JPH06292578A - 耐熱性マンノースイソメラーゼ及びその製造法並びにこれを用いたマンノースの製造法 - Google Patents

耐熱性マンノースイソメラーゼ及びその製造法並びにこれを用いたマンノースの製造法

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JPH06292578A
JPH06292578A JP5107438A JP10743893A JPH06292578A JP H06292578 A JPH06292578 A JP H06292578A JP 5107438 A JP5107438 A JP 5107438A JP 10743893 A JP10743893 A JP 10743893A JP H06292578 A JPH06292578 A JP H06292578A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、新規な耐熱性マンノースイソメラー
ゼ及びその製造法並びにそれを用いたマンノースの製造
法を提供する。 【構成】シュードモナス・エスピー N-25菌株の生産す
る新規耐熱性マンノースイソメラーゼで当該酵素は熱安
定性に優れ、60℃でフラクトースをマンノースに変換で
き、又、pH6〜7において反応を行うことができる。よ
って反応中、微生物汚染の危険がなく、酵素を有効に利
用し、且つ、又副反応が少なく、純度の高いマンノース
を収率よく製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、D−マンノース(以
下、マンノースと記載)とD−フラクトース(以下、フ
ラクトースと記載)を相互変換する新規な耐熱性マンノ
ースイソメラーゼおよびその製造法並びにこれを用いる
マンノースの製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】マンノースは、マンニトールの原料とし
て、又、動物細胞培養原料としての用途がある。最近、
マンノースは腸内サルモネラ菌の増殖を阻止する作用の
あることが明らかになり、鶏など家禽類の飼料としての
利用が検討されている〔R. H.Brown, Fodstuff, June 1
2, 10(1989)〕。又、機能性を持つ食品素材としての利
用も考えられている。しかし、マンノース資源は少な
く、普通、木材、こんにゃくなどに含まれるグルコマン
ナンを酸分解して製造されるか、又は、モリブデン酸塩
を触媒として高温下でグルコースに作用させることによ
り製造させているが、現在、非常に高価な糖である。
【0003】発明者らはマンノースとフラクトースを相
互変換するマンノースイソメラーゼを用い、豊富、かつ
安価に製造させるフラクトースから製造する技術、及び
マンノースイソメラーゼとグルコースイソメラーゼ〔D
−グルコース(以下、グルコースと記載)とフラクトー
スを相互変換する酵素〕を組み合わせてグルコースから
直接マンノースを製造する技術を確立するため、耐熱性
マンノースイソメラーゼ生産菌の検索を行った。
【0004】マンノースイソメラーゼは、1956年、Pall
eroniとDoudoroffらにより、シュードモナス・サッカロ
フィラ(Pseudomonas saccharophila)に初めて見いだ
された〔J. Biol. Chem., 218, 535(1956)〕。その
後、本発明者らは、キサントモナス・ルブリリネアンス
(Xanthomonas rubrilineans)と同定した細菌がマンノ
ースイソメラーゼを生産することを認めた〔日本農芸化
学会誌,37,524(1963)、Agric. Biol. Chem., 28, 601
(1964)〕、及び、ストレプトマイセス・アエロコロリ
ゲネス(Streptomyces aerocolorigenes)も同酵素を生
産することを認め報告した〔工業技術院発酵研究所報
告, 28, 89(1966)〕。
【0005】しかし、これらの酵素は、いずれも最適温
度が35〜40℃と低く、熱安定性に劣るため、工業的に使
用するには問題があった。そこで、本発明者らは、先
に、工業的条件下でフラクトースをマンノースに変換で
きる熱安定性に優れたマンノースイソメラーゼ生産菌の
探索を行い、土壌中より分離し、シュードモナス・エス
ピーAM-9582と同定した細菌が、前記の公知マンノース
イソメラーゼに比べ極めて熱安定性に優れたマンノース
イソメラーゼを生産することを認め特許出願した(特開
平4-218370)。
【0006】本酵素の最適温度は約55℃(0.1M マンノ
ースの下で30分反応)にあり、比較的熱安定性に優れて
いるが、長時間の反応では50〜55℃が限度であり、反応
中に微生物汚染の危険があった。又、酸性側で不安定で
あり、pH6では殆ど使用することができなかった。更
に、マンノースをフラクトースよりも安価なグルコース
を原料とし、グルコースイソメラーゼと併用してマンノ
ースを製造するには、60℃の温度で使用できる必要があ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】このため、更に、熱及び
pHなどに対し安定性に優れたマンノースイソメラーゼ生
産菌の探索を行ってきた結果、新たに、これまで全く知
られていない耐熱性とpH安定性に優れた新規なマンノー
スイソメラーゼを生産する微生物をスクリーニングし
た。本菌は、その生理化学的性質からシュードモナス属
に属する菌と同定され、本発明者らは本菌をシュードモ
ナス・エスピーN−25と命名した。
【0008】本菌の生産するマンノースイソメラーゼ
は、これまで知られているどの酵素よりも、熱安定性に
優れ、最適温度は約10℃高い約65℃に認められた。そし
て、60℃の温度で長時間の使用が可能であることがわか
った。又、この酵素は、pH5〜11の極めて広いpH域で安
定であり、作用pHも広く、pH6〜7においてもよく作用
する酵素であることを認めた。すなわち、本酵素はグル
コースイソメラーゼの作用条件(pH6.5〜7、温度60
℃)と完全に一致しているため、グルコースイソメラー
ゼと併用してグルコースからマンノースの製造も好適に
実施することができることがわかった。本発明はこの知
見に基づいてなされたものである。
【0009】以下、本発明のマンノースイソメラーゼの
理化学的性質について記載する。 (a) 作用及び基質特異性 D−マンノースとD−フラクトースの間を相互変換す
る。D−グルコース、D−ガラクトース、D−キシロー
ス、L−キシロース、D−アラビノース、L−アラビノ
ース、D−リボース、L−ラムノース、D−リキソース
などの糖に対しては実質的に作用しない。
【0010】(b) 作用pH及び最適pH pH5〜10の範囲に作用するが、最適pHは約8に認められ
た(0.1Mマンノース、0.1M酢酸又はリン酸緩衝液の下
で、50℃、30分反応)(図1を参照)。尚、図中で破線
は特開平4-218370記載のマンノースイソメラーゼの場合
を示している。本酵素は、広いpH域で活性を示すことが
判る。
【0011】(c) 作用温度及び最適温度 約80℃まで作用するが、最適温度は約65℃に認められた
[0.1Mマンノース及び0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)
(図2を参照)]。尚、図中で破線は特開平4-218370記
載のマンノースイソメラーゼの場合を示している。本酵
素はより高い至適温度を有していることが判る。
【0012】(d) 安定pH pH約5〜11で安定である[(0.1M酢酸又はリン酸緩衝
液の下で、25℃で3時間)(図3を参照)]。尚、図中
で破線は特開平4-218370記載のマンノースイソメラーゼ
の場合を示している。本酵素は非常に広いpH域で安定で
ある。
【0013】(e) 熱安定性 62.5℃まで安定である[(0.05Mリン酸緩衝液(pH7.
0)、10分)(図4を参照)]。尚、図中で破線は特開
平4-218370記載のマンノースイソメラーゼの場合を示し
ている。
【0014】又、本発明の酵素は60℃で1時間加熱した
後も活性の低下は殆ど認められなかった。しかし、65
℃、10分の加熱で約70%失活した(図5を参照)。尚、
図中で白丸は60℃での安定性を示し、黒丸は65℃での安
定性を示す。
【0015】(f) 阻害剤 5×10-3MのHgCl2、AgNO3、CuSO4、NiCl2、p-クロロマー
キュリベンゾエート(pCMB)などにより強く阻害され
る。モノヨード酢酸による阻害は小さい。
【0016】(g) 安定化 Ca2+による熱失活の保護効果は殆ど認められない。
【0017】(h) Km(ミカエリス定数) マンノースに対するKmは約0.009Mである。
【0018】(i) 精製法 硫酸アンモニウムによる分画、DEAE-セファロースカラ
ムクロマトグラフィー及びセファデックスG-150ゲルろ
過などにより電気泳動的に均一まで精製することができ
る。
【0019】(j) 活性測定法 0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した0.2Mのマン
ノース液0.5mlに、適量の酵素を加え、水で全量を1.0ml
とし、50℃で反応させる。0.5M過塩素酸溶液を加えて
反応を止め、生成したフラクトースをシステイン−カル
バゾール法で定量する。この条件で、1分間に1μmol
のフラクトースを生成する酵素量を1単位とした。
【0020】以上の理化学的性質のうち、主要な性質に
ついて、公知のキサントモナス・ルブリリネアンス(Xa
nthomonas rubrilineans)のマンノースイソメラーゼ
(以下、酵素A)、ストレプトマイセス・アエロコロリ
ゲネス(Streptomyces aerovolorigenes)のマンノース
イソメラーゼ(以下、酵素B)及び発明者らが先に発明
し、特許出願したシュードナマス・エスピーAM-9582(P
seudomonas sp. AM-9582)のマンノースイソメラーゼ
(以下、酵素C)の性質と比較した結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】即ち、本発明の酵素が他の酵素と著しく異
なるところは、熱安定性において特に優れていることで
ある。即ち、本発明の酵素は60℃で1時間加熱後も殆ど
活性の低下は認められないこと(図5参照)、最適温度
が約65℃に認められること(図2参照)に対し、酵素
A、酵素B、酵素Cのいずれも50℃以上の温度では不安
定である。
【0023】又、本発明の酵素はpH安定性にも優れ、広
いpH域(pH5−11)で安定であり(図3参照)、pH6−
7においてもよく作用する。これに対し、比較的熱安定
性に優れたマンノースイソメラーゼとして、本発明者ら
が先に特許出願した酵素Cは、pH6以下では殆ど作用し
ない(図1の破線参照)。この性質は本発明の酵素を工
業的に利用する際において極めた有用な性質である。即
ち、フラクトースはアルカリ性下では不安定であり、特
に温度が高くなると、アルカリ異性化による副産物の
糖、有機酸、色素物質を生成する。このため、酸性下で
反応できることは、このような副産物の生成を少なく
し、純度の高いマンノースを高収量で得ることを可能と
する。又、反応後の糖液の精製コストを低下させる。
【0024】更に、本発明の酵素はマンノースに対する
Km値(ミカエリス定数)が他の酵素に比べて、著しく小
さい(0.009M)。即ち、本発明の酵素はマンノースに対
する親和性がこれまでの酵素よりも著しく大きい。
【0025】以上のように、本発明の酵素は、熱及びpH
に対する安定性、Km値などから新規な酵素と考えられる
もので、又、これまでの酵素に比べ工業的に有用な性質
を保持している。
【0026】本発明において使用されるシュードモナス
・エスピーN−25は新たに土壌から発見、分離されたも
のであり、その菌学的性質は下記の通りである。尚、本
菌はFERM P-13569として、工業技術院生命工学工業技術
研究所に寄託されている。
【0027】(1) 形態 大きさ:約0.6×1.5〜2.5μ 運動性:極鞭毛を有し運動する。 胞子の有無:無 グラム染色性:陰性 抗酸性:陰性
【0028】(2) 各培地における生育状態 肉汁寒天平板培養:円形、平滑、全縁、光沢有り、黄味
白色〜薄茶色 肉汁寒天斜面培養:中程度の生育、糸状、光沢有り、黄
味白色〜薄茶色 肉汁液体培養:培養初期一様に混濁、後に薄い皮膜を形
成 肉汁ゼラチン穿刺培養:ゼラチンを液化しない。 リトマス・ミルク培養:アルカリ性、リトマスを還元し
ない。
【0029】(3) 生理学的性質 硝酸塩の還元性:陽性 脱窒反応:陽性 MRテスト:陰性 VPテスト:陰性 インドールの生成:陰性 硫化水素の生成:陰性 デンプンの加水分解:陰性 クエン酸塩の利用:クリステセン培地とコーザー培地で
弱陽性 無機窒素源の利用:硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム
を利用する。 色素の形成:キングA培地、B培地で弱く薄茶色の水溶
液を生成する。 ウレアーゼ:陽性 チトクロームオキシダーゼ:陽性 カタラーゼ:陽性 生育温度の範囲:4℃で生育しない、42℃で生育する。
30〜37℃で最も良く生育する。 生育pHの範囲:pH5〜9で生育しpH7〜8で最も良く生
育する。 酸素の対する態度:好気性 O−Fテスト:酸化的 糖類からの酸生成:L−アラビノース、D−キシロー
ス、D−グルコース、D−マンノース、D−フラクトー
ス、D−ガラクトース、麦芽糖、ショ糖、乳糖、トレハ
ロース、D−ソルビット、D−マンニット、イノシット
およびグリセリンから酸を生成するが、ガスは生成しな
い。デンプンからは酸もガスも生成しない。 Tween80の分解:陰性 卵黄反応:陰性
【0030】以上の菌学的性質について、Bergey's Man
nual of Systematic Bacteriology、第2巻(1986)を
参照し、本菌はグラム陰性、桿菌、極鞭毛を有し運動す
る、好気性、カタラーゼ陽性、オキシダーゼ陽性、酸化
的に糖を分解することからシュードモナス(Pseudomona
s)属に属する菌と同定し、シュードモナス・エスピー
N−25と命名した。
【0031】本菌を培養して、マンノースイソメラーゼ
を生産するには、窒素源として、魚肉エキス、酵母エキ
スなど、通常、微生物の培養に使用される有機窒素源、
或いは塩化アンモニウム、硫酸アモニウム、尿素、硝酸
アンモニウムなどの無機窒素源が使用される。炭素源と
しては、フラクトース、グルコース、マンノース、ガラ
クトース、異性化糖、蔗糖、マルトース、キシロース、
ソルビトール、マンニトール、澱粉など、種々の糖、糖
アルコール及び澱粉やデキストリンなども使用すること
ができる。中でも、フラクトース、蔗糖、転化糖(又は
異性化糖)、ガラクトースなどは良好な炭素源である。
【0032】以上の窒素源と炭素源のほか、補足する培
地成分として、リン酸塩、マグネシウム塩、マンガン
塩、バリウム塩などが添加される。培養はpH5〜9、温
度25〜40℃で1−4日間程度行われる。
【0033】マンノスイソメラーゼは菌体内に生産され
る酵素である。培養後、ろ過又は遠心分離により菌体を
回収し、そのまま使用するか、又は超音波又は自己消化
法等により該酵素を抽出し使用する。抽出された酵素は
必要により、硫酸アンモニウム、アセトン、メタノー
ル、エタノールなどで沈殿し、精製濃縮し、又乾燥保存
する。工業的には、菌体をグルタールアルデヒド等固定
化処理するか、又は菌体から抽出した酵素を適当な担体
に固定化し、固定化酵素として使用することにより、本
酵素を有効に利用することができる。
【0034】本酵素を用い、フラクトースからマンノー
スを生成する反応は、10〜60%のフラクトース又はフラ
クトース含有液の下、pH6〜9、温度50〜60℃で行われ
る。
【0035】又、本酵素とグルコースイソメラーゼを用
いてグルコースからマンノースを生成する反応は、10〜
60%のグルコース又は異性化糖を基質とし、pH6〜9、
温度50〜60℃で行われる。平衡時においては、フラクト
ースの約25〜26%をマンノースに異性化することができ
る。
【0036】又、グルコース又は異性化糖を基質とし、
グルコースイソメラーゼとマンノースイソメラーゼで処
理するときは、40〜50%のグルコース、40〜50%のフラ
クトースと10〜15%のマンノースからなる混合物を製造
することができる。
【0037】なお、反応物の糖組成の分析は高速液体ク
ロマトグラフィーによるか、フラクトース分析はシステ
イン−カルバゾール法により行った。以下、実施例によ
り発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれ
ら実施例により限定されるものではない。
【0038】
【実施例】 実施例1 ポリペプトン 1%、表2記載の炭素源 2%、K2HPO4
0.2%、MgSO4・7H2O 0.05%からなる培地(pH6)4mlを
径18mmの試験管に入れ、常法により殺菌後、シュードモ
ナス・エスピーN−25(FERM P-13569)を接種し、30℃
で2日間振盪培養した。培養後、20KC超音波で細胞を破
砕し、抽出されたマンノースイソメラーゼを測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】表2から明らかなように、マンノースイソ
メラーゼの基質であるマンノースとフラクトースの他、
グルコース、蔗糖などによってもマンノースイソメラー
ゼが生産された。
【0041】実施例2 炭素源としてグルコース 2%、表3記載の窒素源 1%
(無機窒素源の場合;0.2%)、K2HPO4 0.2%、MgSO4・7
H2 0.05%からなる培地を用い、実施例1と同様に、4m
lを試験管に入れ、常法により殺菌後、シュードモナス
・エスピーN−25を接種し、30℃で2日間振盪培養し
た。培養後、実施例1と同様にして、生産されたマンノ
ースイソメラーゼ活性を測定した結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】表3から明らかなように、ペプトン、肉エ
キス、酵母エキスなどは良好な窒素源であった。
【0044】実施例3 肉エキス 1%、グルコース 2%、K2HPO4 0.2%、MgSO
4・7H2O 0.05%からなる培地(pH7.0)400mlを1L三角
フラスコに入れ、常法により殺菌後、シュードモナス・
エスピーN−25を接種し、30℃で2日間振盪培養した。
培養後、遠心分離により菌体を集め、水で洗滌後、水に
懸濁し、実施例1と同様にして、生産されたマンノース
イソメラーゼ活性を測定した。その結果、22.0単位/ml
からなるマンノースイソメラーゼ液20mlが得られた。
【0045】実施例4 実施例3により調製したマンノースイソメラーゼを用い
て、フラクトースからマンノースの生産条件について検
討した。
【0046】(1) 反応温度の影響:フラクトース各200m
gに、リン酸緩衝液(pH7.0)5×10-3M、マンノースイ
ソメラーゼ各0.2単位加え、水で全量1.0mlとし、50、55
及び60℃で2日間反応した。経時的に一定量を採り、生
成したマンノースを高速液体クロマトグラフィーにより
定量した。得られた結果を表4に示す〔数字は反応液中
のマンノース含量(%)を示している〕。
【0047】
【表4】
【0048】表4から明らかなように、60℃の反応が最
もよく、2日間、反応は効率的に進行し、約25%の収量
でマンノースが得られた。
【0049】(2) 反応pHの影響:フラクトース各200mg
に、リン酸緩衝液5×10-3M、マンノースイソメラーゼ
各0.2単位加え、水で全量1.0mlとし、pH6.3、7.0と7.5
で50℃で2日間反応した。経時的に一定量を採り、生成
したマンノースを高速液体クロマトグラフィーにより定
量した。得られた結果を表5に示す〔数字は反応液中の
マンノース含量(%)を示している〕。
【0050】
【表5】
【0051】表5から明らかなように、pH6.3において
も反応は効果的に進行した。
【0052】(3) 基質濃度の影響:フラクトース 50m
g、100mg、200mg、300mgあるいは400mgに、リン酸緩衝
液5×10-3M、マンノースイソメラーゼ各0.2単位加
え、水で全量1.0mlとし、pH7.0、50℃で2日間反応し
た。経時的に一定量を採り、生成したマンノースを高速
液体クロマトグラフィーにより定量した。得られた結果
を表6に示す〔数字は反応液中のマンノース含量(mg/m
l)を示している。また括弧内の数字は全糖中のマンノ
ース含量(%)を示している〕。
【0053】
【表6】
【0054】表6から明らかなように、基質濃度が高い
ほど、反応が効率的に進行し、いずれも、25−26%の収
量でマンノースが得られた。
【0055】実施例5 実施例3により得られたマンノースイソメラーゼとスト
レプトマイセス属のグルコースイソメラーゼを用い、グ
ルコースからマンノースの生産試験を行った。
【0056】グルコース 400mg、リン酸緩衝液(pH7.
0)5×10-3M、実施例3で調製したマンノースイソメ
ラーゼ 0.4単位及び市販のストレプトマイセス属グルコ
ースイソメラーゼ(フィンランド国 カルター社製造、
日本カルター社販売)0.2単位(0.1Mグルコース、0.01
M MgSO4の下で、60℃で反応し、1分間に1μMのフ
ラクトースを生成する酵素量を1単位とした)を加え、
水で全量1.0mlとし、60℃で2日間反応を行った。糖組
成は高速液体クロマトグラフ法により行った。その結
果、48.5mgのマンノースが得られた。
【0057】
【発明の効果】本発明のマンノースイソメラーゼは従来
よりも耐熱性でかつ広い作用pH域を有するため効率的に
反応が進行する優れた性質を有する。本発明によってマ
ンノースを豊富に安価に生産できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマンノースイソメラーゼと酵素Cの最
適pHを示す。
【図2】本発明のマンノースイソメラーゼと酵素Cの最
適温度を示す。
【図3】本発明のマンノースイソメラーゼと酵素CのpH
安定性を示す。
【図4】本発明のマンノースイソメラーゼと酵素Cの温
度安定性を示す。
【図5】本発明のマンノースイソメラーゼの温度安定性
を示す。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の酵素的性質を有する耐熱性マンノー
    スイソメラーゼ。 (a) 作用:D−マンノースとD−フラクトースを相互変
    換する。 (b) 基質特異性:D−マンノースに作用し、D−グルコ
    ース、D−ガラクトース、D−キシロース、L−キシロ
    ース、D−アラビノース、D−リボース、L−ラムノー
    ス及びD−リキソースに対しては実質的に作用しない。 (c) 最適pH:約8 (d) 最適温度:約65℃ (e) 安定pH:約5〜11
  2. 【請求項2】請求項1記載の耐熱性マンノースイソメラ
    ーゼを生産するシュードモナス・エスピーN−25(FERM
    P-13569)を培養して、該マンノースイソメラーゼを生
    産し、これを採取することを特徴とする耐熱性マンノー
    スイソメラーゼの製造法。
  3. 【請求項3】請求項1記載の耐熱性マンノースイソメラ
    ーゼをフラクトース含有液に作用させ、マンノース含有
    液を採取することを特徴とするマンノースの製造法。
  4. 【請求項4】請求項1記載のマンノースイソメラーゼと
    グルコースイソメラーゼをグルコース含有液に作用させ
    ることを特徴とするマンノース含有液の製造法。
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