JP3635643B2 - 廃液の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液からのフッ素除去に関する発明であり、特に、珪フッ素化合物を含有する工場廃液からフッ素除去する廃液の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ホウフッ素化合物を含有する廃液は、半田メッキ工場、有機合成のアルキル化、異性化、又は縮合・重合反応の際の触媒として使用する化学工場、その他、ホウフッ素化合物を製造する化学工場などで発生する。これらの廃液をそのまま一般の河川に排水することは、環境衛生上の観点から好ましくなく、水質汚濁防止法でもフッ素分は8mg/リットル以下、ホウ素分は10mg/リットル以下にして排水するように排水基準が改定され、都道府県によっては更に厳しい基準が制定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ホウフッ素化合物は、化学的に安定な化合物であり、通常のフッ素或いはホウ素除去処理法としての石灰との反応では、殆ど除去することができない。また、ホウフッ素化合物を含有する廃液を処理する技術としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4などに記載の方法が提案されているが、これらにはそれぞれ次のような欠点がある。
【0004】
【特許文献1】
特公昭52−32747号公報
【特許文献2】
特公昭54−5628号公報
【特許文献3】
特公昭54−18064号公報
【特許文献4】
特公昭58−34193号公報
【0005】
先ず、特許文献1に記載の方法は、ホウフッ素化合物を含有する廃液に、カルシウム化合物を加え、フッ素を水に難溶性のフッ化カルシウム(CaF)として固定して分離する方法である。しかし、この場合には廃液を処理する際の条件が、ゲージ圧1kg/cm以上に加圧しつつ、100℃以上の高温にする必要があり、操作が煩雑である。
【0006】
次に特許文献2に記載の方法は、ホウフッ素化合物を含有する廃液に水酸化アルミニウムを添加し、20〜100℃の範囲で反応させ、ホウフッ素化合物をホウ素とアルミニウムフッ素化物とに分解し、次に、この液にカルシウム化合物を添加しアルミニウムフッ素化物をフッ化カルシウム(CaF)として固定して分離する方法である。しかし、この方法では、処理できる廃液中のフッ素化合物の濃度が最大5000ppmであるとの制約がある。
【0007】
また、特許文献3に記載の方法は、ホウフッ素化合物を含有する廃液に、硫酸アルミニウム、臭化アルミニウム、アルミニウムの塩化物、又は第二鉄塩の一種又は二種以上を添加して、ホウフッ素化合物を分解し、次いで、この廃液にカルシウム化合物の1つである水酸化カルシウムを添加して難溶性フッ化物として固液分離し、水溶性アルミニウム化合物として硫酸を添加してフロックを形成させてフッ素を分離除去する方法である。しかし、この方法によって常温で処理するには処理時間が長くなり、処理時間を短縮するには狭い範囲での温度制御(50±2℃)が必要である。また、処理できる廃液中のフッ素化合物の濃度が最大500ppm以下であるという制約もある。
【0008】
更に、特公昭58−34193号公報に記載の方法は、ホウフッ素化合物を含有する廃液に、金属アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、またはミョウバンの内の少なくとも一種以上を分解剤として使用し、この廃液にカルシウム塩を添加又は添加しないで、生成沈殿物を分離除去する方法である。しかし、この方法によるときは、ホウフッ素化合物を分解させるのに長時間を要し、かつ、処理できる廃液中のフッ素化合物の濃度が最大7500ppm以下であるという制約がある。
【0009】
その他、上記の各方法の他に、ホウフッ素化合物に硝酸カリウムを添加して水に難溶性のホウフッ化カリウム塩(KBF)として、固定・回収する方法も定款されているが、処理後の廃液中に硝酸イオンが多量に存在し、固定・回収操作に加えて、処理後の廃液に別途中和処理を施さないと、排水基準を満たさないという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、煩雑な操作が必要とされず、また処理対象物の濃度にも特段の制約がない工場廃液の簡易な処理方法を提供することを課題とする。即ち、本発明は工場廃液からフッ素除去、および、当該廃液にホウ素が含まれている場合にはフッ素とホウ素除去を可能とする工場廃液の処理方法を課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明では、珪フッ素化合物を含有する廃液に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム及び硫酸カリウムのうち一種以上(以下、「アルカリ金属化合物」)を添加することで生ずる固形分を固液分離手段で除去することを特徴とするものである。これにより、フッ素を除去することができる。ホウフッ素化合物が含有されている廃液からの固形分分離回収では、廃液からホウ素及びフッ素を除去することができる。
【0012】
本発明の特徴であるアルカリ金属化合物を添加し固形物を除去する処理は、廃液中のホウフッ素化合物の濃度が低濃度か高濃度であるかを選ばず、フッ素およびホウ素の除去を可能とするものである。同様に、珪フッ素化合物の濃度の高低を選ばず、フッ素の除去を可能とするものである。たとえ、廃液におけるホウフッ素化合物および珪フッ素化合物の濃度が飽和濃度であっても、本発明によればフッ素およびホウ素を除去できる。
【0013】
また、高濃度ホウフッ素化合物廃液からのフッ素除去処理に不向きであるカルシウム塩の添加によるフッ素除去処理を行う場合には、これに先だってアルカリ金属化合物を添加することで生ずる固形物を除去し、その後、カルシウム塩添加によるフッ素除去処理を行うことによってフッ素分を確実に除去することができる。
【0014】
一方、カルシウム塩を添加してのフッ素除去処理後にアルカリ金属化合物を添加して生成する固形物を除去することにより、ホウ素および残存するフッ素を除去することができる。
【0015】
さらに、アルカリ金属化合物を添加することで生成する固形分除去後に残存するホウ素は、アルミニウム金属、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム等のアルミニウム金属またはアルミニウム化合物のうち1種以上を添加(以下、単に「アルミニウム金属等を添加」することで生ずる固形分を分離除去することで容易に除去される。この処理を、上述のアルカリ金属化合物またはカルシウム塩の添加による処理前または後に行うかは、廃液に含まれるホウフッ素化合物および珪フッ素化合物濃度に応じて選択される。すなわち、ホウフッ素化合物および珪フッ素化合物が高濃度である廃液の場合、後述する多量のスラッジ発生を防止するため、アルカリ金属化合物添加処理を優先することになる。
【0016】
廃液へアルカリ金属化合物を添加しての固形分生成をアルカリ性条件下行った場合、スラッジ発生量は酸性条件下で固形分生成させるよりも5〜10倍の発生量となる。そのため、廃液へアルカリ金属添加を添加して固形分を生成させるには、酸性条件下で行うのが好ましい。通常、ホウフッ素化合物や珪フッ素化合物を含む廃液は酸性の廃液であるので、本発明によれば、廃液からのフッ素、ホウ素除去処理に先立ってなんら廃液のpH調整を行うことなく当該除去処理に入ることができる。
【0017】
廃液に添加するアルカリ金属化合物は、前記の塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム及び硫酸カリウムのうち一種以上であるが、好ましくは、塩化カリウム、硫酸カリウムであり、さらに好ましくは、塩化カリウムである。
【0018】
例えば、アルカリ金属化合物である塩化カリウムを添加する場合、理論的にはホウフッ素化合物と珪フッ素化合物の総モル数と1対1の割合で反応して固形分を生成するが、固形分生成を完全にならしめるため、ホウフッ素化合物と珪フッ素化合物の総モル数よりもアルカリ金属化合物を過剰に添加することが好ましい。また、固形分生成温度は、10〜40℃の常温で十分にホウ素及びフッ素含有固形分を反応生成させることができる。
【0019】
本発明において、アルカリ金属化合物を添加して得られる固形分には、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化ナトリウム、ホウフッ化カリウム、ホウフッ化ナトリウムその他のケイフッ化アルカリ金属塩の何れか一種以上が含まれている。固形分を分離回収するには、適宜な耐酸性の固液分離手段が使用されるが、好ましくは、耐酸フィルタープレスが使用される。なお、本発明は工場廃液中のフッ素及びホウ素の除去を主目的としたものであり、ホウフッ素化合物および珪フッ素化合物のいずれか一方又は双方を含有する廃液からのフッ素及びホウ素の除去である限り、工場廃液の処理に用途が限定されるものではない。
【0020】
本発明は、好ましくは、特徴であるアルカリ金属添加による生成固形分をする手段の後、カルシウム塩を添加して固形分を生成し、これを除去する処理を更に設けることである。より好ましくは、当該処理の後に残存するフッ素を除去するため、塩化カルシウムを添加して攪拌後、更に好ましくは、消石灰を添加して攪拌を更に設けることである。これらの操作によって生ずるフッ化カルシウムを固液分離することで、廃液に残存するフッ素をさらに除去できる。
【0021】
さらに、アルミニウム金属等を添加してホウフッ化物を分解し、消石灰を添加する処理を設けることが好ましい。この操作によって生ずるホウ素含有固形分を固液分離すれば、廃液に残存するホウ素をさらに除去することができる。
【0022】
アルミニウム金属等を添加する量は、廃液に含有されるホウフッ素化合物のモル数よりも多く添加するのが好ましい。さらに好ましくは、10倍以上のモル数を添加するのが良い。このアルミニウム金属等を添加することによって、ホウフッ素化合物が分解される。分解反応は廃液の凝固点以上であれば進行するが、温度が上昇すれば分解反応が促進される関係上、温度が高いほど好ましいことになる。一方、常温である10〜40℃の分解反応温度においても、ホウフッ素化合物を十分に分解させることができる。
【0023】
分解に要する時間は、廃液中のホウフッ素化合物の濃度に応じて調整されるべきものであるが、好ましくは1時間以上で、より好ましくは3時間以上である。
【0024】
アルミニウム金属等を添加することによるホウフッ素化合物の分解反応は、アルカリ性条件下で行い、当該分解処理後、消石灰を添加することで生ずる固形分を固液分離除去することで、廃液からのホウ素除去ができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0026】
【実施例1】
ガラス処理工場で使用されたホウフッ素化合物及び珪フッ素化合物を含有する廃液100mLに塩化カリウムを10重量%添加し、常温で一時間攪拌した後、廃液中に生じた固形分を濾過により固液分離した。
【0027】
この廃液処理前後のフッ素およびホウ素濃度を測定した結果、フッ素は74000mg/Lから28100mg/Lに減少し、ホウ素は1570mg/Lから122mg/Lに減少していた。なお、ケイ素は12600mg/Lから2800mg/Lに減少していた。
【0028】
ここで、フッ素濃度分析はイオンクロマト法で測定し、ホウ素及びケイ素濃度分析はICP発光分光分析法によって測定した。この点は、以下の実施例の場合も同様である。
【0029】
【実施例2】
図1に示すように、ガラス処理工場で使用されたホウフッ素化合物及び珪フッ素化合物を含有する廃液13リットルに、塩化カリウムを1.3Kg添加して常温で一時間攪拌した後(第一工程)、フィルタープレスで濾過することによって生じた固形分を固液分離した(第二工程)。
【0030】
第二工程の濾液に35重量%塩化カルシウム水廃液を0.32L添加して30分攪拌後、20重量%消石灰水廃液を0.13L添加して攪拌を一時間行った。その後、苛性ソーダを添加してpHを5に調整し、30分攪拌した(第三工程)。
次に、フィルタープレスにより濾過して廃液に生じている固形分を固液分離した(第四工程)。
【0031】
その後、第四工程の濾液に50重量%硫酸アルミニウム水溶液を0.27L添加して3時間攪拌した。次いで、pHが12になるように消石灰を添加して30分攪拌した(第五工程)。次に、再度フィルタープレスにより濾過して廃液に生じている固形分を固液分離した(第六工程)。
【0032】
これらの廃液処理前後のフッ素およびホウ素濃度を測定した結果、フッ素が120000ppmから7ppmまで減少し、ホウ素は3000ppmから8ppmに減少していた。
【0033】
水質汚濁防止法では、フッ素分は8ppm以下、ホウ素は10ppm以下であることを要するが、上記の結果は、この水質汚濁防止法の基準を満たしていることが確認された。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ホウフッ素化合物を含む廃液からフッ素及びホウ素を除去することができ、珪フッ素化合物を含む廃液からフッ素を除去することができる。また、ホウフッ素化合物および珪フッ素化合物の濃度に特段の制約なく廃液の処理を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例2を説明する図面である。

Claims (7)

  1. 酸性状態の珪フッ素化合物を含有する廃液に、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム及び硫酸カリウムのうち一種以上を添加することで生ずる固形分を固液分離手段によって除去する処理を有することを特徴とする前記廃液の処理方法。
  2. 請求項1に記載の処理の後、カルシウム塩を添加して固形分を生成し、これを固液分離除去する処理を有する廃液の処理方法。
  3. 前記カルシウム塩の添加は、塩化カルシウムの添加後に消石灰の添加を行うものである請求項2に記載の廃液の処理方法。
  4. 前記廃液は、ホウフッ素化合物を含有している請求項1〜3のいずれかに記載の廃液の処理方法。
  5. 前記廃液は、ホウフッ素化合物を含有しており、請求項1に記載の処理の後、アルミニウム金属またはアルミニウム化合物のうち一種以上を添加し、次いで消石灰を添加して生じている固形分を分離する処理を有する廃液の処理方法。
  6. 請求項5に記載の処理は、請求項2又は3に記載の処理の後に行われるものである廃液の処理方法。
  7. ホウフッ素化合物および珪フッ素化合物のいずれか一種以上を含有する廃液から、請求項1〜6のいずれかに記載の方法を使用してケイフッ化カリウム、ケイフッ化ナトリウム、ホウフッ化カリウムおよびホウフッ化ナトリウム固形分の何れか一種以上を分離する方法。
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