JP3617540B2 - アゾ化合物及び該化合物を用いた偏光フィルム - Google Patents
アゾ化合物及び該化合物を用いた偏光フィルム Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なアゾ化合物、これを含む水溶性染料並びに該染料を高分子フィルムに二色性染料として含有、配向させた、高い偏光度を有する偏光フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
偏光フィルムに使用される偏光素子としては、従来、ヨウ素が用いられ、最近は有機系の染料の使用も検討されている。
しかしながら、従来使用されているヨウ素は、高い偏光性能を有するが、昇華性が大きいために偏光素子として偏光フィルムに含有せしめた時、その耐熱性が劣るという欠点も有する。
この欠点を改良するために、特開昭59−145255号公報、特開平1−313568号公報、特開平3−12606号公報及び特開平3−89203号公報等に、有機系染料を偏光素子とした耐熱性を改良した偏光フィルムが提案されている。しかし、かかる偏光フィルムは偏光性能の点で必ずしも満足できるものではないのが実情である。
以上のことから、染料系偏光フィルムでヨウ素系偏光フィルム並の偏光性能を示す染料の開発が望まれている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高分子フィルムを基材とした偏光フィルムに好適なアゾ化合物、及び該化合物を配向して含有せしめることにより、優れた偏光性能および耐熱性能を有する高性能な偏光フィルムを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、ある種のアゾ染料を偏光素子として用いることにより、偏光性能の高い偏光フィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
▲1▼下記一般式(1)(化3)又は(2)(化4)で表されるアゾ化合物、
▲2▼ 上記の化合物を含む水溶性染料、
▲3▼ 上記の化合物が、高分子フィルムに配向して含有される偏光フィルム、
▲4▼ 高分子フィルムが、2〜9倍の延伸倍率で延伸して得られたものである▲3▼の偏光フィルム、
▲5▼ 高分子フィルムが、セルロース樹脂、あるいはエチレン、プロピレン、アクリル酸、マレイン酸アクリルアミド等で変性されていてもよいポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールまたはポリビニルブチラール樹脂から選ばれる少なくとも1種である▲3▼又は▲4▼の偏光フィルム、
▲6▼ ▲2▼の水溶性染料で染色した高分子フィルムを2〜9倍の延伸倍率で延伸する偏光フィルムの製造方法、に関するものである。
【0005】
【化3】
(式中、R1 は水素原子又はスルホン酸基を、R2 は水素原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基を、R3 は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基又は炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基を、R4 は水素原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基を、R5 は水酸基又はアミノ基を、R6 は水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、β− ヒドロキシエチルアミノ基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基又はフェニル核がニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基又は塩素原子によって置換されていてもよいフェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基を、pは0又は1を、qは0、1又は2を、Aはスルホン酸基を0〜2個有し、かつパラ位が置換されていてもよいベンゼン環又はスルホン酸基を1〜2個有するナフタレン環を、Xは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子又はリチウム原子を、Yは窒素原子又は−CH基を示す。)
【0006】
【化4】
(式中、R1 は水素原子又はスルホン酸基を、R2 は水素原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基を、R3 は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基又は炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基を、R6 は水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、β− ヒドロキシエチルアミノ基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基又はフェニル核がニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基又は塩素原子によって置換されていてもよいフェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基を、pは0又は1を、qは0、1又は2を、Aはスルホン酸基を0〜2個有し、かつパラ位が置換されていてもよいベンゼン環又はスルホン酸基を1〜2個有するナフタレン環を、Xは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子又はリチウム原子を、Yは窒素原子又は−CH基を、Mは銅、ニッケル、亜鉛又は鉄を示す。)
【0007】
本発明の一般式(1)で表されるアゾ化合物は、例えば、次の方法で製造される。即ち、一般式(3)(化5)で表される化合物を公知の方法、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)等の非プロトン性溶媒中、塩化チオニルを用いてカルボン酸クロリドとし、一般式(4)(化5)で表される化合物と反応させることによって、一般式(5)(化5)で表されるアミド化合物が得られる。次に、一般式(5)で表される化合物を水中、60〜90℃で水硫化ソーダにより還元し、一般式(6)(化5)で表される化合物が得られる。一般式(6)で表される化合物を公知の方法、例えば、鉱酸中0〜40℃で亜硝酸ソーダを用いてジアゾ化し、一般式(7)(化5)で表されるナフタレン類と温度0〜40℃、pH3〜12でカップリングして目的とする一般式(1)で表されるアゾ化合物を得ることが出来る。勿論、これ以外の製造ルートによっても、本発明のアゾ化合物は製造することができる。
【0008】
【化5】
(上式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、A、X、Y、p及びqは一般式(1)と同じ意味を表す。)
【0009】
又、本発明の一般式(2)で表されるアゾ化合物は、例えば、次の方法により製造できる。即ち、一般式(8)(化6)で表される化合物を公知の方法、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)等の非プロトン性極性溶媒中、塩化チオニルを用いてカルボン酸クロリドとし、一般式(4)で表される化合物と反応させることによって、一般式(9)(化6)で表されるアミド化合物が得られる。次に、一般式(9)で表される化合物を水中、60〜90℃で水硫化ソーダにより還元し、一般式(10)(化6)で表される化合物が得られる。一般式(10)で表される化合物を公知の方法、例えば鉱酸中0〜40℃で亜硝酸ソーダを用いてジアゾ化し、一般式(7)でR5 がOH基であるナフタレン類と温度0〜40℃、pH3〜12でカップリングして一般式(11)(化6)で表されるアゾ化合物が得られる。
【0010】
【化6】
(上式中、R1 、R2 、R3 、R6 、A、X、Y、p及びqは一般式(2)と同じ意味を表す。)
【0011】
上記の如く得られた一般式(11)で表されるアゾ化合物は、次の方法によって容易に遷移金属錯化を受け、本発明の一般式(2)で表される遷移金属含有アゾ化合物を得ることができる。例えば、一般式(11)で表されるアゾ化合物を水又は/及び親水性溶媒中、例えば、エチレングリコール、エチルセルソルブ類と水との混合溶媒中に、溶解又は分散し、アルカリ性において、好ましくはアンモニア、又はモノエタノールアミン、ジエタノールアミンの存在下に、50〜100℃、好ましくは70℃〜100℃において、硫酸銅、塩化銅、テトラミン銅、酢酸銅、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸鉄、塩化鉄の水溶液を作用させることによって、目的とする一般式(2)で表される遷移金属含有アゾ化合物を得ることができる。
本発明において、一般式(1)または(2)で表されるアゾ化合物中、一般式(12)(化7)で表される部分構造の具体的な例としては、一般式(13)〜(16)(化7)が挙げられる。
【0012】
【化7】
(上式中、R1 、R2 及びR3 は一般式(1)と同じ意味を表す。また、R7 は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノシアノ基、カルボキシル基、炭素数2〜3のアルコキシカルボニル基又はスルホン酸基を、R8 及びR9 は、各々水素原子又はスルホン酸基を示し、R10は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基又はスルホン酸基を示し、R11及びR12は各々水素原子又はスルホン酸基を、mは1又は2を、nは1又は2を表す。)
本発明において、一般式(13)で表されるアミノスチルベン類は、常法により製造できる。例えば、代表的には、工業化学雑誌、73巻、1号、187 〜194 頁(1970年)、或いは、Indian Journal of Chemistry, vol.25 B. May 1986, p.485〜488 に記載されている公知の方法と同様にして製造することができる。即ち、代表的には、一般式(17)(化8)で表される化合物と一般式(18)(化8)で表される化合物とを、ピペリジン等の塩基の存在下に、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒中、100〜200℃の温度において反応させるか、又はベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(BTEA)等の触媒の存在下に、アルカリ水溶液中、10〜100℃の温度において反応させて、一般式(19)(化8)で表されるニトロスチルベン類が得られる。これらは、一部市販されている。更に、一般式(19)で表される化合物のニトロ基を公知の方法、例えば、水中、60〜90℃で水硫化ソーダにより還元することにより、一般式(20)(化8)で表される化合物を得ることができる。これは、一般式(4)の具体例である。
【0013】
【化8】
(式中、R7 、R8 及びR9 は一般式(13)と同じ意味を表す。)
【0014】
また、一般式(14)で表されるモノアゾ化合物は、通常のアゾ染料の製法に従い、公知のジアゾ化、カップリング法で製造することが出来る。即ち、一般式(21)(化9)で表される化合物を、公知の方法、例えば、鉱酸中、0〜40℃で亜硝酸ソーダを用いてジアゾ化し、一般式(22)(化9)で表されるアニリン類と温度0〜40℃、pH3〜12でカップリングして、一般式(23)(化9)で表されるモノアゾ化合物が得られる。これは、一般式(4)の具体例である。
【0015】
【化9】
(上式中、R1 、R2 及びR3 は一般式(1)と、R10、R11及びR12は一般式(14)と同じ意味を表す。)
【0016】
また、一般式(15)及び一般式(16)で表されるモノアゾ化合物は、通常のアゾ染料の製法に従い、公知のジアゾ化、カップリング法で製造することが出来る。即ち、一般式(24)(化10)で表されるナフチルアミン類を、公知の方法、例えば、鉱酸中、0〜40℃で亜硝酸ソーダを用いてジアゾ化し、一般式(22)で表されるアニリン類と温度0〜40℃、pH3〜12でカップリングして一般式(25)(化10)で表されるモノアゾ化合物が得られる。また、一般式(26)(化10)で表されるナフチルアミン類を、公知の方法でジアゾ化し、一般式(22)で表されるアニリン類とカップリングして一般式(27)(化10)で表されるモノアゾ化合物が得られる。これらは、一般式(4)の具体例である。
【0017】
【化10】
(上式中、R1 、R2 、R3 及びXは一般式(1)と同じ意味を表す。m、nは各々1又は2を表す。)
【0018】
本発明の一般式(1)および(2)で表される化合物は、一般式(12)の部分構造が、好ましくは、一般式(13)〜(16)であり、さらに好ましくは、一般式(13)〜(15)であり、特に好ましくは、一般式(13)の構造であり、R6 が水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、β−ヒドロキシエチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基である化合物である。
本発明の一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物の部分構造である一般式(13)において、R7 は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基であり、さらに好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、ニトロ基、アミノ基であり、特に好ましくは、水素原子である。また、R8 、R9 は、好ましくは、両方あるいは一方がスルホン酸基であり、さらに好ましくは、R8 及びR9 の両方がスルホン酸基である。
【0019】
本発明の一般式(1)及び一般式(2)で表されるアゾ化合物は、通常ナトリウム塩として利用するが、それらは遊離酸として、或いは、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アルキルアミン類、エタノールアミン類の塩としても利用することが出来る。
本発明において、一般式(22)で表されるアニリン類の具体的な例としては、p−クレシジン、2,5−ジメトキシアニリン、2,5−ジエトキシアニリン、o−アニシジン、m−アセチルアミノ−o− アニシジン、m−アセチルアミノ−o− トルイジン、5−アセチルアミノ−2− エトキシアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−キシリジン、m−アニシジン、m−アセチルアミノアニリン、アニリン等が挙げられる。
【0020】
又、一般式(7)で表されるナフタレン類の具体的な例としては、1−ヒドロキシ−6− アミノナフタレン−3− スルホン酸(以下J酸と略す。)N−フェニルJ酸、N−メチルJ酸、N−アセチルJ酸、N−メチル−N− アセチルJ酸、N−ベンゾイルJ酸、N−(3− または4−カルボキシフェニル) J酸、N−(3− または4−スルホフェニル) J酸、N−(4− アミノ−3− スルホフェニル) J酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシフェニル) J酸、N−(4− アミノベンゾイル)J酸、N−(4− アミノ−3− スルホベンゾイル) J酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシベンゾイル) J酸、N−(4− ニトロフェニル)J酸、N−(4− ニトロベンゾイル) J酸、N−(4− アミノ−3− メチルベンゾイル)J酸、N−(3または4− カルボキシベンゾイル)J酸、N−(3− または4− カルボキシベンゾイル)J酸、N−(3− または4− スルホベンゾイル)J酸、N−( β− ヒドロキシエチル)J酸、N−(p−メチルフェニル)J酸、
1−ヒドキシ−7− アミノナフタレン−3− スルホン酸(以下γ酸と略す。)、N−フェニルγ酸、N−メチルγ酸、N−アセチルγ酸、N−メチル−N− アセチルγ酸、N−ベンゾイルγ酸、N−(3− または4−カルボキシフェニル) γ酸、N−(3− または4−スルホフェニル) γ酸、N−(4− アミノ−3− スルホフェニル) γ酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシフェニル) γ酸、N−(4− アミノベンゾイル)γ酸、N−(4− アミノ−3− スルホベンゾイル) γ酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシベンゾイル) γ酸、N−(4− ニトロフェニル)γ酸、N−(4− ニトロベンゾイル) γ酸、N−(4− アミノ−3− メチルベンゾイル)γ酸、N−(3または4− カルボキシベンゾイル)γ酸、N−(3− または4− カルボキシベンゾイル)γ酸、N−(3− または4− スルホベンゾイル)γ酸、N−( β− ヒドロキシエチル)γ酸、
【0021】
1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−3,6− ジスルホン酸(以下H酸と略す。)、N−アセチルH酸、N−ベンゾイルH酸、N−(p− トルエンスルホニル)H酸、N−( ベンゼンスルホニル)H酸、N−(p− クロルベンゾイル)H酸、
1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−3,5− ジスルホン酸(以下K 酸と略す。)、N−アセチルK酸、
1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−5,7− ジスルホン酸(SS酸), 1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−5− スルホン酸(S酸), 1−ヒドロキシ−7− アミノナフタレン−3,6− ジスルホン酸、1−ナフトール−3,6− ジスルホン酸,1−ナフトール−4− スルホン酸、4−アミノ−1− ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。これらの一部は市販されている。
【0022】
本発明の水溶性染料は、一般式(1)及び(2)で表されるアゾ化合物を少なくとも1種含有するものである。
一般式(1)及び(2)で表されるアゾ化合物は、単独で又はそれら同士で混合して、更にはこれらの化合物と他の染料と配合することにより、種々の色相の水溶性染料として用いられる。
【0023】
この場合に用いる他の染料としては、本発明に用いる化合物の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収を有する染料であって、二色性の高いものであれば、どんなものでもよいが、特に好ましい染料としては、カラー・インデックス・ジェネリック・ネーム(C.I.Generic Name)で表して、次のようなものが例示される。例えば、C.I.Direct Yellow 12, C.I.Direct Yellow 44, C.I.Direct Yellow 28, C.I.Direct Yellow 142 , C.I.Direct Red 2 ,C.I.Direct Red 79 、C.I.Direct Red 81 、C.I.Direct Red 247、C.I.Direct Vioret 9 、C.I.Direct Vioret 51、C.I.Direct Orange 26、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 107 、C.I.Direct Blue 1 、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 78、C.I.Direct Blue 168 、C.I.Direct Blue 202 、C.I.Direct Brown 106、C.I.Direct Brown 223、C.I.Direct Green 85 、C.I.Direct Black 17 、C.I.Direct Black 19 等である。特に多用されるグレーまたはブラック用の配合成分として、一般式(1)又は(2)で表される化合物を使用した場合、優れた偏光性能及び好ましい可視光吸収特性を示す偏光フィルムが得られる。また、その耐湿熱性も優れている。
【0024】
本発明の偏光フィルムに用いる高分子フィルムとしては、親水性高分子フィルムが好ましく、その素材の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、あるいはそれらをエチレン、プロピレン、アクリル酸またはマレイン酸アクリルアミド等で変性したもの、またはセルロース樹脂等が挙げられる。これらの高分子重合体は、水あるいは親水性有機溶剤への溶解性が良好であり、本発明の化合物との相溶性も良好である上、製膜性に優れ且つ製膜後延伸配向させたときに本発明の化合物が配向し易い点で特に有用である。
【0025】
上記の高分子重合体及び本発明の化合物を用いて、本発明の偏光フィルムを製造する方法としては、▲1▼高分子重合体を製膜してフィルムとし、フィルムを延伸した後、本発明の化合物で染色する方法、▲2▼高分子重合体を製膜してフィルムとし、本発明の化合物で染色した後、染色フィルムを延伸する方法、▲3▼高分子重合体の溶液に本発明の化合物を添加し、原液染色で製膜した染色フィルムを延伸する方法、等を挙げることができる。
上記▲1▼及び▲2▼におけるフィルムの染色方法は、一般的に以下の方法によって行うことができる。即ち、本発明の化合物をフィルムに対して0.1 〜5wt%、好ましくは 0.8〜2.5 wt%含む染浴に、必要に応じて塩化ナトリウム、ボウ硝等の無機塩、界面活性剤等の染色助剤を加えた後、20〜80℃、好ましくは30〜50℃で1〜60分間、好ましくは3〜20分間高分子フィルムを浸漬して染色し、乾燥する。なお、染浴は、本発明の化合物0.01〜2.0g、好ましくは0.1〜1.0を水1リットルに溶解して調製する。
【0026】
上記▲3▼の染色フィルムの製造方法は、一般的に下記の方法によって行うことができる。即ち、高分子重合体を水及び/又はアルコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド等の親水性有機溶媒に溶解し、本発明の染料を添加して原液染色を行い、この染色原液を流延法、溶液塗布法、押出法等により製膜して染色フィルムを製造する。
溶媒に溶解させる高分子重合体の濃度としては、高分子重合体の種類によっても異なるが、5〜30wt%、好ましくは10〜20wt%である。また、溶媒に溶解する本発明の化合物の濃度としては、高分子重合体の種類、化合物の種類、製膜したときのフィルム厚みあるいは偏光フィルムとしたときの要求性能等によって変わるが、高分子重合体に対して0.1 〜5wt%、好ましくは 0.8〜2.5 wt%程度である。
【0027】
上記▲1▼、▲2▼及び▲3▼のようにして、染色及び製膜して得られた未延伸フィルムは、適当な方法によって、一軸方向に延伸する。延伸処理することによって、染色分子が配向し、偏光性能が発現する。一軸に延伸する方法としては、湿式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にてロール間圧縮延伸を行う方法等があり、いずれの方法を用いて行ってもよい。延伸倍率は2〜9倍にて行われるが、ポリビニルアルコール及びその誘導体を用いた場合は、2.5〜6倍の範囲が好ましい。
延伸、配向処理したあとで、該延伸フィルムの耐水性向上と偏光性向上の目的でホウ酸処理を実施する。ホウ酸処理により、偏光フィルムの光線透過率と偏光度が向上する。ホウ酸処理の条件は、用いる親水性高分子重合体の種類、化合物の種類によって異なるが、一般的には、ホウ酸濃度としては1〜15wt%、好ましくは3〜10wt%、また処理温度としては30〜80℃、好ましくは、40〜80℃の範囲にあることが望ましい。ホウ酸濃度が1wt%以下、温度が30℃以下の場合は処理効果が小さく、また、ホウ酸濃度が15wt%以上、温度80℃以上の場合は偏光フィルムがもろくなり易く好ましくない。
このようにして製造した偏光フィルムは、種々の加工を施して使用することができる。例えば、フィルム又はシートにしてそのまま使用する他、使用目的によっては、トリアセテート、アクリル又はウレタン系等のポリマーによりラミネーションして保護層を形成し、或いは、偏光フィルムの表面に蒸着、スパッタリングまたは塗布法により、インジウム−スズ系酸化物等の透明導電性膜を形成して実用に供する。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を具体例によって説明するが、これらは例示的なものであり、本発明は、これらに限定されるものではない。実施例中、構造式はすべて遊離酸の形で示し部は重量部を示す。
なお、本発明における偏光度とは次の方法によって測定した値である。即ち、2枚の偏光フィルムを延伸方向が平行となるべく重ねて分光光度計の光路におき測定した可視領域最大吸収波長での光線透過率(T‖)および2枚の偏光フィルムを延伸方向が直交すべく重ねて測定した同波長での光線透過率(T⊥)より次式(数1)を用いて偏光度(V)を算出した。
【0029】
【数1】
【0030】
実施例1
N−メチルピロリドン120mlに、3−メトキシ−4− ニトロ安息香酸11.8部を20℃で加えて、さらに塩化チオニル7.6部を加えて25℃で2時間反応させた。次いで、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸22部を加えて25℃で4時間反応させたのち、アセトン500部中に排出し、濾過した。濾液に飽和食塩水900部を加えて析出した結晶を濾別、先の濾塊とともに乾燥して下記化合物(A)24.8部を得た。
次に、化合物(A)(化11)24部を水360部に加えて50℃に昇温し、13%水硫化ソーダ水溶液36部を10分かけて滴下し、80℃で1時間保温した。反応終了後、30℃まで冷却し、食塩78部を加えて沈澱させ、濾過した。飽和食塩水で洗浄し、乾燥させ化合物(B)(化11)を26部得た。
化合物(B)26部を水600部中に加え、濃塩酸16.6部を加え、2時間攪拌後、亜硝酸ナトリウム4部を加えて5℃で3時間反応させた。次いで、スルファミン酸で過剰の亜硝酸を消去した。このジアゾ液を、10%炭酸ナトリウム水溶液274部中にベンゾイルJ酸27部を懸濁させた液中に5℃で10分かかって加え、5℃で2時間攪拌させたのち、濾過、乾燥を行い、アゾ化合物(C)(化11)22部を得た。
【0031】
【化11】
化合物(C)を0.25g/lの染浴を調製し42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールを浸漬し、6分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して赤色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの吸収極大(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =530nmで、Vは99.7%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0032】
実施例2
実施例1記載の化合物(C)11部を、水110部に加え、モノエタノールアミン7.5部、アンモニア水3.9部及び硫酸銅4部を加えて、90℃で6時間攪拌した。食塩を大過剰に加え、塩析し、1時間攪拌した後、濾過し、10%食塩水で洗浄し、乾燥して、下記式で表されるアゾ化合物(D)(化12)12部を得た。
【0033】
【化12】
化合物(D)を0.25g/lの染浴を調製し42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールを浸漬し、8分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して赤紫色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの吸収極大(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =555nmで、Vは99.6%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0034】
実施例3
スルファニル酸52部を水300部に懸濁し、炭酸ナトリウム16.5部を加えて攪拌し、濃塩酸75部を加え、25℃で1時間攪拌後5℃まで冷却し、亜硝酸ナトリウム21部を加えて5℃で2時間反応させた。次いでスルファミン酸で過剰の亜硝酸を消去した。この中へp−クレシジン42部を塩酸水溶液にとして加え、5℃で3時間攪拌した後、酢酸ナトリウムを加えてpH4まで中和して1時間反応させた。反応終了後濾過、乾燥して下記化合物(E)(化13)を92部得た。
実施例1中の4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸のかわりに化合物(E)を、またベンゾイルJ酸のかわりにH酸をもちいた以外は同様にして反応を行い、アゾ化合物(F)(化13)を得た。
【0035】
【化13】
このアゾ化合物を実施例1と同様にポリビニルアルコールフィルムを処理し赤紫色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムは単板透過率40%、λmax =550nmで、Vは99.4%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0036】
実施例4
実施例3記載の化合物(F)を実施例2と同様にして反応を行い、下記化合物(G)(化14)を得た。
【0037】
【化14】
このアゾ化合物を実施例1と同様にポリビニルアルコールフィルムを処理し紫色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムは単板透過率41%、λmax =575nmで、Vは99.2%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0038】
実施例5〜48
実施例1において、色素を表−1(表1、表2)、表−2(表3)、表−3(表4、表5)、表−4(表6、表7)、表−5(表8)、表−6(表9、表10)に示す各種アゾ化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、偏光フィルムを作製した。
各表に、色素の構造式、ポリビニルアルコールフィルムを染色して得た偏光フィルムの単板透過率、偏光度及び色相を示した。耐湿熱性については、偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置した後、色相の変化及び偏光度の低下が実質的に認められなかったものについて「○」で表示した。得られた偏光フィルムは、いずれも優れた偏光性能を示していた。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
【表10】
【0049】
実施例49
実施例1と同様な方法により、本発明の実施例2の染料を0.063g/l、C.I.Direct Yellow 12を0.02g/l、C.I.Direct Orange 39を0.04g/l、C.I.Direct Blue 168 を0.04g/l、C.I.Direct Blue 202 を0.21g/lに調整した染浴を用いて、中性色の偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの偏光度は、単板透過率41%における偏光度は99.2%と優れていた。
【0050】
比較例1
実施例1において合成した染料の代わりに特開昭59−145255号公報、実施例3において公開されている下記構造式(H)(化15)で表される染料を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの極大吸収波長(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =625nmでVは98.0%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0051】
【化15】
【0052】
比較例2
実施例1において合成した染料の代わりに特開平3−89203号公報中において公開されている式(IV)で公開されている下記構造式(I)(化16)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの極大吸収波長(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =580nmでVは98.0%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0053】
【化16】
【0054】
比較例3
実施例1において合成した染料の代わりに特開平3−12606号公報中における実施例1中で式(2)として公開されている下記構造式(J)(化17)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの極大吸収波長(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =600nmでVは98.5%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0055】
【化17】
【0056】
【発明の効果】
本発明の新規なアゾ化合物を含む水溶性染料、及びこれを用いて得た偏光フィルムは、高い熱安定性並びに高い偏光度を与えるものであり、従来のヨウ素を用いた偏光フィルムに匹敵する光学特性を示す、という工業的価値ある顕著な効果を奏するものである。
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なアゾ化合物、これを含む水溶性染料並びに該染料を高分子フィルムに二色性染料として含有、配向させた、高い偏光度を有する偏光フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
偏光フィルムに使用される偏光素子としては、従来、ヨウ素が用いられ、最近は有機系の染料の使用も検討されている。
しかしながら、従来使用されているヨウ素は、高い偏光性能を有するが、昇華性が大きいために偏光素子として偏光フィルムに含有せしめた時、その耐熱性が劣るという欠点も有する。
この欠点を改良するために、特開昭59−145255号公報、特開平1−313568号公報、特開平3−12606号公報及び特開平3−89203号公報等に、有機系染料を偏光素子とした耐熱性を改良した偏光フィルムが提案されている。しかし、かかる偏光フィルムは偏光性能の点で必ずしも満足できるものではないのが実情である。
以上のことから、染料系偏光フィルムでヨウ素系偏光フィルム並の偏光性能を示す染料の開発が望まれている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高分子フィルムを基材とした偏光フィルムに好適なアゾ化合物、及び該化合物を配向して含有せしめることにより、優れた偏光性能および耐熱性能を有する高性能な偏光フィルムを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、ある種のアゾ染料を偏光素子として用いることにより、偏光性能の高い偏光フィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
▲1▼下記一般式(1)(化3)又は(2)(化4)で表されるアゾ化合物、
▲2▼ 上記の化合物を含む水溶性染料、
▲3▼ 上記の化合物が、高分子フィルムに配向して含有される偏光フィルム、
▲4▼ 高分子フィルムが、2〜9倍の延伸倍率で延伸して得られたものである▲3▼の偏光フィルム、
▲5▼ 高分子フィルムが、セルロース樹脂、あるいはエチレン、プロピレン、アクリル酸、マレイン酸アクリルアミド等で変性されていてもよいポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールまたはポリビニルブチラール樹脂から選ばれる少なくとも1種である▲3▼又は▲4▼の偏光フィルム、
▲6▼ ▲2▼の水溶性染料で染色した高分子フィルムを2〜9倍の延伸倍率で延伸する偏光フィルムの製造方法、に関するものである。
【0005】
【化3】
(式中、R1 は水素原子又はスルホン酸基を、R2 は水素原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基を、R3 は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基又は炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基を、R4 は水素原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基を、R5 は水酸基又はアミノ基を、R6 は水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、β− ヒドロキシエチルアミノ基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基又はフェニル核がニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基又は塩素原子によって置換されていてもよいフェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基を、pは0又は1を、qは0、1又は2を、Aはスルホン酸基を0〜2個有し、かつパラ位が置換されていてもよいベンゼン環又はスルホン酸基を1〜2個有するナフタレン環を、Xは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子又はリチウム原子を、Yは窒素原子又は−CH基を示す。)
【0006】
【化4】
(式中、R1 は水素原子又はスルホン酸基を、R2 は水素原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基を、R3 は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基又は炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基を、R6 は水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、β− ヒドロキシエチルアミノ基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基又はフェニル核がニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基又は塩素原子によって置換されていてもよいフェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基を、pは0又は1を、qは0、1又は2を、Aはスルホン酸基を0〜2個有し、かつパラ位が置換されていてもよいベンゼン環又はスルホン酸基を1〜2個有するナフタレン環を、Xは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子又はリチウム原子を、Yは窒素原子又は−CH基を、Mは銅、ニッケル、亜鉛又は鉄を示す。)
【0007】
本発明の一般式(1)で表されるアゾ化合物は、例えば、次の方法で製造される。即ち、一般式(3)(化5)で表される化合物を公知の方法、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)等の非プロトン性溶媒中、塩化チオニルを用いてカルボン酸クロリドとし、一般式(4)(化5)で表される化合物と反応させることによって、一般式(5)(化5)で表されるアミド化合物が得られる。次に、一般式(5)で表される化合物を水中、60〜90℃で水硫化ソーダにより還元し、一般式(6)(化5)で表される化合物が得られる。一般式(6)で表される化合物を公知の方法、例えば、鉱酸中0〜40℃で亜硝酸ソーダを用いてジアゾ化し、一般式(7)(化5)で表されるナフタレン類と温度0〜40℃、pH3〜12でカップリングして目的とする一般式(1)で表されるアゾ化合物を得ることが出来る。勿論、これ以外の製造ルートによっても、本発明のアゾ化合物は製造することができる。
【0008】
【化5】
(上式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、A、X、Y、p及びqは一般式(1)と同じ意味を表す。)
【0009】
又、本発明の一般式(2)で表されるアゾ化合物は、例えば、次の方法により製造できる。即ち、一般式(8)(化6)で表される化合物を公知の方法、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)等の非プロトン性極性溶媒中、塩化チオニルを用いてカルボン酸クロリドとし、一般式(4)で表される化合物と反応させることによって、一般式(9)(化6)で表されるアミド化合物が得られる。次に、一般式(9)で表される化合物を水中、60〜90℃で水硫化ソーダにより還元し、一般式(10)(化6)で表される化合物が得られる。一般式(10)で表される化合物を公知の方法、例えば鉱酸中0〜40℃で亜硝酸ソーダを用いてジアゾ化し、一般式(7)でR5 がOH基であるナフタレン類と温度0〜40℃、pH3〜12でカップリングして一般式(11)(化6)で表されるアゾ化合物が得られる。
【0010】
【化6】
(上式中、R1 、R2 、R3 、R6 、A、X、Y、p及びqは一般式(2)と同じ意味を表す。)
【0011】
上記の如く得られた一般式(11)で表されるアゾ化合物は、次の方法によって容易に遷移金属錯化を受け、本発明の一般式(2)で表される遷移金属含有アゾ化合物を得ることができる。例えば、一般式(11)で表されるアゾ化合物を水又は/及び親水性溶媒中、例えば、エチレングリコール、エチルセルソルブ類と水との混合溶媒中に、溶解又は分散し、アルカリ性において、好ましくはアンモニア、又はモノエタノールアミン、ジエタノールアミンの存在下に、50〜100℃、好ましくは70℃〜100℃において、硫酸銅、塩化銅、テトラミン銅、酢酸銅、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸鉄、塩化鉄の水溶液を作用させることによって、目的とする一般式(2)で表される遷移金属含有アゾ化合物を得ることができる。
本発明において、一般式(1)または(2)で表されるアゾ化合物中、一般式(12)(化7)で表される部分構造の具体的な例としては、一般式(13)〜(16)(化7)が挙げられる。
【0012】
【化7】
(上式中、R1 、R2 及びR3 は一般式(1)と同じ意味を表す。また、R7 は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノシアノ基、カルボキシル基、炭素数2〜3のアルコキシカルボニル基又はスルホン酸基を、R8 及びR9 は、各々水素原子又はスルホン酸基を示し、R10は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基又はスルホン酸基を示し、R11及びR12は各々水素原子又はスルホン酸基を、mは1又は2を、nは1又は2を表す。)
本発明において、一般式(13)で表されるアミノスチルベン類は、常法により製造できる。例えば、代表的には、工業化学雑誌、73巻、1号、187 〜194 頁(1970年)、或いは、Indian Journal of Chemistry, vol.25 B. May 1986, p.485〜488 に記載されている公知の方法と同様にして製造することができる。即ち、代表的には、一般式(17)(化8)で表される化合物と一般式(18)(化8)で表される化合物とを、ピペリジン等の塩基の存在下に、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒中、100〜200℃の温度において反応させるか、又はベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(BTEA)等の触媒の存在下に、アルカリ水溶液中、10〜100℃の温度において反応させて、一般式(19)(化8)で表されるニトロスチルベン類が得られる。これらは、一部市販されている。更に、一般式(19)で表される化合物のニトロ基を公知の方法、例えば、水中、60〜90℃で水硫化ソーダにより還元することにより、一般式(20)(化8)で表される化合物を得ることができる。これは、一般式(4)の具体例である。
【0013】
【化8】
(式中、R7 、R8 及びR9 は一般式(13)と同じ意味を表す。)
【0014】
また、一般式(14)で表されるモノアゾ化合物は、通常のアゾ染料の製法に従い、公知のジアゾ化、カップリング法で製造することが出来る。即ち、一般式(21)(化9)で表される化合物を、公知の方法、例えば、鉱酸中、0〜40℃で亜硝酸ソーダを用いてジアゾ化し、一般式(22)(化9)で表されるアニリン類と温度0〜40℃、pH3〜12でカップリングして、一般式(23)(化9)で表されるモノアゾ化合物が得られる。これは、一般式(4)の具体例である。
【0015】
【化9】
(上式中、R1 、R2 及びR3 は一般式(1)と、R10、R11及びR12は一般式(14)と同じ意味を表す。)
【0016】
また、一般式(15)及び一般式(16)で表されるモノアゾ化合物は、通常のアゾ染料の製法に従い、公知のジアゾ化、カップリング法で製造することが出来る。即ち、一般式(24)(化10)で表されるナフチルアミン類を、公知の方法、例えば、鉱酸中、0〜40℃で亜硝酸ソーダを用いてジアゾ化し、一般式(22)で表されるアニリン類と温度0〜40℃、pH3〜12でカップリングして一般式(25)(化10)で表されるモノアゾ化合物が得られる。また、一般式(26)(化10)で表されるナフチルアミン類を、公知の方法でジアゾ化し、一般式(22)で表されるアニリン類とカップリングして一般式(27)(化10)で表されるモノアゾ化合物が得られる。これらは、一般式(4)の具体例である。
【0017】
【化10】
(上式中、R1 、R2 、R3 及びXは一般式(1)と同じ意味を表す。m、nは各々1又は2を表す。)
【0018】
本発明の一般式(1)および(2)で表される化合物は、一般式(12)の部分構造が、好ましくは、一般式(13)〜(16)であり、さらに好ましくは、一般式(13)〜(15)であり、特に好ましくは、一般式(13)の構造であり、R6 が水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、β−ヒドロキシエチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基である化合物である。
本発明の一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物の部分構造である一般式(13)において、R7 は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基であり、さらに好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、ニトロ基、アミノ基であり、特に好ましくは、水素原子である。また、R8 、R9 は、好ましくは、両方あるいは一方がスルホン酸基であり、さらに好ましくは、R8 及びR9 の両方がスルホン酸基である。
【0019】
本発明の一般式(1)及び一般式(2)で表されるアゾ化合物は、通常ナトリウム塩として利用するが、それらは遊離酸として、或いは、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アルキルアミン類、エタノールアミン類の塩としても利用することが出来る。
本発明において、一般式(22)で表されるアニリン類の具体的な例としては、p−クレシジン、2,5−ジメトキシアニリン、2,5−ジエトキシアニリン、o−アニシジン、m−アセチルアミノ−o− アニシジン、m−アセチルアミノ−o− トルイジン、5−アセチルアミノ−2− エトキシアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−キシリジン、m−アニシジン、m−アセチルアミノアニリン、アニリン等が挙げられる。
【0020】
又、一般式(7)で表されるナフタレン類の具体的な例としては、1−ヒドロキシ−6− アミノナフタレン−3− スルホン酸(以下J酸と略す。)N−フェニルJ酸、N−メチルJ酸、N−アセチルJ酸、N−メチル−N− アセチルJ酸、N−ベンゾイルJ酸、N−(3− または4−カルボキシフェニル) J酸、N−(3− または4−スルホフェニル) J酸、N−(4− アミノ−3− スルホフェニル) J酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシフェニル) J酸、N−(4− アミノベンゾイル)J酸、N−(4− アミノ−3− スルホベンゾイル) J酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシベンゾイル) J酸、N−(4− ニトロフェニル)J酸、N−(4− ニトロベンゾイル) J酸、N−(4− アミノ−3− メチルベンゾイル)J酸、N−(3または4− カルボキシベンゾイル)J酸、N−(3− または4− カルボキシベンゾイル)J酸、N−(3− または4− スルホベンゾイル)J酸、N−( β− ヒドロキシエチル)J酸、N−(p−メチルフェニル)J酸、
1−ヒドキシ−7− アミノナフタレン−3− スルホン酸(以下γ酸と略す。)、N−フェニルγ酸、N−メチルγ酸、N−アセチルγ酸、N−メチル−N− アセチルγ酸、N−ベンゾイルγ酸、N−(3− または4−カルボキシフェニル) γ酸、N−(3− または4−スルホフェニル) γ酸、N−(4− アミノ−3− スルホフェニル) γ酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシフェニル) γ酸、N−(4− アミノベンゾイル)γ酸、N−(4− アミノ−3− スルホベンゾイル) γ酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシベンゾイル) γ酸、N−(4− ニトロフェニル)γ酸、N−(4− ニトロベンゾイル) γ酸、N−(4− アミノ−3− メチルベンゾイル)γ酸、N−(3または4− カルボキシベンゾイル)γ酸、N−(3− または4− カルボキシベンゾイル)γ酸、N−(3− または4− スルホベンゾイル)γ酸、N−( β− ヒドロキシエチル)γ酸、
【0021】
1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−3,6− ジスルホン酸(以下H酸と略す。)、N−アセチルH酸、N−ベンゾイルH酸、N−(p− トルエンスルホニル)H酸、N−( ベンゼンスルホニル)H酸、N−(p− クロルベンゾイル)H酸、
1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−3,5− ジスルホン酸(以下K 酸と略す。)、N−アセチルK酸、
1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−5,7− ジスルホン酸(SS酸), 1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−5− スルホン酸(S酸), 1−ヒドロキシ−7− アミノナフタレン−3,6− ジスルホン酸、1−ナフトール−3,6− ジスルホン酸,1−ナフトール−4− スルホン酸、4−アミノ−1− ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。これらの一部は市販されている。
【0022】
本発明の水溶性染料は、一般式(1)及び(2)で表されるアゾ化合物を少なくとも1種含有するものである。
一般式(1)及び(2)で表されるアゾ化合物は、単独で又はそれら同士で混合して、更にはこれらの化合物と他の染料と配合することにより、種々の色相の水溶性染料として用いられる。
【0023】
この場合に用いる他の染料としては、本発明に用いる化合物の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収を有する染料であって、二色性の高いものであれば、どんなものでもよいが、特に好ましい染料としては、カラー・インデックス・ジェネリック・ネーム(C.I.Generic Name)で表して、次のようなものが例示される。例えば、C.I.Direct Yellow 12, C.I.Direct Yellow 44, C.I.Direct Yellow 28, C.I.Direct Yellow 142 , C.I.Direct Red 2 ,C.I.Direct Red 79 、C.I.Direct Red 81 、C.I.Direct Red 247、C.I.Direct Vioret 9 、C.I.Direct Vioret 51、C.I.Direct Orange 26、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 107 、C.I.Direct Blue 1 、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 78、C.I.Direct Blue 168 、C.I.Direct Blue 202 、C.I.Direct Brown 106、C.I.Direct Brown 223、C.I.Direct Green 85 、C.I.Direct Black 17 、C.I.Direct Black 19 等である。特に多用されるグレーまたはブラック用の配合成分として、一般式(1)又は(2)で表される化合物を使用した場合、優れた偏光性能及び好ましい可視光吸収特性を示す偏光フィルムが得られる。また、その耐湿熱性も優れている。
【0024】
本発明の偏光フィルムに用いる高分子フィルムとしては、親水性高分子フィルムが好ましく、その素材の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、あるいはそれらをエチレン、プロピレン、アクリル酸またはマレイン酸アクリルアミド等で変性したもの、またはセルロース樹脂等が挙げられる。これらの高分子重合体は、水あるいは親水性有機溶剤への溶解性が良好であり、本発明の化合物との相溶性も良好である上、製膜性に優れ且つ製膜後延伸配向させたときに本発明の化合物が配向し易い点で特に有用である。
【0025】
上記の高分子重合体及び本発明の化合物を用いて、本発明の偏光フィルムを製造する方法としては、▲1▼高分子重合体を製膜してフィルムとし、フィルムを延伸した後、本発明の化合物で染色する方法、▲2▼高分子重合体を製膜してフィルムとし、本発明の化合物で染色した後、染色フィルムを延伸する方法、▲3▼高分子重合体の溶液に本発明の化合物を添加し、原液染色で製膜した染色フィルムを延伸する方法、等を挙げることができる。
上記▲1▼及び▲2▼におけるフィルムの染色方法は、一般的に以下の方法によって行うことができる。即ち、本発明の化合物をフィルムに対して0.1 〜5wt%、好ましくは 0.8〜2.5 wt%含む染浴に、必要に応じて塩化ナトリウム、ボウ硝等の無機塩、界面活性剤等の染色助剤を加えた後、20〜80℃、好ましくは30〜50℃で1〜60分間、好ましくは3〜20分間高分子フィルムを浸漬して染色し、乾燥する。なお、染浴は、本発明の化合物0.01〜2.0g、好ましくは0.1〜1.0を水1リットルに溶解して調製する。
【0026】
上記▲3▼の染色フィルムの製造方法は、一般的に下記の方法によって行うことができる。即ち、高分子重合体を水及び/又はアルコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド等の親水性有機溶媒に溶解し、本発明の染料を添加して原液染色を行い、この染色原液を流延法、溶液塗布法、押出法等により製膜して染色フィルムを製造する。
溶媒に溶解させる高分子重合体の濃度としては、高分子重合体の種類によっても異なるが、5〜30wt%、好ましくは10〜20wt%である。また、溶媒に溶解する本発明の化合物の濃度としては、高分子重合体の種類、化合物の種類、製膜したときのフィルム厚みあるいは偏光フィルムとしたときの要求性能等によって変わるが、高分子重合体に対して0.1 〜5wt%、好ましくは 0.8〜2.5 wt%程度である。
【0027】
上記▲1▼、▲2▼及び▲3▼のようにして、染色及び製膜して得られた未延伸フィルムは、適当な方法によって、一軸方向に延伸する。延伸処理することによって、染色分子が配向し、偏光性能が発現する。一軸に延伸する方法としては、湿式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にてロール間圧縮延伸を行う方法等があり、いずれの方法を用いて行ってもよい。延伸倍率は2〜9倍にて行われるが、ポリビニルアルコール及びその誘導体を用いた場合は、2.5〜6倍の範囲が好ましい。
延伸、配向処理したあとで、該延伸フィルムの耐水性向上と偏光性向上の目的でホウ酸処理を実施する。ホウ酸処理により、偏光フィルムの光線透過率と偏光度が向上する。ホウ酸処理の条件は、用いる親水性高分子重合体の種類、化合物の種類によって異なるが、一般的には、ホウ酸濃度としては1〜15wt%、好ましくは3〜10wt%、また処理温度としては30〜80℃、好ましくは、40〜80℃の範囲にあることが望ましい。ホウ酸濃度が1wt%以下、温度が30℃以下の場合は処理効果が小さく、また、ホウ酸濃度が15wt%以上、温度80℃以上の場合は偏光フィルムがもろくなり易く好ましくない。
このようにして製造した偏光フィルムは、種々の加工を施して使用することができる。例えば、フィルム又はシートにしてそのまま使用する他、使用目的によっては、トリアセテート、アクリル又はウレタン系等のポリマーによりラミネーションして保護層を形成し、或いは、偏光フィルムの表面に蒸着、スパッタリングまたは塗布法により、インジウム−スズ系酸化物等の透明導電性膜を形成して実用に供する。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を具体例によって説明するが、これらは例示的なものであり、本発明は、これらに限定されるものではない。実施例中、構造式はすべて遊離酸の形で示し部は重量部を示す。
なお、本発明における偏光度とは次の方法によって測定した値である。即ち、2枚の偏光フィルムを延伸方向が平行となるべく重ねて分光光度計の光路におき測定した可視領域最大吸収波長での光線透過率(T‖)および2枚の偏光フィルムを延伸方向が直交すべく重ねて測定した同波長での光線透過率(T⊥)より次式(数1)を用いて偏光度(V)を算出した。
【0029】
【数1】
【0030】
実施例1
N−メチルピロリドン120mlに、3−メトキシ−4− ニトロ安息香酸11.8部を20℃で加えて、さらに塩化チオニル7.6部を加えて25℃で2時間反応させた。次いで、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸22部を加えて25℃で4時間反応させたのち、アセトン500部中に排出し、濾過した。濾液に飽和食塩水900部を加えて析出した結晶を濾別、先の濾塊とともに乾燥して下記化合物(A)24.8部を得た。
次に、化合物(A)(化11)24部を水360部に加えて50℃に昇温し、13%水硫化ソーダ水溶液36部を10分かけて滴下し、80℃で1時間保温した。反応終了後、30℃まで冷却し、食塩78部を加えて沈澱させ、濾過した。飽和食塩水で洗浄し、乾燥させ化合物(B)(化11)を26部得た。
化合物(B)26部を水600部中に加え、濃塩酸16.6部を加え、2時間攪拌後、亜硝酸ナトリウム4部を加えて5℃で3時間反応させた。次いで、スルファミン酸で過剰の亜硝酸を消去した。このジアゾ液を、10%炭酸ナトリウム水溶液274部中にベンゾイルJ酸27部を懸濁させた液中に5℃で10分かかって加え、5℃で2時間攪拌させたのち、濾過、乾燥を行い、アゾ化合物(C)(化11)22部を得た。
【0031】
【化11】
化合物(C)を0.25g/lの染浴を調製し42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールを浸漬し、6分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して赤色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの吸収極大(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =530nmで、Vは99.7%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0032】
実施例2
実施例1記載の化合物(C)11部を、水110部に加え、モノエタノールアミン7.5部、アンモニア水3.9部及び硫酸銅4部を加えて、90℃で6時間攪拌した。食塩を大過剰に加え、塩析し、1時間攪拌した後、濾過し、10%食塩水で洗浄し、乾燥して、下記式で表されるアゾ化合物(D)(化12)12部を得た。
【0033】
【化12】
化合物(D)を0.25g/lの染浴を調製し42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールを浸漬し、8分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して赤紫色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの吸収極大(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =555nmで、Vは99.6%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0034】
実施例3
スルファニル酸52部を水300部に懸濁し、炭酸ナトリウム16.5部を加えて攪拌し、濃塩酸75部を加え、25℃で1時間攪拌後5℃まで冷却し、亜硝酸ナトリウム21部を加えて5℃で2時間反応させた。次いでスルファミン酸で過剰の亜硝酸を消去した。この中へp−クレシジン42部を塩酸水溶液にとして加え、5℃で3時間攪拌した後、酢酸ナトリウムを加えてpH4まで中和して1時間反応させた。反応終了後濾過、乾燥して下記化合物(E)(化13)を92部得た。
実施例1中の4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸のかわりに化合物(E)を、またベンゾイルJ酸のかわりにH酸をもちいた以外は同様にして反応を行い、アゾ化合物(F)(化13)を得た。
【0035】
【化13】
このアゾ化合物を実施例1と同様にポリビニルアルコールフィルムを処理し赤紫色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムは単板透過率40%、λmax =550nmで、Vは99.4%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0036】
実施例4
実施例3記載の化合物(F)を実施例2と同様にして反応を行い、下記化合物(G)(化14)を得た。
【0037】
【化14】
このアゾ化合物を実施例1と同様にポリビニルアルコールフィルムを処理し紫色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムは単板透過率41%、λmax =575nmで、Vは99.2%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0038】
実施例5〜48
実施例1において、色素を表−1(表1、表2)、表−2(表3)、表−3(表4、表5)、表−4(表6、表7)、表−5(表8)、表−6(表9、表10)に示す各種アゾ化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、偏光フィルムを作製した。
各表に、色素の構造式、ポリビニルアルコールフィルムを染色して得た偏光フィルムの単板透過率、偏光度及び色相を示した。耐湿熱性については、偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置した後、色相の変化及び偏光度の低下が実質的に認められなかったものについて「○」で表示した。得られた偏光フィルムは、いずれも優れた偏光性能を示していた。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
【表10】
【0049】
実施例49
実施例1と同様な方法により、本発明の実施例2の染料を0.063g/l、C.I.Direct Yellow 12を0.02g/l、C.I.Direct Orange 39を0.04g/l、C.I.Direct Blue 168 を0.04g/l、C.I.Direct Blue 202 を0.21g/lに調整した染浴を用いて、中性色の偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの偏光度は、単板透過率41%における偏光度は99.2%と優れていた。
【0050】
比較例1
実施例1において合成した染料の代わりに特開昭59−145255号公報、実施例3において公開されている下記構造式(H)(化15)で表される染料を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの極大吸収波長(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =625nmでVは98.0%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0051】
【化15】
【0052】
比較例2
実施例1において合成した染料の代わりに特開平3−89203号公報中において公開されている式(IV)で公開されている下記構造式(I)(化16)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの極大吸収波長(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =580nmでVは98.0%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0053】
【化16】
【0054】
比較例3
実施例1において合成した染料の代わりに特開平3−12606号公報中における実施例1中で式(2)として公開されている下記構造式(J)(化17)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの極大吸収波長(λmax )での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =600nmでVは98.5%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0055】
【化17】
【0056】
【発明の効果】
本発明の新規なアゾ化合物を含む水溶性染料、及びこれを用いて得た偏光フィルムは、高い熱安定性並びに高い偏光度を与えるものであり、従来のヨウ素を用いた偏光フィルムに匹敵する光学特性を示す、という工業的価値ある顕著な効果を奏するものである。
Claims (6)
- 下記一般式(2)で表されるアゾ化合物。
- 請求項1に記載のアゾ化合物を含むことを特徴とする水溶性染料。
- 請求項1に記載のアゾ化合物が、高分子フィルムに、配向して含有されることを特徴とする偏光フィルム。
- 高分子フィルムが2〜9倍の延伸倍率で延伸して得られたものである請求項3記載の偏光フィルム。
- 高分子フィルムが、セルロース樹脂、あるいはエチレン、プロピレン、アクリル酸、マレイン酸アクリルアミド等で変性されていてもよいポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールまたはポリビニルブチラール樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項3又は4記載の偏光フィルム。
- 請求項2記載の水溶性染料で染色した高分子フィルムを2〜9倍の延伸倍率で延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
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