JP3626471B2 - 樹脂成形用金型構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、樹脂成形用金型構造、特に射出成形用金型に好適なものに関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、従来の射出成形用金型の一例を示し、互いに分離される可動型1と固定型2を備え、それぞれに設けられた成形部3,4間のキャビティ空間へ樹脂を射出して成形するようになっている。可動型1,固定型2はそれぞれ全体を鋼材等の高強度単一材料で形成されている。
【0003】
しかし、このようにすると金型は一機種毎に専用のものを製作しなければならず、コスト及び製作時間が増大した。そこで成形部3,4のみを小さなカセット型とし、これをその周囲部分をなす母型へ着脱自在に固定したものも知られている(一例として、特開2001−1375号参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記カセット型構造を採用すれば、カセット型の周囲部分を汎用部として複数機種に使用できることになる。しかし、このようなカセット構造は、型締め圧がカセット部へかかる構造になっているため型締め圧の小さな精密部品などの比較的小型の成形品用に限定され、自動車用大型部品成形用のような大きな射出圧並びに型締め圧がかかる大型金型には強度等の点で採用し難かった。
したがって、カセット部に加工しやすく安価な材料を採用したくても不可能であった。
【0005】
そのうえ、このような大型金型では成形面に大きな射出圧がかかるため、成形面が曲面になっていると型締め方向と異なる方向、例えば、型締め方向と直交する方向(以下この方向を横圧方向という)に圧力がかかり、その結果、成形部が横ズレして正確な成形ができなくおそれがあり、高精度が要求される精密金型には不向きであった。そこで本願発明はこのようなカセット構造を大型金型にも適用可能にすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願の樹脂成形用金型構造に係る請求項1は、固定型と可動型に分割された樹脂成形用金型において、前記固定型と可動型のそれぞれは、成形部を含む専用部と、この専用部を着脱自在に収容するべく相手側へ向かって開放された装着空間を有する箱状の汎用部とからなり、この汎用部の前記固定型と可動型の合わせ部は、前記装着空間の開口部周囲を連続して囲み、かつ互いにはまり合う階段状断面をなすとともに、前記専用部と汎用部間に高さ調節手段を設け、型締め時に前記一対の汎用部が前記合わせ部にて、型締め方向及びこれと直交する方向で互いに突き当たるようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は上記請求項1において、前記専用部が前記汎用部よりも軟らかい材料からなることを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】
請求項1によれば、固定型及び可動型のそれぞれを専用部と汎用部で構成し、一対の汎用部をそれぞれ箱状とし、専用部を着脱可能に収容するとともに、各汎用部の合わせ部を、階段状断面をなして装着空間の開口部を連続して囲むようにした。したがって、装着空間内に収容された専用部周囲を汎用部が箱状に囲むことによって専用部を補強する。
【0009】
また、各汎用部の合わせ部は、固定型と可動型を型締めしたとき、互いが階段状にはまり合って突き合わさるため、合わせ部で型締め圧を受けることができ、型締め圧がいくら大きくなっても専用部にかからないようにすることができる。しかも、高さ調節部材を専用部と汎用部の間に設けることにより、専用部を交換しても合わせ部における突き合わせ状態を維持できる。
【0010】
そのうえ、各汎用部の合わせ部は、階段状をなして装着空間の開口部を連続して囲んでいるから、固定型と可動型を型締めすると互いが階段状にはまり合って、双方が型締め方向及び横圧方向で突き合わさるため、大きな成形圧が成形面へかかっても専用部の横ズレが生じなくなる。しかもこのはまり合いは装着空間の開口部全周囲で生じるため、型締め方向と直交する平面内における全方向の横ズレを規制できる。
【0011】
したがって大型金型であってもカセット構造を採用可能になりる。しかも、汎用部は多機種に共通使用できるので、比較的小型の専用部だけを製作して交換するだけで済むから、金型が安価になる。
【0012】
請求項2によれば、専用部に型締め圧がかからないため、専用部の材質を汎用部よりも軟らかい材料にしても十分に使用に耐えることができる。ゆえに加工が容易で安価な材料により専用部を形成することができるので、さらに金型費用をコスタダウンできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は本願発明の概要を示す大型射出成形用金型の簡略断面図、図2は同様に概略表示した分解斜視図、図3は詳細断面図、図4は可動型を図3のA矢示方向から示す図である。まず図1及び2において、この射出成形用金型は可動型10と固定型20に分離され、数100トンのような大きな型締め圧で型締めされる。可動型10と固定型20は、それぞれは汎用部11,21と専用部12,22から構成される。
【0014】
汎用部11,21は鋼材等の高い型締め圧にも十分耐えうる高強度材料からなり、それぞれ専用部12,22を着脱自在に収容する装着空間11a及び21aを有する(図1にて専用部の一部を切り欠いて表示する)。装着空間11a及び21aは金型の割面を挟んで互いに相手側へ向かって開放された空間をなし、各汎用部11,21は略箱状をなしている。
【0015】
各汎用部11,21の割面内外周部には装着空間11a及び21aの開口部を連続して囲む階段状合わせ部13,23が一体に形成されている。これらの階段状合わせ部13,23は型締め時に互いに階段状にはまり合って突き当たるようになっている。
【0016】
各専用部12,22は、対応する汎用部11,21の装着空間11a及び21aへ挿入され、図示省略のボルトにより固着一体化される。本実施例では、専用部12が凸型として構成され、凸状の成形部14を有する。一方、専用部22は凹型として構成され、凹状の成形部24を有する。なお、成形部14と成形部24の間に形成される空間がキャビティCををなす。これらの専用部12,22は、加工しやすくかつ安価なZASで構成されている。
【0017】
これらの専用部は機種毎に製作され、図1に例示するように、成形部の形状が異なる組合せである、専用部12Aと22Aの組合せ並びに別の専用部12Bと22Bの組合せ等を適宜交換使用できる。これらの専用部は対応する装着空間へ収容可能な大きさであれば、各組合せ毎に寸法が変化してもよく、かつ材質も変更してもよい。装着空間よりも小さくなるときは後述するように隙間調整する。
【0018】
なお、型締め方向(図1のB矢示方向)の寸法(以下、厚みという)が変化することにより、適正なキャビティCを形成したとき、階段状合わせ部13,23における突き合わせを確保できない場合に備えて、可動型10における汎用部11と専用部12の間に高さ調整板30を介在させる。高さ調整板30は高さ調整機構の一例であり、他の種々な公知構造に代えることもできる。また、固定型20へ設けることもでき、双方に設けることもできる。
【0019】
図2に明らかなように、階段状合わせ部13,23は内側段部13a及び23aと外側段部13c及び23cの内外2段をなし、これら内外の段部13a、13c及び23a、23cはそれぞれ型締め方向突き合わせ面をなし、内外の段部間に形成される側壁13b及び23bがそれぞれ横圧方向突き合わせ面をなす。本実施例では、割面中央に対して、階段状合わせ部13が凹、階段状合わせ部23が凸になっている。すなわち階段状合わせ部13では、外側段部13cより内側段部13aが低く、一方、階段状合わせ部12では、外側段部23cより内側段部23aが高くなっている。
【0020】
以下、図3及び図4に基づいてより詳細に説明する。これらの図において、符号15,25は調整板であり(概略図である図1及び図2ではこれらの図示を省略)、汎用部と専用部の間隙を埋めるよう挿入される部材であって、それぞれがテーパー状をなしているため、楔効果により専用部を汎用部内へ確実に固定するようになっている。これにより専用部を交換することにより、寸法が変わって汎用部との間に隙間ができる場合であっても問題なく汎用部を共通使用できる。
【0021】
高さ調整板30は、汎用部11の内側へ突出形成された位置決め段部16と専用部12の基部との間へ介装され、位置決め段部16,専用部12及び専用部22の各当接部間における寸法、すなわち高さ調整板30、専用部12及び22の各厚みに相当するD1,D2,D3の合計が汎用部21の側部と位置決め段部16との内のり寸法Dと一致するよう調整し、型締め時に適正なキャビティCを形成しつつ必ず階段状合わせ部13と同23が突き合わさるようになっている。
【0022】
31はイジェクトピンであり、イジェクトプレート32を介してベースプレート33へ取付けられている。取付プレート40は汎用部11とボルト34により一体にされている。ボルト33aを外してイジェクトプレート32をベースプレート33より外すことにより、イジェクトピン31等を専用部12と一体に汎用部11から取り外すことができる。35はガイドピンであって、汎用部21の4隅へボルト36により固定され、対応して汎用部11側に設けられたブッシュ37及びガイド穴17内へ嵌合し、可動型10の型開閉を固定型20に対してガイドしている。
【0023】
図3中の符号Wは汎用部の割面を示し、Pは専用部の割面であるパーテイングラインである。本実施例では図示のようにパーテイングラインPが汎用部の割面Wよりも固定型20側へ段違いに突出している。専用部12,22を略箱状の汎用部11,21に対する嵌合構造にすることにより。このような割面WとパーテイングラインPの段違い構造をとることが自在になる。また、成形部14、24の各成形面は、凸又は凹が大きく湾曲した曲面になっている。
【0024】
図2に示すように、階段状合わせ部13は専用部12を連続して囲む略四角形をなし、専用部12も略四角形になっている。但し、内側段部13aとの間に隙間が生じるため、図3に示すように、ここに一対の調整板15、15が差し込まれている。調整板15、15は隣り合う2辺部分へ挿入されている。ブッシュ37は汎用部11の4隅に設けられている。なお固定型20の汎用部21側も対応する構成となっている。
【0025】
次に、本実施例の作用を説明する。図1〜図3に明らかなように、型締め時には、汎用部11と21の階段状合わせ部13と23が互いにはまり合って突き合わせ状態になる。したがって数100トンのような大きな型締め圧であっても、内外の段部13aと23a及び13cと23cの型締め方向突き合わせ面で受け止めるから、汎用部11及び汎用部21の強度で耐えることができる。しかも、この型締め圧は専用部12及び22へ及ばないため、これらを加工しやすくかつ安価なZAS等の汎用部11,21側より比較的軟らかい材料で形成しても十分に使用に耐えることになる。
【0026】
しかも、キャビティC内へ樹脂を射出したとき、その大きな射出圧が成形部14,24の成形面へ向かって直角にかかることになり、これらの成形面が大きく湾曲する等の曲面をなすと、横圧方向へ力を受けて互いを横ズレしようとする。しかし横圧方向突き合わせ面である階段状合わせ部13と23の側面13bと23bが突き合わさり、かつ連続して専用部12及び22の周囲を囲んではまり合っているから、この横ズレ方向へ働く力を型締め方向の突き合わせにより受け止める。
【0027】
したがって、汎用部11と21の横ズレが生じず、その結果、専用部12と22を確実に位置決めすることにより、成形部14と24の横ズレを防止できる。その結果、このような型締め圧及び射出圧が共に大きな大型の射出成形用金型に用いても十分に使用に耐えることができる。
【0028】
また、高さ調整板30を設けることにより、専用部12及び22が変更されても、必ず高さ調整板30,専用部12及び22間の隣り合う寸法D1+D2+D3=Dなるように調整すれば、階段状合わせ部13と23における型締め時の突き合わせを確保できる。
【0029】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、この金型の用途は必ずしも射出成形用に限定されるものではなく、他の各種成形法の金型としても使用できる。この場合、専用部の横ズレ原因は射出圧ではなく、これらの成形方法による成形圧となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る射出成形用金型の概略断面図
【図2】上記の金型構成部を分解して概略表示する斜視図
【図3】本実施例に係る大型射出成形用金型の断面図
【図4】上記の可動型を図3の A 矢示方向から示す図
【図5】従来の射出成形用金型の概略断面図
【符号の説明】
10:可動型、11:汎用部、12:専用部、13:階段状合わせ部、14:凸状成形部、15:調整板、20:固定型、21:汎用部、22:専用部、23:階段状合わせ部、24:凹状成形部、25:調整板、30:高さ調整板、40:取付プレート
Claims (2)
- 固定型と可動型に分割された樹脂成形用金型において、前記固定型と可動型のそれぞれは、成形部を含む専用部と、この専用部を着脱自在に収容するべく相手側へ向かって開放された装着空間を有する箱状の汎用部とからなり、この汎用部の前記固定型と可動型の合わせ部は、前記装着空間の開口部周囲を連続して囲み、かつ互いにはまり合う階段状断面をなすとともに、前記専用部と汎用部間に高さ調節手段を設け、型締め時に前記一対の汎用部が前記合わせ部にて、型締め方向及びこれと直交する方向で互いに突き当たるようにしたことを特徴とする樹脂成形用金型構造。
- 前記専用部が前記汎用部よりも軟らかい材料からなることを特徴とする請求項1の樹脂成形用金型構造。
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