JP3598498B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機パワーをステアリング系に直接作用させてドライバの操舵力を軽減する電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置は、電動機の駆動力を直接利用して補助トルクを発生し、ドライバの操舵力をアシストする。ところが、電動パワーステアリング装置は、制御手段の異常等によって望ましくない補助トルクが発生した場合、ドライバの意思に反して操舵力をアシストする。例えば、制御手段を構成するCPU(Central Processing Unit)等が異常の場合、電動機を制御するための電動機制御信号に異常値が設定され、ドライバによる手動の操舵方向とは逆方向の補助トルクを発生する方向に電動機が異常駆動される場合がある。そこで、電動パワーステアリング装置には、望ましくない補助トルク(異常な電動機の駆動状況)を検知し、電動機による駆動を禁止する駆動禁止手段が備わっているものがある。例えば、本願出願人による特開平11−59446号公報には、補助禁止手段(駆動禁止手段)を備える電動パワーステアリング装置が開示されている。この補助禁止手段は、ドライバによる操舵トルクの方向と電動機による補助トルクの方向とが所定時間以上異なる場合に、電動機の駆動を禁止する。
【0003】
また、電動パワーステアリング装置は、電動機の駆動を制御するために、まず、操舵トルクや車速等に基づいて電動機に供給する目標電流を設定する。さらに、電動パワーステアリング装置は、操舵フィーリングを向上させるために、ダンピング制御およびイナーシャ制御によって目標電流を補正する。ダンピング制御は、操舵時の安定性を向上させるために、電動機回転速度や車速等に基づいてダンピング補正値を設定し、目標電流を減衰補正する。また、イナーシャ制御は、操舵時の応答性を向上させるために、操舵トルクの微分値や車速等に基づいてイナーシャ補正値を設定し、目標電流に加算補正する。特に、イナーシャ制御は、操舵トルクの微分値に基づいて制御するので、ステアリング操作における切り返し等の操舵トルクが大きく変化する時に有効に作用する。その結果、ダンピング制御やイナーシャ制御が施されると、実際の操舵トルクの方向とは逆方向に目標電流が補正され、操舵トルクの方向と補助トルクの方向とが異なる場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した電動パワーステアリング装置に備えられる補助禁止手段では、操舵トルクの方向と補助トルクの方向とが所定時間以上異なっているか否かで電動機の駆動禁止を判定するので、電動パワーステアリング装置での異常を高精度に判定できない。つまり、所定時間を長く設定した場合、実際にCPU等が異常にも拘わらず、電動機の駆動が禁止されない場合がある。また、所定時間を短く設定した場合、ダンピング制御やイナーシャ制御による正常な制御にも拘わらず、電動機の駆動が禁止されてしまう場合がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、ダンピング制御および/またはイナーシャ制御を行っている場合でも異常判定を高精度に行い、異常時には確実に電動機の駆動を禁止する電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決した本発明に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリング系に補助トルクを付加する電動機と、前記電動機に流れる電動機電流の大きさおよび方向を検出する電動機電流検出手段と、前記ステアリング系に作用する操舵トルクの大きさおよび方向を検出する操舵トルクセンサと、前記操舵トルクセンサからの出力に基づいて前記電動機を制御する制御手段と、前記制御手段からの電動機制御信号に基づいて前記電動機を駆動する電動機駆動手段と、前記操舵トルクセンサで検出される操舵トルクの大きさおよび方向と前記電動機電流検出手段で検出される電動機電流の大きさおよび方向とに基づいて前記電動機の駆動を禁止する駆動禁止手段とを備える電動パワーステアリング装置であって、前記駆動禁止手段は、前記操舵トルクの大きさおよび方向と前記電動機電流の大きさおよび方向とが所定の禁止条件を満たすか否かを判定する禁止条件判定手段と、前記操舵トルクの大きさが減少する場合を除いて、前記禁止条件判定手段からの出力に基づいて前記所定の禁止条件を満たしている時間を積算する計時手段と、前記計時手段からの積算時間が所定時間以上となった場合に、前記電動機の駆動を禁止するための信号を出力する禁止判定手段とを備えることを特徴とする。
この電動パワーステアリング装置によれば、計時手段では、操舵トルクの大きさおよび方向と電動機電流の大きさおよび方向とが所定の禁止条件を満たしているにも拘わらず、操作トルクの大きさが減少している場合には異常と判定するための時間を積算しない。つまり、操舵方向が切り変わろうとしている場合、電動機の慣性によって、通常の制御では切り変わる方向に対するアシストに遅れを生じる。そのため、その遅れを解消するために、イナーシャ制御による補正によって、操舵トルクの方向とは逆方向に補助トルクを発生させるための電動機電流を電動機に出力している場合がある。そこで、この電動パワーステアリング装置では、所定の禁止条件を満たしている場合でも操作トルクの大きさが減少している時には正常なアシストとみなし、異常判定の精度を向上させる。その結果、電動パワーステアリング装置は、ダンピング制御やイナーシャ制御による正常制御時には電動機の駆動禁止を防止し、異常時には確実に電動機の駆動を禁止することができる。
なお、所定の禁止条件は、操舵トルクと電動機電流との関係がドライバによる操舵に反するような補助トルクを発生する関係にあることを表す条件であり、条件が満たされた場合には電動機によるアシストを禁止するための条件である。本実施の形態では、図3に示すマップMのアシスト禁止領域Ma,Mb,Mc,Md内に操舵トルク(操舵トルク信号T)の大きさおよび方向と電動機電流(電動機電流信号IMO)の大きさおよび方向との関係が位置する場合である。なお、第1アシスト禁止領域Ma,Mbは、領域内に入っている積算時間が100mS以上になると電動機によるアシストが禁止される領域である。第2アシスト禁止領域Mc,Mdは、領域内に1mSでも入ると電動機によるアシストが禁止される領域である。また、所定時間とは、操舵トルクと電動機電流との関係が所定の禁止条件を満たすが、実際の操舵中には満たされる可能のある条件であるため、所定時間内は所定の禁止条件を満たしても電動機によるアシストを禁止しない許容時間である。本実施の形態では、100mSである。
【0007】
さらに、前記電動パワーステアリング装置において、前記計時手段は、前記操舵トルクの大きさが減少する場合かつ前記操舵トルクの大きさの時間的変化量が所定変化量以上である場合を除いて、前記禁止条件判定手段からの出力に基づいて前記所定の禁止条件を満たしている時間を積算することを特徴とする。
この電動パワーステアリング装置によれば、計時手段では、操舵トルクの大きさの時間的変化量が所定変化量以上の場合には異常と判定するための時間を積算しない。すなわち、この電動パワーステアリング装置は、操舵トルクの大きさが確実に減少していると判定できる場合のみ正常なアシストとみなし、異常判定精度を一層向上させる。
なお、所定変化量とは、操舵トルクの大きさが減少していることを確実に示す時間経過に伴う操舵トルクの大きさの変化量である。
【0008】
しかも、前記電動パワーステアリング装置において、前記駆動禁止手段は、前記禁止条件判定手段において前記所定の禁止条件が満たされていると判定され、前記操舵トルクの大きさが操舵トルク禁止基準値以上および/または前記電動機電流の大きさが電動機電流禁止基準値以上の場合、直ちに前記電動機の駆動を禁止するための信号を出力する補助禁止判定手段を備えることを特徴とする。
この電動パワーステアリング装置によれば、補助禁止判定手段では、所定の禁止条件を満たしている時に、操舵トルクの大きさが操舵トルク禁止基準値以上および/または電動機電流の大きさが電動機電流禁止基準値以上の場合には、直ちに電動機の駆動を禁止する。すなわち、この電動パワーステアリング装置では、ダンピング制御やイナーシャ制御を考慮しても確実に異常と判定できる場合には、迅速に補助トルクによるアシストを禁止する。
なお、操舵トルク禁止基準値とは、操舵トルクと電動機電流との関係がドライバによる操舵に反するような補助トルクを発生する関係にある場合の操舵トルクであり、ダンピング制御やイナーシャ制御を考慮しても異常時でなければ絶対に検出されない操舵トルクである。また、電動機電流禁止基準値とは、操舵トルクと電動機電流との関係がドライバによる操舵に反するような補助トルクを発生する関係にある場合の電動機電流であり、ダンピング制御やイナーシャ制御を考慮しても異常時でなければ絶対に検出されない電動機電流である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明に係る電動パワーステアリング装置の実施の形態について説明する。
【0010】
本発明に係る電動パワーステアリング装置は、駆動禁止手段によって、正常アシストか異常アシストかを高精度に判定し、異常時には電動機の駆動を禁止する。そのために、駆動禁止手段では、操舵トルクの大きさおよび方向と電動機電流の大きさおよび方向とが所定の禁止条件であるにも拘わらず、操舵トルクの大きさが減少している場合には、正常アシストとみなす。特に、駆動禁止手段では、操舵トルクの大きさの減少の度合を厳密に判定するために、操舵トルクの大きさの時間的変化量が所定変化量以上の場合のみ、正常アシストとみなす。さらに、電動パワーステアリング装置は、駆動禁止手段によって、電動パワーステアリング装置における全ての制御を考慮しても確実に異常アシストと判定できる場合には、直ちに電動機の駆動を禁止する。
【0011】
本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置は、主CPUを備える制御手段と補助CPUを備える駆動禁止手段から構成される制御装置を有する。制御手段は電動パワーステアリング装置を統括制御し、駆動禁止手段は主CPUを含めた電動パワーステアリング装置の異常を監視する。また、本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置は、操舵フィーリングを向上させるために、制御手段ではイナーシャ制御およびダンピング制御を行い、目標電流信号を補正する。なお、本実施の形態では、操舵トルクセンサで検出される操舵トルク(操舵トルク信号)は右方向の操舵トルクをプラス値で表し、左方向の操舵トルクをマイナス値で表すので、操舵トルクの大きさの減少は、操舵トルク(操舵トルク信号)の絶対値が減少した場合である。
【0012】
まず、図1を参照して、電動パワーステアリング装置1の全体構成について説明する。
【0013】
電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール3から操舵輪W,Wに至るステアリング系Sに備えられ、手動操舵力発生手段2による操舵力をアシストする。そのために、電動パワーステアリング装置1は、制御装置12からの電動機制御信号VOに基づいて電動機駆動手段13で電動機電圧VMを発生し、この電動機電圧VMによって電動機8を駆動して補助トルク(補助操舵力)を発生させ、手動操舵力発生手段2による手動操舵力を軽減する。
なお、本実施の形態では、電動機8が特許請求の範囲に記載の電動機に相当し、電動機駆動手段13が特許請求の範囲に記載の電動機駆動手段に相当する。
【0014】
手動操舵力発生手段2は、ステアリングホイール3に一体に設けられたステアリング軸4に連結軸5を介してステアリング・ギアボックス6内に設けたラック&ピニオン機構7のピニオン7aが連結される。なお、連結軸5は、その両端に自在継ぎ手5a,5bを備える。ラック&ピニオン機構7は、ピニオン7aに噛み合うラック歯7bがラック軸9に形成され、ピニオン7aとラック歯7bの噛み合いにより、ピニオン7aの回転運動をラック軸9の横方向(車両幅方向)の往復運動とする。さらに、ラック軸9には、その両端にタイロッド10,10を介して、操舵輪としての左右の前輪W,Wが連結される。
【0015】
また、電動パワーステアリング装置1は、補助操舵力(補助トルク)を発生させるために、電動機8が、ラック軸9と同軸上に配設される。そして、電動パワーステアリング装置1は、電動機8の回転をラック軸9と同軸に設けられたボールねじ機構11を介して推力に変換し、この推力をラック軸9(ボールねじ軸11a)に作用させる。
【0016】
制御装置12は、車速センサVS、操舵トルクセンサTS、電動機電流検出手段14、電動機電圧検出手段15の各検出信号V,T,IMO,VMOが入力される。そして、制御装置12は、これらの検出信号V,T,IMO,VMOに基づいて電動機8に流す電動機電流IMの大きさおよび方向を決定し、電動機駆動手段13に電動機制御信号VOを出力する。さらに、制御装置12は、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOに基づいて、電動パワーステアリング装置1でのアシストが正常か異常かを判定し、異常時には電動機8の駆動を禁止する。なお、制御装置12は、各種演算や処理等を行うCPU、入力信号変換手段、信号発生手段、記憶手段等で構成される。ちなみに、制御装置12は、少なくとも2個のCPUを備え、主CPUが電動パワーステアリング装置1での主な制御を行い、補助CPUが電動パワーステアリング装置の異常判定を行う。
なお、本実施の形態では、操舵トルクセンサTSが特許請求の範囲に記載の操舵トルクセンサに相当し、電動機電流検出手段14が特許請求の範囲に記載の電動機電流検出手段に相当する。
【0017】
車速センサVSは、車速を単位時間当たりのパルス数として検出し、検出したパルス数に対応したアナログ電気信号を車速信号Vとして制御装置12に送信する。なお、車速センサVSは、電動パワーステアリング装置1の専用センサであってもよいし、他のシステムの車速センサを利用してもよい。
【0018】
操舵トルクセンサTSは、ステアリング・ギアボックス6内に配設され、ドライバによる手動の操舵トルクの大きさおよび方向を検出する。そして、操舵トルクセンサTSは、検出した操舵トルクに対応したアナログ電気信号を操舵トルク信号Tとして制御装置12に送信する。なお、操舵トルク信号Tは、大きさを示す操舵トルクとトルクの向きを示すトルク方向の情報を含み、トルク方向は操舵トルクのプラス値/マイナス値で表され、プラス値は操舵トルク方向が右方向であり、マイナス値は操舵トルク方向が左方向である。
【0019】
電動機電流検出手段14は、電動機8に対して直列に接続された抵抗またはホール素子等を備え、電動機8に実際に流れる電動機電流IMの大きさおよび方向を検出する。そして、電動機電流検出手段14は、電動機電流IMに対応した電動機電流信号IMOを制御装置12にフィードバック(負帰還)する。なお、電動機電流信号IMOは、大きさを示す電動機電流値と電動機電流の向き(補助アシストの方向)を示す電流方向の情報を含み、電流方向は電動機電流値のプラス値/マイナス値で表され、プラス値は補助アシスト方向が右方向であり、マイナス値は補助アシスト方向が左方向である。
【0020】
電動機電圧検出手段15は、電動機8の両端の電圧を各々検出し、電動機8に実際に印加されている電動機電圧VMの大きさおよび方向を検出する。そして、電動機電圧検出手段15は、電動機電圧VMに対応した電動機電圧信号VMOを制御装置12に送信する。
【0021】
電動機駆動手段13は、電動機制御信号VOに基づいて電動機電圧VMを電動機8に印加し、電動機8を駆動する。電動機駆動手段13は、例えば、図5に示すように4個のパワーFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)13a,13b,13c,13dのスイッチング素子からなるブリッジ回路および電源電圧(12v)13eで構成される。パワーFET13a,13b,13c,13dの各ゲートG1,G2,G3,G4に電動機制御信号VOが入力されると、電動機制御信号VOに基づいて電動機8に電動機電圧VMが印加される。すると、電動機8には電動機電流IMが流れ、電動機8は電動機電流IMに比例した補助トルクを発生する。なお、電動機駆動手段13の動作については後で詳細に説明する。
【0022】
次に、図2を参照して、制御装置12の構成について詳細に説明する。
前記したように、制御装置12は、少なくとも2個のCPUを備え、制御手段20が主CPUにより電動パワーステアリング装置1の主な制御を行い、駆動禁止手段30が補助CPUにより主CPUの暴走等による電動パワーステアリング装置1の異常時対応制御を行う。なお、制御装置12は、操舵トルクセンサTS、車速センサVS、電動機電流検出手段14および電動機電圧検出手段15等からの検出信号がアナログ信号として入力されるので、図示しないA/D変換手段によりアナログ信号をディジタル信号に変換し、各CPUに取り込んでいる。
なお、本実施の形態では、制御手段20が特許請求の範囲に記載の制御手段に相当し、駆動禁止手段30が特許請求の範囲に記載の駆動禁止手段に相当する。
【0023】
まず、制御手段20の構成について説明する。
制御手段20は、主に、電動機回転速度推定部21、目標電流信号設定部22、イナーシャ補正信号設定23、ダンピング補正信号設定部24、イナーシャ補正部25、ダンピング補正部26、偏差演算部27および駆動制御部28から構成される。制御手段20は、補助トルクを発生させるために、電動機8をフィードバック制御する。さらに、制御手段20は、操舵フィーリングを向上させるために、イナーシャ制御およびダンピング制御を行う。
【0024】
電動機回転速度推定部21は、電動機電流検出手段14からの電動機電流信号IMOと電動機電圧検出手段15からの電動機電圧信号VMOが入力され、ダンピング補正信号設定部24に電動機回転速度信号RSを出力する。電動機回転速度推定部21は、数1の式(1)に基づいて、電動機電流信号IMOと電動機電圧信号VMOから電動機回転速度を演算し、電動機回転速度信号RSとして出力する。なお、電動機抵抗と誘起電圧係数は定数である。
【0025】
【数1】
【0026】
目標電流信号設定部22は、操舵トルクセンサTSからの操舵トルク信号Tおよび車速センサVSからの車速信号Vが入力され、イナーシャ補正部25に目標電流信号IMSを出力する。目標電流信号設定部22は、予め実験値または設計値に基づいて設定した操舵トルク信号Tおよび車速信号Vと目標電流信号IMSとの対応するデータに基づいて、操舵トルク信号Tおよび車速信号Vをアドレスとして対応する目標電流信号IMSを読み出す。なお、目標電流信号IMSは、電動機8に流す目標の電動機電流を設定する上で基準となる電流の情報を含む信号である。ちなみに、目標電流信号IMSは、車速信号Vに対して、路面反力の大きい低速の場合には大きい値が対応づけられ、走行時の安定性を確保するために高速の場合には小さい値が対応づけられている。また、目標電流信号IMSは、操舵トルク信号Tに対して、操舵トルク信号Tが0近傍では0に対応づけられ、所定の操舵トルク信号T以上になると操舵トルク信号Tの増加に従って増加する値に対応づけられる。なお、目標電流信号IMSは、電動機8に流すことができる最大電流が規定されているので、最大目標電流以下に設定される。
【0027】
イナーシャ補正信号設定部23は、操舵トルクセンサTSからの操舵トルク信号Tおよび車速センサVSからの車速信号Vが入力され、イナーシャ補正部25にイナ−シャ補正信号ISを出力する。まず、イナーシャ補正信号設定部23は、操舵トルク信号Tを時間微分し、操舵トルクの時間微分値を算出する。そして、イナーシャ補正信号設定部23は、予め実験値または設計値に基づいて設定した操舵トルクの時間微分値および車速信号Vとイナーシャ補正信号ISとの対応するデータに基づいて、操舵トルクの時間微分値および車速信号Vをアドレスとして対応するイナーシャ補正信号ISを読み出す。ちなみに、イナーシャ補正信号ISは、車速信号Vに対して、低速の場合には大きい値が対応づけられ、高速の場合には小さい値が対応づけられている。また、イナーシャ補正信号ISは、操舵トルクの時間微分値に対して、ドライバによるステアリング操作に対しての応答性を向上させるために、この時間微分値が大きいほど大きな値が対応づけられる。
【0028】
ダンピング補正信号設定部24は、電動機回転速度推定部21からの電動機回転速度信号RSおよび車速センサVSからの車速信号Vが入力され、ダンピング補正部26にダンピング補正信号DSを出力する。ダンピング補正信号設定部24は、予め実験値または設計値に基づいて設定した電動機回転速度信号RSおよび車速信号Vとダンピング補正信号DSとの対応するデータに基づいて、電動機回転速度信号RSおよび車速信号Vをアドレスとして対応するダンピング補正信号DSを読み出す。ちなみに、ダンピング補正信号DSは、車速信号Vに対して、低速の場合には小さい値が対応づけられ、高速の場合には大きい値が対応づけられている。また、ダンピング補正信号DSは、電動機回転速度信号RSに対して、アシストの効き過ぎを減衰するために、電動機回転速度信号RSが大きいほど大きな値が対応づけられる。
【0029】
イナーシャ補正部25は、目標電流信号設定部22からの目標電流信号IMSおよびイナーシャ補正信号設定部23からのイナーシャ補正信号ISが入力され、ダンピング補正部26に補正目標電流信号IMS’を出力する。ちなみに、イナーシャ補正信号設定部23とイナーシャ補正部25によるイナーシャ制御では、電動機8の回転部分の慣性による応答性の低下を向上させ、操舵フィーリングを向上させる。つまり、電動機8は、正回転から逆回転または逆回転から正回転と回転方向を切り変える際、電動機電圧VMの印加する向きを変えても、電動機8の慣性によって直ぐには回転方向が切り変わらない。そこで、イナーシャ制御では、電動機8の回転方向の切り変わりがステアリングホイール3の回転方向の切り変わるタイミングに一致するように制御している。そのために、イナーシャ制御は、目標電流信号IMSを、電動機8の慣性を打消すためにイナーシャ補正信号IS分増加させる。そこで、イナーシャ補正部25は、目標電流信号IMSにイナーシャ補正信号ISを加算し、補正目標電流信号IMS’を算出する。
【0030】
ダンピング補正部26は、イナーシャ補正部25からの補正目標電流信号IMS’およびダンピング補正信号設定部24からのダンピング補正信号DSが入力され、偏差演算部27に補正目標電流信号IMS”を出力する。ちなみに、ダンピング補正信号設定部24とダンピング補正部26によるダンピング制御では、電動機8に大きな電動機電流IMが供給された時の電動機8の回転部分の慣性によるアシストの効き過ぎを減衰し、操舵フィーリングを向上させる。つまり、電動機8は、大きな電動機電流IMが供給されて回転速度が速くなると、電動機8の慣性によって直ぐには回転速度が低下しない。そこで、ダンピング制御では、電動機8の回転速度を抑制制御している。そのために、ダンピング制御は、目標電流信号IMSをダンピング補正信号DS分減衰させる。そこで、ダンピング補正部26は、補正目標電流信号IMS’からダンピング補正信号DSを減算し、補正目標電流信号IMS”を算出する。
【0031】
ちなみに、電動パワーステアリング装置1では、イナーシャ制御やダンピング制御を施すことによって、操舵トルク信号Tの方向と電動機電流信号IMSの方向とが異なる場合がある。例えば、ドライバがステアリングホイール3を右回転方向から左回転方向に切り返す場合(つまり、右方向の操舵トルクが減少し、続いて左方向の操舵トルクが増加する場合)において、まだ、右方向の操舵トルク信号Tが検出されているとする。そのとき、制御手段20では、右方向の操舵トルク信号Tに対応した目標電流信号IMSに、操舵トルクの微分値に基づくイナーシャ制御によって左方向の大きなイナーシャ補正信号ISが加算され、さらにダンピング制御によって右方向のダンピング補正信号DSが減算される。その結果、制御手段20では、右方向の操舵トルク信号Tであるにも拘わらず、操舵フィーリングを向上させるために、左方向の補正目標電流信号IMS”を設定する場合がある。そのため、電動機8には左方向の電動機電流IMが供給され、電動機電流検出手段14で左方向の電動機電流信号IMOが検出される。つまり、正常な制御にも拘わらず、右方向の操舵トルク信号Tの大きさが減少している時には、左方向の電動機電流信号IMOが検出される場合がある。ちなみに、このような場合は、図3に示す第1アシスト禁止領域Ma,Mbにおいて矢印に示す向きに操舵トルク信号Tが変化している場合であり、イナーシャ制御やダンピング制御を考慮すると正常な制御である。
【0032】
偏差演算部27は、ダンピング補正部26からの補正目標電流信号IMS”と電動機電流検出手段14からの電動機電流信号IMOが入力され、駆動制御部28に偏差信号ΔIMを出力する。偏差演算部27は、補正目標電流信号IMS”から電動機電流信号IMOを減算し、偏差信号ΔIM(=IMS”−IMO)を算出する。
【0033】
駆動制御部28は、偏差演算部27からの偏差信号ΔIMが入力され、電動機駆動手段13に電動機制御信号VOを出力する。そのために、駆動制御部28は、PIDコントローラ、PWM信号発生部および論理回路等を備える。まず、駆動制御部28は、偏差信号ΔIMにP(比例)、I(積分)およびD(微分)制御を行い、偏差を0に近づけるために電動機8に供給する電動機電流IMの向きと電流値とを示すPID(Proportional Integral Differential)制御信号を生成する。続いて、駆動制御部28は、このPID制御信号に基づいて、電動機8に供給する電動機電流IMの向きと電流値に対応したPWM信号VPWM、オン信号VON、オフ信号VOFを生成する。PWM信号VPWMは、電動機駆動手段13のパワーFET13aのゲートG1またはパワーFET13bのゲートG2に入力され、偏差信号ΔIMの大きさに応じてパワーFET13aまたはパワーFET13bをPWM駆動する信号である(図5参照)。なお、PWM信号VPWMがゲートG1かゲートG2のどちらのゲートに入力されるかは、偏差信号ΔIMの極性によって決まる。また、ゲートG1またはゲートG2のうちPWM信号VPWMが入力されないゲートにはオフ信号VOFが入力され、パワーFET13aまたはパワーFET13bはオフされる。そして、ゲートG1にPWM信号VPWMが入力される場合には、パワーFET13dのゲートG4にオン信号VONが入力され、パワーFET13dがオン駆動される(図5参照)。また、ゲートG1にオフ信号VOFが入力される場合には、ゲートG4にオフ信号VOFが入力され、パワーFET13dはオフされる。他方、ゲートG2にPWM信号VPWMが入力される場合には、パワーFET13cのゲートG3にオン信号VONが入力され、パワーFET13cがオン駆動される(図5参照)。また、ゲートG2にオフ信号VOFが入力される場合には、ゲートG3にオフ信号VOFが入力され、パワーFET13cはオフされる。なお、電動機制御信号VOは、電動機駆動手段13のゲートG1〜G4に出力するPWM信号VPWM、オン信号VON、オフ信号VOFで構成される。
【0034】
さらに、駆動制御部28は、駆動禁止手段30からの駆動禁止信号SSが入力され、この駆動禁止信号SSに従って電動機駆動手段13に電動機制御信号VOを出力する(図4参照)。そのために、駆動制御部28は、論理回路28aを備え、駆動禁止信号SSを論理判定する。そして、駆動禁止信号SSが電動機8によるアシストを許可する信号の場合、駆動制御部28は、電動機制御信号VOとして偏差信号ΔIMの大きさおよび極性に対応したPWM信号VPWM、オン信号VON、オフ信号VOFを各ゲートG1,G2,G3,G4に出力する(図4、図5参照)。他方、駆動禁止信号SSが電動機8によるアシストを禁止する信号の場合、駆動制御部28は、電動機制御信号VOとしてオフ信号VOFを全てのゲートG1、G2,G3,G4に出力する(図4、図5参照)。なお、論理回路28aの構成については、後で詳細に説明する。
【0035】
次に、駆動禁止手段30の構成について説明する。
駆動禁止手段30は、主に、禁止領域判定部31、計時部32、所定時間設定部33および禁止判定部34から構成される。駆動禁止手段30は、制御装置12の主CPUの暴走等によって電動機8が異常駆動されることを禁止するために、操舵トルク信号Tを基準にして電動機電流信号IMOを監視する。そして、駆動禁止手段30は、異常と判定した場合には、電動機8の駆動を禁止するための信号を駆動制御部28に送信し、電動機8によるアシストを禁止する。
【0036】
禁止領域判定部31は、操舵トルクセンサTSからの操舵トルク信号Tと電動機電流検出手段14からの電動機電流信号IMOが入力され、計時部32に第1禁止領域判定信号PS1および禁止判定部34に第2禁止領域判定信号PS2を出力する。そのために、禁止領域判定部31は、予め実験値または設計値に基づいて設定した操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOの関係を示すマップMを用い、操舵トルク信号Tの大きさおよび方向と電動機電流信号IMOの大きさおよび方向との関係がアシスト禁止領域Ma,Mb,Mc,Md内にあるか否かを判定する(図3参照)。なお、電動機電流信号IMO(電動機電流IM)の大きさおよび方向は、補助トルクの大きさおよび方向に相当する。したがって、操舵トルク信号Tの大きさおよび方向と電動機電流信号IMOの大きさおよび方向との関係を判定することは、操舵トルクの大きさおよび方向と補助トルクの大きさおよび方向との関係を判定することに相当する。
【0037】
禁止領域判定部31で使用されるマップは、図3に示すマップMである。マップMは、横軸が操舵トルクセンサTSで検出した操舵トルク信号Tであり、縦軸が電動機電流検出手段14で検出した電動機電流信号IMOである。操舵トルク信号Tのプラス領域(横軸の原点(0)の右側領域)はステアリングホイール3に右回転方向の操舵トルクが入力された場合に対応し、操舵トルク信号Tのマイナス領域(横軸の原点(0)の左側領域)はステアリングホイール3に左回転方向の操舵トルクが入力された場合に対応する。また、電動機電流信号IMOのプラス領域(縦軸の原点(0)の上側領域)は電動機8によって右回転方向の補助トルクを発生する場合に対応し、電動機電流信号IMOのマイナス領域(縦軸の原点(0)の下側領域)は電動機8が左回転方向の補助トルクを発生する場合に対応する。
【0038】
そして、マップMの第1アシスト禁止領域Ma,Mbは、操舵トルク信号Tに対して望ましくない電動機電流信号IMOの領域(つまり、電動機8によるアシストを禁止する領域)であるが、ダンピング制御やイナーシャ制御を考慮すると実際の走行中には入る可能性のある領域である。そこで、駆動禁止手段30では、操舵トルク信号Tの大きさおよび方向と電動機電流信号IMOの大きさおよび方向との関係が第1アシスト禁止領域Ma,Mb内に入っている時間が積算して100mS以上となると、異常と判定する。なお、第1アシスト禁止領域Ma,Mb内に入っている場合でも、操舵トルク信号Tの絶対値が減少している場合(図3の矢印方向に操舵トルク信号Tが変化する場合)には、時間を積算しない。また、マップMの第2アシスト禁止領域Mc,Mdは、操舵トルク信号Tに対して望ましくない電動機電流信号IMOの領域(つまり、電動機8によるアシストを禁止する領域)であり、ダンピング制御やイナーシャ制御を考慮しても絶対に入る可能性のない領域である。より具体的には、第2アシスト禁止領域Mc,Mdは、アシストを禁止する領域の中でも、操舵トルク信号Tの絶対値がTb以上および/または電動機電流信号IMOの絶対値がIc以上の領域である。そこで、駆動禁止手段30では、操舵トルク信号Tの大きさおよび方向と電動機電流信号IMOの大きさおよび方向との関係が第2アシスト禁止領域Mc,Md内に入れば、直ちに異常と判定する。なお、操舵トルク信号Tの絶対値Tbと電動機電流信号IMOの絶対値Icは、電動機8によるアシストを禁止する領域の中でも電動パワーステアリング装置1が正常の場合には絶対に検出されない値であり、電動機8の特性等を考慮して設定される。
なお、本実施の形態では、アシスト禁止領域Ma,Mb,Mc,Mdが特許請求の範囲に記載の所定の禁止条件に相当し、操舵トルク信号Tの絶対値Tbが特許請求の範囲に記載の操舵トルク禁止基準値に相当し、電動機電流信号IMOの絶対値Icが特許請求の範囲に記載の電動機電流禁止基準値に相当する。
【0039】
なお、マップMでは操舵トルク信号Tが0とTa(または−Ta)との間にも、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOとの方向が同一にも拘わらず、第1アシスト禁止領域Ma(またはMb)と第2アシスト禁止領域Mc(またはMd)を設け、操舵トルク信号Tが0近傍では電動機8の駆動を禁止する。というのは、操舵トルクが0近傍では、操舵トルクセンサTSのセンタ誤差等を考慮し、目標電流信号IMSを0に設定して不感帯としているからである。また、操舵トルクが0近傍の時に、制御手段20等の異常による過大な電動機電流IMが出力されるのを防止し、異常な補助トルクによるステアリングホイール3の回転を小さく抑えるためである。
【0040】
また、マップMでは電動機電流信号IMOが0とIb(または−Ib)または0とIa(または−Ia)との間には、操舵トルク信号Tの方向と電動機電流信号IMOの方向とが異なっているにも拘わらず、アシストを禁止する領域を設けず、電動機電流信号IMOが0近傍では電動機8の駆動を禁止しない。というのは、電動機電流IMが0近傍では、電動機電流検出手段14の検出誤差等を考慮して、この誤差の影響による電動機8の駆動が禁止される不具合を防止する。ちなみに、操舵トルク信号がTb(または−Tb)以上になると電動機8の駆動を禁止しない領域を小さく(Ia,−Iaに)設定しているが、操舵トルクが大きいほど、操舵トルクとは逆方向の電動機電流IMが流れる可能性が低いからである。
【0041】
そして、禁止領域判定部31は、マップMを検索し、操舵トルク信号TSと電動機電流信号IMOとの関係がマップMの第1アシスト禁止領域Ma,Mbのどちらかの領域にある場合には第1禁止領域判定信号PS1として論理レベル0を設定し、第1アシスト禁止領域Ma,Mb外の場合には第1禁止領域判定信号PS1として論理レベル1を設定する。さらに、禁止領域判定部31は、第2アシスト禁止領域Mc,Mdのどちらかの領域にある場合には第2禁止領域判定信号PS2として論理レベル0を設定し、第2アシスト禁止領域Mc,Md外の場合には第2禁止領域判定信号PS2として論理レベル1を設定する。
なお、本実施の形態では、禁止領域判定部31が特許請求の範囲に記載の禁止条件判定手段に相当する。
【0042】
計時部32は、禁止領域判定部31からの第1禁止領域判定信号PS1および操舵トルクセンサTSからの操舵トルク信号Tが入力され、計時信号CSを禁止判定部34に出力する。まず、計時部32は、第1禁止領域判定信号PS1の論理レベルが0の場合、操舵トルク信号Tが入力される毎に、今回入力された操舵トルク信号Tの絶対値から前回入力された操舵トルク信号Tの絶対値を減算する。そして、計時部32は、この減算値を操舵トルク信号Tの今回と前回との入力時間間隔で除算する。なお、操舵トルク信号Tが一定時間間隔毎に入力される場合には、この一定時間で除算する。さらに、計時部32は、この除算値がマイナス値でない場合(つまり、操舵トルク信号Tの大きさが減少していない場合)、時間を積算し、計時信号CSに設定する。他方、計時部32は、この除算値がマイナス値の場合(つまり、操舵トルク信号Tの大きさが減少している場合)、除算値の絶対値が減少基準値以上か否かを判定する。なお、減少基準値は、操舵トルク信号Tの大きさが確実に減少していること(図3の矢印方向)を示す操舵トルク信号Tの大きさの時間的変化における減少量であり、ステアリング系Sの設定等を考慮して設定される。そして、除算値が減少基準値以上の場合(つまり、操舵トルク信号Tの大きさが確実に減少していると判定でき、ドライバによるステアリング操作において操舵方向に対する手動での操舵力が弱められている場合)、計時部32は、時間の積算を停止する。他方、除算値が所定変化量未満の場合、(つまり、操舵トルク信号Tの大きさが確実に減少しているか否かを判定できず、ドライバによるステアリング操作において操舵方向に対する手動での操舵力が弱められられているか否か判らない場合)、計時部32は、時間を積算し、計時信号CSに設定する。なお、計時部32は、第1禁止領域判定信号PS1の論理レベルが0から1に変わると、積算した時間をリセットする。
なお、本実施の形態では、計時部32が特許請求の範囲に記載の計時手段に相当し、減少基準値が特許請求の範囲に記載の操舵トルクの大きさの時間的変化量の所定変化量に相当する。
【0043】
つまり、操舵トルク信号Tの大きさおよび方向と電動機電流信号IMOの大きさおよび方向との関係が第1アシスト禁止領域Ma,Mb内にある場合でも(図3参照)、操舵トルク信号Tの大きさが確実に減少している時(図3の矢印の方向に操舵トルク信号Tが変化している時)は、イナーシャ制御やダンピング制御を考慮すると正常な制御である。すなわち、ステアリング操作の切り返し時には、電動機8の慣性による逆回転方向のアシストの遅れに対処するために、ステアリング操作の回転方向とは逆回転方向に補助トルクを発生するための電動機電流IMを電動機8に供給する場合がある。そのため、操舵トルク信号Tの大きさが減少している場合には、操舵トルク信号Tの方向と電動機電流信号IMOの方向とが異なる場合がある。そこで、このような場合には、計時部32では、電動パワーステアリング装置1では正常な制御を行っているとみなし、電動機8の駆動を禁止するための時間の積算を停止する。したがって、電動パワーステアリング装置1では、イナーシャ制御やダンピング制御を行っている場合には、電動機8の駆動禁止を防止することができる。
【0044】
所定時間設定部33は、第1アシスト禁止領域Ma,Mbの許容時間T1として100mSを禁止判定部34に出力する。なお、許容時間T1は、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOとの関係がマップMの第1アシスト禁止領域Ma,Mbのどちらかの領域にあるが、実際の操舵中には満たされる可能のある領域であるため、電動機8によるアシストを許容する時間である。
なお、本実施の形態では、許容時間T1が特許請求の範囲に記載の所定時間に相当する。
【0045】
禁止判定部34は、禁止領域判定部31からの第2禁止領域判定信号PS2、計時部32からの計時信号CSおよび所定時間設定部33からの許容時間T1が入力され、駆動制御部28に駆動禁止信号SSを出力する。まず、禁止判定部34は、第2禁止領域判定信号PS2の論理レベルが0の場合、駆動禁止信号SSとして論理レベル1を設定する。そして、第2禁止領域判定信号PS2の論理レベルが1の場合、禁止判定部34は、計時信号CSと許容時間T1を比較する。そして、計時信号CSが許容時間T1以上となると、禁止判定部34は、駆動禁止信号SSとして論理レベル1を設定する。他方、計時信号CSが許容時間T1未満の場合、禁止判定部34は、駆動禁止信号SSとして論理レベル0を設定する。すなわち、第2禁止領域判定信号PS2の論理レベルが0の場合および計時信号CSが許容時間T1以上となった場合、禁止判定部34は、制御手段20等の電動パワーステアリング装置1のシステムに異常がある判定し、電動機8によるアシストを禁止する。なお、駆動禁止信号SSの論理レベルの設定は、前記設定に限定されず、駆動制御部28の論理回路28a(図4参照)の構成等に対応して設定する。
なお、本実施の形態では、禁止判定部34が特許請求の範囲に記載の禁止判定手段に相当する。また、本実施の形態では、禁止領域判定部31と禁止判定部34が特許請求の範囲に記載の補助禁止判定手段に相当する。
【0046】
つまり、駆動禁止手段30は、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOとの関係がマップMの第1アシスト禁止領域Ma,Mbのどちらかの領域にあり、操舵トルク信号Tの大きさが確実に減少していない場合の積算時間が許容時間T1(100mS)以上となると、電動パワーステアリング装置1が異常であると判定する。特に、駆動禁止手段30は、イナ−シャ制御やダンピング制御によって第1アシスト禁止領域Ma,Mbに入っている場合には積算時間から排除しているので、イナ−シャ制御やダンピング制御による影響で電動機8の駆動が禁止されることはない。さらに、駆動禁止手段30は、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOとの関係がマップMの第2アシスト禁止領域Mc,Mdのどちらかの領域にある場合には、直ちに、電動パワーステアリング装置1が異常であると判定する。
【0047】
ここで、制御装置12による電動パワーステアリング装置1の制御について説明する前に、駆動制御部28の論理回路28a(図4参照)および電動機駆動手段13の電子回路(図5参照)について説明する。
【0048】
まず、図4を参照して、駆動制御部28の論理回路28aの構成について説明する。
論理回路28aは、NOT回路(反転手段)とAND回路(論理積演算手段)からなる論理回路28b,28c,28d,28eを備える。各NOT回路28f,28g,28h、28iは、駆動禁止手段30の禁止判定部34からの駆動禁止信号SSが入力され、AND回路28j,28k,28l,28mに駆動禁止信号SSの論理レベルを各々反転出力する。各AND回路28j,28k,28l,28mは、各NOT回路28f,28g,28h、28iの出力とPWM信号VPWM、オン信号VONまたはオフ信号VOFが入力され、パワーFET13a,13b,13c,13dの各ゲートG1,G2,G3,G4に電動機制御信号VOを各々出力する。各AND回路28j,28k,28l,28mは、NOT回路28f,28g,28h、28iの出力が0の場合(すなわち、駆動禁止信号SSの論理レベル1で電動機8の駆動を禁止する場合)には、論理レベル0(オフ信号VOF)を各々出力する。他方、各AND回路28j,28k,28l,28mは、NOT回路28f,28g,28h、28iの出力が1の場合(すなわち、駆動禁止信号SSの論理レベル0で電動機8の駆動を禁止しない場合)には、入力されたPWM信号VPWM、オン信号VONまたはオフ信号VOFをそのまま出力する。なお、電動機制御信号VOは、AND回路28j,28k,28l,28mから出力されるPWM信号VPWM、オン信号VONおよびオフ信号VOFであり、PWM信号VPWMのデューティ比で電動機電圧VMを決定し、オン信号VONとオフ信号VOFで電動機8の回転方向を決定する。
【0049】
次に、図5を参照して、電動機駆動手段13の回路の構成について説明する。
電動機駆動手段13は、4個のパワーFET13a,13b,13c,13dでブリッジ回路が構成され、電源電圧13eから12Vの電圧が供給される。さらに、電動機駆動手段13は、電動機8がパワーFET13aとパワーFET13dの間に直列にかつパワーFET13bとパワーFET13cの間に直列に接続される。パワーFET13a,13bは、各ゲートG1,G2にPWM信号VPWMまたはオフ信号VOFが入力され、PWM信号VPWMが入力されて論理レベル1の時にオンする。パワーFET13c,13dは、各ゲートG3,G4にオン信号VONまたはオフ信号VOFが入力され、オン信号VONが入力された時にオンする。そして、電動機駆動手段13では、パワーFET13aとパワーFET13dによって電動機8を正回転方向(発生する補助トルクが右方向)にPWM駆動し、パワーFET13bとパワーFET13cによって電動機8を逆回転方向(発生する補助トルクが左方向)にPWM駆動する。なお、電動機8に印加される電動機電圧VMは、PWM信号VPWMのデューティ比によって決定される。そして、電動機8に流れる電動機電流IMは、電動機電圧VMに対応する。例えば、PWM信号VPWMのデューティ比が7(論理レベル1):3(論理レベル0)の場合、12V×(7/10)=8.4Vが電動機電圧VMとなり、電動機8に平均して8.4Vが印加されていることになる。
【0050】
それでは、図1乃至図5を参照して、制御装置12による電動パワーステアリング装置1での制御について説明する。ここでは、ドライバが右回転方向から左回転方向にステアリングホイール3を切り返し操作する場合の制御と電動パワーステアリング装置1のシステムに異常がある場合の制御について説明する。
【0051】
まず、切り返し操作の場合について説明する。
ドライバによるステアリングホイール3への右回転方向の操舵力が弱められ、右方向の操舵トルク信号Tが急激に減少する。このとき、制御手段20では、目標電流信号設定部22で操舵トルク信号Tと車速信号Vに基づいて目標電流信号IMSを設定し、イナーシャ補正信号設定部23で操舵トルク信号Tと車速信号Vに基づいてイナ−シャ補正信号ISを設定し、ダンピング補正信号設定部24で電動機回転速度信号RSと車速信号Vに基づいてダンピング補正信号DSを設定する。さらに、制御手段20では、目標電流信号IMS、イナ−シャ補正信号ISおよびダンピング補正信号DSから補正目標電流信号IMS”を演算する。なお、右方向の操舵トルク信号Tが減少し始めると、右方向の補正目標電流信号IMS”が減少し始める。そして、制御手段20では、偏差演算部27で補正目標電流信号IMS”と電動機電流信号IMOから偏差信号ΔIMを演算する。さらに、制御手段20では、駆動制御部28で正回転方向の電動機電流IMを減少させるための電動機制御信号VOを生成し、電動機駆動手段13に電動機制御信号VOを出力する。すると、電動機駆動手段13では電動機制御信号VOに対応して電動機8を正回転方向(発生する補助トルクが右方向)にPWM駆動するが、正回転方向(発生する補助トルクが右方向)の電動機電流IMは徐々に減少している。そのため、電動パワーステアリング装置1では、電動機8の正回転方向の駆動力が弱まり、ステアリング系Sに付加される右方向の補助トルクが小さくなる。
【0052】
このとき、電動機電流検出手段14では、右方向の電動機電流IMを検出し、プラス値の電動機電流信号IMOを出力する。したがって、操舵トルク信号Tの方向と電動機電流信号IMOの方向とが共に右方向となるため、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOとの関係がマップMでは第1象限となる。そのため、駆動禁止手段30では、禁止領域判定部31で第1禁止領域判定信号PS1として論理レベル1および第2禁止領域判定信号PS2として論理レベル1を設定する。そして、駆動禁止手段30では、禁止判定部34で駆動禁止信号SSとして論理レベル0を設定し、駆動制御部28の論理回路28aに出力する。その結果、駆動制御部28では、論理回路28aに入力されたPWM信号VPWM、オン信号VONまたはオフ信号VOFをそのまま出力する。
【0053】
やがて、イナーシャ補正信号IS等の影響により、操舵トルク信号Tが右方向にも拘わらず、左方向の補正目標電流信号IMS”が演算される。すると、制御手段20では、駆動制御部28で逆回転方向の電動機電流IMを増加させるための電動機制御信号VOを生成し、電動機駆動手段13に電動機制御信号VOを出力する。そして、電動機駆動手段13では電動機制御信号VOに対応して電動機8を逆回転方向(発生する補助トルクが左方向)にPWM駆動し、逆回転方向(発生する補助トルクが左方向)の電動機電流IMが増加し始める。
【0054】
このとき、電動機電流検出手段14では、左方向の電動機電流IMを検出し、マイナス値の電動機電流信号IMOを出力する。そのため、操舵トルク信号Tの方向と電動機電流信号IMOの方向とが一致しなくなり、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOとの関係がマップMでは第1アシスト禁止領域Mbとなる。したがって、駆動禁止手段30では、禁止領域判定部31で第1禁止領域判定信号PS1として論理レベル0および第2禁止領域判定信号PS2として論理レベル1を設定する。しかし、右方向の操舵トルク信号Tの大きさが確実に減少しているので、駆動禁止手段30では、第1禁止領域判定信号PS1の論理レベルが0であるが、計時部32で時間を積算していない。つまり、駆動禁止手段30では、電動パワーステアリング装置1での制御としては正常とみなしている。そのため、駆動禁止手段30では、禁止判定部34で駆動禁止信号SSとして論理レベル0を設定し、駆動制御部28の論理回路28aに出力する。その結果、駆動制御部28では、論理回路28aに入力されたPWM信号VPWM、オン信号VONまたはオフ信号VOFをそのまま出力する。
【0055】
その後、ドライバによるステアリングホイール3への右回転方向の操舵力から左回転方向の操舵力に移り、左方向の操舵トルク信号Tが増加する。制御手段20では、駆動制御部28で逆回転方向の電動機電流IMを増加させるための電動機制御信号VOを生成し、電動機駆動手段13に電動機制御信号VOを出力する。そして、電動機駆動手段13では電動機制御信号VOに対応して電動機8を逆回転方向(発生する補助トルクが左方向)にPWM駆動し、逆回転方向(発生する補助トルクが左方向)の電動機電流IMが増加していく。すると、電動パワーステアリング装置1では、電動機8の逆回転方向の駆動力が強まり、ステアリング系Sに付加される左方向の補助トルクが大きくなる。
【0056】
このとき、電動機電流検出手段14では、左方向の電動機電流IMを検出し、マイナス値の電動機電流信号IMOを出力する。そのため、操舵トルク信号Tの方向と電動機電流信号IMOの方向とが共に左方向となるため、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOとの関係がマップMでは第3象限となる。したがって、駆動禁止手段30では、禁止領域判定部31で第1禁止領域判定信号PS1として論理レベル1および第2禁止領域判定信号PS2として論理レベル1を設定する。そして、駆動禁止手段30では、禁止判定部34で駆動禁止信号SSとして論理レベル0を設定し、駆動制御部28の論理回路28aに出力する。そのため、駆動制御部28では、論理回路28aに入力されたPWM信号VPWM、オン信号VONまたはオフ信号VOFをそのまま出力する。
【0057】
次に、電動パワーステアリング装置1のシステムに異常がある場合について説明する。
なお、電動パワーステアリング装置1のシステムの異常は、制御手段20の主CPUの暴走等により正常な電動機制御信号VOが生成されない場合、電動機駆動手段13のパワーFET13a〜13dがオン故障した場合、電動機電流検出手段14が故障した場合等の様々な場合を対象とする。このような場合、ドライバによるステアリング操作によって操舵トルクが変化しても、操舵トルク信号Tに対応して正常に電動機8に流れる電流が変化しない。
【0058】
そのため、操舵トルク信号Tの方向と電動機電流信号IMOの方向とが異なり、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOとの関係がマップMではアシスト禁止領域Ma,Mb,Mc,Mdのいずれかの領域内に入る。すると、駆動禁止手段30では、禁止領域判定部31で第1禁止領域判定信号PS1として論理レベル0または第2禁止領域判定信号PS2として論理レベル0を設定する。第1禁止領域判定信号PS1が論理レベル0の場合、駆動禁止手段30では、計時部32で操舵トルク信号Tの大きさが減少していない時には時間を積算する。なお、電動パワーステアリング装置1のシステムに異常があるので、操舵トルク信号Tと電動機電流信号IMOとの関係が第1アシスト禁止領域Ma,Mb内にある場合でも、操舵トルク信号Tの大きさが一定であったり増加したりする。そのため、積算時間が許容時間T1以上になり、駆動禁止手段30では、禁止判定部34で駆動禁止信号SSとして論理レベル1を設定し、駆動制御部28の論理回路28aに出力する。他方、第2禁止領域判定信号PS2が論理レベル0の場合、駆動禁止手段30では、禁止判定部34で直ちに駆動禁止信号SSとして論理レベル1を設定し、駆動制御部28の論理回路28aに出力する。
【0059】
この場合、制御手段20では、論理回路28aの全NOT回路28f〜28iに論理レベル1が入力され、全NOT回路28f〜28iから論理レベル0を出力する。さらに、制御手段20では、論理回路28aの全AND回路28j〜28mに論理レベル0が入力されるため、全AND回路28j〜28mから論理レベル0(すなわち、オフ信号VOF)を各ゲートG1,G2,G3,G4に出力する。すると、電動機駆動手段13では、全パワーFET13a〜13dがオフし、電動機8に電動機電圧VMを印加しない。したがって、電動パワーステアリング装置1では、電動機8に電動機電流IMが流れないため、電動機8が回転駆動されず、補助トルクが発生しない。
【0060】
この電動パワーステアリング装置1によれば、駆動禁止手段30によって電動パワーステアリング装置1によるアシストが正常か異常かを判定し、異常の場合には電動機8の駆動を禁止して補助トルクを発生しない。特に、駆動禁止手段30では、マップMの第1アシスト禁止領域Ma,Mbにおける操舵トルク信号Tの大きさの時間的変化に着目し、電動パワーステアリング装置1での制御が正常か否かを判断する。そのため、電動パワーステアリング装置1は、イナーシャ制御やダンピング制御を確実に正常な制御と判定し、異常判定精度を向上させている。さらに、電動パワーステアリング装置1は、マップMに第2アシスト禁止領域Mc,Mdを設け、電動パワーステアリング装置1での全ての制御を考慮しても異常と判定できる場合には直ちに電動機8の駆動を禁止して補助トルクを発生しない。
【0061】
以上、本発明は、前記の実施の形態に限定されることなく、様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では駆動禁止手段30から駆動制御部28に駆動禁止信号SSを出力する構成としたが、本発明に係る電動パワーステアリング装置では駆動禁止手段から電動機駆動手段に駆動禁止信号を出力する等の電動機の駆動を禁止することができる構成であればよい。
また、本実施の形態では計時部32において操舵トルク信号Tの絶対値が減少する場合かつ操舵トルク信号Tの絶対値の時間的変化量が減少基準値以上である場合には時間を積算しなかったが、本発明に係る電動パワーステアリング装置では操舵トルクの絶対値が減少する場合のみ時間を積算しないように構成してもよい。
また、本発明に係る電動パワーステアリング装置では制御手段および/または駆動禁止手段を、アナログ回路で構成してもよい。
また、本実施の形態では許容時間(所定時間)T1を100mSに設定したが、本発明に係る電動パワーステアリング装置の構成に応じて所定時間を適宜設定してよい。特に、本発明に係る電動パワーステアリング装置は、イナーシャ制御やダンピング制御を確実に正常な制御と判定することができるので、所定時間を短く設定することが可能である。
【0062】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係る電動パワーステアリング装置は、操舵トルクと電動機電流との関係が所定の禁止条件を満たしている場合でも操作トルクの大きさが減少している時には正常な制御とみなし、異常判定の精度を向上させる。そのため、電動パワーステアリング装置は、ダンピング制御および/またはイナーシャ制御による正常制御時には電動機の駆動禁止を防止し、異常時には確実に電動機の駆動を禁止することができる。
【0063】
本発明の請求項2に係る電動パワーステアリング装置は、特に、操舵トルクの大きさが確実に減少していると判定できる場合のみ正常なアシストとみなし、異常判定精度を一層向上させる。
【0064】
本発明の請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、ダンピング制御および/またはイナーシャ制御を考慮しても確実に異常と判定できる場合には、直ちに電動機の駆動を禁止し、異常時に迅速に対応する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
【図2】図1の電動パワーステアリング装置の制御装置のブロック構成図である。
【図3】図2の制御装置の禁止領域判定部での電動機によるアシストを禁止する領域を検索するマップである。
【図4】図2の制御装置の駆動制御部内の論理回路図である。
【図5】図1の電動パワーステアリング装置の電動機駆動手段の回路図である。
【符号の説明】
1・・・電動パワーステアリング装置
8・・・電動機
12・・・制御装置
13・・・電動機駆動手段
14・・・電動機電流検出手段
20・・・制御手段
28・・・駆動制御部
28a・・・論理回路
30・・・駆動禁止手段
31・・・禁止領域判定部(禁止条件判定手段、補助禁止判定手段)
32・・・計時部(計時手段)
33・・・所定時間設定部
34・・・禁止判定部(禁止判定手段、補助禁止判定手段)
S・・・ステアリング系
TS・・・操舵トルクセンサ
Claims (3)
- ステアリング系に補助トルクを付加する電動機と、前記電動機に流れる電動機電流の大きさおよび方向を検出する電動機電流検出手段と、前記ステアリング系に作用する操舵トルクの大きさおよび方向を検出する操舵トルクセンサと、前記操舵トルクセンサからの出力に基づいて前記電動機を制御する制御手段と、前記制御手段からの電動機制御信号に基づいて前記電動機を駆動する電動機駆動手段と、前記操舵トルクセンサで検出される操舵トルクの大きさおよび方向と前記電動機電流検出手段で検出される電動機電流の大きさおよび方向とに基づいて前記電動機の駆動を禁止する駆動禁止手段とを備える電動パワーステアリング装置であって、
前記駆動禁止手段は、
前記操舵トルクの大きさおよび方向と前記電動機電流の大きさおよび方向とが所定の禁止条件を満たすか否かを判定する禁止条件判定手段と、
前記操舵トルクの大きさが減少する場合を除いて、前記禁止条件判定手段からの出力に基づいて前記所定の禁止条件を満たしている時間を積算する計時手段と、
前記計時手段からの積算時間が所定時間以上となった場合に、前記電動機の駆動を禁止するための信号を出力する禁止判定手段と、
を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記計時手段は、前記操舵トルクの大きさが減少する場合かつ前記操舵トルクの大きさの時間的変化量が所定変化量以上である場合を除いて、前記禁止条件判定手段からの出力に基づいて前記所定の禁止条件を満たしている時間を積算することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記駆動禁止手段は、前記禁止条件判定手段において前記所定の禁止条件が満たされていると判定され、前記操舵トルクの大きさが操舵トルク禁止基準値以上および/または前記電動機電流の大きさが電動機電流禁止基準値以上の場合、直ちに前記電動機の駆動を禁止するための信号を出力する補助禁止判定手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
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