JP3603503B2 - 感熱孔版印刷用フィルムおよび感熱孔版印刷マスター - Google Patents

感熱孔版印刷用フィルムおよび感熱孔版印刷マスター Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーマルヘッド、あるいはハロゲンランプ、キセノンランプ、フラッシュランプ、レーザー光線等によって穿孔製版される感熱孔版印刷用フィルムおよび感熱孔版印刷マスターに関し、穿孔感度、耐カール性、独立穿孔性、印刷特性(印刷性、耐刷性)に優れ、特にサーマルヘッドによる低エネルギーでの穿孔性に優れた感熱孔版印刷用フィルムおよび感熱孔版印刷マスターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より感熱孔版印刷マスターとしては、塩化ビニリデンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムに、天然繊 維、化学繊維または合成繊維あるいはこれらを混抄した薄葉紙、不織布、紗等によって構成された多孔性支持体を接着剤で貼り合わせた構造のものが知られている(例えば、特開昭51−2513号公報、特開昭57−182495号公報など)。
【0003】
しかしながら、昨今では、マスターの印刷機内での良好な搬送性が要求されており、搬送性が不良であるとマスター詰まり等のトラブルが生じ、製版不良、印刷画像のずれ等の問題が発生する。また、温湿度の変化によりマスターに寸法変化やカール等の変形を生じないことが重要である。
【0004】
また、印刷速度の高速化、印刷物の多部数化に伴い、マスターの耐刷性が要求されている。すなわち、印刷工程でマスターが破断したり、変形したりしない、印刷作業に耐える充分な強度が必要である。
【0005】
さらにまた、印刷物に対して高い解像度が要求されており、例えばサーマルヘッドによる穿孔では高い解像度を得るために個々のヘッドを小さくしヘッド加熱周期を短かくして、単位面積当たりの穿孔数を増やす試みがなされている。そのため個々のヘッドに供給するエネルギーを低減させる必要があり、上記した熱可塑性樹脂フィルムが低エネルギーで十分に穿孔されることが必要となる。
【0006】
また、フィルム製造時やマスター作製時の生産性ならびに取扱い性が良好であることが必要である。具体的にはフィルムの延伸性が良好で、製膜工程で破断したりせず、また巻き取り性、スリット性も優れていることが必要である。
【0007】
このような問題点を解決するため、二軸延伸ポリエステルフィルムの熱的特性を規制することによって印刷特性を改善したフィルム(特開昭62−282984号公報、特開平3−39294、特開平4−224925)等が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の従来技術では低エネルギーで穿孔した場合には穿孔が十分ではなく、また高エネルギーで穿孔した場合には独立穿孔性に劣るために文字印刷、ベタ印刷などの印刷性が低下するなどの欠点がある。すなわち、温度の違いに敏感に反応して穿孔することが要求されているにも拘らず、従来のフィルムは温度に対する反応が鈍いという問題があった。さらには耐刷性やマスターのカール性においても同時に満足するものではなかった。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の各種問題点を解決し、穿孔感度、耐カール性、独立穿孔性、印刷性、耐刷性に優れ、特にサーマルヘッドによる低エネルギーでの穿孔性に優れた感熱孔版印刷用フィルムの提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは感熱孔版印刷用フィルムおよびマスターの機能、穿孔製版・印刷のメカニズムに着目し鋭意研究した結果、フイルムの結晶融解温度と降温結晶化温度を特定の範囲としたフィルムを得ることによっ て、従来のフィルムの欠点を改良できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0011】
すなわち本発明は、ジカルボン酸成分とグリコール成分を主たる構成成分とするポリエステルからなる二軸延伸フィルムであって、該フィルムのDSC測定において結晶融解ピークおよび降温結晶化ピークが各々少なくとも一つ以上測定され、かつ下記の関係
Tm(min)≦230(℃)
ΔTmc≦80(℃)
ただし、 ΔTmc=Tm(min)−Tmc(max)
Tm(min) :最も低温側の結晶融解ピーク温度
Tmc(max):最も高温側の降温結晶化ピーク温度
を満足することを特徴とする感熱孔版印刷用フィルムである。また、本発明は、ジカルボン酸成分とグリコール成分を主たる構成成分とするポリエステルからなる二軸延伸フィルムであって、該フィルムのDSC測定において結晶融解ピークおよび降温結晶化ピークが各々少なくとも一つ以上測定され、かつ上記の関係を満足するフィルムと多孔性支持体とが接合されてなることを特徴とする感熱孔版印刷マスターである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱孔版印刷用フィルムを構成するフィルムの降温結晶化温度および結晶融解温度とは、フィルム(5mg)をDSCにおいて10℃/分の昇降温速度で測定したときの発熱、吸熱ピーク温度を表すものである。降温結晶化温度においては、フィルムを300℃に昇温し5分間保持後、降温測定したときの発熱ピークを表すものである。本発明のフィルムは、結晶融解ピークおよび降温結晶化ピークが各々少なくとも一つ以上測定され、かつ下記の関係
Tm(min)≦230(℃)
ΔTmc≦80(℃)
ただし、 ΔTmc=Tm(min)−Tmc(max)
Tm(min) :最も低温側の結晶融解ピーク温度
Tmc(max):最も高温側の降温結晶化ピーク温度
を満足する必要がある。上記の関係を満足することにより、穿孔感度、耐カール性、独立穿孔性、印刷性、耐刷性に優れ、かつ強度が高く、特にサーマルヘッドによる低エネルギーでの穿孔性に優れたフィルムを得ることができる。
【0013】
本発明のフィルムのフィルムの結晶融解ピーク〔Tm〕および降温結晶化ピーク〔Tmc〕を有することが必要である。ピークが存在しない場合、穿孔感度が不良となり、フィルムの強度が低くなるため耐刷性が不良となる。
【0014】
本発明のフィルムのTm(min)は、230℃以下であることが必要であ る。より好ましくは215℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。Tm(min)が230℃を越えると、穿孔開始点となる溶融部が形成されず穿孔感度が不良となる。
【0015】
また、本発明のフィルムの最も低温側の結晶融解ピーク温度と最も高温側の降温結晶化ピーク温度の差〔ΔTmc〕は、が80℃以下とすることが必要であ る。好ましくは75℃以下であり、より好ましくは70℃以下である。ΔTmcが80℃より大きいと穿孔感度が不十分であり特に低エネルギーでの穿孔性が不良となる。
【0016】
本発明のフィルムのTmc(max)は、100〜180℃であることが好ましく、より好ましくは120〜170℃である。Tmc(max)を80〜180℃とすることにより、穿孔感度が良好となり、穿孔部のばらつきが減少するため好ましい。
【0017】
本発明のフィルムの降温結晶化エネルギー〔ΔHmc〕は、20〜60J/gであることが好ましく、より好ましくは25〜55J/g、さらに好ましくは30〜45J/gである。ΔHmcを20〜60J/gとすることにより独立穿孔性、耐刷性が良好となるため好ましい。
【0018】
本発明においてフィルムの組成がブレンド体である等の理由から、Tm、Tmcがショルダーピークなど2つ以上存在する場合については、Tmは、最も低温側のピークが上記範囲である必要があり、好ましくは全てのピークが範囲内である。Tmcは、最も高温側のピークが上記範囲である必要があり、好ましくは全てのピークが範囲内である。またΔHmcは、各々のΔHmcの総和が上記範囲であることが好ましい。
【0019】
本発明のフィルムに用いられるポリエステルとは、ジカルボン酸成分とグリコール成分を主たる構成成分とし、具体的に芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸等、脂肪族ジカルボン酸成分としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸等を用いることができる。また脂環族ジカルボン酸としては1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用しても良い。また、グリコール成分としては例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、 1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2′ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができる。中でもエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、 1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールが好ましい。これらのグリコール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用しても良い。また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、フイルムの成形性、取り扱い性の向上等を目的としてポリエステルにトリメリト酸、トリメシン酸、ペンタエリストール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多官能化合物やp−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を共重合しても良い。
【0020】
本発明におけるポリエステルは、酸成分とグリコール成分を用いて次のような方法で得ることができる。例えば、酸成分をグリコール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のグリコール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法や、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとグリコール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることによって製造する方法等がある。この際、必要に応じて、反応触媒としてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、亜鉛化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等を用いることもできる。
【0021】
本発明におけるポリエステルには、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、末端封鎖剤、脂肪酸エステ ル、ワックス等の有機滑剤あるいはポリシロキサン等の消泡剤等を配合することができる。さらには目的に応じて易滑性を付与することもできる。易滑性付与方法としては特に制限はないが、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、アルミナ、ジルコニア、スピネル、湿式あるいは乾式シリカなどの無機粒子、アクリル酸系ポリマ類、ポリスチレン等を構成成分とする有機粒子等を配合する方法、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等が失活して形成されるいわゆる内部粒子による方法、界面活性剤を塗布する方法等がある。
【0022】
本発明におけるポリエステルとして好ましくは、ポリエチレンテレフタレー ト、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレン−2、6−ナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートまたはこれらのポリエステルを主体とする共重合体を用いることができる。また共重合体の場合は、ランダム共重合体でもブロック共重合体であっても良い。さらにまた、異なった組成のポリエステルを2種以上ブレンドしたブレンド体であっても良い。
【0023】
本発明のフィルムの最も低温側の結晶融解ピーク温度と最も高温側の降温結晶化ピーク温度の差を80℃以下とする手法は特に限定されないが、上述したポリエステルの組成を最適化する手法、ポリエステルに結晶核剤を配合する手法や可塑剤配合する手法が好ましい。結晶核剤や可塑剤を配合することにより、フィルムの結晶性(結晶化度、結晶化速度)を最適化することが可能であり、例えば易滑性を付与する粒子と同様のポリエステルに不溶性の粒子や、ポリエステル中で粒子状または層状に分散した非相溶または半相溶のポリマを配合することが好ましい。
【0024】
本発明のフィルムは上述した樹脂組成物を用い、二軸延伸することによって得られる。未延伸のフィルムでは穿孔時に溶融するものの孔は形成されないため穿孔感度が悪く、フィルムの強度が低いために耐刷性も不良となるため好ましくない。延伸方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、ステンター同時二軸延伸法、ステンター逐次二軸延伸法のいずれの方法も採用可能であり、制限は特にないが、製膜安定性、厚み均一性の点でステンター逐次二軸延伸法が好ましく用いられる。
【0025】
本発明のフィルムは、樹脂組成物を用いて、以下の方法によって製造することができる。ポリエステルを十分に乾燥させた後、押出し機に供給して240〜350℃で溶融しTダイ押し出し法によってキャスティングドラム上に押し出すことによって未延伸フィルムを得る。キャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法等のうちいずれの方法を用いても良いが、平面性が良好でかつ表面欠点の少ないフィルムを得る手法として、水の表面張力を利用した密着キャスト法、または静電印加法とするのが特に好ましい。このときポリブチレンテレフタレートやポリヘキサメチレンテレフタレートおよびそれらの共重合体に代表される樹脂組成物では未延伸キャストフィルムの段階での結晶化を抑制し、その後の延伸性を低下させないように水の表面張力を利用した密着キャスト法と静電印加法とを併用し溶融樹脂組成物を急冷することが好ましい。この時、口金のスリット幅、樹脂組成物の吐出量、キャスティングドラムの回転数を調整することによって、所望の厚さの未延伸フィルムを作ることができる。次いでこの未延伸フィルムを同時あるいは逐次に二軸延伸することによって、二軸延伸フィルムを製造することができる。また逐次二軸延伸の場合、その延伸順序はフィルムを長手方向、幅方向の順、あるいはこの逆としても良い。更に逐次二軸延伸においては、長手方向あるいは幅方向の延伸を2回以上行うことも可能である。フィルムの長手方向および幅方向の延伸倍率は目的とするフィルムの配向度、強度、弾性率等に応じて任意に設定することができる。好ましくは2.5〜7.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としても良い。また、延伸温度は用いるポリエステルのガラス転移温度以上、結晶化温度以下の範囲の任意の温度とすることができる。更にフィルムを二軸延伸した後に、強度、経時安定性の向上を目的に熱処理を行っても良い。この熱処理は、オーブン中、加熱されたロール上等、任意の方法で行うことができる。熱処理温度は延伸温度以上、軟化点以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは200℃以下である。また熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行うのが好まし い。熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行っても良い。
【0026】
また、本発明のフィルム厚さ、フィルムの固有粘度や表面特性、すなわち中心線平均粗さ、最大粗さを後述の範囲としたとき本発明の効果がより顕著に発現するため好ましい。
【0027】
本発明のフィルムに用いられるポリエステルの固有粘度は、製膜安定性、フィルムの強度の点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上であ る。
【0028】
本発明のフィルムの厚みは、低エネルギー穿孔性の点から0.1〜5.0μmが好ましい。またフィルム製造における製膜安定性、取扱性、低エネルギー穿孔性の点からより好ましくは0.3〜3.0μmであり、さらに好ましくは0.4〜2.5μmである。
【0029】
本発明のフィルムの中心的平均粗さ(Ra)は、0.01〜0.5μmの範囲が好ましく、製膜からマスター作成工程の安定生産性および穿孔特性、印刷鮮明性の点で0.05〜0.4μmがより好ましい。
【0030】
本発明のフィルムの最大粗さ(Rt)は、0.3〜5μmの範囲が好ましく、フィルムの取り扱い性、生産性、穿孔感度のバラツキ等の点から0.5〜4μmがより好ましい。
【0031】
本発明の感熱孔版印刷マスターは、上記のフィルムと多孔性支持体を接合して作ることができる。このような方法として、接着剤を用いて接合しても良く、接着剤を用いずに熱圧着により接合しても良い。より好ましくは、未延伸のフィルムと配向の低い未延伸の不織布とを熱圧着した後で共延伸することにより、得ることができる。熱圧着した状態で未延伸フィルムと未延伸不織布とが一体となって延伸されることにより不織布が補強体の役目をなし、耐カール性、耐刷性が良好となり、また製造時にフィルムが破れにくく、極めて安定性に優れるため好ましい。共延伸の方法は特に限定されるものではなく、ステンター逐次二軸延伸法等のフィルムの延伸方法と同一とすることが好ましい。
【0032】
本発明のフィルムと貼り合わせ用いられる多孔性支持体は、繊維目付量は、印刷性の点から1〜20g/mが好ましい。より好ましくは2〜16g/m、さらに好ましくは2〜14g/mである。目付量が20g/m以下であれば、インキの透過性が良好となり、印刷速度を早くしても印刷画像がかすれたりすることがない。また目付量が1g/m以上であれば、インキの保持性が良好であ り、鮮明な画像が得られる優れたマスターとすることができる。
【0033】
また、多孔性支持体を構成する繊維の平均直径は、0.5〜30μmが好ましく、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。平均直径が30μm以下であれば繊維分布の均一な支持体が得られるので、インキ透過性の均一なマスターとすることができる。また、平均直径が0.5μm以上であれば支持体として十分な強度が得られるので搬送性が良好となる。
【0034】
さらにまた、多孔性支持体を構成する繊維は全て同一直径のものであってもよいし、異なる繊維径の繊維が混繊されたものであってもよい。また、繊維径の異なる繊維を段階的に積層した多層構造としてもよい。多層構造の場合、少なくともフィルムに面した層を10μm以下の繊維で構成し、残りの層を10μm以上の繊維で構成すると画像鮮明性と支持体強度とのバランスの点でより好適であ る。多層構造の場合、フィルムに面した層の繊維目付量は1〜5g/mとする のがより好ましい。
【0035】
多孔性支持体を構成する繊維は、インキとの親和性を付与するために必要に応じて繊維の表面に酸、アルカリ等の化学処理あるいはコロナ処理、低温プラズマ処理等を施してもよい。
【0036】
本発明のマスターにおいては、サーマルヘッド等との融着防止のため、フィルム面に、離型剤を塗布するのが好ましい。離型剤としては、シリコーンオイル、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、界面活性剤、ワックス系離型剤等を用いることができる。これら離型剤中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種添加剤を併用することができる。例えば、帯電防止剤、耐熱剤、耐酸化防止剤、有機粒子、無機粒子、顔料等が挙げられる。離型剤の塗布は、フィルムの延伸前あるいは延伸後、いずれの段階で行ってもよい。塗布方法は特に限定されないが、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、バーコーター等を用いて塗布するのが好ましい。また、離型剤を塗布する前に必要に応じて、塗布面に空気中その他種々の雰囲気中でコロナ放電処理を施しても良い。
【0037】
[特性の測定方法]
(1)結晶融解ピーク温度〔Tm〕
セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計RDC220型を用い、フィルム試料5mgを採取し、室温より−50℃まで冷却し5分間保持した後、300℃まで昇温速度10℃/分で昇温しDSC曲線を得た。このときのDSC曲線から、吸熱ピークを読みとり最も低温側の吸熱ピーク温度をTm(min)とした。
【0038】
(2)降温結晶化温度〔Tmc〕および降温結晶化エネルギー量〔ΔHmc〕
セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計RDC220型を用い、結晶融解ピーク温度を測定後300℃5分間保持した後、室温まで降温速度10℃/分で降温し、降温DSC曲線を得た。このときのDSC曲線から、発熱ピークを読みとり最も高温側の発熱ピーク温度をTmc(max)とした。また、ΔHmcは、発熱曲線のピーク面積から求めた。この面積は、降温することによりベースラインから発熱側にずれ、さらに降温を続けベースラインの位置まで戻るまでの面積であり、発熱開始温度位置から終了位置までを直線で結び、この面積(a)を求める。同じDSCの条件でIn(インジウム)を測定し、この面積(b)を2 8.5J/gとして次式により求めた。
【0039】
降温結晶化エネルギー量=28.5×a/b(J/g)
複数のピークが存在する場合は、それぞれのピークについて求め、その総和とした。
【0040】
(3)フィルムの厚み
フィルムサンプルを任意に10箇所断面方向に切り出し、電子顕微鏡で倍率2000倍で写真撮影を行い、フィルムの厚みを測定した。これを10枚の写真について行い、その平均値で表した。
【0041】
(4)穿孔感度
作成したマスターを理想科学工業(株)製RISOGRAPH“GR275”に供給して、サーマルヘッド式製版方式(400dpi)により、JIS第1水準の●(丸で中が黒く塗りつぶされたもの)で10mmφのものを原稿として製版した。この際、サーマルヘッドに投入するエネルギーを1ドット当たり50μJ、30μJの2通りとした。この状態で穿孔し、走査型顕微鏡で100倍の倍率でフィルムの穿孔部分150個を観察し、穿孔特性を以下の項目で評価した。
A.穿孔感度
穿孔部を観察し、全く貫通していない部分を未穿孔箇所として評価した。
【0042】
◎:未穿孔箇所が全く見られない。
【0043】
○:未穿孔箇所が1個以上5個未満の範囲のもの。
【0044】
△:未穿孔箇所が5個以上10個未満の範囲のもの。
【0045】
×:未穿孔箇所が10個以上のもの。
【0046】
B.独立穿孔性
2つ以上のドットにまたがって孔を形成している部分を連結箇所として評価した。
【0047】
◎:連結箇所が全く見られない。
【0048】
○:連結箇所が1個以上5個未満の範囲のもの。
【0049】
△:連結箇所が5個以上10個未満の範囲のもの。
【0050】
×:連結箇所が10個以上のもの。
【0051】
(5)耐カール性
作製した孔版マスターを縦横10cmの正方形にサンプリングし、50℃で湿度90%RHの恒温恒湿槽中で1週間処理した後、平らな台上に置き、カールしたサンプルの角の台からの高さを測定し、マスターのカール性を評価した。
【0052】
◎:高さが1cm以下のもの。
【0053】
○:高さが1cm以上1.5cm未満の範囲のもの。
【0054】
△:高さが1.5cm以上2.0cm未満の範囲のもの。
【0055】
×:高さが2.0cm以上のもの。
【0056】
(6)印刷鮮明性
理想科学工業(株)製テストチャートNO.8を原稿とし、400dpiのサーマルヘッドを用いて作成したマスターを製版し、黒インキで印刷サンプルを作成し、文字、画像(ベタ印刷)について下記の特性を評価した。
【0057】
A.文字印刷の鮮明性
文字の欠落、太さムラについて目視で観察し評価した。
【0058】
◎:文字の欠落、太さムラが全くない。
【0059】
○:文字の欠落、太さムラが1箇所以上5箇所未満のもの。
【0060】
△:文字の欠落、太さムラが5箇所以上10箇所未満のもの。
【0061】
×:文字の欠落、太さムラが10箇所以上のもの。
【0062】
B.ベタ印刷の鮮明性
製版原稿を用いて印刷した100枚目の印刷物の黒ベタ部をマクベス光学式濃度計により測定し評価した。
【0063】
◎:濃度が1.0以上のもの。
【0064】
○:濃度が0.9以上1.0未満のもの。
【0065】
△:濃度が0.8以上0.9未満のもの。
【0066】
×:濃度が0.8未満のもの。
【0067】
(7)耐刷性の評価
印刷機でフィルム、または多孔性支持体が破損するまでに刷れる枚数で表し た。
【0068】
◎:印刷枚数が1000枚以上のもの。
【0069】
○:印刷枚数が800〜1000枚のもの。
【0070】
△:印刷枚数が500〜799枚のもの。
【0071】
×:印刷枚数が500枚未満のもの。
【0072】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
【0073】
[実施例1]
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸ジメチル72.0重量部、イソフタル酸ジメチル24.0重量部、グリコール成分としてエチレングリコール61.3重量部、反応触媒として酢酸カルシウム0.09重量部、三酸化二アンチモン0.04重量部を加え、常法に従って150℃から次第に235℃まで昇温しながら理論量のメタノールを系外に留出させエステル交換反応せしめた後、トリメチルリン酸0.04重量部を加え、エチレングリコール中に均一に分散せしめた平均粒径1.2μmの凝集性シリカ粒子のスラリーをシリカ粒子として重縮合したポリエステルに対し0.4重量部添加し、過剰のエチレングリコールを系外に留出させた。その後235℃から徐々に昇温、減圧し最終的に285℃、1torr以下で重縮合反応を行い、固有粘度0.75のエチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合ポリエステル(共重合モル比75/25)を得た。(ポリエステルA)
別に、テレフタル酸ジメチル96重量部、エチレングリコール60重量部、反応触媒として酢酸マグネシウム0.07重量部、三酸化二アンチモン0.025重量部、重量部を加え、エステル交換反応せしめた後、フェニルホスホン酸ジメチル0.35重量部を加え、同様の方法で重縮合し、ポリエチレンテレフタレートを得た。該ポリエステルエチレンテレフタレートを得た。(ポリエステルB)次いで、該ポリエステルAとポリエステルBを結晶化させ、それぞれ140℃で3時間減圧下で乾燥させた後、重量比80:20でドライブレンドし、スクリュー径45mmの押出機を用いて、Tダイ口金温度270℃で押し出し、直径300mmの冷却ドラム上にキャストして未延伸フィルムを作製した。次いで90℃の加熱ロール間で長手方向に3.8倍延伸した後、テンター式延伸機に送り込み、93℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらにテンター内で100℃で熱処理して、厚さ1.5μmのフィルムを作製した。
【0074】
次に、得られたフィルムに酢酸ビニルを接着剤としてマニラ麻を原料とする天然繊維100%の繊維目付量12g/mの和紙と貼り合わせ、フィルム面にシ リコーン系離型剤を塗布して感熱孔版印刷マスターを作製し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を、表1に示す。
【0075】
[比較例1]
ポリエステルBの反応触媒および添加剤を酢酸カルシウム0.07重量部、三酸化二アンチモン0.015重量部、トリメチルリン酸0.038重量部とする以外は実施例1と同様にして感熱孔版印刷マスターを作製し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を表1に示す。
【0076】
[実施例2]
ポリエステルBをポリブチレンテレフタレートとする以外は実施例1と同様にして感熱孔版印刷マスターを作製し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を表1に示す。
【0077】
[実施例3]
ポリエステルBをテレフタル酸ジメチル63.7重量部、ドデカンジオン酸ジメチル22.3重量部、1,4−ブタンジオール78重量部とする以外は実施例1と同様にして感熱孔版印刷マスターを作製し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を表1に示す。
【0078】
[実施例4]
ポリエステルAの反応触媒を酢酸マグネシウム0.18重量部、三酸化二アンチモン0.02重量部、フェニルホスホン酸ジメチル0.35重量部に変更し、ポリエステルBをポリブチレンテレフタレートとする以外は実施例1と同様にして感熱孔版印刷マスターを作製し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を表1に示す。
【0079】
[実施例5]
ポリエチレンテレフタレートに結晶核剤としてパラオキシ安息香酸のNa塩をポリエチレンテレフタレートに対し1重量%ベント式二軸押出機にて練り混み、これをポリエステルBとする以外は実施例1と同様にして感熱孔版印刷マスターを作製し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を表1に示す。
【0080】
[実施例6]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル67.8重量部、イソフタル酸ジメチル13.5重量部、1,6−ヘキサンジオール82重量部をエステル交換反 応、重縮合反応せしめ、ポリヘキサメチレンナフタレート/ヘキサメチレンイソフタレート共重合体(モル比80/20)を得た。これを原料としてフィルム厚み1.5μmのフィルムを作製し、酢酸ビニルを接着剤としてマニラ麻を原料とする天然繊維100%の繊維目付量14g/mの和紙と貼り合わせ、フィルム 面にシリコーン系離型剤を塗布して感熱孔版印刷マスターを作製し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を、表1に示す。
【0081】
[実施例7]
テレフタル酸ジメチル72.9重量部、1,6−ヘキサンジオール26.6重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール75.6重量部をエステル交換反 応、重縮合反応せしめ、ポリヘキサメチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体(モル比30/70)を得た。これを原料としてフィルム厚み1.5μmのフィルムを作製し、酢酸ビニルを接着剤としてマニラ麻を原料とする天然繊維100%の繊維目付量14g/mの和紙と貼り合わ せ、フィルム面にシリコーン系離型剤を塗布して感熱孔版印刷マスターを作製 し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を、表1に示す。
【0082】
[比較例2]
ポリエステルAの代わりにポリエチレンテレフタレートとする以外は、実施例1と同様にして感熱孔版印刷マスターを作製し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を表1に示す。
【0083】
[比較例3]
テレフタル酸ジメチル78重量部、セバシン酸ジメチル23重量部、エチレングリコール60重量部をエステル交換反応、重縮合反応せしめ、ポリエチレンテレフタレート/セバケート共重合体(モル比80/20)を得た。これを原料としてフィルム厚み1.5μmのフィルムを作製し、酢酸ビニルを接着剤としてマニラ麻を原料とする天然繊維100%の繊維目付量14g/mの和紙と貼り合 わせ、フィルム面にシリコーン系離型剤を塗布して感熱孔版印刷マスターを作製し、評価を実施した。フィルムの特性および評価結果を、表1に示す。
【0084】
[実施例8]
孔径0.35mm、孔数100個の矩形紡糸口金を用いて、口金温度290 ℃、吐出量35g/分でポリエチレンテレフタレートをメルトブロー法にて紡出し、コンベア上に繊維を捕集し、さらに70℃に加熱された金属ロール間でカレンダ処理して繊維目付量130g/mの未延伸不織布を作製した。
【0085】
実施例1と同様にしてポリエステルAとポリエステルBを結晶化させ、それぞれ140℃で3時間減圧下で乾燥させた後重量比80:20でドライブレンド し、スクリュー径45mmの押出機を用いて、Tダイ口金温度270℃で押し出し、直径300mmの冷却ドラム上にキャストして未延伸フィルムを作製した。得られた未延伸フィルムに未延伸不織布を重ね、加熱ロールに供給してロール温度90℃で熱圧着した。こうして得られた積層体を、95℃の加熱ロール間で長さ方向に3.5倍延伸した後、テンター式延伸機に送り込み100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらにテンター内で120℃で熱処理して、厚さ70μmの感熱孔版印刷マスターを作製した。マスターのフィルム面にはテンター入口部において、ワックス系離型剤をグラビアコーターを用いて乾燥後の重さで0.1g/m塗布した。得られたマスターの繊維目付量は10g/m、平均繊維径6μmであった。またフィルム単独の厚みは1.4μmであった。フィルムの特性および評価結果を、表1に示す。
【0086】
【表1】
Figure 0003603503
【0087】
【発明の効果】
ジカルボン酸成分とグリコール成分を主たる構成成分とするポリエステルからなる二軸延伸フィルムであって、該フィルムのDSC測定において結晶融解ピーク〔Tm〕および降温結晶化ピーク〔Tmc〕が各々少なくとも一つ以上測定され、かつ下記の関係を満足することにより、従来技術の各種問題点を解決し、穿孔感度、耐カール性、独立穿孔性、印刷特性(印刷性、耐刷性)に優れ、かつ強度が高く、特にサーマルヘッドによる低エネルギーでの穿孔性に優れたフィルムおよびマスターを得ることができる。
【0088】
Tm(min)≦230(℃)
ΔTmc≦80(℃)
ただし、 ΔTmc=Tm(min)−Tmc(max)
Tm(min) :最も低温側の結晶融解ピーク温度
Tmc(max):最も高温側の降温結晶化ピーク温度

Claims (4)

  1. ジカルボン酸成分とグリコール成分を主たる構成成分とするポリエステルからなる二軸延伸フィルムであって、該フィルムのDSC測定において結晶融解ピーク〔Tm〕および降温結晶化ピーク〔Tmc〕が各々少なくとも一つ以上測定され、かつ下記の関係を満足することを特徴とする感熱孔版印刷用フィルム。
    Tm(min)≦230(℃)
    ΔTmc≦80(℃)
    ただし、 ΔTmc=Tm(min)−Tmc(max)
    Tm(min) :最も低温側の結晶融解ピーク温度
    Tmc(max):最も高温側の降温結晶化ピーク温度
  2. フィルムの最も高温側の降温結晶化ピーク温度〔Tmc(ma x)〕が100〜180℃であり、かつ降温結晶化エネルギー〔ΔHmc〕が20〜60J/gであることを特徴とする請求項1に記載の感熱孔版印刷用フィルム。
  3. 請求項1または請求項2に記載のフィルムと多孔性支持体とが接合されてなることを特徴とする感熱孔版印刷マスター。
  4. フィルムと多孔性支持体とが接着剤を介することなく接合されてなることを特徴とする請求項3に記載の感熱孔版印刷マスター。
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