JP2010207168A - アスパラギナーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、アスパラギンに対する基質特異性が高く、かつ、耐熱性の高いアミドヒドロラーゼを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のアミドヒドロラーゼは、下記(1)〜(5)の性質であることを特徴とする。
(1)熱変性還元条件下、SDS−PAGE法によるプロトマーの分子量が、35±1kDaの範囲
(2)同一構造の2つのサブユニットからなる二量体タンパク質
(3)至適pHが、pH7以上かつpH9以下の範囲
(4)至適温度が、60℃以上かつ70℃以下の範囲
(5)アスパラギンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性が、グルタミンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性の80倍以上
【選択図】図1

Description

本発明は、アミドヒドロラーゼに関する。
アミドヒドロラーゼは、アミド基に作用して化合物を加水分解する酵素であり、EC3.5.1および3.5.2に分類される酵素の総称である。アミドヒドロラーゼには、アスパラギナーゼ、グルタミナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、ビオチニダーゼ、セラミダーゼ、β−ラクタマーゼ等が含まれる。このうち、アスパラギナーゼは、アスパラギンをアスパラギン酸とアンモニアに加水分解する酵素であり、白血病およびリンパ腫の治療薬、食品中のアクリルアミドの低減化(例えば、特許文献1参照)に利用されている。
アスパラギナーゼの白血病およびリンパ腫の治療薬としての使用は、つぎのようなメカニズムを利用したものである。すなわち、白血病およびリンパ腫の腫瘍細胞は、L−アスパラギンシンセターゼを欠損しているため、L−アスパラギンを必須アミノ酸とする。これに対して、正常細胞では、L−アスパラギンは必須アミノ酸ではないため、L−アスパラギナーゼの投与により、生体内のL−アスパラギンを分解することにより、腫瘍細胞を選択的に死滅させることができる。
また、アクリルアミドは、発ガン性物質であり、加熱によるメイラード反応により、食品中のアスパラギンおよびグルコースから生成することが知られている。そこで、アスパラギナーゼを、例えば、焼成前のパン生地、フライ前のじゃがいも等の加熱処理前の食品に添加することにより、食品中のアクリルアミド生成の低減化が図られている。
特表2008−541747号公報
しかしながら、従来のアスパラギナーゼは、L−アスパラギンに対する基質特異性が低く、グルタミン等の他のアミノ酸等も同時に分解してしまうため、治療薬としての利用において、その副作用が問題となっている。また、従来のアスパラギナーゼは、耐熱性が低いため、アクリルアミド低減化に使用される場合、加熱処理による酵素活性の失活が課題となっている。したがって、アスパラギンに対する基質特異性が高く、かつ、耐熱性の高いアスパラギナーゼはこれまでにはなかった。
そこで、本発明は、アスパラギンに対する基質特異性が高く、かつ、耐熱性の高いアミドヒドロラーゼを提供することを目的とする。
本発明のアミドヒドロラーゼは、下記(1)〜(5)の性質であることを特徴とする。
(1)熱変性還元条件下、SDS−PAGE法によるプロトマーの分子量が、35±1kDaの範囲
(2)同一構造の2つのサブユニットからなる二量体タンパク質
(3)至適pHが、pH7以上かつpH9以下の範囲
(4)至適温度が、60℃以上かつ70℃以下の範囲
(5)アスパラギンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性が、グルタミンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性の80倍以上
本発明のアミドヒドロラーゼによれば、例えば、アスパラギン要求性腫瘍細胞を選択的に排除する治療薬に利用した場合に、アスパラギンに対する基質特異性が高いため、他のアミノ酸に対する酵素活性に起因する副作用が低く、かつ、耐熱性が高いため、体内での安定性にも寄与し、したがって、薬効および安全性が高い。また、本発明のアミドヒドロラーゼによれば、アスパラギンに対する基質特異性が高く、かつ、耐熱性が高いため、アクリルアミド低減化の目的で使用した場合に、アクリルアミド低減化効果が高く、アスパラギン以外のアミノ酸分解による呈味の低減が抑制される。
図1は、本発明の一例のアミドヒドロラーゼおよび参考例のアミドヒドロラーゼの至適温度の測定結果を示すグラフである。 図2は、本発明の一例のアミドヒドロラーゼおよび参考例のアミドヒドロラーゼのSDS−PAGE法による電気泳動写真である。 図3は、本発明の一例のアミドヒドロラーゼおよび参考例のアミドヒドロラーゼの温度安定性の測定結果を示すグラフである。 図4は、本発明の一例のアミドヒドロラーゼおよび参考例のアミドヒドロラーゼのpH安定性の測定結果を示すグラフである。 図5は、本発明の一例のアミドヒドロラーゼを発現させるベクターの構成を示す制限酵素地図である。
本発明のアミドヒドロラーゼは、例えば、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の菌体に由来する。そして、本発明のアミドヒドロラーゼにおいて、前記ストレプトマイセス属の菌体としては、ストレプトマイセス・サーモルテウス(Streptomyces thermoluteus)の菌体が好ましい。前記ストレプトマイセス・サーモルテウス(Streptomyces thermoluteus)の菌体としては、具体的には、例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門(NBRC)にNBRC No.14270で登録されている、ストレプトマイセス・サーモルテウス・サブスピーシーズ・フスカス(Streptomyces thermoluteus subsp.fuscus)NBRC 14270株が好ましい。
本発明のアミドヒドロラーゼは、下記(a)から(c)のいずれかのタンパク質からなるのが好ましい。
(a)配列番号1記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号1記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が、置換、付加、挿入もしくは欠失したアミノ酸配列からなり、かつ、アミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
(c)配列番号1記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、アミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
本発明のアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子(以下、「アミドヒドロラーゼ遺伝子」という)は、前記(a)〜(c)のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子である。前記アミドヒドロラーゼ遺伝子は、例えば、下記(d)から(g)のいずれかに記載のアミドヒドロラーゼ遺伝子であってもよい。なお、下記(e)から(g)のアミドヒドロラーゼ遺伝子は、アミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。
(d)配列番号2記載の塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
(e)配列番号2記載の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が、置換、付加、挿入もしくは欠失した塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
(f)配列番号2記載の塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
(g)配列番号2記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
本発明のアミドヒドロラーゼを発現するベクターは、前記アミドヒドロラーゼ遺伝子を含むのが好ましい。
本発明のアミドヒドロラーゼを発現する形質転換体は、本発明のアミドヒドロラーゼを発現するベクターを含むのが好ましい。
本発明のアミドヒドロラーゼの製造方法は、本発明のアミドヒドロラーゼを発現する形質転換体を培養する工程を含むのが好ましい。
また、別の局面では、本発明のアミドヒドロラーゼは、下記(a)から(c)のいずれかのタンパク質からなることを特徴とする。
(a)配列番号1記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号1記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が、置換、付加、挿入もしくは欠失したアミノ酸配列からなり、かつ、アミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
(c)配列番号1記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、アミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
なお、前記本発明のアミノヒドロラーゼは、さらに、下記(4)および(5)の少なくとも一方の性質を有することが好ましい。本発明のアミノヒドロラーゼは、例えば、下記(4)および(5)のいずれか一方の性質を有してもよいし、両方の性質を有してもよい。
(4)至適温度が、60℃以上かつ70℃以下の範囲
(5)アスパラギンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性が、グルタミンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性の80倍以上
前記別の局面において、本発明のアミドヒドロラーゼは、例えば、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の菌体に由来する。そして、本発明のアミドヒドロラーゼにおいて、前記ストレプトマイセス属の菌体としては、ストレプトマイセス・サーモルテウス(Streptomyces thermoluteus)の菌体が好ましい。前記ストレプトマイセス・サーモルテウス(Streptomyces thermoluteus)の菌体としては、具体的には、例えば、前述のストレプトマイセス・サーモルテウス・サブスピーシーズ・フスカス(Streptomyces thermoluteus subsp.fuscus)NBRC 14270株が好ましい。
前記別の局面において、本発明のアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子(アミドヒドロラーゼ遺伝子)は、下記(d)から(g)のいずれかに記載の遺伝子である。
(d)配列番号2記載の塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
(e)配列番号2記載の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が、置換、付加、挿入もしくは欠失した塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
(f)配列番号2記載の塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
(g)配列番号2記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
なお、前記本発明のアミノヒドロラーゼ遺伝子は、前記遺伝子がコードするタンパク質(アミノヒドロラーゼ)が、さらに、下記(4)および(5)の少なくとも一方の性質を有することが好ましい。前記アミノヒドロラーゼ遺伝子がコードするタンパク質は、例えば、下記(4)および(5)のいずれか一方の性質を有してもよいし、両方の性質を有してもよい。
(4)至適温度が、60℃以上かつ70℃以下の範囲
(5)アスパラギンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性が、グルタミンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性の80倍以上
前記別の局面において、本発明のアミドヒドロラーゼを発現するベクターは、前記アミドヒドロラーゼ遺伝子を含むのが好ましい。
前記別の局面において、本発明のアミドヒドロラーゼを発現する形質転換体は、本発明のアミドヒドロラーゼの発現ベクターを含むのが好ましい。
前記別の局面において、本発明のアミドヒドロラーゼの製造方法は、本発明のアミドヒドロラーゼを発現する形質転換体を培養する工程を含むのが好ましい。
以下に、本発明について、例を挙げて説明する。
<本発明のアミドヒドロラーゼ>
(1)由来
本発明のアミドヒドロラーゼの由来としては、特に制限されないが、例えば、前述のように、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の菌体等が挙げられる。前記ストレプトマイセス属の菌体としては、特に制限されないが、例えば、ストレプトマイセス・サーモルテウス(Streptomyces thermoluteus)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・エバーミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)等の菌体が挙げられ、好ましくは、ストレプトマイセス・サーモルテウス(Streptomyces thermoluteus)である。前記ストレプトマイセス・サーモルテウス(Streptomyces thermoluteus)の菌体としては、具体的には、例えば、前述のストレプトマイセス・サーモルテウス・サブスピーシーズ・フスカス(Streptomyces thermoluteus subsp.fuscus)NBRC 14270株が好ましい。
(2)採取方法
前記アミドヒドロラーゼは、特に制限されないが、例えば、微生物の菌体、動物細胞、植物細胞、形質転換体等の細胞を培養し、その培養物から採取してもよい。前記細胞としては、特に制限されないが、例えば、前記ストレプトマイセス属(Streptomyces)の菌体、前記アミドヒドロラーゼをコードする遺伝子を導入した形質転換体等が挙げられ、好ましくは、前記アミドヒドロラーゼをコードする遺伝子を導入した形質転換体である。前記培養物としては、特に制限されないが、例えば、培養上清、培養細胞、細胞抽出物等が挙げられる。また、前記培養物は、例えば、前記培養上清、培養細胞、細胞抽出物等の処理物であってもよい。前記処理物としては、特に限定されないが、例えば、前記培養物の濃縮物、乾燥物、凍結乾燥物、溶媒処理物、界面活性剤処理物、酵素処理物、タンパク質分画物、超音波処理物、磨砕処理物等が挙げられる。さらに、前記培養物は、例えば、前記培養上清、前記培養細胞、前記細胞抽出物、これらの前記処理物等の混合物でもよい。前記混合物としては、例えば、任意の組み合わせおよび比率で混合することができ、特に制限されない。前記細胞の培養方法としては、特に制限されず、例えば、前記細胞の種類に応じた、従来公知の方法等を使用できる。
(3)精製方法
前記アミドヒドロラーゼは、例えば、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法を、単独で、または、適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物から精製することができる。前記培養物の精製方法としては、例えば、硫安沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等の従来公知の方法を採用でき、特に制限されない。前記精製の工程においては、例えば、分画物のアミドヒドロラーゼ活性を測定し、前記活性の検出された分画物を選抜する。前記測定方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。
(4)分子量
前記アミドヒドロラーゼは、例えば、プロトマー(サブユニット)の二量体の状態で菌体外に分泌される。前記アミドヒドロラーゼの前記プロトマーの分子量は、前述のように、35±1kDa(34kDa以上かつ36kDa以下)の範囲である。前記プロトマーの平均分子量は、特に制限されないが、例えば、34733.46Daであってもよい。なお、本発明において、前記分子量は、熱変性還元条件下のSDS−PAGE法による測定値である。本発明において、前記熱変性還元条件下とは、分析対象タンパク質を加熱により変性させ、2−メルカプトエタノール等の還元剤により、そのS−S結合を切断する条件下をいう。また、前記アミドヒドロラーゼは、前述のように、同一構造の2つのサブユニットからなる二量体のタンパク質である。したがって、本発明のアミドヒドロラーゼの分子量は、70±2kDa(68kDa以上かつ72kDa以下)の範囲である。本発明のアミドヒドロラーゼの分子量の理論値は、例えば、69466.92Daであってもよい。
(5)至適pH
前記アミドヒドロラーゼの至適pHは、前述のように、pH7以上かつpH9以下の範囲であり、より好ましくは、pH8以上かつpH9以下の範囲である。
(6)至適温度および耐熱性
前記アミドヒドロラーゼの至適温度は、前述のように、60℃以上かつ70℃以下の範囲であり、より好ましくは、約65℃である。また、前記アミドヒドロラーゼは、前記至適温度におけるアミドヒドロラーゼ活性を100%としたときに、例えば、50℃以上かつ70℃以下の範囲において、70%以上の酵素活性を示してもよい。また、前記アミドヒドロラーゼの残存活性は、例えば、45℃以下ではほぼ100%であり、54℃以下では50%以上であってもよい。このように、前記アミドヒドロラーゼは、高い至適温度および高い耐熱性を有することを特徴とする。
(7)基質特異性
本発明のアミドヒドロラーゼにおいて、アスパラギン(またはアスパラギン酸)を基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性は、前述のように、グルタミン(またはグルタミン酸)を基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性の80倍以上であり、より好ましくは、100倍以上である。また、本発明のアミドヒドロラーゼにおいて、アスパラギン(またはアスパラギン酸)を基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性は、例えば、グルタミン(またはグルタミン酸)を基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性の80倍以上800倍以下であり、好ましくは100倍以上600倍以下である。あるいは、本発明のアミドヒドロラーゼにおいて、アスパラギン(またはアスパラギン酸)を基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性は、グルタミン(またはグルタミン酸)を基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性の80倍よりも高く、より好ましくはグルタミン(またはグルタミン酸)を基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性の100倍よりも高い。なお、例えば、L−アスパラギンまたはL−アスパラギン酸を基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性も、L−グルタミンまたはL−グルタミン酸を基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性に対して、前述のような基質特異性を示すことが好ましい。
本発明のアミドヒドロラーゼは、アスパラギンに対するアミドヒドロラーゼ活性を有するが、同時に、例えば、グルタミンや、その他の基質に対するアミドヒドロラーゼ活性を有していてもよい。前記他の基質としては、特に制限されないが、例えば、アルギニン、尿素、ビオチン、N−アセチルアスパラギン酸、セラミド、糖タンパク質、脂肪酸アミド、ヒストン等が挙げられる。本発明のアミドヒドロラーゼとしては、特に制限されないが、例えば、アスパラギナーゼ、グルタミナーゼ、アルギナーゼ、ウレアーゼ、ビオチニダーゼ、アスパルトアシラーゼ、セラミダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、脂肪酸アミドヒドロラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ等が挙げられ、好ましくは、アスパラギナーゼである。
(8)アミノ酸配列
本発明のアミドヒドロラーゼは、前述の形質に加えて、さらに、例えば、下記(a)から(c)のいずれかのタンパク質からなるアミドヒドロラーゼであってもよい。
(a)配列番号1記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号1記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が、置換、付加、挿入もしくは欠失したアミノ酸配列からなり、かつ、アミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
(c)配列番号1記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、アミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
前記(b)記載の前記アミドヒドロラーゼにおいて、置換、付加、挿入もしくは欠失した前記アミノ酸残基の数は、例えば、数個、好ましくは、1個以上かつ33個以下の範囲の数、より好ましくは、1個以上かつ15個以下の範囲の数である。
前記(c)に記載の前記アミドヒドロラーゼにおいて、配列番号1に対する相同性は、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。前記タンパク質の相同性(ホモロジー)は、通常、2つのタンパク質のアミノ酸配列同士を適切に整列(アライメント)したときの同一性のパーセント値で表わすことができ、一般に、前記両アミノ酸配列間の正確な一致の出現率を意味する。同一性比較のための配列間での適切な整列は、種々のアルゴリズム、例えば、BLASTアルゴリズムを用いて決定できる(Altschu SF、外4名、J Mol Biol、1990年10月5日、第215巻、第3号、p.403−410)。
<本発明のアミドヒドロラーゼ遺伝子>
本発明のアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子としては、以下の態様が挙げられる。
前記アミドヒドロラーゼ遺伝子としては、本発明のアミドヒドロラーゼを発現可能な遺伝子であれば特に制限されないが、前述のように、好ましくは、前記(a)〜(c)のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子である。また、前記アミドヒドロラーゼ遺伝子としては、例えば、下記(d)から(g)のいずれかに記載のアミドヒドロラーゼ遺伝子であってもよい。
(d)配列番号2記載の塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
(e)配列番号2記載の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が、置換、付加、挿入もしくは欠失した塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
(f)配列番号2記載の塩基配列と60%以上の相同性を有する塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
(g)配列番号2記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるアミドヒドロラーゼ遺伝子
前記(e)記載の前記アミドヒドロラーゼ遺伝子において、置換、付加、挿入もしくは欠失した前記塩基の数は、例えば、数個、好ましくは、1個以上かつ406個以下の範囲の数、より好ましくは、1個以上かつ200個以下の範囲の数である。
前記(f)に記載の前記アミドヒドロラーゼ遺伝子において、配列番号2に対する相同性は、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。前記相同性は、例えば、BLAST等を用いてデフォルトの条件で計算することにより、求めることができる。また、前記アミドヒドロラーゼ遺伝子は、配列番号2の塩基配列に相補的な塩基配列からなる遺伝子も含む。前記アミドヒドロラーゼ遺伝子は、例えば、前記(a)〜(c)のいずれかのタンパク質のみをコードするものでもよいし、ペプチドや他のタンパク質等との融合タンパク質をコードするものでもよい。融合させる前記ペプチドや他のタンパク質等としては、特に限定されないが、例えば、タンパク質精製の手順の簡略化や低廉化、安定性の向上や可溶化等を目的とした、マルトース結合タンパク質、ヒスチジンタグやGSTタンパク質等が挙げられる。
前記(g)において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、例えば、当該技術分野の当業者において、周知のハイブリダイゼーションの実験条件である。具体的には、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、0.7〜1mol/LのNaCl存在下、60〜68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍のSSC溶液を用い、65〜68℃で洗浄することにより同定することができる条件をいう。なお、1×SSCとは、150mmol/LのNaCl、15mmol/Lクエン酸ナトリウムからなる。
本発明のアミドヒドロラーゼ遺伝子の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、本発明のアミドヒドロラーゼ遺伝子の塩基配列または本発明のアミドヒドロラーゼのアミノ酸配列に基づいて、従来公知の遺伝子工学的手法、化学合成法等により製造できる。前記遺伝子工学的手法としては、特に制限されないが、例えば、本発明のアミドヒドロラーゼ遺伝子の塩基配列を基に設計したプライマーを用い、ゲノムDNAを鋳型として、PCR等の核酸増幅を行う方法が挙げられる。前記ゲノムDNAの由来生物としては、特に制限されないが、例えば、前述のストレプトマイセス属(Streptomyces)の菌体等が挙げられる。
さらに、本発明のアミドヒドロラーゼ遺伝子としては、前記本発明のアミドヒドロラーゼを発現可能な遺伝子であれば、例えば、変異導入により改変したものも含まれる。前記変異導入方法としては、特に制限されないが、例えば、Kunlel法またはギャップ二重鎖法等の公知手法またはこれに準じる方法等が挙げられる。前記変異導入方法は、例えば、部位特異的突然変異誘発法を利用した市販の変異導入用キット等を利用してもよい。
<本発明のアミドヒドロラーゼの発現ベクター>
本発明のアミドヒドロラーゼの発現ベクターは、前記本発明のアミドヒドロラーゼ遺伝子を含む。前記本発明のアミドヒドロラーゼ遺伝子を挿入する前記発現ベクターとしては、宿主細胞中で複製可能なものであれば特に制限されず、例えば、大腸菌由来のプラスミド、放線菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージ等が挙げられ、具体的には、例えば、pIJ702、pACYC177、pACYC184、pBluescript、pBR322、pHSG367、pNUT4、pTrc99A、pUC19、pUB110、YEp13、λgt10、pTONA5a、pET28等が挙げられ、好ましくは、後述するpTONA5aである。前記発現ベクターに、前記アミドヒドロラーゼ遺伝子を挿入する方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を適宜採用できる。前記アミドヒドロラーゼ遺伝子の挿入方法としては、具体的には、例えば、前記アミドヒドロラーゼ遺伝子の精製DNAを、適当な制限酵素で切断後、適当なベクターの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入する方法等があげられる。このような方法により、前記ベクターに前記本発明のアミドヒドロラーゼ遺伝子が連結した、本発明の発現ベクターを得ることができる。
また、前記発現ベクターは、前記アミドヒドロラーゼ遺伝子を発現し得るものであればよく、例えば、前記本発明のアミドヒドロラーゼ遺伝子以外の構造は制限されない。前記アミドヒドロラーゼ遺伝子以外の構造としては、例えば、発現を制御する塩基配列や形質転換体を選択するための遺伝子マーカー等が挙げられる。前記発現を制御する塩基配列としては、特に制限されないが、例えば、プロモーター、エンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)等が挙げられる。前記遺伝子マーカーとしては、特に制限されないが、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
<本発明のアミドヒドロラーゼを産生する形質転換体>
前記アミドヒドロラーゼを産生する形質転換体は、前記発現ベクターを含む。前記形質転換体は、例えば、前記アミドヒドロラーゼ遺伝子を発現可能な発現ベクターを、宿主細胞に導入して得られる。前記宿主細胞としては、例えば、導入する発現ベクターに応じて選択すればよく、特に限定されないが、例えば、大腸菌、酵母、糸状菌、放線菌、COS細胞、CHO細胞、Sf9細胞等の細胞が挙げられ、好ましくは、大腸菌(Escherichia coli)である。前記大腸菌としては、特に制限されないが、例えば、S17−1、BL21(DE3)、Rosetta2(DE3)、Rosetta−gami2(DE3)等の菌株が挙げられる。前記宿主細胞への前記発現ベクターの導入方法としては、特に制限されず、例えば、エレクトロポレーション法、プロトプラスト−PEG法、アグロバクテリウム法、Li法、Biolistic法、パーティクル・ガン法等の従来公知の方法を適宜用いることができる。
前記形質転換体の培養により得られた培養物から、前記本発明のアミドヒドロラーゼを採取できる。前記培養の方法、培養条件および培地等は、特に限定されず、前述の宿主細胞に応じた方法、培養条件および培地等を適宜採用できる。
<本発明のアミドヒドロラーゼの製造方法>
本発明のアミドヒドロラーゼの製造方法は、特に制限されないが、本発明のアミドヒドロラーゼを発現する形質転換体を培養する工程を含むのが好ましい。前記培養工程としては、特に制限されず、前述の宿主細胞に応じた方法、培養条件および培地等を適宜採用できる。また、前記製造方法は、前記培養工程以外に、さらに他の工程を含んでいてもよい。前記他の工程としては、特に制限されないが、例えば、培養工程により得られる培養物を採取する工程、採取した培養物を精製する工程等が挙げられる。前記培養物としては、特に制限されないが、例えば、前述の培養物等が挙げられる。また、前記精製方法としては、特に制限されないが、例えば、前述の精製方法等が挙げられる。
本発明を、以下の実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
本例のアミドヒドロラーゼは、以下のようにして、ストレプトマイセス・サーモルテウス・サブスピーシーズ・フスカス(Streptomyces thermoluteus subsp.fuscus)NBRC 14270株のゲノムDNAからアスパラギナーゼ(以下、「14270 ASNase」という場合もある。)遺伝子をクローニングし、このアスパラギナーゼ遺伝子を導入した形質転換体の培養上清から精製した。
[アスパラギナーゼ遺伝子]
ストレプトマイセス・サーモルテウス・サブスピーシーズ・フスカス(Streptomyces thermoluteus subsp.fuscus)NBRC 14270株のゲノムDNAから、配列番号1で表わされる塩基配列からなるアスパラギナーゼ遺伝子(14270 ASNase遺伝子)をクローニングした。前記配列番号1で表わされる塩基配列からなるアスパラギナーゼ遺伝子がコードするアスパラギナーゼ(14270 ASNase)のアミノ酸配列を、配列番号2に示す。前記14270 ASNase遺伝子は、1014bpのオープンリーディングフレームを有し、338アミノ酸残基をコードする。前記14270 ASNase遺伝子と、ストレプトマイセス・エバーミチルス(Streptomyces avermitilis)由来のアスパラギナーゼ遺伝子(遺伝子ID:SAV1316)との相同性は87.3%であった。また、前記14270 ASNase遺伝子は、一次構造において、同じストレプトマイセス属(Streptomyces)の菌体由来のアスパラギナーゼと推定されるSCO4185(Streptomyces coelicolor由来)、SAV4025(Streptomyces avermitilis由来)およびSGR3975(Streptomyces griseus由来)と、それぞれ50.3%、49.5%および50.2%の相同性を有していた。
[14270 ASNase発現ベクターの作製]
まず、以下のようにして、発現ベクターpTONA5aを作製した。
pBluescriptII KS(−)(東洋紡社製)を鋳型にして、1μmol/Lの下記センスプライマー1(配列番号3)、1μmol/Lの下記アンチセンスプライマー1(配列番号4)およびKOD plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いて、大腸菌JM109のoriのDNA断片(0.6kb)をPCRで増幅した。なお、前記PCRは、94℃で2分処理後、1サイクル(94℃で15秒、55℃で30秒、68℃で1分を順に行う)を30サイクル繰り返した後、4℃に冷却して行った。
センスプライマー1:(配列番号3)
5’−ATAACTGCAGTTTCCATAGGCTCCGCCCCC−3’
アンチセンスプライマー1:(配列番号4)
5’−GGCCAATATTTTGAGATCCTTTTTTTCTGC−3’
オナカらの方法(J.Antibiotics、56巻、950−956頁、2003年)を用いて、プラスミドpTYM18を作製した。前記pTYM18を鋳型にして、1μmol/Lの下記センスプライマー2(配列番号5)、1μmol/Lの下記アンチセンスプライマー2(配列番号6)を用いたこと以外は、前述のoriと同様にして、大腸菌−放線菌カナマイシン耐性遺伝子aphIIのDNA断片(1.3kb)をPCRで増幅した。
センスプライマー2:(配列番号5)
5’−GGCCAATATTACGCTGCCGCAAGCACTCAG−3’
アンチセンスプライマー2:(配列番号6)
5’−AACCCTGCAGGGCGTCCCGGAAAACGATTC−3’
増幅したoriおよびaphIIのDNA断片を、それぞれ、制限酵素SspIおよびPstIで処理し、両者を混合して連結後、大腸菌JM109に導入した。この大腸菌を、50μg/mLのカナマイシンを添加した下記組成のLB培地中で、37℃で20時間培養した。カナマイシンを選択マーカーにして、前記連結したDNA断片を含む大腸菌を回収し、前記連結したDNA断片を含むプラスミドpBSaphIIを得た。
(LB培地の組成)
成分 濃度(w/v%)
NaCl 1
ポリペプトン 1
酵母エキス 0.5
モルナーらの方法(J.Ferment.Bioeng.,72巻、368−372頁、1991年)を用いて、プラスミドpIJ702を作製した。前記pBSaphIIおよび前記pIJ702を、それぞれ制限酵素PstIで処理し、両者を混合して連結後、大腸菌JM109に導入した。この大腸菌を、前述と同様にして培養し、カナマイシンを用いて選択し、プラスミドpIJE702を得た。
前記pTYM18を鋳型にして、1μmol/Lの下記センスプライマー3(配列番号7)、1μmol/Lの下記アンチセンスプライマー3(配列番号8)を用いたこと以外は、前述のoriと同様にして、oriTのDNA断片(0.8kb)をPCRで増幅した。増幅したoriTのDNA断片を、制限酵素HincIIおよびSmaIで処理し、前記pIJE702を、制限酵素SspIで処理し、両者を混合して連結後、大腸菌JM109に導入した。この大腸菌を、前述と同様にして培養し、カナマイシンを用いて選択し、プラスミドpIJEC702を得た。
センスプライマー3:(配列番号7)
5’−AACCGTCGACGGGGATCGGTCTTGCCTTGC−3’
アンチセンスプライマー3:(配列番号8)
5’−AACCCCCGGGGACGGATCTTTTCCGCTGCA−3’
前記pIJEC702のNdeI部位を、1μmol/Lの下記センスプライマー4(配列番号9)、1μmol/Lの下記アンチセンスプライマー4(配列番号10)およびQuikChangeIIKit(ストラタジーン社)を用いてサイレント変異により欠失させ、プラスミドpIJEC’702を得た。
センスプライマー4:(配列番号9)
5’−CGAATACTTCATATCCGGGGATCGACCGCG−3’
アンチセンスプライマー4:(配列番号10)
5’−CGCGGTCGATCCCCGGATATGAAGTATTCG−3’
サイトウ・ミウラ法(サイトウら、Biochem.Biophys.Acta.,72巻、619−629頁、1963年)により、ストレプトマイセス セプタタス TH−2から、ゲノムDNAを調製した。なお、前記ストレプトマイセス セプタタス TH−2は、識別のための表示を、Streptomyces septatus TH−2とし、受託番号を、FERM P−17329(寄託日:1999年3月24日)として、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所 特許微生物寄託センター(現、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1−1)に寄託されている。
前記ストレプトマイセス セプタタス TH−2のゲノムDNAを鋳型として、1μmol/Lの下記センスプライマー5(配列番号11)および1μmol/Lの下記アンチセンスプライマー5(配列番号12)を用いたこと以外は、前述のoriと同様にして、SSMPプロモーターのDNA断片(配列番号13、0.4kb)をPCRで増幅した。
センスプライマー5:(配列番号11)
5’−ATTAATCGGCAACCAGCCGCCGACGGACGA−3’
アンチセンスプライマー5:(配列番号12)
5’−CCGGAATTCCATATGTGTCTCCTATGAGGGGGGTTG−3’
他方、前述のサイトウ・ミウラ法により、ストレプトマイセス オーレオファシエンス TH−3から、ゲノムDNAを調製した。なお、前記ストレプトマイセス オーレオファシエンス TH−3は、識別のための表示を、Streptomyces aureofaciens TH−3とし、受託番号を、FERM P−21343(寄託日:2007年8月17日)として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1−1)に寄託されている。
前記ストレプトマイセス オーレオファシエンス TH−3のゲノムDNAを鋳型として、1μmol/Lの下記センスプライマー6(配列番号14)および1μmol/Lの下記アンチセンスプライマー6(配列番号15)を用いたこと以外は、前述のoriと同様にして、TH−3 collターミネーターのDNA断片(0.5kb、配列番号16)をPCRで増幅した。
センスプライマー6:(配列番号14)
5’−CCGGAATTCTCTAGAAGCTTGGGCAGGACCGGCCCGGGGC−3’
アンチセンスプライマー6:(配列番号15)
5’−GAGCTCTGGAAGTCATCACGCTCTTCGCGGC−3’
増幅した前記SSMPプロモーターのDNA断片を、制限酵素AseIおよびEcoRIで処理し、増幅した前記TH−3 collターミネーターのDNA断片を、制限酵素EcoRIおよびBglIIで処理し、前記pIJEC’702を、制限酵素AseIおよびBglIIで処理した。得られた3つのDNA断片を混合して連結し、大腸菌JM109に導入した。この大腸菌を、前述と同様にして培養し、カナマイシンを用いて選択し、プラスミドpTONA5を得た。図5の制限酵素地図に、前記プラスミドpTONA5の構成を示す。同図に示すように、前記プラスミドpTONA5は、前記SSMPプロモーター(SSMPpro、配列番号13)および前記TH−3 collターミネーター(TH−3t、配列番号16)を含む。
前記14270 ASNaseのゲノムDNAを、下記配列番号17および18のプライマーを用いて増幅した。得られたDNA断片を、制限酵素NdeIおよびHindIIIを用いて処理し、前記pTONA5aのNdelI−HindIIIギャップ間に連結し、14270 ASNase発現ベクターを作製した。なお、下記配列番号17のセンスプライマー7において、小文字の塩基配列は、付加したNdeIサイトの配列であり、下記配列番号18のアンチセンスプライマー7において、小文字の塩基配列は、付加したHindIIIサイトの配列である。
センスプライマー7:(配列番号17)
5’−catatgGTCCGCGAACCCCTCCACGC−3’
アンチセンスプライマー7:(配列番号18)
5’−aagcttCTACGCGCAGGCAGTGAGCGG−3’
[形質転換体の培養]
前記発現ベクターにより、大腸菌S17−1を形質転換させた。得られた形質転換体のコロニーを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地(Bio101社製)2mLを用いて、37℃で5時間培養した。培養後、前記形質転換体の細胞を回収し、前記LB培地で洗浄後、遠心分離した。この細胞を、前記LB培地500μLで懸濁し、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)1326株の菌体と混合した。前記混合細胞を、スターチ・無機塩寒天培地(ISP培地 NO.4、 Difco社製)上に播種し、30℃で一晩培養した。そして、50μg/mLのカナマイシンおよび67μg/mLのナリジクス酸を含む軟寒天栄養培地(Difco社製)3mLを、前記スターチ・無機塩寒天培地上に注ぎ、30℃で3〜5時間培養した。得られた単一コロニーを、下記組成のコロニー培養用培地を含む寒天上に塗抹し、30℃で5〜7時間培養した。得られた前記ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)1326株の14270 ASNase形質転換体を、植菌し、下記組成の増殖培養用培地5mL中で、180回転/分、30℃で、5日間増殖培養した。
(コロニー培養用培地の組成)
成分 濃度
大豆ミール 2.0w/v%
マンニトール 2.0w/v%
カナマイシン 20μg/mL
ナリジクス酸 5μg/mL
(増殖培養用培地の組成)
成分 濃度(w/v%)
HSO 0.8
グルコース 2.0
MgSO・7HO 0.05
ポリペプトン 0.5
酵母抽出物 0.5
[ASNase活性測定]
本例において、ASNase活性は、以下のようにして測定した。すなわち、下記表に示す組成の基質液に、酵素液等の測定サンプルを添加して、800μLの反応液を調製した。37℃の温度条件下で、前記反応液の測定波長340nmにおける吸光度を、分光光度計(商品名「Ultrospec 3300 pro」、GEヘルスケア バイオサイエンス社製)を用いて測定した。そして、下記式1を用いて、ASNase活性(U/mL)を算出した。なお、本例において、L−アスパラギナーゼ 1単位(1U)とは、1分間に、NADHが1μmolのNADに変化する酵素活性である。
ASNase活性(U/mL)=A/B ・・・(1)
A=吸光度(測定波長340nm)の単位時間あたりの減少量
B=6290(ε340nmにおけるNADHのモル分子吸光係数)
(基質液)
成分 濃度
Tris−HCl(pH8.0) 100mmol/L
L−アスパラギン 5mmol/L
α−ケトグルタル酸 0.16mmol/L
NADH 0.25mmol/L
グルタミン酸脱水素酵素 5000units/L
[ASNaseの精製]
本例では、前記14270 ASNase形質転換体の増殖培養後の培養上清から、以下のようにして、前記14270 ASNaseを精製した。
(1)限外ろ過
前記14270 ASNase形質転換体の増殖培養後、培養上清を回収し、遠心分離し、粗酵素液を得た。前記粗酵素液を、限外ろ過装置(孔径0.45μm、ミリポア社製)を用いてろ過し、25mmol/L Tris−HCl(pH8.0)を用いて透析した。前記透析物を遠心分離し、上清を回収した。得られた上清について、ASNase活性(U/mL)、タンパク質濃度(mg/mL)および容量(mL)を測定した。なお、前記ASNase活性は、前述のASNase活性測定法を用いて測定し、前記タンパク質濃度は、クマシーブリリアント・ブルーR250色素を利用したバイオラド社製プロテインアッセイキットを用いて測定した。また、下記式2および3を用いて、比活性(U/mg)および総酵素活性(U)を算出した。
比活性(U/mg)=ASNase活性(U/mL)/タンパク質濃度(mg/mL)
・・・(2)
総酵素活性(U)=ASNase活性(U/mL)×容量(mL)・・・(3)
(2)陰イオン交換体スピンカラムクロマトグラフィー
陰イオン交換体スピンカラム(商品名「Vivapure−Q spin−column」、ミリポア社製)を用いて、以下のようにして、陰イオン交換クロマトグラフィーを行った。まず、平衡および洗浄用バッファーとして、25mmol/L Tris−HCl(pH8.0)を調製し、溶出用バッファーとして、0.25mol/L NaClを含む25mmol/L Tris−HCl(pH8.0)を調製した。前記スピンカラムを、前記平衡用バッファーで平衡後、500×gで5分間遠心し、前記(1)の限外ろ過で得られた前記上清を添加した。このスピンカラムを、再度500×gで5分間遠心し、前記洗浄用バッファーを添加後、500×gで5分間遠心し、さらに、洗浄用バッファーを添加後500×gで5分間遠心した。そして、スピンカラムに、コレクション用チューブを取り付け後、前記溶出用バッファーを添加し、500×gで10分間遠心した。遠心終了後、前記コレクション用チューブ内の溶出物を回収した。前記溶出物について、前述の同様にして、ASNase活性(U/mL)、タンパク質濃度(mg/mL)および容量(mL)を測定し、比活性(U/mg)および総酵素活性(U)を算出した。また、総酵素活性(U)の値から、前記溶出物について、前記上清に対する収率(%)および精製度(倍)を算出した。
(3)ゲルろ過カラムクロマトグラフィー
ゲルろ過カラム(商品名「HiLoad 16/10 superdex200 prep grade」、GEヘルスケア バイオサイエンス社製)および下記商品名の高速液体クロマトグラフィーシステムを用いて、以下のようにして、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーを行った。
Figure 2010207168
まず、ランニングバッファーとして、25mmol/L Tris−HCl(pH8.0)と0.25mol/L NaClの混合液を調製した。前記ゲルろ過カラムを、前記ランニングバッファーで平衡化後、前記(2)の溶出物を供し、前記ランニングバッファーを用いて1.0mL/分の流速で溶出した。この溶出した分画物について、前記ASNase活性測定法を用いて、ASNase活性を測定した。前記ASNase活性が確認された分画物について、前述の同様にして、ASNase活性(U/mL)、タンパク質濃度(mg/mL)および容量(mL)を測定し、比活性(U/mg)、総酵素活性(U)、収率(%)および精製度(倍)を算出した。
(4)陰イオン交換カラムクロマトグラフィー
Mono−Q HR5/5カラム(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)および前記高速液体クロマトグラフィーシステムを用いて、以下のようにして、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを行った。まず、ランニングバッファーとして、10mmol/L Tris−HCl(pH8.0)を調製した。(3)においてASNase活性が確認された前記分画物を、前記ランニングバッファーで透析した。そして、前記陰イオン交換カラムを、前記ランニングバッファーで平衡化した。この平衡化したカラムに、前記(3)でASNase活性が確認された分画物を供し、濃度勾配を0〜0.25mol/LとしたNaClを用いて1.0mL/分の流速で溶出した。この溶出した分画物について、前記ASNase活性測定法を用いて、ASNase活性を測定した。酵素活性が確認された溶出物を、10mmol/L Tris−マレイン酸(pH6.5)を用いて透析し、14270 ASNaseの精製酵素液を得た。前記14270 ASNaseの精製酵素液について、前述の同様にして、ASNase活性(U/mL)、タンパク質濃度(mg/mL)および容量(mL)を測定し、比活性(U/mg)、総酵素活性(U)、収率(%)および精製度(倍)を算出した。
[ゲルろ過分析]
ゲルろ過カラム(商品名「Superdex200 10/300」、GEヘルスケア バイオサイエンス社製)および前記高速液体クロマトグラフィーシステムを用いて、以下のようにして、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーを行った。まず、ランニングバッファーとして、0.2mol/L NaClを含む80mmol/L Tris−HCl(pH7.0)を調製した。前記ゲルろ過カラムを、前記ランニングバッファーを用いて平衡化した。この平衡化したカラムに前記精製酵素液を供し、前記ランニングバッファーを用いて、0.5mL/分の流速で溶出した。この溶出した分画物について、前記ASNase活性測定法を用いて、ASNase活性を測定した。前記ASNase活性が確認された分画物と分子量マーカーとを、熱変性還元条件下の12.5%SDS−PAGEに供した。なお、前記分子量マーカーとしては、グルタミン酸脱水素酵素(分子量290kDa)、乳酸脱水素酵素(分子量142kDa)、エノラーゼ(分子量67kDa)、ミオキナーゼ(分子量32kDa)およびチトクロームC(分子量12.4kDa)を用いた。これらの分子量マーカータンパク質は、オリエンタル酵母社から購入した。また、前記SDS−PAGEにおける熱変性還元処理は、下記組成の処理液(pH7.9)に前記精製酵素液を溶解し、95℃で5分間加熱して行った。
(処理液の組成)
成分 濃度
Tris−HCl 10mmol/L
グリセロール 5体積%
2−メルカプトエタノール 5体積%
SDS 0.5w/v%
ブロモフェノールブルー 適量
[N末端アミノ酸配列の決定]
前記精製酵素液を、前述の熱変性還元条件下の12.5%SDS−PAGEで泳動後、PVDF膜にブロッティングし、プロテインシークエンサー(Model491、アプライドマテリアル社製)に供して、14270 ASNaseのN末端アミノ酸配列を決定した。
[至適温度]
10mmol/L Tris−HCl(pH8.0)に、前記精製酵素液を溶解し、0.1mg/mLの14270 ASNase液を調製した。前記14270 ASNase液を、所定温度(50、51、52、54、56.4、58.8、61.2、63.6、66、68、69および70度)で5分間インキュベートし、前記活性測定法を用いて、ASNase活性を測定した。ASNase活性が最大値を示した温度における酵素活性値を比活性100%とし、各温度における比活性(%)を算出した。
[温度安定性]
10mmol/L Tris−HCl(pH8.0)に、前記精製酵素液を溶解し、0.1mg/mLの14270 ASNase液を調製した。前記14270 ASNase液を、所定温度(40、41、42、44、46.4、48.8、51.2、53.6、56、58、59および60℃)で30分間インキュベートし、前記活性測定法を用いて、測定波長340nmにおける吸光度(C)を測定した。また、コントロールとして、前記14270 ASNase液を氷上(5℃)で30分間インキュベートし、同様に前記活性測定法を用いて、測定波長340nmにおける吸光度(D)を測定した。そして、5℃、pH8.0、30分間のコントロール条件下でインキュベートした際のASNase活性を100%として、各温度条件における残存活性(%)を求めた。具体的には、前記吸光度(C)および(D)を下記式4に代入して、残存酵素活性(%)を算出した。前記残存酵素活性と温度との関係を示すプロットを作成し、前記プロットから、前記残存酵素活性が50%となる温度を決定した。この温度をTm値とした。
残存酵素活性(%)=C/D×100 ・・・(4)
C=所定温度における吸光度
D=コントロールの吸光度
[pH安定性]
所定pHに調整した100mmol/L Tris−maleate(pH 5.0、6.0および7.0)または100mmol/L Tris−HCl(pH 8.0および9.0)に、前記精製酵素液を溶解し、0.1mg/mL 14270 ASNase液を調製した。前記14270 ASNase液を、37℃で24時間インキュベートし、前記活性測定法を用いて、測定波長340nmにおける吸光度(C’)を測定した。また、コントロールとして、前記14270 ASNase液を、5℃、pH7.0の条件下で24時間インキュベートし、同様に前記活性測定法を用いて、測定波長340nmにおける吸光度(D’)を測定した。そして、5℃、pH7.0、24時間のコントロール条件下でインキュベートした際のASNase活性を100%として、各pH条件における残存活性(%)を求めた。具体的には、前記吸光度(C’)および(D’)を下記式5に代入して、残存酵素活性(%)を算出した。
残存酵素活性(%)=C’/D’×100 ・・・(5)
C’=所定pHにおける吸光度
D’=コントロールの吸光度
[基質特異性]
L−アスパラギン以外の基質として、L−グルタミンおよびD−アスパラギンについて、以下のようにして、アミドヒドロラーゼ活性を測定した。L−グルタミンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性は、L−アスパラギンに代えてL−グルタミンを基質として用いたこと以外は、前述の活性測定法と同様にして測定した。また、D−アスパラギンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性も、L−アスパラギンに代えてD−アスパラギンを基質として用いたこと以外は、前述の活性測定法と同様にして測定した。なお、本例において、L−アスパラギナーゼ 1単位(1U)とは、1分間に、NADHが1μmolのNADに変化する酵素活性である。
他のアスパラギナーゼの参考例として、SGR ASNaseについて、14270 ASNaseと同様にして、温度安定性、pH安定性、基質特異性、分子量を測定した。なお、前記SGR ASNaseは、配列番号19のアミノ酸配列を有するタンパク質である。本例において、前記SGR ASNaseは、前記14270 ASNase遺伝子のDNA断片(配列番号1)に代えて、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)由来のDNA断片(配列番号20)を前記pTONA5aに組み込んだ形質転換体により産生されたアスパラギナーゼである。
下記表1に、前記14270 ASNaseの各精製段階における酵素活性、タンパク質量、比活性、容量、総酵素活性、収率および精製度を示す。同表に示すように、Mono−Q HR5/5カラム精製後の前記14270 ASNaseは、6.8unit/mLのアスパラギナーゼ活性を示した。また、前記14270 ASNase形質転換体の培養上清中の酵素活性は、6.24±0.29units/mLであり、前記形質転換体の細胞溶解物の酵素活性は、1.38±0.23units/mLであった。すなわち、培養上清中の酵素活性は、細胞溶解物の酵素活性よりも4.5倍高く、前記14270 ASNaseが細胞外に分泌されていることが示された。
Figure 2010207168
図2の写真に、14270 ASNaseおよびSGR ASNaseの精製酵素液を、熱変性条件下の12.5%SDS−PAGEで泳動した結果を示す。同図において、レーン1は、分子量マーカーの泳動結果であり、レーン2は、14270 ASNaseの精製酵素液の泳動結果であり、レーン3は、SGR ASNaseの精製酵素液の泳動結果である。同図に示すように、14270 ASNaseの分子量(プロトマー)は、約35kDaであり、SGR ASNaseの分子量(プロトマー)は、約33kDaであった。また、14270 ASNaseのN末端アミノ酸配列は、配列番号21に示すアミノ酸配列であり、SGR ASNaseのN末端アミノ酸配列は、配列番号22に示すアミノ酸配列であり、共に、N末端アミノ酸残基は、セリンであった。さらに、前記ゲルろ過分析により、14270 ASNaseおよびSGR ASNaseは、共に二量体であることが示された。
(N末端アミノ酸配列)
14270 ASNase:(配列番号21)
SSPADAPVVREPLHAPVAH
SGR ASNase:(配列番号22)
SVPAPAPPVLAEVVRSGFT
下記表2に、14270 ASNaseおよびSGR ASNaseの生化学的特性の測定結果を示す。同表に示すように、14270 ASNaseの至適温度は、63.6℃であり、Tm値は、54.0℃であった。これに対して、SGR ASNaseの至適温度は、48.8℃であり、Tm値は、42.4℃であった。すなわち、同じストレプトマイセス属(Streptomyces)のSGR ASNaseと比較しても、14270 ASNaseは、非常に高い耐熱性を有することが示された。また、同表に示すように、前記14270 ASNaseのL−アスパラギンに対する酵素活性(68.09units/mg)は、L−グルタミンに対する酵素活性(0.65units/mg)の約105倍であった。すなわち、前記14270 ASNaseは、L−アスパラギンに対して高い基質特異性を有すると同時に、L−グルタミンに対する基質特異性は著しく低いことが示された。
Figure 2010207168
図1のグラフおよび下記表3に、前記両酵素の至適温度の測定結果を示す。同グラフにおいて、横軸は、温度(℃)であり、縦軸は、比活性(%)である。また、同グラフにおいて、●のプロットは、14270 ASNaseの結果であり、○のプロットは、SGR ASNaseの結果である。同グラフおよび下記表に示すように、SGR ASNaseは、50℃を超えると、急激に失活するのに対し、14270 ASNaseは、60℃を超えてもなお、高い酵素活性を示した。
Figure 2010207168
図3のグラフおよび下記表4に、両酵素の温度安定性の測定結果を示す。同グラフにおいて、横軸は、温度(℃)であり、縦軸は、残存酵素活性(%)である。また、同グラフにおいて、●のプロットは、14270 ASNaseの結果であり、○のプロットは、SGR ASNaseの結果である。同グラフおよび下記表に示すように、SGR ASNaseは、40℃を超えると急激に失活し、温度安定性が低くなるのに対し、14270 ASNaseは、50℃を超えても、なお酵素活性が高く、高い温度安定性を示した。
Figure 2010207168
図4のグラフおよび下記表5に、両酵素のpH安定性の測定結果を示す。同グラフにおいて、横軸は、pHであり、縦軸は、残存酵素活性(%)である。また、同グラフにおいて、●のプロットは、14270 ASNaseの結果であり、○のプロットは、SGR ASNaseの結果である。同グラフおよび下記表に示すように、SGR ASNaseは、高い酵素活性を示すpH条件がpH6〜7の範囲に限られ、これ以外のpH範囲では酵素活性が低かった。これに対し、14270 ASNaseは、pH6以上において高い酵素活性を有し、幅広いpH範囲で高いpH安定性を示した。
Figure 2010207168
また、下記表6に、前記14270 ASNaseおよびSGR ASNaseのL−アスパラギンに対する速度パラメーターの分析結果を示す。
Figure 2010207168
以上のように、本発明のアミドヒドロラーゼによれば、アスパラギン要求性腫瘍細胞を選択的に排除する治療薬に利用した場合に、アスパラギンに対する基質特異性が高いため、他のアミノ酸に対する酵素活性に起因する副作用が低く、かつ、耐熱性が高いため、体内での安定性に寄与し、したがって、薬効および安全性が高い。また、本発明のアミドヒドロラーゼによれば、アスパラギンに対する基質特異性が高く、かつ、耐熱性が高いため、アクリルアミド低減化の目的で使用した場合に、例えば、アクリルアミド低減化効果が高く、アスパラギン以外の他のアミノ酸等の分解による呈味の低減が抑制される。本発明のアミドヒドロラーゼの用途は、例えば、医薬、食品添加物等が挙げられ、その用途は限定されず、広い分野に適用可能である。

Claims (4)

  1. 下記(1)〜(5)の性質を有する、アミドヒドロラーゼ。
    (1)熱変性還元条件下、SDS−PAGE法によるプロトマーの分子量が、35±1kDaの範囲
    (2)同一構造の2つのサブユニットからなる二量体タンパク質
    (3)至適pHが、pH7以上かつpH9以下の範囲
    (4)至適温度が、60℃以上かつ70℃以下の範囲
    (5)アスパラギンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性が、グルタミンを基質としたときのアミドヒドロラーゼ活性の80倍以上
  2. ストレプトマイセス属(Streptomyces)の菌体に由来する請求項1記載のアミドヒドロラーゼ。
  3. 前記ストレプトマイセス属の菌体が、ストレプトマイセス・サーモルテウス(Streptomyces thermoluteus)の菌体である請求項2記載のアミドヒドロラーゼ。
  4. 下記(a)から(c)のいずれかのタンパク質からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載のアミドヒドロラーゼ。
    (a)配列番号1記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号1記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸残基が、置換、付加、挿入もしくは欠失したアミノ酸配列からなり、かつ、アミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
    (c)配列番号1記載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、アミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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