JP3631423B2 - 走行車両のボンネット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラクタ(フロントローダを含む)等の走行車両のボンネットに係り、より具体的には、2軸4車輪形のトラクタにおけるエンジンルームを形成して冷却空気流通路を構成するボンネットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トラクタ等の走行車両において、運転席の前方にエンジンが搭載され、このエンジンとその周辺に付設される各種機器類やエンジン補機等とがボンネットによって取り囲まれることにより、このボンネット内にエンジンルームが形成されているものがある。
走行車両がトラクタである場合には、車両後部に、重量のある作業機を接続したり、急な段差等を上り下りしたりすることが多いことから、特に、前後方向の重心バランスをよくすることに特別な配慮が必要とされている。一般的には、走行車両の前方へ重心をおくのが好適とされている。そのため、エンジンルーム内の前方へ各種機器類やエンジン補機等を集めるようにし、また中でも比較的重たいものは前方へ、反対に軽いものは後方(運転席寄り)へ割り振ることが行われてきている。
【0003】
ところで、昨今では、走行車両の高出力化が望まれ、これに伴ってエンジンが大型化される傾向にある。そのため、各種機器類やエンジン補機等には、上記したレイアウト上の制約のみならず、設置スペースが手狭になるという問題も生じ、エンジンルーム内のレイアウトはますます複雑になる傾向にある。
上記のようにエンジンルーム内が過密化し、またレイアウトが難しくなると、ラジエータの正面にも、例えばバッテリ等のエンジン補機を設置せざるを得なくなる場合がある。その結果、ラジエータに対する空気の取り込みを確保することが困難になるおそれがあった。このことは、走行車両がトラクタ、フロントローダ等のように高速走行を要求されない車両である場合には、特に深刻な問題となる。
【0004】
また、エンジンが大型化することによってラジエータによる冷却能力の強化、即ち、ラジエータの大型化もが必要とされる場合であれば、空気の取り込みを更に十分なものとさせてエンジンの耐オーバーヒート性の改良する必要がでてくる。
このような実情の下で、特開平11−91370号公報には、次のように構成した走行車両の冷却空気流通構造が提案されている(従来例)。
すなわち、エンジンルームを取り囲むボンネットの正面部にグリル部が設けられてエンジンルーム内のラジエータへ空気の取り込みが可能になされていると共に、ラジエータ及び該ラジエータ正面に配されたエンジン補機をエンジンルーム内で支持する前車軸フレームの幅方向中央空間からも上記エンジン補機の設置部下部を介してラジエータに対する空気の取り込みが可能になされていることを特徴とする走行車両の冷却空気流通構造。
【0005】
前記前車軸フレームには、ラジエータ設置部より前部で前記エンジン補機を所定高さに保持しつつ立ち上がる左右一対の前部下位側板が設けられていると共に、ラジエータ設置部より後部で立ち上がる左右一対の後部下位側板が設けられており、これら前後の下位側板がいずれもエンジンルーム内外での通気性を具備して空気補助取入部及び空気補助吐出部として形成されていることを特徴とする走行車両の冷却空気流通構造。
前記前車軸フレームには、ラジエータ設置部より後部に対して、ラジエータを出た排気流が前方へ吹き返されるのを阻止可能にした逆流阻止板が設けられていることを特徴とする走行車両の冷却空気流通構造。
【0006】
前記前後の下位側板は、いずれもボンネットの側板と共に外装の一部となされており、後部下位側板が前部下位側板の後方延長上に揃う配置とされていることを特徴とする走行車両の冷却空気流通構造。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
走行車両の冷却空気流通構造が、前述した従来例のように吸込型であるにしろ吹出型であっても、冷却空気流通路を形成するとき、ボンネットにプレス成形等によって開口(通路)を穿け、この開口を総パンチングメタル(金属板材(ボンネット構成板材)の全体に亘って多数の孔を開設したものをいう)で貼付(溶接)してその大開口の周縁に固着した手段(従来例の1)と、比較的大きな孔群よりなる部分パンチング板材をボンネット側板等の構成板材とする手段(従来例の2)とが採用されている(前述後方の側板が従来例の2に相当する)。
【0008】
従来例の1は、冷却空気流通路を形成する多孔板材を大きな開口を塞ぐように溶接にて固着していることから溶接歪の発生が生じるという課題があった。
また、従来例の2は、部分パンチング板材の孔径が比較的大径であることから流速(冷却流の吸込部での流速)が速く、ホコリ、虫等の異物がエンジンルーム内に侵入し易く、エンジンのオーバーヒートの要因となるおそれがあり、また、吸込部に異物が付着(空気流による吸着)し易くこれが落下しなくなると(吸着したままになると)増々オーバーヒートの要因となる等々の課題があった。
【0009】
更に、ボンネットの左右側板の外表面には、メーカー名、機種別等のマーク(銘板)が装着されることが多く、この銘板を側板に直接装着すると、ボンネットはエンジンルームを形成しているので熱源によって前記銘板が熱変形等するという課題があった。
本発明は、ボンネットに形成される多孔板よりなる吸込部の開口率を上げ(従来は32%であったのを例えば45%とする)ることにより、ホコリ、虫等の異物がエンジンルーム内に侵入するのを防止し、冷却風(吸込風)の流速を遅くすることによって異物の吸着力を抑え、エンジンのオーバーヒートをなくし得るようにした走行車両のボンネットを提供することが主目的である。
【0010】
更に、吸込部および/又は排出部を部分パンチング板材で構成することにより、外観性能(比較的遠方から見たときの孔形成部位の判別がわからないようにする)を維持しつつエンジンルーム内の整備・点検の際の内部透視が可能な走行車両のボンネットを提供することが目的である。
更に、ボンネットの側板に銘板を装着するとき、軽合金製の取付台を介在させて装着することによって銘板の熱影響(熱変形等)を抑え、銘板の耐久性等を向上できる走行車両のボンネットを提供することが目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トラクタ等の走行車両1に備えているラジエータ4およびエンジン5を含んでエンジンルームを取り囲む天板部10と左右側板部9および前面(正面)グリル部8で構成したボンネット6において、前述の目的を達成するために、次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るボンネットは、前記左右側板部9は、ボンネット6の高さ方向で上下に分割されている上側板12と下側板13とで構成され、前記左右の下側板13のラジエータ4の吸込側でかつ左右の前輪2の上方近傍に、下側板13の板厚と略同じかやや薄い間隔で多数の孔14Aを形成してこの孔群によって吸込部14が構成され、この吸込部14における孔14Aの直径は前記板厚の略2倍の大きさとされていることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成を採用することによって、吸込部14における多数の孔14Aの径が小さくとも開口率が大きくできて吸気大となって流速が遅くできてゴミ等の付着(吸着)が抑制されてエンジンのオーバーヒートを阻止できるのであり、特に、左右の前輪2による粉塵の舞い上りが激しいことからその意義は大となる。
ここで、孔14Aの間隔とは隣り合う孔14Aの孔縁距離をいう(以下、同じ)。
【0013】
前記吸込部14を構成する孔群は、側板13を部分パンチングして形成され、この部分パンチングの外縁はパンチングなしの縁取板23とされていることが推奨される。
このように部分パンチングの外縁をパンチングなしの縁取板23と形成することにより、プレス成形するときの破れ、端部処理が良好となって全体に亘っての板材強度(変形防止)も向上できるのである。
更に、本発明に係るボンネットは、上側板12と下側板13とはボンネット高さ方向の幅が略同幅とされており、下側板13の吸込部14と対応して上側板12に吸込部16が形成されていることが推奨される。
【0014】
また、本発明に係るボンネットにおいて、上側板12と下側板13のそれぞれに形成した左右の吸込部16および吸込部14の後方にそれぞれ左右の排風部17および排風部15が形成されていることが推奨される。
更に、本発明に係るボンネットにおいて、左右の下側板13に形成した吸込部14と排風部15は、パンチングなしの縁取板24を介して前後に区画形成され、排風部15は下側板13の板厚の略2倍の大きさの孔径とされた多数の孔15Aを部分パンチングすることで構成されていることが推奨される。
【0015】
また、本発明に係るボンネットにおいて、左右の上側板12に形成した吸込部16と排風部17は、硬質樹脂製の枠体37の前後にそれぞれ区画形成されていることが推奨される。
更に、本発明に係るボンネットにおいて、左右の上側板12の後半部分には銘板45がその外表面側に装着されており、この銘板45は側板44に対して軽合金製の取付台18を介在させて装着されていることが推奨され、前記取付台18は前後方向に延伸するレール部18Aを有する押出材又は引抜材であり、側板44との間に断熱空間46を形成していることが推奨される。
【0016】
このように本発明に係るボンネットによれば、銘板45の熱変形等が防止できてこの耐久性(脱落防止を含む)を向上できるのである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
なお、以下の図示例ではラジエータは吸込型(ボンネット内に冷却風を導入する形式)を例示するが吹出型であっても良く、また、ボンネットは、2軸4車輪形のトラクタ用として例示しているが、フロントローダ等の建機にも適用可能である。
図1は2軸4車輪形のトラクタで例示する走行車両1を斜視図で示しており、左右一対の前輪2と左右一対の後輪3を備え、前輪2は図示しないステアリング装置によって操向可能とされ、後輪3は駆動輪とされている(但し、左右の前輪2を駆動することは自由である)。
【0018】
トラクタ1における車体の前部側寄り(前輪側寄りで左右前輪間)に、ラジエータ4およびエンジン5が搭載されており、これらを含んでエンジンルームを取り囲んで(エンジンルームを構成する)ボンネット6が装備されており、ボンネット6の後端部は運転操縦部を取り囲む(包囲する)キャビン7が搭載され、このキャビン7の乗降口には開閉ドア7Aが備えられている。
ボンネット6は、図1および図2で示すように、空気(外気)の取入口8Aを有するグリル部8を正面側(前面側)に備え、左右の側板部9と天板部10とで主構成されていて前車軸受台(前車軸フレーム)11上に搭載したエンジン5とこの前方のラジエータ4をエンジンルームを形成すべく取り囲んでいる。
【0019】
図2および図9・10で示すように、ラジエータ4は熱交換部(コア)4Aの上下にタンク部4Bを有するラジエータ本体4Cを備え、ファン4Dにて正面側および左右側部並びに前下方部から外気を取り入れ(吸引)してラジエータ本体4Cの後方に熱交換済の内気を外部に排出するように構成されている。
ボンネット6における正面(前面)グリル部8は図2で示すようにその上部に取入口(吸込部)8Aを有し、下部両側にランプ8Bを有し、取入口(通気口)8Aは横桟8Cを上下方向の間隔を有して列設し、この横桟8Cの裏面(内面)には、多数の通孔を有する多孔板(金網でも良い)8Dを、横桟8Cとの間でスキマを存して張設してなり、ここに、スキマを有することから、横桟8Cに対してスキマのない密着状態での多孔板8Dの張設に比べて通気面積を広くでき、ラジエータ4の冷却効率(エンジンのオーバーヒート防止)を向上するものとなっているとともに、スキマを介しての粉塵等の落下を確保してこれによっても冷却効率の向上を図っている。
【0020】
ボンネット6における左右の側板部9は、いずれもラジエータ4の左右に配設されていてボンネット6の高さ方向で上下に分割されかつ幅が略同幅とされている上側板12と下側板13とで構成されており、更に、上側板12は、上前側板12Aと上後側板12Bとで前後に接合分離自在として構成されている。
下側板13はグリル部8の下半部(ランプ8Bの取付部)の後端にその前端面が重ね合されており、この前端面から後方に向って帯板状に延伸され、後端部はキャビン7のフロント面に重ね合されている。
【0021】
この左右の下側板(以下、単に側板というときもある)13のラジエータ4の吸込側(ラジエータ4の前方かつ左右前輪2の上方近傍)に、この側板13の板厚と略同じかやや薄い間隔で多数の孔14Aを形成してこの孔群によって吸込部14が構成されており、この吸込部14における孔14Aの直径は前記板厚の略2倍の大きさとされている。
更に、左右の側板13のラジエータ4の排出側(ラジエータ4の後方)に、この側板13の板厚と略同じかやや薄い間隔で多数の孔15Aを形成してこの孔群によって排出部15が構成されており、この排出部15における孔15Aの直径は前記板厚の略2倍の大きさとされている。
【0022】
左右の上側板12における上前側板12Aには、側板13に形成した吸込部14と上方にて対応する位置に形成した吸込部16と排出部17とを有し(詳細については図7(1)(2)(3)を参照して後述する)、左右の上側板12における上後側板12Bは、銘板(品番等のマークをいう)の取付台部18を有している(詳細については図8(1)(2)を参照して後述する)。
図2、図9および図10で示すように、ラジエータ4の前方における前車軸受台11上には、取付台19を介してバッテリーで例示するエンジン補機20が装着(交換自在に載置)されており、このエンジン補機20の上方には、エアークリーナーで例示するエンジン補機21が前車軸受台11に立設した正面視門形の支持枠22を介して装備されており、これらエンジン補機20、21についてもエンジンルーム内にあって、ボンネット6で取り囲まれており、支持枠22にあっては、ボンネット6(側板部9)の取付(支持)を兼用するものとされており、取付台19については、これを多孔板で作成することによって前輪2の近傍および前車軸受台11を通じて下方から上方に向う空気流で冷却風が導入可能とされている。
【0023】
図3〜図6を参照して左右の側板13についてその作成手段を含めてその構成と作用を詳述する。
図6で示すように、板厚1mm前後の金属製長方形板材(SPCE板材)についてその中心線O−Oを境にして線対称位置に、吸込部14と排出部15とを左右組で形成すべく部分パンチングして吸込部14を構成する孔群14Aと排出部15を構成する孔群15Aを開設し、この部分パンチングの外縁はパンチングなし(孔14A、15Aのない)縁取板23とされており、吸込部14と排出部15とを前後に区画形成する中間の縁取板24については帯状のパンチングなしとされている。
【0024】
図5(2)で排出部15の孔15Aについて例示(吸込部14の孔14Aについても同様)するように、板厚1mmのSPCE板材について、孔径aが2mmの孔14A、15Aを2個を一組として例えば30°の千鳥状配列(孔ピッチPを2.8mm)としてパンチングプレス機械を用いて部分パンチング処理を施す(穿明け加工)ことにより、側板の板厚と略同じかやや薄い間隔(孔14A、15Aの縦横に隣接する孔縁間隔をいい、図5(2)では孔径aが2mmで孔ピッチPが2.8mmであることから、孔縁間隔は0.8mmとなる)で多数の孔14A、15Aが形成され、この孔群14A、15Aによって前後に区画された吸込部14と排出部15が左右組として形成され、ここに、吸込部14と排出部15の開口率は約45%とされている。
【0025】
因みに従来例においては板厚1mmの同材料よりなる板材に孔径aが3mmで孔ピッチPが5mmの孔を形成して孔縁間隔が2mmとされ、開口率は約32%である。
このように吸込部14および排出部15の孔14A、15Aについて上記のように構成したことによって、吸込部14における吸入空気流速が大幅に減り、ゴミ詰まり性が改善され、吸込部14にゴミが付着しても十分な冷却空気が確保できることが開口面積の開口率が約45%となって実証され、実作業時のエンジンの耐オーバーヒート性が改善できたのである。
【0026】
図5(2)において孔14A、15Aの穿孔(パンチング加工)にあっては、プレスパンチング機の2本又は3本のパンチを組(3本のときは3角配列)として穿孔作業(パンチング加工)を縦横に孔ピッチPのもとで実施するが、吸込部14および/又は排出部15の中央部位を占める領域に対して少なくとも前後部位を占める孔間隔を図5(2)で示すように粗く穿孔することによって、孔形成部位と縁取板23、24との境界部位においての急激(極度)な断面変化を防止(断面変化を緩やかにし)、応力分散を図るとともにプレス成形時の破れ防止が図られているのである。
【0027】
なお、吸込部14および排出部15の前後部位について孔の形成を粗くしているが上下部位についても孔の形成を粗くすることもできる。
また、吸込部14と排出部15において孔14A、15Aの孔径を大小に異ならすことも可能であり、このとき、孔14Aについては板厚1mmのSPCE板材に孔径aを2mmで孔ピッチPを2.8mmとし孔縁間隔を0.8mmとして前述のように開口率を約45%とし、一方、排出部15については孔15Aは板厚1mmのSPCE板材に孔径aを3mmで孔ピッチPが5mmで孔縁間隔が2mmとして前述のように開口率を約32%とすることができる。
【0028】
このように、吸込部14と排出部15について孔径を異にしたときにも、その前後部位および/又は上下部位において中央部位よりも孔個数を粗く穿孔することが望ましい。
以上のように中心線O−Oを境にして線対称の形態で2組の吸込部14および排出部15を部分パンチングをした後、中心線O−Oに沿って例えばレーザー等で切断することで側板13が2枚取りされ、この側板13についてそれぞれプレス加工を施すことによって、図3(1)(2)(3)および図4(1)(2)並びに図5(1)等に示す形態の側板13が作成されている。
【0029】
ボンネットの構成板材である側板13について、図3〜図5を参照して説明する。
部分パンチングされた側板13は、前後端面にフロントグリル部8の後面およびキャビン7の前面にそれぞれ重ね合されるフランジ部30A、30Bが形成されているとともに、上面は上側板12の下端部を重ね合せる(衝合させる)とともに内外方向の位置決めのためのL形に折曲した段部30Cが水平面上において前後方向に形成され、吸込部14および排出部15を含む腹部については外方に緩やかに弯曲部30Dを形成するようにプレス加工され、下端部は相対的に内向に傾斜するスカート部30Eに形成されている。
【0030】
側板13の前後部位の内側には帯板材(SPHC−P材)よりなる取付金具31、32が溶接等によって帯長手方向を上下方向として固着しており、この前後の取付金具31、32の上端片には、この側板13を前後においてネジ止め等によって着脱自在として取着するための取付孔31A、32Aが形成されているとともに、取付金具31、32の下方部位には前車軸フレーム等の車体側に形成した上下方向の孔に上下方向に挿抜自在に挿嵌する差孔ピン31B、32Bが同一水平面上に突出され、この差孔ピン31B、32Bに例えば筒状の防振ゴム等を介在した下で車体側に形成した孔に挿入して防振的に支持しているとともに、前後方向および左右方向の位置決めが可能とされている。
【0031】
更に、中間の縁取板24の内面には、側板13の内面形状に沿うように折曲されたSPHC−P材の帯板よりなる補強板33が溶接等によって固着されており、この補強板33の内面(裏側)には、スポンジ、合成ゴム等の弾性材からなる遮風部材34が接着等による貼着によって装着されており、この遮風部材34の内面34Aをラジエータ4の左右側板等に弾性的に押付けることにより、吸込部14からの熱交換済の排風が逆流(前方吹き返し)するのを防止しているのである。
【0032】
なお、遮風部材34はこれを弾性材で作成することで防振効果が期待できるし、密着性も良好となって遮風作用も向上できるが、弾性材以外の材料で作成することも可能であるし、また、ラジエータ4の左右側面部に貼着しておいてこれに側板13を内方向に押付けて装着することも可能であり、これ故、中間の縁取板24の内面に遮風部材34が装着可能であれば良い。
また、この遮風部材は左右側板部9の内面でボンネット高さ方向全体および天板部10の内面装着してラジエータ4の左右および上部を取り囲むように装着しても良い。
【0033】
更に、左右の側板13における上辺部の段差部30Cの水平面の内側(下面)には、例えば、SS400の金属板よりなる金具35がスポット溶接等によって前後方向の間隔をおいて固着されており、この金具35に上下方向として形成した差込孔35Aに、上側板12の下面に突出させた差込ピン36が上下方向から挿抜自在に挿入され、これによって、上側板12は、その前上側板12A、後上側板12Bが左右の側板13の上辺部に前後左右の位置決め状態で載設可能であり、このとき、差込ピン36に筒状の防振ゴムを介在させてこの弾性(縮変形)により防振的に支持することが望ましい。
【0034】
左右の側板13における吸込部14は部分パンチングで構成され、図では略矩形状に形成され、図1および図2で示すように左右前輪2の近傍においてスカート部30Eにおいても吸引作用をするとともに、排出部15の前部は吸込部14と略同様に矩形部とされていてこの矩形部より鈎形(L形)になるように帯板状の排出部15とされており、吸込部14等の前半部分は、弯曲部30Dおよびスカート部30Eとプレス形成されて上下2段の折線部分30Fを有することで捻り変形抵抗等の剛性向上され、このようにプレス成形された側板13は、塗料等にドブ漬けされるかスプレー等により、その表面全体が塗料によって防錆処理されている。
【0035】
図7および図8を参照すると、ボンネット6を構成する上側板(上前側板12Aおよび上後側板12B)12が示してあり、上前側板12AはABS樹脂等の硬質樹脂製の枠体37に、縦桟38を前後方向の間隔で形成するとともに、縦桟38に多数の通気孔38Aを形成することによって吸込部14の上方にて対応する矩形状の吸込部16とされ、この吸込部16の後部において横桟40を上下方向の間隔で形成するとともに、横桟40に多数の通気孔40Aを形成することによって矩形状の排出部17とされている。
【0036】
この上前側板12Aは前後の2本の差込ピン36を側板13の差込孔35Aに挿支するとともに、前上部に止着具42を備えることで車体側に着脱自在に装備され、後上部には上後側板12Bの取着孔43が形成されている。
なお、吸込部39と排出部41については、縦・横桟材38、40の裏面側に金網、パンチングメタル等の多孔板を装着(張設)することで吸込部39および排出部41を構成することも可能であり、このとき、桟材38、40と多孔板との間にグリル部8と同様にスキマを形成することで吸込又は排出面積の増大化が図れる。
【0037】
図8において、上後側板12Bはボンネット6の側板を形成するものであり、プレス成形によって略台形状に形成された板金製(金属板製)の側板44の下端面の前後に差込ピン36を下方に突出して備え、側板44の前上部には取着孔43に共締めされる取着孔45を備えている。
この側板44はエンジン5の左右上部を覆うものであり、マフラ5A等の熱源を包囲していることから、この側板44の外表面に硬質樹脂製等の銘板45を直接取着したのでは、熱変形、熱劣化を起し易いことから、次の手段を講じている。
【0038】
すなわち、レール部18Aを有する取付台18を介在することによって銘板45が取着されている。
レール部18Aを有することから、側板44と取付台18との間に断熱空間46が形成され、これによって銘板45の熱変形等が防止されているのである。
取付台18の構成材は任意であるけれども、アルミ合金等の軽合金の押出材又は引抜き材で作成することが望ましく、取付台18の外表面に上下複数段のスジ状リブ18Bを形成することにより、取付台18の剛性を向上しているとともにデザイン的に力量感等を付与している。
【0039】
銘板45は取付台18の外表面に重ね合されて止ネジ等の締結具47を目隠し状として複数個備えるとことによって取外し自在に装着されており、取付台18の外周縁はスカート部48とされて側板44の外表面に衝合(突き合せ)され、上下2段で前後方向に形成したレール部18Aに止ボルトの頭を摺動自在に嵌合してこの締結具49をレール部18Aに沿わせて位置調整しつつナット50等によって側板44に止着されている。
なお、取付台18は側板44の高さ方向の中央部位の下半部を占めている。
【0040】
更に、図2で示すように左右の下側板13の高さ(上下幅)と左右の上側板12の高さ(上下幅)は略同じとされており、上側板12はエンジンヘッドを覆う高さとされ、後部を支点として開閉自在な天板10はボンネット6の高さ(上下幅)の略1/4〜1/5を占めるものとされている。
次に、フロントグリル部8の吸込部8A、側板13の吸込部14、上側板12の吸込部16および取付台19を含む吸入側開口面積と吸入風速について従来例と本発明実施例との実測データを下記表1・2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
上記表1は吸込部8A、16、14、19の開口面積を比較したものであり、合計の165%も開口面積の増大となり、一方、表2によれば吸入風速が減少されてエンジンの耐オーバーヒート性が大幅に改善されたことが解るとともに、吸込部14と排出部15については孔群によって内部を近くで透視することも可能となってメンテナンス時期を失するおそれも少ないのである。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、耐オーバーヒート性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るボンネットを装備した走行車両の斜視図である。
【図2】要部の側面図である。
【図3】ボンネットの構成板材としての側板を示し、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は底面図である。
【図4】側板を示し、(1)は図3(2)のA−A拡大矢示図、(2)は図3(2)のB−B矢印の拡大斜視図である。
【図5】側板の後部を示し、(1)は斜視図、(2)は孔群の説明図である。
【図6】側板の部分パンチングの一例を示す平面図である。
【図7】上側グリル部(吸込部)を示し、(1)は斜視図、(2)は排出部の断面図、(3)は吸込部の断面図である。
【図8】銘板取付板(ボンネット側板)を示し、(1)は正面(側面)図、(2)は一部省略底面図である。
【図9】ラジエータ部分の立側面図である。
【図10】ラジエータ部分の正面図である。
【符号の説明】
1 走行車両
4 ラジエータ
5 エンジン
6 ボンネット
8 前面グリル部
9 左右側板
10 天板
12 上側板
13 下側板
14 吸込部
14A 吸込孔
Claims (7)
- トラクタ等の走行車両(1)に備えているラジエータ(4)およびエンジン(5)を含んでエンジンルームを取り囲む天板部(10)と左右側板部(9)および前面グリル部(8)で構成したボンネット(6)において、
前記左右側板部(9)は、ボンネット(6)の高さ方向で上下に分割されている上側板(12)と下側板(13)とで構成され、上側板(12)と下側板(13)とはボンネット高さ方向の幅が略同幅とされており、前記左右の下側板(13)のラジエータ(4)の吸込側でかつ左右の前輪(2)の上方近傍に、部分パンチングによって下側板(13)の板厚と略同じかやや薄い間隔で多数の孔(14A)を形成してこの孔群によって吸込部(14)が構成され、この吸込部(14)における孔(14A)の直径は前記板厚の略2倍の大きさとされており、前記上側板(12)は、硬質樹脂製の枠体(37)に多数の通気孔(38A)を形成することによって前記下側板(13)の吸込部(14)の上方に対応する吸込部(16)を備え、前記下側板(13)の吸込部(14)の開口面積が前記上側板(12)の吸込部(16)の開口面積よりも大きくされていることを特徴とする走行車両のボンネット。 - 吸込部(14)を構成する孔群は、側板(13)を部分パンチングして形成され、この部分パンチングの外縁はパンチングなしの縁取板(23)とされていることを特徴とする請求項1に記載の走行車両のボンネット。
- 上側板(12)と下側板(13)のそれぞれに形成した左右の吸込部(16)および吸込部(14)の後方にそれぞれ左右の排風部(17)および排風部(15)が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の走行車両のボンネット。
- 左右の下側板(13)に形成した吸込部(14)と排風部(15)は、パンチングなしの縁取板(24)を介して前後に区画形成され、排風部(15)は下側板(13)の板厚の略2倍の大きさの孔径とされた多数の孔(15A)を部分パンチングすることで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の走行車両のボンネット。
- 左右の上側板(12)に形成した吸込部(16)と排風部(17)は、硬質樹脂製の枠体(37)の前後にそれぞれ区画形成されていることを特徴とする請求項4に記載の走行車両のボンネット。
- 左右の上側板(12)の後半部分には銘板(45)がその外表面側に装着されており、この銘板(45)は側板(44)に対して軽合金製の取付台(18)を介在させて装着されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の走行車両のボンネット。
- 取付台(18)は前後方向に延伸するレール部(18A)を有する押出材又は引抜材であり、側板(44)との間に断熱空間(46)を形成していることを特徴とする請求項6に記載の走行車両のボンネット。
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