JP2007189905A - 好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素遺伝子を含有するdna、組み換え体dna、および好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 下記の制限酵素開列地図を有し、かつ好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素(分子量 107kd)遺伝子を含有するDNA
(式中、HはHindIII、EはEcoRI、NはNdeI、PはPstIを示す。)、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素をコードするDNA、および、配列表の配列番号2に示される塩基配列によりコードされる前記DNA。
【選択図】なし
Description
T−3040株およびU−155株のサイクロデキストラン合成酵素は、グルコース7分子がα−1,6結合でつながった環状オリゴ糖CI−7、グルコース8分子がα−1,6結合でつながった環状オリゴ糖CI−8、グルコース9分子がα−1,6結合でつながった環状オリゴ糖CI−9等の比較的低分子のサイクロデキストランを生産するが、CI−10以上の高分子サイクロデキストランを合成するという報告はない。
また、至適pHは、T−3040酵素は5.5(特許文献1)、U−155酵素は6.0(特許文献2)といずれも酸性側で、T−3040酵素は60℃、15分の加熱で完全に失活し、カルシウムを添加した場合は安定化するが、65℃、15分の加熱で完全に失活する(非特許文献1)。また、U−155酵素は60℃、15分の加熱で完全に失活する(特許文献3)。アルカリ側で高い活性を示す酵素、65℃よりも高温で加熱しても活性を有する酵素および該酵素をコードする遺伝子に関してはこれまでに得られていない。また、高分子サイクロデキストランを生産する酵素をコードする遺伝子もこれまで得られていない。
本発明に係るサイクロデキストラン合成酵素は、従来の酵素よりも比活性が高く、サイクロデキストランを効率よく生産することが期待できる。また、従来よりも高いpHで作用し、至適温度も高く、耐熱性も優れているので、汚染の心配が少ない条件で、迅速に、かつ効率的にサイクロデキストランを生産することができる。
さらに、本発明は係る酵素を生産するため、コードする酵素遺伝子の分離を行い、本酵素を本酵素遺伝子の組み換え体、または本酵素遺伝子を有する菌株から生産する方法を提供するものである。
本発明者らは、特許文献3に記載されたパエニバチルス・エスピー(Paenibacillus sp.)598K株のゲノムDNAよりサイクロデキストラン合成酵素遺伝子を含むHindIII断片を抽出し、該DNA塩基配列を解読した。また、サイクロデキストラン合成酵素遺伝子をベクターDNAに組み込み、大腸菌中で発現させ、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を生産させることに成功した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
(式中、HはHindIII、EはEcoRI、NはNdeI、PはPstIを示す。)
請求項2記載の本発明は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素をコードするDNAである。
請求項3記載の本発明は、配列表の配列番号2に示される塩基配列によりコードされる請求項2記載のDNAである。
請求項4記載の本発明は、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素が、パエニバチルス属菌由来の酵素である請求項1〜3のいずれかに記載のDNAである。
請求項5記載の本発明は、請求項2または3記載の好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素遺伝子または配列表の配列番号3記載のDNA断片をベクターDNAに組み込んでなる組み換え体DNAである。
請求項7記載の本発明は、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素生産能を有するパエニバチルス属菌を培養し、培養物より好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を採取することを特徴とする好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法である。
請求項8記載の本発明は、パエニバチルス属菌が、パエニバチルス・エスピー598K(FERM P−19604)である請求項7記載の製造法である。
本発明により、より高温で、かつアルカリ性の条件で、T−3040由来のCITaseよりも高い生産性で、より効率的にCIを生産する技術が開発され、より汚染の危険性を減らし、また、pH調整することなく抗う蝕剤としてのCIを生産することが可能となった。
また、既知酵素であるT−3040と異なり、酵素反応にカルシウムを必要としないため、生成したCIの精製を容易に行うことができる。しかも、本発明で得られたCITaseは、高温による安定性が従来のCITaseよりも高いことにより、CITaseを繰り返し使用する場合の反応、分離、濃縮の操作に伴う温度上昇にも耐えることができ、酵素の使用可能時間を大幅に延長することができる。さらに、本酵素は、抗う蝕性の高いCI−7を最も良く生産し、包接能の高いCI−10をはじめとする高分子のCIも同様に生産することができる。
該組み換え体DNAより成熟サイクロデキストラン合成酵素のみをコードする遺伝子を調製し、発現ベクターに組み込んで、該組み換え体DNAを含む大腸菌を培養すれば、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を効率よく製造することができる。
さらに、請求項7、8に記載のように、パエニバチルス属菌を培養することによっても該酵素を生産することができる。
上記微生物は、特開2005−192510号公報に記載した取得方法で取得することができる。
本酵素は、低分子サイクロデキストランだけでなく、高分子のサイクロデキストランも効率よく合成することができる。
本発明はまた、上記いずれかの記載のDNAを含むDNA断片、並びに該組み換え体DNAを含む大腸菌をはじめとする微生物を培地に培養し、培養物よりサイクロデキストラン合成酵素を採取することを特徴とするサイクロデキストラン合成酵素の製造法を提供するものである。
本発明を、以下の実施例により説明する。
パエニバチルス・エスピー598K株の保存菌株(FERM P−19604)を1白金耳、1リットル中にデキストランまたはブルーデキストラン(ファルマシア社製)、好ましくはブルーデキストラン2000(アマシャム・ファルマシア製)1〜5g、好ましくは2g、酵母エキス(バクト社製)5g、トリプトン(バクト社製)10g、NaCl 10gを含み、pHを7.0に調整し、寒天15gを加えた平板培地に塗抹する。ブルーデキストランを用いた場合は、通常30℃で1晩から2晩培養すると、ハローを形成する。1晩から3日間程培養してコロニーを生育させる。
次に、10%SDSを0.6ml、プロテイナーゼK(メルク社製)(2mg/100μl)を60ml加え、37℃で1時間保持する。
さらに、室温で5M NaClを2ml加えて混合し、CTAB/NaCl溶液(10% CTAB、0.7M NaCl)を1.6ml加え、良く混合して65℃で10分反応させる。次いで、15mlのクロロホルム:イソアミルアルコール=24:1液を加え、10,000×g、15分間遠心する。水層を分取し、これに等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1液を加えて、再び10,000×g、15分間遠心する。水層を分取し、これに0.6容のイソプロパノールを加え、白い糸状の沈殿を、先をシールしたパスツールピペットに巻き取り、70%エタノールで洗浄する。10μg/mlTEのRNaseAを0.3ml加え、37℃で30分保温後、60%容のPEG溶液(20%ポリエチレングリコール6000、2.5M NaCl)を加えて氷中で2時間置く。15,000×gで15分間遠心後、上清を捨て、0.8mlの70%エタノールで洗浄、乾燥し、100μlのTEに溶解する。
598K株ゲノムDNAを制限酵素HindIIIで分解後、アガロースゲル電気泳動を行い、サイズ5〜6kbの幅を切り出し、DNAを抽出、ジーンクリーンキット(Q−BIO社)などを用いて精製する。抽出、精製したこれらHindIII DNA断片を、pBluescript SK+などのプラスミドベクターに組み込む。
これらの組み換えプラスミドを大腸菌DH5αなどに形質転換し、アンピシリン50〜100μg/mlを含むLB寒天培地(寒天1.5%)に塗抹し、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−D(−)−ガラクトピラノシド(X−Gal)でカラーセレクションして白色のコロニーを形質転換体として分離した。
これらコロニーをそれぞれアンピシリン50〜100μg/mlを含むLB液体培地で、37℃、1晩培養した。培養菌体を集め、プラスミドを精製し、アプライドバイオシステムズ社製ABIPRISM 310 GENETIC ANALYZER を用いてDNA塩基配列を決定した。決定したサイクロデキストラン合成酵素遺伝子を含むHindIII/HindIII DNA断片の塩基配列を配列表の配列番号2に示す。
培養終了後、培養物を遠心分離することにより菌体を沈殿として回収した。続いて、回収した菌体を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に懸濁し、超音波によって細胞破砕した。細胞破砕後、遠心分離(15,000×g、20分間、4℃)することにより上清を回収した。
これにに最終濃度0.5Mの硫酸アンモニウムを加え、氷冷しながら一晩放置し、再び遠心分離(15,000×g、20分間、4℃)することにより沈殿を回収した。これに10mlの水を加え、20mM Tris−HCl(pH8.5)に対して一晩透析したものを粗酵素液とした。
これをSuperose 12(アマシャム・ファルマシア社製)で50mM 酢酸ナトリウム、150mM NaCl緩衝液(pH7.0)で、0.5ml/分の流速で溶出し、得られた酵素溶液を精製酵素として用いる。段落番号0018に記載の粗酵素液からはリコンビナント・サイクロデキストラン合成酵素を、段落番号0019記載の粗酵素液からはネイティブ・サイクロデキストラン合成酵素をそれぞれ精製することができる。
次いで、室温に冷却後、これにグルコアミラーゼ(ワコー社製)およびHBDaseを加え、20mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中で30℃で一晩反応を行い、残存した直鎖のオリゴ糖またはデキストランをすべてグルコースまで分解する。HBDaseは、特開平10−229876号公報記載のスフィンゴバクテリウム・エスピー V−54(FERM P−16086)を培養して得られたものでもよく、また、特開2001−054382号公報記載の大腸菌JM109(pKK223−3−3)(FERM P−17510)等の多分岐デキストラン水解酵素遺伝子を導入した大腸菌形質転換体を培養して得られたものでもよい。酵素反応は、10分間沸騰水中に置くことにより停止し、しかる後、室温に冷却後、等量のアセトニトリルを添加し、15,000×g、10分遠心して沈殿を除く。
pH安定性については、598KCITaseは50℃において、T3040CITaseは40℃において、共に15分間のインキュベーションでは、pH5以上で安定であった。
したがって、好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素(分子量 107kd)遺伝子は、パエニバチルス・エスピー598K株の菌体外CITaseをコードしていると言うことができる。
本発明により得られるサイクロデキストランは、食品、医薬品、化成品などに応用できる。また、このサイクロデランは、サイクロデキストリンよりも水溶性が極めて高いため、不溶性物質の包接による可溶化の効果が高いものと期待される。
Claims (8)
- 配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素をコードするDNA。
- 配列表の配列番号2に示される塩基配列によりコードされる請求項2記載のDNA。
- 好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素が、パエニバチルス属菌由来の酵素である請求項1〜3のいずれかに記載のDNA。
- 請求項2または3記載の好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素遺伝子または配列表の配列番号3記載のDNA断片をベクターDNAに組み込んでなる組み換え体DNA。
- 請求項5記載の組み換え体DNAを含む大腸菌を培地に培養し、培養物より好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を採取することを特徴とする好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法。
- 好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素生産能を有するパエニバチルス属菌を培養し、培養物より好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素を採取することを特徴とする好アルカリ性サイクロデキストラン合成酵素の製造法。
- パエニバチルス属菌が、パエニバチルス・エスピー598K(FERM P−19604)である請求項7記載の製造法。
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