JP3632513B2 - 感光性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性樹脂組成物に関し、特に、印刷用レリーフ版に好適な感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
感光性樹脂組成物は、各種印刷用のレリーフ版やサンドブラスト用レリーフマスク、凸版、凹版、平版、装飾用図柄、フォトレジスト、ディスプレー、ネームプレート、光接着剤、光硬化性塗料、紫外線硬化インク、固定化酵素膜などの分野に広く用いられている。
【0003】
この種の感光性樹脂組成物は、一般に、合成高分子化合物(以下、充填ポリマーとも称する)、光重合性不飽和化合物、および光重合開始剤を基本成分として構成されている。基本成分のうちでも、充填ポリマーの特性が、光照射される前および光照射により硬化した後の感光性樹脂組成物の物性に大きな影響を与える。具体的には、感光性樹脂組成物の露光前(光照射前)の形態保持性や、露光後の光硬化部の堅さや耐磨耗性などに充填ポリマーの特性が大きく影響する。
【0004】
感光性樹脂組成物は、活性光線による露光により、露光された部分は光硬化し、未露光部分は適当な溶剤で溶解除去されることにより現像される。近年、取り扱い性やコストの点から溶剤に水を使用する現像が主流になってきている。感光性樹脂組成物の未露光部分が水によって除去されるには、充填ポリマーが水溶性か、若しくは水に分散可能な高い親水性を示すことが必要である。反面、露光により光硬化した部分は実用時に水分の吸収量が少ない方が好ましいので、光硬化後はある程度の耐水性が必要となる。
【0005】
特公昭49−43565号公報、特開昭49−76602号公報、特公昭53−2082号公報および特公昭54−22229号公報をはじめとして、水による現像が可能な感光性樹脂組成物は提案されている。しかし、これらは、現像に長時間を要したり、光硬化後の耐水性が不充分である等、未だ問題を含んでいる。また、近年、感光性樹脂組成物で作製した印刷用のレリーフ版における印刷画像の一層の高精細化および耐刷性能の一層の向上が求められているが、かかる要求を満足し得る水現像が可能な感光性樹脂組成物は得られていないのが実状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、露光時の光散乱が極めて少なく、水により短時間で現像できると共に光硬化後は充分な耐水性と機械的強度を示し、特に、高精細画像を長期にわたって安定に形成できる印刷用レリーフ版の作成を可能とする感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、ω−アミノ酸および/またはラクタムと、ピペラジン環を有するジアミンのジカルボン酸塩と、シクロヘキサン環を有するジアミンのジカルボン酸塩とを、特定の重量比で重縮合して得られたポリアミド樹脂を充填ポリマーに用いることにより、感光性樹脂組成物へ活性光線が少ない散乱で深く浸透し、しかも、短時間の水現像で未露光部を速やかに除去でき、さらに光硬化部は極めて強靱に硬化し得るという知見を得、該知見に基づいて本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の特徴を有している。
【0008】
(1)下記一般式(I)で示される単位40〜60重量%と、下記一般式(II)で示される単位30〜50重量%と、下記一般式(III)で示される単位5〜15重量%とからなるポリアミド、光重合可能な不飽和結合を有する単量体および光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化4】
(式中、R1 は炭素数が5以上のアルキレン基)
【化5】
(式中、R2 は炭素数が2〜10の炭化水素基、R3 は炭素数が1〜4のアルキレン基または単結合、R4 は炭素数が1〜4のアルキレン基)
【化6】
(式中、R5 は炭素数が2〜10の炭化水素基、
【化6−1】
は1,4置換シクロヘキサン環または1,3置換シクロヘキサン環、R6 、R7 はメチレン基または単結合)
【0009】
(2)光重合可能な不飽和結合を有する単量体および光重合開始剤の合計含有量が30〜60重量%である上記(1)記載の感光性樹脂組成物。
【0010】
(3)さらに安定剤および/または可塑剤を含有し、該安定剤および/または可塑剤、光重合可能な不飽和結合を有する単量体および光重合開始剤の合計含有量が30〜60重量%である上記(1)記載の感光性樹脂組成物。
【0011】
(4)波長360nmの光の散乱率が10%以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記の一般式(I)(II)(III)で示される3つの構造単位が特定の重量比で共重合されたポリアミド樹脂を充填ポリマーに用い、該充填ポリマーの他、光重合可能な不飽和結合を有する単量体(以下、光重合性不飽和単量体と称す)および光重合開始剤を必須とし、必要に応じて安定剤や可塑剤などの添加剤が含有されて、なるものである。
【0013】
一般式(I)の構造単位は、炭素数が5以上のアルキレン基のω−アミノ酸の縮合残基であり、該ω−アミノ酸としてはたとえばアミノカプロン酸、アミノへプタン酸、アミノカプリル酸、アミノラウリル酸などを挙げることができる。これらのω−アミノ酸またそのラクタムを共重合成分として使用することにより、これらの構造単位をポリアミドに導入することができるが、特に、ε−カプロラクタムが好適である。
【0014】
一般式(II)の構造単位は、ピペラジン環を有するジアミンのジカルボン酸塩の縮合残基である。R2 は炭素数が2〜10の炭化水素基で、−CO〜CO−は脂肪族、芳香族または脂環族ジカルボン酸の残基である。該脂肪族、芳香族または脂環族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸を挙げることができるが、特に、アジピン酸が好ましい。また、R3 は炭素数が1〜4のアルキレン基または単結合、R4 は炭素数が1〜4のアルキレン基で、−NH〜NH−はピペラジン環を有するジアミンの残基である。該ピペラジン環を有するジアミンとしては、N,N’−ビス(アミノメチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(アミノエチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジン、N,N’−ジ(アミノペンチル)ピペラジンなどを挙げることができる。
【0015】
一般式(III)の構造単位は、シクロヘキサン環を有するジアミンのジカルボン酸塩の縮合残基である。R5 は炭素数が2〜10の炭化水素基で、−CO〜CO−は上記一般式(II)のそれと同義である。また、R6 、R7 はメチレン基または単結合で、−NH〜NH−はシクロヘキサン環を有するジアミンの残基である。該シクロヘキサン環を有するジアミンとしては、例えば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。
【0016】
本発明に用いるポリアミドは、重合体中の一般式(I)(II)(III)の単位の重量比が40〜60:30〜50:5〜15となるように、ω−アミノ酸および/またはそのラクタム、ピペラジン環を有するジアミンのジカルボン酸塩、およびシクロヘキサン環を有するジアミンのジカルボン酸塩からなる3種の原料を仕込み、重縮合することにより得ることができる。
【0017】
本発明におけるポリアミドは、ω−アミノ酸および/またはラクタムの縮合残基(一般式(I)の単位)の含有量を40〜60重量%、好ましくは50〜60重量%の範囲、ピペラジン環を有するジアミンのジカルボン酸塩の縮合残基(一般式(II)の単位)の含有量を30〜50重量%の範囲、シクロヘキサン環を有するジアミンのジカルボン酸塩の縮合残基(一般式(III)の単位)の含有量を5〜15重量%の範囲にすることが重要であり、かかるポリマー構成とすることで、感光性樹脂組成物に極めて良好な物性を与える充填ポリマーと成り得る。
【0018】
ω−アミノ酸またそのラクタムの縮合残基(一般式(I)の単位)が40重量%未満ではポリマーの結晶性が低下し、樹脂組成物の成形性に支障をきたし、また、光硬化部の機械的強度が十分に高められなくなる。また、60重量%より多い場合はポリマーの親水性が低下して水現像性が低下する。また、ピペラジン環を有するジアミンのジカルボン酸塩の縮合残基(一般式(II)の単位)が30重量%未満ではポリマーの親水性が低下して水現像性に支障をきたし、50重量%より多い場合はポリマーの親水性が高くなり過ぎ、現像後の光硬化部の機械的強度が十分に高められなくなる。また、シクロヘキサン環を有するジアミンのジカルボン酸塩の縮合残基(一般式(III)の単位)が5重量%未満では露光時の光散乱を十分に低減し得なくなり、また、レリーフ抜け深さを十分に増大し得なくなり、15重量%より多い場合はポリマーの結晶性や親水性の低下が起こる。
【0019】
本発明で用いるポリアミドは、前記の特定の共重合体組成を有し、室温以上の結晶化温度を有するので、成形体(生版)の形状安定性がよく、保存中に流動が生じ形状が変化するような問題は生じない。それにもかかわらず、感光性樹脂組成物は熱変性や熱分解を起こさない比較的低い温度で容易に熱溶融成形を行うことができる。また、本発明で用いるポリアミドは感光性樹脂組成物中で適度の結晶性を有するので、生版の形状安定性が良好であるにもかかわらず、光透過性に優れ、照射光の散乱を抑制できるので、原画に忠実な鮮明な画像が得られる。
本発明の感光性樹脂組成物から得られた生版は、露光時の活性光線の散乱が極めて少なく活性光線が深く浸透し得、しかも、露光感度および水現像性ともに極めて良好となり、短時間の現像作業で、解像度が高く、かつ、深いレリーフ深度のレリーフ版を作成することができる。具体的には、300μmスリット幅のレリーフ抜け深さが90μm以上の従来のこの種の感光性樹脂組成物では得られなかったレリーフ像を得ることができる。さらに、特筆すべき点は、光硬化した部分が十分な耐水性および傑出した強靭性を示し、従来よりも耐刷性が大幅に向上する点である。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物の露光時における光散乱が極めて少ないのは、充填ポリマーとして特定のポリアミドを使用することに併せて、感光性樹脂組成物中における光重合性不飽和単量体および光重合開始剤の合計含有量、または、後述する安定剤や可塑剤などの添加剤を更に配合する場合の光重合性不飽和単量体、光重合開始剤および添加剤の合計含有量を30〜60重量%、好ましくは35〜55重量%、より好ましくは40〜50重量%とすることによるものである。
例えば、日立製作所(株)製、U−3210型自記分光光度計と150φ積分球付属装置(150−0901)を用いて測定した360nmの波長光の散乱率=〔散乱透過量/(直進透過量+散乱透過量)〕を、従来では成し得なかった10%以下(好ましくは7.0%以下)まで減少させることができる。
【0021】
本発明で用いる光重合性不飽和単量体としては、分子内に光重合可能な不飽和基を1個以上含有する化合物であり、公知のものが使用できる。このような化合物としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−アクロイルモルホリン、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセロールジメタクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの多価グリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価アクリレートやメタアクリレート、グリシジルアクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物の付加反応物、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタンなどである。これらの単量体は単独あるいは2種以上混合して使用することがきる。これらの光重合性不飽和単量体の感光性樹脂組成物中の含有率は5〜50重量%の範囲から適宜選択するのが好ましい。5重量%以下では樹脂組成物の光硬化性に支障をきたし、50重量%より多くなると露光前の樹脂組成物(生版)の形状保持性に支障をきたす。
【0022】
光重合開始剤としては公知のものが使用可能であり、具体的には、例えば、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アンスラキノン類、チオキサントン類などが使用できる。好適な具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、アンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが挙げられる。これらは感光性樹脂組成物中に0.05〜5重量%含有させるのが好ましい。0.05重量%より少ないと光重合開始能力に支障をきたし、5重量%より多いと印刷用レリーフを作成する場合の生版の厚み方向の光硬化性が低下し、画像の欠けが起こりやすくなる。
【0023】
感光性樹脂組成物には充填ポリマー、光重合性不飽和単量体および光重合性開始剤以外に安定剤や可塑剤などの添加剤を必要に応じて含有させることができる。安定剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルや2、6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどが挙げられ、これらは組成物中に0.001〜5重量%程度含有させるのが好ましい。可塑剤は光硬化物の物性変化を目的に添加され、例えば、エステルやアミドなどの低分子可塑剤、ポリエステルやポリエーテル、液状ゴム類などのオリゴマーが挙げられる。該可塑剤は組成物中に0.1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%含有させるのが好ましい。また、露光、現像後に得られる製品用途に応じて、公知の染料や色素を添加して感光性樹脂組成物を着色することもできる。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物は、印刷用レリーフ版を得る場合の溶融成形法の他、例えは、熱プレス、注型、或いは、溶融押出し、溶液キャストなど公知の任意の方法により目的の製品に応じた所望の形状物に成形できる。
【0025】
印刷用レリーフ版を得る場合はシート状に成形した成形物(生版)を公知の接着剤を介して、或いは、介さずに支持体に積層して使用することができる。支持体としてはスチール、アルミニウム、ガラス、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、金属蒸着したフィルムなど任意のものが使用できる。
シート状成形物(生版)を支持体上に積層した積層体にして供給する場合にはシート状成形物(生版)に接して保護層がさらに積層される。保護層はフイルム状のプラスチック、例えば、ポリエステルの125μm厚みのフイルムに粘着性のない透明で現像液に分散又は溶解する高分子を1〜3μmの厚みで塗布したものが用いられる。この薄い高分子の皮膜を有する保護層をシート状成形物(生版)に接することによって、シート状成形物(生版)の表面粘着性が強い場合であっても次の露光操作時に行う保護層の剥離を容易に行うことができる。
【0026】
このような組成物からなる層単独、もしくはこの層と支持体とからなる感光性原版は、感光性層に透明画像部を有するネガフィルムまたはポジフィルムを密着して重ね合せ、その上方から活性光線を照射して露光をおこなうと、露光部のみが不溶化ならびに硬化する。活性光線は通常300〜450nmの波長を中心とする高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、ケミカルランプなどの光源を用いる。
【0027】
次いで、適当な溶剤、特に本発明では中性の水により非露光部分を溶解除去することによって、鮮明な画像部を有する凸版を得る。このためには、スプレー式現像装置、ブラシ式現像装置などを用いる。
【0028】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明する。以下の実施例および比較例中の部数は重量部のことである。
【0029】
(実施例1)
ε−カプロラクタム52.5部、N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート40.0部、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート7.5部と水100部を反応器に加え、充分な窒素置換を行った後に、密閉して徐々に加熱し、内圧が10kg/cm2 に達した時点から反応器内の水を徐々に留出させて約1時間で常圧に戻し、その後0.5時間常圧で反応させた。最高重合温度は210℃で、融点140℃、比粘度1.83の透明淡黄色のポリアミド−1を得た。
【0030】
ポリアミド−1を55.0部、N−メチルトルエンスルホン酸アミドを7.7部、1,4−ナフトキノンを0.02部、メタノール50.0部と水10部を攪拌機付き加熱溶解釜中で60℃、2時間混合してポリマーを完全に溶解してから、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのアクリル酸付加物を30.1部、メタクリル酸を3.1部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.1部、亜硫酸アンモニウム0.3部とベンジルジメチルケタールを1.0部を混ぜて30分間溶解した。次に徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃になるまで濃縮した。この段階で、流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物が得られた。
【0031】
この感光性樹脂組成物を125μm厚みのポリエステルフイルム上にとり、同様のポリエステルフイルムを重ね、ラミネーターで全厚みが1050μmのシートを作成し、室温で24時間放置後に85℃で3分間加熱した。ポリエステルフイルムを剥離した感光性樹脂組成物のシートにおける光散乱性を、日立製作所(株)製、U−3210型自記分光光度計と150φ積分球付属装置(150−0901)を用いて360nmでの光散乱率を測定したところ、光散乱率は7.0%であった。
【0032】
共重合ポリエステル(バイロンRV−30SS、東洋紡(株)製)と多官能イソシアネート(コロネートL、日本ポリウレタン(株)製)と褐色染料の反応物を厚み15μmの被膜でコートした厚み180μmのポリエステルフイルムを支持体として被膜に接して上記の感光性樹脂組成物を流延する。厚み2μmのポリビニルアルコール(AH−24、日本合成化学(株)製)の被膜をコートした厚み125μmのポリエステルフイルムを被膜側を感光性樹脂組成物に接するようにして、ラミネーターを用いて全厚みが1080μmのシート状の積層体を成形した。このシートは室温下で堅い板状に固化した。24時間後にこのシートを85℃で3分間加熱して生版を得た。
【0033】
生版を7日間以上保管した後に、125μmのポリエステルフイルムを剥離してテストネガフイルム(感度測定用グレイスケールネガフイルムと画像再現性評価用画像のネガフイルム)を真空密着させ、超高圧水銀灯で40秒間露光した。次にブラシ式ウォッシャー(100μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で水道水を現像液にして、23℃で2分間現像してレリーフ画像を得ることができた。更に60℃で5分間、温風乾燥した後に超高圧水銀灯で30秒間後露光して得られたレリーフを評価した結果、グレイスケールは17段、画像部は2%網点、100μm独立点、30μm細線が再現されていた。また、300μmスリット幅のレリーフ抜け深さは90μmであった。このレリーフで印刷テストを行った結果、画像の太りがなくシャープな刷り上がりの鮮明画像の印刷物が得られた。また、30万部の印刷を行ったが、レリーフのとびやクラックの発生はなく、極めて良好な耐刷性を示した。
【0034】
(比較例1)
ε−カプロラクタム55.0部、N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート45.0部を原料に、他は実施例1と同様の操作でポリアミド−2を合成した。得られた重合体は融点150℃、比粘度2.02の透明淡黄色であった。該ポリアミド−2を用いて実施例1と同様に感光性樹脂組成物を調製し、生版を作成したが、水現像時間が10分間以上になったので、生版の熱処理温度を100℃、3分間に変更し、現像時間が3分間で行えるようにした。生版の光散乱率を実施例1と同様にして測定したところ11.4%であった。また、画像再現性評価を実施例1と同様にして行ったところ、グレイスケールは16段、画像部は5%網点、200μm独立点、30μm細線が再現し、300μmスリット幅のレリーフ抜け深さは45μmであった。また、30万部の印刷を行ったが、レリーフ表面ににひび割れの発生が認められた。
【0035】
(実施例2)
ε−カプロラクタム55.0部、N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート40.0部、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート5.0部を原料に、他は実施例1と同様にしてポリアミド−3を得た。得られた重合体は融点145℃、比粘度1.88の透明淡黄色であった。このポリアミド−3を用いて実施例1と同様に感光性樹脂組成物を調製し、生版を作成した。なお、熱処理は95℃、3分間で行った。生版の光散乱率を実施例1と同様にして測定したところ5.3%であった。また、画像再現性評価を実施例1と同様にして行ったところ、グレイスケールは17段、2%網点、200μm独立点、30μm細線が再現し、300μmスリット幅のレリーフ抜け深さは95μmで良好であった。また、30万部の印刷を行ったが、レリーフのとびやクラックの発生はなく、極めて良好な耐刷性を示した。
【0036】
(比較例2)
ε−カプロラクタム52.5部、N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート37.5部と1,6−ヘキサメチレンジアミンアジペート10.0部を原料に、他は実施例1と同様の操作にしてポリアミド−4を合成した。得られた重合体は融点145℃、比粘度1.89の透明淡黄色であった。このポリアミド−4を用いて実施例1と同様に感光性樹脂組成物を調製し、生版を作成した。生版の光散乱率を実施例1と同様にして測定したところ15.2%であった。また、画像再現性評価を実施例1と同様にして行ったところ、グレイスケールは17段、2%網点、200μm独立点、30μm細線が再現したが300μmスリット幅のレリーフ抜け深さが35μmであり、鮮明画像が得られなかった。
【0037】
(実施例3)
ε−カプロラクタム52.5部、N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート37.5部、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート10.0部を原料に、他は実施例1と同様の操作でポリアミド−5を合成した。得られた重合体は融点145℃、比粘度2.00の透明淡黄色であった。このポリアミド−5を用いて実施例1と同様に感光性樹脂組成物を調製し、生版を作成した。生版の光散乱率を実施例1と同様にして測定したところ5.1%であった。また、画像再現性評価を実施例1と同様にして行ったところ、グレイスケールは17段、2%網点、200μm独立点、30μm細線が再現した。300μmスリット幅のレリーフ抜け深さが105μmあり、鮮明な画像が得られた。また、30万部の印刷を行ったが、レリーフのとびやクラックの発生はなく、極めて良好な耐刷性を示した。
【0038】
(比較例3)
ε−カプロラクタム37.5部、N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート42.5部、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート20.0部を原料に、他は実施例1と同様の操作にしてポリアミド−6を合成した。得られた重合体は融点135℃、比粘度1.80の透明淡黄色であった。このポリアミド−6を用いて実施例1と同様に感光性樹脂組成物を調製し、ポリエステルフイルムをラミネートし、積層シートを作成したが感光性樹脂組成物層が固化せずに粘着性の強い生版しか得られなかったので、性能評価を中断した。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物によれば、水現像が可能で、高感度で、光硬化後は充分な耐水性と機械的強度を示す感光性樹脂組成物を得ることができる。特に、短時間の熱処理による溶融成形で生版を作成でき、しかも、短時間の水現像で、従来にない高精細な印刷画像が長期間安定に形成される印刷用レリーフ版を作製できるという極めて有益な効果が得られる。
Claims (4)
- 下記一般式(I)で示される単位40〜60重量%と、下記一般式(II)で示される単位30〜50重量%と、下記一般式(III)で示される単位5〜15重量%とからなるポリアミド、光重合可能な不飽和結合を有する単量体および光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
- 光重合可能な不飽和結合を有する単量体および光重合開始剤の合計含有量が30〜60重量%である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
- さらに安定剤および/または可塑剤を含有し、該安定剤および/または可塑剤、光重合可能な不飽和結合を有する単量体および光重合開始剤の合計含有量が30〜60重量%である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
- 波長360nmの光の散乱率が10%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP21588299A JP3632513B2 (ja) | 1999-07-29 | 1999-07-29 | 感光性樹脂組成物 |
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