JP2011057029A - 電動パワーステアリング装置、電動パワーステアリング装置の制御方法およびプログラム - Google Patents

電動パワーステアリング装置、電動パワーステアリング装置の制御方法およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】正常な制御に基づくアシストトルクであるにも関わらず、異常が生じたと誤って認識して電動モータへ供給する電流を抑制することを防止する技術を提供する。
【解決手段】ステアリングホイールに操舵補助力を与える電動モータと、電動モータに電流を供給することにより電動モータを駆動するモータ駆動部32と、ステアリングホイールの操舵トルクと電動モータに実際に供給された実電流との関係が予め定められた関係である場合にモータ駆動部32により電動モータへ供給する電流を抑制するべくモータ駆動部32に対して出力禁止信号を出力する出力禁止判定部341と、実電流の変化に応じて予め定められた関係を設定する指標設定部342とを備える。
【選択図】図5

Description

本発明は、電動パワーステアリング装置、電動パワーステアリング装置の制御方法およびプログラムに関する。
近年、車両のステアリング系に電動モータを備え、電動モータの動力にてドライバの操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置が提案されている。
このような電動パワーステアリング装置においては、ステアリングホイールから入力される操舵トルクの大きさと方向に基づいて、例えば運転者の操舵意志に反するようなアシストトルクが電動モータから出力されることを防止するための機能を備えることが提案されている。すなわち、操舵トルクと電動モータに供給される実電流とに応じた2次元座標上等において電動モータの運転を禁止する出力禁止領域を設定し、例えば電動モータの実電流の検出値がこの出力禁止領域内に属する継続時間が予め定められた時間以上となった場合には、電動モータへ供給する電流をゼロに設定する(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−190861号公報
運転者の操舵意志に反するアシストトルクが電動モータから出力されることを防止する機能を設ける際には、装置異常時の挙動を小さくするために、操舵トルクが小さい状態において順方向アシスト電流が大きい場合は異常と判定し、電動モータへ供給する電流を抑制するように設定にするのが望ましい。他方、電動モータに供給する電流を制御するにあたって、ステアリングホイールの収斂性を高めるようなセッティングをする場合、操舵トルクが小さい状態でも電動モータに電流を供給するようにセッティングをすることが好ましい。それゆえ、電動モータから出力されるアシストトルクが、正常な制御に基づくアシストトルクであるにも関わらず、運転者の操舵意志に反するアシストトルクであると誤って判定することを抑制することが重要となる。
かかる目的のもと、本発明は、ステアリングホイールに操舵補助力を与える電動モータと、前記電動モータに電流を供給することにより当該電動モータを駆動する駆動手段と、前記ステアリングホイールの操舵トルクと前記電動モータに実際に供給された実電流との関係が予め定められた関係である場合に前記駆動手段により前記電動モータへ供給する電流を抑制する抑制手段と、前記実電流の変化に応じて前記予め定められた関係を設定する設定手段と、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
ここで、前記抑制手段は、前記操舵トルクおよび前記実電流の範囲が、当該操舵トルクの範囲および当該実電流の範囲とから形成される予め定められた領域内に属する時間が予め定められた規定時間継続したときに、前記電動モータへ供給する電流を抑制することが好適である。
また、前記設定手段は、予め定められた時間当たりの電流変化量が予め定められた値以上であり、かつ電流が小さくなるように変化する規定の電流変化である場合には、前記予め定められた関係を、当該規定の電流変化ではない場合よりも前記規定時間が長くなるように設定することが好適である。
また、前記規定時間は、前記実電流が小さいほど長いことが好適である。
他の観点から捉えると、本発明は、前記ステアリングホイールの操舵トルクを認識し、ステアリングホイールに操舵補助力を与える電動モータに実際に供給された実電流を認識し、認識した操舵トルクと実電流との関係が予め定められた関係である場合に、前記電動モータに電流を供給することにより当該電動モータを駆動する駆動手段により当該電動モータへ供給される電流を抑制し、認識した実電流の変化に応じて前記予め定められた関係を設定することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御方法である。
また、他の観点から捉えると、本発明は、コンピュータに、ステアリングホイールの操舵トルクを認識する機能と、前記ステアリングホイールに操舵補助力を与える電動モータに実際に供給された実電流を認識する機能と、前記操舵トルクを認識する機能が認識した操舵トルクと前記実電流を認識する機能が認識した実電流との関係が予め定められた関係である場合に、前記電動モータに電流を供給することにより当該電動モータを駆動する駆動手段により前記電動モータへ供給される電流を抑制する機能と、前記実電流を認識する機能が認識した実電流の変化に応じて前記予め定められた関係を設定する機能と、を実現させるためのプログラムである。
本発明によれば、正常な制御に基づくアシストトルクであるにも関わらず、異常が生じたと誤って認識して電動モータへ供給する電流を抑制することを防止することができる。
実施の形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。 電動パワーステアリング装置の制御装置の概略構成図である。 目標電流算出部の概略構成図である。 モータ駆動制御部、モータ駆動部およびモータ電流検出部の概略構成図である。 禁止信号出力部の概略構成図である。 指標設定部が設定する指標を例示する図である。 指標設定部が行う指標設定処理の手順を示すフローチャートである。 出力禁止判定部が行う出力禁止判定処理の手順を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成を示す図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、乗り物の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては自動車に適用した構成を例示している。
ステアリング装置100は、ドライバが操作する車輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備えている。ステアリングシャフト102と上部連結シャフト103とが自在継手103aを介して連結されており、上部連結シャフト103と下部連結シャフト108とが自在継手103bを介して連結されている。
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150のそれぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備えている。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備えている。ピニオン106aは、ピニオンシャフト106の下端部に形成されている
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギアボックス107を有している。ピニオンシャフト106は、ステアリングギアボックス107にてトーションバー(不図示)を介して下部連結シャフト108と連結されている。ステアリングギアボックス107の内部には、下部連結シャフト108とピニオンシャフト106との相対角度に基づいてステアリングホイール101の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段の一例としてのトルクセンサ109が設けられている。
また、ステアリング装置100は、ステアリングギアボックス107に支持された電動モータ110と、電動モータ110の駆動力を減速してピニオンシャフト106に伝達する減速機構111とを有している。
また、ステアリング装置100は、電動モータ110に実際に流れる実電流の大きさおよび方向を検出する電流検出手段の一例としてのモータ電流検出部33(図2参照)と、電動モータ110の端子間電圧を検出するモータ電圧検出部160を有している。
そして、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置10を備えている。制御装置10には、上述したトルクセンサ109の出力値、自動車の車速を検出する車速センサ170の出力値、モータ電流検出部33の出力値、モータ電圧検出部160の出力値が入力される。
以上のように構成された電動パワーステアリング装置100は、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクをトルクセンサ109にて検出し、その検出トルクに応じて電動モータ110を駆動し、電動モータ110の発生トルクをピニオンシャフト106に伝達する。これにより、電動モータ110の発生トルクが、ステアリングホイール101に加える運転者の操舵力をアシストする。
次に、制御装置10について説明する。
図2は、電動パワーステアリング装置100の制御装置10の概略構成図である。
制御装置10は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等からなる算術論理演算回路である。
制御装置10には、上述したトルクセンサ109にて検出された操舵トルクが出力信号に変換されたトルク信号Tdと、車速センサ170にて検出された車速が出力信号に変換された車速信号vと、モータ電圧検出部160にて検出された電圧が出力信号に変換されたモータ端子間電圧信号Vmとが入力される。
なお、制御装置10は、トルクセンサ109などからの信号がアナログ信号として入力されるので、図示しないA/D変換部によりアナログ信号をデジタル信号に変換し、CPUに取り込んでいる。
そして、制御装置10は、トルク信号Tdに基づいて目標補助トルクを算出し、この目標補助トルクを電動モータ110が供給するのに必要となる目標電流を算出する目標電流算出部20と、目標電流算出部20が算出した目標電流に基づいて電動モータ110の作動を制御するモータ駆動制御部31と、電動モータ110を駆動させるモータ駆動部32とを有している。また、制御装置10は、電動モータ110に実際に流れる実電流を検出するモータ電流検出部33を有しており、目標電流算出部20などにはモータ電流検出部33にて検出された実電流が出力信号に変換されたモータ電流信号Imが入力される。また、制御装置10は、モータ駆動部32に対して、電動モータ110の駆動を禁止させるための出力禁止信号を出力する禁止信号出力部34を有している。
次に、目標電流算出部20について詳述する。図3は、目標電流算出部20の概略構成図である。
目標電流算出部20は、目標電流を設定する上で基準となるベース電流を算出するベース電流算出部21と、電動モータ110の慣性モーメントを打ち消すための電流を算出するイナーシャ補償電流算出部22とを備えている。また、目標電流算出部20は、モータの回転を制限する電流を算出するダンパー補償電流算出部23と、モータ電流信号Imおよびモータ端子間電圧信号Vmに基づいて電動モータ110の回転速度を推定するモータ回転速度推定部24とを備えている。また、目標電流算出部20は、ベース電流算出部21、イナーシャ補償電流算出部22、ダンパー補償電流算出部23などからの出力に基づいて最終的な目標電流を決定する最終目標電流決定部25を備えている。
ベース電流算出部21は、位相補償部26にてトルク信号Tdが位相補償されたトルク信号Tsと、車速センサ170からの車速信号vとに基づいてベース電流を算出し、このベース電流の情報を含むベース電流信号Imsを出力する。なお、ベース電流算出部21は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、トルク信号Tsおよび車速信号vとベース電流との対応を示すマップに、トルク信号Tsおよび車速信号vを代入することによりベース電流を算出する。
イナーシャ補償電流算出部22は、トルク信号Tdと車速信号vとに基づいて電動モータ110およびシステムの慣性モーメントを打ち消すためのイナーシャ補償電流を算出し、この電流の情報を含むイナーシャ補償電流信号Isを出力する。なお、イナーシャ補償電流算出部22は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、トルク信号Tdおよび車速信号vとイナーシャ補償電流との対応を示すマップに、トルク信号Tdおよび車速信号vを代入することによりイナーシャ補償電流を算出する。
ダンパー補償電流算出部23は、トルク信号Tdと、車速信号vと、電動モータ110の回転速度信号Nmとに基づいて、電動モータ110の回転を制限するダンパー補償電流を算出し、この電流の情報を含むダンパー補償電流信号Idを出力する。なお、ダンパー補償電流算出部23は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、トルク信号Td、車速信号vおよび回転速度信号Nmと、ダンパー補償電流との対応を示すマップに、トルク信号Tdと車速信号vと回転速度信号Nmとを代入することによりダンパー補償電流を算出する。
モータ回転速度推定部24は、モータ電流検出部33にて検出された実電流と、モータ電圧検出部160(図1参照)にて検出された電圧とに基づいて電動モータ110の回転速度を推定する。
最終目標電流決定部25は、ベース電流算出部21から出力されたベース電流信号Ims、イナーシャ補償電流算出部22から出力されたイナーシャ補償電流信号Isおよびダンパー補償電流算出部23から出力されたダンパー補償電流信号Idに基づいて最終的な目標電流を決定し、この電流の情報を含む目標電流信号ITを出力する。最終目標電流決定部25は、例えば、ベース電流に、イナーシャ補償電流を加算するとともにダンパー補償電流を減算して得た補償電流を、予め経験則に基づいて作成しROMに記憶しておいた、補償電流と最終的な目標電流との対応を示すマップに代入することにより最終的な目標電流を算出する。
次に、モータ駆動制御部31、モータ駆動部32およびモータ電流検出部33について詳述する。
図4は、モータ駆動制御部31、モータ駆動部32およびモータ電流検出部33の概略構成図である。
モータ駆動制御部31は、目標電流算出部20にて算出された目標電流と、モータ電流検出部33にて検出された電動モータ110へ供給される実電流との偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部40と、電動モータ110をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成するPWM信号生成部60とを有している。
フィードバック制御部40は、目標電流算出部20にて算出された目標電流とモータ電流検出部33にて検出された実電流との偏差を求める偏差演算部41と、その偏差がゼロとなるようにフィードバック処理を行うフィードバック(F/B)処理部42とを有している。
偏差演算部41は、目標電流算出部20からの出力値である目標電流信号ITとモータ電流検出部33からの出力値であるモータ電流信号Imとの偏差の値を偏差信号41aとして出力する。
フィードバック(F/B)処理部42は、目標電流と実電流とが一致するようにフィードバック制御を行うものであり、例えば、入力された偏差信号41aに対して、比例要素で比例処理した信号を出力し、積分要素で積分処理した信号を出力し、加算演算部でこれらの信号を加算してフィードバック処理信号42aを生成・出力する。
PWM信号生成部60は、フィードバック制御部40からの出力値に基づいてPWM信号60aを生成し、生成したPWM信号60aを出力する。
モータ駆動部32は、4個の電力用電界効果トランジスタをH型ブリッジ回路の構成で接続したモータ駆動回路70と、4個の中から選択した2個の電界効果トランジスタのゲートを駆動してこれらの電界効果トランジスタをスイッチング動作させるゲート駆動回路部80とを有している。ゲート駆動回路部80は、PWM信号生成部60から出力された駆動制御信号(PWM信号)60aに基づいて、ステアリングホイール101の操舵方向に応じて2個の電界効果トランジスタを選択し、選択した2個の電界効果トランジスタをスイッチング動作させる。
モータ電流検出部33は、モータ駆動回路70に直列に接続されたシャント抵抗71の両端に生じる電圧から電動モータ110に流れるモータ電流(電機子電流)の値を検出してモータ電流信号Imを出力する。
次に、禁止信号出力部34について詳述する。
図5は、禁止信号出力部34の概略構成図である。
禁止信号出力部34は、ステアリングホイール101の操舵トルクと電動モータ110の実電流とに基づいて電動モータ110の出力を禁止するか否かを判定し、出力を禁止すると判定した場合にモータ駆動部32に対して出力禁止信号を出力する出力禁止判定部341と、出力禁止判定部341が判定する際の指標を実電流に応じて設定する指標設定部342とを有している。
出力禁止判定部341は、操舵トルクと電動モータ110の実電流との関係が予め定められた対応関係である場合に、モータ駆動部32による電動モータ110への電流の供給を禁止するべくモータ駆動部32に対して出力禁止信号を出力する。より具体的には、出力禁止判定部341は、トルク信号Tdと、モータ電流信号Imと、目標電流算出部20から電流の方向を示す情報とを取得し、これらを基に操舵トルクと電動モータ110の実電流(以下、「モータ電流」と称する場合もある。)とを認識し、認識した操舵トルクとモータ電流とが出力禁止信号を出力するように指標設定部342が設定した指標に該当する場合には、モータ駆動部32に対して出力禁止信号を出力する。そして、出力禁止信号を取得したモータ駆動部32のゲート駆動回路部80は、電動モータ110へ供給する電流をゼロに設定するべく、全ての電界効果トランジスタをOFFにさせる。
なお、モータ電流検出部33から出力されるモータ電流信号Imには、モータ駆動回路70から電動モータ110へ供給される電流の転流状態の情報、つまり電流の正負の符号の情報が含まれていない。それゆえ、出力禁止判定部341は、目標電流算出部20にて許可されている電動モータ110の回転方向の情報(例えば、モータ端子間電圧信号Vm、目標電流算出部20にて設定される目標電流信号ITの符号等)を取得し、この情報に基づき、モータ電流の正負の符号を認識する。
図6は、指標設定部342が設定する指標を例示する図である。
図6(a)に示した指標においては、操舵トルクとモータ電流とから定められる2次元座標上において、電動モータ110の出力を禁止する複数の出力禁止領域(TA1,TA2,TA3,TA1´,TA2´,TA3´)が設定されている。また、出力禁止領域毎に、操舵トルクおよびモータ電流がこの出力禁止領域内に継続して属してもよい規定時間が定められている。言い換えれば、規定時間は、操舵トルクおよびモータ電流がいずれかの出力禁止領域に属する継続時間が規定時間以上となった場合に、出力禁止判定部341はモータ駆動部32に対して出力禁止信号を出力することとなる時間である。
このように構成された禁止信号出力部34においては、出力禁止判定部341が認識した操舵トルクおよびモータ電流が、指標設定部342が設定した指標に該当する場合にモータ駆動部32に対して出力禁止信号を出力することにより、電動モータ110が運転者の操舵意志に反するように運転者の操舵力をアシストすることが抑制される。
なお、出力禁止判定部341がモータ駆動部32に対して出力禁止信号を出力するか否かの判定の指標となる規定時間は、操舵トルクおよびモータ電流に応じて変化するように設定され、例えばモータ電流の絶対値が大きくなるほど短くなるよう設定されている。例えば、図6(a)においては、TA1およびTA1´では100ms、TA2およびTA2´では30ms、TA3およびTA3´では4msである。つまり、出力禁止判定部341は、モータ電流の絶対値が大きい場合には、出力禁止領域内に属する継続時間が短い場合であっても、電動モータ110への電流の供給を禁止するべくモータ駆動部32に対して出力禁止信号を出力する。これは、例えば目標電流算出部20などの装置の異常により電動モータ110に過剰な電流が供給されるような事態が生じている場合にはできる限り早く電動モータ110の駆動を停止させるためである。
また、指標設定部342は、複数の指標を有しており、モータ電流検出部33から出力されるモータ電流信号Imに応じて、複数の指標の内から最適な指標を選択して設定する。図6(b)は、指標設定部342が設定する他の指標を例示する図である。本実施の形態に係る指標設定部342は、図6(a)に示した指標Aと図6(b)に示した指標Bの2種類の指標を有している。
図6(a)に示した指標Aと図6(b)に示した指標Bとは、2次元座標上に形成される、操舵トルクの範囲とモータ電流の範囲とから形成される出力禁止領域は同じであるが、出力禁止領域毎に定められる、操舵トルクおよびモータ電流が出力禁止領域に属してもよい規定時間が異なる。すなわち、図6(b)に示すように、指標Bは、指標Aにおける出力禁止領域TA1,TA2,TA3,TA1´,TA2´,TA3´にそれぞれ対応する出力禁止領域TB1,TB2,TB3,TB1´,TB2´,TB3´を有しており、出力禁止領域TB1,TB2,TB1´,TB2´における規定時間は、それぞれTA1,TA2,TA1´,TA2´における規定時間よりも長く、TB1およびTB1´では500ms、TB2およびTB2´では50msである。出力禁止領域TB3およびTB3´における規定時間は、TA3およびTA3´における規定時間と同じく4msである。
以下、フローチャートを用いて、指標設定部342が行う指標設定処理について説明する。
図7は、指標設定部342が行う指標設定処理の手順を示すフローチャートである。指標設定部342は、例えば、定期的(例えば、2ms毎)に、指標設定処理を実行する。
指標設定部342は、先ず、電動モータ110の実電流(モータ電流)を認識する(ステップ(以下、単に、「S」と記す。)501)。これは、モータ電流検出部33から出力されるモータ電流信号Imに基づいて認識するものであり、電流の流れる方向には関わらない電流の大きさである。
次に、指標設定部342は、予め定められた時間当たりのモータ電流の変化量DIMを算出する(S502)。予め定められた時間としては100msであることを例示することができる。予め定められた時間が100msである場合には、指標設定部342は、今回のフローにおけるS501にて認識したモータ電流から100ms前のフローにおけるS501にて認識したモータ電流を減算することにより、100ms間のモータ電流の変化量DIMを得る。
次に、指標設定部342は、S502にて算出した予め定められた時間当たりのモータ電流の変化量DIMの絶対値が所定量以上であるか否かを判別する(S503)。そして、S503にて否定判定された場合には、S504へ進み、指標Aを、出力禁止判定部341が判定する際の指標として設定する。
他方、S503にて肯定判定された場合には、S505へ進み、モータ電流が減少方向であるか否かを判別する(S505)。これは、今回のフローにおけるS501にて認識したモータ電流から以前のフローにおけるS501にて認識したモータ電流を減算した値(DIM)の符号により判別する処理であり、今回のフローにおけるS501にて認識したモータ電流から以前のフローにおけるS501にて認識したモータ電流を減算した値(DIM)がマイナスであれば、電動モータ110のモータ電流は減少方向であると判定し、プラスであれば、モータ電流は増加方向であると判定する。そして、S505にて否定判定された場合、つまり、増加方向であると判定された場合は、S504へ進み、指標Aを、出力禁止判定部341が判定する際の指標として設定する。他方、S505にて肯定判定された場合、つまり、減少方向であると判定された場合は、S506へ進み、上述した指標Bを、出力禁止判定部341が判定する際の指標として設定する。
そして、指標設定部342は、S504にて出力禁止判定部341が判定する際の指標として指標Aを設定した後、あるいはS506にて出力禁止判定部341が判定する際の指標として指標Bを設定した後に、本指標設定処理を終了する。
以下、フローチャートを用いて、出力禁止判定部341が行う出力禁止判定処理について説明する。
図8は、出力禁止判定部341が行う出力禁止判定処理の手順を示すフローチャートである。出力禁止判定部341は、例えば、定期的(例えば、1ms毎)に、出力禁止判定処理を実行する。
出力禁止判定部341は、先ず、電動モータ110の実電流(モータ電流)および操舵トルクを認識する(S601)。その後、複数の指標の内、いずれの指標が指標設定部342により設定されているかを認識する(S602)。
そして、出力禁止判定部341は、S601にて認識したモータ電流と操舵トルクとの関係が、S602にて認識した指標において予め定められている出力禁止領域に属するか否かを判別する(S603)。そして、S603にて肯定判定された場合は、S604に進み、モータ電流および操舵トルクが、S603にて属すると判定された出力禁止領域における規定時間以上継続してこの出力禁止領域に属しているか否かを判別する(S604)。そして、S604にて肯定判定された場合には、S605へ進み、モータ駆動部32に対して出力禁止信号を出力し、本処理の実行を終了する。
他方、S603にて否定判定された場合およびS604にて否定判定された場合には、出力禁止信号を出力することなしに本処理の実行を終了する。
ここで、例えば、運転者によって瞬間的にステアリングホイール101が過剰に切り返された場合など、主にダンパー補償電流算出部23の作用により図6(a)中の矢印のように変化する電流が目標電流算出部20にて目標電流として設定され、電動モータ110に対して実際に供給される場合がある。つまり、ダンパー制御による収斂制御電流が電動モータ110に対して実際に供給される場合がある。かかる場合においては、正常な制御に基づいて電動モータ110に対して供給された電流であったとしても、上述した出力禁止領域を通過する。それゆえ、正常な制御に基づいて電動モータ110に供給された電流と、例えば目標電流算出部20などの装置の異常により電動モータ110に供給された電流とを区別し、禁止信号出力部34が誤判定することを防止することが重要となる。
上述した本実施の形態に係るステアリング装置100においては、装置の特質として、電動モータ110の実電流が減少方向の場合、実電流が固定または増加方向の場合に比べて、システム出力は減少方向であり、発生する挙動自体も小さくなることに鑑み、電動モータ110の実電流(モータ電流)の変化が、その変化量が多くかつ減少方向にある場合は、変化量が小さい場合、または増加方向にある場合に比べて、規定時間を長くして異常出力判定を行う。これにより、禁止信号出力部34が誤判定することを防止することが可能となる。その結果、ステアリングホイール101の収斂性等のセッティングとして使用できる領域を拡大させることができ、ステアリング装置100の設計の自由度が向上する。
10…制御装置、20…目標電流算出部、31…モータ駆動制御部、32…モータ駆動部、33…モータ電流検出部、34…禁止信号出力部、341…出力禁止判定部、342…指標設定部、100…電動パワーステアリング装置、101…ステアリングホイール、102…ステアリングシャフト、109…トルクセンサ、110…電動モータ、160…モータ電圧検出部、170…車速センサ

Claims (6)

  1. ステアリングホイールに操舵補助力を与える電動モータと、
    前記電動モータに電流を供給することにより当該電動モータを駆動する駆動手段と、
    前記ステアリングホイールの操舵トルクと前記電動モータに実際に供給された実電流との関係が予め定められた関係である場合に前記駆動手段により前記電動モータへ供給する電流を抑制する抑制手段と、
    前記実電流の変化に応じて前記予め定められた関係を設定する設定手段と、
    を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記抑制手段は、前記操舵トルクおよび前記実電流の範囲が、当該操舵トルクの範囲および当該実電流の範囲とから形成される予め定められた領域内に属する時間が予め定められた規定時間継続したときに、前記電動モータへ供給する電流を抑制することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記設定手段は、予め定められた時間当たりの電流変化量が予め定められた値以上であり、かつ電流が小さくなるように変化する規定の電流変化である場合には、前記予め定められた関係を、当該規定の電流変化ではない場合よりも前記規定時間が長くなるように設定することを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記規定時間は、前記実電流が小さいほど長いことを特徴とする請求項2または3に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. ステアリングホイールの操舵トルクを認識し、
    前記ステアリングホイールに操舵補助力を与える電動モータに実際に供給された実電流を認識し、
    認識した操舵トルクと実電流との関係が予め定められた関係である場合に、前記電動モータに電流を供給することにより当該電動モータを駆動する駆動手段により当該電動モータへ供給される電流を抑制し、
    認識した実電流の変化に応じて前記予め定められた関係を設定する
    ことを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御方法。
  6. コンピュータに、
    ステアリングホイールの操舵トルクを認識する機能と、
    前記ステアリングホイールに操舵補助力を与える電動モータに実際に供給された実電流を認識する機能と、
    前記操舵トルクを認識する機能が認識した操舵トルクと前記実電流を認識する機能が認識した実電流との関係が予め定められた関係である場合に、前記電動モータに電流を供給することにより当該電動モータを駆動する駆動手段により前記電動モータへ供給される電流を抑制する機能と、
    前記実電流を認識する機能が認識した実電流の変化に応じて前記予め定められた関係を設定する機能と、
    を実現させるためのプログラム。
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