JP3624277B2 - 排ガス浄化用触媒 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などの内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒に関し、さらに詳しくは、酸素過剰の排ガス、すなわち排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、水素(H2 )及び炭化水素(HC)等の還元性成分を完全に酸化するのに必要な酸素量より過剰の酸素を含む排ガス中の、窒素酸化物(NOx )を効率良く還元浄化できる排ガス浄化用触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より自動車の排ガス浄化用触媒として、理論空燃比(ストイキ)において排ガス中のCO及びHCの酸化とNOx の還元とを同時に行って浄化する三元触媒が用いられている。このような三元触媒としては、例えばコーディエライトなどからなる耐熱性基材にγ−アルミナからなる多孔質担体層を形成し、その多孔質担体層に白金(Pt)、ロジウム(Rh)などの触媒貴金属を担持させたものが広く知られている。また、酸素吸蔵能をもつセリア(セリウム酸化物)を併用し、低温活性を高めた三元触媒も知られている。
【0003】
一方、近年、地球環境保護の観点から、自動車などの内燃機関から排出される排ガス中の二酸化炭素(CO2 )が問題とされ、その解決策として酸素過剰雰囲気において希薄燃焼させるいわゆるリーンバーンが有望視されている。このリーンバーンにおいては、燃費が向上するために燃料の使用が低減され、その燃焼排ガスであるCO2 の発生を抑制することができる。
【0004】
これに対し、従来の三元触媒は、空燃比が理論空燃比(ストイキ)において排ガス中のCO,HC,NOx を同時に酸化・還元し浄化するものであって、リーンバーン時の排ガスの酸素過剰雰囲気下においては、NOx の還元除去に対して充分な浄化性能を示さない。このため、酸素過剰雰囲気下においてもNOx を浄化しうる触媒及び浄化システムの開発が望まれていた。
【0005】
そこで本願出願人は、先にBaなどのアルカリ土類金属とPtをアルミナなどの多孔質担体に担持した排ガス浄化用触媒(例えば特開平5−168860号公報)を提案している。この排ガス浄化用触媒を用い、空燃比をリーン側からパルス状にストイキ又はリッチ側となるように制御する(以下、過渡燃焼という)ことにより、リーン側ではNOx がアルカリ土類金属などのNOx 吸蔵元素に吸蔵され、それがストイキ又はリッチ側でHCやCOなどの還元性成分と反応して浄化されるため、リーンバーンにおいてもNOx を効率良く浄化することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した特開平5−168860号公報に開示されたような排ガス浄化用触媒においては、600℃以上、特に700℃以上の高温に曝された場合には、過渡燃焼におけるNOx 浄化性能が低下するという不具合があることが明らかとなった。
【0007】
この原因は、高温域においてNOx 吸蔵元素とアルミナとの間に固相反応が生じ、例えばBaAl2 O4 が生成することによって、NOx 吸蔵元素が複合酸化物として安定化されるためにNOx 吸蔵能が低下することに起因すると考えられている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高温域におけるNOx 吸蔵元素と担体との間の反応を防止することにより、過渡燃焼におけるNOx 浄化性能を向上させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1に記載の排ガス浄化用触媒の特徴は、酸素過剰の雰囲気下で排ガス中のNOx 、CO及びHCを浄化する排ガス浄化用触媒であって、酢酸マグネシウムとアルミニウムアルコキシドを出発原料としてゾルゲル法により調製されたMgO・Al2 O3 で表される複合酸化物からなる担体と、担体に担持されたアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種のNOx 吸蔵元素及び貴金属と、を含んでなることにある。
【0009】
また請求項2に記載の排ガス浄化用触媒は、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒において、アルミニウムアルコキシドはアルミニウムイソプロポキシドであることにある。
そして請求項3に記載の排ガス浄化用触媒は、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒において、NOx 吸蔵元素はカリウム及び/又はバリウムであることにある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の排ガス浄化用触媒では、ゾルゲル法により調製されたMgO・Al2 O3 で表される複合酸化物を担体として用いている。この複合酸化物の結晶構造は、MgAl2 O4 で表されるγ−アルミナと同様のスピネル構造となっている。
【0011】
この複合酸化物は、アルミナに比べてNOx 吸蔵元素との反応性が低い。したがって本発明の排ガス浄化用触媒では、高温域におけるNOx 吸蔵元素と担体との反応が抑制されるので、NOx 吸蔵能の低下が抑制され、過渡燃焼においても高いNOx 浄化能を有する。
さらに、この複合酸化物はそれ自体の耐熱性が高く、高比表面積のものが比較的得やすいため、触媒担体としての必要条件を備えている。
【0012】
MgとAlの複合酸化物は、MgO・nAl2 O3 で表され、nの値は各種のものが知られている。しかしnが1未満のときは、MgのAl2 O3 への固溶限界を越えるため、熱履歴を受ければMgOとMgAl2 O4 との2相系になり、この遊離のMgOが存在すると、耐熱性が低下するため好ましくない。
またnが1を超えると、MgO・xAl2 O3 とyAl2 O3 (1<x,x+y=n)の2相系になる。nが大きくなると、比表面積は大きくなる傾向があるが、Al2 O3 相の割合が増えるにつれてNOx 吸蔵元素との反応が生じやすくなる。したがって、本発明においてはn=1とした。
【0013】
複合酸化物の製造法としては、アルコキシド等を用いるゾルゲル法、硝酸マグネシウムと硝酸アルミニウム等の混合水溶液とアンモニア水を用いる共沈法、水酸化アルミニウムに酢酸マグネシウムを含浸し焼成する焼成法等がある。しかし共沈法や焼成法で製造されたMgO・Al2 O3 は、ゾルゲル法と比較して得られた担体の比表面積が低くなる不具合があるので、本発明ではゾルゲル法で製造されたMgO・Al2 O3 を担体として用いている。
【0014】
ゾルゲル法でMgO・Al2 O3 を調製する場合、出発原料としては酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩と、アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキシドが用いられる。このとき酢酸マグネシウムとアルミニウムイソプロポキシドから調製されたMgO・Al2 O3 を担体として用いると、特に高いNOx 浄化活性をもつ触媒が得られる。この理由は明らかではないが、酢酸マグネシウムを用いた方が比表面積が高い担体が得られるためと推察される。
【0015】
この複合酸化物は、それ自体で担体を構成してもよいし、アルミナ粉末などの表面に被覆したものを担体とすることもできる。また担体の形状は、ペレット、ハニカム形状など従来と同様に構成することができ、コーディエライト担体基材又はメタル担体基材などにコートして用いることができる。
NOx 吸蔵元素としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素を使用することができる。中でもバリウムとカリウムが好ましい。バリウムよりも塩基性が低いと、十分なNOx 吸蔵能を示さない。またカリウムよりも塩基性が高いと、初期のNOx 吸蔵能は高いものの、熱劣化による活性低下が大きくあまり好ましくない。
【0016】
NOx 吸蔵元素の含有量は、担体100gに対して0.01〜1.0モルの範囲が望ましい。含有量が0.01モルより少ないとNOx 吸蔵能力が小さくNOx 浄化性能が低下し、1.0モルを超えて含有しても、NOx 吸蔵能力が飽和すると同時に三元活性が低下するなどの不具合が生じる。
貴金属としては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)などの1種又は複数種を用いることができ、Ptが特に望ましい。その担持量は、いずれの貴金属でも、担体100g(触媒全体の体積1リットル相当)に0.1〜20gが好ましく、0.5〜10gが特に好ましい。貴金属の担持量をこれ以上増加させても活性は向上せず、その有効利用が図れない。また貴金属の担持量がこれより少ないと、実用上十分な活性が得られない。
【0017】
なお、NOx 吸蔵元素及び貴金属を担体に担持させるには、その塩化物や硝酸塩等を用いて、含浸法、噴霧法、スラリー混合法などを利用して従来と同様に担持させることができる。
また本発明の排ガス浄化用触媒には、セリウム酸化物又はジルコニアで安定化されたセリウム酸化物を含有することもできる。このようにすればセリウム酸化物による酸素吸蔵・放出作用により、過渡燃焼におけるNOx 浄化性能を一層向上させることができる。
【0018】
本発明の排ガス浄化用触媒に酸素過剰の雰囲気下の排ガスを接触させることにより、HC及びCOは貴金属の触媒作用によって酸化浄化される。またNOx はNOx 吸蔵元素に吸蔵される。そして過渡燃焼により一時的にストイキ又はリッチ雰囲気の排ガスが供給されると、排ガス中のNOx 及び吸蔵されていたNOx は、貴金属の触媒作用により排ガス中のHC及びCOなどの還元成分と反応して還元浄化される。
【0019】
そして担体はNOx 吸蔵元素との反応性がきわめて低いため、高温域においてもNOx 吸蔵元素との反応が生じにくい。したがって本発明の排ガス浄化用触媒では、NOx 吸蔵元素本来のNOx 吸蔵能が損なわれることがなく、過渡燃焼においても高いNOx 浄化性能が維持される。また担体は耐熱性に優れ比表面積の低下もほとんどないため、この面からも排ガス浄化用触媒としての耐熱性に優れている。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の請求項は実施例により何ら制限を受けるものではない。
(実施例1)
<複合酸化物担体の合成・ゾルゲル法>
酢酸マグネシウム4水和物38重量部と、アルミニウムイソプロポキシド(Al[OCH(CH3 )2 ]3 )72重量部及びイソプロピルアルコール400重量部を混合(モル比でMg:Al=1:2)し、攪拌しながら80℃で約2時間還流した。そこへ60重量部のイオン交換水を滴下して加水分解を完結させ、さらに80℃で2時間還流を続け、その後放冷した。
【0021】
次にロータリーエバポレータを用いてウォーターバス上で溶媒を除去し、さらに室温で24時間自然乾燥させた後、大気中850℃で5時間焼成し、MgO・Al2 O3 の組成の複合酸化物担体粉末を得た。
<触媒の調製>
この担体粉末の所定量を、所定濃度のジニトロジアミノ白金硝酸溶液中に浸漬し、5時間攪拌した後に蒸発乾固させ、大気中にて300℃で3時間焼成してPtを担持させた。Ptの担持量は、担体100g(1L相当)に対してPtが2gである。
【0022】
次に、Ptが担持された担体粉末を、所定濃度の酢酸カリウム水溶液中に浸漬し、5時間攪拌した後に蒸発乾固させ、大気中にて300℃で3時間焼成してNOx 吸蔵元素としてのカリウム(K)を担持させた。Kの担持量は、担体100g(1L相当)に対してKが0.2molである。
最後に、PtとKが担持された担体粉末を水素気流中にて500℃で3時間処理し、実施例1の触媒粉末を調製した。
【0023】
(参考例1)
酢酸マグネシウム4水和物に代えて硝酸マグネシウムを45重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、MgO・Al2 O3 の組成の複合酸化物担体粉末を調製した。そして実施例1と同様にしてPtとKを担持し、同様に水素気流中で処理して参考例1の触媒粉末を調製した。
【0024】
(実施例2)
酢酸カリウムに代えて酢酸バリウムを用い、Kに代えて担体100gに対して0.2molのBaを担持したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の触媒粉末を調製した。
(実施例3)
カリウムの担持量を、担体100gに対して0.1molとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の触媒粉末を調製した。
【0025】
(参考例2)
酢酸マグネシウム4水和物に代えて硝酸マグネシウムを45重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、MgO・Al2 O3 の組成の複合酸化物担体粉末を調製した。そしてカリウムの担持量を、担体100gに対して0.1molとしたこと以外は実施例1と同様にして、参考例2の触媒粉末を調製した。
【0026】
(実施例4)
酢酸カリウムに代えて酢酸バリウムを用い、Kに代えて担体100gに対して0.1molのBaを担持したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の触媒粉末を調製した。
(比較例1)
酢酸マグネシウムを用いずアルミニウムイソプロポキシドのみから担体粉末を調製したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の触媒粉末を調製した。
【0027】
(比較例2)
酢酸マグネシウムを用いずアルミニウムイソプロポキシドのみから担体粉末を調製したこと、及びカリウムの担持量を担体100gに対して0.1molとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の触媒粉末を調製した。
(比較例3)
酢酸マグネシウムを用いず、アルミニウムイソプロポキシドのみから担体粉末を調製したこと、及びKに代えて担体100gに対して0.2molのBaを担持したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の触媒粉末を調製した。
【0028】
(比較例4)
酢酸マグネシウムを用いず、アルミニウムイソプロポキシドのみから担体粉末を調製したこと、及びKに代えて担体100gに対して0.1molのBaを担持したこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の触媒粉末を調製した。
(試験・評価)
上記したそれぞれの触媒粉末をそれぞれペレット化して耐久試験装置に充填し、表1に示すリーン側のモデル排ガスとリッチ側のモデル排ガスを、入りガス温度が700℃と800℃の2水準で、リーン…リッチを1分…4分で交互に切り替えながらそれぞれ5時間流した。
【0029】
【表1】
そして上記耐久試験後のそれぞれのペレット触媒について、常圧固定床流通反応装置を用い、表2に示すリーン側のモデル排ガスとリッチ側のモデル排ガスをそれぞれ2分毎に交互に繰り返して流速2L/minで流すことにより、NOx 浄化率を測定した。入りガス温度は300℃、400℃及び500℃の3水準である。耐久試験温度が700℃の場合の結果を表3、図1及び図2に、耐久試験温度が800℃の場合の結果を表4、図3及び図4に示す。なお、NOx 浄化率は次式で定義される。
【0030】
NOx 浄化率(%)=100×(1−4分間の出口ガス中のNOx 量/4分間の入りガス中のNOx 量)
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
表3〜表4及び図1〜図4より、実施例1、参考例1は比較例1に比べてNOx 浄化率が高く、実施例2は比較例3に比べてNOx 浄化率が高い。また実施例3、参考例2は比較例2に比べてNOx 浄化率が高く、実施例4は比較例4に比べてNOx 浄化率が高い。
【0034】
すなわち、ゾルゲル法により調製されたMgO・Al2 O3 で表される複合酸化物からなる担体を用いることにより、耐久後のNOx 浄化性能が格段に向上していることが明らかである。
さらに実施例1の方が参考例1よりもNOx 浄化率が高く、実施例3の方が参考例2よりNOx 浄化率が高いことから、出発原料として硝酸マグネシウムを用いるより酢酸マグネシウムを用いることが好ましいことが明らかである。
【0035】
【発明の効果】
すなわち本発明の排ガス浄化用触媒によれば、酸素過剰の雰囲気下における排ガス中のNOx 、CO及びHCを効率良く浄化できる。また800℃程度の高温に曝されたとしても、過渡燃焼において高いNOx 浄化率を維持し、きわめて耐熱性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例、参考例及び比較例の触媒の耐久後のNOx 浄化率を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例、参考例及び比較例の触媒の耐久後のNOx 浄化率を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例、参考例及び比較例の触媒の耐久後のNOx 浄化率を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例、参考例及び比較例の触媒の耐久後のNOx 浄化率を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などの内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒に関し、さらに詳しくは、酸素過剰の排ガス、すなわち排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、水素(H2 )及び炭化水素(HC)等の還元性成分を完全に酸化するのに必要な酸素量より過剰の酸素を含む排ガス中の、窒素酸化物(NOx )を効率良く還元浄化できる排ガス浄化用触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より自動車の排ガス浄化用触媒として、理論空燃比(ストイキ)において排ガス中のCO及びHCの酸化とNOx の還元とを同時に行って浄化する三元触媒が用いられている。このような三元触媒としては、例えばコーディエライトなどからなる耐熱性基材にγ−アルミナからなる多孔質担体層を形成し、その多孔質担体層に白金(Pt)、ロジウム(Rh)などの触媒貴金属を担持させたものが広く知られている。また、酸素吸蔵能をもつセリア(セリウム酸化物)を併用し、低温活性を高めた三元触媒も知られている。
【0003】
一方、近年、地球環境保護の観点から、自動車などの内燃機関から排出される排ガス中の二酸化炭素(CO2 )が問題とされ、その解決策として酸素過剰雰囲気において希薄燃焼させるいわゆるリーンバーンが有望視されている。このリーンバーンにおいては、燃費が向上するために燃料の使用が低減され、その燃焼排ガスであるCO2 の発生を抑制することができる。
【0004】
これに対し、従来の三元触媒は、空燃比が理論空燃比(ストイキ)において排ガス中のCO,HC,NOx を同時に酸化・還元し浄化するものであって、リーンバーン時の排ガスの酸素過剰雰囲気下においては、NOx の還元除去に対して充分な浄化性能を示さない。このため、酸素過剰雰囲気下においてもNOx を浄化しうる触媒及び浄化システムの開発が望まれていた。
【0005】
そこで本願出願人は、先にBaなどのアルカリ土類金属とPtをアルミナなどの多孔質担体に担持した排ガス浄化用触媒(例えば特開平5−168860号公報)を提案している。この排ガス浄化用触媒を用い、空燃比をリーン側からパルス状にストイキ又はリッチ側となるように制御する(以下、過渡燃焼という)ことにより、リーン側ではNOx がアルカリ土類金属などのNOx 吸蔵元素に吸蔵され、それがストイキ又はリッチ側でHCやCOなどの還元性成分と反応して浄化されるため、リーンバーンにおいてもNOx を効率良く浄化することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した特開平5−168860号公報に開示されたような排ガス浄化用触媒においては、600℃以上、特に700℃以上の高温に曝された場合には、過渡燃焼におけるNOx 浄化性能が低下するという不具合があることが明らかとなった。
【0007】
この原因は、高温域においてNOx 吸蔵元素とアルミナとの間に固相反応が生じ、例えばBaAl2 O4 が生成することによって、NOx 吸蔵元素が複合酸化物として安定化されるためにNOx 吸蔵能が低下することに起因すると考えられている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高温域におけるNOx 吸蔵元素と担体との間の反応を防止することにより、過渡燃焼におけるNOx 浄化性能を向上させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1に記載の排ガス浄化用触媒の特徴は、酸素過剰の雰囲気下で排ガス中のNOx 、CO及びHCを浄化する排ガス浄化用触媒であって、酢酸マグネシウムとアルミニウムアルコキシドを出発原料としてゾルゲル法により調製されたMgO・Al2 O3 で表される複合酸化物からなる担体と、担体に担持されたアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種のNOx 吸蔵元素及び貴金属と、を含んでなることにある。
【0009】
また請求項2に記載の排ガス浄化用触媒は、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒において、アルミニウムアルコキシドはアルミニウムイソプロポキシドであることにある。
そして請求項3に記載の排ガス浄化用触媒は、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒において、NOx 吸蔵元素はカリウム及び/又はバリウムであることにある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の排ガス浄化用触媒では、ゾルゲル法により調製されたMgO・Al2 O3 で表される複合酸化物を担体として用いている。この複合酸化物の結晶構造は、MgAl2 O4 で表されるγ−アルミナと同様のスピネル構造となっている。
【0011】
この複合酸化物は、アルミナに比べてNOx 吸蔵元素との反応性が低い。したがって本発明の排ガス浄化用触媒では、高温域におけるNOx 吸蔵元素と担体との反応が抑制されるので、NOx 吸蔵能の低下が抑制され、過渡燃焼においても高いNOx 浄化能を有する。
さらに、この複合酸化物はそれ自体の耐熱性が高く、高比表面積のものが比較的得やすいため、触媒担体としての必要条件を備えている。
【0012】
MgとAlの複合酸化物は、MgO・nAl2 O3 で表され、nの値は各種のものが知られている。しかしnが1未満のときは、MgのAl2 O3 への固溶限界を越えるため、熱履歴を受ければMgOとMgAl2 O4 との2相系になり、この遊離のMgOが存在すると、耐熱性が低下するため好ましくない。
またnが1を超えると、MgO・xAl2 O3 とyAl2 O3 (1<x,x+y=n)の2相系になる。nが大きくなると、比表面積は大きくなる傾向があるが、Al2 O3 相の割合が増えるにつれてNOx 吸蔵元素との反応が生じやすくなる。したがって、本発明においてはn=1とした。
【0013】
複合酸化物の製造法としては、アルコキシド等を用いるゾルゲル法、硝酸マグネシウムと硝酸アルミニウム等の混合水溶液とアンモニア水を用いる共沈法、水酸化アルミニウムに酢酸マグネシウムを含浸し焼成する焼成法等がある。しかし共沈法や焼成法で製造されたMgO・Al2 O3 は、ゾルゲル法と比較して得られた担体の比表面積が低くなる不具合があるので、本発明ではゾルゲル法で製造されたMgO・Al2 O3 を担体として用いている。
【0014】
ゾルゲル法でMgO・Al2 O3 を調製する場合、出発原料としては酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩と、アルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウムアルコキシドが用いられる。このとき酢酸マグネシウムとアルミニウムイソプロポキシドから調製されたMgO・Al2 O3 を担体として用いると、特に高いNOx 浄化活性をもつ触媒が得られる。この理由は明らかではないが、酢酸マグネシウムを用いた方が比表面積が高い担体が得られるためと推察される。
【0015】
この複合酸化物は、それ自体で担体を構成してもよいし、アルミナ粉末などの表面に被覆したものを担体とすることもできる。また担体の形状は、ペレット、ハニカム形状など従来と同様に構成することができ、コーディエライト担体基材又はメタル担体基材などにコートして用いることができる。
NOx 吸蔵元素としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素を使用することができる。中でもバリウムとカリウムが好ましい。バリウムよりも塩基性が低いと、十分なNOx 吸蔵能を示さない。またカリウムよりも塩基性が高いと、初期のNOx 吸蔵能は高いものの、熱劣化による活性低下が大きくあまり好ましくない。
【0016】
NOx 吸蔵元素の含有量は、担体100gに対して0.01〜1.0モルの範囲が望ましい。含有量が0.01モルより少ないとNOx 吸蔵能力が小さくNOx 浄化性能が低下し、1.0モルを超えて含有しても、NOx 吸蔵能力が飽和すると同時に三元活性が低下するなどの不具合が生じる。
貴金属としては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)などの1種又は複数種を用いることができ、Ptが特に望ましい。その担持量は、いずれの貴金属でも、担体100g(触媒全体の体積1リットル相当)に0.1〜20gが好ましく、0.5〜10gが特に好ましい。貴金属の担持量をこれ以上増加させても活性は向上せず、その有効利用が図れない。また貴金属の担持量がこれより少ないと、実用上十分な活性が得られない。
【0017】
なお、NOx 吸蔵元素及び貴金属を担体に担持させるには、その塩化物や硝酸塩等を用いて、含浸法、噴霧法、スラリー混合法などを利用して従来と同様に担持させることができる。
また本発明の排ガス浄化用触媒には、セリウム酸化物又はジルコニアで安定化されたセリウム酸化物を含有することもできる。このようにすればセリウム酸化物による酸素吸蔵・放出作用により、過渡燃焼におけるNOx 浄化性能を一層向上させることができる。
【0018】
本発明の排ガス浄化用触媒に酸素過剰の雰囲気下の排ガスを接触させることにより、HC及びCOは貴金属の触媒作用によって酸化浄化される。またNOx はNOx 吸蔵元素に吸蔵される。そして過渡燃焼により一時的にストイキ又はリッチ雰囲気の排ガスが供給されると、排ガス中のNOx 及び吸蔵されていたNOx は、貴金属の触媒作用により排ガス中のHC及びCOなどの還元成分と反応して還元浄化される。
【0019】
そして担体はNOx 吸蔵元素との反応性がきわめて低いため、高温域においてもNOx 吸蔵元素との反応が生じにくい。したがって本発明の排ガス浄化用触媒では、NOx 吸蔵元素本来のNOx 吸蔵能が損なわれることがなく、過渡燃焼においても高いNOx 浄化性能が維持される。また担体は耐熱性に優れ比表面積の低下もほとんどないため、この面からも排ガス浄化用触媒としての耐熱性に優れている。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の請求項は実施例により何ら制限を受けるものではない。
(実施例1)
<複合酸化物担体の合成・ゾルゲル法>
酢酸マグネシウム4水和物38重量部と、アルミニウムイソプロポキシド(Al[OCH(CH3 )2 ]3 )72重量部及びイソプロピルアルコール400重量部を混合(モル比でMg:Al=1:2)し、攪拌しながら80℃で約2時間還流した。そこへ60重量部のイオン交換水を滴下して加水分解を完結させ、さらに80℃で2時間還流を続け、その後放冷した。
【0021】
次にロータリーエバポレータを用いてウォーターバス上で溶媒を除去し、さらに室温で24時間自然乾燥させた後、大気中850℃で5時間焼成し、MgO・Al2 O3 の組成の複合酸化物担体粉末を得た。
<触媒の調製>
この担体粉末の所定量を、所定濃度のジニトロジアミノ白金硝酸溶液中に浸漬し、5時間攪拌した後に蒸発乾固させ、大気中にて300℃で3時間焼成してPtを担持させた。Ptの担持量は、担体100g(1L相当)に対してPtが2gである。
【0022】
次に、Ptが担持された担体粉末を、所定濃度の酢酸カリウム水溶液中に浸漬し、5時間攪拌した後に蒸発乾固させ、大気中にて300℃で3時間焼成してNOx 吸蔵元素としてのカリウム(K)を担持させた。Kの担持量は、担体100g(1L相当)に対してKが0.2molである。
最後に、PtとKが担持された担体粉末を水素気流中にて500℃で3時間処理し、実施例1の触媒粉末を調製した。
【0023】
(参考例1)
酢酸マグネシウム4水和物に代えて硝酸マグネシウムを45重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、MgO・Al2 O3 の組成の複合酸化物担体粉末を調製した。そして実施例1と同様にしてPtとKを担持し、同様に水素気流中で処理して参考例1の触媒粉末を調製した。
【0024】
(実施例2)
酢酸カリウムに代えて酢酸バリウムを用い、Kに代えて担体100gに対して0.2molのBaを担持したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の触媒粉末を調製した。
(実施例3)
カリウムの担持量を、担体100gに対して0.1molとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の触媒粉末を調製した。
【0025】
(参考例2)
酢酸マグネシウム4水和物に代えて硝酸マグネシウムを45重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、MgO・Al2 O3 の組成の複合酸化物担体粉末を調製した。そしてカリウムの担持量を、担体100gに対して0.1molとしたこと以外は実施例1と同様にして、参考例2の触媒粉末を調製した。
【0026】
(実施例4)
酢酸カリウムに代えて酢酸バリウムを用い、Kに代えて担体100gに対して0.1molのBaを担持したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の触媒粉末を調製した。
(比較例1)
酢酸マグネシウムを用いずアルミニウムイソプロポキシドのみから担体粉末を調製したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の触媒粉末を調製した。
【0027】
(比較例2)
酢酸マグネシウムを用いずアルミニウムイソプロポキシドのみから担体粉末を調製したこと、及びカリウムの担持量を担体100gに対して0.1molとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の触媒粉末を調製した。
(比較例3)
酢酸マグネシウムを用いず、アルミニウムイソプロポキシドのみから担体粉末を調製したこと、及びKに代えて担体100gに対して0.2molのBaを担持したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の触媒粉末を調製した。
【0028】
(比較例4)
酢酸マグネシウムを用いず、アルミニウムイソプロポキシドのみから担体粉末を調製したこと、及びKに代えて担体100gに対して0.1molのBaを担持したこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の触媒粉末を調製した。
(試験・評価)
上記したそれぞれの触媒粉末をそれぞれペレット化して耐久試験装置に充填し、表1に示すリーン側のモデル排ガスとリッチ側のモデル排ガスを、入りガス温度が700℃と800℃の2水準で、リーン…リッチを1分…4分で交互に切り替えながらそれぞれ5時間流した。
【0029】
【表1】
そして上記耐久試験後のそれぞれのペレット触媒について、常圧固定床流通反応装置を用い、表2に示すリーン側のモデル排ガスとリッチ側のモデル排ガスをそれぞれ2分毎に交互に繰り返して流速2L/minで流すことにより、NOx 浄化率を測定した。入りガス温度は300℃、400℃及び500℃の3水準である。耐久試験温度が700℃の場合の結果を表3、図1及び図2に、耐久試験温度が800℃の場合の結果を表4、図3及び図4に示す。なお、NOx 浄化率は次式で定義される。
【0030】
NOx 浄化率(%)=100×(1−4分間の出口ガス中のNOx 量/4分間の入りガス中のNOx 量)
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
表3〜表4及び図1〜図4より、実施例1、参考例1は比較例1に比べてNOx 浄化率が高く、実施例2は比較例3に比べてNOx 浄化率が高い。また実施例3、参考例2は比較例2に比べてNOx 浄化率が高く、実施例4は比較例4に比べてNOx 浄化率が高い。
【0034】
すなわち、ゾルゲル法により調製されたMgO・Al2 O3 で表される複合酸化物からなる担体を用いることにより、耐久後のNOx 浄化性能が格段に向上していることが明らかである。
さらに実施例1の方が参考例1よりもNOx 浄化率が高く、実施例3の方が参考例2よりNOx 浄化率が高いことから、出発原料として硝酸マグネシウムを用いるより酢酸マグネシウムを用いることが好ましいことが明らかである。
【0035】
【発明の効果】
すなわち本発明の排ガス浄化用触媒によれば、酸素過剰の雰囲気下における排ガス中のNOx 、CO及びHCを効率良く浄化できる。また800℃程度の高温に曝されたとしても、過渡燃焼において高いNOx 浄化率を維持し、きわめて耐熱性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例、参考例及び比較例の触媒の耐久後のNOx 浄化率を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例、参考例及び比較例の触媒の耐久後のNOx 浄化率を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例、参考例及び比較例の触媒の耐久後のNOx 浄化率を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例、参考例及び比較例の触媒の耐久後のNOx 浄化率を示すグラフである。
Claims (3)
- 酸素過剰の雰囲気下で排ガス中の窒素酸化物(NOx )、一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を浄化する排ガス浄化用触媒であって、
酢酸マグネシウムとアルミニウムアルコキシドを出発原料としてゾルゲル法により調製されたMgO・Al2 O3 で表される複合酸化物からなる担体と、該担体に担持されたアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種のNOx 吸蔵元素及び貴金属と、を含んでなることを特徴とする排ガス浄化用触媒。 - 前記アルミニウムアルコキシドはアルミニウムイソプロポキシドであることを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用触媒。
- 前記NOx 吸蔵元素はカリウム及び/又はバリウムであることを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用触媒。
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