JP3639691B2 - ヒドロキシガリウムフタロシアニン、その製造方法、該ヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いた電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた電 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はヒドロキシガリウムフタロシアニン、その製造方法、該ヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いた電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた電子写真装置及びプロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フタロシアニン系顔料は着色用途の他、電子写真感光体、太陽電池、センサー等に用いられる電子材料として注目され、検討されている。
【0003】
また、近年、端末用プリンターとして電子写真技術を応用したプリンターが広く普及してきている。これ等は主としてレーザー光を光源とするレーザービームプリンターであり、その光源としてはコスト、装置の大きさ等の点から半導体レーザーが用いられる。現在、主として用いられている半導体レーザーはその発振波長が790〜820nmと長波長のため、これ等長波長の光に十分な感度を有する電子写真感光体の開発が進められてきた。
【0004】
電子写真感光体の感度は電荷発生材料の種類によって異なり、長波長光に対して感度を有する電荷発生材料として、近年アルミニウムクロロフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、オキシバナジルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニン、オキシチタニウムフタロシアニン等の金属フタロシアニンあるいは無金属フタロシアニン等についての研究が多くなされている。
【0005】
これ等のうち、多くのフタロシアニン化合物では様々な結晶形の存在が知られており、例えば無金属フタロシアニンではα型、β型、γ型、δ型、ε型、x型、τ型等があり、銅フタロシアニンではα型、β型、γ型、ε型、x型等が一般に知られている。フタロシアニン化合物については、例えば特開昭50−38543号公報、特開昭51−108847号公報、特開昭53−37423号公報等に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ヒドロキシガリウムフタロシアニンに関しては、特開平5−263007号公報、特開平6−93203号公報等に数種類の結晶形が開示されているが、これ等のヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いた電子写真感光体は、電子写真プロセスの高速化、あるいは高画質化の観点からみて、感度や繰り返し使用時の電位安定性、更に白色光に対するメモリー等の点で必ずしも満足できるものではない。
【0007】
本発明の目的は、新規な結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンを提供すること、また、長波長の光線に対して極めて高い光感度を有し、繰り返し使用時の電位変動が少ない電子写真感光体を提供すること、また、可視光線を長時間照射した場合でも光に対するメモリーのない電子写真感光体を提供すること、また、該電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶は、CuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°が、7.3°、9.8°、12.3°、16.1°、18.4°、22.0°、23.9°、24.9°、26.1°及び28.1°に強いピークを有し、且つ28.1°のピークが最も強く、また12.3°のピークが9.8°のピークよりも大きいことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明によるヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶の製造方法は、ハロゲン化ガリウムフタロシアニンを処理して含水ヒドロキシガリウムフタロシアニンを得る工程と、前記含水ヒドロキシガリウムフタロシアニンを凍結乾燥して低結晶性ヒドロキシガリウムフタロシアニンとする工程と、前記低結晶性ヒドロキシガリウムフタロシアニンをミリング処理する工程とを有するものである。
【0010】
また、本発明の電子写真感光体は、支持体上に少なくとも感光層を有するもので、前記感光層に上記のヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶を含有するものである。
【0011】
また、本発明の電子写真装置は、上記電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、静電潜像の形成された前記写真感光体をトナーで現像する現像手段とを有するものである。
【0012】
更に、本発明のプロセスカートリッジは、上記電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電部材とを有するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶は、図7に示すようにCuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°が、7.3°、9.8°、12.3°、16.1°、18.4°、22.0°、23.9°、24.9°、26.1°及び28.1°に強いピークを有し、且つ28.1°のピークが最も強く、また12.3°のピークが9.8°のピークよりも大きいもので、以下の構造を有する。
【0014】
【外2】
ただし、X1 、X2 、X3 、X4 はClまたはBrを表わし、n、m、p、kは0〜4の整数である。
【0015】
本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニンは、ブラッグ角2θ±0.2°=28.1°以外にも7.3°や24.9°等にピークを有するが、いずれも28.1°よりも小さい。
【0016】
このヒドロキシガリウムフタロシアニンを電子写真感光体の電荷発生材料として使用することによって、長波長の光に対して高い感度と、優れた耐久性とを有し、しかも光メモリー特性の改善された電子写真感光体を得ることができる。
【0017】
本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶形のX線回折の測定はCuKα線を用い、次の条件で行なったものである。
使用測定機:マック・サイエンス社製、全自動X線回折装置MXP18
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:2deg./min
サンプリング間隔:0.020deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):40deg.
ダイバージェンススリット:0.5deg.
スキャッタリングスリット:0.5deg.
レシービングスリット:0.3deg.
湾曲モノクロメーター使用
【0018】
本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶は、光導電体としての機能に優れ、電子写真感光体以外にも、太陽電池、センサー、スイッチング素子等に適用することができる。
【0019】
本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶は、以下の方法により製造される。
【0020】
クロロガリウムフタロシアニン等のハロゲン化ガリウムフタロシアニンをアシッドペースティング法により処理してペースト状の含水ヒドロキシガリウムフタロシアニンを得る。次に、この含水ヒドロキシガリウムフタロシアニンを凍結乾燥して低結晶性のヒドロキシガリウムフタロシアニンとする。得られた低結晶のヒドロキシガリウムフタロシアニンをアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオアミド、ホルムアミド等のアミド系溶剤を分散剤として用いてミリング処理を行なうことにより本発明の結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンが得られる。ハロゲン化カリウムフタロシアニンは、特開平6−93203号公報に記載されているように色々な方法がある。
【0021】
ここで行なうミリング処理とは、例えばガラスビーズ、スチールビーズ、アルミナボール等の分散メディアと共にサンドミル、ボールミル等のミリング装置を用いて行う処理である。ミリング処理時間は、使用するミリング装置により異なるため、一概には言えないが4〜24時間程度が好ましい。あまり長すぎても本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニンはできない。一番良い方法は1〜3時間おきにサンプルをとりブラッグ角を確認することである。ミリング処理で用いる分散剤の量は、重量基準で低結晶ヒドロキシガリウムフタロシアニンの10〜50倍が好ましい。
【0022】
発明における製造方法の特徴の1つは、含水ヒドロキシガリウムフタロシアニンを凍結乾燥する点にある。凍結乾燥工程がないとブラッグ角(2θ±0.2°)28.1°が最大ピークとならない。凍結乾燥によって、含水ヒドロキシガリウムフタロシアニンに含まれる水を昇華させる。従って、凍結乾燥の条件は水が昇華する条件である。例えば、含水ヒドロキシガリウムフタロシアニンを凍結させて、更に4Torr以下に減圧すれば、その後は室温でも昇華する。
【0023】
本発明においては、金田理化製の凍結乾燥装置KFD−1に真空ポンプを接続したものを凍結乾燥に用いた。この装置では、水のトラップ部の温度を−20〜−110℃の範囲で調整できる。また、使用した真空ポンプは排気量100l/minで、到達真空度は10-4Torrである。
【0024】
ハロゲン化ガリウムフタロシアニンとしては、クロロガリウムフタロシアニンのほかに、臭化ガリウムフタロシアニンやヨウ化ガリウムフタロシアニンが使用できる。
【0025】
次に、本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を電子写真感光体における電荷発生材料として適用する場合を説明する。
【0026】
本発明における電子写真感光体の層構成は、導電性支持体上に電荷発生材料と電荷輸送材料を同時に含有する単一層からなる感光層を有する層構成と、導電性支持体上に電荷発生材料を含有する電荷発生層と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を積層する感光層を有する層構成がある。なお、電荷発生層と電荷輸送層の積層関係は逆であってもよい。
【0027】
導電性支持体としては、導電性を有するものであればよく、アルミニウム、ステンレス等の金属あるいは導電層を設けた金属、プラスチック、紙等が挙げられ、形状としては円筒状またはフィルム状等が挙げられる。
【0028】
導電性支持体と感光層の間にはバリヤー機能と接着機能を持つ下引き層を設けることもできる。下引き層の材料としてはポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ポリアミド、にかわ、ゼラチン等が用いられる。これ等は過当な溶剤に溶解して導電性支持体上に塗布される。その膜厚は0.2〜3.0μmである。
【0029】
単一層からなる感光層を形成する場合、本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の電荷発生材料と電荷輸送材料を過当なバインダー樹脂溶液中に混合して、この混合液を導電性支持体上に塗布乾燥して形成される。
【0030】
積層構造からなる感光層を形成する場合、電荷発生層は、本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を過当なバインダー樹脂溶液と共に分散し、この分散液を塗布乾燥して形成する方法が挙げられるが、蒸着することによって層形成することもできる。
【0031】
電荷輸送層は、主として電荷輸送材料とバインダー樹脂とを溶剤中に溶解させた塗料を塗布乾燥して形成する。電荷輸送材料としては各種のトリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物等が挙げられる。
【0032】
各層に用いるバインダー樹脂としては、例えばポリエステル、アクリル樹脂、ポリビニルカルバゾール、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリサルホン、ポリアリレート、塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、ポリビニルベンザール等の樹脂が用いられる。
【0033】
感光層の塗布方法としては、ディッピング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法等の塗布方法を用いることができる。
【0034】
感光層が単一層の場合、膜厚は5〜40μm、好ましくは10〜30μm、積層構造の場合、電荷発生層の膜厚は0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μm、電荷輸送層の膜厚は5〜40μm、好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0035】
電荷発生材料の含有量は、電荷発生層に対して20〜80重量%、更には30〜70重量%が好ましい。電荷輸送材料の含有量は、電荷輸送層に対して20〜80重量%、更には30〜70重量%が好ましい。
【0036】
感光層が単一層の場合、電荷発生材料の含有量は、感光層に対して3〜30重量%が好ましい。電荷輸送層の含有量は感光層に対して30〜70重量%が好ましい。
【0037】
本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を電荷発生材料として用いる場合、その目的に応じて他の電荷発生材料と混合して用いることもできる。この場合、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの割合は、全電荷発生材料に対して50重量%以上が好ましい。
【0038】
感光層上には、必要に応じて保護層を設けてもよい。保護層はポリビニルブチラール,ポリエステル,ポリカーボネート(ポリカーボネートZ,変性ポリカーボネート等),ナイロン,ポリイミド,ポリアリレート,ポリウレタン,スチレン−ブタジエンコポリマー,スチレン−アクリル酸コポリマー,スチレン−アクリロニトリルコポリマーなどの樹脂を適当な有機溶剤によって溶解し、感光層の上に塗布、乾燥して形成できる。保護層の膜厚は、0.05〜20μmが好ましい。また、保護層中に導電性粒子や紫外線吸収剤などを含ませてもよい。導電性粒子としては、例えば酸化錫粒子等の金属酸化物が好ましい。
【0039】
次に、本発明の電子写真感光体を用いた電子写真装置について説明する。
【0040】
図1において、1は本発明のドラム型感光体であり軸1aを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動する。該感光体1はその回転過程で帯電手段2によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで露光部3にて不図示の像露光手段により光像露光L(スリット露光あるいはレーザービーム走査露光など)を受ける。これにより感光体周面に露光像に対応した静電潜像が順次形成されていく。その静電潜像は、次いで現像手段4でトナー現像され、そのトナー現像像がコロナ転写手段5により不図示の給紙部から感光体1と転写手段5との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された記録材9の面に順次転写されていく。像転写を受けた記録材9は感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けて複写物(コピー)として機外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面はクリーニング手段6にて転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、前露光手段7により除電処理がされて繰り返して像形成に使用される。
【0041】
また、図2に示す装置では、少なくとも感光体1、帯電手段2及び現像手段4を容器20に納めてプロセスカートリッジとし、このプロセスカートリッジを装置本件のレールなどの案内手段12を用いて着脱自在に構成している。クリーニング手段6は容器20内に配置しても配置しなくてもよい。
【0042】
また、図3及び図4に示すように、帯電手段として直接帯電部材10を用い、電圧印加された直接帯電部材10を感光体1に接触させることにより感光体1の帯電を行ってもよい(この帯電方法を、以下直接帯電という)。図3及び図4に示す装置では、感光体1上のトナー像も直接帯電部材23で記録材9に転写される。即ち、電圧印加された直接帯電部材23を記録材9に接触させることにより感光体1上のトナー像を記録材9に転写させる。
【0043】
更に、図4に示す装置では、少なくとも感光体1及び直接帯電部材10を第1の容器21に納めて第1のプロセスカートリッジとし、少なくとも現像手段4を第2の容器22に納めて第2のプロセスカートリッジとし、これら第1のプロセスカートリッジと、第2のプロセスカートリッジとを着脱自在に構成している。クリーニング手段6は容器21内に配置しても配置しなくてもよい。
【0044】
光像露光Lは、電子写真装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を用いる、あるいは、原稿を読み取り信号化に従って、この信号によりレーザービームの走査、発光ダイオードアレイの駆動、または液晶シャッターアレイの駆動などを行うことにより行われる。
【0045】
【実施例】
以下に示す「%」及び「部」は、それぞれ「重量%」及び「重量部」を意味する。
【0046】
実施例1
o−フタロニトリル73g、三塩化ガリウム25g、α−クロロナフタレン400mlを窒素雰囲気下200℃で4時間反応させた後、130℃で生成物をろ過した。得られた生成物をN,N−ジメチルホルムアミドを用いて130℃で1時間分散洗浄した後、ろ過し、メタノールで洗浄後乾燥し、クロロガリウムフタロシアニンを45g得た。得られた結晶の粉末X線回折図を図5に示す。また、このクロロガリウムフタロシアニンの元素分析の結果を以下に示す。
【0047】
元素分析 計算値 実測値
C 62.22 61.78
H 2.61 2.66
N 18.14 18.28
Cl 5.74 6.25
【0048】
得られたクロロガリウムフタロシアニン15gを10℃の濃硫酸450gに溶解させ、氷水2300g中に攪拌下に滴下して再析出させてろ過した。2%アンモニア水で分散洗浄後、イオン交換水で十分洗浄した後、前述した凍結乾燥装置を用いて真空度1mmHgでフリーズドライ(液体窒素で約3分間凍結)して、低結晶性のヒドロキシガリウムフタロシアニンを13g得た。得られた結晶の粉末X線回折図を図6に示す。
【0049】
次に、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン7g、N,N−ジメチルホルムアミド210gを1mmφのガラスビーズ300gと共にサンドミルでミリング処理を室温(22℃)下で5時間行った。この分散液より固形分を取り出し、メタノールで十分に洗浄、乾燥して、本発明の新規な結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン5.6gを得た。得られた結晶の粉末X線回折図を図7に示す。また、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの元素分析の結果を以下に示す。
【0050】
元素分析 計算値 実測値
C 64.14 62.75
H 2.86 2.56
N 18.70 18.31
Cl ― 0.54
【0051】
実施例2
実施例1におけるミリング時間を15時間とした他は、実施例1と同様に処理して、粉末X線回折図が図8に示す結晶形を得た。赤外吸収スペクトルを測定した結果を図9に示す。また、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの元素分析の結果を以下に示す。
【0052】
元素分析 計算値 実測値
C 64.14 62.19
H 2.86 2.70
N 18.70 18.06
Cl ― 0.54
【0053】
比較例1
1,3−ジイミノイソインドリン30g、三塩化ガリウム9.1g、キノリン230gを窒素雰囲気下200℃で3時間反応させた後、生成物をろ過した。得られた生成物をアセトン、メタノールで洗浄後乾燥し、クロロガリウムフタロシアニンを27g得た。得られた結晶の粉末X線回折図は図5と同様であった。
【0054】
得られたクロロガリウムフタロシアニン15gを0℃の濃硫酸300gに溶解させ、5℃の蒸留水2250g中に攪拌下に滴下して再析出させてろ過した。蒸留水、2%アンモニア水で洗浄後、真空乾燥して低結晶性のヒドロキシガリウムフタロシアニンを13g得た。真空乾燥は、乾燥を促進するために約40℃に加熱して行った。得られた結晶の粉末X線回折図を図10に示す。
【0055】
次に、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド15g、1mmφのガラスビーズ30gと共にペイントシェーカー((株)東洋精機製作所製、振動速度750cpm)で10時間ミリング処理を行った。この分散液より固形分を取り出し、メタノールで十分に洗浄、乾燥した。得られた結晶の粉末X線回折図を図11に示す。
【0056】
以下、本発明の結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンを電子写真感光体に適用した例を示す。
【0057】
実施例3
10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した酸化チタン粉体50部、レゾール型フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3,000)0.002部を1mmφガラスビーズを用いたサンドミルで2時間分散して導電層用塗料を調製した。アルミニウムシリンダー(φ30mm×260mm)上に、導電層用塗料を浸漬塗布し、140℃で30分間乾燥させ、膜厚20μmの導電層を形成した。
【0058】
導電層上に6−66−610−12四元系ポリアミド共重合体5部をメタノール70部とブタノール25部を混合溶媒に溶解した溶液を浸漬塗布、乾燥して、膜厚1μmの下引き層を形成した。
【0059】
次に、実施例2で製造した結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン3部とポリビニルブチラール2部をシクロヘキサノン100部に添加し、1mmφガラスビーズを用いたサンドミルで1時間分散し、これにメチルエチルケトン100部を加えて希釈して電荷発生層用塗料を調製した。下引き層上に、この電荷発生層用塗料を浸漬塗布し、90℃で10分間乾燥して、膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0060】
次に、下記構造式の電荷輸送材料10部
【0061】
【外3】
とビスフェノールZ型ポリカーボネート10部をクロロベンゼン60部に溶解し、電荷輸送層用塗料を調製した。電荷発生層上に電荷輸送層用塗料を浸漬塗布し、110℃で1時間乾燥して、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。こうして電子写真感光体を作成した。
【0062】
実施例4
実施例3において用いた電荷発生材料に代えて、実施例1で製造した結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンを電荷発生材料として用いた他は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0063】
比較例2
比較例1で製造した結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンを電荷発生材料として用いた他は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0064】
実施例3、実施例4及び比較例2で作成した電子写真感光体をレーザービームプリンター(商品名LBP−SX、キヤノン(株)製)に設置して、暗部電位が−700Vになるように帯電設定し、これに波長802nmのレーザー光を照射して、−700Vの電位を−150Vまで下げるのに必要な光量を測定し、感度とした。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
次に、実施例3、実施例4及び比較例2で作成した電子写真感光体を暗部電位−700V、明部電位−150Vに設定した状態で連続4,000枚の通紙耐久試験を行って、耐久後の暗部電位と明部電位を測定した。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
次に、実施例3、実施例4及び比較例2で作成した電子写真感光体と同じ電子写真感光体をそれぞれ一本用意し、それぞれの感光体の一部分に3,000ルックスの白色光を30分間照射した後、前記レーザービームプリンターに設置し、白色光を照射しない部分の暗部電位を−700Vに設定した場合の照射部分との差を測定した。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
実施例5
実施例3における電荷発生層のバインダー樹脂として用いたポリビニルブチラールに代えて、ビスフェノールZ型ポリカーボネートを用いた他は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0071】
実施例6
実施例3で用いた電荷輸送材料を下記構造式の化合物
【0072】
【外4】
に代えた他は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0073】
実施例7
実施例3で用いた電荷輸送材料を下記構造式の化合物
【0074】
【外5】
に代えた他は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0075】
実施例5、実施例6及び実施例7で作成した電子写真感光体を実施例3で作成した電子写真感光体と同様にしてレーザービームプリンター(前出)で暗部電位を−700Vから−150Vに変化させるのに必要な光量を測定した。結果を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
【発明の効果】
本発明のヒドロキシガリウムフタロシアニンは、新規の結晶形を有するもので、このヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いた電子写真感光体は、長波長の光線に対して高い感度を示し、帯電能、繰り返し特性、光メモリー特性も良好であり、この電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ並びに電子写真装置においてその効果は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の電子写真装置の他の例を示す図である。
【図3】本発明の電子写真装置の他の例を示す図である。
【図4】本発明の電子写真装置の他の例を示す図である。
【図5】実施例1で製造したクロロガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図。
【図6】実施例1で製造した低結晶性のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図。
【図7】実施例1で製造した本発明の結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図。
【図8】実施例2で製造した本発明の結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図。
【図9】実施例2で製造した本発明の結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンの赤外吸収スペクトルを示す図。
【図10】比較例1で製造した低結晶性のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図。
【図11】比較例1で製造したヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 帯電手段
4 現像手段
5 転写手段
6 クリーニング手段
7 前露光手段
9 記録材
10 直接帯電部材
Claims (9)
- CuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°が、7.3°、9.8°、12.3°、16.1°、18.4°、22.0°、23.9°、24.9°、26.1°及び28.1°に強いピークを有し、且つ28.1°のピークが最も強く、また12.3°のピークが9.8°のピークよりも大きいことを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶。
- ハロゲン化ガリウムフタロシアニンを処理して含水ヒドロキシガリウムフタロシアニンを得る工程と、前記含水ヒドロキシガリウムフタロシアニンを凍結乾燥して低結晶性ヒドロキシガリウムフタロシアニンとする工程と、前記低結晶性ヒドロキシガリウムフタロシアニンをミリング処理する工程とを有することを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶の製造方法。
- 支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、前記感光層に請求項1記載のヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記感光層が電荷発生層と電荷輸送輸送層との積層体で、前記電荷発生層に前記ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶を含有する請求項3記載の電子写真感光体。
- 前記電荷発生層のバインダーが、ポリビニルブチラール又はビスフェノールZ型ポリカーボネートである請求項4記載の電子写真感光体。
- 請求項3記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体に対し像露光を行ない静電潜像を形成する像露光手段と、静電潜像の形成された前記電子写真感光体をトナーで現像する現像手段とを有することを特徴とする電子写真装置。
- 請求項3記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電部材とを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 前記電子写真感光体に形成された静電潜像を現像する現像手段を有する請求項8記載のプロセスカートリッジ。
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