JP3613313B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、記録用紙の幅方向に移動するキャリッジに複数のインクジェット式記録ヘッドとこれらにインクを供給する複数のインクカートリッジを搭載し、印刷デ−タに一致して複数色のインクを記録用紙に噴射して画像や文字を印刷するインクジェット式プリンタ、より詳細にはインクカートリッジの交換技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録ヘッドを搭載した記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、カラー印刷を含めた多くの印刷に使用され、特に記録密度の一層の向上や、またカラー印刷を可能にするため、キャリッジに黒インク用記録ヘッドと、カラーインク用記録ヘッドとを搭載したものが実用化されている。
このような記録装置は、装置全体の小型化とインク補給の簡素化を図るために、各記録ヘッドに黒インク、及びカラーインクを供給するそれぞれ独立のインクカートリッジをキャリッジに搭載するように構成されている。
【0003】
このようなインクカートリッジは、その装着に際してインクカートリッジと記録ヘッドとの接続部から記録ヘッドの流路内に気泡が浸入するため、2つのインクカートリッジを搭載した機種にあってはインクカートリッジの交換が行われた記録ヘッドをケースのパネル面の外部スイッチにより特定し、当該記録ヘッドに負圧を作用させてインクを強制的に充填、排出する必要がある。
しかしながら、交換されたインクカートリッジの特定をユーザのスイッチ操作に頼っているため、指定を誤った場合には、交換されたインクカートリッジに対しては充填操作が実行されず、印刷が不能となり、また交換されていないインクカートリッジに対して充填操作が実行されてしまい、インクを浪費するという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するために、例えば特開平7−323576号公報に見られるように、インクカートリッジ検出手段からの信号によりインクカートリッジの装着状態を検出するインクカートリッジ交換履歴判定手段を設け、インクカートリッジの装着が検知された場合に、交換がなされたインクカートリッジに充填操作を行なわせるインクジェット式記録装置が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これによれば、交換されたインクカートリッジに対してだけ充填操作を行わせて、交換されなかったインクカートリッジのインクの吸引を防止できるものの、交換すべきカートリッジをユーザ自身が判断せねばならず、無用な着脱操作による記録ヘッドへの気泡の侵入を許して印刷不良を招くという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数のインクカートリッジを搭載する記録装置のインクカートリッジの交換の簡素化と操作ミスを防止することできる新規なインクジェット式記録装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような問題を解消するために本発明においては、複数種類のインクをインク滴として吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドに異なる種類のインクを供給する複数のインクカートリッジと、前記記録ヘッドと前記インクカートリッジとを搭載するキャリッジと、印刷領域外に配置されて前記記録ヘッドを封止するキャッピング手段と、前記キャッピング手段に負圧を作用させる吸引手段と、前記複数のインクカートリッジのいずれかを着脱可能に外部に露出させる窓と、クリーニング処理を指令するスイッチと、前記インクカートリッジのインク残量を検出するインク残量検出判定手段と、前記スイッチによりクリーニング処理が指令された場合に前記インク残量判定手段により前記インクカートリッジのインク残量を判定し、当該インクカートリッジのインクの残量が少なくとも前記クリーニング処理により消費される量より少ない場合には、当該インクカートリッジに対応する記録ヘッドに対してクリーニング処理を実行することなく当該インクカートリッジを前記窓に移動させて交換を可能ならしめる制御手段とを備えるようにした。
【0007】
【作用】
クリーニング処理が指令された場合には、インク残量判定手段によりインクカートリッジのインク残量を判定し、当該インクカートリッジのインクの残量が少なくともクリーニング処理により消費される量より少ない場合には、当該インクカートリッジの記録ヘッドに対してクリーニング処理を実行することなく当該インクカートリッジを窓に移動させて交換を可能ならしめ、クリーニング後に印刷が不可能になる程度のインクしか残存していないインクカートリッジに対するクリーニング処理をスキップさせる。
【0008】
【発明の実施の形態】
そこで以下に、本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明のインクジェット式記録装置の一実施例を示すものであって、開閉可能なケースカバー1と、ケース本体2とからなるケース3に、後述する印刷機構を収容して構成され、ケース本体2には印刷領域と非印刷領域とを区分するように枠2cを挟んで2つの窓5、6が形成されている。
【0009】
非印刷領域に形成された窓6は、キャリッジ11に搭載された2つのインクカートリッジ7、8の何れか一方のみの上面が全て露出可能で、他方のインクカートリッジの少なくとも一部がケース本体2にカバーされるようにそのサイズと形状が選択されている。またケースカーバ1が閉じられたとき、本体ケース2の露出する領域には、操作パネル9が設けらていて、ここに電源スイッチPーSW、インクカートリッジ交換指令スイッチICーSW、黒ヘッドクリーニング指令スイッチBCーSW、カラーヘッドクリーニング指令スイッチCCーSWの他に、ラインフィードやリセットスイッチ等が、また黒及びカラーインクカートリッジのインクエンド表示器BE、CEが配置されている。
【0010】
図2は、上述した印刷機構の概要を示すものであって、キャリッジ11は、タイミングベルト12によりキャリッジ駆動モータ13に接続されていて、ガイド部材14に案内されてプラテン15に平行に往復移動するように構成されている。キャリッジ11は、その記録用紙16と対向する面に、印刷領域(図中、左側)に黒インクを吐出する記録ヘッド17が、また非印刷領域側(図中、右側)にカラー印刷用の記録ヘッド18が固定されている。各記録ヘッド17、18は、それぞれ前述の黒インクインクカートリッジ7、カラーインクカートリッジ8からインクの供給を受けて記録用紙16にインク滴を吐出して印刷する。
【0011】
非印字領域に配置されたキャッピングユニット19は、黒記録ヘッド17を封止するキャップ20と、カラーインク用記録ヘッド18をそれぞれ独立して封止するキャップ21を同一のスライダに搭載し、モータ22により駆動される2連構成のポンプユニット23にチューブを介して接続されて、それぞれ独立して負圧の供給を受けるように構成されている。
【0012】
各キャップ20、21は、記録ヘッド17、18のノズル開口面を1つの空間で封止できるサイズを備え、ゴムなどの弾性材料をカップ状に成形されており、非印字時には記録ヘッド17、18のノズル開口面を封止し、また吐出能力回復操作時や、またインクカートリッジ7、8が交換された際には、ポンプユニット23の負圧により記録ヘッド17、18からインクを強制的に排出させることができるように構成されている。また、キャッピングユニット19の近傍には、図示しない駆動源からの動力により記録ヘッド17、18のノズル開口面にワイピングブレードを当接させるクリーニングユニット24が配置されている。
【0013】
図3は、同上記録装置のインクカートリッジ交換操作や、目詰まり解消を実行する制御装置の一実施例を示すものであって、インクカートリッジ着脱検出手段30は、キャリッジ11の各インクカートリッジ7、8が対向する位置、この実施例ではキャリッジ11のカートリッジ受け面にインクカートリッジ7、8により押圧操作されるスイッチ31、32からの信号を受けてインクカートリッジ7、8の装着、及び取り外しを検出するものである。インクカートリッジ交換判断手段33は、インクカートリッジ着脱検出手段30からの信号により、インクカートリッジ7、8が交換されたか、否かを判断するものである。
【0014】
キャリッジ位置検出手段34は、キャリッジ位置検出器35からの信号に基づいてキャリッジ11が、少なくともホームポジション、第1のインクカートリッジ7が窓6に対向する第1の交換位置、第2のインクカートリッジ8が窓6に対向する第2の交換位置、フラッシング動作の際に記録ヘッド7、8からのインク滴を受けることができるフラッシング位置、この実施例ではキャップ20、21に対向する位置、及び記録ヘッド7、8がクリーニングユニット24によるワイピングやラビングを受けることができるクリーニング位置に移動した場合等に、その位置についての信号を出力する。
【0015】
キャリッジモータ制御手段36は、シーケンス選択手段45からの制御を受けてキャリッジ11を印刷のために往復移動させる他、後述する吸引制御手段39、及びキャリッジ位置検出手段34からの信号に基づいてキャリッジ11を前述のホームポジション、第1の交換位置、第2の交換位置、フラッシング位置、及びクリーニング位置に移動させ、さらにインクカートリッジ7、8の交換が完全な状態で終了した場合には、通常よりも低トルク、もしくは低速、またはこれらの組み合わせた状態でキャリッジ11をホームポジションに移動させる。
【0016】
印字・フラッシング制御手段37は、ホストからの印刷データに基づいてヘッド駆動手段38から各記録ヘッド17、18にインク滴吐出のための駆動信号を出力して印刷を実行させる他に、フラッシング位置に存在する記録ヘッド17、18に前述と同様の駆動信号を出力して、全てのノズル開口からインク滴を吐出させて増粘したインクをインク受けに吐出させるものである。
【0017】
吸引制御手段39で、シーケンス選択手段45による制御を受けて記録ヘッド17、18をキャッピングユニット19により封止させ、ポンプ駆動手段40によりポンプユニット23の各吸引ポンプ23a、23bの吸引力や、吸引時間を制御して、インク吐出能力回復のために記録ヘッド17、18からインクを吐出させる他に、インクカートリッジ7、8が交換された際に、インクカートリッジ7、8から記録ヘッド17、18に印刷が可能となるようにインクを充填させるものである。
【0018】
インク残量検出手段41は、印刷により形成するドット数や、フラッシング動作により吐出するインク滴の数や、充填動作、クリーニング動作により消費されるインク量を積算して、インクカートリッジ7、8のインク残量を算出する。そして、インクカートリッジ7、8が交換された場合にはその積算値をリセットする他、少なくと一方のインクカートリッジ7、または8の交換が指令された場合に、他方のインクカートリッジ8、または7のインク残量をチェックし、インクカートリッジの交換に随伴する吸引で消費されるインク量よりも少ない場合に、インクカートリッジ7、8のインク残量をインクエンドと判断する。
【0019】
電源遮断検出手段42は、電源スイッチPのオン−オフを検出してその状態を示す信号を出力するとともに、電源をオフとする操作が行われた場合には所定の後処理を実行した後、装置への電源の供給を停止するものである。ケース開放検出手段43で、ケースカバー1の開閉に応動するスイッチ44からの信号によりケースカバー1が開放されたか否かを示す信号を出力する。
【0020】
シーケンス選択手段45は、パネル9のインクカートリッジ交換指令スイッチIC、クリーニング指令スイッチBC、CC、電源遮断検出手段42、ケース開放検出手段43、インク残量検出判定手段41、及びホストからの信号を受け、後述するフローチャートに基づいて全体の処理や、さらには電源オン処理、電源オフ処理、クリーニング処理、インク残量チェック処理、印刷処理、インクカートリッジ交換処理等の動作を統括し、またインクカートリッジ交換に伴って生じる各種の状態を電源オフ処理時に吸引状態記憶手段46に格納するものである。
【0021】
吸引状態記憶手段は、工場出荷時点では初期充填フラッグをオフとしたデータが格納されており、ユーザサイドで初期充填が終了した段階で初期充填フラッグをオンとし、またインクカートリッジ7、8に対する吸引操作の状態や、インカートリッジ7、8の交換の状態、インク残量等を格納するエリアを備えている。なお、図中符号47は、キャリッジ駆動モータ13を駆動するキャリッジモータ駆動手段を示す。
【0022】
次にこのように構成した装置の動作を図4乃至図12に示したフローチャートに基づいて説明する。
(全体の動作についての説明)
電源スイッチPが投入されると、電源オン処理動作を実行する(図4 ステップ イ)。
すなわち、シーケンス選択手段45は、吸引状態記憶手段46から前回の電源オフ時の吸引状態を読出し(図5 ステップ イ)、またインクカートリッジ交換判定手段33からの信号に基づいて黒のインクカートリッジ7及びカラーのインクカートリッジ8の少なくとも一方が装着されているか否かを判定する(図5ステップ ロ)。黒、及びカラーのインクカートリッジ7、8が共に装着されていない場合にはインクカートリッジ無しを表示器BE,CEに表示し(図5 ステップ ハ)、後述するインクカートリッジ交換処理のシーケンスを起動する(図5 ステップ ニ)。
【0023】
一方、黒、及びカラーインクカートリッジ7、8が共にキャリッジ11に装着されている場合には、シーケンス選択手段45は、インク残量検出判定手段41のデータに基づいてインクカートリッジ7、8のそれぞれに対して後述するインク残量のチェックの処理を実行する(図5 ステップ ホ)。
【0024】
インク残量のチェック処理の結果、少なくとも一方のインクカートリッジ7、8に残存しているインク量が極めて少なくてインクエンドと判定された場合には(図5 ステップ ヘ)、シーケンス選択手段45は、インクカートリッジ交換処理のシーケンスを起動する(図5 ステップ ニ)。
【0025】
インクカートリッジ7、8に十分な量なインクが存在する場合には、シーケンス選択手段45は、吸引状態記憶手段46に格納されているデータに基づいて前回のインクカートリッジ7、8の交換作業の終了具合を判定する。すなわちインクカートリッジ7、8の交換が完全な状態で完了する前に電源スイッチPがオフにされていた場合には(図5 ステップ ト)、インクカートリッジの交換処理を再起動するか(図5 ステップ ニ)、少なくともインクカートリッジ7、8の交換後に必要な吸引処理を実行する。
【0026】
前回のインクカートリッジ交換作業が完全な状態で完了していることが判明した場合には、シーケンス選択手段45は、ケース開放検出手段43の信号に基づいてケースカバー1が開放されているか否かをチェックし(図5 ステップ チ)、ケースカバー1が開放されている場合にはインクカートリッジ交換処理を実行する(図5 ステップ ニ)。これにより電源投入直後にケースカバー1を明けるか、またケースカバー1を開けてから電源スイッチPをオンにすることにより自動的にインクカートリッジ交換のシーケンスを呼び出すことができる。
【0027】
さらにシーケンス選択手段45は、吸引状態記憶手段46のデータに基づいて初期充填が終了しているか否かを判定し(図5 ステップ リ)、初期充填が完了していない場合、つまり記録ヘッド17、18に一度もインクが充填されていない場合には、初期充填のための吸引動作を実行した後(図5 ステップ ヌ)、吸引状態記憶手段46の初期充填フラッグをオンとするデータを格納し(図5ステップ ル)、以後、インクを大量に消費する初期充填動作が誤って再び起動されるのを阻止する。
【0028】
このようにしてインクカートリッジ7、8の装着が完了した状態で、長時間の放置などによる目詰まりを解消するための処理であるタイマー吸引が発動されると(図5 ステップ オ)、当該タイマー吸引がインクカートリッジ7、8の交換後の最初のものである場合には(図5 ステップ ワ)、吸引量を多めに設定して実行し(図5 ステップ カ)、また2回目以降のものである場合には、吸引量を少な目として実行する(図5 ステップ ヨ)。
【0029】
これにより、インクカートリッジ7、8の交換により記録ヘッド17、18などに浸入した気泡の内、交換処理の吸引では排出しきれず、その後に成長した気泡を確実に排出でき、また単に目詰まり予防、もしくは解消のための吸引量は必要最小限としてインクの消費を防止することができる。
【0030】
電源オン処理が終了した段階で、シーケンス選択手段45は、操作パネル9のスイッチ類の操作状況を検出し、それぞれの記録ヘッド17、18に対するクリーニング指令スイッチBC,CCが操作されていることを検知した場合には(図4 ステップ ロ、ニ)、後述する黒ヘッド17のクリーニング処理、カラーヘッド18のクリーニング処理を実行し(図4 ステップ ハ、ホ)、またインクカートリッジ交換指令スイッチICが操作されていることを検知した場合には(図4 ステップ ヘ)、後述するインクカートリッジの交換処理のシーケンスを起動する(図4 ステップ ト)。
【0031】
このように操作パネル9のスイッチにより指令される動作に対応した処理の終了後にも、電力が供給されている場合には(図4 ステップ チ)、ホストからの印刷データの入力を待ち(図4 ステップ ヌ)、操作パネル9のスイッチが押圧された場合には前述のステップ(ロ)乃至(ト)を実行する。
【0032】
一方、印刷が可能な状態での待機中に印刷データが入力した場合にはシーケンス選択手段45は、後述する印刷処理を行いつつ(図4 ステップ ル)、インクカートリッジ7、8のインク残量をチェックし(図4 ステップ オ)、最初のステップ(ロ)に戻る。
【0033】
(黒記録ヘッドのクリーニング処理)
操作パネル9の黒ヘッド17のクリーニング指令スイッチBCが操作されると、シーケンス選択手段45は、インク残量検出判定手段41からのデータに基づいて黒インクカートリッジ7のインクの残量を判定し、インクエンドであることが判明した場合には(図6 ステップ イ)、黒インクカートリッジ7の交換処理のシーケンスを起動し(図6 ステップ ハ)、インクエンド表示器BEを連続点灯してインクエンドの表示を行う。
【0034】
また黒インクカートリッジ7に残存しているインク量では印刷は可能であるが、黒インクカートリッジ7のインク残量が一定値以下の場合、つまり引き続いて実行されるクリーニング等によるインク吸引により消費されて印刷が不可能になる量より少ない場合には(図6 ステップ ロ)、シーケンス選択手段45は、記録ヘッド7のインク抜けによる気泡の取込を防止ために黒インクカートリッジ7の交換処理のシーケンスを起動する(図6 ステップ ハ)。
【0035】
一方、黒インクカートリッジ7のインク残量がインクカートリッジの交換前の1/2以上で、かつ交換後の印刷量が基準値以下の場合には(図6 ステップ ニ)、交換操作に伴なって浸入した気泡を排除する目的の特別の吸引処理を実行する(図6 ステップ ホ)。
【0036】
また、特別気泡排出吸引の処理では、インク残量判定手段41のインク残量をリセットし、ワンタイムフラッグをオンに切換え、インクカートリッジ交換後に実行するのと同様の吸引処理を実行する。なお、インクカートリッジ交換後に規定量、たとえば5頁以上の印刷が実行されている場合におけるユーザによるクリーニング指令に対しては、ワンタイムフラッグをオフにして吸引インク量の少ない通常の吸引を実行する。一方、規定量以下の印刷しか行われていない状態でのクリーニング指令に対しては、ワンタイムフラッグをオンにして特別気泡排出処理を実行する。
【0037】
他方、黒インクカートリッジ7のインク残量が多くてクリーニング後も印刷可能な量のインクが残存することが見込める場合、または新しくインクカートリッジ7が装着された場合には記録ヘッド17をホームポジションに移動させてキャップ19で封止し、吸引制御手段39により吸引ポンプ23aを制御して記録ヘッド17からインクを吸引、排出させる(図6 ステップ ヘ)。
【0038】
(カラー記録ヘッドのクリーニング処理)
操作パネル9のカラーヘッド18のクリーニング指令スイッチCCが操作されると、シーケンス選択手段45は、インク残量判定手段41からのデータに基づいてカラーインクカートリッジ8のインクの残量を判定し、インクエンドであることが判明した場合には(図7 ステップ イ)、カラーインクカートリッジ8の交換処理のシーケンスを起動する(図7 ステップ ハ)。
【0039】
またカラーインクカートリッジ8に残存している今のインク量では印刷は可能であるが、カラーインクカートリッジ8のインク残量が一定値以下、例えばニアエンドの場合、つまり引き続いて実行されるクリーニング等によるインク吸引により消費されて印刷が不可能になる量より少ない場合には(図7 ステップ ロ)、シーケンス選択手段45は、記録ヘッド18のインク抜けによる気泡の取込を防止ためにカラーインクカートリッジ8の交換処理のシーケンスを起動する(図6 ステップ ハ)。
【0040】
一方、カラーインクカートリッジ8のインク残量がインクカートリッジの交換前の1/2以上で、かつ交換後の印刷量が基準値以下の場合には(図7 ステップ ニ)、交換操作に伴なって浸入した気泡を排除する目的の特別の吸引処理を実行する(図7 ステップ ホ)。
【0041】
また、特別気泡排出吸引の処理では、インク残量判定手段41のインク残量をリセットし、ワンタイムフラッグをオンに切換え、インクカートリッジ交換後に実行するのと同様の吸引処理を実行する。なお、インクカートリッジ交換後に規定量、たとえば5頁以上の印刷が実行されている場合におけるユーザによるクリーニング指令に対しては、ワンタイムフラッグをオフにして吸引インク量の少ない通常の吸引を実行する。一方、規定量以下の印刷しか行われていない状態でのクリーニング指令に対しては、ワンタイムフラッグをオンにして特別気泡排出処理を実行する。
【0042】
他方、カラーインクカートリッジ7のインク残量が多くてクリーニング後も印刷可能な量のインクが残存することが見込める場合、または新しくインクカートリッジ7が装着された場合には記録ヘッド18をホームポジションに移動させてキャップ19で封止し、吸引制御手段39により吸引ポンプ23bを制御して記録ヘッド18からインクを吸引、排出させる(図7 ステップ ヘ)。
【0043】
なお、上述の吸引処理が終了した段階で、シーケンス選択手段45は、必要に応じてクリーニングユニット24によりノズルプレートをラビングしたり、または記録ヘッド17、18をキャッピングユニット19に移動させて印字・フラッシング制御手段37によりフラッシング操作を実行させる。
【0044】
(インク残量の検出)
シーケンス選択手段45は、インク残量のチェックが必要となった段階で、一方のインクカートリッジ、例えば黒インクカートリッジ7のインク残量がインクエンドであるか否かをインク残量検出判定手段41のデータに基づいて判定し(図8 ステップ イ)、インクエンドであることが判明した場合には黒インクエンド表示器BEを連続点灯させて黒インクエンドを表示する(図8 ステップ ロ)。引き続いて他方のインクカートリッジ、この実施例ではカラーのインクカートリッジ8のインク残量をも判定し、インクエンドではないがクリーニング等によるインク吸引で消費されるインク量よりも少なくない場合には(図8 ステップ ハ)、インクエンドとみなして(図8 ステップ ニ)、カラーインクカートリッジ8のインクエンド表示器CEを連続点灯させてインクエンドを表示する(図8 ステップ ホ)。
【0045】
最初にインク量をチェックした黒インクカートリッジ7に十分なインクが残存している場合には、第2のインクカートリッジ8に対しても前述と同様の工程を繰返す(図8 ステップ ヘ〜ヌ)。つまりカラーインクカートリッジ8のインク残量がインクエンドであるか否かを検出してインクエンドである場合には表示器CEを連続点灯させてカラーインクエンドを表示する(図8 ステップ ト)。引き続いて第1のインクカートリッジ7のインク残量をも判定し、インクエンドではないが残量が極めて少なく、クリーニング等によるインク吸引で消費されるインク量よりも少なくないと判定した場合には(図8 ステップ チ)、インクエンドとみなして(図8 ステップ リ)、黒インクカートリッジ7のインクエンド表示器BEを連続点灯させてインクエンドを表示する(図8 ステップ ヌ)。
【0046】
このように一方のインクカートリッジのインク量が、インクカートリッジの交換を要する程度に少なくなっている場合に、他方のインクカートリッジのインク残量をも合わせてチェックし、その残量が十分に印刷が可能な量ではあるが、吸引操作により必要とされる一定値以下にまで減少している場合にはインクエンドとみなしてしまうことにより、例えば図15に示したようなノズルプレートが共通化されいて、インク種が異なるノズル開口列を独立させて封止することが不可能で、共通のキャップ51により封止される記録ヘッドを用いた記録装置にあっては、交換を要しないインクカートリッジであっても吸引を受けてインクが消費されてしまい、一方のインクカートリッジ交換作業が完了した段階では、他方のインクカートリッジのインク量も極めて少なくなっていて、まもなく交換作業が必要となる。
【0047】
このため、一方のインクカートリッジの交換に合わせて他方のインクカートリッジの交換をユーザに促すことにより、2つのカートリッジに対する吸引動作を共通化することが可能となり、インクカートリッジの交換作業の繁雑化と、インクの消費を防止できる。
【0048】
一方、2つのインクカートリッジ7、8にインクエンドと判定すべき量よりも多くのインクが残存していることが確認できた場合には、インク残量検出判定手段41は、黒インクカートリッジ7のインク量がニアエンドであるか否かを判定し(図8 ステップ ル)、ニアエンドである場合にはインクエンド表示器BEを点滅させて黒インクカートリッジ7がニアエンドであることを表示する(図8
ステップ オ)。
【0049】
黒インクカートリッジ7に十分な量のインクが残存している場合には、カラーインクカートリッジ8についてインク量がニアエンドであるか否かを判定し(図8 ステップ ワ)、ニアエンドである場合にはインク表示器CEを点滅させてカラーインクカートリッジ8がニアエンドであることを表示する(図8 ステップ カ)。
【0050】
(印刷処理)
印刷可能な状態で印刷データが入力すると、シーケンス選択手段45は、インク残量検出判定手段41のデータに基づいてインクカートリッジ7、8のインク残量をチェックし(図9 ステップ イ)、必要に応じて、検出されたインク量についてのデータをホストに出力する(図9 ステップ ロ)。
【0051】
ホストは、これから印刷する印刷データに必要なインク量を算出し、記録装置から出力されてきたインク量と比較して、インクカートリッジ7、8のインク量の方が少ない場合には、インクカートリッジの交換指令を出力したり(図9 ステップ ハ)、ホストの表示手段にエラー表示を行ってユーザに印刷を強行するか、それともインクカートリッジの交換を行うかの選択を促す。ユーザがインクカートリッジ交換を選択すると、ホストはインクカートリッジの交換指令を記録装置に出力する。シーケンス選択手段45はこの指令を受けてインクカートリッジの交換処理のシーケンスを起動する(図9 ステップ ホ)。
【0052】
また、インク残量検出判定手段41のデータによりインクエンドであることが判明した場合には(図9 ステップ ニ)、シーケンス選択手段45はインク交換処理のシーケンスを起動する(図9 ステップ ホ)。
【0053】
このようにしてインクカートリッジ7、8のインク残量のチェックを通過できるか、インクカートリッジ7、8の交換により印刷が可能となると、シーケンス選択手段45は、ホストからの印刷データを印字・フラッシング制御手段37に出力して1頁分の印刷を実行する(図9 ステップ ヘ)。2頁以降の印刷データが存在する場合には、上述の工程(図9 ステップ イ〜ヘ)を経て次ページ以降を印刷する(図9 ステップ ト)。
【0054】
このようにして印刷が終了してユーザが電源スイッチPによりオフを指令すると(図4 ステップ チ)、電源遮断検出手段42から信号が出力して、シーケンス選択手段45が電源オフ処理を実行する(図4 ステップ リ)。
【0055】
(電源オフ処理)
電源スイッチPがオフとされて電源遮断検出手段42から信号が出力すると、シーケンス選択手段45は、キャリッジモータ制御手段36によりキャリッジ11をホームポジションに移動させる(図10 ステップ イ)。これにより記録ヘッド17、18はキャップ20、21に封止され、記録ヘッド17、18のノズル開口のインクの乾燥が防止される。
【0056】
ついで、今回の起動が最初のインクカートリッジの装着後のもので、初期充填を実行した場合には、初期充填の操作が完全に実行されたか否かを判定して、完全な状態で終了している場合には初期充填フラッグをオフからオンに切換える。また既に初期充填の操作が終了していて、単にインク補充のためにインクカートリッジ7、8の交換が行われた場合には、インクカートリッジの交換を示すデータや、インクカートリッジの交換に伴う後処理である交換吸引処理が完全に終了したかを示すデータ、及びインク残量判定手段41のインク残量のデータを吸引状態記憶手段46に格納する(図10 ステップ ロ)。このようにして現在の状態を示す全てのデータの格納が終了した段階で、装置全体への電源の供給を停止する。
【0057】
(インクカートリッジの交換処理)
パネル9のインクカートリッジ交換指令スイッチICや、前述の各処理によりインクカートリッジの交換処理のシーケンスが起動されると、シーケンス選択手段45は、キャリッジ11の移動方向に並んで配置された2個のインクカートリッジ7、8の内、交換が必要なカートリッジが印刷領域側に配置されたインクカートリッジ7の1個だけであるか、非印刷領域側に配置されているインクカートリッジ8をも含めたインクカートリッジ7、8の2個の交換であるかを判定する(図11 ステップ イ、ロ)。
【0058】
両方のインクカートリッジ7、8を同時に交換することが必要な場合には、シーケンス選択手段45はキャリッジモータ制御手段36によりホームポジッションに停止しているキャリッジ11(図13(イ))を印刷領域側に移動させて、キャリッジ11の非印刷領域側に搭載されているカートリッジ8を交換位置、つまり窓6に対向するように移動させる(図13(ハ)、図14(ロ))。
【0059】
この状態ではインクカートリッジ8だけが窓6に対向し、他方のインクカートリッジ7は枠2cに対向するから、インクカートリッジ8だけが取出し可能となる。これにより、交換対象となっているインクカートリッジ8が特定しやすくなり、交換が不要な他方のインクカートリッジ7を誤って引き抜く等のミスを防止することができる。
窓6のより特定された交換対象のインクカートリッジ8を引き抜くと、インクカートリッジ8の引き抜きが、また新しいインクカートリッジ8をキャリッジ11に装着すると、カートリッジ8の装着が検出器32により検出されてこれから信号が出力するから、シーケンス選択手段45はカラーインクカートリッジ8の交換が行われたことを吸引状態制御手段39に記憶させる(図11 ステップ ハ)。
【0060】
新しいインクカートリッジ8の装着後、所定時間内に(図11 ステップ ニ)インクカートリッジ交換指令スイッチICをユーザが押圧したり(図11 ステップ ホ)、また所定時間が経過した段階で自動的にこのインクカートリッジ1個についてだけの交換であるか否かを判定する(図11 ステップ ヘ)。
【0061】
今の場合は、2つのインクカートリッジ7、8の交換が必要であるから、シーケンス選択手段45は、キャリッジモータ制御手段36に信号を出力し、新しいインクカートリッジ8が装着された記録ヘッド18をワイピング位置に移動させててノズルプレートをクリーニングユニット24によりワイピングする(図11ステップ ト)。これにより、インクカートリッジ8の着脱によりノズル開口からインクが滲み出していた場合には、ワイピングにより払拭されて装置内にインク滴が落下するを未然に防止できる。
【0062】
非印刷側に位置するインクカートリッジ8の交換が終了すると、シーケンス選択手段45は、キャリッジモータ制御手段36によりキャリッジ11を移動させて他方のインクカートリッジ7を交換位置である窓6まで移動させる(図11 ステップ チ)(図13(ロ))(図14(イ))。この移動により最初にインクカートリッジ8が交換された記録ヘッド18はホームポジション側に待避するから、たとえインクカートリッジ8の交換に起因してインク滴が落下しても印刷領域の汚染が防止できる。
【0063】
ついで他方のインクカートリッジ7を交換すべくインクカートリッジ7を引き抜くと、インクカートリッジ7の引き抜きが、また新しいインクカートリッジ7をキャリッジ11に装着すると、カートリッジ7の装着が検出器31により検出されてこれから信号が出力するから、シーケンス選択手段45はインクカートリッジ7の交換が行われたことを吸引状態制御手段39に記憶させる(図11 ステップ リ)。
【0064】
新しいインクカートリッジの装着後、所定時間内に(図11 ステップ ヌ)インクカートリッジ交換指令スイッチICをユーザが押圧したり(図11 ステップ ル)、また所定時間が経過すると、シーケンス選択手段45はキャリッジモータ制御手段36によりキャリッジ駆動モータ13を低トルク、もしくはユーザがキャリッジ11の移動に気付く程度の低速度、または低トルクかつ低速度でキャリッジ11を移動させ(図11 ステップ オ)、キャリッジ11のイニシャライズを実行する(図11 ステップ ワ)。
【0065】
このようなキャリッジ11の低速、低トルクでの移動によりユーザは記録装置が次の動作に移ったことに気付いて自身の指をケース3から遠ざけるから、指を機械に挟み込んで怪我するのを未然に防止することができる。またたとえ挟み込まれたとしても駆動トルクが小さいから、キャリッジ駆動モータ13が瞬時に停止してキャリッジ11に損傷を与えたり、また指に怪我を負わせまでには至らない。そして、たとえインクカートリッジの交換作業による外力によりキャリッジ11が強制的に移動させられた場合であっても、キャリッジ11を印刷に適した位置に修正することができる。
【0066】
このようにしてキャリッジ11が指を挟みこまない程度の位置、つまりこの実施例では印刷領域側に配置されている黒インクカートリッジ7の非印刷領域側の面が窓6から隠れる位置に移動したことがキャリッジ位置検出手段34に検出されると、キャリッジモータ制御手段36はキャリッジ駆動モータ13を通常のトルクで以って所定の回転速度で駆動して記録ヘッド18をキャップユニット19で封止可能な位置に移動させる(図11 ステップ カ)。
【0067】
シーケンス選択手段45は、吸引状態記憶手段46のデータに基づいて記録ヘッド17、18に対する初期充填操作が完了しているか否かを判定する(図11ステップ ヨ)。今回のインクカートリッジの装着が記録装置購入後最初のものである場合、つまり吸引状態記憶手段46の初期充填フラッグがオフである場合には、吸引制御手段39に信号を出力してポンプ23a、23bを作動させて記録ヘッド17、18から初期充填に必要なインク量、つまり工場出荷時に記録ヘッドに充填されていたメンテナンス液の排除と、記録ヘッド17、18内の気泡を完全に排出できて所定の状態で印刷可能ならしめるに必要な量のインクを吸引する(図11 ステップ タ)。シーケンス選択手段45は、初期充填の完全な遂行が確認できた段階で吸引状態記憶手段46に格納されている初期充填フラッグをオフからオンに切り替える(図11 ステップ レ)。
【0068】
一方、当該インクカートリッジ7、8の装着がインクの消費に伴うインク補充のためのものである場合には(図12 ステップ イ、ニ)、シーケンス選択手段45は、吸引制御手段39に信号を出力してポンプ23a、23bを作動させて記録ヘッド17、18からカートリッジの交換に伴って必要な量のインクを吸引させる(図12 ステップ ロ、ホ)。キャリッジ位置検出手段34によりホームポジションを検出してキャリッジ11をホームポジションに停止させてキャッピングユニット19により記録ヘッド17、18を封止し(図12 ステップト)、インクカートリッジ7、8が正常に交換されたことをインク吸引状態記憶手段46に記憶させる(図12 ステップ チ)。
【0069】
これに対して1つのインクカートリッジだけの交換の場合には(図11 ステップ イ)、シーケンス選択手段45は、キャリッジモータ制御手段36によりキャリッジ11を移動させて交換対象となるインクカートリッジ7、または8を交換位置である窓6まで移動させる(図11 ステップ ソ)(図13(ロ)(ハ))(図14(イ)(ロ))。
【0070】
ついでインクカートリッジ7を交換すべくインクカートリッジ7、または8を引き抜くと、インクカートリッジ7、または8の引き抜きが、また新しいインクカートリッジ7、または8をキャリッジ11に装着すると、カートリッジ7、または8の装着が検出器31、32により検出されるから、シーケンス選択手段45はインクカートリッジ7、または8の交換が行われたことを吸引状態制御手段39に記憶させる(図11 ステップ リ)。
【0071】
新しいインクカートリッジの装着後、所定時間内に(図11 ステップ ヌ)インクカートリッジ交換指令スイッチICをユーザが押圧したり(図11 ステップ ル)、またインクカートリッジ交換指令スイッチICが押圧されることなく所定時間が経過した段階で、シーケンス選択手段45はキャリッジ駆動モータ13を低トルク、もしくはユーザがキャリッジ11の移動に気付く程度の低速度、または低トルクかつ低速度でキャリッジ11を移動させ(図11 ステップ オ)、キャリッジ11のイニシャライズを実行する(図11 ステップ ワ)。
【0072】
このようにしてキャリッジ11がキャリッジ1が指を挟みこまない程度の位置、つまりこの実施例では印刷領域側に配置されている黒インクカートリッジ7の非印刷領域側の面が窓6から隠れる位置に移動したことがキャリッジ位置検出手段34に検出されると、キャリッジモータ制御手段36はキャリッジ駆動モータ13を通常のトルク、速度で駆動して記録ヘッド18をキャップ19、20で封止可能な位置に移動させる(図11 ステップ カ)。
【0073】
シーケンス選択手段45は、吸引状態記憶手段46のデータに基づいて記録ヘッド17、または18に対する初期充填操作が完了しているか否かを判定する(図11 ステップ ヨ)。今回のインクカートリッジの装着が最初であること、つまり吸引状態記憶手段46の初期充填フラッグがオフである場合には、吸引制御手段39に信号を出力してポンプ23a、または23bを作動させて記録ヘッド17、または18から初期充填に必要な所定量、つまり工場出荷時に充填されていたメンテナンス液や気泡を排出し切って印刷可能ならしめるに必要な量のインクを吸引する(図11 ステップ タ)。シーケンス選択手段45は、初期充填の完全な遂行が確認できた段階で吸引状態記憶手段46に格納されている記録ヘッド17、または18の初期充填フラッグをオフからオンに切り替える(図11 ステップ レ)。
【0074】
一方、当該インクカートリッジ7、または8の装着がインクの消費によるインクカートリッジの交換である場合には(図12 ステップ イ、ニ)、シーケンス選択手段45は、吸引制御手段39に信号を出力してポンプ23a、または23bを作動させて記録ヘッド17、または18からカートリッジ7、または8の交換に伴って必要な量のインクを吸引させる(図12 ステップ ロ、ホ)。
【0075】
上記吸引動作が終了した後、シーケンス選択手段45は、キャリッジ11をフラッシング位置に移動させてインクカートリッジ8、または7の交換がなされない記録ヘッド18、または17に対しては印刷・フラッシング制御手段37によりフラッシング動作を実行させて、インクカートリッジの交換により増粘したインクを排出させて目詰まりを解消したり、また破壊されたメニスカスの回復を図る(図12 ステップ へ、ハ)。
【0076】
これらの操作が終了した段階で、キャリッジ位置検出手段34によりホームポジションを検出してキャリッジ11をホームポジションに停止させてキャッピングユニット19により記録ヘッド17、18を封止し(図12 ステップ ト)、インクカートリッジ7、または8が正常に交換されたことをインク吸引状態記憶手段46に記憶させる(図12 ステップ チ)。
【0077】
ところで、これら何れかのインクカートリッジ7、8の交換作業中に誤って電源スイッチPがオフとされた場合には、シーケンス選択手段45は、電源遮断検出手段42からの信号により前述の電源オフ処理(図10)を選択して初期充填の終了の有無、インクカートリッジの交換の状態、インクカートリッジの交換に伴う交換吸引の完了の有無、インク残量検出判定手段41のデータ等を吸引状態記憶手段46に格納させる。
【0078】
このように吸引状態記憶手段46にデータを格納しておくことにより、たとえインクカートリッジ7、8の交換作業の途中で誤って電源がオフにされた場合でも、前述した電源オン処理(図5)により印刷開始に先立って前回の電源オフにより中断された処理を再実行して記録ヘッド17、18を印刷可能な状態に回復することができる。
【0079】
このように複数のインクカートリッジが交換対象であることが判明した場合、インクカートリッジ7、8が装着されていないことが検出された場合、インクカートリッジ7、8のインク残量がインクエンドであることが検出された場合、インク残量がニアエンドであることが検出された場合、及び印刷可能なインク残量のインクカートリッジ7、8が装着されていることが検出された場合を優先順位としてキャリッジ11を窓6に移動させるため、インクエンド表示器BE、CEの表示状態に合わせてインクカートリッジ7、8を交換することができ、複数のインクカートリッジの交換作業に起こりがちな混乱を避けることができる。
【0080】
なお、上述の実施例においては2つの独立した記録ヘッド17、18をキャリッジに設けているが、ノズルプレートが共通化されて、インク種が異なるノズル開口列を独立させて封止することが不可能な記録ヘッドにあっては、図15に示したように記録ヘッド50を単一のキャップ51により封止して単一の吸引ポンプ52により初期充填や交換吸引を行うようにしたり、またインクエンド表示器IEを共通化しても同様の作用を奏する。
【0081】
(記録ヘッドのクリーニング処理)
操作パネル9のヘッド50のクリーニング指令スイッチCCが操作されると、シーケンス選択手段45は、インク残量検出判定手段41からのデータに基づいて黒インクカートリッジ7のインクの残量を判定し、インクエンドであることが判明した場合には(図16 ステップ イ)、引き続いてカラーインクカートリッジ8のインクの残量を判定する。判定の結果、カラーインクカートリッジ8にはクリーニング操作に伴うインク吸引で消費量される以上のインクが残存している場合には(図16 ステップ ロ)、黒インクカートリッジの交換処理を起動し(図16 ステップ ハ)、またカラーインクカートリッジ8のインク残量がクリーニング操作に伴う吸引量より少ない場合には両方のインクカートリッジ7、8の交換のための処理を起動する(図16 ステップ ニ)
【0082】
黒インクカートリッジ7のインクの残量がインクエンドと判定するよりは多く残存しているものの、クリーニング操作によるインク吸引量よりも少なく場合には(図16 ステップ ホ)、引き続いてカラーインクカートリッジ8のインクの残量を判定する。判定の結果、カラーインクカートリッジ8にはクリーニング操作に伴うインク吸引で消費量される以上のインクが残存している場合には(図16 ステップ ロ)、黒インクカートリッジの交換処理を起動し(図16 ステップ ハ)、またカラーインクカートリッジ8のインク残量がクリーニング操作に伴う吸引量より少ない場合には両方のインクカートリッジ7、8の交換のための処理を起動する(図16 ステップ ニ)。
【0083】
黒インクカートリッジ7のインクの残量がクリーニング操作によるインク消費を賄える以上、残存している場合には(図16 ステップ ホ)、前回のカラーインクカートリッジ8に対するインク量の判定操作(図16 ステップ ロ)のデータにより、カラーインクカートリッジ8がインクエンド(図16 ステップヘ)またはインク残量がクリーニング操作による吸引量以下と判定された場合には(図16 ステップ ト)、カラーインクカートリッジ8の交換処理を起動する(図16 ステップ チ)。
【0084】
このようにして、全てのインクカートリッジ7、8のインク残量がクリーニングにより消費されるインク量よりも多いことが確認できると、インク残量判定手段41のデータに基づいてインクカートリッジ7、8の交換後におけるインク残量が1/2以上で、かつ交換後の印刷量が所定量以下である場合には(図16 ステップ リ)、特別気泡排出処理を実行し(図16 ステップ ヌ)、また異なる場合には吸引処理を実行する(図16 ステップ ル)。
【0085】
(インクカートリッジの交換処理)
パネル9のインクカートリッジ交換指令スイッチICや、前述の各処理によりインクカートリッジの交換処理のシーケンスが起動されると、シーケンス選択手段45は、キャリッジモータ制御手段36によりホームポジッションに停止しているキャリッジ11を印刷領域側に移動させてカートリッジ7、8を交換位置に移動させる(図17 ステップ イ)。
【0086】
インクカートリッジ8を引き抜くと、インクカートリッジ8の引き抜きが、また新しいインクカートリッジ8をキャリッジ11に装着すると、カートリッジ8の装着が検出器32により検出されてこれから信号が出力するから、シーケンス選択手段45はカラーインクカートリッジ8の交換が行われたことを吸引状態制御手段39に記憶させる(図17 ステップ ロ)。
【0087】
新しいインクカートリッジ8の装着後、所定時間が経過するか(図17 ステップ ハ)、所定時間内にインクカートリッジ交換指令スイッチICをユーザが押圧した場合には(図17 ステップ ニ)、シーケンス選択手段45はキャリッジモータ制御手段36によりキャリッジ駆動モータ13を低トルク、もしくはユーザがキャリッジ11の移動に気付く程度の低速度、または低トルクかつ低速度でキャリッジ11を移動させ(図17 ステップ ホ)、キャリッジ位置の初期化処理を実行する(図17 ステップ ヘ)。これにより、インクカートリッジの交換作業による外力を受けてキャリッジ11が移動した場合にでも、キャリッジ11の位置を印刷に適した状態に保持することができる。
【0088】
シーケンス選択手段45は、吸引状態記憶手段46のデータに基づいて当該インクカートリッジの交換が、記録装置購入後最初のものであるか、インクの補給のためのものであるかを判定して、吸引モードを選択する(図17 ステップ チ)。
【0089】
つまり、今回のインクカートリッジの装着が記録装置購入後最初のものである場合、つまり吸引状態記憶手段46の初期充填フラッグがオフである場合には、吸引制御手段39に信号を出力してポンプ52を作動させてインクカートリッジ17、18から初期充填に必要なインク量、つまり工場出荷時に記録ヘッドに充填されていたメンテナンス液の排除と、記録ヘッド50内の気泡を完全に排出できて所定の状態で印刷可能ならしめるに必要な量を、またインク補給のための交換の場合には、通常の吸引動作を実行する(図17 ステップ リ)。
【0090】
これらの操作が終了した段階で、キャリッジ位置検出手段34によりホームポジションを検出してキャリッジ11をホームポジションに停止させて(図17 ステップ ヌ)キャッピングユニットのキャップ51により記録ヘッド50を封止し、インクカートリッジ7、または8が正常に交換されたことをインク吸引状態記憶手段46に記憶させる(図17 ステップ ル)。
【0091】
一方、インクカートリッジの交換がなされなかった場合には(図17 ステップ ト)、交換対象となったインクカートリッジの種類と、これに対する吸引を保留していることとを吸引状態記憶手段46に格納する(図17 ステップ オ)。
【0092】
なお、上述の実施例においてはケースの窓6や、枠2cにより交換位置を規制するようにしているが、図18(イ)に示したように同時に複数のインクカートリッジ7、8が露出する窓6’を有するものであっても、インクカートリッジ交換位置CPを表示しておきさえすれば、同様に適用できることは明らかである。
【0093】
さらに、図18(ロ)に示したようにブラック用インクカートリッジと、カラー用インクカートリッジのそれぞれを交換する位置を規制する窓61、62を独立に設けたり、またカラーインクカートリッジがそれぞれの色毎に独立したカートリッジ81、82、83として構成されている場合には図18(ハ)に示したように各カラーインクカートリッジの対向する位置に窓62、63、64を設けてもよい。
【0094】
これらの実施例によれば、ケース本体の広い面積を利用してインクカートリッジの種類を明確に表記できるため、インクカートリッジの誤選択を防止することができる。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように本発明おいては、クリーニング処理が指令された場合には、インク残量判定手段によりインクカートリッジのインク残量を判定し、当該インクカートリッジのインクの残量が少なくともクリーニング処理により消費される量より少ない場合には、当該インクカートリッジの記録ヘッドに対してクリーニング処理を実行することなく当該インクカートリッジを窓に移動させて交換を可能ならしめ、クリーニング後に印刷が不可能になる程度のインクしか残存していないインクカートリッジに対するクリーニング処理をスキップさせて、記録ヘッドに気泡が侵入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット式記録装置の一実施例を、ケースカバーを開けて示す図である。
【図2】本発明のインクジェット式記録装置の記録機構の一実施例を示す図である。
【図3】本発明のインクジェット式記録装置の一実施例を示す構成図である。
【図4】同上装置の全体の動作を示すフローチャートである。
【図5】同上装置の動作の内、電源オンの処理の動作を示すフローチャートである。
【図6】同上装置の動作の内、黒ヘッドのクリーニング処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】同上装置の動作の内、カラーヘッドのクリーニング処理の動作を示すフローチャートである。
【図8】同上装置の動作の内、インク残量のチェック動作を示すフローチャートである。
【図9】同上装置の動作の内、印刷処理の動作を示すフローチャートである。
【図10】同上装置の動作の内、電源オフ処理の動作を示すフローチャートである。
【図11】同上装置の動作の内、インクカートリッジ交換処理の動作の内、中盤までの動作を示すフローチャートである。
【図12】同上装置の動作の内、インクカートリッジ交換処理の動作の内、終盤の動作を示すフローチャートである。
【図13】図(イ)乃至(ハ)は、それぞれキャリッジがホームポジション、カラーインクカートリッジの交換位置、黒インクカートリッジの交換位置に移動した状態を示す図である。
【図14】図(イ)、(ロ)は、ぞれぞれカラーインクカートリッジの交換位置、黒インクカートリッジの交換位置にキャリッジが移動したときの各記録ヘッドとキャッピングユニットとの位置の関係を示す図である。
【図15】本発明のインクジェット式記録装置の他の実施例を示す構成図である。
【図16】同上インクジェット式記録装置のクリーニング処理の動作を示すフローチャートである。
【図17】同上インクジェット式記録装置のインクカートリッジ交換処理の動作を示すフローチャートである。
【図18】図(イ)乃至(ハ)は、ぞれぞれ本発明が適用可能なケース構造の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
1 ケースカバー
2c 枠
3 ケース
6 窓
7、8 インクジェット式記録ヘッド
11 キャリッジ
17、18 インクカートリッジ
19 キャッピングユニット
23 ポンプユニット
IC インクカートリッジ交換指令スイッチ
BC,CC 記録ヘッドクリーニング指令スイッチ
P 電源スイッチ

Claims (3)

  1. 複数種類のインクをインク滴として吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドに異なる種類のインクを供給する複数のインクカートリッジと、前記記録ヘッドと前記インクカートリッジとを搭載するキャリッジと、印刷領域外に配置されて前記記録ヘッドを封止するキャッピング手段と、前記キャッピング手段に負圧を作用させる吸引手段と、前記複数のインクカートリッジのいずれかを着脱可能に外部に露出させる窓と、クリーニング処理を指令するスイッチと、前記インクカートリッジのインク残量を検出するインク残量検出判定手段と、前記スイッチによりクリーニング処理が指令された場合に前記インク残量判定手段により前記インクカートリッジのインク残量を判定し、当該インクカートリッジのインクの残量が少なくとも前記クリーニング処理により消費される量より少ない場合には、当該インクカートリッジに対応する記録ヘッドに対してクリーニング処理を実行することなく当該インクカートリッジを前記窓に移動させて交換を可能ならしめる制御手段とを備えてなるインクジェット式記録装置。
  2. 前記キャリッジが複数のインクカートリッジを搭載し、前記記録ヘッドにクリーニング処理が指令された場合に、前記インク残量検出判定手段により他方のインクカートリッジのインク残量を判定し、基準値以下の場合にはインクエンドとみなす請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
  3. 前記窓から1つのインクカートリッジを着脱可能に露出させる請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
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