロメート皮膜が、pH:3.0未満に
調整された処理液を塗布して形成された皮膜であること
を特徴とする請求項1、2、3または4に記載のクロメ
ート処理Al−Zn系合金めっき鋼板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21964595A JP3271485B2 (ja) | 1995-08-04 | 1995-08-04 | クロメート処理Al−Zn系合金めっき鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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