JP3364089B2 - 皮膜特性に優れたクロメート処理めっき鋼材とその製造方法 - Google Patents
皮膜特性に優れたクロメート処理めっき鋼材とその製造方法Info
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耐食性、耐黒変性、耐クロム溶出性などの各種皮膜特性
に優れたクロメート処理めっき鋼材とその製造方法の改
良に関する。
鋼材の防錆処理として、従来から種々のクロメート処理
技術が提案され、実用化されてきている。とくに近年で
は、クロメート処理鋼板が、樹脂塗装されずにそのまま
の状態で、家電や家具、自動車部品等に使用されるケー
スが増大しており、そのため、亜鉛めっき鋼材のクロメ
ート処理は、1次防錆ではなく最終防錆としての機能が
求められ、従来にも増して高度の耐食性が必要になって
きた。
クロメート皮膜の防錆性を高める技術として、例えば、
クロメート処理液中にシリカゾルや3価のクロムイオン
(クロム還元物)を添加する方法が知られている(特公
昭42−14050 号公報、特公昭52−2851号公報参照)。
でクロメート処理されためっき鋼材は、クロメート特有
の黄色味(b値が大)が強く、外観の秀麗性を重要視す
る需要家からはその改善が強く求められていた。また、
プレス等の後に実施されるアルカリ脱脂の際には、クロ
ムが溶出(Cr固定率が小さい場合)しやすく、脱脂槽中
に蓄積したクロムを排水時に処理するなどの環境対策が
必要になるという問題があった。
溶出がなくかつクメート特有の黄色味を少なくした耐食
性の優れたクロメート処理めっき鋼材の製造方法が、特
開平3−68783 号公報で提案されている。確かに、この
方法によれば、外観の秀麗性および耐食性の向上を同時
に満足できるクロメート処理めっき鋼材の製造が可能に
なるが、これらの性能を満足させるためには 220℃以上
の高温焼付けが必要であり、工業生産における製造コス
トの面で不利であった。
することなくクロメート処理液中のクロム還元率を予め
60%以上とした従来技術がある。例えば、.特公昭54
−37567 号公報には、6価のクロムを70%以上3価クロ
ムに還元したクロム化合物を用いる技術が、.特開平
5−70968 号や特開平5−78857 号公報等には、クロム
還元率40〜80重量%のクロム化合物を用いる技術が、
.特公平6−96778 号公報には、6価/3価クロムイ
オン重量比が 0.1〜0.2 (還元率に換算すると33〜91
%)であるクロメート液が、.特開平5−331659号公
報には、6価/3価クロムイオン重量比が1/9〜4/
1(還元率に換算すると10〜80%)であるクロメート液
が、.特開平7−11454 号あるいは特公平8−983 号
公報には、それぞれCr3+/(Cr3++Cr6+)が 0.4〜1.0
あるいは 0.7〜0.98であるクロメート液が、開示されて
いる。
て、クロム還元率を予め高めに設定し維持するために
は、Cr3+のゲル化を防止する必要があり、クロメート液
の長期安定性に欠けるという問題があった。例えば、特
公昭54−37567 号公報に開示しているように、上記クロ
メート液は、酸の添加がないと沈殿が生成し、一方、酸
が過剰にあると耐食性が劣化する。また、上記クロメー
ト液は、クロメート製品製造時の周囲の温度上昇により
不安定になり、クロメート液の長期安定性に欠けるだけ
でなく、酸が不溶性塩の形成量より過剰の場合には酸が
フリーとなり、焼付後に吸湿して製品外観の黒変化をも
たらすことになる。
えば、特開昭52−17341 号、特公昭60−39751 号、特公
昭61−58552 号、特開昭64−80522 号公報に、ショ糖や
グルコースなどの糖類、ポリエチレングリコールやグリ
セリンなどの多価アルコールなどが開示されている。
した各種従来技術を改良して製造コストの面で有利な技
術を提案することにあり、特に、クロメート処理液の長
期安定性を維持でき、220℃以上の高温焼付けをするこ
となく、外観や耐指紋性、耐食性、耐黒変性、耐Cr溶出
性などの各種皮膜特性に優れたクロメート処理皮膜をめ
っき鋼材表面に形成する技術を提供することにある。
を実現すべく鋭意研究を進めた結果、クロムイオンが安
定状態にある還元率に予め設定したクロム酸化合物と液
相シリカを含むクロメート処理液に、有機還元剤を添加
することで、鋼板表面に塗布した皮膜中のCr6+が 150℃
以下の温度でも還元され、シリカとの脱水・縮合反応に
より強固なクロメート皮膜を形成することを知見し、本
発明に想到した。
たクロメート処理めっき鋼材とその製造方法は、亜鉛ま
たは亜鉛合金めっき鋼材の表面に、クロム還元率(3価
クロム/全クロム(重量比))が0.3〜0.5のクロム酸化
合物を主成分とし、これに液相シリカを液相シリカ(Si
O2換算)/全クロム(重量比)で1〜6およびリン酸
をリン酸/全クロム(重量比)で0.3〜2の範囲で含有
する水溶液に、有機還元剤を有機還元剤/全クロム(重
量比)で0.1〜0.4の範囲で塗布直前に添加してなるクロ
メート処理液を塗布し、その後、80〜150℃の範囲で加
熱焼付けすることにより、金属クロムとしての付着量が
10〜100mg/m2 で、かつ、アルカリ脱脂後のクロム残存
率が90%以上であるクロメート皮膜を形成することを特
徴とする。なお、本発明においては、前記有機還元剤と
して、ジオール類の中から選ばれる少なくとも1種、お
よびまたは糖類の中から選ばれる少なくとも1種を用い
ることが望ましい。特に、ジオール類の中でも、エチレ
ングリコール、プロピレングリコール、トリメチレング
リコールおよび1,4−ブタンジオールを用いること、糖
類の中でも、グリセリン、ポリエチレングリコール、サ
ッカロース、ラクトース、しょ糖、ぶどう糖および果糖
を用いることがより望ましい。
する。まず液相シリカについて述べると、シリカをクロ
メート処理液中に添加することによって耐食性を向上さ
せ、またクロメート塗布ムラを防止させる効果のあるこ
とは既に公知である。しかしながら、全クロム量に対す
るSiO2量が0(無添加)もしくは1未満では、皮膜の耐
食性および耐指紋性が悪く、一方7を超えると、秀麗な
外観を保つためには 200℃を超える焼付温度にて焼付け
る必要があり、製造コストが嵩んで経済的でない。従っ
て、本発明において液相シリカの添加量は、液相シリカ
(SiO2換算)/全クロム(重量比)で1〜6の範囲とす
る。なお、この液相シリカは、水ガラスを出発原料にし
たものでコロイダルシリカ等の名称で市販されているも
のを用いることができ、シリカの粒径については特に限
定しないが、クロメート処理液中でのコロイドの安定性
が良好であり、凝集沈澱しないものを選定する必要があ
る。
ロメート液中のCr3+の安定性を増すのに効果があり、添
加によってクロメート処理後の鋼材の黄色味を抑制し、
外観を白色に維持する効果がある。しかしながら、重量
比で全クロムに対して 0.3未満では外観の白色化にほと
んど効果がなく、一方、 2.0を超えると耐食性が劣化す
るばかりでなく耐黒変性が悪化するので好ましくない。
したがって、本発明では、リン酸の添加量はリン酸( H
3PO4)/全クロム(重量比)で 0.3〜2.0 の範囲に限定
した。
ロム酸化合物は、クロメート処理において耐食性を確保
し、かつ均一に鋼材に塗布できるようにするために、通
常無水クロム酸を主体とした水溶液を用いるが、秀麗な
外観を得るためには、このクロム酸を還元してCr3+を一
定の割合で確保する必要がある。しかしながら、Cr還元
率(Cr3+/全クロム(重量比)) が30%未満ではクロメ
ート処理鋼材が黄色外観となって不良となり、一方、50
%を超えるとクロメート液がゲル化して不安定となり、
溶液の保管や塗布作業等に不都合が生じて工業生産には
不適切となる。したがって、本発明においてクロム酸化
合物は、予めメタノールなどの有機還元剤でCr還元率
(Cr3+/全クロム(重量比)) を30〜50%の範囲内にす
ることが必要である。この範囲では、クロム酸のイオン
種が電気的平衡により安定に存在しやすくなっているの
である。
は、クロメート処理液を塗布する直前に、該クロメート
処理液中に有機還元剤、好ましくはエチレングリコール
やプロピレングリコールなどのジオール類、あるいはシ
ョ糖やぶどう糖、果糖などの糖類を添加することに特徴
がある。このことによって、皮膜特性に優れたクロメー
ト処理めっき鋼材を提供することができる。即ち、この
有機還元剤の添加によって、鋼材表面に塗布した皮膜中
のCr6+が還元され、シリカとの脱水・縮合反応により強
固なクロメート皮膜を形成するため、Cr6+による黄色味
が無くなり外観の秀麗性が向上する。また耐食性も上記
有機還元剤の添加によりさらに向上するのである。とく
に本発明では、これらの有機還元剤の添加に際し、クロ
メート処理液中のクロム酸は、予めCr還元率(Cr3+/全
クロム(重量比)) を30〜50%の範囲内にしておくこと
が必要条件である。なぜなら、未還元のクロム酸を主成
分とするクロメート処理液に還元剤を添加して予め高還
元率にすると、使用前の保存時にゲル化して使用に耐え
なくなってしまう。その点、予め還元されたクロム酸が
電気的に安定な状態になっていると(Cr還元率が30〜50
%の範囲内)、使用時に上記有機還元剤を添加すること
でゲル化に至るまでの時間を延長でき、また、保存時の
温度を30℃以下に保つことで、クロメート処理液の寿命
を伸ばすことができるからである。このように、本発明
は、クロメート処理めっき鋼材製造時におけるクロメー
ト処理液の安定性を確保するために、有機還元剤を塗布
直前に添加して使用し、焼付乾燥時にその還元剤が作用
するようにした点に特徴があり、これによって、リン酸
添加量を最小限に抑え、製品外観の黒変化を有効に防止
することができる。このような有機還元剤としては、エ
チレングリコールやプロピレングリコール, トリメチレ
ングリコール, 1,4−ブタンジオールなどのジオール類
の中から選ばれる少なくとも1種、およびまたはグリセ
リンやポリエチレングリコール(分子量は50〜500 位が
望ましい) ,サッカロース,ラクトース,しょ糖,ぶど
う糖, 果糖などの糖類の中から選ばれる少なくとも1種
を用いることが望ましく、その添加量は、有機還元剤/
全クロム(重量比)で 0.1〜0.4 とする。この理由は、
0.1 未満では外観等の皮膜特性の改善に効果がなく、0.
5 を超えると液安定性が悪くなり好ましくないからであ
る。特に、本発明における上記有機還元剤は、焼付乾燥
時に数十秒程度の短い時間で還元反応を行い得るような
視点から、その種類および量を限定したものである。
ート皮膜の乾燥が不十分であり、一方、 150℃を超える
と焼付炉長を長くしたり焼付速度を遅くしたりすること
から製造コストが嵩むので、80〜150 ℃の範囲に限定す
る。
して10mg/m2 よりも少ないと耐食性を十分に確保でき
ず、一方、100mg/m2よりも多くなるとオーバースペック
となって製造コストが高くなり、また良好な外観が得ら
れなくなるため、10〜100mg/m2の範囲に限定する。
っき、電気めっきあるいは蒸着めっき等のめっき手段の
種類により限定されず、亜鉛またはZn−Ni, Zn−Fe, Zn
−Al, Zn−Crなどの2元合金、さらにはZn−Ni−Co, Zn
−Al−Crなどの多元合金などを広く含む亜鉛系合金めっ
きを施した鋼材であり、鋼材の種類は、鋼板、形鋼、鋼
管、線材などに適用でき、鋼材の種類により制限を受け
るものではない。
明する。目付量が20g/m2の電気亜鉛めっき鋼板の片面
に、無水クロム酸、蒸留水、メタノール、液相シリカ量
(スノーテックスO、粒径10〜20nm:日産化学製) およ
びリン酸を配合して表1に示す組成としたクロメート液
中に各種有機還元剤を所定量添加してなるクロメート処
理液を、バーコーターで塗布し、その後、所定の温度で
焼付けすることにより、表1に示すCr付着量のクロメー
ト皮膜を形成した。なお、比較例としては、表2に示す
ように、本発明範囲を逸脱する条件にて製造したクロメ
ート処理めっき鋼板と、クロメート液中に有機還元剤を
添加せずに高温焼付けによって製造したクロメート処理
めっき鋼板をとりあげた。
めっき鋼板の外観や耐指紋性、Cr溶出性,耐食性,耐黒
変性などの各種皮膜特性、および各クロメート処理液の
液安定性を評価し、その結果を表1,表2に併せて示
す。
に、本発明に従って製造したクロメート処理めっき鋼板
は、いずれも優れた皮膜特性(外観や耐指紋性、Cr溶出
性、耐食性、耐黒変性など)を有するものであった。ま
た、比較例13との比較では、より低い焼付温度でも有機
還元剤の添加によって優れた皮膜特性が得られることを
確認した。しかも、本発明にかかる組成のクロメート処
理液は液安定性に優れるので、クロメート処理めっき鋼
材の安定生産に有利である。
価し、色むらや黄色味が強い外観であれば×, 色むらや
黄色味がやや判る程度であれば△, 色むらや黄色味があ
るかないかの程度であれば○, 色むらや黄色味が判らな
い程度であれば◎とした。耐指紋性は、白色ワセリン塗
布前後のΔE(下記式参照)で評価し、5以上であれば
×, 3〜5であれば△, 1〜3であれば○, 1以下であ
れば◎とした。
評価し、70%以下であれば×, 70〜80%であれば△, 80
〜90%であれば○, 90%以上であれば◎とした。耐食性
は、塩水噴霧試験( JIS Z 2371 に準ずる)で白錆発生
率が5%に達する時間で評価し、5%白錆発生時間が75
時間以内であれば×, 75〜150 時間であれば△, 150 〜
250 時間であれば○, 250 時間を超えるものは◎とし
た。耐黒変性は、湿度99%, 温度50℃の湿潤状態で14日
間保存し、試験前後のΔL(ΔL=|L2 −L1 |、L
1;試験前L値、L2;試験後L値)で評価した。その評価
は、5以上であれば×, 3〜5であれば△, 1〜3であ
れば○, 1以下であれば◎とした。液安定性は、クロメ
ート処理液を室温で2週間放置した後のゲル化の有無で
評価し、ゲル化が有れば×,ゲル化が無ければ○とし
た。
観や耐指紋性、耐食性、耐黒変性、耐Cr溶出性などの各
種皮膜特性に優れたクロメート処理めっき鋼材が、クロ
メート皮膜を 220℃以上の高温で焼付けすることなく製
造することが可能となる。しかも、本発明にかかる組成
のクロメート処理液は液安定性に優れ、クロメート処理
めっき鋼材の安定生産に有利である。
Claims (4)
- 【請求項1】亜鉛または亜鉛合金めっき鋼材の表面に、
クロム還元率(3価クロム/全クロム(重量比))が0.
3〜0.5のクロム酸化合物を主成分とし、これに液相シリ
カを液相シリカ(SiO2換算)/全クロム(重量比)で
1〜6およびリン酸をリン酸/全クロム(重量比)で0.
3〜2の範囲で含有する水溶液に、有機還元剤を有機還
元剤/全クロム(重量比)で0.1〜0.4の範囲で塗布直前
に添加してなるクロメート処理液を塗布し、その後、80
〜150℃の範囲で加熱焼付けすることにより、金属クロ
ムとしての付着量が10〜100mg/m2 で、かつ、アルカリ
脱脂後のクロム残存率が90%以上であるクロメート皮膜
を形成する、ことを特徴とする皮膜特性に優れたクロメ
ート処理めっき鋼材の製造方法。 - 【請求項2】前記有機還元剤として、ジオール類の中か
ら選ばれる少なくとも1種、およびまたは糖類の中から
選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする、請
求項1に記載の製造方法。 - 【請求項3】亜鉛または亜鉛合金めっき鋼材の表面に金
属クロムとしての付着量が10〜100mg/m2のクロメート
皮膜を形成してなるクロメート処理めっき鋼材であっ
て、このクロメート皮膜は、クロム還元率(3価クロム
/全クロム(重量比))が0.3〜0.5のクロム酸化合物を
主成分とし、これに液相シリカを液相シリカ(SiO2換
算)/全クロム(重量比)で1〜6およびリン酸をリン
酸/全クロム(重量比)で0.3〜2の範囲で含有する水
溶液に、有機還元剤を有機還元剤/全クロム(重量比)
で0.1〜0.4の範囲で塗布直前に添加してなるクロメート
処理液の塗布,焼付けによって形成したものであり、か
つ、該クロメート皮膜のアルカリ脱脂後のクロム残存率
が90%以上であることを特徴とする皮膜特性に優れたク
ロメート処理めっき鋼材。 - 【請求項4】前記有機還元剤が、ジオール類の中から選
ばれる少なくとも1種、およびまたは糖類の中から選ば
れる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3
に記載のクロメート処理めっき鋼材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20343396A JP3364089B2 (ja) | 1996-08-01 | 1996-08-01 | 皮膜特性に優れたクロメート処理めっき鋼材とその製造方法 |
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JPH1046353A JPH1046353A (ja) | 1998-02-17 |
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---|---|---|---|---|
JP5315677B2 (ja) | 2007-11-28 | 2013-10-16 | Jfeスチール株式会社 | 燃料タンク用鋼板およびその製造方法 |
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1996
- 1996-08-01 JP JP20343396A patent/JP3364089B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH1046353A (ja) | 1998-02-17 |
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