JP3603701B2 - 過酢酸含有廃水の処理方法及び処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品工場から排出される、過酢酸、酢酸及び過酸化水素を含有するオキソニア廃水の処理に好適な過酢酸含有廃水の処理方法及び処理装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
食品工場等で使用される殺菌剤ないし除菌剤としては、従来、塩素系の薬剤が主に使用されていたが、塩素系の薬剤は、人体に対する安全性、金属に対する腐食性等の問題があるため、近年、塩素系の薬剤に代わる殺菌剤ないし除菌剤として、過酢酸を主成分とする薬剤が使用されるようになってきた。この薬剤は、通常、下記組成の過酢酸、酢酸、過酸化水素及び水からなる平衡過酢酸組成物（オキソニア）として使用されている。
【０００３】
［オキソニアの組成］
過酢酸（ＣＨ３ＣＯＯＯＨ）： １０重量％
酢酸（ＣＨ３ＣＯＯＨ） ： ２０重量％
過酸化水素（Ｈ２Ｏ２） ： ２０重量％
従って、食品工場等からは、過酢酸、酢酸及び過酸化水素を含有する所謂オキソニア廃水が排出されるため、これを処理する必要がある。
【０００４】
従来、過酢酸を含有する水を処理する方法としては、過酢酸含有水に還元剤（重亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ等）を添加して過酢酸を酢酸に還元する方法、或いは過酢酸含有水を遷移金属触媒と接触させて過酢酸を酢酸に還元する方法（特開平４−２２４９４号公報）が提案されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の過酢酸含有水の処理方法のうち、還元剤による方法では、還元剤のコストが高くつく上に、還元により生成する硫酸イオン等のイオンの増加の問題があり、水の回収、再利用には不適当である。
【０００６】
即ち、還元処理後の水をアニオン交換樹脂で処理して酢酸を吸着除去すれば、水の回収、再利用を図ることができるが、還元剤で還元処理した水は、還元剤に起因するイオンの増加のために、アニオン交換樹脂で処理することは不経済である。一方、酢酸の除去のために生物処理を行った場合には、水の回収、再利用が困難である。
【０００７】
また、遷移金属触媒を用いる方法では、銅などの触媒中の遷移金属が還元により酸化されて処理水中に溶出し、水質を低下させる恐れがある。
【０００８】
本発明は上記従来の問題点を解決し、食品工場から排出される過酢酸含有廃水から過酢酸を効率的に分解除去して、水の回収、有効利用を図る過酢酸含有廃水の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明の過酢酸含有廃水の処理方法は、食品工場から排出される過酢酸含有廃水を活性炭と接触させて過酢酸を酢酸に還元後、カチオン交換樹脂と接触させて共存カチオンを除去し、その後、アニオン交換樹脂と接触させて、該酢酸を吸着除去することを特徴とする。
【００１０】
本発明の過酢酸含有廃水の処理装置は、食品工場から排出される過酢酸含有廃水が導入され、該廃水中の過酢酸を酢酸に還元するための活性炭塔と、該活性炭塔の流出水が導入される、該流出水中の共存カチオンを除去するためのカチオン交換塔と、該カチオン交換塔の流出水が導入され、該流出水中の酢酸を吸着除去するためのアニオン交換樹脂を有するイオン交換塔とを備えることを特徴とする。
【００１１】
活性炭を用いることにより、還元によるイオン増加、水質低下の問題を引き起こすことなく、過酢酸を効率的に還元することができる。
【００１２】
しかして、この還元で生成した酢酸をアニオン交換樹脂で吸着除去することにより、水の回収、再利用が可能となる。
【００１３】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【００１４】
図１は本発明の過酢酸含有廃水の処理装置の実施の形態を示す系統図である。
【００１５】
図１の実施の形態にあっては、まず過酢酸含有廃水（原水）を活性炭塔１に通水して過酢酸を酢酸に還元する。
【００１６】
この活性炭塔１に充填する活性炭の原料及び形状には特に制限はなく、石炭系、ヤシガラ系、その他の粒状ないし粉状のものを用いることができる。
【００１７】
過酢酸の還元では、酸素と少量の炭酸ガス気泡が発生することから、この気泡を速やかに除去するために活性炭塔１としては、上向流の多段式の流動床式活性炭塔が好適である。
【００１８】
この活性炭塔１の通水速度は、還元効率の面から空塔速度（ＳＶ）５〜２０ｈｒ−１、特に８〜１２ｈｒ−１とするのが好ましい。
【００１９】
なお、原水に過酸化水素（Ｈ２Ｏ２）が含まれる場合には、活性炭塔１でＨ２Ｏ２も水に還元されて除去される。
【００２０】
活性炭塔１の流出水は次いでカチオン交換搭２に通水する。即ち、原水にＫ＋，Ｎａ＋等のカチオンが含有される場合には、過酢酸の還元で生成した酢酸の一部がＣＨ３ＣＯＯＫやＣＨ３ＣＯＯＮａの形になって存在し、後段のアニオン交換塔３での吸着が困難となることから、カチオン交換搭２でイオン交換してこれらのカチオンを予め除去し、酢酸をＣＨ３ＣＯＯＨとして後段のアニオン交換塔３での吸着効率を高める。
【００２１】
このカチオン充填塔２に充填するカチオン交換樹脂としては、強酸性カチオン交換樹脂が好ましく、その通水ＳＶは２０〜４０ｈｒ−１程度とするのが好ましい。
【００２２】
カチオン交換搭２の流出水は次いでアニオン交換塔３に通水して過酢酸の還元で生じた酢酸及び原水由来の酢酸を吸着除去する。
【００２３】
このアニオン交換塔３に充填するアニオン交換樹脂としては、弱塩基性アニオン交換樹脂が好ましく、通水ＳＶ１５〜２５ｈｒ−１で処理するのが好ましい。
【００２４】
アニオン交換塔３の流出水は、過酢酸が高度に除去された水であり、特に原水がオキソニア廃水である場合には、過酢酸、Ｈ２Ｏ２及び酢酸がいずれも高度に除去され、工水等として再利用可能な高水質の処理水を得ることができる。
【００２５】
なお、このアニオン交換塔３のアニオン交換樹脂に吸着された酢酸は、この酢酸を吸着したアニオン交換樹脂を水酸化ナトリウム等で再生することにより、再生廃液中にＣＨ３ＣＯＯＮａとして回収することができる。再生廃液は、生物処理してもよく、また、この再生廃液中のＣＨ３ＣＯＯＮａは濃度、純度が共に高いため、容易に再利用することもできる。
【００２７】
このような本発明の方法及び装置は、過酢酸、酢酸及びＨ２Ｏ２を含むオキソニア廃水の処理に好適であり、特に、過酢酸や酢酸の濃度が５０〜２００ｍｇ／Ｌ程度の比較的低濃度の廃水の処理に好適である。
【００２８】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【００２９】
実施例１
オキソニア廃水に栗田工業（株）製粉末活性炭「クリコールＷＷ５１０」を、表１に示す量添加し、１分間スターラーで攪拌した後Ｎｏ．５Ａの濾紙で濾過し、得られた処理水の過酢酸、Ｈ２Ｏ２及び酢酸の濃度を調べ、結果を表１に示した。
【００３０】
【表１】
実施例２
図１に示す処理装置に、表２に示す水質の原水を通水し、各塔の出口水の水質を調べ、結果を表２に示した。
【００３２】
なお、各塔の仕様は下記の通りであり、通水ＳＶは各々、活性炭塔：１０ｈｒ−１，カチオン交換搭：３０ｈｒ−１，アニオン交換塔２０ｈｒ−１とした。
【００３３】
【表２】
なお、上記処理においてアニオン交換樹脂による酢酸の吸着性能は図２に示す通りで、カチオン交換搭及びアニオン交換搭のイオン交換樹脂の再生サイクルは１２時間であった。
【００３６】
【発明の効果】
活性炭によれば、イオンの増加や水質の低下等の問題を引き起こすことなく、過酢酸を効率的に分解することができる。また、活性炭は比表面積が大きいため、単位量当たりの分解効率が高い。
【００３７】
本発明の過酢酸含有廃水の処理方法及び処理装置によれば、過酢酸含有水から過酢酸を効率的に除去して、水の回収、有効利用を図ることができる。
【００３８】
このような本発明の方法及び装置は、食品工場から排出されるオキソニア廃水の処理等に工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の過酢酸含有廃水の処理装置の実施の形態を示す系統図である。
【図２】弱塩基性アニオン交換樹脂による酢酸の吸着性能を示すグラフである。
【符号の説明】
１ 活性炭塔
２ カチオン交換搭
３ アニオン交換塔
Claims (4)
- 食品工場から排出される過酢酸含有廃水を活性炭と接触させて過酢酸を酢酸に還元後、カチオン交換樹脂と接触させて共存カチオンを除去し、その後、アニオン交換樹脂と接触させて、該酢酸を吸着除去することを特徴とする過酢酸含有廃水の処理方法。
- 請求項１において、該過酢酸含有廃水がオキソニア廃水であることを特徴とする過酢酸含有廃水の処理方法。
- 食品工場から排出される過酢酸含有廃水が導入され、該廃水中の過酢酸を酢酸に還元するための活性炭塔と、該活性炭塔の流出水が導入される、該流出水中の共存カチオンを除去するためのカチオン交換塔と、該カチオン交換塔の流出水が導入され、該流出水中の酢酸を吸着除去するためのアニオン交換樹脂を有するイオン交換塔とを備えることを特徴とする過酢酸含有廃水の処理装置。
- 請求項３において、該過酢酸含有廃水がオキソニア廃水であることを特徴とする過酢酸含有廃水の処理装置。
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