JP3637959B2 - 電子写真用乾式トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用乾式トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用乾式トナーとしては、通常、結着樹脂中に離型剤、着色剤、荷電制御剤等を分散させた後、微粉砕手段によりトナーサイズに粉砕、分級してトナー粒子とされ、現像方式により一成分トナー粒子、またはトナー粒子およびキャリア粒子からなる二成分トナーとされる。最近、電子写真にあっては、一層の高速化、低温定着化が求められ、トナー粒子を構成する結着樹脂の低温溶融特性化が必須である。この要請に対応するものとして結着樹脂中に離型剤粒子を分散させた内部分散型、オイルレス定着用トナー粒子がある。しかし、離型剤粒子を分散させることにより結着樹脂溶融時の内部凝集力の低下が生じ、これにより発生する定着用ローラへの付着等のオフセット防止を図る必要がある。そのため、オフセット防止のために離型剤をさらに多く含有させざるを得ないのが現状であるが、必要以上の離型剤を配合するとカラートナーとした際の透明性が低下するという問題が生じる。
【0003】
従来、例えば特公平8−12451号公報にはトナー粒子形状として、熱処理によりワックス状物質でカプセル化された連続シエル層を有するトナー粒子とし、摩擦生成物の少ないトナー粒子とすることが開示され、トナー粒子の熱気流下での処理条件としてトナー粒子表面がワックス状物質でカプセル化されるものが開示されているが、トナー粒子表面のワックス状物質により、感光体等のプロセス部材がフィルミングにより汚染されることが想定されるものであり、また、トナー粒子中での含有ワックス量が多く、カラートナーとした際のトナーの透明性に問題がある。
【0004】
また、特公平8−12453号公報には、懸濁重合芯粒子表面に微小粒子を水中で水溶性重合開始剤を使用して付着させたトナーであって、微小粒子のガラス転移温度や軟化点を特定のものとし、また、離型剤を芯粒子、特に微小粒子に添加することにより耐熱性、耐オフセット性、透光性に優れ、フルカラーに適したトナーを提供できることを開示するが、微小粒子に離型剤を添加して複合化するだけでは離型剤粒子の一部はトナー粒子表面に存在することとなり、感光体へのフィルミングや現像器内の部材の汚染が発生し、画像異常や部材の早期交換といった問題が依然として残る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、現像器や感光体等のプロセス部材へのトナー粒子のフィルミングにより汚染することがなく、また、定着時には耐オフセット性に優れると共に耐久性、透明性に優れ、特にカラートナーとして適した電子写真用乾式トナーの提供を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子写真用乾式トナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とからなる着色樹脂粒子と、離型剤粒子表面に熱可塑性樹脂被覆層を有するカプセル粒子との混合物からなり、着色樹脂粒子における結着樹脂のフロー軟化温度が100〜150℃、カプセル粒子における離型剤の軟化温度が40〜130℃、また、カプセル粒子における熱可塑性樹脂皮膜のフロー軟化温度が100〜150℃であることを特徴とする。
【0007】
また、上記のカプセル粒子における熱可塑性樹脂被覆層が、非水溶性ビニルモノマーを使用した乳化重合により離型剤粒子表面に形成されるものであることを特徴とする。
【0008】
また、上記の着色樹脂粒子の体積平均粒径が3〜10μmであって、かつ、カプセル粒子の体積平均粒径が0.1〜10μmであり、該カプセル粒子における熱可塑性樹脂被覆層の膜厚が0.02〜2μmであることを特徴とする。
【0009】
また、上記の着色樹脂粒子とカプセル粒子の混合比(重量割合)は99:1〜70:30であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の電子写真用乾式トナーにおける着色樹脂粒子としては、少なくとも結着樹脂、着色剤、また、荷電制御剤等からなる。結着樹脂としては、トナーの定着性を可能とする公知のトナー用結着物質の使用が可能である。例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン樹脂でスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、シリコーン変成エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変成マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等が単独又は混合して使用できる。特に本発明においては、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0012】
本発明にあっては、結着樹脂としては、ガラス転移温度が50〜75℃、フロー軟化温度が100〜150℃であり、特に、低温定着性トナーとする場合には、ガラス転移温度が55〜65℃、フロー軟化温度100〜120℃の樹脂とするとよく、また、オイルレス定着用トナーとする場合には、熱溶融時の凝集性の観点からは50%流出点における溶融粘度が1×103 〜1×107 Pa・sのものとするとよい。
【0013】
着色樹脂粒子に含有される着色剤について説明する。着色剤としては、以下に示すような、有機ないし無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。すなわち、黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、バンザーイエローG、バンザーイエロー10G、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどがある。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどがある。赤色系顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などがある。体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。
【0014】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、より好ましくは2〜10重量部使用することが望ましい。20重量部より多いとトナーの定着性が低下し、一方、1重量部より少ないと所望の画像濃度が得られない。
【0015】
また、透光性カラートナーとして用いる場合は、着色剤としては、以下に示すような、各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などがある。赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などがある。また、青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などがある。
【0016】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100重量部に対して、5〜15重量部、好ましくは6〜12重量部使用することが望ましい。15重量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、5重量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
【0017】
次に、荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されず有機あるいは無機の各種のものが用いられ得る。
【0018】
正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンベースEX(オリエント化学工業(株)製)、第4級アンモニウム塩P−51(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシン ボントロンN−01(オリエント化学工業(株)製)、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3:Colr Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I.NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ社製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト社製)、さらにアルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料などが挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましい。
【0019】
また、負荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY(オリエント化学工業(株)製)、ボントロンS−22(オリエント化学工業(株)製)、サリチル酸金属錯体E−81(オリエント化学工業(株)製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土谷化学工業(株)製)、ボントロンS−34(オリエント化学工業(株)製)、ニグロシンSO(オリエント化学工業(株)製)、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ社製)、クロモーゲンシュバルツETOO(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン社製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましい。
【0020】
これらの荷電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができるが、結着樹脂に添加する荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。その他、着色樹脂粒子には磁性粒子、分散剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0021】
着色樹脂粒子は、製造方法の項において後述するように、結着樹脂中に着色剤、荷電制御剤等の内添剤を混練・溶融により分散させた後、微粉砕手段により粉砕・分級して得られるもの、また、重合法により作製されたものでもよく、平均粒径は、3μm〜10μm、好ましくは5μm〜8μmとされる。また、得られる着色樹脂粒子の円形度は、0.90〜1.00程度とするとよい。
【0022】
次に、カプセル粒子について説明する。カプセル粒子は、離型剤粒子の表面を熱可塑性樹脂層で被覆した構造を有する。離型剤としては、ワックス、シリコーンオイル、滑剤等が例示されるが、ワックスとしてはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11またはCH3(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸、そのエステル脂肪酸金属塩、脂肪酸アシド、脂肪酸ビスアシド等を例示し得る。異なる低軟化点化合物を混合して用いても良い。具体的には、パラフィンワックス(日本石油製)、パラフィンワックス(日本精蝋製)、マイクロワックス(日本石油製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋製)、PE−130(ヘキスト製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。特に、ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、あるいは酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。
【0023】
ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst Wax PE520、Hoechst Wax PE130、Hoechst Wax PE190(ヘキスト社製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業社製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wax PED121、Hoechst Wax PED153、Hoechst Wax PED521、Hoechst Wax PED522、同Ceridust 3620 、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同 Ceridust 3715 (ヘキスト社製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業社製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechist Wachs PP230(ヘキスト社製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、ピスコールTS−200(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスなどが例示される。
【0024】
また、脂肪酸金属塩を挙げられ、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等が例示される。
【0025】
その他、滑剤として、脂肪酸アミド類、脂肪酸エステル類、エステル系ワックス等が例示される。
【0026】
上記各離型剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。
【0027】
離型剤の軟化温度は、40〜130℃、好ましくは50〜120℃を有するものである。軟化温度が40℃未満の場合は、保存性と耐久性の問題があり、軟化点が130℃を越える場合は定着温度又は定着圧を下げる効果が少ない。
【0028】
離型剤粒子表面は熱可塑性樹脂により被膜形成されカプセル粒子とされるが、熱可塑性樹脂皮膜は、離型剤粒子表面にモノマーを使用した乳化重合法により形成するとよい。乳化重合法は、公知の乳化重合法を採用でき、例えば水性媒体中に離型剤を投入し、50℃〜120℃、好ましくは70℃〜100℃に加熱しながら、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機等の攪拌機を用いて離型剤を溶融状態で微分散した後、この分散液中に界面活性剤と水溶性重合開始剤を添加して溶解する。次いで、該水性媒体中に難溶性のモノマーを添加し、加熱しながら攪拌すると、水相中に僅かに溶解したモノマーが離型剤粒子を取り囲みながら重合し熱可塑性樹脂皮膜を形成するものである。
【0029】
離型剤粒子の微細な分散の為に、界面活性剤は、重合性単量体100重量部あたり0.001〜0.1重量部の割合で使用される。界面活性剤としてはドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が例示される。
【0030】
また、水溶性重合開始剤としては、フリーラジカル開始剤である過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−アミルハイドロパーオキサイド等のアルキルハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、ペルエステル、ペルカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、2,2′−アゾビス(2−アミノジプロパン)、2,2′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ開始剤が挙げられる。フリーラジカル開始剤の使用量は重合性単量体あたり0.03〜1重量%、好ましくは0.05〜0.8重量%、更に好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0031】
このカプセル粒子の調製時において、例えば水性媒体中に界面活性剤や水溶性重合開始剤の他に、その他所望の各種添加剤、例えば荷電制御剤等を溶解しておき、乳化重合によりこれら各種添加剤を取り込んだ熱可塑性樹脂皮膜を形成することもできる。
【0032】
熱可塑性樹脂皮膜を構成するモノマーとしてはビニル系モノマーが例示され、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のスチレンおよびその誘導体が挙げられ、その中でもスチレンが最も好ましい。他のビニル系モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル名どのハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピレン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルアクリルアミドなどのような(メタ)アクリル酸誘導体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物、ビニルナフタリン類を挙げることができ、また、これらのビニル系モノマーは単独で用いても、あるいは複数組合せて用いてもよい。
【0033】
またビニル系モノマーとしては、含窒素極性官能基を有するモノマーあるいはフッ素を有するモノマー成分を、単独であるいは上記したモノマーとの組み合わせで使用することもできる。このような極性基を有する単量体から熱可塑性樹脂皮膜を構成すると、この熱可塑性樹脂皮膜自体が帯電制御の働きをするために、荷電制御剤を着色樹脂粒子中に含ませるより少ない量で所望の帯電性を付与することが可能となる。
【0034】
含窒素極性官能基は正荷電制御に有効であり、含窒素極性官能基を有するモノマーとしては、一般式
CH2 =C(R1 )−COX−Q−N(R2 )(R3 )
(式中、R1 は水素またはメチル基、R2 およびR3 は水素または炭素数1〜20のアルキル基、Xは酸素原子または窒素原子、Qはアルキレン基またはアリレン基である。)で表わされるアミノ(メタ)アクリル系モノマーがある。
【0035】
アミノ(メタ)アクリル系モノマーの代表例としては、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−スタアリルアミノベンジル(メタ)アクリレートなどが例示される。さらに、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド等が例示される。
【0036】
フッ素原子は負荷電制御に有効であり、フッ素含有モノマーとしては特に制限はないが、例えば2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロアミルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく例示される。このほかトリフルオロクロルエチレン、フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン、四フッ化エチレン、トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレンなどの使用が可能である。なお、熱可塑性樹脂皮膜はこれらのビニル系モノマーを単独で用いて得られる重合体、あるいは複数組み合わせて形成される共重合体であってもよい。
【0037】
カプセル粒子は、上述のごとく、離型剤粒子表面に熱可塑性樹脂膜を乳化重合法により形成されるが、また、別法として、ドライ環境下で離型剤粒子と熱可塑性樹脂粒子とを機械的に精密混合した後、熱処理して形成してもよい。
【0038】
熱可塑性樹脂粒子としては、例えばソープフリー乳化重合法により製造されるものである。ソープフリー乳化重合法は上述した乳化重合系から離型剤と界面活性剤とを除いた処方で、水相で発生した開始剤ラジカルが水相に僅かに溶けているモノマーを結合してゆきやがて不溶化し粒子核を形成する。この重合法で製造される粒子は一般に乳化重合より粒径が大きくて、粒径分布が狭い。ソープフリー重合法は粒径が0.1μm〜1μmの範囲で制御でき、また粒径分布がシャープな粒子が達成される。熱可塑性樹脂粒子の調製に用いる単量体としては、上述したビニル系モノマーを挙げることができる。
【0039】
熱可塑性樹脂粒子の大きさは、平均粒径が0.05μm〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μm、より好ましくは0.15〜0.4μmのものを使用する。熱可塑性樹脂粒子の平均粒径が0.05μmより小さいと耐熱性付与の観点から、熱可塑性樹脂粒子層の厚みが薄いため、十分にその目的を達成することはできない。平均粒径が1μmより大きいときは、熱可塑性樹脂粒子を離型剤粒子の表面に均一に付着させることが困難となり、表面被覆率が低下し、トナークリーニング性、耐久性等が十分に改良されず、耐熱性付与を目的とする場合、離型剤粒子の影響を受け易くなる。さらに熱可塑性樹脂粒子が大きいと、その粒子を着色樹脂粒子表面に強固に付着固定させることが困難となる。また、熱可塑性樹脂粒子の粒径は、離型剤粒子の平均粒径の1/5以下のものとするとよい。
【0040】
また、熱可塑性樹脂粒子は、離型剤粒子100重量部に対して5〜25重量部、好ましくは10〜20重量部の割合で使用されて被膜形成され、樹脂被覆層の膜厚は、0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.6μm、より好ましくは0.15〜0.35μmとされる。
【0041】
離型剤粒子と熱可塑性樹脂粒子とを機械的に精密混合するには、離型剤粒子表面に熱可塑性樹脂粒子を所定量、機械的衝撃力または乾式メカノケミカル法により均一固定化するものである。機械的衝撃力は高速気流中、ローターとステーターの剪断力及び粒子同士及び機壁との衝突によって与えられるものであり、例えばハイブリダイザーNHS−1(奈良機械製作所製)、コスモスシステム(川崎重工業社製)等を使用することができる。また、乾式メカノケミカル法は、粒子同士および粒子が装置壁部材により摩擦、圧縮、剪断力を受けることにより発生する熱を利用することにより、熱可塑性樹脂粒子を離型剤粒子表面に固定するもので、例えばメカノフュージョン装置(ホソカワミクロン社製)、メカノミル(岡田精工社製)を用いることができ、さらに、熱可塑性樹脂粒子を付着させた離型剤粒子において、熱可塑性樹脂粒子を相互に固着・融着させて熱可塑性樹脂被覆層とするには、熱風球形化装置「サーフュージングシステムSFS−3型」(日本ニューマチック工業(株))で熱処理するとよい。
【0042】
このように、乳化重合またはドライ環境下での離型剤粒子表面への熱可塑性樹脂粒子の付着により形成される熱可塑性樹脂皮膜のフロー軟化温度(Tm1)は、100〜150℃、好ましくは110〜140℃とするとよい。
【0043】
また、カプセル粒子の体積平均粒径は0.1〜10μm、好ましくは0.5〜8μmであり、また、熱可塑性樹脂皮膜の片膜厚は0.02〜2μm、好ましくは0.1〜1.2μmである。
【0044】
カプセル粒子皮膜を形成する熱可塑性樹脂における軟化温度(Tf1)と離型剤粒子の軟化温度(Tm2)とはTf1>Tm2 の関係のものとするとよく、また、Tf1と着色樹脂粒子における結着樹脂のフロー軟化温度(Tf3)とはTf1≧Tf3の関係のものとするとよい。また、カプセル粒子の粒径(L1 )と着色樹脂粒子の粒径(L2 )とは、L1 ≦L2 の関係のものとするとよい。
【0045】
本発明の電子写真用乾式トナーは、着色樹脂粒子:カプセル粒子(重量割合)=99〜70:1〜30、好ましくは98〜80:2〜20で混合されるとよい。また、電子写真用乾式トナー全体としての離型剤の含有量は1重量%〜15重量%、好ましくは3重量%〜12重量%とするとよい。
【0046】
また、本発明の電子写真用乾式トナーには、その流動性を向上させる為に、着色樹脂粒子及びカプセル粒子の混合物に流動性向上剤を外添してもよい。流動性向上剤としては、有機系微粉末または無機系微粉末を用いることができる。例えばフツ素系樹脂粉末、すなわちフツ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、アクリル樹脂系微粉末など;又は脂肪酸金属塩、すなわちステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛など;又は金属酸化物、すなわち酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など;又は微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、それらシリカにシランカツプリング剤、チタンカツプリング剤、シリコンオイルなどにより表面処理をほどこした処理シリカなどがあり、これらは1種或いは2種以上の混合物で用いられる。
【0047】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒユームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
【0048】
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
又、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いる事によってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得る事も可能であり、それらも包含する。その粒径は平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内である事が望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。
【0049】
本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。日本アエロジル社製の「AEROSIL 130」、以下、同 200、 300、 380、 TT600、MOX170、 MOX80、 COK84等が挙げられ、また、CABOT Co.社製の「Ca−O−SiL M-5 」、以下、同 MS−7、MS−75、HS−5、EH−5等が挙げられ、また、WACKER−CHEMIE GMBH社製の「Wacker HDK N 20 V15 」、以下、同 N20E、 T30、 T40、ダウコーニングCo.社の「D−C Fine Silica」、Fransil社の「Fransol」等が挙げられる。
【0050】
さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としてはシリカ微粉体と反応、あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の上記気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0051】
その様な有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、ρ−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカピタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基をが有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0052】
その処理シリカ微粉体の粒径としては0.003〜0.1μm、0.005〜0.05の範囲のものを使用することが好ましい。市販品としては、タラノツクス−500(タルコ社)、AEROSIL R−972(日本アエロジル社)などがある。
【0053】
流動性向上剤の添加量としては、着色樹脂粒子及びカプセル粒子の混合物100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では流動性向上に効果はなく、5重量部を超えるとカブリや文字のにじみ、機内飛散を助長する。
【0054】
本発明の電子写真用乾式トナーの調製方法は下記の各工程よりなる。
(1)着色樹脂粒子の調製に際しての原料の混合工程
結着樹脂と着色剤、荷電制御剤等の添加剤を所定量ヘンシェル20B(三井鉱山(株))に投入し、均一混合する。その際、結着樹脂と着色剤からなるマスターバッチを調製しておき、該マスターバッチと希釈用の結着樹脂と荷電制御剤等の添加剤を均一混合してもよい。マスターバッチの配合割合は、結着樹脂:着色樹脂=90:10〜50:50(重量部)であり、好ましくは80:20〜60:40(重量部)てあり、着色樹脂粒子作製にあたっての配合例としては、結着樹脂100重量部に対して、マスターバッチ着色剤20〜60重量部、好ましくは30〜50重量部、荷電制御剤5重量部以下、好ましくは3重量部以下であり、その他分散剤等の添加剤を適量内添してもよい。
【0055】
(2)結着樹脂中への添加剤の分散固定化工程
均一に混合した後、二軸混練押出機(テクノベル(株)製)を使用して溶融混練し、結着樹脂中への各添加剤を分散固定化する。溶融混練手段としては、他に「TEM−37」(東芝(株))、「PCM−30」(池貝(株))等の加熱・加圧ニーダーが挙げられる。
【0056】
(3)粉砕工程
混練物の粒度調整をした後、ジェット粉砕機「200AFG」(ホソカワミクロン(株))、「IDS−2」(日本ニューマティック(株))を使用し、ジェットエアーによる衝突粉砕により、小粒径化を図り、1〜8μmの粒径のものとする。粉砕手段としては他に、機械式粉砕機ターボミル(川崎重工(株))、スーパーローター(日清エンジニアリング(株))等が挙げられる。
【0057】
(4)分級工程
微粉を除去し、粒径分布のシャープ化を目的として、風力およびローター回転による篩い分けを風力分級装置「100ATP」(ホソカワミクロン(株))、「DSX−2」(日本ニューマティック(株))、「エルボージェット」(日鉄鉱業(株))を使用して行なう。なお、得られた分級着色樹脂粒子の円形度は0.90〜1.00である。
【0058】
(5)カプセル粒子との混合工程
このようにして得られた着色樹脂粒子は、離型剤粒子を内包したカプセル粒子とV型粉粒体混合機、ヘンシェルミキサー、万能混合攪拌機等の混合手段で均一に混合される。
【0059】
(6) 外添処理工程
着色樹脂粒子とカプセル粒子との混合物と流動化剤を、所定量ヘンシェル20B(三井鉱山(株))に投入し均一混合し、電子写真用乾式トナーとする。
【0060】
本発明の電子写真用乾式トナーは、着色樹脂粒子中には離型剤を含有させないので、粉砕法による着色樹脂粒子の製造に際して粉砕機や分級機および輸送配管の内壁に対する付着性が著しく改善され、また分級精度(歩留まり)を顕著に改善することができ、また、定着時には着色樹脂粒子の内部に離型剤が存在しないのでトナーの透明性や彩度に優れるものができる。
【0061】
また、離型剤を熱可塑性樹脂皮膜により被覆しカプセル化することにより、離型剤が直接、現像器や感光体と接触しないので部材の汚染(フィルミング)がなく、また、保存に際しても高耐久性が得られるものであり、また、定着時にあってはカプセルが破壊され瞬時に離型剤が滲みだすので、紙などの媒体の定着ローラーへの巻き付き性を防止でき、また、着色樹脂粒子による定着像表面を離型剤が覆うので、定着像の平滑性が改善され、コスリに対する強度も良好なものとできる。
【0062】
なお、本明細書で、単に「粒径」という場合「平均粒径」を意味し、コールターカウンターTA-II 型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで粒径別相対重量分布を測定することにより求める。
【0063】
結着樹脂におけるフロー軟化点は高架式フローテスター(島津製作所(株)製「CFT−500D)により測定した50%流出点における温度を意味する。
【0064】
離型剤における軟化温度(融点)は、セイコー電子(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値をもって軟化温度(融点)とする。
【0065】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。
(実施例1)
(着色樹脂粒子の調製)
・結着樹脂{スチレン・アクリル酸ブチル共重合体(ガラス転移温度(Tg):56℃、フロー軟化点(Tf):115℃、重量平均分子量5×104 、数平均分子量4×103 } ・・100重量部
・着色用マスターバッチ{上記結着樹脂70重量部と顔料(パーマネントレッドF2R、C.I.12310)30重量部との混合物} ・・ 40重量部
・負帯電性荷電制御剤{ Oxo-Gluco compond(「Copy Charge NCA cp2243、クラリアント(株)製)} ・・ 1重量部。
【0066】
上記組成をヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))を使用し、5分間、2800rpmで均一混合した後、二軸混練押出機(池貝化成社製PCM−30)で溶融混練し、樹脂中に添加剤を分散固定した。混練物を圧延冷却後、フェザーミルで粗粉砕し、2mmメッシュパスとした。
【0067】
次いでジェット粉砕機{200APG(ホソカワミクロン社製)}を使用し微粉砕した後、風力分級装置{100ATP(ホソカワミクロン社製)}を使用して平均粒径7.1μmの着色樹脂粒子を得た。
【0068】
(カプセル粒子の調製)
攪拌機、加熱装置を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1000gと離型剤{ポリエチレンワックス、軟化温度98℃、クラリアント(株)製「 Hoe-Wax PE890」}100gとを投入し、100℃に加熱しつつ、攪拌速度12,000rpmで0.5時間攪拌し、ワックスを微分散させた。次いで、窒素置換しながら過硫酸カリウム10gとドデシルベンゼン硫酸ナトリウム50gを投入して溶解させた後、スチレン85gとブチルアクリレート15gを投入し、攪拌速度10,000rpmで10時間重合させ、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体膜を離型剤粒子表面に形成した。重合完結後、カプセル粒子をろ過、水洗し、約80℃で減圧乾燥し、軟凝集したカプセル粒子をほぐし、解砕することにより、離型剤粒子を内包した真球状のカプセル粒子を得た。
【0069】
得られたカプセル粒子の粒径は7.0μm、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体膜の片膜厚は、透過型電子顕微鏡(TEM)像観察の方法により測定した結果0.8μmであった。また、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体膜のフロー軟化点(Tf)を測定した結果115℃であった。
【0070】
(電子写真用乾式トナーの調製)
上記で得た着色樹脂粒子88重量部とカプセル粒子12重量部とを混合(混合物における離型剤含有量は6重量%)した後、着色樹脂粒子とカプセル粒子の合計量100重量部に対して、表面をヘキサメチルジシラザンで処理したシリカ微粒子(粒径10nm、キャボット社製「キャボシールTG810G」)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))を使用し、2分間、2800rpmで均一混合して外添処理し、本発明の電子写真用乾式トナーを得た。
【0071】
得られた電子写真用乾式トナーについて、保存性、透明性(HAZE値)at150℃、定着性{非オフセット領域(℃)、消しゴム強度(%)、折れ剥がれ強度(%)}、耐久性(部材へのフィルミング)、さらに着色樹脂粒子調製時における分級歩留まり率(%)を下記の方法により評価した。
【0072】
(保存性の評価)
ガラス容器にトナー20gを入れ、55℃に設定したオーブン中に24時間保存した後、容器をオーブンから取り出し、トナーのケーキング状態を目視観察する。
【0073】
(透明性の評価)
OHPシート上の定着像についてHAZEメーター{(日本電色工業(株)ヘーズメーターMODEL1001DP}にてHAZE値を測定する。
【0074】
(定着試験)
一成分現像方式を採用した市販のレーザープリンタ(IBM4019)を用いて未定着の画像サンプルを採取し、コニカ(株)製「レーザープリンタ(商品名:KL2010)」の定着機(背面加熱方式で定着ローラーがPFAチューブを採用、ニップ通過時間60msec)にて定着試験を行った。。
【0075】
(定着性の評価)
・非オフセット領域
定着ローラーの表面温度を変えて、未定着画像サンプルを通過させ、定着後の画像サンプルを目視で観察し、オフセットの有無を評価する。
・消しゴム強度
砂消しゴムにて画像部分を擦り、擦る前後の画像濃度をマクベス反射濃度計で測定し、残存比率を百分率で表すことにより評価。
・折れ剥がれ強度
画像部を4つ折りし、木綿布で擦り、擦る前後の画像濃度をマクベス反射濃度計で測定し、残存比率を百分率で表すことにより評価。
【0076】
(耐久性)
一成分現像方式を採用した市販のレーザープリンタ(IBM4019)の現像ユニットにトナーをセットし、感光体上に現像されないように調整した状態で現像器のみ連続駆動した。現像ローラー表面に筋状の融着(フィルミング)が認められた時点を耐久時間とした。
【0077】
(分級歩留まりの評価)
上記の着色樹脂粒子の調製において、カプセル粒子を混合しないで、上記と同様にシリコンオイル処理シリカ微粉末1.2重量部を外添し、非磁性一成分系現像剤を得た。この着色樹脂粒子の調製においてジェット粉砕機{200APG(ホソカワミクロン社製)}を使用して得られる微粉砕粉の重量をWp、風力分級装置{100ATP(ホソカワミクロン社製)}を使用して得られる重量をWcとしたとき、分級歩留まりYを下記式により求める。
分級歩留まりY(%)=(Wc/Wp)×100。
【0078】
得られた電子写真用乾式トナーは、保存性に関してはケーキングは認められず、また、HAZE値は27、また、非オフセット領域(℃)は120℃〜200℃、消しゴム強度96.8%、折れ剥がれ強度82.6%、また、耐久性に関しては4時間以上フィルミングは発生しないものであった。また、着色樹脂粒子の分級歩留まり率は78%であった。
【0079】
(実施例2)
実施例1における着色樹脂粒子組成における結着樹脂を、芳香族ジカルボン酸とアルキレンエーテル化ビスフェノールAとの重縮合ポリエステルと該重縮合ポリエステルの多価金属化合物による一部架橋物の50:50(重量比)混合物{Tg:61℃、フロー軟化点(Tf):126℃、酸価5、水酸基価30、三洋化成工業(株)製)に代えた以外は同様にして、電子写真用乾式トナーを調製した。
【0080】
得られた電子写真用乾式トナーは、保存性に関してはケーキングは認められず、また、HAZE値は25、また、非オフセット領域(℃)は100℃〜200℃、消しゴム強度95.2%、折れ剥がれ強度84.7%、また、耐久性に関しては 時間以上フィルミングは発生しないものであった。また、着色樹脂粒子の分級歩留まり率は76%であった。
【0081】
(比較例1)
(電子写真用乾式トナーの調製)
・結着樹脂{スチレン・アクリル酸ブチル共重合体(ガラス転移温度(Tg):56℃、フロー軟化点(Tf):115℃、重量平均分子量5×104 、数平均分子量4×103 } ・・100重量部
・着色用マスターバッチ{上記結着樹脂70重量部と顔料(パーマネントレッドF2R、C.I.12310)30重量部との混合物} ・・ 40重量部
・負帯電性荷電制御剤{ Oxo-Gluco compond(「Copy Charge NCA cp2243、クラリアント(株)製)} ・・ 1重量部
・離型剤(ポリエチレンワックス、軟化温度110℃、クラリアント(株)製「 Hoe-Wax PE810」) ・・ 6重量部。
【0082】
上記組成をヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))を使用し、5分間、2800rpmで均一混合した後、二軸混練押出機(池貝化成社製PCM−30)で溶融混練し、樹脂中に添加剤を分散固定した。混練物を圧延冷却後、フェザーミルで粗粉砕し、2mmメッシュパスとした。
【0083】
次いで、ジェット粉砕機{200APG(ホソカワミクロン社製)}を使用し微粉砕した後、風力分級装置{100ATP(ホソカワミクロン社製)}を使用して平均粒径7.2μmの着色樹脂粒子(離型剤含有量6重量%)とし、その後、実施例1同様に外添処理し、電子写真用乾式トナーとした。
【0084】
得られた電子写真用乾式トナーは、保存性に関してはケーキングが認められるものであり、また、HAZE値は45、また、非オフセット領域(℃)は135℃〜185℃、消しゴム強度92.4%、折れ剥がれ強度74.6%、また、耐久性に関しては0.5時間でフィルミングが発生した。また、着色樹脂粒子における分級歩留まり率は63%であった。
【0085】
【発明の効果】
本発明の電子写真用乾式トナーは、現像器や感光体等のプロセス部材へのトナー粒子のフィルミングにより汚染することがなく、また、定着時には耐オフセット性に優れると共に耐久性、透明性に優れ、特にカラートナーとして適する。
Claims (3)
- 少なくとも結着樹脂と着色剤とからなる着色樹脂粒子と、離型剤粒子表面に熱可塑性樹脂被覆層を有するカプセル粒子との混合物からなり、着色樹脂粒子における結着樹脂のフロー軟化温度が100〜150℃、カプセル粒子における離型剤の軟化温度が40〜130℃、また、カプセル粒子における熱可塑性樹脂皮膜のフロー軟化温度が100〜150℃であることを特徴とする電子写真用乾式トナー。
- カプセル粒子における熱可塑性樹脂被覆層が、非水溶性ビニルモノマーを使用した乳化重合により離型剤粒子表面に形成されるものであることを特徴とする請求項1記載の電子写真用乾式トナー。
- 着色樹脂粒子とカプセル粒子の混合比(重量割合)が、99:1〜70:30であることを特徴とする請求項1記載の電子写真用乾式トナー。
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