JP5383175B2 - 新規なβ−フルクトフラノシダーゼ、その製造方法及びその利用 - Google Patents
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Description
(A)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、47位のスレオニン、200位のセリン、447位のフェニルアラニン、470位のフェニルアラニン、及び500位のプロリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸が下記[1]〜[5]に示す如く置換された改変アミノ酸配列A
[1]47位のスレオニンについて、セリン、グルタミン酸又はグリシンへの置換
[2]200位のセリンについて、スレオニン又はロイシンへの置換
[3]447位のフェニルアラニンについて、プロリン、イソロイシン、バリン、リジン、グルタミン、アルギニン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、トリプトファン又はシステインへの置換
[4]470位のフェニルアラニンについて、チロシン、アラニン、グルタミン酸又はバリンへの置換
[5]500位のプロリンについて、バリン、システイン、トリプトファン又はセリンへの置換
(B)前記改変アミノ酸配列Aにおいて、47位のスレオニン、200位のセリン、447位のフェニルアラニン、470位のフェニルアラニン、及び500位のプロリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸の置換の他さらに1から数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の変異を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を構成する改変アミノ酸配列B
(C)前記改変アミノ酸配列Aと70%以上の相同性を有し、かつ前記改変アミノ酸配列Aの47位のスレオニン、200位のセリン、447位のフェニルアラニン、470位のフェニルアラニン、及び500位のプロリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸の置換を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を構成する改変アミノ酸配列C
200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、及び470位のフェニルアラニンがチロシンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがシステインに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがバリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがトリプトファンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがシステインに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがバリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがシステインに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがバリンに置換された改変アミノ酸配列;又は
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがトリプトファンに置換された改変アミノ酸配列である。
(a)配列表の配列番号2に記載の塩基配列において、139〜141位の三塩基連鎖、598〜600位の三塩基連鎖、1339〜1341位の三塩基連鎖、1408〜1410位の三塩基連鎖、及び1498〜1500位の三塩基連鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の三塩基連鎖が下記[6]〜[10]に示す如く置換された改変塩基配列a
[6]139〜141位の三塩基連鎖について、セリン、グルタミン酸又はグリシンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[7]598〜600位の三塩基連鎖について、スレオニン又はロイシンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[8]1339〜1341位の三塩基連鎖について、プロリン、イソロイシン、バリン、リジン、グルタミン、アルギニン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、トリプトファン又はシステインを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[9]1408〜1410位の三塩基連鎖について、チロシン、アラニン、グルタミン酸又はバリンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[10]1498〜1500位の三塩基連鎖について、バリン、システイン、トリプトファン又はセリンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
(b)前記改変塩基配列aにおいて、前記139〜141位の三塩基連鎖、598〜600位の三塩基連鎖、1339〜1341位の三塩基連鎖、1408〜1410位の三塩基連鎖、及び1498〜1500位の三塩基連鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の三塩基連鎖の置換の他さらに1から数個の塩基の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の変異を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする改変塩基配列b
(c)前記改変塩基配列aとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前記改変塩基配列aの139〜141位の三塩基連鎖、598〜600位の三塩基連鎖、1339〜1341位の三塩基連鎖、1408〜1410位の三塩基連鎖、及び1498〜1500位からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換された三塩基連鎖と相補的な三塩基連鎖を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする改変塩基配列c
(b)形質転換体培養物からβ−フルクトフラノシダーゼを得る工程
を含むβ−フルクトフラノシダーゼの製造方法が提供される。
(1)本発明の酵素
本発明者らは、特許文献2に記載されている、寄託番号FERM P-10736/BP-3192のアルスロバクター・スピーシーズ K-1(Arthrobacter sp. K-1 FERM P-10736/BP-3192)由来のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子にランダム変異を導入し、得られた変異β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子によって形質転換した約3000クローンから成る形質転換体ライブラリーを構築した。該形質転換体ライブラリーから、55℃の加熱処理後においても酵素活性が残存する変異β−フルクトフラノシダーゼの取得を目的として、該変異β−フルクトフラノシダーゼを発現する形質転換体をスクリーニングした。また、本発明者らは、スクリーニングにより得た変異β−フルクトフラノシダーゼのアミノ酸配列から、耐熱性に寄与するアミノ酸残基の部位と種類を特定し、本発明の酵素を構築することに成功した。
(A)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、47位のスレオニン、200位のセリン、447位のフェニルアラニン、470位のフェニルアラニン、及び500位のプロリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸が下記[1]〜[5]に示す如く置換された改変アミノ酸配列A
[1]47位のスレオニンについて、セリン、グルタミン酸又はグリシンへの置換
[2]200位のセリンについて、スレオニン又はロイシンへの置換
[3]447位のフェニルアラニンについて、プロリン、イソロイシン、バリン、リジン、グルタミン、アルギニン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、トリプトファン又はシステインへの置換
[4]470位のフェニルアラニンについて、チロシン、アラニン、グルタミン酸又はバリンへの置換
[5]500位のプロリンについて、バリン、システイン、トリプトファン又はセリンへの置換
(B)前記改変アミノ酸配列Aにおいて、47位のスレオニン、200位のセリン、447位のフェニルアラニン、470位のフェニルアラニン、及び500位のプロリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸の置換の他さらに1から数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の変異を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を構成する改変アミノ酸配列B
(C)前記改変アミノ酸配列Aと70%以上の相同性を有し、かつ前記改変アミノ酸配列Aの47位のスレオニン、200位のセリン、447位のフェニルアラニン、470位のフェニルアラニン、及び500位のプロリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸の置換を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を構成する改変アミノ酸配列C
加熱処理は、β−フルクトフラノシダーゼを含む50mMのリン酸緩衝液(pH6.5)(以下、「酵素液」と呼ぶ場合がある)を45〜65℃で30〜180分間加熱することにより行う。β−フルクトフラノシダーゼ活性の測定は、50mMのリン酸緩衝液(pH6.5)に溶解させた10%(w/v)のショ糖30μlに加熱処理後の酵素液30μlを添加し、40℃で10分間反応させた後、100℃で15分間加熱して酵素反応を止める。続いて4℃に冷却した後、生成したグルコースをグルコースオキシダーゼ法(和光純薬工業(株)製、グルコースC−IIテスト・ワコー)で測定する。対照として、加熱処理に付していない未処理の酵素(β−フルクトフラノシダーゼ)のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を上記の操作により測定する。ここで1単位の酵素活性は同条件下で1分間に1μmolのグルコースを生成する酵素量とする。
前記のβ−フルクトフラノシダーゼ活性の測定法において、使用する基質をショ糖の代わりに、エルロース、キシロシルフラクトシド、ラフィノース、ネオケストース、スタキオース、1−ケストース、ニストース、イヌロビオース、又はレバンビオースを基質としてこれらの基質の分解活性を調べることで測定する。
至適pHは、前記のβ−フルクトフラノシダーゼ活性の測定法において、50mMリン酸緩衝液(pH6.5)の代わりに50mM Mcllvaine 緩衝液(pH3.0〜8.0)、50mM Kolthoff(pH8.0〜11.0)を用いて測定する。上記条件で最も高い酵素活性(以下、「最大活性」と略す)を有するpHを至適pHとする。
一方、pH安定性は、50mM Mcllvaine 緩衝液(pH3.0〜8.0)、50mM Kolthoff(pH8.0〜11.0)を用い、40℃で2時間処理した後、残存する酵素活性を求めて測定する。上記条件下における最大活性の値を基準(100%)として約80%以上の活性を示すpHを、pH安定性を示すpHまたは単に安定なpHという。
酵素液を各温度に設定した恒温槽に一定時間静置した後、4℃に冷却し、β−フルクトフラノシダーゼ活性を測定する。未処理の酵素活性の値を基準(100%)として残存活性(%)を求める。同条件下において60%以上の残存活性の値を示す温度を、温度安定性を示す温度、又は単に安定な温度という。
本発明の核酸は、本発明のβ−フルクトフラノシダーゼをコードする核酸である。本発明の核酸の好ましい態様は、例えば、下記(a)〜(c)に記載の改変塩基配列a、改変塩基配列b又は改変塩基配列cを含むβ−フルクトフラノシダーゼをコードする核酸である。
(a)配列表の配列番号2に記載の塩基配列において、139〜141位の三塩基連鎖、598〜600位の三塩基連鎖、1339〜1341位の三塩基連鎖、1408〜1410位の三塩基連鎖、及び1498〜1500位の三塩基連鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の三塩基連鎖が下記[6]〜[10]に示す如く置換された改変塩基配列a
[6]139〜141位の三塩基連鎖について、セリン、グルタミン酸又はグリシンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[7]598〜600位の三塩基連鎖について、スレオニン又はロイシンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[8]1339〜1341位の三塩基連鎖について、プロリン、イソロイシン、バリン、リジン、グルタミン、アルギニン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、トリプトファン又はシステインを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[9]1408〜1410位の三塩基連鎖について、チロシン、アラニン、グルタミン酸又はバリンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[10]1498〜1500位の三塩基連鎖について、バリン、システイン、トリプトファン又はセリンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
(b)前記改変塩基配列aにおいて、前記139〜141位の三塩基連鎖、598〜600位の三塩基連鎖、1339〜1341位の三塩基連鎖、1408〜1410位の三塩基連鎖、及び1498〜1500位の三塩基連鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の三塩基連鎖の置換の他さらに1から数個の塩基の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の変異を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする改変塩基配列b
(c)前記改変塩基配列aとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前記改変塩基配列aの139〜141位の三塩基連鎖、598〜600位の三塩基連鎖、1339〜1341位の三塩基連鎖、1408〜1410位の三塩基連鎖、及び1498〜1500位の三塩基連鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換された三塩基連鎖と相補的な三塩基連鎖を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする改変塩基配列c
配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、及び470位のフェニルアラニンがチロシンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがシステインに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがバリンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがトリプトファンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがシステインに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがバリンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがシステインに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがバリンに置換された改変アミノ酸配列;47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがトリプトファンに置換された改変アミノ酸配列。
本発明の核酸は適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製することが可能なベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞の染色体に組み込まれ、染色体と共に複製されるものであってもよい。好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明の遺伝子は、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)が機能的に連結されている。プロモーターは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
本発明の核酸または組換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。すなわち、本発明の形質転換体は、本発明の核酸を導入してなる、又は本発明の組換えベクターを含有する形質転換体である。
本発明によれば、本発明の形質転換体を常法にしたがって適当な培地に接種して適切な条件下で培養し、得られた培養物から本発明の酵素を採取してなる、本発明の酵素の製造方法を包含する。すなわち、本発明の酵素の製造方法は、(a)本発明の形質転換体を培養して、β−フルクトフラノシダーゼを含む形質転換体培養物を得る工程、及び(b)形質転換体培養物からβ−フルクトフラノシダーゼを得る工程を含む。
β−フルクトフラノシル供与体とβ−フルクトフラノシル受容体とを含有する溶液に、本発明の酵素若しくは本発明の形質転換体(例えば、細菌)又はその培養物を作用させることにより、β−フルクトフラノシル転移糖を生成させることができる。
(1)変異遺伝子ライブラリーの構築
寄託番号FERM P−10736/BP−3192のアルスロバクター・スピーシーズ K−1(Arthrobacter sp. K−1)株由来のβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を含む組換え体プラスミドpBFF1(特開2000−342273公報記載)を大腸菌HB101よりHigh Pure Plasmid Isolation Kit(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用いることにより抽出、精製した。得られた組換え体プラスミドを鋳型として、配列表のプライマーAとプライマーBを用い、Diversify PCR Random Mutagenesis Kit(クロンテック社)を用い、キットのプロトコールにしたがって、β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子にランダム変異を導入した。変異導入されたβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子を含む1.8k塩基対のDNA断片を精製した後、制限酵素NdeIおよびBamHIで切断した。これとプラスミドベクターpET21a(インビトロジェン社)を制限酵素NdeIおよびBamHIで切断したものを Ligation Kit ver 2.1(タカラバイオ社)を用いて、16℃で3時間ライゲーションをした後に、大腸菌BL21StarTM(DE3)pLysS[F- ompT hsdSB(r B - m B - )gal dcm rne131 (DE3)pLysS(CamR)]株へ形質転換を行うことによって、ランダム変異の導入された組換えプラスミドを有する組換え大腸菌ライブラリーを構築した。
前記(1)の操作で得られた上記形質転換体をLB−Amp−Cm寒天培地(バクトペプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム1%、バクトアガー1.5%、アンピシリン50μg/ml、クロラムフェニコール35μg/ml)上で37℃、一晩培養してコロニーを形成させた。各コロニーのうち、3000個を別々にLB−Amp−Cm培地(バクトペプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム1%、アンピシリン50μg/ml、クロラムフェニコール35μg/ml)を1mlずつ入れた96穴ディープウェルプレートに接種し、20℃、8時間振とう培養を行った。その後、各ウェルに100mM イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)10μlを添加し、さらに20℃で16時間振とう培養を行った。培養終了後、培養液を3000rpm、10分間遠心分離を行い、菌体を得た。得られた菌体に、BugBuster(ノバジェン社)を各ウェルに100μlずつ添加し、室温で5分間撹拌後、50mMのリン酸緩衝液(pH6.5)を900μlずつ添加し、さらに室温で5分間撹拌後、3000rpm、10分間遠心分離を行い、粗酵素抽出液を得た。得られた粗酵素抽出液に対して、55℃で30分間の熱処理を行った。対照として、野生型酵素遺伝子が挿入されたプラスミド(pBFF1)を有し、野生型酵素(BFF1)を生産する形質転換体についても同様の操作を行った。得られた酵素液について、熱処理前後のβ−フルクトフラノシダーゼの活性測定を行った。活性測定は50mMのリン酸緩衝液(pH6.5)に溶解させた10%(w/v)のショ糖30μlに酵素液30μlを添加し、40℃で10分間反応させた後、100℃で15分間加熱して酵素反応を止めた。続いて4℃に冷却した後、生成したグルコースをグルコースオキシダーゼ法(和光純薬工業(株)製、グルコースC−IIテスト・ワコー)で測定した。ここで1単位の酵素活性は同条件下で1分間に1μmolのグルコースを生成する酵素量とした。対照となる野生型酵素よりも高い残存活性を示す変異体酵素を選別した。その結果、酵素遺伝子に変異が導入されたプラスミドを含有する形質転換体のうち、4株が生産する変異体酵素(P494、P500、F285、およびF2139)が高い残存活性を有していた。
上記の如く得られた優良変異株に含有されるβ−フルクトフラノシダーゼ遺伝子に対して、遺伝子のどの部位が変異操作により置換されたのか確認をする為に以下のような解析を行った。上記(2)で得た上記組換え体に含まれるプラスミド(pP494、pP500、pF285、およびpF2139)をHigh Pure Plasmid Isolation Kitを用いて精製した。このプラスミドの塩基配列はMegaBACE 1000(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を用いて決定した。結果は表1に示した。
上記(2)で得られた4株の生産する変異体酵素(P494、P500、F285、およびF2139)および上記(2)記載の野生型酵素BFF1の粗酵素溶液を55℃の恒温槽に30分間静置した後、4℃に冷却し、酵素活性(残存活性)を測定した。測定の結果は、熱処理前の酵素活性を100%とした場合の残存活性(%)として表2に示した。
(1)BFF1のN末端側のアミノ酸とP494、P500、F285、F2139の有するC末端側のアミノ酸の組み合わせによる変異体の作製および評価
pBFF1を鋳型とし、BFF1のN末端側のアミノ酸(37−407番目)をコードする遺伝子断片nbffNを、プライマーAおよびCを用いたPCRにより増幅した。また、P494、P500、F285、およびF2139のC末端側(395−579番目)のアミノ酸をコードする遺伝子断片、np494C、np500C、nf285C、nf2139CをpP494、pP500、pF285、pF2139を各々鋳型とし、プライマーBおよびDを用いたPCRにより増幅した。得られた遺伝子断片nbffNにnp494C、np500C、nf285Cまたはnf2139CをプライマーAおよびBを用いたリコンビナントPCR法により連結し、さらにこれを発現用プラスミドpET21aに連結した後に、大腸菌BL21StarTM(DE3)pLysSを形質転換した。得られたコロニーを培養し、実施例1(2)に記載の方法に従い粗酵素液を調製した。β−フルクトフラノシダーゼ活性を示す株から得られた粗酵素液を56℃の恒温槽に30分間静置した後、4℃に冷却し、酵素活性(残存活性)を測定した。耐熱性の比較対照として、野生型酵素であるBFF1を同様の試験に供した。測定の結果は、熱処理前の酵素活性を100%とした場合の相対活性(%)として表3に示した。表3に示すように、P494、P500およびF2139の各変異体が有する395番アミノ酸よりC末端側の変異によって56℃、30分間の熱処理時における耐熱性が向上することが分かった。
次にpP494を鋳型とし、P494のN末端側のアミノ酸(37−407番目)をコードする遺伝子断片np494Nを、プライマーAおよびCを用いたPCRにより増幅した。一方、P494、P500、F285およびF2139のC末端側(395−579番目)のアミノ酸をコードする遺伝子断片、np494C、np500C、nf285C、およびnf2139Cを、pP494、pP500、pF285およびpF2139を各々鋳型とし、プライマーBおよびDを用いたPCRにより増幅した。得られた遺伝子断片np494Nにnp494C、np500C、nf285C、またはnf2139CをプライマーAおよびBを用いたリコンビナントPCR法により連結し、さらにこれを発現用プラスミドpET21aに連結した後に、大腸菌BL21StarTM(DE3)pLysSを形質転換した。得られたコロニーを培養し、実施例1(2)に記載の方法に従い粗酵素液を調製した。β−フルクトフラノシダーゼ活性を示す株から得られた粗酵素液を55℃の恒温槽に30分間静置した後、4℃に冷却し、酵素活性(残存活性)を測定した。耐熱性の比較対照として、野生型酵素であるBFF1を同様の試験に供した。測定の結果は、熱処理前の酵素活性を100%とした場合の残存活性(%)として表4に示した。表4に示すように、P494、P500およびF2139の各変異体が有する395番アミノ酸よりC末端側の変異によって55℃、30分間の熱処理時における耐熱性が向上した。
pF285を鋳型とし、F285のN末端側のアミノ酸(37−407番目)をコードする遺伝子断片nf285Nを、プライマーAおよびCを用いたPCRにより増幅した。一方、P494、F285およびF2139のC末端側(395−579番目)のアミノ酸をコードする遺伝子断片、np494C、nf285C、またはnf2139Cを、pP494、pF285およびpF2139を各鋳型とし、プライマーBおよびDを用いたPCRにより増幅した。得られた遺伝子断片nf285Nにnp494C、nf285C、またはnf2139CをプライマーAおよびBを用いたリコンビナントPCR法により連結し、さらにこれを発現用プラスミドpET21aに連結した後に、大腸菌BL21StarTM(DE3)pLysSを形質転換した。得られたコロニーを培養し、実施例1(2)に記載の方法に従い粗酵素液を調製した。β−フルクトフラノシダーゼ活性を示す株から得られた粗酵素液を56℃の恒温槽に30分間静置した後、4℃に冷却し、酵素活性(残存活性)を測定した。測定の結果は、熱処理前の酵素活性を100%とした場合の残存活性(%)として表5に示した。表3と5を比較して、F285の有する395番のアミノ酸よりN末端側の変異が本酵素の耐熱性に寄与していることが分かった。表5に記載する77%の残存活性を示した変異体を24D、87%の残存活性を示した変異体を26F、84%の残存活性を示した変異体を26Iと命名した
24Dをコードする遺伝子配列を解析したところ、24Dにおけるアミノ酸変異箇所はT47S、S200T、F447V、およびP500Sの4カ所であった。また、26Fをコードする遺伝子配列を解析したところ、D42G、T47S、Q98R、S200T、N208D、R222C、F470Y、およびG530Dの8カ所であった。また、26Iをコードする遺伝子配列を解析したところ、T47S、S200T、F470Y、G530DおよびF552Lの5カ所であった。次に、24Dにおいては野生型配列と同じアミノ酸残基であり(F470)、26Fと26Iにおいて共通するアミノ酸変異であるF470Yを24Dに導入することとした。より具体的には24Dをコードするプラスミドp24Dを鋳型とし、24DのN末端アミノ酸から変位導入箇所近傍を含む476番目のアミノ酸をコードする遺伝子断片n24yNを、プライマーAおよび470番アミノ酸をチロシンに変異させる配列を含むアンチセンスプライマー(プライマーE)を用いたPCRにより増幅した。また、p24Dを鋳型とし、466番目のアミノ酸からC末端アミノ酸をコードする遺伝子断片n24yCを、プライマーBおよび470番アミノ酸をチロシンに変異させる配列を含むセンスプライマー(プライマーF)を用いたPCRにより増幅した。得られた遺伝子断片n24yNとn24yCをプライマーAおよびBを用いたリコンビナントPCR法により連結し、さらにこれを発現用プラスミドpET21aに連結した後に、大腸菌BL21StarTM(DE3)pLysSを形質転換した。得られたコロニーからプラスミドを抽出、精製した後、塩基配列の決定を行い、目的の変異が導入されていることを確認した。このようにして、5重変異体24Yをコードする遺伝子を含むプラスミドp24Y、および24Yを生産する組換え大腸菌を得た。得られたコロニーを培養し、実施例1(2)に記載の方法に従い粗酵素液を調製した。β−フルクトフラノシダーゼ活性を示す株から得られた粗酵素液を60℃の恒温槽に30分間静置した後、4℃に冷却し、酵素活性(残存活性)を測定した。測定の結果は、熱処理前の酵素活性を100%とした場合の相対活性(%)として表6に示した。表6に示すように、24Yは24D、26Fよりも優れた耐熱性を示すことが分かった。
47位、200位、447位、470位、および500位のアミノ酸について、サチュレーション変異を行った。所定の変異を起こさせるよう設計した5種類のセンスプライマー:Gfw、Hfw、Ifw、Jfw、Kfwと5種類のアンチセンスプライマー;Grv、Hrv、Irv、Jrv、Krvを用い、GfwとGrv、HfwとHrv、IfwとIrv、JfwとJrv、KfwとKrvをそれぞれ一組とし、p24Yを鋳型として、実施例3と同様な手順により、形質転換を行なった。得られた形質転換体のプラスミドが有する変異型β−フルクトフラノシダーゼ遺伝子をプライマーAおよびBを用いてPCRにより増幅した。増幅断片の遺伝子配列の解析はMegaBACE 1000を用いて行なった。各々、200クローンについて、実施例1(2)に記載の方法に従い粗酵素液を調製した。β−フルクトフラノシダーゼ活性を示す株から得られた粗酵素液を60℃の恒温槽に30分間静置した後、4℃に冷却し、酵素活性(残存活性)を測定した。アミノ酸のサチュレーション変異により得られた変異酵素のうち、サチュレーション変異を施した各箇所が野生型アミノ酸に戻った4重変異酵素の示す残存活性を比較対照とした。対照よりも高い残存活性を示した変異体のアミノ酸配列を確認したところ、その内訳は、変異箇所47番アミノ酸では、S、E、Gであり、200番アミノ酸では、T、Lであり、447番アミノ酸では、P、I、V、K、Q、R、A、Y、H、T、S、W、Cであり、470番アミノ酸では、Y、A、E、Vであり、500番アミノ酸では、V、C、W、S、であった。これらの結果より、47位、200位、447位、470位、または500位の各アミノ酸が野生型から前述の各アミノ酸に置換されることにより、本酵素の耐熱性が向上することが明らかとなった。
実施例3で得られたβ−フルクトフラノシダーゼ変異体である24Y、実施例4で得られた変異体酵素であり、24Yの447番目のアミノ酸がプロリン、イソロイシン、または野生型と同じフェニルアラニンに置換された変異体酵素(24Y447P、24Y447I、24Y447F)を生産する組換え大腸菌を各々培養し、大腸菌による組換え酵素の調製を行なった。より具体的な手順を以下に示す。培養は容量2Lの三角フラスコにLB培地(バクトペプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム1%)0.5Lを入れて滅菌した後、アンピシリン溶液を終濃度で50μg/ml、クロラムフェニコール溶液を終濃度で35μg/mlになるように添加し、種培養液を1%になるように接種して、温度20℃、130rpmでOD600が0.5になるまで培養した。その後、IPTGを終濃度で0.5mMになるように添加し、さらに16時間培養を行った。培養終了後、培養液を5000g、10分間遠心分離を行い、菌体を得た。得られた大腸菌に50mM リン酸緩衝液(pH6.5) 20mlを添加し、細胞を超音波破砕した後に12000g、15分間遠心分離を行った。得られた粗抽出液をハイドロキシアパタイトカラム(生化学工業社製)によるクロマトグラフィー[(洗浄、50mM リン酸緩衝液(pH6.5);溶出、200mM リン酸緩衝液(pH6.5)]に供した。β−フルクトフラノシダーゼ活性を示す画分を集め、50mM リン酸緩衝液(pH6.5)で平衡化した陰イオン交換カラム(SuperQ 650Mカラム、東ソー社製)に供した。続いて、0−500mMのNaCl濃度勾配法により、酵素タンパクの溶出を行なった。β−フルクトフラノシダーゼ活性を示す画分を集め、限外ろ過膜(PM−10、Amicon社製)による濃縮を行なった後、50mM リン酸緩衝液(pH6.5)に緩衝液を置換し、酵素液を得た。比較対照として、野生型酵素であるBFF1についても、大腸菌による組換え酵素の調製を同様の手順で行なった。
実施例5の方法で得た本発明の酵素液を55℃または60℃の恒温槽に一定時間静置した後、4℃に冷却し、酵素活性(残存活性)を測定した。酵素の半減期を表7として示した。表7に示すように、447番目のアミノ酸は耐熱性向上に寄与していることが明らかとなった。さらに447番目のアミノ酸がプロリンの場合が最も高い耐熱性を示した。
実施例4で得られた変異体酵素のうちから、24Yの47番目のアミノ酸が野生型と同じであるスレオニンに置換された変異体酵素(24Y47T)、200番目のアミノ酸が野生型と同じであるセリンに置換された変異体酵素(24Y200S)、470番目のアミノ酸が野生型と同じであるフェニルアラニンに置換された変異体酵素(24Y470F;実施例2(3)記載の24Dと同じアミノ酸配列を有する変異酵素)、500番目のアミノ酸が野生型と同じであるプロリンに置換された変異体酵素(24Y500P)、500番目のアミノ酸が野生型と同じであるシステインに置換された変異体酵素(24Y500C)、500番目のアミノ酸が野生型と同じであるバリンに置換された変異体酵素(24Y500V)を選択し、実施例5と同様の手順で大腸菌による組換え酵素の調製を行なった。
実施例7(1)記載の4重変異体24Y200Sの447番目のアミノ酸であるバリン(野生型ではフェニルアラニン)がプロリンに置換し、且つ24Y200Sの500番目のアミノ酸であるセリン(野生型ではプロリン)がシステイン、バリンまたはトリプトファン置換した4重変異体を作製した。より具体的には24Y200Sをコードするプラスミドp24Y200Sを鋳型とし、24Y200SのN末端アミノ酸から変位導入箇所近傍を含む453番目のアミノ酸をコードする遺伝子断片n24y200SNを、プライマーAおよび447番アミノ酸をプロリンに変異させる配列を含むアンチセンスプライマー(プライマーL)を用いたPCRにより増幅した。また、p24Y500C、p24Y500Vまたはp24Y500Wを鋳型とし、441番目のアミノ酸からC末端アミノ酸をコードする遺伝子断片n24y500C、n24y500V、n24y500Wを、プライマーBおよび447番アミノ酸をプロリンに変異させる配列を含むセンスプライマー(プライマーM)を用いたPCRにより増幅した。得られた遺伝子断片n24y200SNに対して、n24y500C、n24y500Vまたはn24y500WをプライマーAおよびBを用いたリコンビナントPCR法により各々連結し、さらにこれを発現用プラスミドpET21aに連結した後に、大腸菌BL21StarTM(DE3)pLysSを形質転換した。得られたコロニーからプラスミドを抽出、精製した後、塩基配列の決定を行い、目的の変異が導入されていることを確認した。このようにして、4重変異体24Y200S447P500C、24Y200S447P500V、p24Y200S447P500Wをコードする遺伝子を含むプラスミドp24Y200S447P500C、p24Y200S447P500V、およびp24Y200S447P500Wを生産する組換え大腸菌を得た。得られた各組換え大腸菌より、実施例5と同様の手順で大腸菌による各組換え酵素の調製を行なった。
実施例4で取得した5重変異体である24Y447Pの500番目のアミノ酸であるセリン(野生型ではプロリン)がシステイン、バリンまたはトリプトファンに置換した5重変異体3種を作製した。より具体的には24Yをコードするプラスミドp24Yを鋳型とし、24YのN末端アミノ酸から変位導入箇所近傍を含む453番目のアミノ酸をコードする遺伝子断片n24yN2を、プライマーAおよび447番アミノ酸をプロリンに変異させる配列を含むアンチセンスプライマー(プライマーL)を用いたPCRにより増幅した。また、p24Y500C、p24Y500Vまたはp24Y500Wを鋳型とし、441番目のアミノ酸からC末端アミノ酸をコードする遺伝子断片n24y500C、n24y500V、n24y500Wを、プライマーBおよび447番アミノ酸をプロリンに変異させる配列を含むセンスプライマー(プライマーM)を用いたPCRにより増幅した。得られた遺伝子断片n24yN2に対して、n24y500C、n24y500Vまたはn24y500WをプライマーAおよびBを用いたリコンビナントPCR法により各々連結し、さらにこれを発現用プラスミドpET21aに連結した後に、大腸菌BL21StarTM(DE3)pLysSを形質転換した。得られたコロニーからプラスミドを抽出、精製した後、塩基配列の決定を行い、目的の変異が導入されていることを確認した。このようにして、5重変異体24Y447P500C、24Y447P500V、p24Y447P500Wをコードする遺伝子を含むプラスミドp24Y447P500C、p24Y447P500V、およびp24Y447P500Wを生産する組換え大腸菌を得た。得られた各組換え大腸菌より、実施例5と同様の手順で大腸菌による各組換え酵素の調製を行なった。
実施例5および7(1)〜(3)の方法で得た本発明の酵素液(精製酵素)を45〜65度の各温度の恒温槽に180分間静置した後、4℃に冷却し、酵素活性(残存活性)を測定した。測定の結果は、熱処理前の酵素活性を100%とした場合の残存活性(%)として図1に示した。図1に示す通り、本発明の変異体酵素24Y47T、24Y200S、24Y447F、24Y470F、24Y500P、24Y200S447P500C、24Y200S447P500V、24Y200S447P500W、24Y、24Y500C、24Y500V、24Y500W、24Y447P500C、24Y447P500V、および24Y447P500Wは野生型酵素BFF1と比較して耐熱性が著しく向上していることが明らかとなった。
22%(W/W)ショ糖と18%(W/W)乳糖を含む水溶液(pH6.0、50mMリン酸緩衝液)に、ショ糖1gあたり1.0Uの実施例5および7(1)〜(3)の方法で得た本発明の酵素液(精製酵素)を添加し、50から75℃まで温度を変化させ、10時間転移反応を行った。反応液は100℃で10分間熱処理した後、HPLCに供し、生成したラクトスクロース(LS)を測定した(カラム:TSK−GEL Amide−80、移動相:70%アセトニトリル、流速:1.0mL/分、カラム温度:35℃、検出器:示差屈折計)。その結果、図2に示したように野生型酵素(BFF1)ではLS生成が急激に低下する60℃以上の高温域において耐熱性が向上した変異型酵素は高いLS生成量を維持することが明らかとなった。
Claims (11)
- 下記(A)〜(C)に記載の改変アミノ酸配列A、改変アミノ酸配列B又は改変アミノ酸配列Cを含むβ−フルクトフラノシダーゼ。
(A)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、47位のスレオニン、200位のセリン、447位のフェニルアラニン、470位のフェニルアラニン、及び500位のプロリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸が下記[1]〜[5]に示す如く置換された改変アミノ酸配列A
[1]47位のスレオニンについて、セリン、グルタミン酸又はグリシンへの置換
[2]200位のセリンについて、スレオニン又はロイシンへの置換
[3]447位のフェニルアラニンについて、プロリン、イソロイシン、バリン、リジン、グルタミン、アルギニン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、トリプトファン又はシステインへの置換
[4]470位のフェニルアラニンについて、チロシン、アラニン、グルタミン酸又はバリンへの置換
[5]500位のプロリンについて、バリン、システイン、トリプトファン又はセリンへの置換
(B)前記改変アミノ酸配列Aにおいて、47位のスレオニン、200位のセリン、447位のフェニルアラニン、470位のフェニルアラニン、及び500位のプロリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸の置換の他さらに1から数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の変異を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を構成する改変アミノ酸配列B
(C)前記改変アミノ酸配列Aと90%以上の同一性を有し、かつ前記改変アミノ酸配列Aの47位のスレオニン、200位のセリン、447位のフェニルアラニン、470位のフェニルアラニン、及び500位のプロリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸の置換を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質を構成する改変アミノ酸配列C - 前記改変アミノ酸配列Aが、
200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、及び470位のフェニルアラニンがチロシンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがシステインに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがバリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがトリプトファンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがシステインに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがバリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがバリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがセリンに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがシステインに置換された改変アミノ酸配列;
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがバリンに置換された改変アミノ酸配列;又は
47位のスレオニンがセリンに、200位のセリンがスレオニンに、447位のフェニルアラニンがプロリンに、470位のフェニルアラニンがチロシンに、及び500位のプロリンがトリプトファンに置換された改変アミノ酸配列である、請求項1に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ。 - 請求項1又は2に記載のβ−フルクトフラノシダーゼをコードする核酸。
- 下記(a)〜(c)に記載の改変塩基配列a、改変塩基配列b又は改変塩基配列cを含むβ−フルクトフラノシダーゼをコードする核酸。
(a)配列表の配列番号2に記載の塩基配列において、139〜141位の三塩基連鎖、598〜600位の三塩基連鎖、1339〜1341位の三塩基連鎖、1408〜1410位の三塩基連鎖、及び1498〜1500位の三塩基連鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の三塩基連鎖が下記[6]〜[10]に示す如く置換された改変塩基配列a
[6]139〜141位の三塩基連鎖について、セリン、グルタミン酸又はグリシンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[7]598〜600位の三塩基連鎖について、スレオニン又はロイシンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[8]1339〜1341位の三塩基連鎖について、プロリン、イソロイシン、バリン、リジン、グルタミン、アルギニン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、トリプトファン又はシステインを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[9]1408〜1410位の三塩基連鎖について、チロシン、アラニン、グルタミン酸又はバリンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
[10]1498〜1500位の三塩基連鎖について、バリン、システイン、トリプトファン又はセリンを規定するコドンに相補的な三塩基連鎖への置換
(b)前記改変塩基配列aにおいて、前記139〜141位の三塩基連鎖、598〜600位の三塩基連鎖、1339〜1341位の三塩基連鎖、1408〜1410位の三塩基連鎖、及び1498〜1500位の三塩基連鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の三塩基連鎖の置換の他さらに1から数個の塩基の欠失、置換、逆位、付加及び挿入からなる群から選ばれる少なくとも1種の変異を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする改変塩基配列b
(c)前記改変塩基配列aと90%以上の同一性を有し、前記改変塩基配列aの139〜141位の三塩基連鎖、598〜600位の三塩基連鎖、1339〜1341位の三塩基連鎖、1408〜1410位の三塩基連鎖、及び1498〜1500位の三塩基連鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換された三塩基連鎖と相補的な三塩基連鎖を有し、
pH6.5、55℃、180分間の加熱処理後において、未処理の酵素に対して60%以上のβ−フルクトフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする改変塩基配列c - 請求項3又は4に記載の核酸を含む組換えベクター。
- 請求項3若しくは4に記載の核酸を導入してなる、又は請求項5に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- (a)請求項6に記載の形質転換体を培養して、β−フルクトフラノシダーゼを含む形質転換体培養物を得る工程、及び
(b)形質転換体培養物からβ−フルクトフラノシダーゼを得る工程
を含むβ−フルクトフラノシダーゼの製造方法。 - β−フルクトフラノシル供与体及びβ−フルクトフラノシル受容体を含有する溶液に、請求項1若しくは2に記載のβ−フルクトフラノシダーゼ、又は請求項6に記載の形質転換体を作用させて、β−フルクトフラノシル転移糖を得ることを特徴とするβ−フルクトフラノシル転移糖の製造方法。
- β−フルクトフラノシル供与体が、ショ糖、ラフィノース及びエルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の製造方法。
- β−フルクトフラノシル受容体が、糖質、糖アルコール及びアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8又は9に記載の製造方法。
- β−フルクトフラノシル転移糖が、キシロシルフラクトシド、ガラクトシルフラクトシド、フコシルフラクトシド、ソルボシルフラクトシド、マルトオリゴシルフラクトシド、イソマルトシルフラクトシド、及びラクトシルフラクトシドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
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