JP3597616B2 - 偏波角調整アンテナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衛星通信等からの水平及び垂直偏波を選択的に受信する一次放射器の偏波角の位置調整を可能にした偏波角調整アンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の偏波角調整アンテナは、アームの先端に、導波管の中心軸と同心の円弧状溝を形成し、この溝を挿通したねじ部材を給電部のコンバータに係脱可能に設けることにより、ねじ部材を緩めた状態で導波管の中心軸に対し給電部を回転させ、主偏波レベルと交差偏波レベルとの偏差が最大になる偏波角となるように調整した後、そのねじ部により固着させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の偏波角調整アンテナは、給電部を1つのねじ部材で固定した場合そのねじ部材が緩んだ時には、そのねじ部材を中心に、重い導波管側が下になるよう給電部が回転するから、偏波角の調整作業中、仮止めを度々行わなければならず作業性が悪く、またアンテナの取り付け後そのねじ部材が緩むことも考えられる。更に、給電部を強固に固定したい場合には1つの円弧状溝を挿通させるねじ部材又は円弧状溝自体を複数個設ける必要があり、装置全体が高価となる問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するために、アームに対する一次放射器の偏波角の調整が容易に行えることを目的とし、その偏波角調整アンテナの第1の構成は、上下に長いコンバータの上部側面に、導波管を介してホーンを連結することによって逆L字状に形成された給電部における前記コンバータと導波管との連結部からホーンの先端部に至る一次放射器の任意部位に嵌合溝を一部又は全周に設ける一方、前記一次放射器を支持するアームの先端に、少なくとも前記嵌合溝の左右に対向する部分を下側から挟み込むように嵌合可能な左右一対の嵌合部を有する支持体を設け、前記一次放射器を、支持体に対して前記嵌合溝に嵌合部を嵌合させた状態で回動自在に支持し、所望の回動角度にて一次放射器をアームに対して固定する偏波角調整アンテナである。
また、第2の構成は、前記アームに、支持体で支持された給電部のコンバータにおける導波管連結面に対向する固定部を設け、その固定部に前記導波管と同心の円弧状スリットを貫設する一方、前記コンバータに、前記アームに形成された円弧状スリットに対応した部位にねじ穴を設け、そのねじ穴に前記円弧状スリットに挿通したボルトを螺合させることによって、前記ボルトの締着が緩い場合は前記円弧状スリットの範囲内で前記一次放射器を回動可能で、前記ボルトを強く締着することによって一次放射器をアームに対して固定する偏波角調整アンテナである。
更に、前記コンバータとアームとの間に、コンバータをアームに対して略並行に位置決めする位置決め部材を介在させることができる。また、前記支持体は、嵌合溝に合致する円弧状の嵌合部を有したプレート状であること、前記ホーンと導波管とが一体に形成された一次放射器であること、前記位置決め部材が、コンバータに固着されたこと、及び前記ねじ穴が一つである偏波角調整アンテナとすることは特に望ましい態様である。
【0005】
【作用】
第1の構成は、一次放射器に嵌合溝を設ける一方、アームに嵌合部を設けているから、前記一次放射器を、支持体に対して前記嵌合溝に嵌合部を嵌合させた状態で回動自在に且つバランスよく支持することが可能となり、所望の偏波が得られる回動角度にて一次放射器をアームに対して固定することができる。
また、第2の構成は、前記一次放射器を前記アームに対して固定する手段として、コンバータに設けた固定部に円弧状スリットを貫設する一方、前記コンバータに、前記円弧状スリットに挿通したボルトを螺合させることによって、前記ボルトの締着が緩い場合は前記円弧状スリットの範囲内で前記一次放射器を回動可能とするとともに、所望の偏波が得られた場合は前記ボルトを強く締着することによって一次放射器をアームに対して固定するものである。
更に、前記コンバータとアームとの間に介在させた位置決め部材により、コンバータをアームに対して略並行に位置決めができ、一次放射器の回動による焦点位置がずれる事無く偏波角の調整ができる。また、前記支持体は、嵌合溝に合致する円弧状の嵌合部を有したプレート状であるから、嵌合溝及び嵌合部の接触面積が広く一次放射器は安定して回動及び固着ができる。また、前記ホーンと導波管とが一体に形成されているから、電波を集めるための一次放射器の設計が容易である。また、前記位置決め部材がコンバータに固着されているから、固着するためのボルトをアンテナの方からコンバータに向いて螺合させることができる。また、固着するためのねじ穴が一つであるから、ボルトを固着する取り付け作業が簡単で部品点数も減らすことができる。
【0006】
【実施例】
本発明に係る偏波角調整アンテナを、オフセットパラボラアンテナにおいて実施した一例を図面に基き説明する。
図1はオフセットパラボラアンテナの側面図であって、オフセットパラボラアンテナ1の焦点位置の近傍には、給電部10がアーム20に支持されて配置されており、パラボラアンテナ1で集められた電波は給電部10に導入される。
【0007】
図2は給電部10付近の偏波角調整アンテナの分解図であって、給電部10は、ケース11の内部に収納された上下に長いコンバータ12と、そのケース11の上部側面に、逆L字状に形成された一次放射器18とで構成されている。その一次放射器18のケース11側は、内部にプローブ15を設けた導波管14により連結され、その導波管14の他側にはホーン16が分離不可能なように一体的に形成されている。コンバータ12の下部面にはF型接栓座19aを介して同軸ケーブル19が脱着可能に接続され、一次放射器18のうち導波管14とホーン16との連結部には、嵌合溝18aが全周にわたって設けられている。なお、同軸ケーブル19は2線であるが、1本又は3本以上としコネクターを1個又は3個以上設けることも可能である。
一方、22は前記一次放射器18を支持するためにアーム20の先端に設けられた支持体であって、前記嵌合溝18aに合致する嵌合部22aは、導波管14の中心軸を通る垂直線に対し左右対称な円弧状の上面を有すプレート状に形成され、前記嵌合溝18aを下側から挟み込むように設けられている。これにより、前記一次放射器18を、支持体22に対して前記嵌合溝18aに嵌合部22aを嵌合させた状態で前記嵌合溝18aに嵌合部22aが摺動して回動自在に支持することができる。
また24は、前記アーム20に、支持体22で支持された一次放射器18に連結するコンバータ12における、導波管14との連結する側面12aに対向するように、ボルト止めして設けた固定部である。その固定部24には前記導波管14の中心軸と同心となる円弧状スリット26が貫設されている。なお、固定部24は、ボルトに代えリベットによりアーム20に固定することもできる。
一方、コンバータ12の前記側面12aには、コンバータ12をアーム20に対して略並行に位置決めする位置決め部材12bが固着され、その位置決め部材12bには、前記円弧状スリット26に挿通したボルト28を螺合させるねじ穴12cを穿設し、そのねじ穴12cに、前記円弧状スリット26に挿通したボルト28を螺合させている。
【0008】
このように構成されたオフセットパラボラアンテナの取り付け方を説明する。
まず、オフセットパラボラアンテナ1側の嵌合溝18aに給電部10の嵌合部22aに嵌挿することにより仮止めしアンテナ自体の設置をするが、図3に示すように緯度又は取り付け場所の傾斜の違いによりパラボラアンテナ1の取り付け角度が水平に対し変わり支持体22の角度が変わっていても、その嵌合部22aと給電部10の嵌合溝18aとは嵌合しているから、ボルト28で仮止めすることもなくバランスよく支持されており給電部10から手を離して作業をすることもできる。
次に、オフセットパラボラアンテナで受信しようとする通信衛星に応じた方位角及び仰角を、コンバータの出力が最大レベルになるように図示しない支持金具で調整してアンテナ本体及びアームの方位角及び仰角を固定する。このとき、導波管の回転位置は基準となる水平状態に設定されている。
アンテナの方位角及び仰角を調整を終えた後、円弧状スリット26に挿通されているボルト28の締着を緩め、導波管14の中心軸を回転の中心として、ボルト28が円弧状スリット26の範囲内で案内しつつ一次放射器18を回動させる。その方位角及び仰角においてコンバータの出力値が最大値となる時点でボルト28を強く締着することによって一次放射器18を、図4に示すようにアーム20に対して偏波の所望の回動角度にて固定することができる。
なお、これらの部材の素材は、ケース11、位置決め部材12b、一次放射器18及び固定部24等の場合はアルミダイカスト製で、筒形状のアーム20はアルミの引き伸ばしにより成形されているが、他の金属製品又は硬質プラスチック製品であってもよいし、アーム20を、断面をコ字状の長尺部材とした場合には、アルミダイカスト又は抜き型により成形することができる。
【0009】
図5は、実施例2に係る分解図である。
実施例1は一次放射器18に嵌合溝18aを、またアーム20に嵌合部22aをそれぞれ設けているが、一次放射器18をアーム20に対し回動自在に支持するために実施例1とは凹凸関係を反対に、一次放射器18に嵌合部16aを、またアーム20に嵌合溝22bをそれぞれ設けることができる。一般に、一次放射器の、円錐状のホーンとプローブとの間に位置する筒形状の給電導波管は、カットオフ周波数を利用するため実施例1の導波管14のように、長いものが望ましいが、そのような目的を必要としない場合は、実施例2のようにプローブを有した短い導波管がケース11の内部に位置し、ホーン16が直接ケース11に設けられているような一次放射器18であってもよい。
実施例1の嵌合溝18a及び図5の嵌合部16aを形成する位置は、コンバータ12と導波管14との連結部12dから、図5に示すようにホーン16の先端部16aに至る導波管14及びホーン16からなる一次放射器18の任意部位でよく、その嵌合溝18aの長さも、円筒状の一次放射器18の外周の一部、少なくとも下面であれば下側から一次放射器18を支持することができる。
また、実施例1の嵌合部22aは、一次放射器18の径方向から切断した説明図である図6の(a)に示すように左右側部から連続した上面を有しているが、図5に示す左右に分離した嵌合溝22bであってもよい。つまり、凹凸関係の嵌合溝及び嵌合部の一方が連続している場合は他方が分割されていてもよい。例えば、実施例1の嵌合する嵌合溝18aが連続している場合には(b)に示すように少なくとも前記嵌合溝18aの左右に対向する部分18b,18bを下側から挟み込むように嵌合可能な左右一対の突起状の嵌合部22a,22aであれば1箇所のボルト28により3点支持することができる。特に、(c)に示すように左右一対の突起状の嵌合部22a,22aが下側に接近している場合は、ねじ穴12cを少なくとも2箇所設け2つのボルトにより固定することにより、一次放射器18をそれぞれ三角形の各頂点に位置するように支持することが望ましい。
また、一次放射器18のアーム20に対する固定手段としては、(d)に示すように、支持体22の嵌合部22aと嵌合した一次放射器18を、その上部から逆U字状の押え金具22cで押え、嵌合部22aと押え金具22cとの両端をボルト22d,22dで固定することもできる。
実施例1では、コンバータ12とアーム20との間に、コンバータ12をアーム20に対して略並行に位置決めする位置決め部材12cを介在させ、コンバータに固着させているが、図5に示すように位置決め部材12cを別体としボルト28の挿通孔を設けて、既存のコンバータでも利用できるようにする場合や、一次放射器18を中心としたコンバータ12の回動面が固定部24に対し円錐状に非平面となる際等に、位置決め部材12cをアーム側の固定部に設ける場合がある。
また、実施例1では、前記ホーン16と導波管14とが一体に形成され機械的に分離不可能にしているが、ホーン16と導波管14とを別体としその連結部を組み立て可能な構造とすることにより、組み立て前のパラボラアンテナの搬送が容易になる。
【0010】
上記実施例では、アンテナにオフセットパラボラアンテナを用いたが、回転放物面パラボラアンテナを使用することもできる。また、給電部をアームによってオフセットパラボラアンテナに取り付けたが、アームはオフセットパラボラアンテナを支持している支柱に取り付けるようにしてもよい。また、偏波角の粗調整を容易にするために円弧状スリットに沿って偏波角の表示を嵌合溝、嵌合部、位置決め部材又は固定部に設けることもできる。
【0011】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明によれば、一次放射器に嵌合溝を設ける一方、アームに嵌合部を設けているから、前記一次放射器を、支持体に対して前記嵌合溝に嵌合部を嵌合させた状態で回動自在に且つバランスよく支持することが可能となり、一次放射器をアームに仮止めしただけで、バランスよく支持され誤って落下させることがなく、固定のために従来のように手で一次放射器を押えながら固定作業をする必要がなく、作業効率が高く、所望の偏波が得られる回動角度にて一次放射器をアームに対して固定することができる。
また、請求項2に係る本発明によれば、前記一次放射器を前記アームに対して固定する手段として、コンバータに設けた固定部に円弧状スリットを貫設する一方、前記コンバータに、前記円弧状スリットに挿通したボルトを螺合させることによって、前記ボルトの締着が緩い場合は前記円弧状スリットの範囲内で前記一次放射器を回動可能とするとともに、所望の偏波が得られた場合は前記ボルトを強く締着することによって一次放射器をアームに対して固定するものである。
更に、請求項3に係る本発明によれば、前記コンバータとアームとの間に介在させた位置決め部材により、コンバータをアームに対して略並行に位置決めができ、一次放射器の回動による焦点位置がずれる事無く偏波角の調整ができる。
また、請求項4に係る本発明によれば、前記支持体は、嵌合溝に合致する円弧状の嵌合部を有したプレート状であるから、嵌合溝及び嵌合部の接触面積が広く一次放射器は安定して回動及び固着される。
また、請求項5に係る本発明によれば、前記ホーンと導波管とが一体に形成されているから、電波を集めるための設計が容易である。
また、請求項6に係る本発明によれば、前記位置決め部材はコンバータに固着されているから、固着するためのボルトをアンテナの方からコンバータに向いて螺合させることができ、逆向きにボルトを螺着させるためにコンバータ内部を挿通するねじ孔を設ける必要がなく、固定作業が簡便に行える。
また、請求項7に係る本発明によれば、固着するためのねじ穴が一つであっても支持体の左右両端との3点支持により強固に且つバランスよく固着できるから、ボルトを固着するための取り付け作業が簡単になりまた部品点数を減らすことで製品コストも安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】全体を示す平面図である。
【図2】給電部付近を示す分解斜視図である。
【図3】仰角の異なるアンテナの取り付け状態を示す説明図である。
【図4】一次放射器を回動させた説明図である。
【図5】他の実施例の分解説明図である。
【図6】他の実施例に係る支持体の説明図である。
【符号の説明】
1・・オフセットパラボラアンテナ、10・・給電部、11・・ケース、12・・コンバータ、12a・・側面、12b・・位置決め部材、12c・・ねじ穴、12d・・連結部、14・・導波管、15・・プローブ、16・・ホーン、17a・・先端部、18・・一次放射器、18a・・嵌合溝、18b・・嵌合部、19・・同軸ケーブル、19a・・F型接栓座、20・・アーム、22・・支持体、22a・・嵌合部、22b・・嵌合溝、22c・・押え金具、22d・・ボルト、24・・固定部、26・・円弧状スリット、28・・ボルト。

Claims (7)

  1. 上下に長いコンバータの上部側面に、導波管を介してホーンを連結することによって逆L字状に形成された給電部における前記コンバータと導波管との連結部からホーンの先端部に至る一次放射器の任意部位に嵌合溝を一部又は全周に設ける一方、前記一次放射器を支持するアームの先端に、少なくとも前記嵌合溝の左右に対向する部分を下側から挟み込むように嵌合可能な左右一対の嵌合部を有する支持体を設け、前記一次放射器を、支持体に対して前記嵌合溝に嵌合部を嵌合させた状態で回動自在に支持し、所望の回動角度にて一次放射器をアームに対して固定することを特徴とする偏波角調整アンテナ。
  2. 前記アームに、支持体で支持された給電部のコンバータにおける導波管連結面に対向する固定部を設け、その固定部に一次放射器と同心の円弧状スリットを貫設する一方、前記コンバータの、前記アームに形成された円弧状スリットに対応した部位にねじ穴を設け、そのねじ穴に前記円弧状スリットに挿通したボルトを螺合させることによって、前記ボルトの締着が緩い場合は前記円弧状スリットの範囲内で前記一次放射器を回動可能で、前記ボルトを強く締着することによって一次放射器をアームに対して固定する請求項1に記載の偏波角調整アンテナ。
  3. 前記コンバータとアームとの間に、コンバータをアームに対して略並行に位置決めする位置決め部材を介在させる請求項1又は2に記載の偏波角調整アンテナ。
  4. 前記支持体が、嵌合溝に合致する円弧状の嵌合部を有したプレート状である請求項1ないし3に記載の偏波角調整アンテナ。
  5. 前記ホーンと導波管とが一体に形成された一次放射器である請求項1ないし4に記載の偏波角調整アンテナ。
  6. 前記位置決め部材が、コンバータに固着された請求項3ないし5に記載の偏波角調整アンテナ。
  7. 前記ねじ穴が一つである請求項3ないし5に記載の偏波角調整アンテナ。
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