JP3611451B2 - 刈取収穫機の走行伝動構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圃場の作物を刈り取って収穫するコンバイン等の刈取収穫機において、中立位置から無段階に高速側に変速操作自在な走行用の無段変速装置や、中立位置を挟んで前進側及び後進側に無段階に変速操作自在な走行用の無段変速装置を備えた刈取収穫機の走行伝動構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
前述のような走行用の無段変速装置の一例として、静油圧式無段変速装置がある。静油圧式無段変速装置は、中立位置を挟んで前進側及び後進側に無段階に変速操作自在で、微速での前進及び後進が可能であり、静油圧式無段変速装置を中立位置に変速操作すれば、静油圧式無段変速装置が停止し機体を停止させることができる。
しかし、静油圧式無段変速装置の中立位置は範囲が狭いことが多いので、例えば農用トラクタに関する特開昭62‐137224号公報に開示されているように、静油圧式無段変速装置における前進側及び後進側の油路の各々に、圧力が設定圧以上になると閉じる常開型のアンロード弁(前記公報の第1図中の14a,14b)を接続することが多い。
【0003】
これにより、静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが中立位置から少し外れた位置に在っても、前進側及び後進側の油路が中立位置付近の低圧状態であればアンロード弁が開いて、静油圧式無段変速装置の油圧モータは停止しており、中立位置がある程度の幅を持った範囲に設定された状態となる。
次に静油圧式無段変速装置の油圧ポンプが中立位置付近から前進(後進)の高速側にある程度変速操作されて、前進側(後進側)の油路の圧力が上昇し設定圧に達すると、アンロード弁が閉じて静油圧式無段変速装置の油圧モータが駆動されて機体が発進する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、静油圧式無段変速装置における前進側及び後進側の油路の各々に常開型のアンロード弁を接続した場合、中立位置の範囲をあまり大きなものに設定すると、微速での前進及び後進が行えると言う静油圧式無段変速装置の利点が損なわれるので、機体が的確に停止する程度の小さな範囲に中立位置の範囲を設定することが、農用トラクタ等の作業車では多いものとなっている。
【0005】
これに対し刈取収穫機では、圃場の作物を走行しながら刈り取り、刈り取った作物を挟持して脱穀装置や荷台に搬送する刈取部を備えており、刈取部が機体の走行速度に連動して駆動されるように、静油圧式無段変速装置からの動力が刈取部に伝達されるように構成されていることが多い。
従って、静油圧式無段変速装置によって微速で前進しながら圃場の作物を刈り取ると、刈取部も微速で駆動されることになる。刈取部において作物を挟持して搬送する場合、刈取部が微速で駆動されると、刈取部での作物の挟持作用が低下して、作物が所定の挟持位置から外れたり下方に落ちたりすることがある。
本発明は走行用として静油圧式無段変速装置等の無段変速装置を備えた刈取収穫機において、刈り取った作物が刈取部の所定の挟持位置から外れたり、刈取部から下方に落ちたりすることなく、適切に作物の刈り取りが行えるように構成することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
[I]
請求項1及び2の特徴によると、可変容量型の油圧ポンプ及び油圧モータを備えた、中立位置から無段階に高速側に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置(中立位置を挟んで前進側及び後進側に無段階に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置)を備え、前記油圧ポンプと油圧モータの間の油路に連通する状態で低圧の第1設定圧以上になると遮断位置となるアンロード弁を設けて、第1設定圧より低圧では油圧ポンプからの圧油がアンロードされて油圧モータを駆動しない走行中立状態となるように構成した場合、無段変速装置が前記第1設定圧に対応する位置からこの第1設定圧よりも少し高圧となる第2設定圧に対応する所定の低速位置(前進側の所定の低速位置)の間に変速操作されている状態において、刈取クラッチが伝動遮断側から伝動側に操作されると、無段変速装置が所定の低速位置よりも自動的に高速側に変速操作されるので(無段変速装置が前進側の所定の低速位置よりも前進の高速側に自動的に変速操作されるので)、機体が微速で前進しながら刈取部も微速で駆動されると言う状態が回避される。
請求項2の特徴によると、無段変速装置を中立位置から後進の高速側に変速操作していった場合、前述のような自動的な変速操作は行われないので、機体を微速で支障なく後進させることができる。
【0007】
[II]
請求項3及び4の特徴によると、可変容量型の油圧ポンプ及び油圧モータを備えた、中立位置から無段階に高速側に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置(中立位置を挟んで前進側及び後進側に無段階に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置)を備え、前記油圧ポンプと油圧モータの間の油路に連通する状態で低圧の第1設定圧以上になると遮断位置となるアンロード弁を設けて、第1設定圧より低圧では油圧ポンプからの圧油がアンロードされて油圧モータを駆動しない走行中立状態となるように構成した場合、無段変速装置が前記第1設定圧に対応する位置からこの第1設定圧よりも少し高圧となる第2設定圧に対応する所定の低速位置(前進側の所定の低速位置)の間に変速操作されている状態において、刈取クラッチが伝動遮断側から伝動側に操作されると、無段変速装置を所望の変速位置に保持可能な保持手段の保持作用が解除され、中立復帰手段により無段変速装置が自動的に中立位置に戻し操作されて機体が停止し、刈取部へも動力が伝達されなくなるので、機体が微速で前進しながら刈取部も微速で駆動されると言う状態が回避される。
請求項4の特徴によると、無段変速装置が中立位置から後進側の所定の低速位置の間に変速操作されている状態では、前述のような保持手段の保持作用の解除は行われないので、機体を微速で支障なく後進させることができる。
【0008】
[III]
請求項5及び6の特徴によると、可変容量型の油圧ポンプ及び油圧モータを備えた、中立位置から無段階に高速側に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置(中立位置を挟んで前進側及び後進側に無段階に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置)を備え、前記油圧ポンプと油圧モータの間の油路に連通する状態で低圧の第1設定圧以上になると遮断位置となるアンロード弁を設けて、第1設定圧より低圧では油圧ポンプからの圧油がアンロードされて油圧モータを駆動しない走行中立状態となるように構成した場合、刈取クラッチが伝動側に操作され、無段変速装置が前記第1設定圧よりも少し高圧となる第2設定圧に対応する所定の低速位置よりもある程度高速側(前進の高速側)に変速操作されている状態において、無段変速装置が低速側に変速操作された際、無段変速装置が第2設定圧に対応する所定の低速位置(前進の所定の低速位置)を越えて低速側に変速操作されることがないので、機体が微速で前進しながら刈取部も微速で駆動されると言う状態が回避される。
請求項6の特徴によると、無段変速装置が中立位置から後進側に変速操作されている状態では、無段変速装置を所定の低速位置を越えて低速側に変速操作することは可能なので、機体を微速で支障なく後進させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1に示すように、左右一対のクローラ走行装置1を備えた機体の前部に、刈取部2が昇降操作自在に支持されており、機体に操縦部3が備えられ、機体の後部に脱穀装置4及びグレンタンク5、グレンタンク5の底部から穀粒を排出するアンローダ装置10が備えられて、刈取収穫機の一例であるコンバインが構成されている。
【0010】
刈取部2は複数条の作物を刈り取るように構成されており、圃場の複数条の作物を引き起こす引き起し装置6、圃場の複数条の作物を刈り取るバリカン型の刈取装置7、刈り取られた複数条の作物を集めるパッカー8、集められた作物を挟持して脱穀装置4に搬送する挟持搬送装置9を備えて構成されている。刈取部2の挟持搬送装置9から搬送されてきた作物が脱穀装置4で脱穀処理されて、脱穀装置4で回収された穀粒がグレンタンク5に送り込まれて貯留される。
【0011】
図2に示すように、エンジン12の動力がテンション型式の主クラッチ13を介して静油圧式無段変速装置14に伝達され、静油圧式無段変速装置14からの動力が2系統に分岐して、一方の動力がミッションケース15のギヤ変速型式の副変速装置(図示せず)に伝達され、左右一対のクローラ走行装置1に伝達される。静油圧式無段変速装置14から2系統に分岐した他方の動力が、テンション型式の刈取クラッチ29を介して刈取部2に伝達される。
【0012】
次に、静油圧式無段変速装置14の構成について説明する。
図4に示すように静油圧式無段変速装置14は、エンジン12の動力で駆動される可変容量型の油圧ポンプ16及び油圧モータ17を備え、油圧ポンプ16及び油圧モータ17を接続する前進側の油路18、及び後進側の油路19を備えて構成されている。前進側及び後進側の油路18,19の各々にタンク20に連通する第1油路21及び第2油路22が接続されており、第1及び第2油路21,22に第1アンロード弁23及び第2アンロード弁24が設けられている。
【0013】
第1及び第2アンロード弁23,24は、絞り部を備えた連通位置23a,24a及び遮断位置23b,24bを備えて、バネ23c,24cにより連通位置23a,24aに付勢された常開型のパイロット操作型式に構成されている。前進側の油路18(後進側の油路19)の圧力が第1設定圧P1以上になると、パイロット圧により第1アンロード弁23(第2アンロード弁24)が遮断位置23b(遮断位置24b)に操作されるように、バネ23c(バネ24c)の付勢力が設定されている。前進側及び後進側の油路18,19を接続するバイパス油路26が備えられて、常閉型のパイロット操作型式の開閉弁27がバイパス油路26に設けられている。この場合に、前進側又は後進側の油路18,19の圧力が、前述の第1設定圧P1よりも充分に大きな設定圧に達すると、パイロット圧により開閉弁27が開く。
【0014】
油圧ポンプ16とは関係なく常時回転駆動されるチャージポンプ34が備えられており、チャージポンプ34からの一対の油路35が、第1油路21における前進側の油路18と第1アンロード弁23との間の部分、並びに、第2油路22における後進側の油路19と第2アンロード弁24との間の部分に接続されている。
【0015】
次に、静油圧式無段変速装置14の変速操作について説明する。
図5に示すように、静油圧式無段変速装置14の油圧ポンプ16における斜板(図示せず)に連結されたトラニオン軸11に、振動吸収用で円盤状のブロック部材25が固定されており、操縦部3に備えられた変速レバー28とブロック部材25とが、連係ロッド30により接続されている。固定部の横軸芯P1周りに揺動自在に支持されたアーム31にローラー31aが支持されており、ブロック部材25のV字状の切欠部25aに、ローラー31aが押し込まれるように、アーム31を付勢するバネ32が備えられている。これにより、ローラー31aの作用によってトラニオン軸11が中立位置Nに付勢される。
【0016】
変速レバー28に摩擦保持機構33が備えられており、摩擦保持機構33の保持作用が、ローラー31aによる中立付勢作用よりも少し強いものに設定されている。これにより、変速レバー28から手を離しても、ローラー31aによる中立付勢作用に抗して、摩擦保持機構33の保持作用により変速レバー28が任意の操作位置に保持される。
【0017】
図5及び図4に示す状態は変速レバー28を中立位置Nに操作している状態であり、第1及び第2アンロード弁23,24がバネ23c,24cの付勢力により連通位置23a,24aに操作されて、静油圧式無段変速装置14の油圧モータ17は停止している。図3の実線に示すように、変速レバー28を中立位置Nから前進側F(後進側R)に操作していくと、油圧ポンプ16の斜板が前進の高速側(後進の高速側)に操作され始めて、前進側の油路18(後進側の油路19)の圧力が上昇していく。
【0018】
この場合、前進側の油路18(後進側の油路19)の圧力が第1設定圧P1に達するまでは、第1アンロード弁23(第2アンロード弁24)はバネ23c(バネ24c)により連通位置23a(連通位置24a)に操作されており、油圧モータ17は停止している。そして、前進側の油路18(後進側の油路19)の圧力が第1設定圧P1に達すると、第1アンロード弁23(第2アンロード弁24)がパイロット圧により、バネ23c(バネ24c)に抗して遮断位置23b(遮断位置24b)に操作される。
【0019】
従って、前進側の油路18(後進側の油路19)から第1設定圧P1の作動油が油圧モータ17に供給されて、油圧モータ17が第1設定圧P1の作動油に対応した速度で前進側F(後進側R)に駆動され始めて、前進の動力が左右一対のクローラ走行装置1及び刈取部2に伝達されるのであり(後進の動力が左右一対のクローラ走行装置1に伝達されるのであり、ワンウェイクラッチ(図示せず)の作用により刈取部2には後進の動力は伝達されない)、変速レバー28をさらに前進側F(後進側R)に操作していくと、油圧ポンプ16により前進側の油路18(後進側の油路19)の圧力が第1設定圧P1からさらに上昇していき、油圧モータ17がさらに前進側F(後進側R)の高速側に駆動されていく。
【0020】
図5に示すように電動モータ36が配置されて、電動モータ36のギヤ減速部の駆動軸にL字状の操作部37が固定されており、刈取クラッチ29のテンションプーリー29aと操作部37とが、連係ロッド38及び融通用のバネ39を介して接続されている。図5に示す状態は、操縦部3に備えられた刈取クラッチスイッチ40を切り位置に操作している状態であり、テンションプーリー29aが伝動ベルトから離れて、刈取クラッチ29が伝動遮断側に操作されている。刈取クラッチスイッチ40を入り位置に操作すると、電動モータ36により操作部37が図5の紙面時計方向に回転操作され、連係ロッド38が引き操作されてテンションプーリー29aにより刈取クラッチ29が伝動側に操作される。
【0021】
図5に示すように、ブロック部材25に扇型で開孔を備えた操作板41が固定されており、操作板41の開孔においてトラニオン軸11を中心とした近い位置に設定された第1円弧面41a、トラニオン軸11を中心とした遠い位置に設定された第2円弧面41b、第1及び第2円弧面41a,41bに亘って接続された傾斜面41cが形成されている。
【0022】
操作部37とアーム31とがワイヤ42及び融通用のバネ43を介して接続されて、バネ32の付勢力よりもバネ43の付勢力が強いものに設定されている。これにより、前述のように刈取クラッチスイッチ40を入り位置に操作して、刈取クラッチ29が伝動側に操作されると、ワイヤ42が引き操作されて、アーム31がブロック部材25の切欠部25aから離され、操作板41の第1及び第2円弧面41a,41b、傾斜面41c側に揺動操作される。
【0023】
この場合に、図5及び図3に示すように、トラニオン軸11(変速レバー28)が中立位置Nと、第1設定圧P1に対応する位置F1との間に操作されている状態において、刈取クラッチ29が伝動側に操作されて、アーム31が図5の紙面左方に揺動操作されると、アーム31のローラー31aが、操作板41の第1円弧面41aの端部(傾斜面41cにつながる少し手前の部分)に接当し押圧するのであり、操作板41及びトラニオン軸11(変速レバー28)は操作されない。
【0024】
次にトラニオン軸11(変速レバー28)が、第1設定圧P1に対応する位置F1と、第1設定圧P1よりも少し前進側Fの高速側の第2設定圧P2に対応する位置F2との間に操作されていると、トラニオン軸11及び操作板41が図5の状態から少し紙面反時計方向に回転し、操作板41の傾斜面41cがローラー31aに対向した状態となっているので、刈取クラッチ29が伝動側に操作されて、アーム31が図5の紙面左方に揺動操作されると、アーム31のローラー31aが操作板41の傾斜面41cに接当し押圧する状態となる。
これにより、アーム31及びローラー31aによる傾斜面41cの押し作用によって、操作板41及びトラニオン軸11が第2設定圧P2に対応する位置F2に操作される。
【0025】
トラニオン軸11(変速レバー28)が、第2設定圧P2に対応する位置F2からさらに前進側Fの高速側に操作されていると、トラニオン軸11及び操作板41が図5の状態から紙面反時計方向に回転し、操作板41の第2円弧面41bがローラー31aに対向した状態となっているので、刈取クラッチ29が伝動側に操作されて、アーム31が図5の紙面左方に揺動操作されると、アーム31のローラー31aが操作板41の第2円弧面41bに接当し押圧するのであり、操作板41及びトラニオン軸11(変速レバー28)は操作されない。
【0026】
次に、トラニオン軸11(変速レバー28)が中立位置Nから後進側Rの高速側に操作されていると、トラニオン軸11及び操作板41が図5の状態から紙面時計方向に回転し、操作板41の第1円弧面41aに対向した状態となっているので、刈取クラッチ29が伝動側に操作されて、アーム31が図5の紙面左方に揺動操作されると、アーム31のローラー31aが操作板41の第1円弧面41aに接当し押圧するのであり、操作板41及びトラニオン軸11(変速レバー28)は操作されない。
【0027】
[発明の実施の第1別形態]
図5の構成に代えて図6に示すように構成してもよい。図6に示すように、操作板41及びワイヤ42を廃止して、刈取クラッチ29が伝動側に操作されたことを検出する刈取クラッチスイッチ44を、電動モータ36の操作部37に対して備え、トラニオン軸11(変速レバー28)の位置を検出するポンショメータ46を備える。摩擦保持機構33を電磁操作式に構成して、変速レバー28を摩擦保持する保持状態、及び変速レバー28を摩擦保持しない保持解除状態に操作自在に構成し、通常は摩擦保持機構33を保持状態に設定しておく。
【0028】
これにより、図6及び図3に示すように、トラニオン軸11(変速レバー28)が第1設定圧P1に対応する位置F1と、第1設定圧P1よりも少し前進側Fの高速側の第2設定圧P2に対応する位置F2との間に操作されている状態において、刈取クラッチ29が伝動側に操作されると、刈取クラッチスイッチ44の信号に基づいて、制御装置45により摩擦保持機構33が保持解除状態に操作される。従って、アーム31及びローラー31aの作用によってトラニオン軸11が中立位置Nに戻されて、機体及び刈取部2が停止する。
逆に、トラニオン軸11(変速レバー28)が中立位置Nと、第1設定圧P1に対応する位置F1との間に操作されている状態、トラニオン軸11(変速レバー28)が第2設定圧P2に対応する位置F2よりも、前進側Fの高速側に操作されている状態、並びに、トラニオン軸11(変速レバー28)が中立位置Nから後進側Rの高速側に操作されている状態において、刈取クラッチ29が伝動側に操作されても、摩擦保持機構33は保持解除状態に操作されない。
【0029】
[発明の実施の第2別形態]
図5の構成に代えて図7に示すように構成してもよい。図7に示すように、操作板41及びワイヤ42を廃止して、刈取クラッチ29が伝動側に操作されたことを検出する刈取クラッチスイッチ44を、電動モータ36の操作部37に対して備え、トラニオン軸11(変速レバー28)の位置を検出するポンショメータ46を備える。変速レバー28に対してストッパー機構47を配置し、変速レバー28の移動軌跡に突出して入り込む作用位置、及び変速レバー28の移動軌跡から出て退入する非作用位置に移動自在なピン47aを、ストッパー機構47に備えて、通常はピン47aを非作用位置に操作しておく。
【0030】
これにより、図7及び図3に示すように、刈取クラッチ29が伝動側に操作され、トラニオン軸11(変速レバー28)が第2設定圧P2に対応する位置F2よりも、前進側Fの高速側に操作されている状態において、トラニオン軸11(変速レバー28)が低速側に操作され始めると、制御装置45によりストッパー機構47の非作用位置に退入しているピン47aが、作用位置に突出される。従って、変速レバー28を第2設定圧P2に対応する位置F2を越えて低速側に操作しようとしても、変速レバー28がピン47aに接当して、トラニオン軸11(変速レバー28)を、第2設定圧P2に対応する位置F2を越えて低速側に操作することができない。
【0031】
[発明の実施の第3別形態]
図6に示す[発明の実施の形態]において、操作板41及びワイヤ42を廃止して、刈取クラッチ29が伝動側に操作されたことを検出する刈取クラッチスイッチ44、トラニオン軸11(変速レバー28)の位置を検出するポンショメータ46、並びに、トラニオン軸11(変速レバー28)を高速側に操作自在な電動シリンダ(図示せず)を備えてもよい。
これにより、トラニオン軸11(変速レバー28)が、第1設定圧P1に対応する位置F1と、第1設定圧P1よりも少し前進側Fの高速側の第2設定圧P2に対応する位置F2との間に操作されている状態において、刈取クラッチ29が伝動側に操作されると、電動シリンダによりトラニオン軸11(変速レバー28)が、第2設定圧P2に対応する位置F2よりも前進側Fの高速側に操作されるように構成する。
【0032】
以上の[発明の実施の形態]〜[発明の実施の第2別形態]に代えて、トラニオン軸11(変速レバー28)が第1設定圧P1に対応する位置F1と、第1設定圧P1よりも少し前進側Fの高速側の第2設定圧P2に対応する位置F2との間に操作されている状態において、刈取クラッチスイッチ40により刈取クラッチ29を伝動遮断側から伝動側に操作しようとしても、刈取クラッチ29が伝動側に操作されないように構成してもよい。
【0033】
【発明の効果】
請求項1,3,5の特徴によると、走行用として無段変速装置を備えた刈取収穫機において、機体が微速で前進しながら刈取部も微速で駆動されると言う状態が未然に回避されるようになるので、刈取部での作物の挟持作用の低下を未然に防止し、刈取部において作物が所定の挟持位置から外れたり下方に落ちたりすることを防止して、刈取収穫機の収穫性能を向上させることができた。
【0034】
請求項2,4,6の特徴によると、請求項1,3,5の場合と同様に前述の請求項1,3,5の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
請求項2,4,6の特徴によると、圃場の作物の刈り取りを行わない状態等において、機体を微速で後進させることができるので、この点において刈取収穫機の作業性が良いものとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】エンジン、静油圧式無段変速装置、ミッションケース及び刈取部の伝動系の概略を示す図
【図3】変速レバーの操作位置と静油圧式無段変速装置における前進側(後進側)の油路の圧力との関係を示す図
【図4】静油圧式無段変速装置の油圧回路図
【図5】静油圧式無段変速装置のトラニオン軸と刈取クラッチとの連係状態を示す図
【図6】発明の実施の第1別形態における静油圧式無段変速装置のトラニオン軸と刈取クラッチとの連係状態を示す図
【図7】発明の実施の第2別形態における静油圧式無段変速装置のトラニオン軸と刈取クラッチとの連係状態を示す図
【符号の説明】
2 刈取部
14 無段変速装置
29 刈取クラッチ
31 自動増速手段、中立復帰手段
33 保持手段
41 自動増速手段
47 減速阻止手段
N 中立位置
F 前進側
R 後進側
F2 所定の低速位置

Claims (6)

  1. 可変容量型の油圧ポンプ(16)及び油圧モータ(17)を備えた、中立位置(N)から無段階に高速側に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置(14)と、機体に備えられた刈取部(2)に前記無段変速装置(14)からの動力を伝達する刈取クラッチ(29)とを備えると共に、
    前記油圧ポンプ(16)と油圧モータ(17)の間の油路(18)(19)に連通する状態で低圧の第1設定圧(P1)以上になると遮断位置となるアンロード弁(23)(24)を設けて、第1設定圧(P1)より低圧では油圧ポンプ(16)からの圧油がアンロードされて油圧モータ(17)を駆動しない走行中立状態となるように構成し、
    前記無段変速装置(14)が前記第1設定圧(P1)に対応する位置(F1)からこの第1設定圧(P1)よりも少し高圧となる第2設定圧(P2)に対応する所定の低速位置(F2)の間に変速操作されている状態において、前記刈取クラッチ(29)が伝動遮断側から伝動側に操作されると、前記無段変速装置(14)を前記所定の低速位置(F2)以上に高速側に自動的に変速操作する自動増速手段を備えてある刈取収穫機の走行伝動構造。
  2. 可変容量型の油圧ポンプ(16)及び油圧モータ(17)を備えた、中立位置(N)を挟んで前進側及び後進側に無段階に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置(14)と、機体に備えられた刈取部(2)に前記無段変速装置(14)からの動力を伝達する刈取クラッチ(29)とを備えると共に、
    前記油圧ポンプ(16)と油圧モータ(17)の間の油路(18)(19)に連通する状態で低圧の第1設定圧(P1)以上になると遮断位置となるアンロード弁(23)(24)を設けて、第1設定圧(P1)より低圧では油圧ポンプ(16)からの圧油がアンロードされて油圧モータ(17)を駆動しない走行中立状態となるように構成し、
    前記無段変速装置(14)が前記第1設定圧(P1)に対応する位置(F1)からこの第1設定圧(P1)よりも少し高圧となる第2設定圧(P2)に対応する前進側の所定の低速位置(F2)の間に変速操作されている状態において、前記刈取クラッチ(29)が伝動遮断側から伝動側に操作されると、前記無段変速装置(14)を前記前進側の所定の低速位置(F2)以上に前進の高速側に自動的に変速操作する自動増速手段を備えてある刈取収穫機の走行伝動構造。
  3. 可変容量型の油圧ポンプ(16)及び油圧モータ(17)を備えた、中立位置(N)から無段階に高速側に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置(14)と、前記無段変速装置(14)を中立位置(N)に付勢する中立復帰手段と、前記中立復帰手段に抗して前記無段変速装置(14)を所望の変速位置に保持可能な保持手段(33)と、機体に備えられた刈取部(2)に前記無段変速装置(14)からの動力を伝達する刈取クラッチ(29)とを備えると共に、
    前記油圧ポンプ(16)と油圧モータ(17)の間の油路(18)(19)に連通する状態で低圧の第1設定圧(P1)以上になると遮断位置となるアンロード弁(23)(24)を設けて、第1設定圧(P1)より低圧では油圧ポンプ(16)からの圧油がアンロードされて油圧モータ(17)を駆動しない走行中立状態となるように構成し、
    前記無段変速装置(14)が前記第1設定圧(P1)に対応する位置(F1)からこの第1設定圧(P1)よりも少し高圧となる第2設定圧(P2)に対応する所定の低速位置(F2)の間に変速操作されている状態において、前記刈取クラッチ(29)が伝動遮断側から伝動側に操作されると、前記保持手段(33)の保持作用を解除して、前記中立復帰手段により前記無段変速装置(14)を自動的に中立位置(N)に戻るように構成してある刈取収穫機の走行伝動構造。
  4. 可変容量型の油圧ポンプ(16)及び油圧モータ(17)を備えた、中立位置(N)を挟んで前進側及び後進側に無段階に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置(14)と、前記無段変速装置(14)を中立位置(N)に付勢する中立復帰手段と、前記中立復帰手段に抗して前記無段変速装置(14)を所望の変速位置に保持可能な保持手段(33)と、機体に備えられた刈取部(2)に前記無段変速装置(14)からの動力を伝達する刈取クラッチ(29)とを備えると共に、
    前記油圧ポンプ(16)と油圧モータ(17)の間の油路(18)(19)に連通する状態で低圧の第1設定圧(P1)以上になると遮断位置となるアンロード弁(23)(24)を設けて、第1設定圧(P1)より低圧では油圧ポンプ(16)からの圧油がアンロードされて油圧モータ(17)を駆動しない走行中立状態となるように構成し、
    前記無段変速装置(14)が前記第1設定圧(P1)に対応する位置(F1)からこの第1設定圧(P1)よりも少し高圧となる第2設定圧(P2)に対応する前進側の所定の低速位置(F2)の間に変速操作されている状態において、前記刈取クラッチ(29)が伝動遮断側から伝動側に操作されると、前記保持手段(33)の保持作用を解除して、前記中立復帰手段により前記無段変速装置(14)を自動的に中立位置(N)に戻るように構成してある刈取収穫機の走行伝動構造。
  5. 可変容量型の油圧ポンプ(16)及び油圧モータ(17)を備えた、中立位置(N)から無段階に高速側に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置(14)と、機体に備えられた刈取部(2)に前記無段変速装置(14)からの動力を伝達する刈取クラッチ(29)とを備えると共に、
    前記油圧ポンプ(16)と油圧モータ(17)の間の油路(18)(19)に連通する状態で低圧の第1設定圧(P1)以上になると遮断位置となるアンロード弁(23)(24)を設けて、第1設定圧(P1)より低圧では油圧ポンプ(16)からの圧油がアンロードされて油圧モータ(17)を駆動しない走行中立状態となるように構成し、
    前記刈取クラッチ(29)が伝動側に操作され、且つ、前記無段変速装置(14)が前記第1設定圧(P1)よりも少し高圧となる第2設定圧(P2)に対応する所定の低速位置(F2)よりも高速側に変速操作されている状態において、前記無段変速装置(14)が前記所定の低速位置(F2)を越えて低速側に変速操作されようとすると、この変速操作を牽制阻止する減速阻止手段(47)を備えてある刈取収穫機の走行伝動構造。
  6. 可変容量型の油圧ポンプ(16)及び油圧モータ(17)を備えた、中立位置(N)を挟んで前進側及び後進側に無段階に変速操作自在な走行用の静油圧式無段変速装置(14)と、機体に備えられた刈取部(2)に前記無段変速装置(14)からの動力を伝達する刈取クラッチ(29)とを備えると共に、
    前記油圧ポンプ(16)と油圧モータ(17)の間の油路(18)(19)に連通する状態で低圧の第1設定圧(P1)以上になると遮断位置となるアンロード弁(23)(24)を設けて、第1設定圧(P1)より低圧では油圧ポンプ(16)からの圧油がアンロードされて油圧モータ(17)を駆動しない走行中立状態となるように構成し、
    前記刈取クラッチ(29)が伝動側に操作され、且つ、前記無段変速装置(14)が前記第1設定圧(P1)よりも少し高圧となる第2設定圧(P2)に対応する前進側の所定の低速位置(F2)よりも前進高速側に変速操作されている状態において、前記無段変速装置(14)が前記前進の所定の低速位置(F2)を越えて低速側に変速操作されようとすると、この変速操作を牽制阻止する減速阻止手段(47)を備えてある刈取収穫機の走行伝動構造。
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