JP3624961B2 - アゾキシ化合物及び該化合物を用いた偏光フィルム - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なアゾキシ化合物、及びこれらを含む水溶性染料並びに該染料を高分子フィルムに二色性染料として含有、配向させた、高い偏光度を有する偏光フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、偏光フィルムは、延伸配向したポリビニルアルコールまたはその誘導体、あるいは配向したポリエン系のフィルムに、偏光素子としてヨウ素や二色性色素を染色して製造するのが一般的である。
このうち、偏光素子としてヨウ素を用いた偏光フィルムは、初期偏光性能には優れるものの、水及び熱に対して弱く、高温、高湿の状態で長期間使用する場合には、その耐久性に問題がある。耐久性を向上させるために、ホルマリンあるいはホウ酸を含む水溶液での処理を強固にしたり、また保護膜として透湿度の低い高分子フィルムを用いる方法等が考えられているが、高温、高湿の状態では耐久性が不十分である。
【0003】
また、偏光素子として二色性色素を用いた偏光フィルムは、ヨウ素を用いた偏光フィルムに比べ、耐湿および耐熱性は勝るものの、偏光性能が劣る。この欠点を改良するために、特開昭54−153648号公報、、特開昭60−168743号公報、及び特開平3−89203号公報等に、有機系染料を偏光素子として耐熱性を改良した偏光フィルムが提案されている。しかし、かかる偏光フィルムは偏光性能の点で必ずしも満足できるものではないのが実状である。
以上のことから、染料系偏光フィルムでヨウ素系偏光フィルム以上の偏光性能を示す染料の開発が望まれている。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高分子フィルムを基材とした偏光フィルムに好適なアゾキシ化合物及び該化合物を配向して含有した、優れた偏光性能および耐湿熱性を有する高性能な偏光フィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有機系染料を偏光素子として用いた偏光フィルムにおいて、偏光性能及び耐湿熱性の優れた偏光フィルムを得るべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
▲1▼ 下記一般式(1)(化4)で表されるアゾキシ化合物、
▲2▼ ▲1▼に記載のアゾキシ化合物を含む水溶性染料、
▲3▼ ▲1▼に記載のアゾキシ化合物が、高分子フィルムに、配向して含有される偏光フィルム、
▲4▼ 高分子フィルムが2〜9倍の延伸倍率で延伸して得られたものである▲3▼に記載の偏光フィルム、
▲5▼ 高分子フィルムが、セルロース樹脂またはエチレン、プロピレン、アクリル酸、マレイン酸アクリルアミド等で変性されていてもよいポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール樹脂から選ばれる少なくとも1種である▲3▼又は▲4▼に記載の偏光フィルム、
▲6▼ ▲2▼に記載の水溶性染料で染色した高分子フィルムを2〜9倍の延伸倍率で延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造方法に関する。
【0006】
【化4】
[式中、R1 〜R4 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、または炭素数1〜2のアルコキシ基を示し、R5 は水素原子、カルボキシ基、スルホン酸基、又は炭素数1〜2のアルコキシ基を示し、R6 は水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、β− ヒドロキシエチルアミノ基、アセチルアミノ基又はフェニル核がニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、カルボキシ基、スルホン酸基、又は塩素原子によって置換されていてもよいフェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基を示し、R7 はアゾ基に対してo−位又はp−位にある水酸基又はアミノ基を示し、hは0又は1を、iは0又は1を、jは0、1又は2をそれぞれ示し、Aは下記一般式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、または(1e)(化5)を示し、
【0007】
【化5】
(式中、R8 、R9 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、またはカルボキシ基を示し、kは0、1又は2を示し、R10、R11は水素原子、炭素数1〜2のアルコキシ基、アミノ基、または水酸基を示し、lは0、1又は2を、mは0又は1をそれぞれ示し、R12、R13は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、カルボキシ基、またはスルホン酸基を示し、R14、R15は、水素原子、ハロゲン原子、またはスルホン酸基を示し、R16は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基、またはスルホン酸基を示し、R17、R18は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、またはカルボキシ基を示し、Zは硫黄原子または酸素原子を示し、nは0または1を、pは0、1または2を、qは0または1をそれぞれ示す。)を示し、Bは下記一般式(1f)又は(1g)(化6)で表される連結基、
【0008】
【化6】
(式中、R19、R20は水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、またはスルホン酸基を示し、R21は、水素原子、または炭素数1〜2のアルコキシ基を示し、rは、0または1を示す。)を示す。]
【0009】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のアゾキシ化合物は、前記一般式(1)で表され、R1 〜R4 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、または炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。R5 は水素原子、カルボキシ基、スルホン酸基、又は炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。R6 は水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、β− ヒドロキシエチルアミノ基、アセチルアミノ基又はフェニル核がニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、カルボキシ基、スルホン酸基、又は塩素原子によって置換されていてもよいフェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基を示す。R7 はアゾ基に対してo−位又はp−位にある水酸基又はアミノ基を示し、hは0又は1を、iは0又は1を、jは0、1又は2をそれぞれ示し、Aは前記一般式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、または(1e)で表される置換基である。R8 、R9 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、またはカルボキシ基を示す。kは0、1又は2を示す。R10、R11は水素原子、炭素数1〜2のアルコキシ基、アミノ基、または水酸基を示す。lは0、1又は2を、mは0又は1をそれぞれ示す。R12、R13は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、カルボキシ基、またはスルホン酸基を示す。R14、R15は、水素原子、ハロゲン原子、またはスルホン酸基を示す。R16は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基、またはスルホン酸基を示す。R17、R18は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、またはカルボキシ基を示す。Zは硫黄原子または酸素原子を示す。nは0または1を、pは0または1を、qは0または1をそれぞれ示す。Bは前記一般式(1f)又は(1g)で表される連結基である。R19、R20は水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、またはスルホン酸基を示す。R21は、水素原子、または炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。rは、0または1を示す。
【0010】
本発明において、炭素数1〜2のアルキル基としては、メチル、エチル基等が例示でき、炭素数1〜2のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ基等が例示でき、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が例示でき、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ等が例示できる。
【0011】
本発明の一般式(1)で表されるアゾキシ化合物は、公知のアゾ染料の製法に従い、例えば、細田豊著「理論製造染料化学」(株式会社技報堂、昭和38年10月1日発行)第602頁〜第618頁及び第626頁〜第627頁等に記載の方法に準じて、通常のジアゾ化、カップリング、アゾキシ化を行うことにより製造することができる。
例えば、一般式(1)においてh=0の場合、下記一般式(4)(化7)で表される化合物を、鉱酸中0〜30℃で亜硝酸ナトリウムを用いてジアゾ化し、下記一般式(5)(化7)で表されるナフタレン類と温度0〜30℃、pH5〜10でカップリングして、下記一般式(6)(化7)で表されるモノアゾ化合物を製造することができる。
【0012】
【化7】
(式中、R1 〜R7 、i及びjは一般式(1)と同一の意味を表す。)
更に、一般式(6)で表されるモノアゾ化合物を公知の方法、例えば、アルカリ溶液中、一般式(6)で表される化合物と下記一般式(7)(化8)で表される化合物を90〜105℃で加熱して、アゾキシ化し、一般式(1)においてh=0である下記一般式(8)(化8)で表される化合物を製造することができる。
【0013】
【化8】
(式中、R1 〜R7 、A、i及びjは一般式(1)と同一の意味を表す。)
【0014】
一般式(1)においてh=1の場合、前記一般式(4)で表される化合物を、鉱酸中0〜30℃で亜硝酸ナトリウムを用いてジアゾ化し、下記一般式(9)(化9)で表される化合物と温度0〜30℃、pH5〜10でカップリングして、下記一般式(10)(化9)で表されるモノアゾ化合物を製造することができる。
【0015】
【化9】
(式中、R1 〜R4 及びBは一般式(1)と同一の意味を表す。)
更に、一般式(10)で表されるモノアゾ化合物を公知の方法、例えば、鉱酸中0〜30℃で亜硝酸ナトリウムを用いてジアゾ化し、前記一般式(5)で表される化合物と温度0〜30℃、pH5〜10でカップリングして、下記一般式(11)(化10)で表されるジスアゾ化合物を製造することができる。
次に、アルカリ溶液中、前記一般式(7)で表される化合物と90〜105℃で加熱して、アゾキシ化し、一般式(1)においてh=1である下記一般式(12)(化10)で表される化合物を製造することができる。
【0016】
【化10】
(式中、R1 〜R7 、A、B、i及びjは一般式(1)と同一の意味を表す。)
勿論、これ以外の製造ルートによっても、本発明のアゾキシ化合物は製造することができる。
【0017】
本発明の一般式(1)で表されるアゾキシ化合物は、通常ナトリウム塩として利用するが、その他、遊離酸として、或いは、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アルキルアミン類、エタノールアミン類の塩としても利用することができる。
【0018】
一般式(1a)で表される置換基の具体的な例としては、アニリン、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、1−アミノ−2,5−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−2,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−2−メチル−4−ベンゼンスルホン酸、1−アミノ−4−メチル−2−ベンゼンスルホン酸、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、p−アニシジン、1−アミノ−4,6−ジメチル−3−ベンゼンスルホン酸、1−アミノ−4,6−ジメチル−2−ベンゼンスルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導されるフェニル基が挙げられる。
【0019】
一般式(1b)で表される置換基の具体的な例としては、1−ナフチルアミン、2−ヒドロキシ−1−ナフチルアミン、7−ヒドロキシ−1−ナフチルアミン、1,8−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、1−アミノ−4−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ナフタレンスルホン酸、2−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−4,8−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−4,8−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−5,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アミノ−3,6,8−ナフタレントリスルホン酸、2−アミノ−4,6,8−ナフタレントリスルホン酸、2−アミノ−5−ヒドロキシ−7−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−6−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−2−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−4,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、1−アミノ−2−エトキシ−6−ナフタレンスルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導されるナフチル基が挙げられる。一般式(1c)で表される置換基の具体的な例としては、4’−アミノ−4−ビフェニルカルボン酸、4’−アミノ−3’−クロロ−4−ビフェニルカルボン酸、4’−アミノ−4−ビフェニルスルホン酸、4’−アミノ−3’,4−ビフェニルジスルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導されるビフェニル基が挙げられる。
一般式(1d)で表される化合物の具体的な例としては、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アミノ−4’−ニトロスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導されるスチリル基が挙げられる。
【0020】
一般式(1e)で表される置換基の具体的な例としては、2−(p−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール、2−(p−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−5−スルホン酸、2−(p−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸、6−カルボキシ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾチアゾール−7−スルホン酸、2−(4’−アミノ−3’−スルホフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸、2−(p−アミノフェニル)−5−メチルベンゾオキサゾール、2−(p−アミノフェニル)−5−メチルベンゾオキサゾール−4−スルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導される複素環基が挙げられる。
一般式(1f)で表される連結基の具体的な例としては、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−クレシジン、2,5−ジメトキシアニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、5−クロロ−2−メチルアニリン、m−アセチルアミノアニリン、m−プロピオニルアミノアニリン、2−メトキシ−5アセチルアミノアニリン、2−エトキシ−5−アセチルアミノアニリン、m−アミノフェノール等のアゾカップリングで誘導されるフェニレン連結基が挙げられる。
【0021】
一般式(1g)で表される連結基の具体的な例としては、2−エトキシ−1−ナフチルアミン−6−スルホン酸、2−メトキシ−1−ナフチルアミン−6−スルホン酸、2−エトキシ−1−ナフチルアミン、1−ナフチルアミン、2−メトキシ−1−ナフチルアミン、1−ナフチルアミン−6−スルホン酸、1−ナフチルアミン−7−スルホン酸等のアゾカップリングで誘導されるナフタレン連結基が挙げられる。
一般式(4)で表されるアニリン類の具体的な例としては、p−ニトロアニリン、2−メチル−4−ニトロアニリン、2−メトキシ−4−ニトロアニリン、2,5−ジメトキシ−4−ニトロアニリン、2,5−ジエトキシ−4−ニトロアニリン、2−メトキシ−5−メチル−4−ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、2−ブロモ−4−ニトロアニリン等が挙げられる。
【0022】
一般式(5)で表されるナフタレン類の具体的な例としては、1−ヒドロキ−6− アミノナフタレン−3− スルホン酸(以下J酸と略す)、N−フェニルJ酸、N−メチルJ酸、N−(p− メチルフェニル)J酸、N−アセチルJ酸、N−メチル−N− アセチルJ酸、N−ベンゾイルJ酸、N−(3− または4−カルボキシフェニル) J酸、N−(3− または4−スルホフェニル) J酸、N−(4− アミノ−3− スルホフェニル) J酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシフェニル) J酸、N−(4− アミノベンゾイル)J酸、N−(4− アミノ−3− スルホベンゾイル) J酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシベンゾイル) J酸、N−(4− ニトロフェニル)J酸、N−(4− ニトロベンゾイル) J酸、N−(4− アミノ−3− メチルベンゾイル)J酸、N−(3または4− カルボキシベンゾイル)J酸、N−(3− または4− カルボキシベンゾイル)J酸、N−(3− または4− スルホベンゾイル)J酸、N−( β− ヒドロキシエチル)J酸、
【0023】
1−ヒドキシ−7− アミノナフタレン−3− スルホン酸(以下γ酸と略す)、N−フェニルγ酸、N−メチルγ酸、N−アセチルγ酸、N−メチル−N− アセチルγ酸、N−ベンゾイルγ酸、N−(3− または4−カルボキシフェニル) γ酸、N−(3− または4−スルホフェニル) γ酸、N−(4− アミノ−3− スルホフェニル) γ酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシフェニル) γ酸、N−(4− アミノベンゾイル)γ酸、N−(4− アミノ−3− スルホベンゾイル) γ酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシベンゾイル) γ酸、N−(4− ニトロフェニル)γ酸、N−(4− ニトロベンゾイル) γ酸、N−(4− アミノ−3− メチルベンゾイル)γ酸、N−(3または4− カルボキシベンゾイル)γ酸、N−(3− または4− カルボキシベンゾイル)γ酸、N−(3− または4− スルホベンゾイル)γ酸、N−( β− ヒドロキシエチル)γ酸、1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−3,6− ジスルホン酸(以下H酸と略す)、N−アセチルH酸、N−ベンゾイルH酸、N−(p− トルエンスルホニル)H酸、N−( ベンゼンスルホニル)H酸、N−(p− クロルベンゾイル)H酸、1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−3,5− ジスルホン酸(以下K酸と略す)、N−アセチルK酸、1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−5,7− ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−7− アミノナフタレン−3,6− ジスルホン酸、1−ナフトール−3,6− ジスルホン酸等が挙げられる。
【0024】
本発明の水溶性染料は、一般式(1)で表されるアゾキシ化合物を少なくとも一種含有するものである。
一般式(1)で表されるアゾキシ化合物は、単独で又はそれら同士で混合して、更にはこれらの化合物と他の染料と配合することにより、種々の色相の水溶性染料として用いられる。
この場合に用いる他の染料としては、本発明に用いる化合物の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収を有する染料であって、二色性の高いものであれば、どんなものでもよいが、特に好ましい染料としては、カラー.インデックス.ジェネリック.ネーム(C.I.Generic Name)で表して、次のようなものが例示される。例えば、C.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Yellow 44、C.I.Direct Yellow 28、C.I.Direct Yellow 142 、C.I.Direct Red 2、 C.I.Direct Red 79 、C.I.Direct Red 81 、C.I.Direct Red 247、 C.I.Direct Vioret 9 、C.I.Direct Vioret 51、C.I.Direct Orenge 26、C.I.Direct Orenge 39、C.I.Direct Orenge 107 、C.I.Direct Blue 1 、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 78、C.I.Direct Blue 168 、 C.I.Direct Blue 202 、C.I.Direct Brouwn 106 、C.I.Direct Brouwn 223 、C.I.Direct Green 85 、C.I.Direct Black 17 、C.I.Direct Black 19 、等である。特に多用されるグレーまたはブラック用の配合成分として、一般式(1)で表される化合物を使用した場合、優れた偏光性能及び好ましい吸収特性を示す偏光フィルムが得られる。また、その耐湿熱性も優れている。
【0025】
本発明の偏光フィルムに用いる高分子フィルムとしては、親水性高分子フィルムが好ましく、その素材の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、あるいはそれらをエチレン、プロピレン、アクリル酸またはマレイン酸アクリルアミド等で変性したもの、またはセルロース樹脂等が挙げられる。これらの高分子重合体は、水あるいは親水性有機溶剤への溶解性が良好であり、本発明の化合物との相溶性も良好である上、製膜性に優れ且つ製膜後延伸配向させたときに本発明の化合物が配向し易い点で特に有用である。
【0026】
上記の高分子重合体及び本発明の化合物を用いて、本発明の偏光フィルムを製造する方法としては、(1) 高分子重合体を製膜してフィルムとし、フィルムを延伸した後、本発明の化合物を染色する方法、(2) 高分子重合体を製膜してフィルムとし、本発明の化合物を染色した後、染色フィルムを延伸する方法、(3) 高分子重合体の溶液に本発明の化合物を添加し、原液染色で製膜した染色フィルムを延伸する方法等を挙げることができる。
上記(1) 及び(2) におけるフィルムの染色方法は、一般的に以下の方法によって行うことができる。即ち、本発明の化合物をフィルムに対して0.1〜5wt%、好ましくは0.8〜2.5wt%含む染浴に、必要に応じて塩化ナトリウム、ボウ硝等の無機塩、界面活性剤等の染色助剤を加えた後、20〜80℃、好ましくは30〜50℃で1〜60分間、好ましくは3〜20分間高分子フィルムを浸漬して染色し、乾燥する。なお、染浴は本発明の化合物0.01〜2.0g、好ましくは0.1〜1.0gを水1リットルに溶解して調製する。
【0027】
上記(3) の染色フィルムの製造方法は、一般的に以下の方法によって行うことができる。即ち、高分子重合体を水及び/又はアルコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド等の親水性有機溶媒に溶解し、本発明の化合物を添加して原液染色を行い、この染色原液を流延法、溶液塗布法、押出法等により製膜して染色フィルムを製造する。
溶媒に溶解させる高分子重合体の濃度としては、高分子重合体の種類によっても異なるが、5〜30wt%、好ましくは10〜20wt%である。また、溶媒に溶解する本発明の化合物の濃度としては、高分子重合体の種類、化合物の種類、製膜したときのフィルム厚みあるいは偏光フィルムとしたときの要求性能等によって変わるが、高分子重合体に対して0.1〜5wt%、好ましくは0.8〜2.5wt%程度である。
【0028】
上記(1) 、(2) または(3) の方法で染色、製膜して得られた未延伸フィルムは、適当な方法によって一軸方向に延伸する。延伸処理することによって染料分子が配向し、偏光性能が発現する。一軸に延伸する方法としては、湿式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にてロール間圧縮延伸を行う方法等があり、いずれの方法で行ってもよい。延伸倍率は通常2〜9倍であるが、ポリビニルアルコール及びその誘導体を用いた場合は、2.5〜6倍の範囲が好ましい。
【0029】
延伸、配向処理したあとで、該延伸フィルムの耐水性向上と偏光性向上の目的でホウ酸処理を実施する。ホウ酸処理により、偏光フィルムの光線透過率と偏光度が向上する。ホウ酸処理の条件は、用いる親水性高分子重合体の種類、化合物の種類によって異なるが、一般的には、ホウ酸濃度としては1〜15wt%、好ましくは3〜10wt%、また処理温度としては30〜80℃、好ましくは、40〜80℃の範囲にあることが望ましい。ホウ酸濃度が1wt%以下、温度が30℃以下の場合は処理効果が小さく、また、ホウ酸濃度が15wt%以上、温度80℃以上の場合は偏光フィルムがもろくなり易い傾向がある。
このようにして製造した偏光フィルムは、種々の加工を施して使用することができる。例えば、フィルム又はシートにしてそのまま使用する他、使用目的によっては、トリアセテート、アクリル又はウレタン系等のポリマーによりラミネーションして保護層を形成し、或いは、偏光フィルムの表面に蒸着、スパッタリングまたは塗布法により、インジウム−スズ系酸化物等の透明導電性膜を形成して実用に供する。
【0030】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって説明するが、これらは例示的なものであり、本発明は、これらに限定されるものではない。実施例中、構造式はすべて遊離酸の形で示し、部は重量部を示す。
なお、本発明における偏光度とは、次の方法によって測定した値である。即ち、2枚の偏光フィルムを延伸方向が平行と成るべく重ねて分光光度計の光路に置き、測定した可視領域最大吸収波長での光線透過率(T‖)及び2枚の偏光フィルムを延伸方向が直交すべく重ねて測定した同波長での光線透過率(T⊥)より次式(数1)を用いて偏光度(V)を算出した。
【0031】
【数1】
【0032】
実施例1
p−ニトロアニリン6.9部を水150部、35%塩酸14.6部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却した後、20%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3部を滴下し、同温で2時間反応させた。次に、スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を除去し、炭酸ナトリウムでpHを3〜4に調整してジアゾ液とした。別に、N−フェニルJ酸15.8部、炭酸ナトリウム15.9部を水300部に加え0〜5℃に冷却した後、上記ジアゾ液を加え、0〜10℃で2時間攪拌しカップリング反応を行った。反応終了後、濾過、乾燥して、下記化合物(A)(化11)19.8部を得た。
次に、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸9.6部を水100部に加え、40%水酸化ナトリウム水溶液10.6部を加えて、100℃まで加熱した。これに上記化合物(A)9.7部を加えて、100〜102℃で5時間反応させた。反応終了後、塩化ナトリウムの大過剰を加えて塩析し、1時間攪拌し、濾過、10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥して、下記式で表される化合物(B)(化11)10.9部を得た。
【0033】
【化11】
化合物(B)を0.25g/lの染浴に調製し、42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを浸漬し、10分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で、43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して紫色の偏光フィルムを製造した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率40%、λmax =540nmで、Vは99.5%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0034】
実施例2
p−ニトロアニリン6.9部を水150部、35%塩酸14.6部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却した後、20%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3部を滴下し、同温で2時間反応させた。次に、スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を除去し、炭酸ナトリウムでpHを3〜4に調整してジアゾ液とした。別に、H酸16部、炭酸ナトリウム15.9部を水300部に加え0〜5℃に冷却し、1時間攪拌した後、上記ジアゾ液を加え、0〜10℃で2時間攪拌しカップリング反応を行った。反応終了後、濾過、乾燥して、下記化合物(C)(化12)18.5部を得た。
次に、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸9.6部を水100部に加え、40%水酸化ナトリウム水溶液10.6部を加えて、100℃まで加熱した。これに化合物(C)14.6部を加えて、100〜102℃で7時間反応させた。反応終了後、塩化ナトリウムの大過剰を加えて塩析し、1時間攪拌し、濾過、10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥して、下記式で表される化合物(D)(化12)15.5部を得た。
【0035】
【化12】
化合物(D)を0.25g/lの染浴に調製し、42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを浸漬し、10分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で、43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して青色の偏光フィルムを製造した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率40%、λmax =560nmで、Vは99.3%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0036】
実施例3
p−ニトロアニリン6.9部を水190部、35%塩酸20.7部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却した後、20%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3部を滴下し、同温で2時間反応させた。次に、スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を除去し、炭酸ナトリウムでpHを3〜4に調整してジアゾ液とした。別に、1−アミノ−2−メトキシナフタレン−6−スルホン酸12.7部を水80部、35%塩酸6.9部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却し、1時間攪拌した後、上記ジアゾ液に加え、0〜10℃で2時間攪拌しカップリング反応を行った。反応終了後、濾過、乾燥して、下記化合物(E)(化13)16.5部を得た。
化合物(E)6.9部を水150部、35%塩酸14.6部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却した後、20%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3部を滴下し、同温で2時間反応させた。次いで、スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を除去し、炭酸ナトリウムでpHを3〜4に調整してジアゾ液とした。別に、N−フェニルJ酸15.8部、炭酸ナトリウム15.9部を水300部に加え0〜5℃に冷却した後、上記ジアゾ液を加え、0〜10℃で2時間攪拌しカップリング反応を行った。反応終了後、濾過、乾燥して、下記化合物(F)(化13)19.1部を得た。
次に、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸9.6部を水100部に加え、40%水酸化ナトリウム水溶液10.6部を加えて、100℃まで加熱した。これに化合物(F)14.6部を加えて、100〜102℃で7時間反応させた。反応終了後、塩化ナトリウムの大過剰を加えて塩析し、1時間攪拌し、濾過、10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥して、下記式で表される化合物(G)(化13)17.5部を得た。
【0037】
【化13】
化合物(G)を0.25g/lの染浴に調製し、42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを浸漬し、10分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で、43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して青色の偏光フィルムを製造した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率40%、λmax =580nmで、Vは99.5%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0038】
実施例4〜43
実施例1において、化合物(B)を第1表(表1〜10)に示す各種アゾキシ化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。第1表に、化合物の構造式、ポリビニルアルコールフィルムを染色して得た偏光フィルムの単板透過率、偏光度及び色相を示した。耐湿熱性については、偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置した後、色相の変化及び偏光度の低下が実質的に認められなかったものについて“〇”で表示した。得られた偏光フィルムは、いずれも優れた偏光性能を有していた。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
【表10】
【0049】
実施例44
実施例1の化合物(B)を0.10g/l、C.I.Direct Blue 168 を0.06g/l、C.I.Direct Blue 202 を0.21g/l、C.I.Direct Yellow 12を0.02g/l、C.I.Direct Orange 39を0.06g/lに調整した染浴を用いて、実施例1と同様な方法により、中性色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%における偏光度は99.1%と優れていた。
【0050】
比較例1
実施例1において、化合物(B)の代わりに、特開昭60−168743号公報の実施例18において公開されている下記構造式(H)(化14)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =530nmで、Vは98%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0051】
【化14】
【0052】
比較例2
実施例1において、化合物(B)の代わりに、特開平3−89203号公報において式(VIII)で公開されている下記構造式(I)(化15)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =585nmで、Vは98%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0053】
【化15】
【0054】
比較例3
実施例1において化合物(B)の代わりに、特開昭54−153648号公報においてNo3で公開されている下記構造式(J)(化16)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =450nmで、Vは95%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0055】
【化16】
【0056】
【発明の効果】
本発明の新規なアゾキシ化合物を含む水溶性染料、およびこれを用いて得た偏光フィルムは、高い耐湿熱性並びに高い偏光度を与えるものであり、従来のヨウ素を用いた偏光フィルムに匹敵する光学特性を示す工業的に価値のある顕著な効果を奏するものである。
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なアゾキシ化合物、及びこれらを含む水溶性染料並びに該染料を高分子フィルムに二色性染料として含有、配向させた、高い偏光度を有する偏光フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、偏光フィルムは、延伸配向したポリビニルアルコールまたはその誘導体、あるいは配向したポリエン系のフィルムに、偏光素子としてヨウ素や二色性色素を染色して製造するのが一般的である。
このうち、偏光素子としてヨウ素を用いた偏光フィルムは、初期偏光性能には優れるものの、水及び熱に対して弱く、高温、高湿の状態で長期間使用する場合には、その耐久性に問題がある。耐久性を向上させるために、ホルマリンあるいはホウ酸を含む水溶液での処理を強固にしたり、また保護膜として透湿度の低い高分子フィルムを用いる方法等が考えられているが、高温、高湿の状態では耐久性が不十分である。
【0003】
また、偏光素子として二色性色素を用いた偏光フィルムは、ヨウ素を用いた偏光フィルムに比べ、耐湿および耐熱性は勝るものの、偏光性能が劣る。この欠点を改良するために、特開昭54−153648号公報、、特開昭60−168743号公報、及び特開平3−89203号公報等に、有機系染料を偏光素子として耐熱性を改良した偏光フィルムが提案されている。しかし、かかる偏光フィルムは偏光性能の点で必ずしも満足できるものではないのが実状である。
以上のことから、染料系偏光フィルムでヨウ素系偏光フィルム以上の偏光性能を示す染料の開発が望まれている。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高分子フィルムを基材とした偏光フィルムに好適なアゾキシ化合物及び該化合物を配向して含有した、優れた偏光性能および耐湿熱性を有する高性能な偏光フィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有機系染料を偏光素子として用いた偏光フィルムにおいて、偏光性能及び耐湿熱性の優れた偏光フィルムを得るべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
▲1▼ 下記一般式(1)(化4)で表されるアゾキシ化合物、
▲2▼ ▲1▼に記載のアゾキシ化合物を含む水溶性染料、
▲3▼ ▲1▼に記載のアゾキシ化合物が、高分子フィルムに、配向して含有される偏光フィルム、
▲4▼ 高分子フィルムが2〜9倍の延伸倍率で延伸して得られたものである▲3▼に記載の偏光フィルム、
▲5▼ 高分子フィルムが、セルロース樹脂またはエチレン、プロピレン、アクリル酸、マレイン酸アクリルアミド等で変性されていてもよいポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール樹脂から選ばれる少なくとも1種である▲3▼又は▲4▼に記載の偏光フィルム、
▲6▼ ▲2▼に記載の水溶性染料で染色した高分子フィルムを2〜9倍の延伸倍率で延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造方法に関する。
【0006】
【化4】
[式中、R1 〜R4 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、または炭素数1〜2のアルコキシ基を示し、R5 は水素原子、カルボキシ基、スルホン酸基、又は炭素数1〜2のアルコキシ基を示し、R6 は水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、β− ヒドロキシエチルアミノ基、アセチルアミノ基又はフェニル核がニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、カルボキシ基、スルホン酸基、又は塩素原子によって置換されていてもよいフェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基を示し、R7 はアゾ基に対してo−位又はp−位にある水酸基又はアミノ基を示し、hは0又は1を、iは0又は1を、jは0、1又は2をそれぞれ示し、Aは下記一般式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、または(1e)(化5)を示し、
【0007】
【化5】
(式中、R8 、R9 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、またはカルボキシ基を示し、kは0、1又は2を示し、R10、R11は水素原子、炭素数1〜2のアルコキシ基、アミノ基、または水酸基を示し、lは0、1又は2を、mは0又は1をそれぞれ示し、R12、R13は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、カルボキシ基、またはスルホン酸基を示し、R14、R15は、水素原子、ハロゲン原子、またはスルホン酸基を示し、R16は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基、またはスルホン酸基を示し、R17、R18は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、またはカルボキシ基を示し、Zは硫黄原子または酸素原子を示し、nは0または1を、pは0、1または2を、qは0または1をそれぞれ示す。)を示し、Bは下記一般式(1f)又は(1g)(化6)で表される連結基、
【0008】
【化6】
(式中、R19、R20は水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、またはスルホン酸基を示し、R21は、水素原子、または炭素数1〜2のアルコキシ基を示し、rは、0または1を示す。)を示す。]
【0009】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のアゾキシ化合物は、前記一般式(1)で表され、R1 〜R4 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、または炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。R5 は水素原子、カルボキシ基、スルホン酸基、又は炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。R6 は水素原子、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、β− ヒドロキシエチルアミノ基、アセチルアミノ基又はフェニル核がニトロ基、アミノ基、水酸基、炭素数1〜2のアルキル基、カルボキシ基、スルホン酸基、又は塩素原子によって置換されていてもよいフェニルアミノ基又はベンゾイルアミノ基を示す。R7 はアゾ基に対してo−位又はp−位にある水酸基又はアミノ基を示し、hは0又は1を、iは0又は1を、jは0、1又は2をそれぞれ示し、Aは前記一般式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、または(1e)で表される置換基である。R8 、R9 は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、またはカルボキシ基を示す。kは0、1又は2を示す。R10、R11は水素原子、炭素数1〜2のアルコキシ基、アミノ基、または水酸基を示す。lは0、1又は2を、mは0又は1をそれぞれ示す。R12、R13は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、カルボキシ基、またはスルホン酸基を示す。R14、R15は、水素原子、ハロゲン原子、またはスルホン酸基を示す。R16は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基、またはスルホン酸基を示す。R17、R18は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、またはカルボキシ基を示す。Zは硫黄原子または酸素原子を示す。nは0または1を、pは0または1を、qは0または1をそれぞれ示す。Bは前記一般式(1f)又は(1g)で表される連結基である。R19、R20は水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基、またはスルホン酸基を示す。R21は、水素原子、または炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。rは、0または1を示す。
【0010】
本発明において、炭素数1〜2のアルキル基としては、メチル、エチル基等が例示でき、炭素数1〜2のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ基等が例示でき、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が例示でき、炭素数2〜3のアルキルカルボニルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ等が例示できる。
【0011】
本発明の一般式(1)で表されるアゾキシ化合物は、公知のアゾ染料の製法に従い、例えば、細田豊著「理論製造染料化学」(株式会社技報堂、昭和38年10月1日発行)第602頁〜第618頁及び第626頁〜第627頁等に記載の方法に準じて、通常のジアゾ化、カップリング、アゾキシ化を行うことにより製造することができる。
例えば、一般式(1)においてh=0の場合、下記一般式(4)(化7)で表される化合物を、鉱酸中0〜30℃で亜硝酸ナトリウムを用いてジアゾ化し、下記一般式(5)(化7)で表されるナフタレン類と温度0〜30℃、pH5〜10でカップリングして、下記一般式(6)(化7)で表されるモノアゾ化合物を製造することができる。
【0012】
【化7】
(式中、R1 〜R7 、i及びjは一般式(1)と同一の意味を表す。)
更に、一般式(6)で表されるモノアゾ化合物を公知の方法、例えば、アルカリ溶液中、一般式(6)で表される化合物と下記一般式(7)(化8)で表される化合物を90〜105℃で加熱して、アゾキシ化し、一般式(1)においてh=0である下記一般式(8)(化8)で表される化合物を製造することができる。
【0013】
【化8】
(式中、R1 〜R7 、A、i及びjは一般式(1)と同一の意味を表す。)
【0014】
一般式(1)においてh=1の場合、前記一般式(4)で表される化合物を、鉱酸中0〜30℃で亜硝酸ナトリウムを用いてジアゾ化し、下記一般式(9)(化9)で表される化合物と温度0〜30℃、pH5〜10でカップリングして、下記一般式(10)(化9)で表されるモノアゾ化合物を製造することができる。
【0015】
【化9】
(式中、R1 〜R4 及びBは一般式(1)と同一の意味を表す。)
更に、一般式(10)で表されるモノアゾ化合物を公知の方法、例えば、鉱酸中0〜30℃で亜硝酸ナトリウムを用いてジアゾ化し、前記一般式(5)で表される化合物と温度0〜30℃、pH5〜10でカップリングして、下記一般式(11)(化10)で表されるジスアゾ化合物を製造することができる。
次に、アルカリ溶液中、前記一般式(7)で表される化合物と90〜105℃で加熱して、アゾキシ化し、一般式(1)においてh=1である下記一般式(12)(化10)で表される化合物を製造することができる。
【0016】
【化10】
(式中、R1 〜R7 、A、B、i及びjは一般式(1)と同一の意味を表す。)
勿論、これ以外の製造ルートによっても、本発明のアゾキシ化合物は製造することができる。
【0017】
本発明の一般式(1)で表されるアゾキシ化合物は、通常ナトリウム塩として利用するが、その他、遊離酸として、或いは、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アルキルアミン類、エタノールアミン類の塩としても利用することができる。
【0018】
一般式(1a)で表される置換基の具体的な例としては、アニリン、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、1−アミノ−2,5−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−2,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−2−メチル−4−ベンゼンスルホン酸、1−アミノ−4−メチル−2−ベンゼンスルホン酸、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、p−アニシジン、1−アミノ−4,6−ジメチル−3−ベンゼンスルホン酸、1−アミノ−4,6−ジメチル−2−ベンゼンスルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導されるフェニル基が挙げられる。
【0019】
一般式(1b)で表される置換基の具体的な例としては、1−ナフチルアミン、2−ヒドロキシ−1−ナフチルアミン、7−ヒドロキシ−1−ナフチルアミン、1,8−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、1−アミノ−4−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ナフタレンスルホン酸、2−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−4,8−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−4,8−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−5,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アミノ−3,6,8−ナフタレントリスルホン酸、2−アミノ−4,6,8−ナフタレントリスルホン酸、2−アミノ−5−ヒドロキシ−7−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−3−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−6−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−2−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、1−アミノ−8−ヒドロキシ−4,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、1−アミノ−2−エトキシ−6−ナフタレンスルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導されるナフチル基が挙げられる。一般式(1c)で表される置換基の具体的な例としては、4’−アミノ−4−ビフェニルカルボン酸、4’−アミノ−3’−クロロ−4−ビフェニルカルボン酸、4’−アミノ−4−ビフェニルスルホン酸、4’−アミノ−3’,4−ビフェニルジスルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導されるビフェニル基が挙げられる。
一般式(1d)で表される化合物の具体的な例としては、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アミノ−4’−ニトロスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導されるスチリル基が挙げられる。
【0020】
一般式(1e)で表される置換基の具体的な例としては、2−(p−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール、2−(p−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−5−スルホン酸、2−(p−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸、6−カルボキシ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾチアゾール−7−スルホン酸、2−(4’−アミノ−3’−スルホフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール−7−スルホン酸、2−(p−アミノフェニル)−5−メチルベンゾオキサゾール、2−(p−アミノフェニル)−5−メチルベンゾオキサゾール−4−スルホン酸等のアミノ基のアゾカップリングで誘導される複素環基が挙げられる。
一般式(1f)で表される連結基の具体的な例としては、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−クレシジン、2,5−ジメトキシアニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、5−クロロ−2−メチルアニリン、m−アセチルアミノアニリン、m−プロピオニルアミノアニリン、2−メトキシ−5アセチルアミノアニリン、2−エトキシ−5−アセチルアミノアニリン、m−アミノフェノール等のアゾカップリングで誘導されるフェニレン連結基が挙げられる。
【0021】
一般式(1g)で表される連結基の具体的な例としては、2−エトキシ−1−ナフチルアミン−6−スルホン酸、2−メトキシ−1−ナフチルアミン−6−スルホン酸、2−エトキシ−1−ナフチルアミン、1−ナフチルアミン、2−メトキシ−1−ナフチルアミン、1−ナフチルアミン−6−スルホン酸、1−ナフチルアミン−7−スルホン酸等のアゾカップリングで誘導されるナフタレン連結基が挙げられる。
一般式(4)で表されるアニリン類の具体的な例としては、p−ニトロアニリン、2−メチル−4−ニトロアニリン、2−メトキシ−4−ニトロアニリン、2,5−ジメトキシ−4−ニトロアニリン、2,5−ジエトキシ−4−ニトロアニリン、2−メトキシ−5−メチル−4−ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、2−ブロモ−4−ニトロアニリン等が挙げられる。
【0022】
一般式(5)で表されるナフタレン類の具体的な例としては、1−ヒドロキ−6− アミノナフタレン−3− スルホン酸(以下J酸と略す)、N−フェニルJ酸、N−メチルJ酸、N−(p− メチルフェニル)J酸、N−アセチルJ酸、N−メチル−N− アセチルJ酸、N−ベンゾイルJ酸、N−(3− または4−カルボキシフェニル) J酸、N−(3− または4−スルホフェニル) J酸、N−(4− アミノ−3− スルホフェニル) J酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシフェニル) J酸、N−(4− アミノベンゾイル)J酸、N−(4− アミノ−3− スルホベンゾイル) J酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシベンゾイル) J酸、N−(4− ニトロフェニル)J酸、N−(4− ニトロベンゾイル) J酸、N−(4− アミノ−3− メチルベンゾイル)J酸、N−(3または4− カルボキシベンゾイル)J酸、N−(3− または4− カルボキシベンゾイル)J酸、N−(3− または4− スルホベンゾイル)J酸、N−( β− ヒドロキシエチル)J酸、
【0023】
1−ヒドキシ−7− アミノナフタレン−3− スルホン酸(以下γ酸と略す)、N−フェニルγ酸、N−メチルγ酸、N−アセチルγ酸、N−メチル−N− アセチルγ酸、N−ベンゾイルγ酸、N−(3− または4−カルボキシフェニル) γ酸、N−(3− または4−スルホフェニル) γ酸、N−(4− アミノ−3− スルホフェニル) γ酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシフェニル) γ酸、N−(4− アミノベンゾイル)γ酸、N−(4− アミノ−3− スルホベンゾイル) γ酸、N−(4− ヒドロキシ−3− カルボキシベンゾイル) γ酸、N−(4− ニトロフェニル)γ酸、N−(4− ニトロベンゾイル) γ酸、N−(4− アミノ−3− メチルベンゾイル)γ酸、N−(3または4− カルボキシベンゾイル)γ酸、N−(3− または4− カルボキシベンゾイル)γ酸、N−(3− または4− スルホベンゾイル)γ酸、N−( β− ヒドロキシエチル)γ酸、1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−3,6− ジスルホン酸(以下H酸と略す)、N−アセチルH酸、N−ベンゾイルH酸、N−(p− トルエンスルホニル)H酸、N−( ベンゼンスルホニル)H酸、N−(p− クロルベンゾイル)H酸、1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−3,5− ジスルホン酸(以下K酸と略す)、N−アセチルK酸、1−ヒドロキシ−8− アミノナフタレン−5,7− ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−7− アミノナフタレン−3,6− ジスルホン酸、1−ナフトール−3,6− ジスルホン酸等が挙げられる。
【0024】
本発明の水溶性染料は、一般式(1)で表されるアゾキシ化合物を少なくとも一種含有するものである。
一般式(1)で表されるアゾキシ化合物は、単独で又はそれら同士で混合して、更にはこれらの化合物と他の染料と配合することにより、種々の色相の水溶性染料として用いられる。
この場合に用いる他の染料としては、本発明に用いる化合物の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収を有する染料であって、二色性の高いものであれば、どんなものでもよいが、特に好ましい染料としては、カラー.インデックス.ジェネリック.ネーム(C.I.Generic Name)で表して、次のようなものが例示される。例えば、C.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Yellow 44、C.I.Direct Yellow 28、C.I.Direct Yellow 142 、C.I.Direct Red 2、 C.I.Direct Red 79 、C.I.Direct Red 81 、C.I.Direct Red 247、 C.I.Direct Vioret 9 、C.I.Direct Vioret 51、C.I.Direct Orenge 26、C.I.Direct Orenge 39、C.I.Direct Orenge 107 、C.I.Direct Blue 1 、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 78、C.I.Direct Blue 168 、 C.I.Direct Blue 202 、C.I.Direct Brouwn 106 、C.I.Direct Brouwn 223 、C.I.Direct Green 85 、C.I.Direct Black 17 、C.I.Direct Black 19 、等である。特に多用されるグレーまたはブラック用の配合成分として、一般式(1)で表される化合物を使用した場合、優れた偏光性能及び好ましい吸収特性を示す偏光フィルムが得られる。また、その耐湿熱性も優れている。
【0025】
本発明の偏光フィルムに用いる高分子フィルムとしては、親水性高分子フィルムが好ましく、その素材の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、あるいはそれらをエチレン、プロピレン、アクリル酸またはマレイン酸アクリルアミド等で変性したもの、またはセルロース樹脂等が挙げられる。これらの高分子重合体は、水あるいは親水性有機溶剤への溶解性が良好であり、本発明の化合物との相溶性も良好である上、製膜性に優れ且つ製膜後延伸配向させたときに本発明の化合物が配向し易い点で特に有用である。
【0026】
上記の高分子重合体及び本発明の化合物を用いて、本発明の偏光フィルムを製造する方法としては、(1) 高分子重合体を製膜してフィルムとし、フィルムを延伸した後、本発明の化合物を染色する方法、(2) 高分子重合体を製膜してフィルムとし、本発明の化合物を染色した後、染色フィルムを延伸する方法、(3) 高分子重合体の溶液に本発明の化合物を添加し、原液染色で製膜した染色フィルムを延伸する方法等を挙げることができる。
上記(1) 及び(2) におけるフィルムの染色方法は、一般的に以下の方法によって行うことができる。即ち、本発明の化合物をフィルムに対して0.1〜5wt%、好ましくは0.8〜2.5wt%含む染浴に、必要に応じて塩化ナトリウム、ボウ硝等の無機塩、界面活性剤等の染色助剤を加えた後、20〜80℃、好ましくは30〜50℃で1〜60分間、好ましくは3〜20分間高分子フィルムを浸漬して染色し、乾燥する。なお、染浴は本発明の化合物0.01〜2.0g、好ましくは0.1〜1.0gを水1リットルに溶解して調製する。
【0027】
上記(3) の染色フィルムの製造方法は、一般的に以下の方法によって行うことができる。即ち、高分子重合体を水及び/又はアルコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド等の親水性有機溶媒に溶解し、本発明の化合物を添加して原液染色を行い、この染色原液を流延法、溶液塗布法、押出法等により製膜して染色フィルムを製造する。
溶媒に溶解させる高分子重合体の濃度としては、高分子重合体の種類によっても異なるが、5〜30wt%、好ましくは10〜20wt%である。また、溶媒に溶解する本発明の化合物の濃度としては、高分子重合体の種類、化合物の種類、製膜したときのフィルム厚みあるいは偏光フィルムとしたときの要求性能等によって変わるが、高分子重合体に対して0.1〜5wt%、好ましくは0.8〜2.5wt%程度である。
【0028】
上記(1) 、(2) または(3) の方法で染色、製膜して得られた未延伸フィルムは、適当な方法によって一軸方向に延伸する。延伸処理することによって染料分子が配向し、偏光性能が発現する。一軸に延伸する方法としては、湿式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にてロール間圧縮延伸を行う方法等があり、いずれの方法で行ってもよい。延伸倍率は通常2〜9倍であるが、ポリビニルアルコール及びその誘導体を用いた場合は、2.5〜6倍の範囲が好ましい。
【0029】
延伸、配向処理したあとで、該延伸フィルムの耐水性向上と偏光性向上の目的でホウ酸処理を実施する。ホウ酸処理により、偏光フィルムの光線透過率と偏光度が向上する。ホウ酸処理の条件は、用いる親水性高分子重合体の種類、化合物の種類によって異なるが、一般的には、ホウ酸濃度としては1〜15wt%、好ましくは3〜10wt%、また処理温度としては30〜80℃、好ましくは、40〜80℃の範囲にあることが望ましい。ホウ酸濃度が1wt%以下、温度が30℃以下の場合は処理効果が小さく、また、ホウ酸濃度が15wt%以上、温度80℃以上の場合は偏光フィルムがもろくなり易い傾向がある。
このようにして製造した偏光フィルムは、種々の加工を施して使用することができる。例えば、フィルム又はシートにしてそのまま使用する他、使用目的によっては、トリアセテート、アクリル又はウレタン系等のポリマーによりラミネーションして保護層を形成し、或いは、偏光フィルムの表面に蒸着、スパッタリングまたは塗布法により、インジウム−スズ系酸化物等の透明導電性膜を形成して実用に供する。
【0030】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって説明するが、これらは例示的なものであり、本発明は、これらに限定されるものではない。実施例中、構造式はすべて遊離酸の形で示し、部は重量部を示す。
なお、本発明における偏光度とは、次の方法によって測定した値である。即ち、2枚の偏光フィルムを延伸方向が平行と成るべく重ねて分光光度計の光路に置き、測定した可視領域最大吸収波長での光線透過率(T‖)及び2枚の偏光フィルムを延伸方向が直交すべく重ねて測定した同波長での光線透過率(T⊥)より次式(数1)を用いて偏光度(V)を算出した。
【0031】
【数1】
【0032】
実施例1
p−ニトロアニリン6.9部を水150部、35%塩酸14.6部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却した後、20%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3部を滴下し、同温で2時間反応させた。次に、スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を除去し、炭酸ナトリウムでpHを3〜4に調整してジアゾ液とした。別に、N−フェニルJ酸15.8部、炭酸ナトリウム15.9部を水300部に加え0〜5℃に冷却した後、上記ジアゾ液を加え、0〜10℃で2時間攪拌しカップリング反応を行った。反応終了後、濾過、乾燥して、下記化合物(A)(化11)19.8部を得た。
次に、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸9.6部を水100部に加え、40%水酸化ナトリウム水溶液10.6部を加えて、100℃まで加熱した。これに上記化合物(A)9.7部を加えて、100〜102℃で5時間反応させた。反応終了後、塩化ナトリウムの大過剰を加えて塩析し、1時間攪拌し、濾過、10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥して、下記式で表される化合物(B)(化11)10.9部を得た。
【0033】
【化11】
化合物(B)を0.25g/lの染浴に調製し、42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを浸漬し、10分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で、43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して紫色の偏光フィルムを製造した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率40%、λmax =540nmで、Vは99.5%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0034】
実施例2
p−ニトロアニリン6.9部を水150部、35%塩酸14.6部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却した後、20%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3部を滴下し、同温で2時間反応させた。次に、スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を除去し、炭酸ナトリウムでpHを3〜4に調整してジアゾ液とした。別に、H酸16部、炭酸ナトリウム15.9部を水300部に加え0〜5℃に冷却し、1時間攪拌した後、上記ジアゾ液を加え、0〜10℃で2時間攪拌しカップリング反応を行った。反応終了後、濾過、乾燥して、下記化合物(C)(化12)18.5部を得た。
次に、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸9.6部を水100部に加え、40%水酸化ナトリウム水溶液10.6部を加えて、100℃まで加熱した。これに化合物(C)14.6部を加えて、100〜102℃で7時間反応させた。反応終了後、塩化ナトリウムの大過剰を加えて塩析し、1時間攪拌し、濾過、10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥して、下記式で表される化合物(D)(化12)15.5部を得た。
【0035】
【化12】
化合物(D)を0.25g/lの染浴に調製し、42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを浸漬し、10分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で、43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して青色の偏光フィルムを製造した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率40%、λmax =560nmで、Vは99.3%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0036】
実施例3
p−ニトロアニリン6.9部を水190部、35%塩酸20.7部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却した後、20%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3部を滴下し、同温で2時間反応させた。次に、スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を除去し、炭酸ナトリウムでpHを3〜4に調整してジアゾ液とした。別に、1−アミノ−2−メトキシナフタレン−6−スルホン酸12.7部を水80部、35%塩酸6.9部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却し、1時間攪拌した後、上記ジアゾ液に加え、0〜10℃で2時間攪拌しカップリング反応を行った。反応終了後、濾過、乾燥して、下記化合物(E)(化13)16.5部を得た。
化合物(E)6.9部を水150部、35%塩酸14.6部の水溶液に加え、0〜5℃に冷却した後、20%亜硝酸ナトリウム水溶液17.3部を滴下し、同温で2時間反応させた。次いで、スルファミン酸を加えて過剰の亜硝酸を除去し、炭酸ナトリウムでpHを3〜4に調整してジアゾ液とした。別に、N−フェニルJ酸15.8部、炭酸ナトリウム15.9部を水300部に加え0〜5℃に冷却した後、上記ジアゾ液を加え、0〜10℃で2時間攪拌しカップリング反応を行った。反応終了後、濾過、乾燥して、下記化合物(F)(化13)19.1部を得た。
次に、4−アミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸9.6部を水100部に加え、40%水酸化ナトリウム水溶液10.6部を加えて、100℃まで加熱した。これに化合物(F)14.6部を加えて、100〜102℃で7時間反応させた。反応終了後、塩化ナトリウムの大過剰を加えて塩析し、1時間攪拌し、濾過、10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥して、下記式で表される化合物(G)(化13)17.5部を得た。
【0037】
【化13】
化合物(G)を0.25g/lの染浴に調製し、42℃に保持し、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを浸漬し、10分間染色した。この染色したフィルムを3%ホウ酸水溶液中で、43℃で5倍に延伸し、この状態のまま水洗、乾燥して青色の偏光フィルムを製造した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率40%、λmax =580nmで、Vは99.5%と優れていた。
この偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置したが、色相の変化及び偏光度の低下は実質的に認められなかった。
【0038】
実施例4〜43
実施例1において、化合物(B)を第1表(表1〜10)に示す各種アゾキシ化合物に代えた以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。第1表に、化合物の構造式、ポリビニルアルコールフィルムを染色して得た偏光フィルムの単板透過率、偏光度及び色相を示した。耐湿熱性については、偏光フィルムを、80℃、相対湿度85%の条件下で、500時間放置した後、色相の変化及び偏光度の低下が実質的に認められなかったものについて“〇”で表示した。得られた偏光フィルムは、いずれも優れた偏光性能を有していた。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
【表10】
【0049】
実施例44
実施例1の化合物(B)を0.10g/l、C.I.Direct Blue 168 を0.06g/l、C.I.Direct Blue 202 を0.21g/l、C.I.Direct Yellow 12を0.02g/l、C.I.Direct Orange 39を0.06g/lに調整した染浴を用いて、実施例1と同様な方法により、中性色の偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%における偏光度は99.1%と優れていた。
【0050】
比較例1
実施例1において、化合物(B)の代わりに、特開昭60−168743号公報の実施例18において公開されている下記構造式(H)(化14)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。
その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =530nmで、Vは98%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0051】
【化14】
【0052】
比較例2
実施例1において、化合物(B)の代わりに、特開平3−89203号公報において式(VIII)で公開されている下記構造式(I)(化15)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =585nmで、Vは98%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0053】
【化15】
【0054】
比較例3
実施例1において化合物(B)の代わりに、特開昭54−153648号公報においてNo3で公開されている下記構造式(J)(化16)で表される化合物を使用する以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。その偏光フィルムの吸収極大波長λmax での偏光度Vを測定した結果、単板透過率41%、λmax =450nmで、Vは95%であり、本発明の化合物より劣っていた。
【0055】
【化16】
【0056】
【発明の効果】
本発明の新規なアゾキシ化合物を含む水溶性染料、およびこれを用いて得た偏光フィルムは、高い耐湿熱性並びに高い偏光度を与えるものであり、従来のヨウ素を用いた偏光フィルムに匹敵する光学特性を示す工業的に価値のある顕著な効果を奏するものである。
Claims (6)
- 下記一般式(1)で表されるアゾキシ化合物。
- 請求項1記載のアゾキシ化合物を含むことを特徴とする水溶性染料。
- 請求項1記載のアゾキシ化合物が、高分子フィルムに、配向して含有されることを特徴とする偏光フィルム。
- 高分子フィルムが2〜9倍の延伸倍率で延伸して得られたものである請求項3記載の偏光フィルム。
- 高分子フィルムが、セルロース樹脂またはエチレン、プロピレン、アクリル酸、マレイン酸アクリルアミド等で変性されていてもよいポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項3又は4記載の偏光フィルム。
- 請求項2記載の水溶性染料で染色した高分子フィルムを2〜9倍の延伸倍率で延伸することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
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