JP3639954B2 - 緩衝式防護柵とその上部躯体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の走行方向に沿って路面に連続して設置される防護柵に関し、より詳しくは、上下に二分せる防護柵によって車両衝突時の衝撃力を吸収して緩和する緩衝式防護柵とその上部躯体に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、道路の路側や中央分離帯には防護柵を敷設し、車両が路側を越えて道路外に逸脱したり、中央分離帯を越えて対向車線に突入することを防止している。
従来、上記目的で敷設される剛性防護柵(主に、コンクリート製)は、端面形状において、下部両側を下方漸開状の緩やかな傾斜面に形成し、該緩やかな傾斜面に連設せる上部両側を急傾斜面になすとともに、その長さを長尺化してなる所謂ニュージャージー型(NJ型)やフロリダ型(F型)といったものがあり、かかる剛性防護柵は、地盤面に設けられた基礎コンクリートと一体化して敷設されている。
このような従来の防護柵にあっては、剛性の壁体が地盤面から一体的に起立することとなるから、該防護柵に車両が衝突した際には衝撃力が衝突点に集中荷重として作用する。
従って、衝撃力が非常に大きくなり、車両の破損が著しく、又、人命も危ぶまれるとともに、車両やコンクリートの破片が車道上に飛散し、他の車両の交通を阻害して二次事故を引き起こすという問題点を有していた。
【0003】
そこで、このような不都合を解消するものとして、実公平5−10013号公報には、コンクリート壁高欄を地表部に設置される下部コンクリート壁体と、該下部コンクリート壁体の頂部に重ねられる上部コンクリート壁体とに分離し、両壁体との間に均一の厚みを呈するクッション材がその対向面の全面にわたって設けられるとともに、対向面の中央部に下部及び上部コンクリート壁体を連結する金属部材が設けられてなるものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のコンクリート壁高欄にあっては、下部コンクリート壁体と上部コンクリート壁体との間に均一厚みをなすクッション材が対向面の全面にわたって施されてなるが、該クッション材が車両衝突時の衝撃を受けて傾倒する上部コンクリート壁体を効果的に受承する部位は、コンクリート壁体の幅方向の端部付近のみであって、その余幅方向の中央部付近に位置するクッション材が有効に作用しない。
また、幅方向の中央部で両壁体を連結する構造から、上部コンクリート壁体の傾倒時には、その端部側程対向面間の離隔距離が大きくなるにも拘らず、前記の如き均一厚みに形成されたクッション材では、端部における変形度合いが不足して車両衝突による衝撃力を吸収仕切れず、上部コンクリート壁体が傾倒しすぎて下部コンクリート壁体と当接し、延いては転倒するという恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記の如き従来の問題点に鑑みてなされたもので、緩衝体を具備する剛性の防護柵にあって、該緩衝体及び防護柵を構成する上、下部躯体の形態を適正化することで、車両衝突時の衝撃力の緩和能力に優れて衝突車両の損傷並びにドライバーの負傷を軽微に止どめるとともに、衝突車両退避後の原状復帰能力に富む安全性が高い緩衝式防護柵とその上部躯体を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、本発明の請求項1記載の緩衝式防護柵1は、上部躯体2と下部躯体3とからなり、車両走行側に位置する上、下部躯体2、3の側壁を対車壁面17となして路面に設置される防護柵において、それ自体がゴムや廃加硫ゴムチップをバインダーにより結合した再生ゴム配合物、ウレタン、ナイロン、更にその他の弾力性を有する合成樹脂を素材とすることで全体が弾性体からなる上部躯体2がその全体が緩衝体をなすクッション材4″として下部躯体3上に直接設けられ、車両走行方向にわたり帯状に固着又は締結されてなることを特徴とするものである。
かかる構成からなる緩衝式防護柵1にあっては、下部躯体3上に直接固着又は締結されてなる上部躯体2自体が、上記素材からなって緩衝体としてのクッション材4″をなし全体が弾力性を有するから、車両衝突時の衝撃力が上部躯体2の対車壁面17に作用すると、該上部躯体2は下部躯体3との付根部から上位が弾性変形を起こして弓状に湾曲することで効果的に衝撃力を吸収、緩和するとともに、該湾曲変形時には側壁方向中央から車両衝突側の断面が伸び、又、これとは反対側の半分の断面が圧縮されているので、衝撃力退避後には、かかる伸び変形を引き戻そうとする引張力及び圧縮変形を押し戻そうとする反発力が夫々生じ、クッション材4″全体が側壁方向へ揺れ動くバネ的作用を奏して上部躯体2を素早く原状に復帰させることができる。
又、かかる上部躯体2は、全体が緩衝体をなすべく弾性体から構成され車両走行方向にわたり帯状を呈することで、特に衝撃力の吸収作用に富み、上記作用に加えて車両走行方向で平面視弓形に湾曲変形することで衝突車両や搭乗者が受けるダメージを更に少なくすることができる。
【0007】
本発明の緩衝式防護柵1は、請求項2記載の如く、請求項1記載の緩衝式防護柵1において下部躯体3上に直接設けられたクッション材4″をなす上部躯体2が、下部躯体3の界面3aに設けられた連結部材7a又は下部躯体3を通し基礎コンクリート11と連結する連結部材7c又は下部躯体3自体のうち少なくとも一に固着又は締結されてなるものである。
かかる構成からなる緩衝式防護柵1にあっては、クッション材4″をなす上部躯体2とその下位に位置する部材との一体性が向上するものであり、連結部材7aを採用したものは、連結部材7aの弾性及び靭性力によりクッション材4″による衝撃力の吸収、緩和並びにクッション材4″(上部躯体2)の原状復帰作用を助勢し、且つ極度な衝撃力に対しても上部躯体2が下部躯体3上で移動や転倒を起こすことがない。
又、連結部材7cを採用したものは、基礎コンクリート11から上位に至る連結部材7cが必然的に長くなり、前記弾性及び靭性力による助勢能力が一層高まって緩衝式防護柵1全体を安全な構造となす。
更に、締結による構成を採用したものは、前記一体性の向上に加えて、上部躯体2を下部躯体3とは分割して別途設置できるから、緩衝式防護柵1がプレハブ化して施工が簡略化されるとともに、万一上部躯体2が損傷した際に交換が行えるという有益性を有する。
【0008】
本発明の請求項3記載の緩衝式防護柵用の上部躯体2は、下部躯体3上の長さ方向にわたって帯状に固着又は連結され防護柵を構成する上部躯体2であり、該上部躯体2が、その側壁を下部躯体3の側壁と連結して対車壁面17を形成するとともに、その全体が緩衝体としてのクッション材4″をなすべく、それ自体がゴムや廃加硫ゴムチップをバインダーにより結合した再生ゴム配合物、ウレタン、ナイロン、更にその他の弾力性を有する合成樹脂を素材とすることで全体が弾性体から形成され、前記下部躯体3の界面3aに設けられた凹部3b及び/又は凸部3cと固定状態で嵌合すべく、前記上部躯体2の界面2aに凸部2c及び/又は凹部2bが設けられてなることを特徴とするものである。
かかる構成からなる上部躯体2は、その全体が下部躯体3の長さ方向で緩衝体をなすべく上記素材からなる弾力性を有する帯状のクッション材4″により形成されてなるから、それ自体が衝撃力の吸収、緩和能力に優れ、下部躯体3上において衝撃力を受けても側壁方向へ揺れ動くバネ的作用、並びに車両走行方向で平面視弓形に湾曲変形する作用を奏して、衝突車両や上部躯体2自体の損傷並びに搭乗者への影響を軽微に止どめることができる。
【0009】
又、下部躯体3の界面3aに設けられた凹部3b及び/又は凸部3cと固定状態で嵌合すべく、クッション材4″をなす上部躯体2の界面2aに凸部2c及び/又は凹部2bが設けられてなるから、かかる上部躯体2にあっては、界面2a、3aに設けられた凹、凸部が固定状態で嵌合して下部躯体3上に連結され、下部躯体3との一体性が向上し、衝撃力に対する離脱防止効果を発揮するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
1は、図1(イ)に示す如く、本発明の第一実施形態に係る緩衝式防護柵であり、以下、該緩衝式防護柵1の長さ方向(同図における奥行き方向)を道路方向、又、両側面間にわたる方向(同図における左右方向)を側壁方向という。
前記緩衝式防護柵1は、剛性体(主に、コンクリート製)からなる下部躯体3と、弾性体からなる上部躯体2とから構成され、上、下部躯体2、3の側壁方向に位置する両側面を対車壁面17となして車両の走行方向(道路方向)に沿い、帯状に敷設される。
更に詳しくは、下部躯体3は、その上面をなす水平な界面3aの両側に位置する対車壁面17が下方漸開状の緩やかな傾斜面に形成され、該傾斜面にアンカーボルト埋設孔9が側壁方向に対をなして穿設されてなり、かかるアンカーボルト埋設孔9に基礎コンクリート11から立設せるアンカーボルト10を装填するとともに、モルタル等の固着材12を充填することで、基礎コンクリート11上に下部躯体3が連結されてなる。
而して、上記下部躯体3の界面3a上には、それ自体がゴムや廃加硫ゴムチップをバインダーにより結合した再生ゴム配合物、ウレタン、ナイロン、更にその他の弾力性を有する合成樹脂を素材とすることで全体が弾力性を有するとともに、その側壁方向の対車壁面17を少許上方で漸縮する急傾斜面となした上部躯体2が緩衝体をなすクッション材4″として道路方向にわたり帯状に、且つ直接的に固着されてなるものである。
かかる緩衝式防護柵1の対車壁面17に衝撃力Fが左側から作用すると、全体が緩衝体としてのクッション材4″をなす上部躯体2は、図1(ロ)に示すように、下部躯体3との付根部から上位全体が弾性変形を起こして右側へ弓状に湾曲することで衝撃力Fを効果的に吸収、緩和する。
この時、クッション材4″としての上部躯体2にあっては、側壁方向の中央から車両衝突側(左側)の断面に伸び変形が生じ、又、これとは反対側(右側)の半分の断面に圧縮変形が生じて、かかる伸び変形を引き戻そうとする引張力Pt及び圧縮変形を押し戻そうとする反発力Paがその内部に発生するため、それ以上の過度な傾倒を阻止するとともに、衝撃力Fの退避後には全体が側壁方向へ揺れ動くバネ的作用を奏して上部躯体2を素早く原状に復帰させることが可能となる。
更に、上記上部躯体2は、全体にクッション性を有してなるから、従来の剛性壁体に比較して衝撃力の吸収、緩和能力が極めて高く、又、衝撃力に対して車両走行方向で平面視弓形に湾曲変形する作用も奏して衝突車両や搭乗者に対する衝撃力の影響が軽微になるという利点がある。
【0011】
図2乃至図6において、前記第一実施形態に係る緩衝式防護柵の他実施形態について説明する。
先ず、図2(イ)及び(ロ)に示すように、当該緩衝式防護柵1は、その下部躯体3の界面3aが凸状の屈曲面に形成され、該界面3a上に固着されて全体が緩衝体をなすクッション材4″としての上部躯体2が複合構造をなすものであり、更に詳しくは、クッション材4″の界面2aは、前記界面3aの屈曲面に添うべく凹状の屈曲面に形成されてなるが、その直上を界面2aと上下対称状の断面略鼓形に区分し、かかる部位を軟質弾性体4″dにより形成するとともに、該部位より上位を硬質弾性体4″eによって一体的に構成されてなるものである。
そして、かかる緩衝式防護柵1の対車壁面17に衝撃力Fが左側から作用すると、同図(ロ)に示すように、上部躯体2の付根部における部位が断面略鼓形で軟質弾性体4″dからなることで、該軟質弾性体4″dが大きく圧縮(右側)又は伸び(左側)変形を起こすとともに、上位の硬質弾性体4″eも全体が弾性変形を起こして右側へ弓状に湾曲する。
即ち、全体がクッション材4″で緩衝体をなす前記第一実施形態に係る上部躯体2の付根部に更に柔軟性が付加されるため、大きな衝撃力Fを吸収、緩和する能力、上部躯体2を早期に原状復帰させる能力、及び衝突車両の損傷や搭乗者の負傷を回避する能力が特に優れた緩衝式防護柵1となすことができる。
【0012】
又、図3(イ)に示す緩衝式防護柵1は、下部躯体3の界面3aに凹部3bが形成され、緩衝体をなすクッション材4″としての上部躯体2の界面2aには凸部2cが形成されるとともに、該凹部3bと凸部2cとが固定状態で凹凸嵌合して両者が固着されてなるため、上、下部躯体2、3の一体性が向上して衝撃力に対する上部躯体2の転倒や離脱を防止することができる。
図3(ロ)及び図4(イ)は、上記緩衝式防護柵1の変形実施例を示し、図3(ロ)に示すものは、クッション材4″として緩衝体をなす上部躯体2の両対車壁面17の上端部に半円形の膨出部13が側壁方向に夫々突設されるとともに、クッション材4″の内部略中央部に鋼棒からなる補強材25がメッシュ状に配されてなるため、該補強材25がクッション材4″全体や、界面2aより突出して界面3aの凹部3bと嵌合する凸部2cの強度を向上せしめるとともに、鋼棒の特性たる弾性及び靭性力により衝撃力の吸収、緩和並びに上部躯体2の原状復帰作用を助勢する。
又、図4(イ)に示すものは、上、下部躯体2、3の界面2a、3aにおける凹凸嵌合が複数の凹部2b、3bと凸部2c、3cによって行われているため、その一体性が更に向上する。
更に、図4(ロ)に示す緩衝式防護柵1は、下部躯体3の界面3aと該界面3aから一体的に立設せる連結部材7aとしての鋼棒に、クッション材4″として緩衝体をなす上部躯体2が夫々直接的に固着されてなるため、上、下部躯体2、3間の連結が更に強固となるとともに、前記鋼棒の特性が奏する作用をも具備させることができる。
尚、図3(ロ)、図4(イ)及び(ロ)に示す緩衝式防護柵1の対車壁面17は、下部躯 体3の緩やかな傾斜面と上部躯体2の急傾斜面及びその上端部の膨出部13が上下に連なるとともに、夫々の屈折部が弧状に連設されてなるため、衝突車両のタイヤが緩やかな傾斜面に乗り上げても衝撃が少なく、又、急傾斜面によってそれ以上の乗り上げを阻止し、緩やかな傾斜面に沿ってタイヤが滑らかに下方へ移動しつつ減速することで車両を原走行路へ復帰させることができる。しかも、前記膨出部13は、衝突車両がバウンド等を起こした際、その乗り越しを阻止するという作用効果を奏するとともに、緩衝式防護柵1の敷設時に吊具の係止部としても活用できるという利点もある。
【0013】
又、図5(イ)及び(ロ)に示す緩衝式防護柵1は、下部躯体3の界面3aから一体的に植設された連結部材7aに、緩衝体をなすクッション材4″としての上部躯体2が別途締結されてなるものであり、より詳しくは、パネル状をなす2枚の上部躯体2が、界面3aの略中央部に立設せる連結部材7aとしての鋼製等からなる板体を側壁方向の両側から挟み込むとともに、複数のボルト10′とナット15により締結されることで、上、下部躯体2、3が一体化されてなる。
【0014】
次に、図6(イ)乃至(ハ)に示す緩衝式防護柵1は、クッション材4″として緩衝体をなす上部躯体2が下部躯体3自体に直接的に締結されてなるものであり、同図(イ)に示すものは、界面2a、3aを上下方向に跨ぐ如く、両対車壁面17に添着せる連結部材7aとしてのプレートが、両対車壁面17に埋設されたナット15にボルト10′をもって締結されてなる。ここで、界面2a、3a間は、凹部2b及び凸部3cの凹凸嵌合によってその一体性が向上せしめられているが、界面2a、3aに凹、凸部を設けることは必須の条件ではない。
又、同図(ロ)に示すものは、界面2a、3aが夫々曲線面に形成され、該曲線面に設けた凹部3bと凸部2cとが凹凸嵌合されるとともに、該凹凸嵌合部を側壁方向へ貫く通孔5に連結部材7aとしてのボルトを挿通してナット15により締結することで、上、下部躯体2、3が一体化されてなる。
更に、同図(ハ)に示すものは、界面2a、3aが夫々屈曲面に形成され、該界面3aの中央部に埋設されたナット15に、上部躯体2の上部より穿設した盲孔6の下端部に設けた通孔5から連結部材7aとしてのボルトを挿通し螺合することで上、下部躯体2、3が連結されてなる。
【0015】
而して、図5及び図6における各緩衝式防護柵1にあっては、その締結を解除すればクッション材4″として緩衝体をなす上部躯体2が下部躯体3上で分離可能であるために、現地における組み立て作業が容易に行えて省力化が図れるとともに、上部躯体2に不測の事態が生じて交換を要する場合にも、その取替えが簡便に行えるという利点がある。
尚、図6(ロ)及び(ハ)に示す界面2a、3aは、夫々曲線面又は屈曲面に形成されてなるため、クッション材4″としての上部躯体2が側壁方向へ傾倒し易くなるという作用効果をも奏するものである。
【0016】
図7は、端面視略L字状でその背後に土壌22を有する緩衝式防護柵の他実施形態を示し、かかる緩衝式防護柵1は、側壁方向の一方の壁面が直面18に形成され、該直面18に保水材23及び/又は断熱材24が添着された下部躯体3上に、全体が弾性体からなり緩衝体をなす上部躯体2がクッション材4″として固着されてなるものである。
ここで、前記上、下部躯体2、3は、その界面2a、3aに設けた凸部2cと凹部3bとが凹凸嵌合することによって連結されるとともに、基礎コンクリート11のアンカーボルト10に下部躯体3がナット15によって締結されてなる。又、直面18側に充填される土壌22の上面は、上部躯体2の上端部より凹陥した位置に設定されてなる。
かかる緩衝式防護柵1にあっては、充填土壌22が直接地盤と連続し、且つ保水材23を設けた場合は、土壌22が適度な含水状態に保たれ、又、断熱材24を設けた場合は、日光や排気ガスを浴びて高温化した下部躯体3からの伝導熱が遮断され、その乾燥が防止されるために、樹木が枯死することなく常に繁茂し、その緑によってドライバーの目の疲れを和らげることができる。
又、前記緩衝体をなすクッション材4″たる上部躯体2の衝撃力吸収、緩和作用に加えて、充填土壌22も上部躯体2に作用する衝撃力を受承して吸収、緩和するとともに、上部躯体2を衝突側へ押し戻すという作用効果を奏するため、二重の緩衝及び原状復帰能力を発揮することとなる。
更に、上部躯体2全体が弾性体からなるため、それ自体が断熱効果を奏して充填土壌22及び植物が被熱することを予防するとともに、クッション材4″に通気性を具備させれば換気作用を奏するから、直面18側で土壌22面が凹陥していても、該所に排気ガス等が滞留することを防止して植生に対する大気環境を保全することができる。
尚、本図においてはその左端部を破断線にて省略記載してなるが、かかる緩衝式防護柵1を左右対称状に使用して中央分離帯を構成してもよく、或いは、その左端部に壁体等の他の構造物を設けて路側にグリーンベルトを構成することもできる。
尚、又、上部躯体2の対車壁面17側上端部に断面弧状等の膨出部13を設けることも可能で、かかる膨出部13を設ければ、車両の排気ガスが対車壁面17の上端で車道側に波返されて樹木への直撃を避けることができ、植物の延命が図れる。
【0017】
図8は、本発明の他実施形態に係る緩衝式防護柵1を示し、該緩衝式防護柵1には道路面Rに敷設された下部躯体3を通し、上部躯体2と基礎コンクリート11とを連結する連結部材7cが設けられてなり、更に詳しくは、緩衝式防護柵1の側壁方向両面が対車壁面17に形成され、下部躯体3の上位には全体がクッション材4″としての上部躯体2が位置してなるとともに、界面2a、3aの中央部から上部躯体2の頂部及び下部躯体3の底面20にわたる小径の通孔5が夫々貫設され、且つ基礎コンクリート11から立設せる連結部材7cとしてのアンカーボルトが長尺化され、前記小径の通孔5内に位置して上、下部躯体2、3を貫通するとともに、上部躯体2の上面でナット15により締結されてなる。
上記緩衝式防護柵1にあっては、上、下部躯体2、3及び基礎コンクリート11が一の連結部材7cにより連結されて全体の一体性が更に向上するとともに、連結部材7cが長尺化されることでその長さに比例して弾性及び靭性力も増大し、衝撃力の吸収、緩和能力及び上部躯体2の原状復帰能力が一層高まり、緩衝式防護柵1全体を安全な構造となすことができる。
【0018】
上記各実施形態における緩衝式防護柵1の基本的な断面形状は一例であり、具体的な形状はこれらに限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内で設計変更可能である。
又、連結部材7a、7c又は補強材25としての鋼棒は、機械的性質たる弾性及び靭性力において優位性を有し、その使用に好適であるが、該連結部材7a、7c又は補強材25にはボルト、鋼板、ワイヤー、ロープ等を使用することもできるもので、その具体的な材質や連結方法は問わない、更に、該連結部材7a、7c、補強材25及びアンカーボルト10の数や位置等も限定されない。
【0019】
【発明の効果】
本発明に係る緩衝式防護柵は、上部躯体と下部躯体とからなり、車両走行側に位置する上、下部躯体の側壁を対車壁面となして路面に設置される防護柵において、それ自体がゴムや廃加硫ゴムチップをバインダーにより結合した再生ゴム配合物、ウレタン、ナイロン、更にその他の弾力性を有する合成樹脂を素材とすることで全体が弾性体からなる上部躯体がその全体が緩衝体をなすクッション材として下部躯体上に直接設けられ、車両走行方向にわたり帯状に固着又は締結されてなるために、上部躯体自体が全体に弾力性を有する緩衝体となり、車両衝突時の衝撃力に対して下部躯体との付根部から上位が弾性変形を起こして弓状に湾曲することで効果的に衝撃力を吸収、緩和し、且つ該湾曲変形時には側壁方向中央から車両衝突側の断面が伸び、又、これとは反対側の半分の断面が圧縮されているので、衝撃力退避後には、かかる伸び変形を引き戻そうとする引張力及び圧縮変形を押し戻そうとする反発力が夫々生じ、クッション材全体が側壁方向へ揺れ動くバネ的作用を奏して上部躯体を素早く原状に復帰させる。
又、上部躯体は、全体が緩衝体としての弾性体で車両走行方向にわたり帯状を呈するため、特に衝撃力の吸収作用に富み、上記作用に加えて車両走行方向で平面視弓形に湾曲変形することで衝突車両や搭乗者が受けるダメージを更に少なくする。
【0020】
又、本発明に係る緩衝式防護柵は、全体がクッション材からなり緩衝体をなす上部躯体が、下部躯体上に直接設けられ、下部躯体の界面に設けられた連結部材又は下部躯体を通し基礎コンクリートと連結する連結部材又は下部躯体自体のうち少なくとも一に固着又は締結されてなるために、クッション材をなす上部躯体とその下位に位置する部材との一体性が向上するとともに、連結部材によるものは、連結部材の弾性及び靭性力によりクッション材による衝撃力の吸収、緩和並びに上部躯体の原状復帰作用が助勢され、且つ極度な衝撃力に対しても上部躯体が下部躯体上で移動や転倒を起こすことがない。
又、連結部材が基礎コンクリートから上位に至るものは、該連結部材が必然的に長くなるので、前記弾性及び靭性力による助勢能力が一層高まって緩衝式防護柵全体が安全な構造となる。
更に、締結によるものは、前記一体性の向上に加えて、上部躯体と下部躯体を分割して別途設置できるために、全体がプレハブ化して施工が簡略化され、且つ万一上部躯体が損傷した際に交換が行えるという有益性を有する。
【0021】
又、本発明に係る緩衝式防護柵用の上部躯体は、下部躯体上の長さ方向にわたって帯状に固着又は連結され、その側壁を下部躯体の側壁と連結して対車壁面を形成するとともに、その全体が緩衝体としてのクッション材をなすべく、それ自体がゴムや廃加硫ゴムチップをバインダーにより結合した再生ゴム配合物、ウレタン、ナイロン、更にその他の弾力性を有する合成樹脂を素材とすることで全体が弾性体から形成されてなるために、その全体が下部躯体の長さ方向で弾力性を有して衝撃力の吸収及び緩和能力に優れるとともに、下部躯体上において側壁方向へ揺れ動くバネ的作用、並びに車両走行方向で平面視弓形に湾曲変形する作用を奏して、衝突車両や上部躯体自体の損傷並びに搭乗者への影響を軽微に止どめる。
【0022】
又、上記上部躯体は、全体がクッション材からなるとともに、下部躯体の界面に設けられた凹部及び/又は凸部と固定状態で嵌合すべく、その界面に凸部及び/又は凹部が設けられてなるために、該界面における凹、凸部の嵌合、連結により下部躯体との一体性が増して、衝撃力に対する離脱防止効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施形態を示す緩衝式防護柵であって、(イ)は敷設断面図、(ロ)は衝突状態を示す一部拡大断面図。
【図2】 本発明の他実施形態に係る緩衝式防護柵であって、(イ)は敷設断面図、(ロ)は衝突状態を示す一部拡大断面図。
【図3】 (イ)及び(ロ)は本発明の他実施形態に係る緩衝式防護柵の断面図、但し(ロ)には斜視図併記。
【図4】 (イ)及び(ロ)は本発明の他実施形態に係る緩衝式防護柵の断面図。
【図5】 本発明の他実施形態に係る緩衝式防護柵を示し、(イ)は下部躯体の斜視図、(ロ)は(イ)に上部躯体を連結した状態の断面図(斜視図併記)。
【図6】 (イ)乃至(ハ)は、本発明の他実施形態に係る緩衝式防護柵の上、下部躯体の締結状態を示す一部断面図。
【図7】 本発明の他実施形態に係る緩衝式防護柵の一部敷設断面図。
【図8】 本発明の他実施形態に係る緩衝式防護柵の敷設断面図。
【符号の説明】
1…緩衝式防護柵、2…上部躯体、2a…界面、2b…凹部、2c…凸部、3…下部躯体、3a…界面、3b…凹部、3c…凸部、4″…クッション材、5…通孔、6…盲孔、7a,7c…連結部材、9…アンカーボルト埋設孔、10…アンカーボルト、11…基礎コンクリート、12…固着材、13…膨出部、15…ナット、17…対車壁面、18…直面、20…底面、22…土壌、23…保水材、24…断熱材、25…補強材、R…道路面
Claims (3)
- 上部躯体(2)と下部躯体(3)とからなり、車両走行側に位置する上、下部躯体(2)、(3)の側壁を対車壁面(17)となして路面に設置される防護柵において、それ自体がゴムや廃加硫ゴムチップをバインダーにより結合した再生ゴム配合物、ウレタン、ナイロン、更にその他の弾力性を有する合成樹脂を素材とすることで全体が弾性体からなる上部躯体(2)がその全体が緩衝体をなすクッション材(4″)として下部躯体(3)上に直接設けられ、車両走行方向にわたり帯状に固着又は締結されてなることを特徴とする緩衝式防護柵。
- 前記クッション材(4″)をなす上部躯体(2)が、下部躯体(3)の界面(3a)に設けられた連結部材(7a)又は下部躯体(3)を通し基礎コンクリート(11)と連結する連結部材(7c)又は下部躯体(3)自体のうち少なくとも一に固着又は締結されてなる請求項1記載の緩衝式防護柵。
- 下部躯体(3)上の長さ方向にわたって帯状に固着又は連結され防護柵を構成する上部躯体(2)であって、該上部躯体(2)が、その側壁を下部躯体(3)の側壁と連結して対車壁面(17)を形成するとともに、その全体が緩衝体としてのクッション材(4″)をなすべく、それ自体がゴムや廃加硫ゴムチップをバインダーにより結合した再生ゴム配合物、ウレタン、ナイロン、更にその他の弾力性を有する合成樹脂を素材とすることで全体が弾性体から形成され、前記下部躯体(3)の界面(3a)に設けられた凹部(3b)及び/又は凸部(3c)と固定状態で嵌合すべく、前記上部躯体(2)の界面(2a)に凸部(2c)及び/又は凹部(2b)が設けられてなることを特徴とする緩衝式防護柵用の上部躯体。
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