JP2007189905A - 好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素遺伝子を含有するdna、組み換え体dna、および好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法 - Google Patents

好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素遺伝子を含有するdna、組み換え体dna、および好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】 環状イソマルトオリゴ糖であるCI−7、CI−8、CI−9だけでなく、CI−10、およびこれより高分子のサイクロデキストランを作ることができるサイクロデキストラン合成酵素を提供すること。
【解決手段】 下記の制限酵素開列地図を有し、かつ好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素(分子量 107kd)遺伝子を含有するDNA
Figure 2007189905

(式中、HはHindIII、EはEcoRI、NはNdeI、PはPstIを示す。)、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素をコードするDNA、および、配列表の配列番号2に示される塩基配列によりコードされる前記DNA。
【選択図】なし

Description

本発明は、環状イソマルトオリゴ糖、サイクロデキストランを生産する酵素である好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素をコードする遺伝子、および好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造方法に関する。
従来、サイクロデキストラン合成酵素遺伝子はバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)由来のT−3040(特許文献1)およびバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)由来のU−155(特許文献2)の2種類のみが報告されている。
T−3040株およびU−155株のサイクロデキストラン合成酵素は、グルコース7分子がα−1,6結合でつながった環状オリゴ糖CI−7、グルコース8分子がα−1,6結合でつながった環状オリゴ糖CI−8、グルコース9分子がα−1,6結合でつながった環状オリゴ糖CI−9等の比較的低分子のサイクロデキストランを生産するが、CI−10以上の高分子サイクロデキストランを合成するという報告はない。
また、至適pHは、T−3040酵素は5.5(特許文献1)、U−155酵素は6.0(特許文献2)といずれも酸性側で、T−3040酵素は60℃、15分の加熱で完全に失活し、カルシウムを添加した場合は安定化するが、65℃、15分の加熱で完全に失活する(非特許文献1)。また、U−155酵素は60℃、15分の加熱で完全に失活する(特許文献3)。アルカリ側で高い活性を示す酵素、65℃よりも高温で加熱しても活性を有する酵素および該酵素をコードする遺伝子に関してはこれまでに得られていない。また、高分子サイクロデキストランを生産する酵素をコードする遺伝子もこれまで得られていない。
特許第3429569号明細書(特開平8−66191号公報) 特許第3487711号明細書(特開平9−234073号公報) 特開2005−192510号公報 Hiroshi Kawamoto, Tetsuya Oguma, Hiroshi Sekine, and Mikihiko Kobayashi, Immmobilization of cycloisomaltooligosaccharide glucanotransferase for the production of cycloisomaltooligosaccharides from dextran, Enzyme and Microbial Technology 28, 515-521 (2001)
本発明は、環状イソマルトオリゴ糖であるCI−7、CI−8、CI−9だけでなく、CI−10、およびこれより高分子のサイクロデキストランを作ることができるサイクロデキストラン合成酵素の提供を目的とする。
本発明に係るサイクロデキストラン合成酵素は、従来の酵素よりも比活性が高く、サイクロデキストランを効率よく生産することが期待できる。また、従来よりも高いpHで作用し、至適温度も高く、耐熱性も優れているので、汚染の心配が少ない条件で、迅速に、かつ効率的にサイクロデキストランを生産することができる。
さらに、本発明は係る酵素を生産するため、コードする酵素遺伝子の分離を行い、本酵素を本酵素遺伝子の組み換え体、または本酵素遺伝子を有する菌株から生産する方法を提供するものである。
本発明者らは、特許文献3に記載されたパエニバチルス・エスピー(Paenibacillus sp.)598K株のゲノムDNAよりサイクロデキストラン合成酵素遺伝子を含むHindIII断片を抽出し、該DNA塩基配列を解読した。また、サイクロデキストラン合成酵素遺伝子をベクターDNAに組み込み、大腸菌中で発現させ、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を生産させることに成功した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
請求項1記載の本発明は、下記数1に記載の制限酵素開列地図を有し、かつ好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素(分子量 107kd)遺伝子を含有するDNAである。
Figure 2007189905

(式中、HはHindIII、EはEcoRI、NはNdeI、PはPstIを示す。)
請求項2記載の本発明は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素をコードするDNAである。
請求項3記載の本発明は、配列表の配列番号2に示される塩基配列によりコードされる請求項2記載のDNAである。
請求項4記載の本発明は、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素が、パエニバチルス属菌由来の酵素である請求項1〜3のいずれかに記載のDNAである。
請求項5記載の本発明は、請求項2または3記載の好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素遺伝子または配列表の配列番号3記載のDNA断片をベクターDNAに組み込んでなる組み換え体DNAである。
請求項6記載の本発明は、請求項5記載の組み換え体DNAを含む大腸菌を培地に培養し、培養物より好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を採取することを特徴とする好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法である。
請求項7記載の本発明は、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素生産能を有するパエニバチルス属菌を培養し、培養物より好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を採取することを特徴とする好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法である。
請求項8記載の本発明は、パエニバチルス属菌が、パエニバチルス・エスピー598K(FERM P−19604)である請求項7記載の製造法である。
環状イソマルトオリゴ糖であるサイクロデキストラン(CI)は、従来、40℃、pH5.5〜6.0という低温で、弱酸性の、比較的汚染しやすい条件でのみでしか生産できなかった。しかも、抗う蝕剤とするには酸性であることは望ましくないため、CI製造後に、pHを上げることが必要であった。
本発明により、より高温で、かつアルカリ性の条件で、T−3040由来のCITaseよりも高い生産性で、より効率的にCIを生産する技術が開発され、より汚染の危険性を減らし、また、pH調整することなく抗う蝕剤としてのCIを生産することが可能となった。
また、既知酵素であるT−3040と異なり、酵素反応にカルシウムを必要としないため、生成したCIの精製を容易に行うことができる。しかも、本発明で得られたCITaseは、高温による安定性が従来のCITaseよりも高いことにより、CITaseを繰り返し使用する場合の反応、分離、濃縮の操作に伴う温度上昇にも耐えることができ、酵素の使用可能時間を大幅に延長することができる。さらに、本酵素は、抗う蝕性の高いCI−7を最も良く生産し、包接能の高いCI−10をはじめとする高分子のCIも同様に生産することができる。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討し、特許文献3記載のパエニバチルス・エスピー598K菌株からサイクロデキストラン合成酵素をコードする遺伝子を含有するDNAを単離、および構造決定することに成功した。さらに、該DNAをベクターDNAに組み込んでなる組み換え体DNAを得た。
該組み換え体DNAより成熟サイクロデキストラン合成酵素のみをコードする遺伝子を調製し、発現ベクターに組み込んで、該組み換え体DNAを含む大腸菌を培養すれば、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を効率よく製造することができる。
本発明によれば、請求項1記載の好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素遺伝子を含むDNAより請求項5記載の組み換えDNAを作成し、これを含んだ大腸菌を培養することによって好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を生産することができる。
さらに、請求項7、8に記載のように、パエニバチルス属菌を培養することによっても該酵素を生産することができる。
上記微生物は、特開2005−192510号公報に記載した取得方法で取得することができる。
本酵素は、低分子サイクロデキストランだけでなく、高分子のサイクロデキストランも効率よく合成することができる。
請求項1記載のDNAは、配列表の配列番号2に示される塩基配列を有するサイクロデキストラン合成酵素をコードするDNA、配列表の配列番号3に示される塩基配列を有するサイクロデキストラン合成酵素をコードするDNA、配列表の配列番号4に示される塩基配列を有する成熟サイクロデキストラン合成酵素をコードするDNAである。
本発明はまた、上記いずれかの記載のDNAを含むDNA断片、並びに該組み換え体DNAを含む大腸菌をはじめとする微生物を培地に培養し、培養物よりサイクロデキストラン合成酵素を採取することを特徴とするサイクロデキストラン合成酵素の製造法を提供するものである。
本発明を、以下の実施例により説明する。
本発明に係るパエニバチルス属菌株のゲノムDNAの取得方法の詳細について、以下に示す。
パエニバチルス・エスピー598K株の保存菌株(FERM P−19604)を1白金耳、1リットル中にデキストランまたはブルーデキストラン(ファルマシア社製)、好ましくはブルーデキストラン2000(アマシャム・ファルマシア製)1〜5g、好ましくは2g、酵母エキス(バクト社製)5g、トリプトン(バクト社製)10g、NaCl 10gを含み、pHを7.0に調整し、寒天15gを加えた平板培地に塗抹する。ブルーデキストランを用いた場合は、通常30℃で1晩から2晩培養すると、ハローを形成する。1晩から3日間程培養してコロニーを生育させる。
次に、上記コロニーから定法により、ゲノムDNAを調製する。例えば、1コロニーを1リットル中に酵母エキス(バクト社製)5g、トリプトン(バクト社製)10g、NaCl 10gを含み、pHを7.0に調整した液体(Luria−Bertani、以下LBと省略することがある)培地150mlに接種し、30℃で一晩から2日間程振盪培養した後に、菌体を遠心によって集める。これを11mlのTEバッファー(10mM Tris−HCl、pH8.0、1mM EDTA)に懸濁し、22mgのリゾチームを加え、37℃で1時間保持する。
次に、10%SDSを0.6ml、プロテイナーゼK(メルク社製)(2mg/100μl)を60ml加え、37℃で1時間保持する。
さらに、室温で5M NaClを2ml加えて混合し、CTAB/NaCl溶液(10% CTAB、0.7M NaCl)を1.6ml加え、良く混合して65℃で10分反応させる。次いで、15mlのクロロホルム:イソアミルアルコール=24:1液を加え、10,000×g、15分間遠心する。水層を分取し、これに等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1液を加えて、再び10,000×g、15分間遠心する。水層を分取し、これに0.6容のイソプロパノールを加え、白い糸状の沈殿を、先をシールしたパスツールピペットに巻き取り、70%エタノールで洗浄する。10μg/mlTEのRNaseAを0.3ml加え、37℃で30分保温後、60%容のPEG溶液(20%ポリエチレングリコール6000、2.5M NaCl)を加えて氷中で2時間置く。15,000×gで15分間遠心後、上清を捨て、0.8mlの70%エタノールで洗浄、乾燥し、100μlのTEに溶解する。
上記DNAを鋳型とし、プライマー1(配列表の配列番号6)とプライマー3(配列表の配列番号8)、またはプライマー2(配列表の配列番号7)とプライマー3(配列表の配列番号8)を用いてDNAを増幅する。なお、配列中のyはtまたはc、rはaまたはgを示す。また、プライマー3(配列表の配列番号8)の6番目のnは、特殊塩基であるイノシンを示す。
PCRの条件については、例えば反応液100μlで、94℃にて5分間加温の後、94℃1分、55℃1分、72℃2.5分を30サイクル行った。増幅したDNA断片は、アガロースゲル電気泳動で分離、切り出し、精製し、プラスミドベクター、例えばT7―BlueR―Tベクターなどに導入し、DNA塩基配列を、DNAシーケンサを用いて決定した。
上記増幅DNA断片を組み込んだプラスミドをそれぞれDIGDNAラベリングキット(ロシュ社製)などでラベリングを行う。
598K株ゲノムDNAを制限酵素HindIIIで分解後、アガロースゲル電気泳動を行い、サイズ5〜6kbの幅を切り出し、DNAを抽出、ジーンクリーンキット(Q−BIO社)などを用いて精製する。抽出、精製したこれらHindIII DNA断片を、pBluescript SK+などのプラスミドベクターに組み込む。
これらの組み換えプラスミドを大腸菌DH5αなどに形質転換し、アンピシリン50〜100μg/mlを含むLB寒天培地(寒天1.5%)に塗抹し、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−D(−)−ガラクトピラノシド(X−Gal)でカラーセレクションして白色のコロニーを形質転換体として分離した。
これらコロニーをそれぞれアンピシリン50〜100μg/mlを含むLB液体培地で、37℃、1晩培養した。培養菌体を集め、プラスミドを精製し、アプライドバイオシステムズ社製ABIPRISM 310 GENETIC ANALYZER を用いてDNA塩基配列を決定した。決定したサイクロデキストラン合成酵素遺伝子を含むHindIII/HindIII DNA断片の塩基配列を配列表の配列番号2に示す。
配列表の配列番号2に示した塩基配列のうち、サイクロデキストラン合成酵素遺伝子は、配列表の配列番号3に示す通りである。配列番号3より、コードする推定アミノ酸配列は、配列番号1および図5の□で囲んでいない配列のように示される。なお、図5の□で囲んだアミノ酸配列は、598K株の培養液より生産されたサイクロデキストラン合成酵素のアミノ末端(最もN−末側の配列、Ala Ser Gly Asp Val Glu Arg Val)および同酵素のリシルエンドペプチダーゼ(ワコー社製)分解物より得られた内部アミノ酸配列(その他の□で囲み配列)であり、すべて遺伝子より推定したアミノ酸配列と一致している(図5)。
N−末側の配列が明らかになったので、配列表の配列番号2に示した塩基配列よりシグナル配列Met Ala Ile Arg Asn Lys Gly Trp Leu Leu Leu Val Leu Ala Leu Leu Leu Ala Leu Pro Pro Trp Gln Pro Ala Ala Leu Glu Gln Thr Ala His Alaを取り除き、定法により発現用ベクターに組み込むようにDNA断片を作成する。例えば、発現用ベクターpET23d(Novagen社製)に組み込む場合は、本DNA断片を制限酵素NcoI/NotIで切断する。同制限酵素で切断した断片をpET23dに組み込み、これをpCIT598と名付けた。これを大腸菌BL21(DE3)中で発現させる。具体的には、pCIT598溶液を大腸菌BL21(DE3)に導入し、アンピシリン50〜200μg/mlを含むLB平板培地に塗抹し、37℃で9時間〜12時間培養する。
上記平板培地に生育した1コロニーを、アンピシリン50〜200μg/mlを含む10mlのLB液体培地に接種し、37℃で一晩振盪培養する。これを1000mlの同様の培地に接種し、37℃で振盪培養し、600nmの吸光度が0.4〜0.9に達したとき、望ましくは0.5前後に達したときに、培養液の入ったフラスコを氷水で冷却し、直ちにイソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド(以下、IPTGと略記することがある。)(ワコー社製)を0.5mMとなるように加え、さらに18℃で22時間培養を続け、タンパクの生産誘導を行った。
培養終了後、培養物を遠心分離することにより菌体を沈殿として回収した。続いて、回収した菌体を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に懸濁し、超音波によって細胞破砕した。細胞破砕後、遠心分離(15,000×g、20分間、4℃)することにより上清を回収した。
これにに最終濃度0.5Mの硫酸アンモニウムを加え、氷冷しながら一晩放置し、再び遠心分離(15,000×g、20分間、4℃)することにより沈殿を回収した。これに10mlの水を加え、20mM Tris−HCl(pH8.5)に対して一晩透析したものを粗酵素液とした。
なお、粗酵素液は、パエニバチルス598K株(FERM P−19604)を、デキストランを含む培地で培養することによっても得ることができる。例えば、50mMリン酸二ナトリウム、50mMリン酸一カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.002%塩化カルシウム、0.002%塩化マンガン、0.002%硫酸鉄、0.1%酵母エキス、0.1〜2%、好ましくは0.5%のデキストラン、好ましくはデキストランT−40(アマシャム・ファルマシア社製)、0.4%塩化アンモニウムから成る50mlの液体培地に、パエニバチルス598K株の保存菌株より一白金耳植菌し、30℃で150rpm、4日間振盪培養を行う。次いで、遠心分離(10000×g、20分間、4℃)することにより上清を回収し、これを20mM Tris−HCl(pH8.5)に対して一晩透析したものを粗酵素液とした。
上記段落番号0018に記載の粗酵素液および段落番号0019に記載の粗酵素液は、下記の方法によって精製した。
Resourace Q(1ml)(アマシャム・ファルマシア社製)に粗酵素を供し、A緩衝液(20mM Tris−HCl(pH8.5)、15mM NaCl)およびB緩衝液(20mM Tris−HCl(pH8.5)、1M NaCl)の0〜60%直線濃度勾配によって、流速0.5ml/分で、48分間溶出する。これをUltrafree−MC 10000NMWL フィルターユニット(ミリポア社製)を用いて100μl程度に濃縮する。
これをSuperose 12(アマシャム・ファルマシア社製)で50mM 酢酸ナトリウム、150mM NaCl緩衝液(pH7.0)で、0.5ml/分の流速で溶出し、得られた酵素溶液を精製酵素として用いる。段落番号0018に記載の粗酵素液からはリコンビナント・サイクロデキストラン合成酵素を、段落番号0019記載の粗酵素液からはネイティブ・サイクロデキストラン合成酵素をそれぞれ精製することができる。
酵素の活性測定は、この精製酵素液に、最終濃度が2%になるように、デキストランT40(ファルマシア社製)、50mM トリス−マレイン酸緩衝液(pH8.0)を加え、50℃で反応させることにより行う。酵素反応は、10分間沸騰水中に置くことにより停止する。
次いで、室温に冷却後、これにグルコアミラーゼ(ワコー社製)およびHBDaseを加え、20mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中で30℃で一晩反応を行い、残存した直鎖のオリゴ糖またはデキストランをすべてグルコースまで分解する。HBDaseは、特開平10−229876号公報記載のスフィンゴバクテリウム・エスピー V−54(FERM P−16086)を培養して得られたものでもよく、また、特開2001−054382号公報記載の大腸菌JM109(pKK223−3−3)(FERM P−17510)等の多分岐デキストラン水解酵素遺伝子を導入した大腸菌形質転換体を培養して得られたものでもよい。酵素反応は、10分間沸騰水中に置くことにより停止し、しかる後、室温に冷却後、等量のアセトニトリルを添加し、15,000×g、10分遠心して沈殿を除く。
上記反応液をSep−Pak C18カートリッジ(ウォーターズ社製)などの逆相カラム処理したものを高速液体クロマトグラフLC−10ADVP(島津社製)とAmide−80カラム(4.6mm×25cm)(東ソー社製)を用いて50%アセトニトリルで流速1mL/分および噴霧蒸発光散乱検出器ELSD−LT(島津社製)で、分析ソフトウェアCLASS−VP(島津社製)を用いて分析し、CI−7、CI−8、CI−9のピークの面積より、生産されるCIの量を算出する。活性は、CI−7、CI−8、CI−9の総量より求めた。
パエニバチルス・エスピー598K株由来のリコンビナント好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の性質は以下の通りである。
パエニバチルス・エスピー598K株由来のリコンビナント好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素(以下、598KCITaseと省略する場合がある。)は、組み換えDNAであるpCIT598より発現することによって生産され、配列表の配列番号5に示すアミノ酸配列を有する。
生成した598KCITaseを、段落番号0021に示した方法で精製し、特許文献1に示す既知のサイクロデキストラン合成酵素であるバチルス・サーキュランスT−3040株由来のリコンビナントサイクロデキストラン合成酵素(以下、T3040CITaseと省略する場合がある)と性質を比較した。
図1は、598KCITaseおよびT3040CITaseが生産するCIをHPLCにより分析した図である。598KCITaseは、T−3040CITaseがCI−8を最も良く生産するのに対し、CI−7を最も良く生産するCITaseである。
図2に598KCITaseおよびT3040CITaseの至適pHを示す。pH4〜5.5までは50mMの酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5〜9までは50mMのトリス−マレイン酸緩衝液を用いて、598KCITaseは50℃、T3040CITaseは40℃で、その他の条件については段落番号0022および0023に記載した条件で活性を測定した。その結果、T3040CITaseの至適pHが5.5〜6付近であるのに対し、598KCITaseの至適pHは8とアルカリ側にあり、598KCITaseは好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素であることがわかった。
pH安定性については、598KCITaseは50℃において、T3040CITaseは40℃において、共に15分間のインキュベーションでは、pH5以上で安定であった。
図3に598KCITaseおよびT3040CITaseの至適温度を示す。598KCITaseは50mMトリス−マレイン酸緩衝液(pH8.0)、T3040CITaseは50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)で、その他の条件は段落番号0022および0023に記載した条件で活性を測定した。その結果、T3040CITaseの至適温度が40℃であるのに対し、598KCITaseの至適温度は50℃と高温側にあり、598KCITaseは、より高温で反応を行うことができることが明らかになった。なお、表1の数値は、それぞれの酵素につき、無添加の場合を100として、相対値で示した。
図4に示すように、温度安定性については、15分間のインキュベーションでは、598KCITaseは50℃まではほとんど活性が低下しないが、T3040CITaseは50℃ではほぼ活性が消失した。また、T−3040CITaseは、60℃で完全に失活するのに対し、598KCITaseは、70℃で約20%、80℃でも約10%の活性が残存し、598KCITaeは、耐熱性のCITaseであることが明らかになった。
表1に示すように、T−3040CITaseがカルシウムイオンで活性が約1.4倍に上昇するが、598KCITaseはいずれの二価イオンを添加した場合も、活性の上昇が見られない。このように、598KCITaseは、カルシウムを添加しなくとも最大の活性を得られるという特徴がある。
Figure 2007189905
パエニバチルス・エスピー598K株由来のネイティブ好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素も、CI−7を最も多く生産し、至適pHは8.0、至適温度は50℃、カルシウム非依存性、アミノ末端のアミノ酸配列は、図5の□で囲んだ配列、Ala Ser Gly Asp Val Glu Arg Valであり、請求項1などに記載の好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素(分子量 107kd)遺伝子の推定アミノ酸配列の、推定シグナル配列を取り除いたアミノ酸配列と一致する。
したがって、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素(分子量 107kd)遺伝子は、パエニバチルス・エスピー598K株の菌体外CITaseをコードしていると言うことができる。
バチルス・サーキュランスT−3040株およびパエニバチルス・エスピー598K株由来のリコンビナントCITaseおよびパエニバチルス・エスピー598K株由来のネイティブCITaseの比活性は、順に、0.936U/mg、1.92U/mg、1.95U/mgであり、598K株由来のCITaseは、従来の酵素であるT−3040CITaseよりも2倍比活性が高く、反応性において優れている。ただし、1ユニットは、1分間に1μmolのCIを生産する酵素量とする。
本発明によって得られたパエニバチルス・エスピー598K株由来のCITase遺伝子を発現することによって得られた組み換え体DNAを含む大腸菌(請求項6)、あるいはパエニバチルス属菌(請求項7、8)を培養することによって培養液より得られた好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素は、50℃、pH8.0の、高温、アルカリ性で、カルシウム無添加の条件で、良好にサイクロデキストランを生産することができる。得られたサイクロデキストランは、抗う蝕剤、包接剤として食品産業、化学産業等で使用することができる。
本発明により、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素遺伝子を含有するDNA、組み換え体DNAが提供され、さらに該サイクロデキストランの製造法が提供される。
本発明により得られるサイクロデキストランは、食品、医薬品、化成品などに応用できる。また、このサイクロデランは、サイクロデキストリンよりも水溶性が極めて高いため、不溶性物質の包接による可溶化の効果が高いものと期待される。
(a)はパエニバチルス・エスピー598K株由来リコンビナントCITaseが生産する、環状オリゴ糖(CI)を示すHPLC分析の図および(b)はバチルス・サーキュランスT3040株由来リコンビナントCITaseが生産する、環状オリゴ糖を示すHPLC分析の図である。図中の数字7〜14は、それぞれCI−7〜CI−14を示す。 パエニバチルス・エスピー598K株由来リコンビナントCITaseおよびバチルス・サーキュランスT3040株由来リコンビナントCITaseの至適pHを示す図である。 パエニバチルス・エスピー598K株由来リコンビナントCITaseおよびバチルス・サーキュランスT3040株由来リコンビナントCITaseの至適温度を示す図である。 パエニバチルス・エスピー598K株由来リコンビナントCITaseおよびバチルス・サーキュランスT3040株由来リコンビナントCITaseの温度安定性を示す図である。 配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列のパエニバチルス・エスピー598K株由来好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の推定アミノ酸配列(通常文字)と、同菌株の培養液から得られる菌体外サイクロデキストラン合成酵素のアミノ末端および部分アミノ酸配列(□囲み文字)を示す図である。

Claims (8)

  1. 下記数1に記載の制限酵素開列地図を有し、かつ好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素(分子量 107kd)遺伝子を含有するDNA。
    Figure 2007189905

    (式中、HはHindIII、EはEcoRI、NはNdeI、PはPstIを示す。)
  2. 配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素をコードするDNA。
  3. 配列表の配列番号2に示される塩基配列によりコードされる請求項2記載のDNA。
  4. 好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素が、パエニバチルス属菌由来の酵素である請求項1〜3のいずれかに記載のDNA。
  5. 請求項2または3記載の好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素遺伝子または配列表の配列番号3記載のDNA断片をベクターDNAに組み込んでなる組み換え体DNA。
  6. 請求項5記載の組み換え体DNAを含む大腸菌を培地に培養し、培養物より好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を採取することを特徴とする好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法。
  7. 好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素生産能を有するパエニバチルス属菌を培養し、培養物より好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を採取することを特徴とする好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法。
  8. パエニバチルス属菌が、パエニバチルス・エスピー598K(FERM P−19604)である請求項7記載の製造法。

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