JP3964992B2 - アルミニウム又はアルミニウム合金材の塗布型表面処理剤及び表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金材の塗布型表面処理剤及びその表面処理方法に関するものである。更に詳しくは、本発明はアルミニウム又はアルミニウム合金材上に耐食性、上塗り塗膜密着性及び耐クロム溶出性に優れた皮膜を形成するための塗布型表面処理剤に関するものである。なお、本発明の適用できる分野はアルミニウム又はアルミニウム合金を使用する建築材料、家電製品、自動車部品などが対象である。
【0002】
【従来の技術】
金属表面の防錆、塗装下地を目的として塗布型クロメート表面処理剤が多用されている。その理由として、前記塗布型クロメート処理剤は、10〜100mg/m2 程度の少ない皮膜量で耐食性が発揮され、コストが安価であることが挙げられる。また、塗布型処理は、廃水処理が全く必要がないため環境への負荷がなく、処理剤を加熱することにより強制乾燥するため皮膜量や皮膜物性のコントロールが容易であり、比較的均一な皮膜が得られる。このような背景から、最近は主に金属シート材を対象として、耐食処理として化成型クロメート処理から、ベーキング炉を備えた塗布型クロメート処理剤へ移行してきている。
従来から、鉄鋼の分野を中心に、亜鉛系メッキ鋼板用の塗布表面処理剤として、クロム酸、重クロム酸又はクロム酸塩を主成分としたクロメート系処理剤が使用されており、かかる処理剤には必要に応じてリン酸、硝酸、フッ酸等の無機アニオン成分を添加したり、更に耐食性を向上する目的で有機高分子化合物やシリカを添加している。
【0003】
亜鉛メッキ鋼板用のクロメート処理剤に関しては、多くの公報が開示されている。
例えば、特開平02−30771号公報には、亜鉛メッキ鋼板用クロメート処理剤として、クロム酸、りん酸イオン、ジルコニウムフッ化物イオン及び亜鉛イオンからなる組成とそれら成分の重量比を特定したものが開示されており、6価クロムイオン/3価クロムイオン=3/4〜3/2、クロム酸/ジルコニウムフッ化物イオン=10/1〜100/1に成分率を限定している。このクロメート処理剤で塗布乾燥して形成されたクロメート皮膜上に、溶剤型有機高分子化合物を塗布して、焼付処理することにより、クロム溶出がなく、耐食性が優れるクロメート鋼板を製造している。
【0004】
また、特開昭62−56580号公報には、亜鉛メッキ鋼板用のクロメート処理剤として、クロム酸、3価クロムイオン、りん酸イオン及びジルコニウムフッ化物イオン、シリカを含有し、それらの重量比を特定したものが開示されており、6価クロムイオン/3価クロムイオン=1.5/1〜5/1、クロム酸/ジルコニウムフッ化物イオン=5/1〜1000/1、りん酸イオン/ジルコニウムフッ化物イオン=1/2〜2/1に成分に限定している。このクロメート処理剤で塗布乾燥して形成された皮膜は、耐食性及び塗装密着性に優れているとされている。
【0005】
更に、特開平03−219087号公報には、亜鉛メッキ鋼板用のクロメート処理剤として、りん酸イオン、ジルコニウムフッ化物イオン及び還元剤を添加したクロム酸を含有し、それらの重量比を限定したものが開示されており、3価クロムイオン/全クロムイオン=0.41〜0.70、クロム酸/ジルコニウムフッ化物イオン=10/1〜40/1、りん酸イオン/3価クロムイオン=0.03以上かつ9.2X−4.0≦Y≦9.2X−1.4(Y=りん酸イオン/3価クロムイオン重量比、X=3価クロムイオン/全クロムイオン重量比)としている。このクロメート処理剤で塗布乾燥して形成された皮膜は、クロム溶出が少なく、耐食性に優れているとされている。
【0006】
これら上記公報で提案された亜鉛メッキ鋼板用クロメート処理剤は共通して、クロム酸、還元物により還元されたクロム酸、りん酸、ジルコニウムフッ化物を含有したクロメート処理剤であり、金属クロム量に対して金属ジルコニウム量の比率が0.01〜0.2程度と少ない。使用されているジルコニウムフッ化物の効果について着目すると、金属表面のエッチング効果や、高還元クロメート剤のゲル化を防ぐために添加されている。
【0007】
アルミニウム又はアルミニウム合金材料はそれ自体が特有の酸化皮膜を形成するため、鉄鋼と比較すると耐食性が良いと言われている。しかし、近年、酸性雨が問題となってきている自然環境や、強酸性雰囲気下での過酷な環境といったところでアルミ材料が多く使われるようになってきており、合金自体の性能に頼る耐食性では満足できず、性能の向上が次第に要求されてきている。
一方、アルミニウム用クロメート処理剤としては、PO4 3- 2〜10%、CrO3 0.6〜2%、F- 0.15〜0.6%のものが古くから知られている。これ以外にも二三の処理剤はあるが、現在のところに耐食性、耐クロム溶出性、上塗り塗膜との密着性がともに優れた皮膜をアルミニウム材料に形成させるような表面処理剤は得られていないのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の有する問題点を解決するためのものであり、アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面に耐食性、耐クロム溶出性、上塗り塗膜の密着性に優れる皮膜を形成するための塗布型表面処理剤及びその表面処理方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記問題を解決するための手段について鋭意検討して、全クロムイオン(6価クロムイオン+3価クロムイオン)、リン酸イオンを必須成分とした処理剤に、更にジルコニウムフッ化物イオンを添加することに着目した。この検討の結果、ジルコニウムフッ化物イオンには少量の添加で素材のエッチング性や液安定性を向上する効果があり、加えて、ジルコニウム/クロム重量比を同程度高めたジルコニウムとクロムの複合皮膜では、クロムのみならずジルコニウムが本来もつ耐食性能も期待できることが分かったので、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金材の塗布型クロメート表面処理剤は、全クロムイオン(6価クロムイオン+3価とクロムイオン)1〜100g/Lと、リン酸イオンと、ジルコニウムフッ素イオンと、さらに、必要により後述のシリカ粒子、及び水酸基またはカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を骨格に有する有機化合物とからなり、3価クロムイオン/全クロムイオンの重量比が0.4〜0.8であり、かつ金属換算での重量比が、リン/クロム=0.13〜1.00及びジルコニウム/クロム=0.5〜2.5であり、ジルコニウム−クロム複合皮膜を形成することを特徴とするものである。また、本発明に係るアルミニウム又はアルミニウム合金材の塗布型表面処理方法は、塗布型クロメート表面処理剤をアルミニウム又はアルミニウム合金材の表面に、クロム換算で3 〜100mg/m2 塗布後、60〜 260℃に加熱乾燥することを特徴とするものである。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の塗布型クロメート表面処理剤の必須成分である全クロムイオンは、無水クロム酸を水溶化することにより得られる。このクロム酸は全て6価クロムイオンであるので、還元剤を添加することにより3価クロムイオンを得ることができる。還元剤としては、アルコール類、多糖類等で水酸基を有する有機化合物が挙げられる。例えば、タンニン酸、メタノール、ヒドラジン、ショ糖などが好ましいが、特に限定されるものではない。還元剤の添加量により生成する3価クロムイオン量を調整することができ、添加量を多くするほど3価クロムイオン量が多くなる。また、クロム酸を還元する方法は特に限定しないが、還元率、すなわち全クロムイオン量に対する3価クロムイオン量の重量比については、0.4〜0.8にすることが好ましい。より好ましくは0.5〜0.7である。
上記の塗布型クロメート処理剤においては3価クロムイオン/全クロムイオンの重量比が0.8を超えると、形成される皮膜の耐食性が劣化する。また、この重量比が0.4未満では、溶解性のある6価クロムイオンの量が多くなり、皮膜からのクロム溶出が多くなる。
【0012】
次に、本発明の表面処理剤が必須成分として含有するりん酸イオンはオルトりん酸、りん酸アンモニウムの形でクロム酸水溶液に添加するのが好ましい。りん酸イオンは、処理剤のゲル化防止、すなわち経時安定性を確保し、さらに皮膜からのクロム溶出を低減する。りん酸イオンは、りん/クロム比に換算した重量比で0.13〜1.00である。好ましくは0.25〜0.80である。この重量比が0.13未満では表面処理剤が貯蔵中にゲル化したり、あるいは皮膜内に存在する6価クロム量が多くなるためにアルミ材使用環境におけるクロムの溶出が多くなる。一方上記の重量比が1.00を超えると、過剰のりん酸イオンが皮膜形成を阻害するためクロム溶出が多くなる上、十分な耐食性が得られない。
【0013】
次に、本発明の表面処理剤が必須成分として含有するジルコニウムフッ化物イオンは、ジルコニウムフッ化水素酸もしくはジルコニウムフッ化アンモニウムの形でクロム酸水溶液に添加するのが好ましい。ジルコニウムフッ化物イオンは、被塗物となるアルミニウム素材をエッチングするので素材から溶出した金属イオンとの錯化合物を形成しながら皮膜を形成するため、素材との優れた密着性が確保できる。また、ジルコニウムフッ化物イオンの含有量が多いほど、アルミニウムがアノードとして溶解されるエッチング反応が多くなりこれに伴い、処理材に含有する6価クロムイオンから3価クロムイオンへのカソード析出反応が促進され、皮膜中の3価クロムが増えるので、皮膜からのクロムの析出が低減できる。ジルコニウムフッ化物イオンは、ジルコニウム/クロムに換算した重量比で0.5〜2.5である。好ましくは0.5〜2.0である。この重量比が0.5 未満では、クロム溶出が1%以上と多くなる上、ジルコニウムの存在量が少ないため、十分な耐食性が得られない。2.5を超えると耐食性は十分得られるものの、上塗り塗膜を形成した場合に、皮膜内のフッ化物が過剰となり層間剥離が生じ易くなるため好ましくない。なお、乾燥温度を高くすると、クロムの溶出は少なくなるが、耐食性は劣化すると言う二律背反的性質であるが、上記のジルコニウム/クロム重量比範囲ではこれらの性質が両立する。
【0014】
本発明で表面処理した後に塗装する際に適用する上塗り塗膜としては、例えば、装飾性、防汚性、潤滑性、親水性、防菌防塵等の機能を備えている塗膜が好ましいが、有機塗膜、無機塗膜または有機無機複合被膜のような種類は特定するものではない。
【0015】
本発明に係る塗布型表面処理剤は、更に耐食性を向上させるためにシリカ粒子を含有することもできる。シリカ粒子の種類は特に限定されるものではなく、例えば、気相シリカ、コロイダルシリカが挙げられる。シリカ粒子の添加量は、シリカ粒子/全クロムイオンに換算した重量比が0.5〜2.0であることが好ましい。この重量比が0.5未満ではシリカ粒子添加の効果は期待できず、一方2.0を超えると耐食性が飽和するため経済的に不利になる。
【0016】
本発明に係る塗布型表面処理剤に対して、更に水酸基またはカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を骨格中に含む有機化合物を後添加すると、上塗り塗膜の密着性や耐クロム溶出性が更に向上することが期待できる。
後添加する有機化合物としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸及びメタクリル酸の共重合物、タンニン酸、フィチン酸、セルロース、ポリビニルアルコールが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の塗布型表面処理剤による処理の対象となる金属材料はアルミニウム又はアルミニウム合金である。アルミニウム合金の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム−マンガン合金、アルミニウム−マグネシウム合金等が挙げられる。また、金属基材の形状に関しても、特に限定されるものではない。例えば、主としては、アルミニウム(合金)コイルシート材に適用するものであるが、板からの成形物に対しても適用可能である。
【0018】
アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面に、本発明の塗布型表面処理剤を塗布処理する方法は、特に限定しないが、浸漬法及びロールコート法を用いるのが好ましい。また、塗布温度及び時間についても特に限定しないが、処理温度は10〜40℃、処理時間は0.1〜30秒であることが好ましい。より好ましい時間は0.2〜15秒の範囲である。塗布後の加熱乾燥温度は60〜260℃であることが好ましく、より好ましくは80〜240℃である。この加熱乾燥時間が60℃未満では十分な造膜ができず、260℃を超えると耐食性が劣化する。
【0019】
なお、アルミニウム材料に形成されるジルコニウム−クロム複合皮膜の付着量は、ジルコニウムに換算して1.2〜250mg/m2 、クロムに換算して3〜100mg/m2 の範囲となることが好ましい。これらの範囲内でかつクロム+ジルコニウムの合計の付着量は4〜350mg/m2 の範囲にするのが好ましい。この合計付着量が4mg/m2 未満であると耐食性が不十分となり、一方、350mg/m2 を超えると、皮膜性能が飽和するため経済的に不利になる。
【0020】
【作用】
本発明の塗布型表面処理剤から形成されるジルコニウム−クロム複合皮膜の持つ効果は次のようなさまざまな反応に起因するものと推測される。
▲1▼クロム酸の中で3価クロムイオンは、高分子化したクロム酸化物として皮膜の骨格を形成する。同様に、ジルコニウムフッ化物も高分子化して皮膜中に存在する。これらの複合皮膜は高分子化しており、水、酸素、塩化物等の腐食因子が存在する環境下においても、それらを遮断そして侵入を効果的に遅延する。▲2▼ジルコニウムフッ化物イオンは、アルミニウム素材表面をエッチングし、溶出したアルミニウムイオンと錯化合物を形成するため皮膜の密着性が優れる。▲3▼高分子化したジルコニウム酸化物とクロム酸化物が複合して、ジルコニウムとクロムの複合酸化皮膜の骨格となる。▲4▼りん酸イオンと6価クロムイオンは高分子化した3価クロム酸化物及びジルコニウムフッ化物中に各々が配置した形で、皮膜内に存在する。6価クロムイオンは溶解性があるが配位しているため皮膜の系外に溶出することはなく、腐食因子が皮膜内に侵入しても、自己修復機能を有している。具体的には、欠陥部であるアルミ新生面に対して、配置した6価クロムイオンが3価クロム酸化物に還元されることによって保護皮膜を形成する効果と、更に6価クロムイオン及びジルコニウムフッ化物の作用によりアルミ酸化物を形成する効果により防食性が保持される効果との両者の相乗効果により自己補修機能が発現する。このため耐食性が維持できると考えられる。
【0021】
【実施例】
以下に実施例を比較例と共に挙げ、本発明を具体的に説明する。
<供試材>
アルミニウム材料として、厚さ0.1mm、幅70mm、長さ150mmのJIS 1200相当のアルミニウム薄板市販品を使用した。
<供試材の洗浄方法>
上記アルミニウム板を、アルカリ脱脂剤(登録商標:ファインクリーナー4377K、日本パーカライジング株式会社製)を薬剤濃度:20g/Lで建浴し、処理温度:60℃、処理時間:7秒の条件でスプレー処理した。これにより、表面に付着しているゴミや油を除去した。さらに、表面に残存しているアルカリ分を水道水により15秒スプレー洗浄後、乾燥器内で80℃で3分間熱風乾燥した。
【0022】
<表面処理剤の組成>
本発明の塗布型表面処理剤に関して、実施例1〜8を比較例1〜8と共に図1(表1)に示した。
【0023】
実施例1〜6
本発明の必須成分であるリン酸イオンとしてはオルトリン酸を、ジルコニウムフッ化物イオンとしてはジルコニウムフッ化水素酸を、クロムイオンとしては無水クロム酸を使用した。
塗布型処理剤は以下に示す方法で作成した。まず無水クロム酸にオルトリン酸を添加したのち、水を加えてクロム酸とリン酸の混合水溶液を作成した。次に、有機還元剤としてメタノールを添加し、その添加量により3価クロムイオン/全クロムイオンの重量比を調整した還元クロム水溶液を作成した。続いて、ジルコニウムフッ化水素酸を添加した。尚、表面処理剤の濃度調整には、全て脱イオン水を使用した。
【0024】
実施例7
実施例5の塗布型表面処理剤にシリカ粒子を後添加した。シリカ粒子はコロイダルシリカ(平均粒子径:8mμ)を使用した。コロイダルシリカの添加量は、二酸化珪素/クロム重量比で1.0添加した。
【0025】
実施例8
実施例2の塗布型表面処理剤に、有機化合物を後添加した。有機化合物はポリアクリル酸水溶液(数平均分子量:10万)を使用した。
【0026】
<表面処理方法>
予め洗浄していたアルミニウム板上に、ロールコーターで前記表面処理剤を接触させて塗布した。塗布後、表2に示すような到達板温になるように加熱乾燥した。
【0027】
表1において、比較例1は、本発明の必須成分であるジルコニウムフッ化物イオンを含有しない表面処理剤である。
比較例2は、ジルコニウムフッ化水素酸を過剰量添加した表面処理剤である。
比較例3は、全クロムに対して6価クロム量が過剰であるクロム酸を添加した表面処理剤である。
比較例4は、全クロムに対して6価クロム量が不足であるクロム酸を添加した表面処理剤である。
比較例5は、オルトりん酸を過剰に添加した表面処理剤である。
比較例6は、実施例1及び4で添加したジルコニウムフッ化水素酸のかわりに、同モル数のチタンフッ化水素酸を添加した表面処理剤である。
比較例7は、実施例1及び4で添加したジルコニウムフッ化水素酸のかわりに、同モル数の珪フッ化水素酸を添加した表面処理剤である。
比較例8は、化成処理であるが、りん酸クロメート系処理剤(登録商標:アルクロムK702、日本パーカライジング株式会社製)を用いて、スプレー 処理を行ったものである。処理温度50℃、時間7秒で化成処理し、水道流水7秒で処理剤を十分に除去した後、乾燥機を用いて温度80℃、時間3分で、皮膜処理したアルミニウム板表面の水分を蒸発させた。
実施例及び比較例の性能結果を図2(表2)に示す。
【0028】
<試験及び性能評価方法>
次に示す試験を実施し、評価基準に従い判定を行った。
(1)付着量
蛍光X線分光分析装置(XRF)で、クロム及びジルコニウム付着量(mg/m2 )を判定した。
(2)クロム溶出試験
供試片の表面処理面積が0.2m2 /Lになるように脱イオン水に72時間浸漬し、クロム溶出率を測定した。浸漬試験後の溶出クロム量はプラズマ発光分析装置(ICP)で定量した。クロム溶出率(%)は次式により算出した。
クロム溶出率(%)=試験片から溶出した面積(m2 )当りのクロム量/試験前のクロム付着量×100
【0029】
評価基準
◎:クロム溶出率1%未満
○:クロム溶出率1%以上5%未満
△:クロム溶出率5%以上10%未満
×:クロム溶出率10%以上
【0030】
(3)耐食性
塩化噴霧試験(JIS Z2371)により、表面処理板の1000時間後の白錆発生率(%)を外観観察した。
【0031】
評価基準
◎:白錆発生率5%未満
○:白錆発生率5%以上10%未満
△:白錆発生率10%以上25%未満
×:白錆発生率25%以上
【0032】
(4)塗膜密着性
実施例1〜6及び比較例1〜8の条件で表面処理したアルミニウム板上に、所定の上塗り塗料を塗装し、200℃で5分間の焼き付けを行った。塗料は、アルミ缶内面やアルミニウムキャップ内面用として一般的に用いられている、アクリル−エポキシ系を使用した。次に、塗装板に1mm角幅の100マス基盤目をカッターナイフで付与し、50℃の脱イオン水に72時間浸漬した。塗装板を冷風乾燥した後、テープ剥離試験を実施し、残存している基盤目数で評価した。
【0033】
評価基準
◎:98%以上残存
○:95%以上98%未満
△:90%以上95%未満
×:90%未満
【0034】
表2の皮膜性能評価試験結果から明らかなように、本発明の塗布型表面処理剤を用いた実施例1〜8は、耐食性、クロム溶出性、密着性とも全て優れていた。
一方、本発明の範囲外の表面処理剤を用いた比較例1〜8は、耐食性、クロム溶出性、密着性のいずれかが劣っていた。
【0035】
【発明の効果】
本発明の塗布型表面処理剤は、従来技術の有する問題点を解決するためのものであり、アルミニウム又はアルミニウム合金表面に適用することにより、耐食性、耐クロム溶出性、且つ上塗り塗膜の密着性に優れるアルミニウム材料を提供することができる。また、幅広い分野での用途展開が可能であることから実用上での効果が大きいことに加え、塗布型処理であるため配水処理が必要なく、環境保全の面でも極めて有効と言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 表面処理剤組成及び配合比を示す図表(表1)である。
【図2】 表面処理条件及び被膜性能を示す図表(表2)である。
Claims (4)
- アルミニウム又はアルミニウム合金材の塗布型クロメート表面処理剤において、全クロムイオン(6価クロムイオン+3価とクロムイオン)1〜100g/Lと、リン酸イオンと、ジルコニウムフッ素イオンと、さらに、必要によりシリカ粒子、及び水酸基またはカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を骨格に有する有機化合物とからなり、3価クロムイオン/全クロムイオンの重量比が0.4〜0.8であり、かつ金属換算での重量比が、リン/クロム=0.13〜1.00及びジルコニウム/クロム=0.5〜2.5であることを特徴とし、ジルコニウム−クロム複合皮膜を形成するアルミニウム又はアルミニウム合金材の塗布型クロメート表面処理剤。
- アルミニウム又はアルミニウム合金材の塗布型クロメート表面処理剤において、全クロムイオン(6価クロムイオン+3価とクロムイオン)1〜100g/Lと、リン酸イオンと、ジルコニウムフッ素イオンと、さらに、シリカ粒子、及び水酸基またはカルボニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を骨格に有する有機化合物とからなり、3価クロムイオン/全クロムイオンの重量比が0.4〜0.8であり、かつ金属換算での重量比が、リン/クロム=0.13〜1.00及びジルコニウム/クロム=0.5〜2.5であり、前記シリカ粒子の含有量が0.5〜 200g/Lであることを特徴とし、ジルコニウム−クロム複合皮膜を形成するアルミニウム又はアルミニウム合金材の塗布型クロメート表面処理剤。
- 前記シリカ粒子/全クロムイオンの重量比が0.5 〜2.0である請求項2記載のアルミニウム又はアルミニウム合金材の塗布型クロメート表面処理剤。
- 請求項1から3までの何れか1項記載の塗布型クロメート表面処理剤をアルミニウム又はアルミニウム合金材の表面に、クロム換算で3 〜100mg/m2 塗布後、60〜 260℃に加熱乾燥することを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金材の表面処理方法。
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