JP4686090B2 - マンノースイソメラーゼ遺伝子 - Google Patents
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Description
本発明は、マンノースイソメラーゼを構成するポリペプチド、そのアミノ酸配列、その遺伝子配列、並びにこの遺伝子配列を用いるマンノースイソメラーゼの生産方法、並びにこのマンノースイソメラーゼを用いるマンノースの製造方法に関する。
背景技術
マンノースは、医薬品合成の原料、マンニトールの原料として、又は、動物細胞培養の原料として有用である。さらに、マンノースを飼料に添加することにより、サルモネラ定着抑制が行われ、腸内サルモネラ菌の増殖を著しく抑制すると報告されており、家禽類の飼料としての利用が期待されている(Poultry Science 68巻、1357頁、1989)。
マンノースは、上記のように有用性が高いが、容易に入手するのは困難である。マンノースは、酵母、細菌、植物、および動物の細胞膜および細胞壁の構成成分として存在するほか、糖蛋白質の複合型糖鎖中に多量に含まれ、遊離型は稀にしか存在しないからである。
従来、マンノースは、マンノースを含有する多糖類(グルコマンナン、ガラクトマンナンなど)を酸分解あるいは酵素分解する、または、高温下で、モリブデン酸塩を触媒としてグルコースを処理することにより製造されている。しかし、いずれの方法においても製造コストが高く、収率も高くない。
そこで、原料として安価なフラクトースにマンノースイソメラーゼを作用させる方法、又はグルコースにグルコースイソメラーゼを作用させて、グルコースをフラクトースに変換させた後、フラクトースにマンノースイソメラーゼを作用させる方法が考えられている。
しかし、微生物由来のマンノースイソメラーゼは耐熱性に劣る(最適温度が35〜40℃)のに加え、フラクトースからマンノースへの変換効率は低く、工業的利用には適さないという欠点がある。他方、耐熱性の酵素であれば、雑菌の汚染が少なく、反応速度も速いと考えられるので、耐熱性のマンノースイソメラーゼが望まれている。このような耐熱性で変換効率の高いマンノースイソメラーゼとしては、シュードモナス(Pseudomonas)属微生物由来のマンノースイソメラーゼが特開平6−292578号公報に、サーモモノスポラ(Thermomonospora)属微生物由来のマンノースイソメラーゼが特開平11−75836号公報に記載されている。
本発明者らは、新規な耐熱性が高くかつ変換効率の高い微生物由来のマンノースイソメラーゼを見いだした。この酵素の実用化には、酵素を分泌する微生物の生産性の向上が鍵を握っている。そこで、遺伝子配列などの遺伝子情報を利用し、これを遺伝子工学的に改変して、マンノースイソメラーゼの生産性を飛躍的に高める試みを行った。
すなわち、本発明は、耐熱性と変換効率に優れたマンノースイソメラーゼおよびその改変体を遺伝子工学的に提供することを目的とする。それによって、本発明は、優れたマンノースの製造方法を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明は、配列番号2の第20〜434番目のアミノ酸配列、および該アミノ酸配列において1または2以上のアミノ酸が置換され、欠失され、あるいは付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。
また、本発明は、配列番号2の第1〜434番目のアミノ酸配列、第16〜434番目のアミノ酸配列、第33〜434番目のアミノ酸配列、第40〜434番目のアミノ酸配列、第41〜434番目のアミノ酸配列、第78〜434番目のアミノ酸配列、第87〜434番目のアミノ酸配列、第88〜434番目のアミノ酸配列、第96〜434番目のアミノ酸配列、第110〜434番目のアミノ酸配列、第129〜434番目のアミノ酸配列、第135〜434番目のアミノ酸配列、第147〜434番目のアミノ酸配列、第149〜434番目のアミノ酸配列、第161〜434番目のアミノ酸配列、第165〜434番目のアミノ酸配列、および前記各アミノ酸配列において1または2以上のアミノ酸が置換され、欠失され、あるいは付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに関する。
また、本発明は、前記いずれかのポリペプチドを有するマンノースイソメラーゼに関する。
さらに、本発明は、前記いずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子に関する。
また、本発明は、前記いずれかのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子を含有し、マンノースイソメラーゼを発現する、マンノースイソメラーゼ発現ベクターに関する。
さらに、本発明は、前記発現ベクターを有する組換え宿主に関する。
また、本発明は、前記組換え宿主を培養する工程を含む、マンノースイソメラーゼの生産方法に関する。
また、本発明は、前記ポリペプチドからなるマンノースイソメラーゼとフラクトースとを反応させる工程を含む、マンノースの製造方法に関する。
そして、本発明は、グルコースとグルコースイソメラーゼとを反応させる工程、および得られた反応生成物と前記ポリペプチドからなるマンノースイソメラーゼとを反応させる工程を含む、マンノースの製造方法に関する。
発明を実施するための最良の形態
(マンノースイソメラーゼ活性を有するポリペプチド)
本発明は、配列番号2の第20〜434番目のアミノ酸配列、および該アミノ酸配列において1または2以上のアミノ酸が置換され、欠失され、あるいは付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、本発明のポリペプチドということがある)に関する。また本発明は、配列番号2の第1〜434番目のアミノ酸配列、第16〜434番目のアミノ酸配列、第33〜434番目のアミノ酸配列、第40〜434番目のアミノ酸配列、第41〜434番目のアミノ酸配列、第78〜434番目のアミノ酸配列、第87〜434番目のアミノ酸配列、第88〜434番目のアミノ酸配列、第96〜434番目のアミノ酸配列、第110〜434番目のアミノ酸配列、第129〜434番目のアミノ酸配列、第135〜434番目のアミノ酸配列、第147〜434番目のアミノ酸配列、第149〜434番目のアミノ酸配列、第161〜434番目のアミノ酸配列、第165〜434番目のアミノ酸配列、および前記各アミノ酸配列において1または2以上のアミノ酸が置換され、欠失され、あるいは付加されたアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、本発明のポリペプチドということがある)に関する。本発明のポリペプチドには、上記のアミノ酸配列と少なくとも約65%の相同性、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。
本発明のポリペプチドは、アグロバクテリウム・ラディオバクター(Agrobacterium radiobacter)M36と同定された菌株から得られるDNA、およびそのDNAの改変DNAから生産される。このアグロバクテリウム・ラディオバクターM36は、広島県の土壌から単離され、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所、特許微生物寄託センター、日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号にFERM BP−7206として寄託されている(原寄託日平成11年4月23日)。
この微生物により生産される新規な耐熱性で変換効率の高いマンノースイソメラーゼは、以下の性質:
(1)作用
フラクトースとマンノース、およびリキソースとキシルロースとを相互変換する。
(2)基質特異性
D−マンノース、D−フラクトース、D−リキソース、およびD−キシルロースに作用し、D−グルコース、D−ガラクトース、L−アラビノース、D−キシロース、D−リボース、L−ラムノース、L−フコース、およびD−フコースには実質的に作用しない。
(3)最適温度
55〜60℃
(4)最適pH
7〜9
(5)安定温度
約60℃まで
(6)安定pH
約6〜10
(7)分子量
約140,000(ゲル濾過HPLC)
(8)等電点:約5.2(等電点電気泳動)
(9)Caイオンによる熱安定化:実質的に認められない
(10)マンノースに対するKm値:約0.01M
を有している。
このマンノースイソメラーゼは、配列番号2の第20〜434番目のアミノ酸(415個)配列を有するポリペプチドから構成される。このアミノ酸配列に相当するDNA配列は、配列番号1の第314〜1558番目の配列である。
(DNA配列の取得)
配列番号1に記載の染色体DNAは、以下のようにして得られる。まず、アグロバクテリウム・ラディオバクターM36株を培養し、細胞壁溶解酵素、超音波処理などを用いて菌体を破壊し、常法により染色体DNAを抽出する。そして、いわゆるショットガンクローニングする。あるいは、アグロバクテリウム・ラディオバクターM36株を培養し、マンノースイソメラーゼを単離、精製して、そのアミノ酸配列の一部を決定し、そのDNA配列を合成し、これをプローブとして染色体DNAから単離するか、あるいは、アミノ酸配列の一部のDNA配列をプライマーとしてPCR法を用いてDNAを増幅する、またはこれらの方法を組合せて得られる。また、配列決定後、DNAを化学合成してもよい。
ショットガンクローニングは、当業者に周知の方法であり、例えば、前記得られた染色体DNAをSau3AIのような4塩基認識の制限酵素で部分加水分解し、適切な大きさ(例えば5〜10kbp)のDNA断片を回収する。回収したDNA断片を、適切な発現ベクターまたはプラスミド(例えば、pBluescriptII SK(+))をBamHI、HindIIIなどの適切な制限酵素切断部位に挿入し、これを導入して大腸菌を形質転換し、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシドおよびイソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシドを含む寒天培地で培養し、白色コロニーを選択する。得られた白色コロニーを、例えば、0.3%フラクトースと2.5mg/mlリゾチームを含むグルコースCII−テストキットに懸濁して、37℃で一晩静置し、顕著な発色があったコロニーを選別する。
得られた形質転換株がマンノースイソメラーゼを発現しているか否かは、マンノースイソメラーゼの活性を測定することにより、確認される。例えば、イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシドを250μg/ml、アンピシリンを100μg/ml含有するLB培地で形質転換株を植菌し、37℃で適切な時間培養する;培養後、遠心分離により菌体を回収し、洗浄後、適切な緩衝液に懸濁して超音波破砕を行う;超音波破砕液を遠心分離して上清を得、これを粗酵素液とする;ついで、この粗酵素液と20%フラクトース溶液とを、例えば、50℃で24時間反応させ、HPLCでマンノースの生成を確認する;という方法である。
上記の方法により、マンノースイソメラーゼ活性を発現する形質転換体が得られる。この形質転換体からDNA配列を回収することにより、マンノースイソメラーゼ活性を発現するポリペプチドをコードするDNA配列(例えば、配列番号1の配列)が得られる。
いったんマンノースイソメラーゼのポリペプチドをコードするDNA配列が得られると、DNA配列が改変され、マンノースイソメラーゼ活性を発現する改変ポリペプチドが得られる。
アミノ酸配列の1または2以上の置換、欠失、付加などを有する改変ポリペプチドは、当業者に周知の、例えば、部位特異的突然変異、部位特異的変異誘発、部位特異的組換えなどの方法でDNA配列を改変して得られる。例えば、アミノ酸配列の1または2以上の置換、欠失、付加などを有する短いDNA配列をプライマーとして用い、配列番号1の配列をテンプレートとして、PCRを行うことにより、容易に改変ポリペプチドをコードするDNA配列が得られる。例えば、配列番号3、4は、N末端にアミノ酸が付加されたポリペプチド、および配列番号6〜19はN末端のアミノ酸が欠失したポリペプチドを得る場合のプライマーの例である。
得られたDNA配列を発現ベクターに組み込み、例えば、上述のショットガンクローニングと同じスクリーニング系でマンノースイソメラーゼ活性をスクリーニングすることにより、アミノ酸配列の1または2以上の置換、欠失、付加された、マンノースイソメラーゼ活性を発現するポリペプチドをコードするDNA配列が得られる。
(発現ベクターの作成)
得られたDNA(以下、本発明のDNAということがある)は、発現ベクターに導入され、マンノースイソメラーゼ発現ベクターが作成される。通常、プロモーターの下流の適切な部位にクローニング部位を有するプラスミドが使用され、このプロモーターによって、本発明のポリペプチドが発現され、マンノースイソメラーゼが発現される。
本発明の発現ベクターの作成に用いられるプラスミドあるいはベクターとしては、自律複製可能なベクターが好ましく、導入する宿主を考慮して適切な発現ベクターを選択すればよい。大腸菌を宿主とする場合は、例えば、pBR322、pBluescriptII SK(+)、pUC18、pKK223−3、pCR2.1が好適であり、枯草菌を宿主とする場合は、pHY300PLK、pUB110などが好適である。その他のベクターとして、pLex、pJL3、pSW1、pSE280、pSE420などのプラスミドベクター、λgt11、λZAPなどのファージベクターが挙げられる。
プラスミドあるいはベクターは、適切な制限酵素切断部位、例えば、BamHI、HindIII、EcoRI切断部位等をクローニングサイトとして有していることが好ましく、マルチクローニングサイトであることがさらに好ましい。このクローニングサイトに適合する制限酵素で切断したDNA断片を導入することにより、容易に発現ベクターが構築される。
発現ベクターは、マンノースイソメラーゼを分泌するように設計してもよい。分泌のために、予め宿主のリーダーペプチドをコードする配列と本発明のポリペプチドをコードする配列とをイン−フレームで結合させておくか、プロモーターにリーダー配列を結合させておき、そのリーダー配列に本発明のポリペプチドをコードする配列を直結させることにより、本発明のポリペプチドを分泌させることができる。リーダーペプチド配列と本発明のポリペプチドの結合は、例えば、部位特異的突然変異などの、当業者に周知の方法で行われる。
(組換え宿主によるマンノースイソメラーゼの発現)
得られた発現ベクターは、当業者に周知の方法で宿主に導入される。宿主としては、大腸菌、枯草菌、放線菌などの原核細胞、酵母、糸状菌などの真核細胞、動物細胞、植物細胞などが挙げられる。導入方法は、当業者が通常用いる方法、例えば、形質転換、形質導入、エレクトロポレーション、細胞融合などが用いられる。
得られた組換え宿主は、ついで、培養され、本発明のポリペプチドが生産され、会合してマンノースイソメラーゼ活性を発現する。リーダーペプチド配列を用いた場合、ポリペプチドが菌体外(ペリプラズムを含む)に分泌され、会合してマンノースイソメラーゼ活性が生じる。
(マンノースの製造方法)
マンノースイソメラーゼは、菌体内あるいはペリプラズムに存在する場合は、菌体を細胞壁溶解酵素処理、超音波処理などにより溶菌して回収し、菌体外に分泌された場合は、培養液より回収される。回収されたマンノースイソメラーゼはそのまま、あるいは常法により精製して、マンノースの製造に用いられる。
マンノースイソメラーゼが菌体内あるいはペリプラズムに存在する場合は、細胞を固定化して、固定化酵素として用いてもよい。
マンノースイソメラーゼを用いるマンノースの製造方法には、2通りある。一つは、本発明のポリペプチドとフラクトースとを反応させる方法であり、他の一つは、グルコースとグルコースイソメラーゼとを反応させた反応生成物に本発明のポリペプチドを反応させる方法である。
フラクトースからマンノースを製造する場合は、フラクトースを含有する溶液と本発明のポリペプチドからなるマンノースイソメラーゼとを、適切なpH条件および温度条件下で反応させればよい。アミノ酸の置換、欠失、付加を有する改変されたポリペプチドからなるマンノースイソメラーゼは、最適温度、最適pHが改変前のマンノースイソメラーゼと異なる可能性もあるので、使用前に確認しておけばよい。一般的には、pHが約6〜10、温度が65℃以下で行うことが好ましい。
グルコースからマンノースを製造する場合、まず、グルコースとグルコースイソメラーゼとの反応を行い、反応生成物を単離して、この反応生成物とマンノースイソメラーゼとを反応させてもよい。あるいは、グルコースと、グルコースイソメラーゼと、マンノースイソメラーゼとを同時に混合して反応させてもよい。この場合、グルコースイソメラーゼは、マンノースイソメラーゼと最適pHおよび最適温度が近いものを選択することが必要となる。前記2つの方法は、酵素(必要に応じて微生物自体)を固定化して連続的に行うこともできる。
反応終了後、例えば、濾過、遠心分離などにより不純物を取り除いた後、活性炭、イオン交換クロマトグラフィー、膜濾過、濃縮などの、当業者が適宜用いる分離、精製プロセスを経て、マンノースが精製される。
(実施例)
以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこの実施例にのみ限定されるものではない。なお、本実施例で%というときは重量%を意味する。
(実施例1:マンノースイソメラーゼ遺伝子の取得)
(染色体DNAの調製)
LB液体培地(ポリペプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム0.5%(pH7.0))5mlにアグロバクテリウム・ラディオバクターM36株(FERM BP−7206)を植菌し、30℃、16時間振盪培養した。これを、100mlのLB培地を含む500mlのバッフル付きフラスコに移し、30℃、24時間培養し、遠心分離により菌体を回収した。
回収した菌体を0.1MのEDTAを含む0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した。この懸濁液にリゾチーム(和光純薬(株))を4mg/mlとなるように加え、37℃、30分間、穏やかに振盪した後、−80℃で30分間凍結乾燥した。解凍後、1%SDSと10mMのEDTAを含む0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)を加え、さらにプロテアーゼK(宝酒造(株))を0.5mg/mlとなるように加えて、37℃で6時間保温した。この処理液に1mMのEDTAを含む10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)(以下、TE緩衝液という)で飽和したフェノール溶液を加えて除蛋白処理を行い、上清を得た。上清に冷エタノールを加えて生成した染色体DNAの沈殿を回収し、これを70%エタノールに5分間浸した後、TE緩衝液に溶解した。この溶解液にRNaseA(シグマ(株))を10μg/mlとなるように加え、37℃、2時間反応させた。反応液にフェノールを加えて再度、除蛋白処理を行い、冷エタノールを加えて生成した染色体DNAの沈殿を回収した。得られた精製染色体DNAを70%エタノールに5分間浸した後、2mg/mlとなるようにTE緩衝液に溶解し、染色体DNA溶液とした。
(ショットガンスクリーニング:マンノースイソメラーゼを発現する形質転換体の選択)
染色体DNA溶液の1mlをとり、これに制限酵素Sau3AIを約40単位加えて37℃、1時間反応させて染色体DNAの部分加水分解物を得、アガロースゲル電気泳動法により、約5〜10kbpのDNA断片を回収した。
別途、プラスミドベクターpBluescriptII SK(+)を制限酵素BamHIで切断し、その0.1μgと回収したDNA断片1μgをDNA Ligation Kit(宝酒造(株))で連結し、組換えプラスミドを得た。これをコンピテントセル(Compitent high E.coli JM109(東洋紡績(株)))100μlに加え、氷冷下で30分間静置した後、42℃に加温し、SOC培地(2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl、2.5mM KCl、10mM MgCl2、20mMグルコース、pH7.5)を加えて37℃、1時間、インキュベートし、組換えプラスミドを大腸菌に導入した。
アンピシリン100μg/mlを含有するLB培地で形質転換株を選択した。形質転換株を、50μg/mlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシドおよび250μg/mlのイソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシドを含むLB寒天培地(pH7.0)で37℃、18時間培養し、白色コロニーを選択した。得られた白色コロニーを、0.3%フラクトースと2.5mg/mlリゾチームを含むグルコースCII−テストワコー(和光純薬(株))に懸濁して、37℃で一晩静置し、目視で顕著な赤色の発色があったコロニーを選別した。
得られた形質転換株がマンノースイソメラーゼを発現しているか否かを以下のようにして確認した。イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシドを250μg/ml、アンピシリンを100μg/ml含有するLB培地に形質転換株を植菌し、37℃で24時間培養した。培養終了後、遠心分離により菌体を回収し、25mlの100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で2回洗浄した。10mlの同じリン酸緩衝液に菌体を懸濁して超音波破砕を行い、遠心分離して上清を得、これを粗酵素液とした。この粗酵素液と20%フラクトース溶液とを、50℃で24時間反応させ、HPLCでマンノースの生成を確認した。HPLCの条件は以下の通りである。
ポンプ機種:日本分光(株)製 PU−1580
カラム:資生堂(株)製 CAPCELL PAK NH2 UG80
検出器:昭和電工(株)製 RI−71型示差屈折計
溶離液:アセトニトリル:水=80:20
流速:1.0ml/min
HPLCの結果を図1に示す。図中、Fruはフラクトースを、Manはマンノースをそれぞれ表す。この形質転換株は、フラクトースからマンノースを生成すること、すなわちマンノースイソメラーゼ活性を有していることが確認され、1−42−8株と命名した。
(推定マンノースイソメラーゼ遺伝子の取得と配列決定)
得られた形質転換体1−42−8株を、100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地に植菌し、37℃、24時間培養した。遠心分離により菌体を採取し、アルカリ法により組換えプラスミドを菌体外に溶出させ、常法により精製し、分析したところ、組換えプラスミドは約10kbpであり、約7kbpのDNA断片が導入されていた。この組換えプラスミドをpMI1428と命名した。組換えプラスミドpMI1428の制限酵素切断地図を図2に示す。図2においてMIは、マンノースイソメラーゼを表す。
組換えプラスミド(pMI1428)をPCRで増幅し、配列を決定した。PCRに用いた5’プライマーは配列番号20の5’−gccaagcgcgcaattaaccc−3’(Bluescript MCS5’)であり、3’プライマーは配列番号21の5’−catgctcgagctattggccgcagagcgcct−3’である。pMI1428を1μg取り、これに前記プライマー0.02μgとビッグダイ・ターミネーター・サイクル・シーケンシング・エフエス・レディー・リアクションキット(パーキンエルマー・アプライド・バイオシステムズ(株))のプレミックス液8μlをそれぞれ加えた後、さらに適量の水を加えて全量を20μlとした。この混合液をタカラ・サーマルサイクラー・MP型により94℃で10秒間、50℃で5秒間、さらに60℃で4分間反応を行った。これを25回繰り返し、相補鎖DNAを含む反応物を得た。その後、セントリセップ・スピンカラム(パーキンエルマー・アプライド・バイオシステムズ(株))を用いて反応物を精製し、真空乾燥した。得られた粉状物にテンプレート・サプレッション・リエージェント(パーキンエルマー・アプライド・バイオシステムズ(株))を20μl加えてよく混合し、95℃で2分間加熱後、急冷したものをシーケンシングサンプルとした。これをABI PRISM 310ジェネティックアナライザー(パーキンエルマー・アプライド・バイオシステムズ(株))を用いて解析した。
得られた約7.0kbpの配列データを解析し、蛋白質をコードする配列を含有する約1.5kbpの断片を取得した。この1.5kbp断片のDNA配列は、配列番号1に示されている。この配列番号1の第314〜316番目のatgが開始コドン、そして、第1559〜1561番目のtaaが終止コドンと考えられる。従って、第314〜1558番目がマンノースイソメラーゼの構造遺伝子であり、配列番号2のアミノ酸配列を有していると推定される。そして、配列番号1の第313番目まではプロモーター領域と推定される。
(マンノースイソメラーゼ遺伝子の発現の確認)
配列番号1の第314〜316番目のatgから始まるアミノ酸配列をコードする配列番号22(5’−aaaggatcccatgcccgaagacgatcacaa−3’)の配列を5’−プライマーとし、配列番号1の第1559〜1561番目の終止コドンを含む配列番号19(C1:5’−aaaaagcttttaataatccccgccgcttt−3’)の配列を3’−プライマーとして、pMI1428をテンプレートにして、上記と同様の条件でPCRを行った。反応後DNAを回収し、制限酵素BamHIで切断した。
このDNA0.1μgと、予め制限酵素BamHIおよびHindIIIで切断したプラスミドベクターpBluescriptII SK(+)の0.1μgとをDNA Ligation Kit(宝酒造(株))で連結し、組換えプラスミドを得た。この組換えプラスミドは、β−ガラクトシダーゼのN末端の33アミノ酸がN末端に融合したマンノースイソメラーゼを発現する。
組換えプラスミドを上記のショットガンクローニングと同様の方法で大腸菌に導入し、得られた形質転換株をグルコースCII−テストワコー(和光純薬(株))に懸濁して、37℃で一晩静置し、目視で顕著な発色があったコロニーを選別し、マンノースイソメラーゼを生産することをHPLCで確認して、形質転換株を取得した。この結果、配列番号1の第314〜1558番目のDNA配列(すなわち、配列番号2の第20〜434番目のアミノ酸配列)が、マンノースイソメラーゼ構造遺伝子であると推定された。
(実施例2:マンノースイソメラーゼのアミノ酸欠失、付加改変体の作成と活性発現)
以下のN1〜16(配列番号3〜18)を5’−プライマーとし、C1(配列番号19)を3’−プライマーとして用いて、マンノースイソメラーゼ改変体を得た。
N1〜N16とC1とを組み合わせて、実施例1で得た染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。PCRキットは、TaKaRA ExTaq(宝酒造(株))である。PCR反応条件は、93℃で2分、95℃で1分、55℃で1分30秒、72℃で3分のサイクルを30回繰り返し、最後に72℃で15分間保温した。それぞれの反応液に冷エタノールを加えてDNAを沈殿させ、回収した。
プライマーN1(配列番号3)とC1(配列番号19)を用いてPCRを行い、発現ベクターpN1C1を作成する例を、図3で説明する。アグロバクテリウム・ラディオバクターM36株の染色体DNA(1.5kbp断片)をテンプレートとし、N1とC1とをプライマーとしてPCR産物を得た。このPCR産物を、まず制限酵素XbaIで切断し、ついでS1ヌクレアーゼを用いて末端を平滑化した後、制限酵素HindIIIで消化した。
他方で、市販のベクターpTrc99A(ファルマシア製)を、まずNcoIで切断し、S1ヌクレアーゼで平滑末端化し、ついで、HindIIIで切断した。このHindIII部位を有するプラスミドに、上記得られたPCR産物のHindIII断片を組み込み、発現ベクターpN1C1を作成した。
同様の操作をN2〜N16とC1のプライマーを組合せて用いて、それぞれの発現ベクターを作成した。これらの各発現ベクターからは、末端にメチオニンを有するポリペプチドが生じる。これらの発現ベクターを、それぞれ、前記と同様の方法でコンピテントセルE.coli JM109(宝酒造(株))に導入し、形質転換体を得た。
得られたそれぞれの形質転換大腸菌は、前記グルコースCII−テストワコー(和光純薬(株))に懸濁して、37℃で一晩静置すると顕著な発色があり、HPLCでマンノースを生産していることが確認された。表1に用いたプライマー、生じる発現ベクターおよびその発現ベクターで形質転換された大腸菌の命名、およびマンノースイソメラーゼの活性の有無、および生じるポリペプチドを一覧表にして示す。表1のポリペプチドの欄において、数字は配列番号2の配列のアミノ酸の番号を示し、Met+はその欄のポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されていることを示す。なお、プラスミドを含有しないE.coli JM109は、マンノースイソメラーゼの活性を発現しなかった。
以上から、配列表の配列番号2の、第20〜434番目のアミノ酸配列が天然のマンノースイソメラーゼのポリペプチドと考えられるが、このN末端にアミノ酸を19個付加した場合、および145個のアミノ酸をN末端から欠失させた場合、いずれもマンノースイソメラーゼ活性が発現した。従って、少なくとも第165〜434番目のアミノ酸配列があれば、マンノースイソメラーゼ活性は認められる。
(実施例3:マンノースイソメラーゼの点突然変異体の作成)
点突然変異は、配列番号2の第208番目のロイシンをバリンに変化させることにより行った。点突然変異は、Mutan−Express Kmキット(宝酒造(株))(以下、単に「変異キット」という)を用い、製造者の取扱説明書に従って行った。
図4〜7に基づいて、点突然変異体の作成を順に説明する。実施例2(図3)で得られた組換えDNA(発現ベクターpN1C1)の5μgを、図4に示すように、制限酵素PstIおよびHindIIIで切断した後、アガロースゲル電気泳動法により、約1.1kbpのPstI−HindIII DNA断片を回収した。他方、変異キット中のプラスミドpKF18kを、制限酵素PstIおよびHindIIIで切断し、その0.1μgと、前記1.1kbpのDNA断片1μgとをDNA Ligation Kit(宝酒造(株))を用いて連結し、組換えプラスミドを得た。得られた組換えプラスミドをコンピテントセル(Compitent high E.coli JM109(東洋紡績(株)))100μlに加え、氷冷下で30分間静置した後、42℃に加温し、SOC培地を加えて37℃、1時間、インキュベートし、組換えプラスミドをE.coli JM109に導入した。ついで、カナマイシン100μg/mlを含有するLB寒天培地で37℃、18時間培養し、形質転換株を選択した。得られた形質転換株を、カナマイシン100μg/mlを含有するLB液体培地で37℃、18時間培養し、菌体を遠心分離にて回収後、アルカリ法にて組換えDNAを溶出させ、精製した。得られた組換えプラスミドをpKFN1C1と命名した。
このpKFN1C1は、カナマイシン耐性遺伝子(Km)にアンバー変異(am2)を有しており、pKFN1C1を導入されたサプレッサー+のE.coliは、カナマイシン耐性となるが、pKFN1C1を導入されたサプレッサー−のE.coliは、カナマイシン感受性となる。
つぎに、変異導入プライマー 5’−cttcggtgacgtgcatatt−3’(配列番号23:5’末端がリン酸化されている)を用いて、点突然変異の導入を行った。図5にその模式図を示す。図5に基づいて説明すると、まず、この変異導入プライマー50pmolと変異キット中の選択プライマー5pmolとを0.1μgのpKFN1C1に加え、100℃で3分間、熱変性させ、ついで氷中で5分間静置してアニーリングを行った。
なお、選択プライマーは、カナマイシン耐性遺伝子のアンバー変異を修復させる配列を有しており、変異導入プライマーとともにpKFN1C1とアニールし、相補鎖を合成したときには、変異導入プライマー配列と選択プライマー配列とが同一DNA鎖中になるように設計されている。
このアニールしたDNAに、DNAリガーゼ60単位とDNAポリメラーゼ1単位とを加え、25℃、2時間、組換えプラスミドの複製を行った。この操作により、図5(3)に示すような、変異導入プライマーの配列と選択プライマーの配列とを同時に有する配列とpKFN1C1の配列のヘテロな二本鎖構造を有する組換えプラスミドが得られる。
この得られた組換えプラスミドを、am2サプレッサー遺伝子を有する(サプレッサー+の)E.coli BMH71−18mutSコンピテントセル(宝酒造(株))100μlに加えて、氷冷下、30分静置した後、42℃に加温し、SOC培地を加えて37℃、1時間、インキュベートした。ついで、カナマイシン100μg/mlを含有するLB培地で37℃、18時間培養し、生育してきた形質転換株を集め、常法によりDNAを精製した。
得られたDNAは、図6の(4)に示すような、点突然変異を有さず、かつ、カナマイシン遺伝子にアンバー変異を有するプラスミド(すなわち、pKFN1C1)と、点突然変異を有し、かつam2変異が回復された(野生型の)カナマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドpKFN1C1LVが主として含まれているDNA混合物と考えられる。
このプラスミドpKFN1C1とプラスミドpKFN1C1LVとの混合物をE.coli MV1184コンピテントセル(宝酒造(株))100μlに加えて、氷冷下、30分静置した後、42℃に加温し、SOC培地を加えて37℃、1時間、インキュベートした。ついで、カナマイシン100μg/mlを含有するLB寒天培地で37℃、18時間培養し、生育してきた形質転換株を取得した。このE.coli MV1184株はサプレッサー−であるので、プラスミドpKFN1C1で形質転換された株は生育できないため、得られた形質転換株はプラスミドpKFN1C1LVを有する株である。
形質転換株を集め、DNAを精製して、PstI−HindIII断片を回収し、変異導入プライマーとC1プライマーを用いてPCRを行い、実施例1に準じてDNA配列を決定した。プラスミドpKFN1C1LVは、図6(5)に示されるようなプラスミドであり、マンノースイソメラーゼ遺伝子部分には所望の変異以外に変異が導入されていないことが確認された。
ついで、目的の点突然変異が導入されたマンノースイソメラーゼを発現すプラスミドを構築した。図7にその模式図を示す。プラスミドpKFN1C1LVをPstIとHindIIIで切断し、点突然変異を有するPstI−HindIIIのDNA断片を単離した。他方で、pN1C1をPstIとHindIIIで切断し、高分子量のベクターDNA断片を取得した。1μgの単離した点突然変異を有するPstI−HindIIIのDNA断片と、0.1μgのPN1C1のベクターDNA断片とをDNA Ligation Kit(宝酒造(株))を用いて連結し、組換えプラスミドを得た。この組換えプラスミドをコンピテントセル(Compitent high E.coli JM109(東洋紡績(株))100μlに加え、氷冷下で30分間静置した後、42℃に加温し、SOC培地を加えて37℃、1時間、インキュベートして、E.coli JM109に導入した。ついで、アンピシリン100μg/mlを含有するLB寒天培地で37℃、18時間培養し、形質転換株を選択した。得られた形質転換株を、アンピシリン100μg/mlを含有するLB液体培地で37℃、18時間培養し、菌体を遠心分離にて回収後、アルカリ法にて組換えDNAを溶出させ、精製し、図7に示す構造であることを確認した。得られた組換えプラスミドをpN1C1LVと命名した。
このようにして得られた形質転換体のマンノースイソメラーゼ活性を、実施例1と同様にして測定した結果を表2に示す。
表2に記載のように、変異型マンノースイソメラーゼ活性は野生型マンノースイソメラーゼとほぼ同等の活性を有していた。
(実施例4:マンノースイソメラーゼの精製およびN末端アミノ酸配列の決定)
(マンノースイソメラーゼの精製)
アグロバクテリウム・ラディオバクターM36株(FERM BP−7206)からのマンノースイソメラーゼの精製およびN末端アミノ酸配列の決定を、以下のように行った。
2×LB液体培地(バクトトリプトン2%、酵母エキス1%、塩化ナトリウム1%(pH7.0))100mlを、500mlバッフル付きマイヤーフラスコに入れ、121℃、20分間オートクレーブ殺菌した。これに、アグロバクテリウム・ラディオバクターM36株(FERM BP−7206)を1白金耳植菌し、30℃にて16時間振盪培養して、種培養液とした。
容量5リットルのファーメンターに、種培養の場合と同じ組成の培地約3リットルを入れて滅菌した。温度を30℃にした後、これに種培養液3v/v%を接種し、30℃、pH7.0に保持しながら24時間通気撹拌培養し、遠心分離によって菌体を回収した。
回収した菌体を、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で2回洗浄した後、この緩衝液に懸濁した。この懸濁液を、ガラスビーズを用いて破砕し、遠心分離によって破砕された菌体を除去して、上清を得た。この上清に、硫酸アンモニウムを40%〜60%の飽和溶液になるように溶解し、生じた蛋白質の沈殿を遠心分離によって回収した。回収した蛋白質を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した後、この緩衝液に対して透析を行って、粗酵素を得た。
粗酵素を、イオン交換クロマトグラフィーによって、以下のように部分精製した。すなわち、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)によって平衡化したTSKgelDEAEトヨパール650M(東ソー(株))を詰めたカラムに、粗酵素を添加して、5カラム容量の0〜0.5M NaClの上昇濃度勾配によって溶出し、分画分取した。活性のある画分を合わせ、濃縮し、脱塩して、部分精製酵素液を得た。
ついで、この部分精製酵素液に対して以下のように疎水クロマトグラフィーを行った。0.75M硫酸アンモニウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)によって平衡化したRESOURCE PHE(アマシャム・ファルマシア(株))疎水カラムに、部分精製酵素液を添加して、20カラム容量の0.75M〜0M硫酸アンモニウム溶液の下降濃度勾配によって溶出し、分画分取した。活性のある画分を合わせて、濃縮し、脱塩し、さらに部分精製した酵素を得た。
さらに、イオン交換クロマトグラフィーを以下のように行うことによって、精製酵素を得た。0.2M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)によって平衡化したMonoQ HR 10/10(アマシャム・ファルマシア(株))カラムに、部分精製酵素を添加し、20カラム容量の0.2〜0.4M NaClの上昇濃度勾配によって溶出し、分画分取した。活性のある画分を回収して精製酵素とし、電気泳動によってその純度を調べた。
得られた精製酵素について、常法に従ってSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動および等電点電気泳動を行った。ゲルをクーマシーブリリアントブルー(CBB)で染色したところ、いずれの電気泳動においても一本のバンドのみを検出し、精製酵素が単一の蛋白質であることを確認した。これを、精製マンノースイソメラーゼ酵素液とし、N末端アミノ酸配列分析の試料とした。
(N末端アミノ酸配列の決定)
得られた精製マンノースイソメラーゼ酵素液を使用して、常法に従ってSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。PVDF膜に蛋白質を転写後、CBBによって染色して蛋白質のバンドを切り出した。これを、常法に従って、気相プロテインシークエンサーPI−2020(東ソー(株)製)を使用して分析した。その結果、精製マンノースイソメラーゼは、N末端に配列番号2の第20〜24番目に示すアミノ酸配列、すなわち、Met−Pro−Glu−Asp−Aspを有していた。
産業上の利用可能性
本発明のマンノースイソメラーゼのポリペプチドは、耐熱性、変換効率に優れている。このポリペプチドの遺伝子配列を提供することにより、種々のマンノースイソメラーゼ改変体が、安価に、大量に得られるため、マンノースが安価に生産される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、マンノースの生成を示すHPLCである。
図2は、プラスミドpMI1428の制限酵素地図を示す図である。
図3は、発現ベクターpN1C1作成の模式図である。
図4は、点突然変異体の作成の模式図である。
図5は、点突然変異体の作成の模式図である。
図6は、点突然変異体の作成の模式図である。
図7は、点突然変異体の作成の模式図である。
Claims (7)
- 配列番号2の第1〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号2の第16〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号2の第20〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号2の第33〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第40〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第41〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第78〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第87〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号2の第96〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第110〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号2の第129〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第135〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第147〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第149〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第161〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端にメチオニンが付加されたポリペプチド、配列番号2の第165〜434番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または配列番号2の第1〜434番目のアミノ酸配列において第208番目のロイシンがバリンに変化したアミノ酸配列からなるポリペプチド、からなるマンノースイソメラーゼ。
- 請求項1に記載のマンノースイソメラーゼをコードする遺伝子。
- 請求項2に記載の遺伝子を含有し、マンノースイソメラーゼを発現する、マンノースイソメラーゼ発現ベクター。
- 請求項3に記載の発現ベクターを有する組換え宿主。
- 請求項4に記載の組換え宿主を培養する工程を含む、マンノースイソメラーゼの生産方法。
- 請求項1に記載のマンノースイソメラーゼとフラクトースとを反応させる工程を含む、マンノースの製造方法。
- グルコースとグルコースイソメラーゼとを反応させる工程、および得られた反応生成物と請求項1に記載のマンノースイソメラーゼとを反応させる工程を含む、マンノースの製造方法。
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