JP3624609B2 - 車体の空気抵抗低減構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の車体の空気抵抗を低減するための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車が走行した時に空気によって生じる抗力、即ち、空気抵抗は、最高速、燃費、加速等の車両性能に関連するものである。この空気抵抗を車両の正面投影面積と動圧(空気の流れの動圧)で除した数値が空気抵抗係数といわれるCd 値であり、Cd 値が小さいものが抵抗が少なく車両性能に有利となっている。自動車の車体は、見栄えを向上させると同時に、空気抵抗をできるだけ少なくしてCd 値が低い形状が望ましい。
【0003】
図8には車体のフロント部左側の概略平面を示してある。例えば、図8の実線で示したように、車両によってはデザインを優先したフロント形状にしたい場合があるが、このような実線で示したような形状にすると点線で示したような形状よりも空気抵抗の面では劣ってしまうことになる。図8に点線で示したように、フロントタイヤ1の前側の車体2を側部近傍まで車幅方向に延ばすことで、フロント部分のサイドが前方に張り出した形状になる。サイドが前方に張り出すことで、空気流が車体の側面側に回り込んで側面部の空気流の剥離が抑制されてCd 値を低くする点で有利である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、自動車の車体の形状は、見栄えの点を考慮した場合とCd 値を低くする点を考慮した場合とでは相反するものとなり、空力的に有利な形状が必ずしもデザイン的に最適な形状とはならないのが実情である。車体のデザインは重要なものであるため、自動車の形状はデザインが優先されているのが現状となっている。
【0005】
ところで、車両の空力特性を向上させる技術が従来から種々知られている。例えば、実公平3−13425 号公報には、バンパーの形状を特殊な形状にして横風を受けた際の安定性を向上させる技術が示されている。また、カースタイリング91号(平成4年11月30日発行)やカースタイリング110 号(平成8年1月31日発行)には、バンパーにふくらみをもたせて揚力を低減させるものが示されている。しかし、これらの技術は車体の空気抵抗を低減してCd 値を低くするものにはなっていない。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、デザインを優先した形状であっても空気抵抗を減少させることができる車体の空気抵抗低減構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の構成は、車両前方より空気流を受ける車体のサイドコーナ部に少なくとも1個の碗型突起面を形成したことにより、車体が受ける空気流が碗型突起面を回り込み、サイドコーナ部における車両の正面投影面が受ける圧力の前側への分力が大きくなり、空気抵抗が減少した状態になる。また、碗型突起面を回り込んだ空気流が車体側面へ向かう空気流を整え、車体側面の空気流の剥離を抑制する。
【0008】
そして、前記碗型突起面は、直径に対する高さの比が0.1 〜1.0 であることを特徴とする。直径に対する高さの比が0.1 を下回ると、空気流が碗型突起面を回り込む状態にならず、直径に対する高さの比が1.0 を越えると、碗型突起面自体が抵抗となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1には本発明の一実施形態例に係る車体の空気抵抗低減構造を備えた車両の斜視状態、図2には碗型突起面の拡大状況、図3には碗型突起面が形成された部位の平面断面視状態、図4には車体表面の圧力分布状況、図5には空気流の流れ状況を表す碗型突起面の正面視を示してある。
【0010】
図1乃至図3に示したように、車両11の前方より空気流を受ける車体であるバンパー12は、フロントタイヤ13の前側の側部近傍が後方側に傾斜し、図8に実線で示した形状に相当し車両11全体の見栄えの点で有利な形状となっている。バンパー12のサイドコーナ部としての正面部と左右の側面部との間にはそれぞれ略半円形状の碗型突起面14がバンパー12と一体に形成されている。バンパー12の正面部と側面部との間は、空気流を受けて面圧が最大となる面、即ち、前面圧を受ける面に比べて圧力が低下する部位(例えば正圧から負圧に変化する部位)となっている。
【0011】
尚、碗型突起面14を形成するバンパー12の部位は、正面部と側面部との間に限らず、空気流を受けて面圧が正圧から負圧に変化するサイドコーナ部の部位であれば正面部寄りに形成することも可能であり、碗型突起面14の数も2個以上であってもよい。また、碗型突起面14を形成するバンパー12の形状は図示のものに限らず、図8に点線で示したCd 値を低くする点で有利な形状のものに適用することも可能である。また、ヘッドランプやフォグランプまたはウインカーのカバーとして碗型突起面14を用い、碗型突起面14をバンパー12と別体に設けることも可能である。
【0012】
図2に示したように、碗型突起面14の断面は角のない滑らかな曲線で形成され(例えばサインカーブ)、碗型突起面14は、直径dに対する高さhの比h/d が0.1 〜1.0 の間に設定されている。碗型突起面14の直径dに対する高さhの比h/dは、0.5 を中心に±0.2 〜0.3 程度が好ましい。碗型突起面14の形状及び比h/d は、適用箇所の空気の流れに依存して適宜設定される。
【0013】
上記構成の碗型突起面14が形成されたバンパー12を備えた車両11では、走行に伴って前面に空気流を受ける。バンパー12では正面部から側面部に向かって流れる空気流R(図5参照)が生じ、空気流は碗型突起面14を回り込んで側面部に流れていく。
【0014】
空気流Rが碗型突起面14を回り込むことにより、バンパー12の表面には図4(a) で示した圧力分布が生じる。即ち、正面部から碗型突起面14の部位までは正圧の面圧Pが生じ、碗型突起面14の部位で負圧力の面圧pが生じる。碗型突起面14の部位で生じた負圧力の面圧pの前方への力成分Sは、碗型突起面14を設けていない場合(図4(b) の状態)に比べて大きくなる。このため、車両11を前側に引っ張る力Fが発生し、空気抵抗が減少した状態になってCd 値を低減することができる。碗型突起面14をバンパー12の正面部寄りに形成した場合でも、車両11を前側に引っ張る力Fが発生し、空気抵抗を減少することができる。
【0015】
また、空気流Rが半円形状の碗型突起面14を回り込むことにより、碗型突起面14の後方側で空気流Rが側面に対して平行に流れる。このため、側面部での空気の流れの剥離が抑制されて空気抵抗が減少する。また、空気流Rが半円形状の碗型突起面14を回り込むことにより、上下の空気流Rが碗型突起面14の後方側で合流して側面部に入り込み、高速の空気流Rとなる。このため、更に側面部での空気の流れの剥離が抑制されて空気抵抗が減少する。
【0016】
上述した碗型突起面14の直径dに対する高さhの比h/d は0.1 〜1.0 の間に設定されている。直径dに対する高さhの比h/d が0.1 を下回ると、空気流Rが碗型突起面を回り込む状態にならず、直径dに対する高さhの比h/d が1.0 を越えると、碗型突起面14自体が空気流Rの流れを阻害して抵抗となる。
【0017】
上記構成の碗型突起面14を形成したバンパー12を備えた車両11では、碗型突起面14の部位で生じた負圧力の面圧pの前方への力成分Sが大きくなり、車両11を前側に引っ張る力Fが発生して空気抵抗が減少し、Cd 値を低減することができる。また、碗型突起面14の後方側で空気流Rが整流されると共に上下の空気流Rが合流して高速の空気流Rとなり、更に剥離が抑制されて空気抵抗が減少する。このため、フロントタイヤ13の前側の側部近傍が後方側に傾斜して車両11全体の見栄えの点で有利な形状となっている、即ち、空力的に多少不利となってデザインを優先させたバンパー12であっても、空力的に有利な形状のバンパーと略同等のCd 値が得られ、Cd 値を悪化させることなくデザインの自由度が向上する。
【0018】
上述した実施形態例では、車体のサイドコーナ部としてバンパー12の正面部と左右の側面部との間に碗型突起面14を形成した例を挙げて説明したが、車体のサイドコーナ部としては正面部と側面部との間におけるバンパー12に限定されるものではない。図6に示したように、空気の流れに対して物体21は前面圧を受けて正圧となる面の周囲に負圧になる部分が存在する。サイドコーナ部としては、正圧から負圧に変化する部分(圧力降下が激しい部分)が対象となる。物体21を車両11にあてはめると、図6に示した状態の平面断面をなす部位の正圧から負圧に変化する部分が車体のサイドコーナ部として適用される。
【0019】
例えば、図7に示したように、車両11の車室15の部位の平面断面を図6の物体21にあてはめた場合、サイドコーナ部として碗型突起面14を形成する部位はAピラー16の部位となる。このため、碗型突起面14をAピラー16に複数形成することで、バンパー12に形成した場合と同様に空気抵抗を低減させることが可能となる。また、サイドコーナ部に対応する部位であれば、車種等に応じてドアミラーやボデー等、車両の他の部位に碗型突起面14を形成し、空力的に多少不利となってデザインを優先させた車体であっても空気抵抗を低減してCd 値を低くすることができる。勿論、Cd 値を低くする点で有利となっている車体に碗型突起面14を形成することで、更に空気抵抗を低減することが可能となる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の車体の空気抵抗低減構造は、車両前方より空気流を受ける車体のサイドコーナ部に少なくとも1個の碗型突起面を形成したことにより、車体が受ける空気流が碗型突起面を回り込み、サイドコーナ部における車両の正面投影面が受ける圧力の前側への分力が大きくなり、空気抵抗が減少した状態になると共に、碗型突起面を回り込んだ空気流により車体側面へ向かう空気流が整えられ、車体側面の空気流の剥離を抑制することができる。この結果、デザインを優先した形状であっても空気抵抗を減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例に係る車体の空気抵抗低減構造を備えた車両の斜視図。
【図2】碗型突起面の拡大図。
【図3】碗型突起面が形成された部位の平面断面図。
【図4】車体表面の圧力分布説明図。
【図5】空気流の流れ状況を表す碗型突起面の正面図。
【図6】空気流と面圧との関係説明図。
【図7】本発明の他実施形態例に係る車体の空気抵抗低減構造を備えた車両の斜視図。
【図8】車体のフロント部左側の概略平面図。
【符号の説明】
11 車両
12 バンパー
13 フロントタイヤ
14 碗型突起面
15 車室
16 Aピラー
Claims (2)
- 車両前方より空気流を受ける車体のサイドコーナ部に少なくとも1個の碗型突起面を形成し、前記空気流が前記碗型突起面を回り込み、前記サイドコーナ部における車両の正面投影面が受ける圧力の前側への分力を大きくさせ、前記碗型突起面を回り込んだ空気流が車体側面へ向かう空気流を整えて、車体側面の空気流の剥離を抑制させたことを特徴とする車体の空気抵抗低減構造。
- 請求項1において、前記碗型突起面は、直径に対する高さの比が0.1 〜1.0 であることを特徴とする車体の空気抵抗低減構造。
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