JP4574245B2 - 麹菌由来の細胞壁分解新規酵素の遺伝子、及び該酵素の製造方法 - Google Patents
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Description
即ち、本発明者は、アスペルギルス・オリゼ由来のエキソ及びエンド-β-1,3-グルカナーゼ遺伝子の探索に成功し、該アミノ酸配列に対応する塩基配列を決定した。さらに該遺伝子を導入した形質転換株を作製し、新規エキソ及びエンド-β-1,3-グルカナーゼの発現に成功した。
(1)下記のいずれか一つに示す蛋白質をコードする遺伝子。
(a)アスペルギルス・オリゼ由来の分子量62kDを有するβ−1,3−グルカナーゼ、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質、及び
(d)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質。
(2)下記のいずれか一つに示すDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号1に示される塩基配列またはその相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA、及び
(c)配列番号1に示される塩基配列のDNAと80%以上の配列同一性を示すDNAまたはその部分断片であり、かつエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性の機能を有する蛋白質をコードするDNA。
以上の遺伝子は、エキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質をコードすることを特徴とする。
(3)下記のいずれか一つに示す蛋白質をコードする遺伝子。
(a)アスペルギルス・オリゼ由来の分子量80kDを有するβ−1,3−グルカナーゼ、
(b)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(c)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質、及び
(d)配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質。
(4)下記のいずれか一つに示すDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号3に示される塩基配列またはその相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA、及び
(c)配列番号3に示される塩基配列のDNAと80%以上の配列同一性を示すDNAまたはその部分断片であり、かつエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性の機能を有する蛋白質をコードするDNA。
以上の遺伝子は、エンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質をコードすることを特徴とする。
(a)アスペルギルス・オリゼ由来の分子量62kDを有するβ−1,3−グルカナーゼ、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質、及び
(d)配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質。
以上の蛋白質はエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有することを特徴とする。
(a)アスペルギルス・オリゼ由来の分子量80kDを有するβ−1,3−グルカナーゼ、
(b)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(c)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列からなり、かつエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質、及び
(d)配列番号4で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分断片であり、かつエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質。
以上の蛋白質はエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有することを特徴とする。これらの蛋白質はアスペルギルス・オリエから当業者に公知の任意の方法によって精製したり、又は、上記の製造方法により、組換え蛋白質として得ること出来る。
従って、本発明は、これら微生物、その培養物、及び/又は蛋白質をβ-1,3-グルカンに作用させることによって、低分子化β-1,3-グルカンを製造する方法にも係る。このような作用は、β-1,3-グルカンが含まれる食品、又は、β-1,3-グルカンが含まれる適当な反応系において上記各物質を共存させ、酵素反応を行わせることによって容易に達成することが出来る。
ゲノム解析により得られた配列情報を、BLASTサーチにかけることにより新規エキソ-β-1,3-グルカナーゼ遺伝子およびエンド-β-1,3-グルカナーゼ遺伝子の情報を取得する。この情報に基づきアスペルギルス・オリゼRIB40株(ATCC42149)よりtotal
RNAを抽出し、mRNAに精製を行った後RT-PCRに供することによりcDNAを増幅する。得られたDNA断片をベクターにクローニングした後塩基配列の決定し、蛋白質としての翻訳領域を決定する。
例えば、本明細書に記載された本発明DNAの塩基配列又はアミノ酸配列の情報に基づき適当なプライマーを合成し、これらを用いて、アスペルギルス・オリゼのtotal RNAから当業者に公知の任意の方法で調製した適当なcDNAライブラリーに対して、PCRにより増幅して調製することも出来る。
PCRは当業者に周知の条件及び手段を用いて、本発明の増幅用プライマーセットを使用して行うことが出来る。
例えば、94℃で2分の後、94℃で10秒、55℃で20秒、72℃で2分を30サイクル行い、最後に72℃で5分を行う。なお、サーマルサイクラーとしては、Perkin Elmer社製9600など一般のサーマルサイクラーを用いることができる。耐熱性 DNAポリメラーゼとしては、ExTaq DNA Polymerase(宝酒造製)などの一般の市販品を用い、反応液の組成はポリメラーゼに添付の説明書に従って実施する。
或いは、上記塩基配列に基づいて作成した適当なプローブでcDNAライブラリーに対してハイブリダイゼーションによりスクリーニングすることによって得ることが出来る。
更に、当業者に周知の化学合成によって、本発明の各遺伝子を調製することも出来る。
従って、このようなストリンジェントな条件下でハブリダイズするDNAの代表的な例として、各塩基配列間の同一性の程度が、例えば、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上であるような、高い配列同一性を有するDNA又はその断片であって、所定のβ-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAを挙げることができる。
尚、塩基配列間の同一性は、当業者に公知のアルゴリズム、例えば、実施例で使用されているBlast を用いて決定することができる。
本発明の蛋白質のアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または転移を含むアミノ酸配列を有する蛋白質であって、所定のβ-1,3-グルカナーゼ活性を有するものは、当業者に公知の任意の方法、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法、及びPCR法等の当業者に周知の方法を適宜組み合わせて、容易に作成することが可能である。
尚、アミノ酸配列間の同一性も、当業者に公知のアルゴリズム、例えば、実施例で使用されているBlast を用いて決定することができる。
尚、β-1,3-グルカナーゼ活性は、本明細書の実施例に記載さえている方法で測定することが出来る。
上記で得られた本発明遺伝子を当業者に公知の任意の方法によって組換えベクターに組み込み、本発明の組換え発現ベクターを作成することが出来る。
例えば、(1)本発明の遺伝子を含有するDNA断片を切り出し、(2)該DNA断片を適当な組換えベクター中の制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入して該ベクターに連結する挿入することにより製造することができる。組換えベクターに特に制限はなく、例えば、麹菌由来のプラスミド(例えば、pSal23, pTAex3, pNGU113, pRBG1, pGM32, pSE52, pNAGL142等)、大腸菌由来のプラスミド(例、pT7Blue T−Vector、pRSET、pBR322、pBR325、pUC18、pUC118)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、及び、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、等の組換えベクター等を利用することが出来る。
Pseudomonas fluorescens、Laminaria japonica、Fusarium oxysporum、Streptoverticillium mobaraense、Kluyveromyces marxianus、Candida rugosa、Streptoverticillium mobaraense、Thermomyces lanuginosus、Aspergillus sojae、及び、Aspergillus aculeatus 等。
本遺伝子のcDNAの塩基配列を決定するためにRT-PCRによるcDNAの増幅を試みた。アスペルギルス・オリゼ RIB40株の胞子をYPD培地(1%イーストエキストラクト、2%バクトペプトン、2%グルコース、0.5%リン酸1カリウム、0.05%硫酸マグネシウム)100mlで30℃、20時間振とう培養した後、菌体を貧栄養培地(0.3%硝酸ナトリウム、0.1%リン酸1カリウム、0.2%塩化カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、4%塩化ナトリウム)に移し、30℃、6時間さらに培養した。その後、菌体を回収し、Chigwinらの方法(Biochemistry 18 5294-5299, (1979))に従ってtotal RNAを得、その後オリゴ(dT)セルロースカラム(アマシャム社)を使用してmRNAを取得した。その後、逆転写反応のプライマーにオリゴ(dT)12-18プライマー(インビトロジェン社)、逆転写酵素にSuperScriptII RNaseH- Reverse Transcriptase(インビトロジェン社)使用し、ファーストストランドcDNAの合成を行った。続いて、ファーストストランドcDNAを鋳型にし、PCR反応を行い完全長cDNAの取得を行った。
5’-ATGGAGGGCTCCGATGCACAACCGCCGTTC-3’(配列番号5)
5’-TTAATAATATTCCGGTAAATCCCCGAAACT-3’(配列番号6)
PCR反応はExpand HF (ロシュ.ダイアグノスティックス社)を使用し、DNA Thermal Cycler (宝酒造社)により行った。反応液の組成は以下の通りである。
94℃、3分 1サイクル
94℃、1分 55℃、2分 72℃、2分 30サイクル
72℃、7分 1サイクル
本遺伝子のcDNAの塩基配列を決定するためにRT-PCRによるcDNAの増幅を試みた。アスペルギルス・オリゼ RIB40株の胞子をYPD培地100mlで30℃、20時間振とう培養した後、菌体を貧栄養培地に移し、30℃、6時間さらに培養した。その後、菌体を回収し、Chigwinらの方法(Biochemistry 18 5294-5299, (1979))に従ってtotal RNAを得、その後オリゴ(dT)セルロースカラムを使用してmRNAを取得した。その後、逆転写反応のプライマーにオリゴ(dT)12-18プライマー、逆転写酵素にSuperScriptII RNaseH- Reverse Transcriptase使用し、ファーストストランドcDNAの合成を行った。続いて、ファーストストランドcDNAを鋳型にし、PCR反応を行い完全長cDNAの取得を行った。
5’-ATGGCGACAATGGCAAACGGTCAAGATGTG-3’ (配列番号7)
5’-CTATATATTGTTAGTGGTGCTAATGAACCC-3’ (配列番号8)
PCR反応はExpand HFを使用し、DNA Thermal Cyclerにより行った。反応液の組成は以下の通りである。
94℃、3分 1サイクル
94℃、1分 50℃、2分 72℃、2分 35サイクル
72℃、7分 1サイクル
上記で取得したcDNAを鋳型としてPCRを行い、新規エキソ-β-1,3-グルカナーゼ遺伝子のORFを含むDNA断片を取得した。プライマーには該遺伝子の塩基配列に基づき作成した次の2つの塩基配列のものを用いた。
5’-CTAGCTAGCATGGAGGGCTCCGATGCACA-3’(配列番号9)
5’-CCGCTCGAGATAATATTCCGGTAAATCCC-3’(配列番号10)
各プライマーには5’側にNheI,3’側にXhoIの制限酵素認識配列を含むような改変を加えてある。PCR反応はExpand HFを使用し、DNA Thermal Cyclerにより行った。反応液の組成は以下の通りである。
94℃、3分 1サイクル
94℃、1分 50℃、2分 72℃、2分 25サイクル
72℃、7分 1サイクル
上記で取得した大腸菌形質転換体を、培地を入れた試験管に一晩培養した培養液を1/10量加え、20℃で20時間振盪培養した。培地成分は1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1% 塩化ナトリウム、50 μg/mlアンピシリン、0.1 mM IPTGであった。菌体を集菌した後、超音波破砕機(コスモバイオ社)で破砕し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。その結果、62 kDaの分子量を示す蛋白質が存在した(図2−A)。
β-1,3-グルカナーゼの活性測定は、基質にラミナリン(シグマ社)を使用してRachelらの方法(Gene 226 147-154, (1999))に従い、反応時間を1時間で活性測定を行った。測定結果は表1に示す。ベクターpET-21b(+)のみでは検出できなかったβ-1,3-グルカナーゼ活性が認められ、組換え大腸菌によるβ-1,3-グルカナーゼの生産が確認された。
尚、pExgHは独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに平成16年6月24日付で寄託し、受領番号FERM AP−20100が付されている。
上記で取得したcDNAを鋳型としてPCRを行い、新規エンド-β-1,3-グルカナーゼ遺伝子のORFを含むDNA断片を取得した。プライマーには該遺伝子の塩基配列に基づき作成した次の2つの塩基配列のものを用いた。
5’-CTAGCTAGCATGGCGACAATGGCAAACGG-3’ (配列番号11)
5’-CCGCTCGAGGTTAGTGGTGCTAATGAACCC-3’ (配列番号12)
各プライマーには5’側にNheI,3’側にXhoIの制限酵素認識配列を含むような改変を加えてある。PCR反応はExpand HFを使用し、DNA Thermal Cyclerにより行った。反応液の組成は以下の通りである。
94℃、3分 1サイクル
94℃、1分 50℃、2分 72℃、2分 25サイクル
72℃、7分 1サイクル
上記で取得した大腸菌形質転換体を、培地を入れた試験管に一晩培養した培養液を1/10量加え、20℃で20時間振盪培養した。培地成分は1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1% 塩化ナトリウム、50 μg/mlアンピシリン、0.1 mM IPTGであった。菌体を集菌した後、超音波破砕機で破砕し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。その結果、80 kDaの分子量を示す蛋白質が存在した(図2−B)。
尚、pEngLは独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに平成16年6月24日付で寄託し、受領番号FERM AP−20099が付されている。
実施例4と同様に、新規エンド−β−1,3−グルカナーゼ遺伝子を発現させた大腸菌を液体培地で一晩振とう培養し、菌体を集菌した後、超音波破砕機(コスモバイオ社)で破砕し、遠心上清をHis MicroSpin Purification Module (アマシャムファルマシア社) で精製した。精製されたエンド−β−1,3−グルカナーゼをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した結果、80kDaの分子量を示した。
新規エンド−β−1,3−グルカナーゼ遺伝子を含む組換えベクターにより形質転換した大腸菌から精製された酵素溶液を用いて、β−1,3−グルカナーゼの基質特異性を調べた。新規エンド−β−1,3−グルカナーゼの基質特異性は、基質にラミナリン、キトサン、セロビオース、ゲンチビオース(Sigma社)、デキストラン、プスツラン、β-1,6-グルカン、カードラン(和光純薬工業株式会社)、を使用して実施例4と同様にRachel らの方法 (Gene,226,147-154, 1999) に従い、反応時間1時間で測定を行った。測定結果は表6に示す。β-1,3を主鎖とするラミナリン及びカードランにβ−1,3−グルカナーゼ活性が得られたことから、β−1,3−グルカナーゼの生産能をもつ組換え大腸菌であることが確認された。
3mg/mL、ラミナリン(Sigma社)を基質として50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH2.0-10.0)に溶解し、上記酵素活性測定法に従い、相対活性を測定した。その結果、酵素活性のpHは5.0付近で最大となった。結果は表7に示す。
pH安定性を調べるために3mg/mLラミナリン(Sigma社)を含む50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH2.0-10.0) を反応液として用いて37℃、1時間保持した後、上記の酵素活性測定法に従い、残存活性を測定した。その結果は、pH5.0-7.0の範囲でpH安定性を示した。結果は表7に示す。
上記酵素活性測定法に従い、各温度(20-75℃) において相対活性を測定した。その結果、酵素活性は45℃で最大となった。結果は表7に示す。
3mg/mLラミナリン(Sigma社)を含む50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中で
20-75℃、1時間の保持した後、上記酵素活性測定法に従い、残存活性を測定した。その結果、55℃までは90%以上安定性を示し、75℃までは約75%に残存率が低下し、それを超えると失活した。結果は表7に示す。
新規エンド−β−1,3−グルカナーゼ活性は上記活性測定法に従い、酵素活性(U/mg)を算出した。1Uは、1分間当たり1μmoleの生成物を生成する酵素量と定義した。この酵素活性を算出するにあたり、あらかじめブラッドフォード法・プロテインアッセイ(BioRad社)を用いて酵素中に含まれるタンパク質量を求めた。酵素溶液800μLに対して200μL染色試薬を添加混合し、室温で5分後に静置した後595nmでの吸光度を測定した。総タンパク量、総活性、比活性を算出した結果を表7に示す。
ラミナリン(Sigma社)を基質として、新規エンド−β−1,3−グルカナーゼの酵素反応のミカエリス定数(Km値)及び最大速度(Vmax値)を測定した。上記酵素活性測定法に従い、各基質濃度(0.1-10mg/mL)を加え反応させ、この反応液の505nmにおける吸光度を連続的に測定することにより ラミナリン分解活性を測定した。得られた結果より、ラインウィーバー・バークプロットを作成した結果、Km値は3.62mg/mLであり、Vmax値は75.02μmol/minであった。結果は表7に示す。
上記により精製されたエンド−β−1,3−グルカナーゼ活性を有する新規な酵素を用いて、PA化13糖ラミナリオリゴ糖(生化学工業社)を基質として反応させて、その分解産物をHPLCにより検出した。その結果を図3及び図4に示す。PA化ラミナリオリゴ糖は10mM
酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に200pmol/mLとなるように溶解した。1・3・10分間の0.1μg/mL酵素処理をした13糖ラミナリオリゴ糖における初期中間産物には3糖から10糖が検出され、その中で主要分解産物は7糖から10糖であることが確認された(図3)。また、1・3・10・60分間の10mg/mL酵素処理をしたラミナリオリゴ糖についての中期中間産物として2糖から9糖が確認され、さらに主要最終分解産物として2糖及び3糖が検出された(図4)。以上のHPLC分析の結果より、β−1,3−グルカナーゼはエンド型酵素であることが確認された。
アスペルギルス・オリゼのアミラーゼプロモーターを持つ発現ベクタープラスミドpMAR5(Biosci. Biotech. Biochem., 56:1674-1675, 1992)のマーカー遺伝子であるargB遺伝子を、アスペルギルス・オリゼのniaD遺伝子に交換したプラスミド(pAPTL)を作成した。このプラスミドは、niaD遺伝子を選択マーカーとして持ち、アミラーゼ遺伝子のプロモーターとターミネーターの間に7種類の制限酵素サイト(EcoRI, ClaI, NheI, NotI, SpeI, SmaI HindIII)もつ発現ベクターであり、制限酵素サイトにプロモーターと同じ方向で遺伝子のORFを組込み、麹菌を形質転換することにより、アミラーゼ遺伝子プロモーターの制御下で目的の遺伝子を発現することが出来る。
5’-CTAGCTAGCATGGCGACAATGGCAAACGG-3’ (配列番号13)
5’-GGACTAGTCTATATATTGTTAGTGGTGCTA-3’ (配列番号14)
各プライマーには5’側にNheI,3’側にSpeIの制限酵素認識配列を含むような改変を加えてある。PCR反応はKOD-Plus-DNA polymerase(TOYOBO)を使用し、DNA Thermal Cyclerにより行った。反応液の組成は以下の通りである。
95℃、2分 1サイクル
95℃、0.5分 58℃、0.5分 72℃、4分 30サイクル
72℃、4分 1サイクル
増幅産物をNheIおよびSpeIで消化し1.0%アガロースゲル電気泳動し、DNA断片を単離、回収を行なった。同一の酵素で消化を行なったpAPTLとライゲーションし、大腸菌JM109(ニッポンジーン社)に形質転換した。大腸菌形質転換体よりプラスミドを調整し、pEGOとした。pEGOは独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに平成16年6月24日付で寄託し、受領番号FERM AP−20101が付されている。
pEGOを用いて、アスペルギルス・オリゼRIB326-15株(niaD欠損株)に形質転換を行なった。形質転換法は、プロトプラスト化した後ポリエチレングリコール及び塩化カルシウムを用いる方法(Mol. Gen. Genet., 218:99-104, 1989)によって行った。pEGOを20μg用いて形質転換し、CZ培地(DIFCO)で形質転換体を選択したところ、約50個のコロニーが得られた。このうち、12コロニーについて最少培地で単分生子分離を行い、形質の安定化を行った。これらの株の分生子を寒天培地上よりかき取り、YPD液体培地に植菌し30℃で24時間振とう培養した後、菌体を回収し、Wizard Genomic DNA Purification Kit (Promega)を使用して染色体DNAを取得した。取得した染色体DNAを用いて、サザンハイブリダイゼーションを行い目的の遺伝子が組み込まれたか確認を行なった。その結果、9株で遺伝子の導入が確認された。このうち1株をENG1とした。
ENG1株及び親株(エンド-β-1,3-グルカナーゼ関しては野生型)のアスペルギルス・オリゼRIB326-15株の分生子をYPD培地に接種し、30℃で24時間、振盪培養したのち、菌体を貧栄養培地に1%マルトースを加えた培地に移し、30℃で24時間さらに振盪培養した。菌体を集菌した後、液体窒素の入った乳鉢に移し、乳棒で粉砕した。粉砕された菌体の約半量を、5 mlの抽出バッファー(50 mMリン酸カリウムバッファー pH7.0, 10 mM エチレンジアミン4酢酸3ナトリウム, 0.1%トリトンX-100, 0.1% N-ラウロイルサルコシンナトリウム, 10 mM 2-メルカプトエタノール)に入れ、充分攪拌した後、10,000 rpm、10分間の遠心分離により、不溶物を沈殿させ、菌体破砕上清を回収した。この菌体破砕上清を用いてβ-1,3-グルカナーゼ活性測定を行なった。酵素活性測定方法等は上記記載に従った。その測定結果を表9にしめす。
Claims (12)
- 下記のいずれか一つに示す蛋白質をコードする遺伝子:
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は、挿入を含むアミノ酸配列からなり、かつエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質。 - 下記のいずれか一つに示すDNAを含む遺伝子:
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号1に示される塩基配列の相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。 - 下記のいずれか一つに示す蛋白質をコードする遺伝子:
(a)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は、挿入を含むアミノ酸配列からなり、かつエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質。 - 下記のいずれか一つに示すDNAを含む遺伝子:
(a)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号3に示される塩基配列の相補鎖を含む核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。 - 請求項1ないし4記載の遺伝子を含有してなる組換え発現ベクター。
- 請求項5記載の組換え発現ベクターを含む微生物。
- 請求項6記載の微生物を培地で培養し、その培養物からエキソ又はエンド-β-1,3-グルカナーゼを採取することを特徴とするエキソ又はエンド-β-1,3-グルカナーゼの製造方法。
- 下記のいずれか一つに示す蛋白質:
(a)請求項2記載の遺伝子によってコードされる蛋白質、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(c)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は、挿入を含むアミノ酸配列からなり、かつエキソ−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質。 - 下記のいずれか一つに示す蛋白質:
(a)請求項4記載の遺伝子によってコードされる蛋白質、
(b)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(c)配列番号4で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、及び/又は、挿入を含むアミノ酸配列からなり、かつエンド−β-1,3-グルカナーゼ活性を有する蛋白質。 - 請求項7記載の方法で得られた組換え蛋白質である、請求項8又は9記載の蛋白質。
- 請求項6記載の微生物、その培養物、及び/又は請求項10記載の蛋白質を含む食品。
- 請求項6記載の微生物、その培養物、及び/又は請求項8、9又は10記載の蛋白質をβ-1,3-グルカンに作用させることによって、低分子化β-1,3-グルカンを製造する方法。
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