JP3611841B2 - 納豆より分離した除粘納豆の利用法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、納豆より分離した除粘納豆の利用法に関する。
【0002】
【従来の技術】
納豆は、日本古来の食品であり、一般には、糸引納豆と言われているように、その糸を引くほど良質の納豆とされている。而して、その糸を引く原因である粘質物については、グルタミン酸ポリペプチドとフラクタンの混合物であるとし、その粘質物の生成を増大させるための納豆製造の際、グルタミン酸ソーダ、グルコース、しょ糖などを添加することにより、その糸引きを増大せしめるようにした食用としての納豆の改質が提案されていることは公知である。
一方、また、納豆の利用法としては、二次加工品として五斗納豆、雪割納豆などの各種納豆があり、更には、納豆そのものを味噌や醤油と混ぜて納豆味噌、納豆醤油などの納豆を主体とした製品がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来上記の糸引納豆は、糸引きが改善されるが、一般に、糸引納豆を食用とした場合、逆に、粘質物やその糸引きが嫌われ、また、均一な調味の付与が充分に得られないなどにより、その納豆の食品としての拡大に限界をもたらす欠点がある。また、その納豆の加工製品は、納豆に味噌、醤油を混合したものであり、あくまで、納豆そのものの利用であるので、用途がこの範囲にとゞまっている。
また、従来の納豆を粘質物と粘質物を除去された納豆に分離し、その夫々を健康食品として利用することにとゞまっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本願の発明は、従来の納豆より分離した除粘納豆の新しい分野への利用法を提供するもので、納豆を出発原料とし、これを粘質物と粘質物の除去された納豆(以下除粘納豆と称する)とに分離し、分離した除粘納豆を、味噌、醤油などの醸造における製麹の原料として用いることを特徴とする。
【0005】
【作用】
このように分取した除粘納豆は、その表面から粘質物がその濡れた状態では多少の粘性は残るが、糸引き現象は全くなくなる。而してこの除粘納豆を、麹製造用の原料として用いるときは、既に、蛋白質などが分解されているので、製造作業が短縮され、而も各種の栄養成分に富むので、麹菌の迅速且つ良好な発育をもたらし、短時間に良質な麹が得られる。
【0006】
【実施例】
次に、本発明の実施例を詳述する。
原料納豆は、常法により製造した納豆又は市販の納豆を使用する。
納豆の製法は、周知のように、蒸煮した大豆を藁苞(わらつと)に入れ、或いは煮大豆に納豆菌(Bac.natto,別名Bac.subtilis)をふりかけたものを発泡スチロール製の小型容器に入れ、これを室(むろ)において40℃位に保持して納豆菌を発育させて適時取り出す。かくして糸引納豆が得られる。
【0007】
本発明によれば、このように作製した納豆又は市販の納豆を、例えば100gを処理容器に入れ、これに水100〜300ccを添加し、撹拌機により良く撹拌して納豆に混在する粘質物を水に溶解させると共に納豆の本体である各豆の表面に付着している粘質物を溶解除去する。次に、これを例えばフィルターにより、例えば細かいメッシュの金網上にあけて濾過し、その上面に粘質物の除去された納豆(以下これを除粘納豆と称する)を濾液として粘質物水溶液とを分離取得する。かくして、納豆100gより97.5〜95gの除粘納豆と2.5〜5gの粘質物の溶解した水溶液が得られた。
【0008】
このように分取した除粘納豆は、天日乾燥、50〜60℃程度の低温で加熱乾燥し、或いは100℃以上の高温で、例えば高圧釜で120℃で15分間加熱し、これを製品とする。
【0009】
また、該除粘納豆は、製麹の原料として用いることができる。この場合は、分取した水に濡れている除粘納豆を、予め、上記のように100℃以上の高温で加熱して含有する納豆菌及び胞子を死滅させたものを用いることが好ましく、これを従来の大豆又は脱脂大豆に代えて、例えば、味噌や醤油などの醸造における製麹の原料として使用する。然るときは、これを直ちに30℃位に加熱した後に直ちに種麹をふりかけて麹室に収容するだけで足り、従来のような大豆を加熱蒸煮し、これを冷却する作業と時間を省くことができるばかりでなく、既にその基質は蛋白質は酵素分解されているので、容易迅速にその中心まで麹菌糸が侵入し、容易迅速に良質の麹が得られる。
【0010】
一方、容器内に捕集した粘質物水溶液の粘質物には、除粘納豆と同量の納豆菌約1×109 /gが含有していることを確認した。また、その成分として、蛋白質の酵素分解によるペプチド類、各種のアミノ酸、アミノ態窒素のポリペプチド、糖質、脂質、カルシウム、リンなどの各種無機成分、ビタミンB1 、B2 などのビタミン類が含まれて、その他未知の保健成分を含むと推測される極めて栄養価に富む物質である点で除粘納豆と同様である。
【0011】
かくして、その利用は、この水溶液を、例えば、納豆の製造における蒸煮大豆にふりかけることにより納豆菌を種菌とすることができる。この場合、その水溶液を例えば低温で又は減圧下で加熱濃縮により濃縮液としたもの、或いは凍結乾燥、50〜60℃程度の低温加熱乾燥により、乾燥物とし、これを粉砕したものを使用することが好ましい。その他納豆菌を利用した発酵食品の製造にも利用できる。
【0012】
また、このような各種の利用形態の粘質物は、除粘納豆と同様に、その粉砕物として従来公知の各種の健康食品製造用の副原料として添加使用することができる。この場合、使用に当たり、予め、含有する納豆菌やその胞子を死滅された必要がある場合は、その粘質物水溶液を100℃以上の高温で高圧釜で加熱処理したもの、その濃縮液、乾燥物の細片又は粉砕物を使用する。
【0013】
上記の納豆からの納豆本体と粘質物の分離取得は、湿式法で行ったが、次のように水を使用しないで乾式で行うことができる。即ち、原料納豆100gに対し、米澱粉、ジャガイモ澱粉などの所望の種類の澱粉、好ましくはα化澱粉30〜40gを添加し、よく撹拌混合した後篩別により、表面に澱粉粒の付着した乾燥した除粘納豆115〜120gと粘質物が吸着保持された澱粉から成る乾燥粘質物15〜20gとに分取することができた。かくして、先の実施例のように、粘質物水溶液の濃縮、乾燥工程を省くことができる。
尚、澱粉に変えて、米粉などの穀粉を使用しても、澱粉の場合と同様に分離することができる。
また、上記の乾式法による分離取得において、納豆と澱粉又は穀粉とをよく混合するに当たり、低温で加熱熱変質なく而も篩別を容易にすることができる。
このように分取した除粘納豆は、その表面には、澱粉や穀粉で被覆されているので、上記した味噌、醤油などの製麹原料として利用し、更に有利である。
【0014】
尚、前記の湿式法で分取した粘質物水溶液を濃縮して、その濃縮液に澱粉又は穀粉を添加し撹拌し、必要であれば低温で加熱することにより、該粘質物を澱粉又は穀粉に吸着保含せしめて、その乾燥粉末を得るようにしても良い。
このようにして得た乾燥粉末も又発酵食品製造用に利用することができる。
【0015】
尚、上記のように分取した除粘納豆の納豆臭を除去する手段として、上記した酒粕に漬ける他に、麹菌を作用させることにより達成される。例えば、除粘納豆にこれに対し重量で半分乃至等量の米麹又は麦麹とを配合し、更にこれに食塩を食塩濃度5〜12%程度となるように添加し、よく混合し、そのまゝ熟成させれば、納豆臭が除去されると同時に風味の良いなめ味噌が得られる。
【0016】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、除粘納豆を蒸大豆の代わりに味噌、醤油などの醸造における製麹原料として使用するので、蒸煮大豆を製麹の原料とするに比し、製麹作業が短縮し、容易、迅速に且つ安価に良質の麹を製造することができる。
Claims (1)
- 納豆を出発原料とし、これを粘質物と粘質物の除去された納豆(以下除粘納豆と称する)とに分離し、分離した除粘納豆を、味噌、醤油などの醸造における製麹の原料として用いることを特徴とする除粘納豆の利用法。
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