JP3628336B2 - β―フルクトフラノシダーゼおよびその遺伝子、β―フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離法、β―フルクトフラノシダーゼの産生系、並びにβ―フルクトフラノシダーゼ変異体 - Google Patents
β―フルクトフラノシダーゼおよびその遺伝子、β―フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離法、β―フルクトフラノシダーゼの産生系、並びにβ―フルクトフラノシダーゼ変異体 Download PDFInfo
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Description
発明の分野
本発明は、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子およびその単離法並びにその産生系に関し、さらに詳しくは、本発明は、新規β−フルクトフラノシダーゼおよびそれをコードするDNA、およびβ−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAの単離法、β−フルクトフラノシダーゼ活性を示さない新規糸状菌およびこの糸状菌を宿主として組換えβ−フルクトフラノシダーゼを製造する方法、並びに、ショ糖より特定のフラクトオリゴ糖、例えば1−ケストース、を選択的かつ効率的に生成するβ−フルクトフラノシダーゼ変異体に関する。
背景技術
一般にフラクトオリゴ糖は、ショ糖のフラクトースに1〜3分子のフラクトースがC1とC2の位置でβ結合しているものであり、難消化性の糖で、腸内のビフィズス菌増殖促進作用、コレステロールなどの脂質代謝改善効果、難う蝕性などの優れた生理効果を有するものであることが見いだされている。
フラクトオリゴ糖は、自然界では広く植物に分布しており、例えばアスパラガス、タマネギ、キクイモ、蜂蜜などに含まれていることが知られているが、最近では、微生物由来のβ−フルクトフラノシダーゼの転移反応を利用してショ糖から大量に製造する技術が確立され、工業的に生産されている。現在フラクトオリゴ糖の工業生産に利用されているβ−フルクトフラノシダーゼ製剤は、アスペルギルス・ニガー由来の菌体内β−フラクトフラノシダーゼを利用しているため、夾雑タンパク質が比較的多く含まれている。そのため、夾雑タンパク質を少なくし、純度が高く、力価の高いβ−フルクトフラノシダーゼ製剤の作出が望まれている。また、β−フラクトフラノシダーゼを固定化酵素とすれば、その利用効率を高めることが可能であるが、酵素を固定化する際、酵素が菌体外に生産されている方が有利であり、該β−フラクトフラノシダーゼを菌体外に生産させることが望まれている。
β−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子については、細菌(Fouet,A.,Gene,45,221−225(1986),Martin,I.et al.,Mol.Gen.Genet.,208,177−184(1987),Steininctz,M.et al.,Mol.Gen.Genet.,191,138−144(1983),Scholle,R.et al.,Gene,80,49−56(1989),Aslanidis,C.et al.,J.Bacteriol.,171,6753−6763(1989),Sato,Y.and Kuramitsu,H.K.,Infect.Immun.,56,1956−1960(1989),Gunasekaran,P.et al.,J.Bacteriol.,172,6727−6735(1990))、酵母(Taussing,R,and M.Carlson,Nuclcic Acids Res.,11,1943−1954(1983),Laloux,O.et al.,FEBS Lett.,289,64−68(1991)、カビ(Boddy,L.M.et al.,Curr,Genet.,24,60−66(1993)、植物(Arai,M.et al.,Plant Cell Physiol.,33,245−252(1992),Unger,C.et al.Plant Physiol.,104,1351−1357(1994),Elliott,K.et al.,Plant Mol.Biol.,21,515−524(1993),Sturm,A.and Chrispeels,M.J.,Plant Cell,2,1107−1119(1990))などから既に幾つか単離されている。しかし、転移活性を有し、フラクトオリゴ糖の工業生産に利用可能なβ−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子については本発明者らが知る限り明らかにされていない。
また、フラクトオリゴ糖の工業生産に利用可能なβ−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子から得られれば、この遺伝子との相同性を利用して類似の機能を有する遺伝子を単離することができる。本発明者等の知る限りでは、この手法を用いて新たなβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子のスクリーニングを行った例は報告されていない。β−フルクトフラノシダーゼのスクリーニングにおいても、この新しい手法を用いてβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を単離する方法を発明できれば、スクリーニングの労力と時間は従来に比べ大幅に短縮できるようになる。すなわち、β−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子との相同性を利用して類似のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を単離し、次いで単離した遺伝子をショ糖資化性がない宿主、すなわちトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)やショ糖資化性を欠質させた酵母(Oda,Y.And Ouchi,K.,Appl.Environ.Microbiol.,1989,55,1742−1747)などへ導入し、発現させることによってその遺伝子産物であるβ−フルクトフラノシダーゼの特性を評価する。この際発現されてくるβ−フルクトフラノシダーゼは単一であるのでスクリーニングの労力と時間は従来に比べ大幅に短縮できるようになる。加えて発現されたβ−フルクトフラノシダーゼが優れた特性を有している場合には、その遺伝子を、安全性および生産性の優れた菌株へ導入することで優れたβ−フルクトフラノシダーゼの生産も可能となる。
さらに、前記のような優れたβ−フルクトフラノシダーゼの生産には、その生産系の確立が必須である。とりわけ、ショ糖資化性がない宿主の確立が必須である。すなわち、利用する宿主自体に元々β−フルクトフラノシダーゼ活性が存在する場合には、得られる酵素は、宿主由来のβ−フルクトフラノシダーゼと導入した遺伝子由来のβ−フルクトフラノシダーゼの混合物となる。そのため、導入した遺伝子由来のβ−フルクトフラノシダーゼの優れた性質を引き出すためには、宿主由来のβ−フルクトフラノシダーゼと分離した後使用する必要が生じる。一方、β−フルクトフラノシダーゼ活性を示さない宿主を利用することができれば、酵素の分離の必要がなくなり、粗酵素の状態で、導入した遺伝子由来のβ−フルクトフラノシダーゼの優れた性質を利用することができるようになる。β−フルクトフラノシダーゼ活性を示さない微生物としては、これまで前記したトリコデルマ(Trichoderma)属に属する幾つかの菌株やショ糖資化性を欠失させた酵母(Oda,Y.前掲)などが知られている。しかしながら、生産させたβ−フルクトフラノシダーゼの利用分野が食品分野であることを考慮した場合、長い食経験があり、酵素の工業生産などにも利用され、安全性が高いアスペルギルス属の糸状菌の中で、β−フルクトフラノシダーゼ活性を示さない菌株を宿主として利用することが望まれる。
さらにまた、フラクトオリゴ糖の工業生産に利用可能なβ−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子が得られれば、その特性をより改善した変異体の製造が可能となる。例えば、1−ケストースを選択的かつ効率的に生産するβ−フルクトフラノシダーゼが得られれば下記のような利点が存在する。
1−ケストースおよびニストースはショ糖のフルクトースにそれぞれ1および2分子のフルクトースが結合したもので、現在工業的に製造されているフラクトオリゴ糖混合物の一成分である。これらをそれぞれ高純度に調製し結晶化させることによって、フラクトオリゴ糖としての生理効果を保持したまま、物性および食品加工上、新たな優れた特性が現れることが最近見いだされており(特願平7−222923号、特開平6−31160号公報)、これらは新しい特徴を有するフラクトオリゴ糖と言える。
このような状況の下、本発明者らの一部はショ糖を原料とした結晶1−ケストースの工業的製造法を提案している(特願平8−64682号、特願平8−77534号、特願平8−77539号各明細書)。すなわち、フルクトース転移活性を有する酵素をショ糖に作用させて1−ケストースに変換し、クロマト分離法により1−ケストースを純度80%以上に分画した後、これを結晶化原液として純度が95%以上の結晶1−ケストースを得る方法である。この方法において使用されるフルクトース転移活性を有する酵素の性質として、ショ糖から1−ケストースへの変換率が高いことは勿論のこと、クロマト分離および結晶化の各工程において阻害的に作用するニストースの生成が低いことが求められている。現在フラクトオリゴ糖混合物の工業的製造に利用しているアスペルギルス・ニガー由来の酵素を利用した場合のショ糖から1−ケストースへの変換率は44%であり、この時のニストースの生成率は7%であった(特願平8−64682号明細書)。この酵素の性質は、結晶1−ケストースの工業生産という観点からは改善の余地を残すものであるといえる。そこで更に良い性質の酵素のスクリーニングを行い、ペニシリウム・ロックフォルティーとスコプラリオプシス・ブレビカウリスよりそれぞれ新たな酵素を見出した。これらの酵素の性質は、ショ糖から1−ケストースへの変換率がそれぞれ最大で47%および55%であり、その際のニストースの生成率はそれぞれ7%および4%であった(特願平8−77534号、特願平8−77539号明細書)。このように、これらの酵素はショ糖から1−ケストースへの変換率とニストース生成の抑制という点からはアスペルギルス・ニガー由来の酵素より優位であるが、酵素の生産性や安定性においてより改善の余地を残すものである。すなわち、酵素の生産性や安定性などの性質は、現在フラクトオリゴ糖混合物の工業的製造に利用しているアスペルギルス・ニガー由来の酵素と同等で、かつショ糖から1−ケストースへの変換率といった性質はペニシリウム・ロックフォルティーやスコプラリオプシス・ブレビカウリスと同等あるいはそれ以上であるような酵素の開発が期待されている。
[発明の概要]
本発明者らは、今般、新規なβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離に成功し、さらにその新規遺伝子を用いて他のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離法を確立した。
また、本発明者等は、β−フルクトフラノシダーゼ活性を示さない新規糸状菌の作出に成功し、さらにこの糸状菌を宿主として組換えβ−フルクトフラノシダーゼの産生系を確立した。
さらに本発明者等は、、フルクトース転移活性を有するβ−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列を変化させることによってその性質が変わることを見出し、ショ糖より特定のフラクトオリゴ糖、例えば1−ケストース、を選択的かつ効率的に生成するβ−フルクトフラノシダーゼ変異体の作出にも成功した。
本発明は前記知見に基づくものである。
よって、本発明による第一の態様によれば、新規なβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子およびそれがコードするβ−フルクトフラノシダーゼが提供される。
また、本発明による第二の態様によれば、前記の新規なβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を用いたβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離法が提供される。
また、この本発明の第二の態様による方法により、新規β−フルクトフラノシダーゼが提供された。
さらに、本発明による第三の態様によれば、β−フルクトフラノシダーゼ活性を示さない新規糸状菌およびそれを宿主とした組換えβ−フルクトフラノシダーゼの産生系が提供される。
さらにまた、本発明による第四の態様によれば、ショ糖より特定のフラクトオリゴ糖、例えば1−ケストース、を選択的かつ効率的に生成するβ−フルクトフラノシダーゼ変異体が提供される。
そして、本発明の第一の態様によるによるβ−フルクトフラノシダーゼは、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するものである。
また、本発明の第一の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするものである。
また、本発明の第二の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離法は、配列表の配列番号2記載の塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列との相同性を利用することによって、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を単離するものである。
また、本発明の第二の態様による方法によって単離された新規β−フルクトフラノシダーゼは、配列表の配列番号11または13に記載のアミノ酸配列またはその相同体を含んでなるポリペプチドである。
さらに、本発明の第三の態様による糸状菌は、親アスペルギルス属糸状菌の染色体DNA上のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の一部または全部を欠失させることによって、β−フルクトフラノシダーゼ活性を示さないものとされたものである。
またさらに本発明の第四の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ変異体は、親β−フルクトフラノシダーゼを変異させた結果得ることができるフルクトース転移活性を有するβ−フルクトフラノシダーゼ変異体であって、変異が、親β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸の挿入、置換、または欠失、若しくはその一方または両末端への付加であり、かつスクロースを基質としてβ−フルクトフラノシダーゼ変異体のフルクトース転移反応を利用して生成されるフラクトオリゴ糖の成分組成を、親β−フルクトフラノシダーゼの場合の組成と異なるものとなるようにするものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が組み込まれた発現ベクターpAW20−Hygを表す図である。
図2は、本発明の第二の態様による方法によって単離された新規β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が組み込まれた発現ベクターpPRS01−Hygを表す図である。
図3は、アスペルギルス・ニガーNRRL4337株由来のniaD遺伝子を含むDNA断片の制限酵素地図である。
図4は、プラスミドpAN203の作製法を表す図である。
図5は、プラスミドpAN572の作製法を表す図である。
図6は、プラスミドpAN120の制限酵素地図を表す図である。
図7は、プラスミドpY2831の作製法を表す図である。
図8は、プラスミドpYSUC(F170W)の作製法を表す図である。
図9は、プラスミドpAN531の作製法を表す図である。
[発明の具体的説明]
微生物の寄託
本発明によるβ−フルクトフラノシダーゼ活性を示さない新規糸状菌アスペルギルス・ニガーNIA1602株は、FERM−BP5853の受託番号のもと、寄託日1997年3月6日として、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)に寄託されている。
本発明の第一の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ
本発明の第一の態様によるポリペプチドは、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するものである。この配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドはβ−フルクトフラノシダーゼ作用を有する酵素として作用する。また、本発明によるポリペプチドには、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の相同体が含まれる。ここで「その相同体」とは、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、いくつかのアミノ酸の挿入、置換または欠失、若しくはその一方または両末端への付加がなされたものであって、かつそのβ−フルクトフラノシダーゼ作用を保持するものをいうものとする。このような「相同体」は、配列番号1に示される配列を参照すれば、当業者であれば格別の困難性なしに選択し、製造可能であることは明らかである。
配列番号1に示されるアミノ酸配列が有するβ−フルクトフラノシダーゼは、その転移活性が高く、フラクトオリゴ糖を効率良く生成する。具体的には、濃度10重量%以上のショ糖溶液を基質として用いた反応において、転移活性が加水分解活性と比較して10倍以上高く、フラクトオリゴ糖への変換率が50%以上である。
本発明の第一の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ 遺伝子
本発明の第一の態様によれば、β−フルクトフラノシダーゼをコードする新規遺伝子として、配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列を含んでなるDNA断片が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による新規遺伝子の好ましい具体例として、配列表の配列番号2に示され塩基配列からなるDNA配列を含んでなるDNA断片が提供される。
一般に、タンパク質のアミノ酸配列が与えられれば、それをコードする塩基配列は、いわゆるコドン表を参照して容易に定まる。よって配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードする種々の塩基配列を適宜選択することが可能である。従って、本発明において「配列番号1に示されるアミノ酸をコードするDNA配列」とは、配列番号2に示される塩基配列を有するもの、およびその縮重関係にあるコドンが使用されている以外は同一の塩基配列を有しかつ配列番号1に示されるアミノ酸をコードする塩基配列をも意味するものとする。
さらに、前記したように本発明による新規酵素には、配列番号1に示されるアミノ酸配列の相同体をも包含するものである。従って、本発明によるDNA断片には、さらにこの相同体をコードする塩基配列も包含される。
本発明によるDNA断片はその塩基配列が定まっていることから、そのDNA断片を取得する一つの手段は核酸合成の手法に従って製造することである。
またこの配列はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、好ましくはアスペルギルス・ニガーACE−2−1株(FERM−P5886またはATCC20611)、から遺伝子工学的な手法を用いて得ることができる。その具体的な方法は後記する実施例Aに詳細に説明されている。
β−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子の発現
本発明の第一の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼは、それをコードするDNA断片によって形質転換された宿主細胞において製造することができる。より具体的には、本発明の第一の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA断片を、宿主細胞内で複製可能でかつ同遺伝子が発現可能な状態で含むDNA分子、特に発現ベクター、の形態とし、それによって宿主細胞の形質転換を行い、その形質転換体を培養する。
従って、本発明によれば、さらに本発明によるβ−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子を含んだDNA分子、特に発現ベクター、が提供される。このDNA分子は、ベクター分子に本発明によるβ−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA断片を組み込むことによって得ることが出来る。本発明の好ましい態様によれば、このベクターはプラスミドである。
この本発明によるDNA分子の作成は遺伝子工学の分野で慣用されている手法に準じて実施されてよい。
本発明において利用されるベクターは、使用する宿主細胞の種類を勘案しながら、ウイルス、プラスミド、コスミドベクターなどから適宜選択することができる。例えば、宿主細胞が大腸菌の場合はλファージ系のバクテリオファージ、pBR,pUC系のプラスミド、枯草菌の場合はpUB系のプラスミド、酵母の場合はYEp、YCp系のベクターが挙げられる。
このプラスミドは形質転換体の選択マーカーを含むのが好ましく、選択マーカーとしては薬剤耐性マーカー、栄養要求マーカー遺伝子を使用することができる。その好ましい具体例としては、使用する宿主細胞が最近の場合はアンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子などであり、酵母の場合はトリプトファン合成遺伝子(TRP1)、ウラシル合成遺伝子(URA3)、ロイシン合成遺伝子(LEU2)などがあり、カビの場合はハイグロマイシン耐性遺伝子(Hyg)、ビアラホス耐性遺伝子(Bar)、硝酸還元酵素遺伝子(niaD)などが挙げられる。
さらに、本発明による発現ベクターとしてのDNA分子は、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、転写開始信号、リボゾーム結合部位、翻訳停止シグナル、転写終結信号などの転写調節信号、翻訳調節信号などを有しているのが好ましい。
プロモーターとしては、挿入断片に含まれる宿主中において機能することができるプロモーターはもちろんのこと、大腸菌においてはラクトースオペロン(lac)、トリプトファンオペロン(trp)等のプロモーター、酵母ではアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH)、酸性フォスファターゼ遺伝子(PHO)、ガラクトース遺伝子(GAL)、グリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(GPD)などのプロモーター、カビではα−アミラーゼ遺伝子(amy)、セロビオハイドロラーゼI遺伝子(CBHI)等のプロモーターが好ましく用いることができるものとして挙げられる。
また、宿主細胞が枯草菌、酵母、カビの場合には、分泌型ベクターを使用して、菌体外に組換えβ−フルクトフラノシダーゼを分泌させることも有利である。宿主細胞としては、宿主−ベクター系が確立されているものであるならばいずれも利用可能であるが、好ましくは酵母、カビなどが挙げられる。更に後記する本発明の第三の態様による糸状菌を用いることも好ましい。
前記した形質転換体の産生する組換え新規酵素は、次のようにして得ることが出来る。まず前記の宿主細胞を適切な条件下で培養し、得られた培養物から公知の方法、例えば遠心分離により培養上清あるいは菌体を得る。菌体の場合にはこれを適切な緩衝液中に懸濁し、凍結融解、超音波処理、磨砕等により菌体を破砕し、遠心分離またはろ過により組換え新規酵素を含有する菌体抽出物を得る。
酵素の精製は、慣用されている分離、精製法を適宜組み合わせて実施することができる。例えば、熱処理のような耐熱性の差を利用する方法、塩沈澱および溶媒沈澱のような溶解性の差を利用する方法、透析、限外ろ過、ゲルろ過およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーのような特異的親和性を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーのような疎水性の差を利用する方法、更に等電点電気泳動のような等電点の差を利用する方法等が挙げられる。
本発明の第一の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ を用いたフラクトオリゴ糖の製造
更に本発明によれば、前記の組換え宿主または組換えβ−フルクトフラノシダーゼを用いた、フラクトオリゴ糖の製造法が提供される。
すなわち、本発明によるフラクトオリゴ糖の製造法は、前記の組換え宿主または組換えβ−フルクトフラノシダーゼと、スクロースとを接触させることによって実施される。
本発明による組換え宿主または組換えβ−フルクトフラノシダーゼと、スクロースとの接触態様およびその条件は、組換え新規酵素が該糖に作用可能な態様である限り特に限定されない。溶液中で接触させる場合の好ましい態様を示せば次の通りである。すなわち、スクロースの使用濃度は、用いる糖が溶解されうる範囲であれば、本酵素の比活性、反応温度等を考慮して適宜選択してよいが、5〜80%の範囲とするのが一般的であり、好ましくは30〜70%の範囲である。糖と酵素との反応における反応温度およびpH条件は、組換え新規酵素の最適条件下で行うことが好ましい。よって、30〜80℃程度、pH4〜10程度の条件下で行うのが一般的であり、好ましくは40〜70℃、pH5〜7の範囲である。
また、組換え新規酵素の精製の程度も適宜選択することができ、形質転換体の培養上清あるいは菌体破砕物から粗酵素のまま用いることもでき、また、各種精製工程で得られた精製酵素として利用してもよい。さらには各種精製手段を経て単離精製された酵素として用いてもよい。
更に酵素は、常法に準じて担体に固定化された状態でスクロースと接触させてもよい。
生成したフラクトオリゴ糖は、反応液を公知の方法に従い精製することにより得ることが出来る。例えば、加熱して酵素を失活させた後、活性炭により脱色し、さらに、イオン交換樹脂で脱塩する方法が挙げられる。
本発明の第二の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ 遺伝子の単離法
本発明の第二の態様による遺伝子の単離法において利用される塩基配列は、配列番号2に示されるものである。
本発明による第二の態様による遺伝子の単離法にあっては、配列表の配列番号2に示される塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列との相同性を利用する。その具体的な方法としては、
▲1▼ β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が含まれると予想される遺伝子ライブラリーを、前記塩基配列をプローブとしてスクリーニングする方法、
▲2▼ 前記塩基配列情報に基づいたプライマーを調製し、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が含まれると予想されるサンプルを鋳型としたPCRを実施する方法
が挙げられる。
前記▲1▼の方法をより具体的に説明すると、その方法は、
β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が含まれると予想される遺伝子ライブラリーを用意する工程と、
配列表の配列番号2記載の塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列を用いて前記遺伝子ライブラリーをスクリーニングし、前記配列表の配列番号2記載の塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列とハイブリダイズする配列を遺伝子ライブラリーから選択し、その後選択された配列を単離する工程と、そして
遺伝子ライブラリーから選択、単離された配列から、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を単離する工程と
を含んでなる。
ここで、遺伝子ライブラリーは、染色体ライブラリー、cDNAライブラリーのいずれであってもよい。遺伝子ライブラリーの作製は、公知の方法によって実施されてよい。
また、遺伝子ライブラリーのスクリーニングにおいて、配列番号2記載の塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列は、好ましくは配列番号2記載の塩基配列の一部を含んでなる塩基配列、すなわちプローブとして用いられるのが好ましい。また、このプローブは標識されてなるのが好ましい。
遺伝子ライブラリーのスクリーニングの方法、プローブを標識する方法およびその標識、選択された配列の単離、さらにその単離配列からのβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離は、遺伝子工学の分野で慣用されている手法によって、適切に選択された条件下で実施されてよい。配列番号2の配列が与えられているのであるから、当業者であれば、それらの手法および条件を容易に選択できると考えられる。
また、前記▲2▼の方法をより具体的に説明すると、その方法は、
配列表の配列番号2記載の塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列からなるプライマーを用意する工程と、
前記プライマーを用い、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が含まれると予想されるサンプルを鋳型としたPCRを実施する工程と、そして
増幅されたPCR産物から、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を単離する工程と
を含んでなる。
ここで、利用されるプライマーの調製、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が含まれると予想されるサンプルの調製、PCRは、遺伝子工学の分野で慣用されている手法によって、適切に選択された条件下で実施されてよい。配列番号2の配列が与えられているのであるから、当業者であれば、それらの手法および条件を容易に選択できると考えられる。
本発明によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離法が適用される対象は、β−フルクトフラノシダーゼが含まれると予想されるものであれば特に限定されないが、例えば、真菌類、より具体的にはアスペルギルス属、ペニシリウム属、またはスコプラリオプシス属に属する微生物である。
本発明の第二の態様による遺伝子の単離法により得られ た新規β−フルクトフラノシダーゼおよびその遺伝子
本発明の第二の態様による遺伝子の単離法により提供される新規β−フルクトフラノシダーゼ酵素は、配列表の配列番号11または13に示されるアミノ酸配列を有するものである。
さらに、本発明によるβ−フルクトフラノシダーゼ酵素は、配列表の配列番号11または13に示されるアミノ酸配列の相同体を包含する。ここで「その相同体」とは、配列番号11または13に示されるアミノ酸配列において、幾つかのアミノ酸の挿入、置換または欠失、もしくはその一方または両末端への付加がなされたものであって、かつそのβ−フルクトフラノシダーゼ作用を保持するものを言うものとする。このような「相同体」は、配列番号11または13に示される配列を参照すれば、当業者であれば困難性なしに選択し、製造可能であることは明らかである。
本発明による配列番号11および13に記載のアミノ酸配列を有するβ−フルクトフラノシダーゼは、その転移活性が高く、フラクトオリゴ糖を効率良く生成する。具体的には、30%以上のショ糖を基質として用いた反応において、転移活性が加水分解活性と比較してそれぞれ4倍以上および7倍以上高く、フラクトオリゴ糖への変換率がともに50%以上である。
本発明の第二の態様による遺伝子の単離法により提供されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードする新規遺伝子は、配列表の配列番号11または13に示されるアミノ酸配列またはその相同体をコードするDNA配列を含んでなるものである。
一般に、蛋白質のアミノ酸配列が与えられれば、それをコードする塩基配列は、いわゆるコドン表を参照して容易に定まる。よって配列番号11あるいは13に示されるアミノ酸配列をコードする種々の塩基配列を適宜選択することが可能である。従って、本発明において「配列番号11あるいは13に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列」とは、配列番号12あるいは14に示される塩基配列を有するもの、およびその縮重関係にあるコドンが使用されている以外は同一の塩基配列を有しかつ配列番号11あるいは13に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列をも意味するものとする。
本発明の好ましい態様によれば、本発明による新規遺伝子の好ましい具体例として、配列表の配列番号12または14に示される塩基配列を有するDNA配列を含んでなるDNA断片が提供される。
さらに、前記したように本発明による新規遺伝子がコードする酵素には、配列番号11あるいは13に示されるアミノ酸配列の相同体をも包含するものである。従って、本発明によるDNA断片には、さらにこの相同体をコードする塩基配列も包含される。
本発明によるDNA断片はその塩基配列が定まっていることから、そのDNA断片を取得する一つの手段は核酸合成の手法に従って製造することである。
またこの配列はペニシリウム・ロッケフォルチ(Penicillium roqueforti)あるいはスコプラリオプシス・ブレヴィカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)、好ましくはペニシリウム・ロッケフォルチIAM7254株あるいはスコプラリオプシス・ブレヴィカウリスIFO4843株、から遺伝子工学的手法を用いて得ることが出来る。その具体的な方法は後記する実施例Bに詳細に説明されている。
本発明の第三の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ 活性を示さないアスペルギルス属糸状菌およびその取得
本発明の第三の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ活性を示さないアスペルギルス属糸状菌とは、該糸状菌を培養して得られる培養上清および/または菌体を破砕して得られる粗酵素を用い、ショ糖を基質として反応させたとき、基質であるショ糖に変換を来さないものを意味する。
このような糸状菌は、β−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子自体を不活化することによって得ることができる。さらに、β−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子の発現に係わる機構の不活化や、β−フルクトフラノシダーゼ蛋白質の生産、分泌に係わる機構の不活化などによっても取得することができる。
しかしながら、β−フルクトフラノシダーゼ活性を示さない糸状菌を組換えβ−フルクトフラノシダーゼを生産する宿主として利用することを勘案した場合、変異の安定性や酵素の生産性といった観点から、β−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子自体が不活化されたものが好ましい。特にβ−フルクトフラノシダーゼをコードしている領域の一部若しくは全てを欠質しているものが好ましい。
このような糸状菌を取得するための方法としては、親アルペルギルス属糸状菌をNTG(1−メチル−3−ニトロ−1−ニトロソグアニジン)、紫外線といった変異原によって処理し、変異を誘発させる方法が利用可能であるが、組換えDNA技術を利用した方法が好ましい。
組換えDNA技術を利用してβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を不活性化させる方法としては、相同組換えの機構を利用して行う方法があり、大別して1段階遺伝子ターゲッティング法および2段階遺伝子ターゲッティング法の2通りの方法が挙げられる。
1段階遺伝子ターゲッティング法においては、挿入型ベクターまたは置換型ベクターを利用する。
挿入型ベクターとして、不活性化されたβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子と、形質転換体を選択するための選択マーカー遺伝子とを含んでなるベクターを用意する。ここで、不活性化されたβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子とは、単独で標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を不活化可能な変異(好ましくは欠失)が離れた2箇所に導入された以外は標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子と異なるところがないβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子である。
このような挿入型ベクターを細胞に導入し、2箇所の変異箇所の間の領域で、染色体上の標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子と相同組換えを起こさせる。その結果、染色体上に標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子は2コピーとなる。どちらの標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子にもそれぞれ1箇所ずつ変異が導入され、標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を不活化することができる。
一方、置換型ベクターとして、標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子内部に選択マーカー遺伝子を挿入して、分断された標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を含むベクターを用意する。
この置換型ベクターを細胞に導入し、選択マーカー遺伝子の両側のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子に由来する領域でそれぞれ相同組換えを起こさせる。その結果、染色体上の標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子は選択マーカー遺伝子が挿入された遺伝子と置換されるため、標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が不活化される。
また、2段階遺伝子ターゲッティング法においては、直接置換法と、ヒットエンドラン(hit and run)置換法とが利用可能である。
直接置換法の第一段階は、1段階遺伝子ターゲッティング法の置換型ベクターを用いる方法と同様の操作を行う。第2段階として、ベクター上に、単独で標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を不活化可能な変異(好ましくは欠失)が少なくとも1つ以上導入された標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を作製する。このベクターを細胞に導入し、変異箇所の両側の領域で、染色体上の、選択マーカー遺伝子で分断された標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子と相同組換えを起こさせる。その結果、標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を、不活化された標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子と置き換えることができる。このような組換えを起こした菌株は、マーカー遺伝子が欠落したことを指標に選抜することができる。
一方、ヒットエンドラン(hit and run)置換法の第一段階では、単独で標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を不活化可能な変異(好ましくは欠失)が少なくとも1つ以上導入された標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子と選択マーカー遺伝子とからなるベクターを用意する。このベクターを細胞に導入し、標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子上の変異箇所の上流領域で染色体上の標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子と相同組換えを起こさせる。その結果、染色体上で、選択マーカー遺伝子を含むベクター本体が2コピーの標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子により挟まれた形となり、2コピーの標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子のうち、変異を含むものと含まないものが生じる。続いて、2コピーの標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の間に挟まれたベクター部分をループアウトさせ、変異箇所の下流領域で再び相同組換えを生じさせる。それによって、選択マーカー遺伝子を含むベクターと1コピーの標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子とが欠落して、染色体上の遺伝子を変異を含む標的β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子に置き換えることができる。このような組換えを起こした菌株は、マーカー遺伝子が欠落したことを指標に選抜することができる。この際、第一段階として変異箇所の下流部分で相同組換えを起こさせ、続いて上流部分で相同組換えを起こさせても同様の結果が得られることは明らかである。
以上の操作を行う上で、選択マーカー遺伝子としては形質転換体を選択できるものであれば何でも使用可能である。また、2段階遺伝子ターゲッティング法においては、選択マーカー遺伝子が欠落した株を選抜する操作があるため、選択マーカー遺伝子が欠落した株をポジティブに選択できるような、たとえば硝酸還元酵素遺伝子(niaD)、オロチジン酸脱炭酸酵素遺伝子(pyrG)、ATP−スルフリラーゼ遺伝子(sC)などが好ましい。
本発明の第三の態様による糸状菌の具体例としては、アスペルギルス・ニガーNIA1602株(FERM BP−5853)が挙げられる。
本発明の第三の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ 活性を示さない糸状菌を宿主とする組換えβ−フルクト フラノシダーゼの製造方法
本発明による糸状菌は、組換えβ−フルクトフラノシダーゼの製造のために好ましく用いることができる。具体的には、β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA断片を、本発明の宿主細胞内で複製可能でかつ同遺伝子が発現可能な状態で含むDNA分子、特に発現ベクター、の形態とし、これにより本発明による糸状菌の形質転換を行い、この形質転換体において、β−フルクトフラノシダーゼ活性を有するものとしては単一のものとして、組換えβ−フルクトフラノシダーゼを産生することができる。
上記においてDNA分子の好ましい態様はプラスミドであり、遺伝子工学の分野で慣用されている手法に準じて実施されて良い。
本発明の好ましい態様によれば、β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA断片の具体例として、前記した本発明の第一の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA、本発明の第二の態様による方法によって単離された新規β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA、後記する本発明の第四の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ変異体をコードするDNAが挙げられる。
また、この第三の態様による糸状菌の宿主として、β−フルクトフラノシダーゼを発現させるための発現系の好ましい例としては、前記した本発明の第一の態様に関して説明した発現系を利用することができる。
具体的には、前記プラスミドは形質転換体の選択マーカー遺伝子を含むのが好ましく、選択マーカー遺伝子としては薬剤耐性マーカー遺伝子、栄養要求マーカー遺伝子を使用することができる。その好ましい具体例としては、ハイグロマイシン耐性遺伝子(Hyg)、ビアラホス耐性遺伝子(Bar)、硝酸還元酵素遺伝子(niaD)、オロチジン酸脱炭酸酵素遺伝子(pyrG)、ATP−スルフリラーゼ(sC)などが挙げられる。
さらに、発現ベクターとしてのDNA分子は、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、転写開始信号、翻訳停止シグナル、転写終結信号などの転写調節信号、翻訳調節信号などを有しているのが好ましい。プロモーターとしては、挿入断片に含まれる本発明の宿主中において機能することができるプロモーターはもちろんのこと、α−アミラーゼ遺伝子(amy)、グルコアミラーゼ遺伝子(gla)、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子、グリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(gpd)、フォスフォグリセレートキナーゼ遺伝子(pgk)などのプロモーターが好ましく用いることができるものとして挙げられる。
また、発現ベクターを分泌型ベクターとして、菌体外に組換えβ−フルクトフラノシダーゼを分泌生産させることも有利である。
本発明の第三の態様による糸状菌を利用したβ−フルクトフラノシダーゼの生産は、β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAによって形質転換された本発明による糸状菌を適切な条件下で培養し、得られた培養物から公知の方法、例えば遠心分離により培養上清あるいは菌体を得る。菌体の場合、これを適切な緩衝液中に懸濁し、凍結融解、超音波処理、摩砕などにより菌体を破砕し、遠心分離または濾過により組換えβ−フルクトフラノシダーゼを含有する菌体抽出物を得ることができる。
本発明の第四の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ 変異体
本発明の第四の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ変異体は、親β−フルクトフラノシダーゼを変異させた結果得ることができるものである。さらに、本発明にあっては、この変異が、親β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸の挿入、置換、または欠失、若しくはその一方または両末端への付加であり、かつスクロースを基質としてβ−フルクトフラノシダーゼ変異体のフルクトース転移反応を利用して生成されるフラクトオリゴ糖の成分組成を、親β−フルクトフラノシダーゼの場合の組成と異なるものとなるようにするものであることを意味する。
本発明において、親β−フルクトフラノシダーゼは、フルクトース転移活性を有するβ−フルクトフラノシダーゼであればその起源は限定されないが、好ましくは真菌類由来、特にアスペルギルス属、ペニシリウム属、スコプラリオプシス属、フザリウム属、またはオーレオバシジウム属に属するものに由来するβ−フルクトフラノシダーゼが好ましい。より好ましくは、アスペルギルスに由来するβ−フルクトフラノシダーゼであり、とりわけ前記した本発明の第一の態様による、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列よりなるβ−フルクトフラノシダーゼまたはその相同体が好ましい。また、親β−フルクトフラノシダーゼは、前記した本発明の第二の態様による単離法によって得られたβ−フルクトフラノシダーゼまたはその相同体であってもよい。
本発明の好ましい態様によれば、親β−フルクトフラノシダーゼが配列番号1に示されるアミノ酸配列よりなるものである場合、その配列中の170、300、313、および386番目のアミノ酸からなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基によって置換されてなる変異体がその具体例として挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、
170番目のアミノ酸が、トリプトファン、フェニルアラニン、およびチロシンからなる群から選択される芳香族アミノ酸、より好ましくはトリプトファンに、
300番目のアミノ酸が、トリプトファン、バリン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸に、
313番目のアミノ酸が、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはリジンまたはアルギニンに、
386番目のアミノ酸が、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはリジンに
置換されたものが好ましいものとして挙げられる。これら変異体は、ショ糖より1−ケストースを選択的かつ効率的に生成することができるという有利な性質を有している。
本発明の特に好ましい態様によれば、170番目、300番目および313番目のアミノ酸がトリプトファン、トリプトファン、およびリジンに、またはトリプトファン、バリン、およびリジンにそれぞれ置換されたものである。これら変異体は、ショ糖より1−ケストースをより選択的かつ効率的に生成することができるという有利な性質を有している。
また、親β−フルクトフラノシダーゼが配列番号1に示されるアミノ酸配列の相同体である場合には、前記の170、300、313、および386番目のアミノ酸に相当する位置のアミノ酸からなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基により置換されてなるものがその具体例として挙げられる。ここで、配列番号1に示されるアミノ酸配列よりなる親β−フルクトフラノシダーゼの相同体において置換されるべきアミノ酸残基の位置は、公知のアルゴリズムによるアミノ酸配列の比較によって容易に選択することができる。一方、公知のアルゴリズムによるアミノ酸配列の比較が困難な場合にあっては、酵素の立体構造を比較することによって置換されるべきアミノ酸残基の位置を特定することができる。
本発明の第四の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ 変異体の作製
本発明の第四の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ変異体は、組換えDNA技術、ポリペプチド合成技術などによって作製することができる。
組換えDNA技術を用いる場合には、親β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNAを取得し、このDNA内で特異的部位に突然変異を発生させてコードするアミノ酸を置換させた後、変異処理を施したDNAを含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、形質転換細胞を培養することによってβ−フルクトフラノシダーゼ変異体を調製することができる。
遺伝子の特定部位に突然変異を導入するための幾つかの方法は、Gapped duplex法(Methods in Enzymology,154,350(1987))、Kunkel法(Methods in Enzymology,154,367(1987))など当業者に公知である。これらの方法は、β−フルクトフラノシダーゼをコードするDNA内で特異的部位に突然変異を発生させることに利用することができる。変異処理後のDNAの塩基配列は、マキサム−ギルバードの化学修飾法(Methods in Enzymology,65,499(1980))やジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Gene,19,269(1982))等により確認することができ、β−フルクトフラノシダーゼ変異体のアミノ酸配列は、確認された塩基配列より解読することができる。
本発明の第四の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ 変異体の生産
本発明の第四の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ変異体は、それをコードするDNA断片を、宿主細胞内で複製可能でかつ同遺伝子が発現可能な状態で含むDNA分子、特に発現ベクター、の形態として宿主細胞の形質転換を行い、その宿主細胞において産生させることができる。
従って、本発明によれば、本発明のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体をコードする遺伝子を含んだDNA分子、特に発現ベクター、が提供される。このDNA分子は、ベクター分子に本発明によるβ−フルクトフラノシダーゼ変異体をコードするDNA断片を組み込むことによって得ることができる。本発明の好ましい形態によれば、このベクターはプラスミドである。
この本発明によるDNA分子の作製は遺伝子工学の分野で慣用されている手法に準じて実施されて良い。
本発明において利用されるベクターは、使用する宿主細胞の種類を勘案しながら、ウイルス、プラスミド、コスミドベクターなどから適宜選択することができる。例えば、宿主細胞が大腸菌の場合はλファージ系のバクテリオファージ、pBR、pUC系のプラスミド、枯草菌の場合はpUB系のプラスミド、酵母の場合は、YEp、YRp、YCp系のプラスミドベクターが挙げられる。
このプラスミドは形質転換体の選択マーカーを含むのが好ましく、選択マーカーとしては薬剤耐性マーカー、栄養要求マーカー遺伝子を使用することができる。その好ましい具体例としては、使用する宿主細胞が細菌の場合は、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子などであり、酵母の場合は、トリプトファン合成遺伝子(TRP1)、ウラシル合成遺伝子(URA3)、ロイシン合成遺伝子(LEU2)などであり、カビの場合には、ハイグロマイシン耐性遺伝子(Hyg)、ビアラホス耐性遺伝子(Bar)、硝酸還元酵素遺伝子(niaD)などが挙げられる。
さらに、本発明による発現ベクターとしてのDNA分子は、β−フルクトフラノシダーゼ変異体をコードする遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、転写開始信号、リボゾーム結合部位、翻訳停止シグナル、転写終結信号などの転写調節信号、翻訳調節信号などを有しているのが好ましい。
プロモーターとしては、挿入断片に含まれる宿主中において機能することができるプロモーターはもちろんのこと、大腸菌においてはラクトースオペロン(lac)、トリプトファンオペロン(trp)などのプロモーター、酵母ではアルコールでヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH)、酸性フォスファターゼ(PHO)、ガラクトース遺伝子(GAL)、グリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(GAP)などのプロモーター、カビではα−アミラーゼ遺伝子(amy)、グルコアミラーゼ遺伝子(gla)、セロビオハイドロラーゼ遺伝子(CBHI)、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子などのプロモーターが好ましく用いることができるものとして挙げられる。
また、宿主細胞が枯草菌、酵母、カビの場合には、分泌型ベクターを使用して、菌体外にβ−フルクトフラノシダーゼ変異体を分泌生産させることも有利である。
宿主細胞としては、宿主−ベクター系が確立されているものであれば何でも利用可能であるが、好ましくは酵母、カビなどが挙げられる。また、ショ糖資化性がない宿主は、発現させたβ−フルクトフラノシダーゼ変異体以外にショ糖を基質とする酵素が存在しないため、β−フルクトフラノシダーゼ変異体を精製することなく、粗酵素の状態でフラクトオリゴ糖の製造に利用できるため、その利用は特に好ましい。よって、本発明の好ましい態様によれば、宿主細胞として、前記本発明の第三の態様による糸状菌を用いることができる。またさらに、ショ糖資化性がない宿主としてはトリコデルマ属に属する数種の菌株やある種の酵母(Oda,Y.and Ouchi,K.,Appl.Environ.Microbiol.,55,1742−1747,1989)を利用することができる。
本発明の第四の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼ 変異体を用いたフラクトオリゴ糖の製造
更に本発明によれば、前記β−フルクトフラノシダーゼ変異体を用いたフラクトオリゴ糖の製造法が提供される。このフラクトオリゴ糖の製造法は、前記のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体産生能を有する宿主細胞またはβ−フルクトフラノシダーゼ変異体と、スクロースとを接触させることによって実施される。
このβ−フルクトフラノシダーゼ変異体を用いたフラクトオリゴ糖の製造法は、前記の本発明の第一の態様によるβ−フルクトフラノシダーゼを用いてたフラクトオリゴ糖の製造法と実質的に同様の条件で実施することができる。また、その精製も同様であってよい。
実施例
実施例A
実施例A1:β−フルクトフラノシダーゼの精製と部分アミノ酸配列の決定
アスペルギルス・ニガーACE−2−1(ATCC20611)の菌体からのβ−フルクトフラノシダーゼの精製は、Agric.Biol.Chem.,53,667−673(1989)記載の方法により行い、電気泳動的に均一な標品を得た。
精製酵素をリシルエンドペプチダーゼ(生化学工業社)で分解し、生じたペプチドをHPLC(ウォーターズ社)で分取した。カラムはTSKgel ODS120T(東ソー社)を用い分取した各ペプチドのアミノ酸配列をプロテインシーケンサー(島津製作所社)を用いて解析した。そして、4箇所のアミノ酸部分配列を決定した。決定した4箇所のアミノ酸部分配列は配列表の配列番号3〜6に示されるとおりであった。
一方、リシルエンドペプチダーゼで分解する前の酵素蛋白のN末端を同様にプロテインシーケンサーを用いて解析した。その配列は配列表の配列番号7に示されるとおりであった。
実施例A2:PCR法によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の部分DNA断片の取得
アスペルギルス・ニガーACE−2−1(ATCC20611)をYPD培地(1%酵母エキス、2%ポリペプトン、2%グルコース)に植菌して培養した。その後集菌し、凍結乾燥した。これを細かく粉砕した後に、TE緩衝液(10mM Tris−HCl(pH8.0),1mM EDTA)を8ml加え、更に10%SDSを含むTE緩衝液を4ml加え、60℃、30分間保温した。その後、フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール(25:24:1)を12ml加え激しく振とうした。遠心後、水槽を別の容器に移し、これに1mlの5M酢酸カリウム溶液を加え、氷中に1時間以上放置した。遠心後、水層を別の容器に移し、2.5容のエタノールを加え、エタノール沈澱をした。沈澱を乾燥させた後、5mlのTE緩衝液に溶解し、10mg/ml RNase A(シグマ社)溶液を5μl加え、37℃、1時間保温し、更に20mg/ml proteinase K(和光純薬社)溶液を50μl加え、37℃、1時間保温した。次に、3mlのPEG溶液(20%ポリエチレングリコール6000、2.5M塩化ナトリウム)を加え、DNAを沈澱させた。沈澱を500μlのTE緩衝液に溶解し、フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール抽出を2回行い、エタノール沈澱をした。沈澱を70%エタノールで洗浄後、乾燥し、適当量のTE緩衝液に溶解し染色体のDNA試料とした。
PCRはPerkin Elmer Cetus DNA Thermal Cyclerを使用して行った。すなわち、上述のようにして調製した染色体DNA0.5μl(1μg相当量)、10倍濃度の反応緩衝液[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、1%TritonX−100]10μl、2.5mM dNTP溶液8μl、1mMプライマー#1として配列表の配列番号8の+鎖DNAプライマー及びプライマー#2として配列表の配列番号9の−鎖DNAプライマー各1μl、TaqDNAポリメラーゼ(和光純薬社)0.5μl、滅菌水79μlを加えて100μlとした。反応は94℃、5分間の前処理後、94℃1分間(変性ステップ)、54℃2分間(アニーリングステップ)、72℃3分間(伸長ステップ)のインキュベーションを25サイクル行った。最後に72℃で7分間のインキュベーションを行い反応を終了した。得られた反応液をフェノール・クロロホルム・イソアミルアルコールで抽出し、その後エタノール沈澱を行った。この沈澱を20μlのTE緩衝液に溶解した後、アガロースゲル電気泳動を行い、特異的に増幅された約800bpのバンドを常法に従って切り出してDNA断片を回収し、エタノール沈澱を行った。
DNA沈澱を8μlの滅菌水に溶解し、DNAブランティングキット(宝酒造社)を用いて末端を平滑化した。さらに、T4DNAキナーゼ(日本ジーン社)を利用して5'末端をリン酸化した後、pUC119のSma I部位にクローニングした。このプラスミドの挿入断片についてファルマシア社製蛍光シークエンサーALFred DNAシークエンサーを用いて塩基配列を決定した。この結果、決定されたPCRフラグメントの塩基配列は配列表の配列番号10に示される通りであった。このPCRフラグメントの全長は788bpであったが、このDNA断片がコードするアミノ酸配列のうち5'側から14アミノ酸が配列表の配列番号3の7〜20番目のアミノ酸に、5'側から176〜195番目のアミノ酸が配列表の配列番号4の1〜20番目のアミノ酸に、また3'側から10アミノ酸が配列表の配列番号5の1〜10番目のアミノ酸に相当し、精製β−フルクトフラノシダーゼから決定したアミノ酸配列に一致した。
実施例A3:β−フルクトフラノシダーゼをコードする完全長DNA断片を含むクローンのスクリーニング
上記実施例A2で調製した染色体DNA標品約10μgを制限酵素EcoR Iで消化した後、アガロースゲル電気泳動を行い、Molecular Cloning(Cold Spring Harbour、1982年)に記載の方法に従い、Hybond−N+メンブレン(アマシャム社)にブロッティングした。
このメンブレンと、上記実施例A2で作成した788bpのPCR断片を用い、ECLダイレクトDNA/RNAラベリング・検出システム(アマシャム社)を使用してサザン解析を行った。その結果、約15kbpの位置にプローブとハイブリダイズするDNA断片が存在することが明らかとなった。
そこで前出の染色体DNA標品約20μgを制限酵素EcoR Iで消化した後、アガロースゲル電気泳動を行い、Molecular Cloning(前掲)に記載の方法に従い、15kbp付近のDNA断片を分離、回収した。
こうして回収した約15kbpのDNA断片約0.5μgと、あらかじめ制限酵素Hind IIIとEcoR Iで二重消化しておいたλDASH II1μgをライゲーションし、ストラタジーン社製のin vitroパッケージングキットGIGA PACK II Goldを用いてパッケージングし、大腸菌XL1−Blue MRA(P2)に感染させることによりライブラリーを作成した。
前出の788bpのPCR断片をプローブとして用い、ECLダイレクトDNA/RNAラベリング・検出システム(アマシャム社)を使用してプラークハイブリダイゼーションを行い、15,000個のプラークの中から25個の陽性クローンを得た。このうち3個の陽性クローンについて2次スクリーニングを実施し、陽性クローンを純化した後、ファージDNAを調製し、制限酵素による解析を行った。その結果、どのクローンも同一の約15kbpのEcoR I断片を有することが明らかとなった。
この約15kbpのEcoR I断片より必要なDNA領域を適宜制限酵素で小断片化した後にプラスミドベクターpUC118あるいはpUC119にサブクローニングを行った。得られたサブクローンからプラスミドDNAを常法により調製し、前記実施例A2と同様にしてファルマシア社製蛍光シークエンサーALFred DNAシークエンサーを用いて塩基配列を決定した。この結果、配列表の配列番号2に示されるような塩基配列が得られた。
実施例A4:トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の発現
実施例A3で調製したファージDNAよりβ−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子を含む約5.5kbpのHind III−Xho I断片を調製し、これをプラスミドベクターpUC119のHind III−Sal I部位に連結し、プラスミドpAW20を得た。
一方、プラスミドpDH25(D.Cullen et al.,(1987)Gene,57,21−26)をEcoR Iで部分消化し、Xba Iリンカーを連結した後、さらにXba Iで消化し、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)由来のtrpC遺伝子のプロモーター、ターミネーターと大腸菌由来のハイグロマイシンBリン酸化酵素遺伝子で構成されるハイグロマイシン耐性遺伝子発現カセットを3kbpのXba I断片として調製した。この断片をプラスミドpAW20のXba I部位に連結してプラスミドpAW20−Hygを構築した(図1)。
トリコデルマ・ビリデをシード培地(3%グルコース、0.1%ポリペプトン、1%酵母エキス、0.14%硫酸アンモニウム、0.2%リン酸二水素カリウム、0.03%硫酸マグネシウム)で、28℃、20時間培養し、菌糸体を3000r.p.m.、10分間の遠心分離により集菌し、0.5Mショ糖溶液で2回洗浄した。
上述のようにして得た菌糸体を、セルラーゼオノズカR−10(生化学工業社)5mg/ml、ノボザイム234(ノボノルディスク社)5mg/mlを含む0.5Mショ糖溶液に懸濁し、30℃、1時間ゆっくり振とうしてプロトプラストを形成させた。濾過により菌体残渣を除去し、2500r.p.m.、10分間遠心してプロトプラストを集めた。プロトプラストはSUTC緩衝液(0.5Mショ糖、10mMトリス−塩酸(pH7.5)、10mM塩化カルシウム)で2回洗浄し、最終的に107個/mlとなるように同緩衝液に懸濁した。
プロトプラスト懸濁液100μlに対し、プラスミドpAW20−Hygを1mg/mlの濃度になるようにTE緩衝液に溶解しておいたDNA溶液10μlを加え、氷冷下、5分間放置した。その後、PEG溶液(60%ポリエチレングリコール4000、10mMトリス−塩酸(pH7.5)、10mM塩化カルシウム)を400μl加え、更に氷冷下20分間放置した。次に、SUTC緩衝液でプロトプラストを洗浄した後、ハイグロマイシンB100μg/ml及び0.5Mショ糖を含むポテトデキストロース寒天培地(ディフコ)に0.5Mショ糖を含むポテトデキストロース軟寒天培地とともに重層し、28℃、5日間培養し、現れたコロニーを形質転換体とした。
取得した形質転換体と親株を上記シード培地で、28℃、4日間培養した後、培養上清のβ−フルクトフラノシダーゼ活性をAgric.Biol.Chem.,53,667−673(1989)記載の方法で測定した結果、親株には活性が検出されなかったが、形質転換体には1×102単位/mlの活性が検出された。
実施例B
実施例B1:β−フルクトフラノシダーゼ生産菌の染色体DNAに対するサザン解析
(1)プローブ用DNA断片の調製
配列表の配列番号2の塩基配列よりなるDNAを含むプラスミドpAW20−Hygを鋳型DNAとしてPCRによりプローブとして使用するDNA断片を調製した。PCRはPerkin Elmer Cetus DNA Thermal Cyclerを使用して行った。すなわち、プラスミドDNA(pAW20−Hyg)0.5μl(0.1μg相当量)、10倍濃度の反応緩衝液[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、1%TritonX−100]10μl、2.5mM dNTP溶液8μl、0.01mMプライマー#1として配列表の配列番号15の+鎖DNAプライマーおよびプライマー#2として配列表の配列番号16の−鎖DNAプライマー各2μl、TaqDNAポリメラーゼ(和光純薬社)0.5μl、滅菌水77μlを加えて100μlとした。反応は94℃、5分間の前処理後、94℃1分間(変性ステップ)、54℃2分間(アニーリングステップ)、72℃3分間(伸長ステップ)のインキュベーションを25サイクル行った。最後に、72℃で7分間にインキュベーションを行い反応を終了した。得られた反応液をフェノール・クロロホルム・イソアミルアルコールで抽出し、その後エタノール沈澱を行った。この沈澱を20μlのTE緩衝液に溶解した後、アガロースゲル電気泳動を行い、特異的に増幅された約2kbpのバンドを常法に従って切り出してDNA断片を回収し、エタノール沈殿を行った。DNA沈殿を0.1μg/μlの濃度になるように滅菌水に溶解して試料とした。
(2)β−フルクトフラノシダーゼ生産菌の染色体DNAの調製とサザン解析
β−フルクトフラノシダーゼ生産能を有する糸状菌株、すなわちアスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)IFO4408株、アスペルギルス・アクレタス(Aspergillus aculeatus)IFO31348株、ペニシリウム・ロッケフォルチ(Penicillium roqueforti)IAM7254株、スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)IFO4843株、IFO5828株、IFO5841株、IFO6588株、IFO31688株、IFO31915株、スコプラリオプシス・ブレビカウリス・バラエティ・グラブラ(Scopulariopsis brevicaulis var.glabra)IFO7239株、スコプラリオプシス・ロゼオラ(Scopulariopsis roseola)IFO7564株をそれぞれYPD液体培地(1%酵母エキス、2%ポリペプトン、2%グルコース)、28℃、2日間培養した。得られた菌体より上記実施例A2に記載の方法に準じて染色体DNAを調製した。各染色体DNA標品約10μgを制限酵素EcoR Iで消化した後、アガロースゲル電気泳動を行い、Molecular Cloning(前掲)に記載の方法に従い、Hybond−N+メンブレン(アマシャム社)にブロッティングした。
このメンブレンと、上記(1)で調製した約2kbpのDNA断片を行い、ECLダイレクトDNA/RNAラベリング・検出システム(アマシャム社)を使用してサザン解析を行った。その結果、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)IFO4408株では約20kbpの位置に、アスペルギルス・アクレタス(Aspergillus aculeatus)IFO31348株では約13kbpの位置に、ペニシリウム・ロッケフォルチ(Penicillium roqueforti)IAM7254株では約4kbpの位置に、スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)IFO4843株、IFO5828株、IFO5841株、IFO6588株、IFO31688株、IFO31915株では約10kbpの位置に、スコプラリオプシス・ブレビカウリス・バラエティ・グラブラ(Scopulariopsis brevicaulis var.glabra)IFO7239株では約2.7kbpの位置に、スコプラリオプシス・ロゼオラ(Scopulariopsis roseola)IFO7564株では約10kbpの位置にそれぞれハイブリダイズするバンドが検出された。よって、これらのβ−フルクトフラノシダーゼ生産菌から配列表の配列番号2記載のDNAとの相同性を利用することによってβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を単離することが可能であることが示された。
実施例B2:ペニシリウム・ロッケフォルチ(Penicillium roqueforti)IAM7254株のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離
ペニシリウム・ロッケフォルチ(Penicillium roqueforti)IAM7254株の染色体DNA標品約20μgを制限酵素EcoR Iで消化した後、アガロースゲルの電気泳動を行い、Molecular cloning(前掲)に記載の方法に従い、4kbp付近のDNA断片を分離、回収した。
こうして回収した約4kbpのDNA断片約0.5μgと、あらかじめ制限酵素EcoR Iで消化し、フォスファターゼ処理を施しておいた、λgt10ベクター1μgをライゲーションし、ストラタジーン社製のin vitroパッケージングキットGIGAPACK II Goldを用いてパッケージングし、大腸菌NM514株に感染させることによりライブラリーを作成した。
実施例B1で使用した約2kbpのDNA断片をプローブとして用い、ECLダイレクトDNA/RNAラベリング・検出システム(アマシャム社)を使用してプラークハイブリダイゼーションを行い、約25000個のプラークの中から4個の陽性クローンを得た。これらの陽性クローンについて2次スクリーニングを実施し、陽性クローンを純化した後、ファージDNAを調製し、制限酵素による解析を行った結果、どのクローンも同一の約4kbpのEcoR I断片を有する事が明らかとなった。
この約4kbpのEcoR I断片より必要なDNA領域を適宜制限酵素で小断片化した後にプラスミドベクターpUC118あるいはpUC119にサブクローニングを行った。得られたサブクローンからプラスミドDNAを常法により調製し、ファルマシア社製蛍光シークエンサーALFred DNAシークエンサーを用いて塩基配列を決定した。この結果、配列表の配列番号12に示される塩基配列が得られた。また、対応するアミノ酸配列は配列表の配列番号11に示される通りである。
実施例B3:スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)IFO4843株のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の単離
スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)IFO4843株の染色体DNA標品約20μgを制限酵素EcoR Iで消化した後、アガロースゲル電気泳動を行い、Molecular cloning(前掲)に記載の方法に従い、10kbp付近のDNA断片を分離、回収した。
こうして回収した約10kbpのDNA断片約0.5μgと、あらかじめ制限酵素Hind IIIとEcoR Iで二重消化しておいたλDASH IIベクター1μgをライゲーションし、ストラタジーン社製のin vitroパッケージングキットGIGAPACK II Goldを用いてパッケージングし、大腸菌XLI−Blue MRA(P2)株に感染させる事によりライブラリーを作成した。
実施例B1で使用した約2kbpのDNA断片をプローブとして用い、ECLダイレクトDNA/RNAラベリング・検出システム(アマシャム社)を使用してプラークハイブリダイゼーションを行い、約15000個のプラークの中から3個の陽性クローンを得た。これらの陽性クローンについて2次スクリーニングを実施し、陽性クローンを純化した後、ファージDNAを調製し、制限酵素による解析を行った結果、どのクローンも同一の約10kbpのEcoR I断片を有する事が明らかとなった。
この約10kbpのEcoR I断片より必要なDNA領域を適宜制限酵素で小断片化した後にプラスミドベクターpUC118あるいはpUC119にサブクローニングを行った。得られたサブクローンからプラスミドDNAを常法により調製し、ファルマシア社製蛍光シークエンサーALFred DNAシークエンサーを用いて塩基配列を決定した。この結果、配列表の配列番号14に示される塩基配列が得られた。また、対応するアミノ酸配列は配列表の配列番号13に示される通りである。
実施例B4:トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)によるペニシリウム・ロッケフォルチ(Penicillium roqueforti)IAM7254株由来のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の発現
実施例B2で調製したファージDNAよりβ−フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子を含む約4kbpのEcoR I断片を調製し、これをプラスミドベクターpUC118のEcoR I部位に連結し、プラスミドpPRS01を得た。
一方、プラスミドpDH25(D.Cullen et al.,(1987)Gene,57,21−26)をEcoR Iで部分消化し、Xba Iリンカーを連結した後、さらにXba Iで消化し、アスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)由来のtrpC遺伝子のプロモーター、ターミネーターと大腸菌由来のハイグロマイシンBリン酸化酵素遺伝子で構成されるハイグロマイシン耐性遺伝子発現カセットを3kbpのXba I断片として調製した。この断片をプラスミドpPRS01のXba I部位に連結してプラスミドpPRS01−Hygを構築した(図2)。
トリコデルマ・ビリデをシード培地(3%グルコース、0.1%ポリペプトン、1%酵母エキス、0.14%硫酸アンモニウム、0.2%リン酸二水素カリウム、0.03%硫酸マグネシウム)で、28℃、20時間培養し、菌糸体を3000r.p.m.、10分間の遠心分離により集菌し、0.5Mショ糖溶液で2回洗浄した。
上述のようにして得た菌糸体を、セルラーゼオノズカR−10(ヤクルト社)5mg/ml、ノボザイム234(ノボノルディスク社)5mg/mlを含む0.5Mショ糖溶液に懸濁し、30℃、1時間ゆっくり振とうしてプロトプラストを形成させた。濾過により菌体残渣を除去し、2500r.p.m.、10分間遠心してプロトプラストを集めた。プロトプラストはSUTC緩衝液(0.5Mショ糖、10mMトリス−塩酸(pH7.5)、10mM塩化カルシウム)で2回洗浄し、最終的に107個/mlとなるように同緩衝液に懸濁した。
プロトプラスト懸濁液100μlに対し、プラスミドpPRS01−Hygを1mg/mlの濃度になるようにTE緩衝液に溶解しておいたDNA溶液10μlを加え、氷冷下、5分間放置した。その後、PEG溶液(60%ポリエチレングリコール4000、10mMトリス−塩酸(pH7.5)、10mM塩化カルシウム)を400μl加え、更に氷冷下20分間放置した。次に、SUTC緩衝液でプロトプラストを洗浄した後、ハイグロマイシンB100μg/mlおよび0.5Mショ糖を含むポテトデキストロース寒天培地(ディフコ社)に0.5Mショ糖を含むポテトデキストロース軟寒天培地とともに重層し、28℃、5日間培養し、現れたコロニーを形質転換体とした。
取得した形質転換体と親株とを上記シード培地で、28℃、4日間培養した後、培養上清のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を測定した。β−フルクトフラノシダーゼ活性は、10重量%ショ糖溶液、pH5.5、40℃の条件で反応させた時、1分間に1μmolのグルコースを遊離させる活性を1単位とした。その結果、親株には活性が検出されなかったが、形質転換体には約0.04単位/mlの活性が検出された。
このようにして調製したβ−フルクトフラノシダーゼをショ糖1gあたり4.2単位添加し、60重量%ショ糖溶液、pH7.0、40℃の条件で23時間反応させた。反応後の糖組成はフルクトースが1.6%、グルコースが16.2%、ショ糖が42.3%、GF2が37.3%、GF3が2.1%であった。
実施例C
実施例C1:アスペルギルス・ニガーACE−2−1株からのniaD変異株の取得
アスペルギルス・ニガーACE−2−1(ATCC20611)株の胞子を、6%の塩素酸塩を含む最少寒天培地(0.2%グルタミン酸ナトリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.05%塩化カリウム、0.001%硫酸鉄、3%ショ糖、0.5%寒天、pH5.5)に塗布し、30℃にて保温した。約5日間培養した後、コロニーを形成したものを塩素酸耐性株とした。これら耐性株をグルタミン酸塩、硝酸塩、または亜硝酸塩をそれぞれ単一の窒素源として含む最少培地に植菌し、窒素源要求性の検討を行った。その結果、グルタミン酸ナトリウム、亜硝酸塩を単一の窒素源として含む最少培地では生育できるが、硝酸塩では生育できない塩素酸耐性株が存在し、これらをniaD変異株候補とした。
niaD変異株候補の内の3株について菌体内のニトレートレダクターゼ(硝酸還元酵素=niaD遺伝子産物)活性の測定を行った。これら3株を液体培地(0.2%グルタミン酸ナトリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.05%塩化カリウム、0.001%硫酸鉄、3%ショ糖3g)中で、30℃、60時間振とう培養した。得られた湿菌体0.2gを2mlの50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)に懸濁し、ホモジナイズ・超音波により破砕し、不溶画分を遠心によって除き、得られた上清をサンプルとした。サンプル液50μlに対し蒸留水1000μl、0.2Mリン酸ナトリウム溶液(pH7.5)750μl、0.04mg/mlFAD100μl、2mg/mlNADPH100μl、および22.5mg/ml硝酸ナトリウム1000μlを加え、37℃で反応させた。反応させたサンプルに対し、1%スルファニルアミド(3N塩酸にて溶解)500μl、0.02%N−1−ナフチルエチレンジアミン500μlを加えて発色させ、A540を測定することによりニトレートレダクターゼ活性の検出を試みたが、これら3株にはニトレートレダクターゼ活性は検出されなかった。そこで、これら3株をniaD変異株と結論し、この内の1株をNIA5292株と命名し、以下の実験に供した。
実施例C2:アスペルギルス・ニガーNRRL4337株のniaD遺伝子の取得
(1)プローブの作製
アスペルギルス・ニガーNRRL4337株をYPD液体培地(1%酵母エキス、2%ポリペプトン、2%グルコース)で培養した。一方、Unkles,S.E.,et al.,Gene 111,149−155(1992)に記載のアスペルギルス・ニガーのniaD遺伝子の塩基配列をもとに配列表の配列番号17および18の合成DNAプライマーを作製した。得られた前記菌体より実施例A2に記載の方法に準じて抽出した全DNAを鋳型にし、前記合成プライマーを用いてPCR法によるDNAの増幅を行った。反応液100μlあたり染色体DNA0.5μg、プライマー各100pmol、およびTaqDNAポリメラーゼ2.5U(ニッポンジーン社)を含み、94℃1分間、50℃2分間、72℃2分間の温度条件で25サイクル反応させた。その結果、約800bpのDNA断片が特異的に増幅された。このDNA断片の塩基配列を決定したところ、既に報告されているアスペルギルス・ニガーのniaD遺伝子の塩基配列と100%一致し、このDNA断片がniaD遺伝子に由来することが明らかとなった。そこでこの約800bpのDNA断片をプローブとして用いることとした。
(2)アスペルギルス・ニガー染色体DNAのサザン解析
アスペルギルス・ニガーNRRL4337株の全DNAを制限酵素(Hind III、EcoR I、BamH I)で完全消化した後、アガロースゲル電気泳動により分画し、モレキュラー・クローニング(Cold Spring Harbour、1982年)に記載の方法に従ってナイロン膜(Hybond−N+、アマシャム社)上にブロットした。このナイロン膜に対し、前出の約800bpのDNA断片をプローブにしてサザンハイブリダイゼーションを行った。なお、プローブの標識・シグナルの検出には、アマシャム社のECLダイレクトDNAラベリング・検出システムを用い、条件は添付のマニュアルに従った。その結果Hind IIIで消化した際約15Kbpの位置にシグナルが検出された。
(3)niaD遺伝子の単離
アスペルギルス・ニガーNRRL4337株の全DNAを制限酵素Hind IIIで完全消化した後、アガロースゲル電気泳動により分画し、15Kbp付近のDNA断片を常法により抽出し、回収した。回収したDNA断片をλDASH IIのHind IIIサイトに連結し、STRATAGENE社のGIGAPACK II Goldによりパッケージングを行い、大腸菌に感染させることによりライブラリーを作製した。
前出の約800bpのDNA断片をプローブとして用い、アマシャム社のECLダイレクトDNAラベリング・検出システムを使用してプラークハイブリダイゼーションを行い、陽性クローンを得た。得られた陽性クローンについて2次スクリーニングを実現し、陽性クローンを純化した。
陽性クローンよりファージDNAを調製し、約15kbp Hind III断片が挿入されていることを確認した。この挿入断片に対してサザン解析を行い、niaD遺伝子が含まれるより小さなDNA断片として、約6.5kbpのXba I断片を見出し、この断片の制限酵素地図を作製した。さらにこのXba I断片を適宜制限酵素で小断片化した後にプラスミドpUC118にサブクローン化し、これらのプラスミドを鋳型にして塩基配列を決定し、単離したDNA断片内におけるniaD遺伝子の位置を特定した(図3)。
実施例C3:遺伝子ターゲッティング用プラスミドpAN203の構築
遺伝子ターゲッティング用プラスミドPAN203は以下のようにして作製した(図4)。
上記実施例A3において得られた、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を含む約15kbp EcoR I断片より、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の開始コドンおよび上流領域を含む約3kbp Sal I断片を調製し、プラスミドpUC119にサブクローン化してプラスミドpW20を得た。このプラスミドより一本鎖DNAを調製し、配列表の配列番号19の合成DNAを用いて、アマシャム社のSculptor in vitro mutagenesis systemにより部位特異的変異を行い、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の開始コドンの直前にBamH Iの消化部位を新たに作製した(pW20B)。
また、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を含む約15kbp EcoR I断片より、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の終止コドンおよび下流領域を含む約1.5kbp Pst I断片を調製し、プラスミドpUC119にサブクローン化してプラスミドpBW20を得た。このプラスミドより一本鎖DNAを調製し、配列表の配列番号20の合成DNAを用いて、アマシャム社のSculptor in vitro mutagenesis systemにより部位特異的変異を行い、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の終止コドンの直後にBamH Iの消化部位を新たに作製した(pBW20B)。pBW20Bより約1.5kbp Pst I断片を調製し、実施例A4において得られたpAW20の約1.5kbp Pst I断片と入れ換えたプラスミドpAW20Bを構築した。
次に、プラスミドpUC118を制限酵素Hind IIIで切断し、T4DNAポリメラーゼ(宝酒造社)で末端を平滑化した後、Sal Iリンカーを連結した。制限酵素Sal Iで切断し、再連結してプラスミドpUC18PHdを構築した。pUC18PHdをSal IおよびEcoR Iで消化した後、pW20Bより調製した約2.5KbpのSal I−BamH I断片、さらにpAW20Bより調製した約3KbpのBamH I−EcoR I断片とを連結してプラスミドpAN202を構築した。さらに、pAN202をXba I部位に、niaD遺伝子を含む約6.5kbp Xba I断片(図3)を挿入してプラスミドpAN203を構築した。
実施例C4:アスペルギルス・ニガーNIA5292株のプラスミドpAN203による形質転換
アスペルギルス・ニガーNIA5292株を液体培地(2%可溶性澱粉、1%ポリペプトン、0.2%酵母エキス、0.5%リン酸二水素ナトリウム、0.05%硫酸マグネシウム)中で、28℃、24時間振とう培養した。菌体をガラスフィルターで集菌し、酵素溶液(1mg/mlβ−グルクロニダーゼ(シグマ社)、5mg/mlノボザイム(ノボ・ノルディスク社)、10mMリン酸ナトリウム(pH5.8)、0.8M塩化カリウム)に懸濁して、30℃で穏やかに1.5時間加温した。プロトプラスト化した細胞をガラスフィルターでろ過し、通過画分を遠心により集菌してSTCバッファー(10mMトリス(pH7.5)、10mM塩化カルシウム、1.2Mソルビトール)で2回洗浄した後、STCバッファーに懸濁した。続いてプロトプラストと予め制限酵素Hind IIIで消化したプラスミドpAN203を混合して、氷上に20分間静置した後、さらにPEG液(10mMトリス(pH7.5)、10mM塩化カルシウム、60%ポリエチレングリコール6000)を加えて氷上にもう20分間静置し、DNAをプロトプラスト内に導入した。プロトプラストはSTCバッファーにて数回洗浄した後、1.2Mソルビトールと0.8%アガーを含むツァペック培地(0.2%硝酸ナトリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.05%塩化カリウム、0.001%硫酸第二鉄、3%ショ糖)に懸濁し、1.2Mソルビトールと1.5%アガーを含むツァペック寒天培地に重層して、30℃で培養した。約5日間培養した後、コロニーを形成したものを形質転換体として選択した。これら形質転換体を液体培養し、その菌体より全DNAを調製した。これらの全DNAに対してサザン解析を行い、プラスミドpAN203が宿主のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の上流領域に1コピーのみ相同組換えにより挿入されたような形質転換体を選抜した。
次に、この形質転換体の分生子を6%の塩素酸カリウムを含み、2%のグルコースを単一の炭素源とするような最少寒天培地(0.2%グルタミン酸ナトリウム、0.1%リン酸水素二カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.05%塩化カリウム、0.001%硫酸鉄、2%グルコース、6%塩素酸カリウム、1.5%寒天、pH5.5)に塗布して30℃で培養した。約4日で、再びniaD変異の表現型を示すようになり塩素酸塩に耐性を示すようになった耐性株が多数出現した。これらの塩素酸耐性株についてβ−フルクトフラノシダーゼ活性の有無を検討した結果、約半数の塩素酸耐性株においては、β−フルクトフラノシダーゼ活性が検出されず、宿主のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の下流領域で再び相同組換えが起こり、niaD遺伝子を含むベクターと共にβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が欠落したことが示唆された。これらの塩素酸耐性株より全DNAを調製し、これらの全DNAに対してサザン解析を行った結果、niaD遺伝子を含むベクターと共にβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が染色体上から欠落したことが確認され、その内の1株をNIA1602と命名した。
実施例C5:アスペルギルス・ニガーNIA1602株を宿主としたペニシリウム・ロッケフォルティ由来のβ−フルクトフラノシダーゼの生産
ペニシリウム・ロッケフォルティ由来のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の発現用プラスミドであるpAN572は以下のようにして作製した(図5)。
まず、プラスミドpUC18を制限酵素Hind IIIで切断し、T4DNAポリメラーゼ(宝酒造社)で末端を平滑化した後再連結した。さらに制限酵素BamH Iで切断し、T4DNAポリメラーゼで末端を平滑化した後連結し、プラスミドpUC18HBXを構築した。このプラスミドpUC18HBXのPst I部位に、プラスミドpAN202より調製したβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子のプロモーターとターミネーターを含む約2KbpのPst I断片を挿入してプラスミドpAN204を作製した。
次に、niaD遺伝子をより小さなDNA断片として取り扱えるようにし、さらにBamH I消化部位を破壊するため、配列表の配列番号21および22の合成DNAをプライマーとし、アマシャム社のSculptor in vitro mutagenesis systemを使用して部位特異的変異を行い、BamH I消化部位を破壊すると共に、niaD遺伝子の下流に新たにXba I消化部位を作製して、BamH I消化部位を含まない約4.8kbp Xba I断片としてniaD遺伝子を調製できるようにした。この4.8KbpのXba I断片をプラスミドpAN204のXba I部位に挿入してプラスミドpAN205を作製した。
一方、ペニシリウム・ロッケフォルティ由来のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子については、実施例B4において得られた、この遺伝子を含むプラスミドpPRS01より調製した一本鎖DNAを鋳型として、配列表の配列番号23の合成DNAをプライマーとし、アマシャム社のSculptor in vitro mutagenesis systemを使用して部位特異的変異を行い、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の翻訳領域内に存在するBamH I部位を、コードしているアミノ酸配列に変化がないような形で破壊した(pPRS02)。さらに、プラスミドpPRS02を鋳型として、配列表の配列番号24および25の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の翻訳領域を約1.8kbpのBamH I断片を調製し、これをプラスミドpAN205のBamH II部位に挿入してプラスミドpAN572を作製した。
予めHind IIIで消化して線状にしたプラスミドpAN572を用いて、実施例C4に記載の方法に従ってアスペルギルス・ニガーNIA1602株を形質転換した。得られた形質転換体の内1株を液体培地(5.0%ショ糖、0.7%麦芽エキス、1.0%ポリペプトン、0.5%カルボキシメチルセルロース、0.3%塩化ナトリウム)で、28℃、3日間培養した。得られた菌体を回収して、超音波により破砕した後、β−フルクトフラノシダーゼ活性を測定した。β−フルクトフラノシダーゼ活性は、10重量%%ショ糖溶液、PH5.5、40℃の条件で反応させた時、1分間に1μmolのグルコースを遊離させる活性を1単位とした。その結果、1×10-3単位/mlの活性が検出された。
実施例D
以下、β−フルクトフラノシダーゼ変異体の記載にあたって、次の命名を用いて参照を容易にする:
原アミノ酸:位置:置換アミノ酸
この命名に従い、例えば170番目のフェニルアラニンをトリプトファンに置換したものは、F170Wとして示される。
また、多数の変異は、+によって分離され、例えば
F170W+G300V+H313K
は、170、300、および313番目のアミノ酸であるフェニルアラニン、グリシン、およびヒスチジンが、それぞれトリプトファン、バリン、およびリジンに置換されていることを示す。
また、以下において、フルクトースをF、グルコースをG、およびショ糖をGF、ならびにショ糖にフラクトースが1〜3分子結合したオリゴ糖類を、それぞれをGF2、GF3、およびGF4と略記する。
実施例D1:F170W変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
アスペルギルス・ニガーACE−2−1(ATCC20611)株のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を含むプラスミドpAW20−Hyg(実施例A4参照)を鋳型DNAとしてPCRを行い、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の翻訳領域を取り出した。PCRはPerkin Elmer Cetus DNA Thermal Cyclerを使用して行った。反応液は、プラスミドDNA(pAW20−Hyg)0.5μl(0.1μg相当量)、10倍濃度の反応緩衝液[500mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2.1%TritonX−100]10μl、2.5mM dNTP溶液8μl、0.01mMプライマー#1として配列表の配列番号26の+鎖DNAプライマーおよびプライマー#2として配列表の配列番号27の−鎖DNAプライマー各2μl、TaqDNAポリメラーゼ(和光純薬)0.5μl、滅菌水77μlを加えて100μlとした。反応は、94℃、5分間の前処理後、94℃1分間(変性ステップ)、54℃2分間(アニーリングステップ)、72℃3分間(伸長ステップ)のインキュベーションを25サイクル行った。最後に72℃で7分間のインキュベーションを行い反応を終了した。得られた反応液をフェノール・クロロホルム・イソアミルアルコールで抽出し、その後エタノール沈殿を行った。沈殿を20μlのTE緩衝液に溶解した後、アガロースゲル電気泳動を行い、特異的に増幅された約2kbpのバンドを常法に従って切り出してDNA断片を回収した。このDNA断片を制限酵素BamH Iで消化した後、プラスミドpUC118(宝酒造)のBamH I部位に挿入してプラスミドpAN120を得た(図6)。
プラスミドを大腸菌CJ236株に導入した後、常法に従い一本鎖DNAを調製し、これを鋳型DNAとして部位特異的変異を行った。部位特異的変異はMuta−Gene in vitroミュータジェネシスキット(日本バイオ・ラッドラボラトリーズ)を用いて行った。部位特異的変異用プライマーとして、配列表の配列番号28のDNAプライマーを用い、キットの説明書に従って実施し、変異処理後プラスミドとしてpAN120(F170W)を得た。
pAN120(F170W)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変異処理後の遺伝子は170番目のアミノ酸だけがフェニルアラニンからトリプトファンに置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母用発現ベクターpY2831の構築
酵母用発現ベクターpY2831は以下のようにして構築した(図7)。すなわち、プラスミドpYPR2831(H.Horiuchi et al.,Agric.Biol.Chem.,54,1771−1779,1990)を制限酵素EcoR IおよびSal Iで消化した後、末端をT4DNAポリメラーゼを用いて平滑化した。これにBamH Iリンカー(5'−CGGATCCG−3')を連結し、BamH Iで消化した後、自己連結してプラスミドpY2831を得た。
(3)酵母によるF170W変異体の生産
pAN120(F170W)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(F170W)を構築した(図8)。この際、pAN120についても同様の処理を行い、野生型酵素を発現させるためのプラスミドpYSUCも構築した。
これらのプラスミドを酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株(Suc−,ura3,trp1)に酢酸リチウム法(Ito,H.et al.,J.Bacteriol.,153,163−168,1983)で導入し、形質転換体を得た。この形質転換体をSD−Ura培地(0.67%酵母ニトロゲンベース(ディフコ社)、2%グルコース、50μg/mlウラシル)で30℃、一晩培養した。この培養液を終濃度が1%となるように生産培地(0.67%酵母ニトロゲンベース(ディフコ社)、2%グルコース、2%カザミノ酸、50μg/mlウラシル)にシードし、30℃、2日間培養し、培養上清を得た。これらの培養上清のβ−フルクトフラノシダーゼ活性をAgric.Biol.Chem.,53,667−673(1989)記載の方法で測定した結果、野生型酵素を発現させた場合は12.7単位/ml、F170W変異体を発現させた場合は10.1単位/mlの活性がそれぞれ検出された。
(4)F170W変異体の評価
野生型酵素およびF170W変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖構成(%)は以下に示される通りであった。
F G GF GF2 GF3 GF4
野生型 0.4 22.3 20.5 45.1 11.3 0.3
F170W 0.6 22.1 20.9 45.8 10.3 0.3
この結果から、F170Wの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D2:G300W変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号29のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(G300W)を得た。
pAN120(G300W)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変異処理後の遺伝子は300番目のアミノ酸だけがグリシンからトリプトファンに置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるG300W変異体の生産
pAN120(G300W)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(G300W)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、G300W変異体を生産させたところ、培養上清に5.0単位/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)G300W変異体の評価
野生型酵素およびG300W変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示される通りであった。
F G GF GF2 GF3 GF4
野生型 0.4 22.3 20.5 45.1 11.3 0.3
G300W 0.6 21.9 21.7 46.4 9.4 0.0
この結果から、G300Wの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D3:H313K変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号30のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(H313K)を得た。
pAN120(H313K)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変異処理後の遺伝子は313番目のアミノ酸だけがヒスチジンからリジンに置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるH313K変異体の生産
pAN120(H313K)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(H313K)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、H313K変異体を生産させたところ、培養上清に5.0単位/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)H313K変異体の評価
野生型酵素およびH313K変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示される通りであった。
F G GF GF2 GF3 GF4
野生型 0.4 22.3 20.5 45.1 11.3 0.3
H313K 0.4 21.9 18.8 52.9 6.0 0.0
この結果から、H313Kの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D4:E386K変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号31のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(E386K)を得た。
pAN120(E386K)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変位処理後の遺伝子は386番目のアミノ酸だけがグルタミン酸からリジンに置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるE386K変異体の生産
pAN120(E386K)をBamH Iで消化し、変位遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(E386K)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、E386K変異体を生産させたところ、培養上清に10.7単位/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)E386K変異体の評価
野生型酵素およびE386K変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示される通りであった。
F G GF GF2 GF3 GF4
野生型 0.4 22.3 20.5 45.1 11.3 0.3
E386K 22.3 (F+G) 19.9 49.3 7.9 0.6
この結果から、E386Kの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D5:F170W+G300W変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号28および29のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(F170W+G300W)を得た。
pAN120(F170W+G300W)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変位処理後の遺伝子は170番目と300番目のアミノ酸だけがフェニルアラニンからトリプトファン、グリシンからトリプトファンにそれぞれ置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるF170W+G300W変異体の生産
pAN120(F170W+G300W)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(F170W+G300W)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、F170W+G300W変異体を生産させたところ、培養上清に2.3単位/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)F170W+G300W変異体の評価
野生型酵素およびF170W+G300W変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示される通りであった。
F G GF GF2 GF3 GF4
野生型 0.4 22.3 20.5 45.1 11.3 0.3
F170W+G300W 0.7 21.7 22.5 46.7 8.0 0.3
この結果から、F170W+G300Wの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D6:F170W+G300W+H313R変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号28、29、および32のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(F170W+G300W+H313R)を得た。
pAN120(F170W+G300W+H313R)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変位処理後の遺伝子は170番目、300番目および313番目のアミノ酸だけがフェニルアラニンからトリプトファン、グリシンからトリプトファン、ヒスチジンからアルギニンにそれぞれ置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるF170W+G300W+H313R変異体の生産
pAN120(F170W+G300W+H313R)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(F170W+G300W+H313R)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、F170W+G300W+H313R変異体を生産させたところ、培養上清に単位0.9/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)F170W+G300W+H313R変異体の評価
野生型酵素およびF170W+G300W+H313R変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示される通りであった。
この結果から、F170W+G300W+H313Rの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D7:G300W+H313K変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号29および30のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(G300W+H313K)を得た。
pAN120(G300W+H313K)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変異処理後の遺伝子は300番目と313番目のアミノ酸だけがグリシンからトリプトファン、ヒスチジンからリジンにそれぞれ置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるG300W+H313K変異体の生産
pAN120(G300W+H313K)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(G300W+H313K)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、G300W+H313K変異体を生産させたところ、培養上清に1.2単位/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)G300W+H313K変異体の評価
野生型酵素およびG300W+H313K変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示される通りであった。
F G GF GF2 GF3 GF4
野生型 0.4 22.3 20.5 45.1 11.3 0.3
G300W+H313K 0.8 21.2 19.4 53.8 4.7 0.0
この結果から、G300W+H313Kの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D8:G300V+H313K変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号30および33のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(G300V+H313K)を得た。
pAN120(G300V+H313K)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変位処理後の遺伝子は300番目と313番目のアミノ酸だけがグリシンからバリン、ヒスチジンからリジンにそれぞれ置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるG300V+H313K変異体の生産
pAN120(G300V+H313K)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(G300V+H313K)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、G300V+H313K変異体を生産させたところ、培養上清に3.6単位/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)G300V+H313K変異体の評価
野生型酵素およびG300V+H313K変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示される通りであった。
F G GF GF2 GF3 GF4
野生型 0.4 22.3 20.5 45.1 11.3 0.3
G300V+H313K 0.9 21.6 19.0 53.7 4.7 0.0
この結果から、G300V+H313Kの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D9:G300E+H313K変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号30および34のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(G300E+H313K)を得た。
pAN120(G300E+H313K)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変位処理後の遺伝子は300番目と313番目のアミノ酸だけがグリシンからグルタミン酸、ヒスチジンからリジンにそれぞれ置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるG300E+H313K変異体の生産
pAN120(G300E+H313K)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(G300E+H313K)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、G300E+H313K変異体を生産させたところ、培養上清に2.9単位/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)G300E+H313K変異体の評価
野生型酵素およびG300E+H313K変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示される通りであった。
F G GF GF2 GF3 GF4
野生型 0.4 22.3 20.5 45.1 11.3 0.3
G300E+H313K 1.2 22.0 19.3 52.8 4.7 0.0
この結果から、G300E+H313Kの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D10:G300D+H313K変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号30および35のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(G300D+H313K)を得た。
pAN120(G300D+H313K)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変異処理後の遺伝子は300番目と313番目のアミノ酸だけがグリシンからアスパラギン酸、ヒスチジンからリジンにそれぞれ置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるG300D+H313K変異体の生産
pAN120(G300D+H313K)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(G300D+H313K)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、G300D+H313K変異体を生産させたところ、培養上清に4.3単位/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)G300D+H313K変異体の評価
野生型酵素およびG300D+H313K変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示される通りであった。
F G GF GF2 GF3 GF4
野生型 0.4 22.3 20.5 45.1 11.3 0.3
G300D+H313K 0.5 21.6 19.6 53.3 5.0 0.0
この結果から、G300D+H313Kの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
実施例D11:F170W+G300W+H313K変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号28、29および30のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(F170W+G300W+H313K)を得た。
pAN120(F170W+G300W+H313K)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変異処理後の遺伝子は170番目、300番目および313番目のアミノ酸だけがフェニルアラニンからトリプトファン、グリシンからトリプトファン、ヒスチジンからリジンにそれぞれ置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)酵母によるF170W+G300W+H313K変異体の生産
pAN120(F170W+G300W+H313K)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpY2831のBamH I部位に挿入してプラスミドpYSUC(F170W+G300W+H313K)を構築した。
このプラスミドを、実施例D1記載の方法と同様にして、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MS−161株に導入し、F170W+G300W+H313K変異体を生産させたところ、培養上清に単位2.0/mlのβ−フルクトフラノシダーゼ活性が検出された。
(3)F170W+G300W+H313K変異体の評価
野生型酵素およびG300W+H313K変異体につき、酵母の培養上清を用いて評価を行った。反応条件は、48重量%ショ糖溶液、40℃、pH7で行い、反応後の糖組成をHPLCにて分析した。野生型および変異体において、1−ケストース(GF2)への変換率がそれぞれ最大の時の糖組成(%)は以下に示されるとおりであった。
この結果から、F170W+G300W+H313Kの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
(4)アスペルギルス・ニガーによるF170W+G300W+H313K変異体の生産と評価
pAN120(F170W+G300W+H313K)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpAN205(実施例C5参照)のBamH I部位に挿入してプラスミドpAN531を構築した(図9)。
pAN531をHind IIIで消化して直鎖状にした後、これによりアスペルギルス・ニガーNIA1602株(Suc−,niaD)を形質転換した。得られた形質転換体の全DNAに対してサザン解析を行い、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子のプロモーター領域で相同組換えを起こし、宿主の染色体上のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の位置にpAN531が1コピーだけ導入された形質転換体を選択した。
この形質転換体よりベクターDNA部分を欠落させるため、分生子を調製し、塩素酸を含む培地(6%塩素酸カリウム、3%ショ糖、0.2%グルタミン酸ナトリウム、0.1%K2HPO4、0.05%MgSO4・7H2O、0.05%KCl、0.01%FeSO4・7H2O、1.5%寒天)に塗布した。この培地上にコロニーを形成する株は、再び相同組換えを起こし、ベクターDNAが欠落したことが期待されるが、この際、導入したときと同じプロモーター領域で組換えが起きると元の宿主に戻ることとなるが、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子のターミネーター領域で組換えが起きればF170W+G300W+H313K変異体をコードする遺伝子が残り、これらはβ−フルクトフラノシダーゼ活性の有無で容易に区別することができる。実際、塩素酸耐性を示した株の内、β−フルクトフラノシダーゼ活性を示すものと示さないものは1:1の割合で現れ、β−フルクトフラノシダーゼ活性を示した株のから1株を選び、アスペルギルス・ニガーNIA3144株(Suc+,niaD)と命名した。この株の全DNAに対してサザン解析を行い、ベクターDNAが欠落し、宿主の染色体上のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の位置にF170W+G300W+H313K変異体をコードする遺伝子が導入されていることを確認した。
次に、アスペルギルス・ニガーNIA3144株を酵素生産培地(5%ショ糖、0.7%麦芽エキス、1%ポリペプトン、0.5%カルボキシメチルセルロース、0.3%NaCl)で、28℃、3日間培養した後、菌体を超音波で破砕して粗酵素液を調製した。粗酵素液のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を測定した結果、培養液1ml当たり25単位の活性が検出された。この粗酵素をショ糖1gあたり2.5単位添加し、55重量%ショ糖溶液、pH7、40℃、20時間反応させた。反応後の糖組成をHPLCで分析したところ、フルクトース1.2%、グルコース22.8%、ショ糖17.1%、GF2 55.3%、GF3 3.8%であった。
(5)F170W+G300W+H313K変異体の精製と酵素化学的諸性質
前記(4)で調製した粗酵素液を20mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液に対して透析した後、あらかじめ同緩衝液で平衡化しておいたDEAEトヨパール650S(東ソー)カラム(1.6X18cm)に負荷した。次に、Tris−HCl(pH7.5)緩衝液中で、NaClの0から300mMの直線的濃度勾配により溶出し、活性画分を集めた。更に、この活性画分をセファクリルS−300(ファルマシア)カラム(2.6X60cm)に負荷し、50mMトリメチルアミン−酢酸緩衝液(pH8.0)で溶出し、活性画分を集め、F170W+G300W+H313K変異体精製標品とした。これをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べたところ、元の親β−フルクトフラノシダーゼと同じ分子量約10万ダルトンの均一なバンドを示した。
この精製標品を用いて、至適pH、至適温度、pH安定性、温度安定性につき元の親β−フルクトフラノシダーゼと比較したところ、ほとんど同じであった。
実施例D12:F170W+G300V+H313K変異体の作製と生産
(1)部位特異的変異によるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の塩基置換
部位特異的変異用プライマーとして配列表の配列番号28、30、および33のDNAプライマーを使用した以外は実施例D1に記載した方法と同様の方法で行い、プラスミドpAN120(F170W+G300V+H313K)を得た。
pAN120(F170W+G300V+H313K)の挿入断片の塩基配列を調べたところ、目的の部分の塩基のみが置換され、それ以外の部分は変化していないことが確認できた。すなわち、変異処理後の遺伝子は170番目、300番目および313番目のアミノ酸だけがフェニルアラニンからトリプトファン、グリシンからバリン、ヒスチジンからリジンにそれぞれ置換されたβ−フルクトフラノシダーゼをコードしていることが明らかとなった。
(2)アスペルギルス・ニガーによるF170W+G300V+H313K変異体の生産と評価
pAN120(F170W+G300V+H313K)をBamH Iで消化し、変異遺伝子を含む2kbpのBamH I DNA断片を取り出した。これをpAN205のBamH I部位に挿入してプラスミドpAN517を構築した。
pAN517をHind IIIで消化して直鎖状にした後、実施例D11に記載の方法と同様にしてアスペルギルス・ニガーNIA1602株(Suc−、niaD)を形質転換を行い、ベクターDNAが欠落し、宿主の染色体上のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子の位置にF170W+G300V+H313K変異体をコードする遺伝子が導入されているアスペルギルス・ニガーNIA1717株(Suc+、niaD)を得た。
次に、アスペルギルス・ニガーNIA1717株を酵素生産培地(5%ショ糖、0.7%麦芽エキス、1%ポリペプトン、0.5%カルボキシメチルセルロース、0.3%NaCl)で、28℃、3日間培養した後、菌体を超音波で破砕して粗酵素液を調製した。粗酵素液のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を測定した結果、培養液1ml当たり45単位の活性が検出された。この粗酵素をショ糖1gあたり2.5単位添加し、Bx45ショ糖、pH7.5、40℃、24時間反応させた。反応後の糖組成をHPLCで分析したところ、フルクトース1.8%、グルコース22.3%、ショ糖16.1%、GF2 55.7%、GF3 4.1%であった。この結果から、F170W+G300V+H313Kの置換によってGF2が増加し、GF3が減少することが明らかとなった。
(3)F170W+G300V+H313K変異体の精製と酵素化学的諸性質
前記(2)で調製した粗酵素液を20mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液に対して透析した後、あらかじめ同緩衝液で平衡化しておいたDEAEトヨパール650S(東ソー)カラム(1.6X18cm)に負荷した。次に、Tris−HCl(pH7.5)緩衝液中で、NaClの0から300mMの直線的濃度勾配により溶出し、活性画分を集めた。更に、この活性画分をセファクリルS−300(ファルマシア)カラム(2.6X60cm)に負荷し、50mMトリメチルアミン−酢酸緩衝液(pH8.0)で溶出し、活性画分を集め、F170W+G300V+H313K変異体精製標品とした。これをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で調べたところ、元の親β−フルクトフラノシダーゼと同じ分子量約10万ダルトンの均一なバンドを示した。
この精製標品を用いて、至適pH、至適温度、pH安定性、温度安定性につき元の親β−フルクトフラノシダーゼと比較したところ、ほとんど同じであった。
配列表
配列番号:1
配列の長さ:635
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
起源
生物名:Aspergillus niger ACE−2−1(ATCC 20611)
配列の特徴
特徴を表わす記号:mat peptide
存在位置:1..635
特徴を決定した方法:E
配列
配列番号:2
配列の長さ:1905
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:DNA
起源
生物名:Aspergillus niger ACE−2−1(ATCC 20611)
配列の特徴
特徴を表わす記号:mat peptide
存在位置:1..1905
特徴を決定した方法:E
配列
配列番号:3
配列の長さ:20
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物名:Aspergillus niger ACE−2−1(ATCC 20611)
配列
配列番号:4
配列の長さ:20
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物名:Aspergillus niger ACE−2−1(ATCC 20611)
配列
配列番号:5
配列の長さ:20
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物名:Aspergillus niger ACE−2−1(ATCC 20611)
配列
配列番号:6
配列の長さ:20
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:中間部フラグメント
起源
生物名:Aspergillus niger ACE−2−1(ATCC 20611)
配列
配列番号:7
配列の長さ:6
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:N末端フラグメント
起源
生物名:Aspergillus niger ACE−2−1(ATCC 20611)
配列
配列番号:8
配列の長さ:20
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:9
配列の長さ:20
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:10
配列の長さ:788
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
起源
生物名:Aspergillus niger ACE−2−1(ATCC 20611)
配列の特徴
特徴を表す記号:P CDS(partial amino acid sequence)
存在位置:1..788
特徴を決定した方法:E
配列
配列番号:11
配列の長さ:565
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
起源
生物名:Penicillium roqueforti IAM7254
配列の特徴
特徴を表わす記号:mat peptide
存在位置:1..565
特徴を決定した方法:E
配列
配列番号:12
配列の長さ:1695
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:DNA
起源
生物名:Penicillium roqueforti IAM7254
配列の特徴
特徴を表わす記号:mat peptide
存在位置:1..1695
特徴を決定した方法:E
配列
配列番号:13
配列の長さ:574
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:タンパク質
起源
生物名:Scopulariopsis brevicaulis IFO4843
配列の特徴
特徴を表わす記号:mat peptide
存在位置:1..574
特徴を決定した方法:E
配列
配列番号:14
配列の長さ:1722
配列の型:核酸
鎖の数:二本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:DNA
起源
生物名:Scopulariopsis brevicaulis IFO4843
配列の特徴
特徴を表わす記号:mat peptide
存在位置:1..1722
特徴を決定した方法:E
配列
配列番号:15
配列の長さ:28
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:16
配列の長さ:24
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:17
配列の長さ:19
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:18
配列の長さ:20
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:19
配列の長さ:24
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:20
配列の長さ:22
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:21
配列の長さ:24
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:22
配列の長さ:21
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:23
配列の長さ:22
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:24
配列の長さ:30
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:25
配列の長さ:26
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:26
配列の長さ:27
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:27
配列の長さ:24
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:28
配列の長さ:21
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:29
配列の長さ:19
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:30
配列の長さ:24
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:31
配列の長さ:20
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:32
配列の長さ:21
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:33
配列の長さ:23
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:34
配列の長さ:23
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
配列番号:35
配列の長さ:23
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
Claims (28)
- 配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列、または配列表の配列番号1の 配列においていくつかのアミノ酸の挿入、置換または欠 失、若しくはその一方または両末端への付加がなされた ものであって、かつそのβ−フルクトフラノシダーゼ活 性を保持する配列をコードするDNA配列を含んでなる、DNA断片。
- 配列表の配列番号2に示される塩基配列を含んでなる、請求項1記載のDNA断片。
- 配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列、または配列表の配列番号1の 配列においていくつかのアミノ酸の挿入、置換または欠 失、若しくはその一方または両末端への付加がなされた ものであって、かつそのβ−フルクトフラノシダーゼ活 性を保持する配列をコードする、DNA。
- 配列表の配列番号2に示される塩基配列を有する、請求項3記載のDNA。
- 配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列またはその配列においていくつかのアミノ酸の挿入、 置換または欠失、若しくはその一方または両末端への付 加がなされたものであって、かつそのβ−フルクトフラ ノシダーゼ活性を保持する配列を含んでなる、ポリペプチド。
- 請求項3または4に記載のDNAがプラスミドベクターに組み込まれてなる、組換えプラスミド。
- 請求項6の組換えプラスミドによって形質転換された、宿主細胞。
- 請求項7記載の宿主細胞を培養し、その宿主および/またはその培養物からβ−フルクトフラノシダーゼを採取する工程を含んでなるβ−フルクトフラノシダーゼの製造法。
- 請求項7記載の宿主細胞または請求項8で得られたβ−フルクトフラノシダーゼと、スクロースとを接触させる工程を含んでなる、フラクトオリゴ糖の製造法。
- 配列表の配列番号2記載の塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列との相同性を利用することによって、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を単離する方法。
- β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が含まれると予想される遺伝子ライブラリーを用意する工程と、
配列表の配列番号2記載の塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列を用いて前記遺伝子ライブラリーをスクリーニングし、前記配列表の配列番号2記載の塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列とハイブリダイズする配列を遺伝子ライブラリーから選択し、その後選択された配列を単離する工程と、そして
遺伝子ライブラリーから選択、単離された配列から、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を単離する工程と
を含んでなる、請求項10に記載の方法。 - 遺伝子ライブラリーが染色体ライブラリーまたはcDNAライブラリーである、請求項11記載の方法。
- 配列表の配列番号2記載の塩基配列またはその一部を含んでなる塩基配列からなるプライマーを用意する工程と、
前記プライマーを用い、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が含まれると予想されるサンプルを鋳型としたPCRを実施する工程と、そして
増幅されたPCR産物から、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を単離する工程と
を含んでなる、請求項10に記載の方法。 - β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が含まれると予想される遺伝子ライブラリーまたはβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子が含まれると予想されるサンプルが、真菌類由来である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
- 真菌類がアスペルギルス属、ペニシリウム属、またはスコプラリオプシス属である、請求項14記載の方法。
- 親β−フルクトフラノシダーゼを変異さ せた結果得ることができるフルクトース転移活性を有す るβ−フルクトフラノシダーゼ変異体であって、
変異が、
親β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列におい て、1個または複数個のアミノ酸の挿入、置換、または 欠失、若しくはその一方または両末端への付加であり、 かつ
スクロースを基質としてβ−フルクトフラノシダーゼ変 異体のフルクトース転移反応を利用して生成されるフラ クトオリゴ糖の成分組成を、親β−フルクトフラノシダ ーゼの場合の組成と異なるものとなるようにするもので あり、そして
前記親β−フルクトフラノシダーゼが、配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列からなるβ−フルクトフラノシダーゼ、またはその配列においていくつかのアミノ酸の 挿入、置換または欠失、若しくはその一方または両末端 への付加がなされたものであって、かつそのβ−フルク トフラノシダーゼ活性を保持する配列である、β−フルクトフラノシダーゼ変異体。 - 配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列中の170、300、313、および386番目のアミノ酸からなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸残基、または配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列の相同体において前記アミノ酸に相当する位置のアミノ酸からなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸残基が、他のアミノ酸残基により置換されてなる、請求項16に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体。
- 配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列中の170番目のアミノ酸またはそれに相当する位置のアミノ酸が、トリプトファン、フェニルアラニン、およびチロシンからなる群から選択される芳香族アミノ酸に置換されてなる、請求項17に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体。
- 配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列中の300番目のアミノ酸またはそれに相当する位置のアミノ酸が、トリプトファン、バリン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸に置換されてなる、請求項17に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体。
- 配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列中の313番目のアミノ酸またはそれに相当する位置のアミノ酸が、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸に置換されてなる、請求項17に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体。
- 配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列中の386番目のアミノ酸またはそれに相当する位置のアミノ酸が、リジン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される塩基性アミノ酸に置換されてなる、請求項17に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体。
- 配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列中の170、300、および313番目のアミノ酸またはそれに相当する位置のアミノ酸が、それぞれトリプトファン、トリプトファン、およびリジンに置換されてなる、請求項17に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体。
- 配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列中の170、300、および313番目のアミノ酸またはそれに相当する位置のアミノ酸が、それぞれトリプトファン、バリン、およびリジンに置換されてなる、請求項17に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体。
- 請求項16〜23のいずれか一項に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体をコードする、DNA。
- 請求項24に記載のDNAを含んでなる、β−フルクトフラノシダーゼ変異体発現ベクター。
- 請求項25に記載の発現ベクターを含んでなる、宿主細胞。
- 請求項16〜23のいずれか一項に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体の製造法であって、
請求項24に記載のDNAまたは請求項25に記載の発現ベクターによって、宿主細胞を形質転換し、
その形質転換体を培養し、
その形質転換体および/またはその培養物からβ−フルクトフラノシダーゼを採取する工程を含んでなる、β−フルクトフラノシダーゼ変異体の製造法。 - 請求項26に記載の宿主細胞または請求項16〜23のいずれか一項に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ変異体と、スクロースとを接触させる工程を含んでなる、フラクトオリゴ糖の製造法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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