JP3596092B2 - 蛍光ランプの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、複数種の蛍光体からなる蛍光体層を有する蛍光ランプの両端色差の小さな蛍光ランプを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光ランプにはその目的に応じ、蛍光体層に複数種の蛍光体を有するものがある。その代表例として、三波長形蛍光ランプ、或いはSDL、EDLタイプの高演色形蛍光ランプなどがある。このような種類の蛍光ランプにおいて、特に蛍光ランプの両端で大きな発光色の色差が発生することがしばしば問題となる。
【0003】
この色差が発生する原因は、蛍光ランプの製造工程中、ガラス管に蛍光体を塗布する工程で完全に均一に混合された蛍光体塗布懸濁液を用いても、乾燥され蛍光体層が形成される時にガラス管の塗布上部と、下部で、蛍光体層中の蛍光体成分の成分比がずれてしまうことによる。
【0004】
このような色差に対し、特公昭63−52736号公報には比重の大きな蛍光体ほど粒径を小さくすることで改善できることが述べられている。また、特公昭4−43380号公報には蛍光体の最大平均粒径と最小平均粒径との比を2.5以下にする方法について書かれている。
【0005】
しかし、蛍光体が完全な球形であり、しかも表面的性質がすべて同じならば、このような方法のみにより改善されるであろうが、現実の蛍光体の形状は球形からかなり逸脱し、静電気的性質等その蛍光体独特の表面的性質を有する。それで、このような手段だけでは両端の色差において満足できる蛍光ランプを得ることはできなかった。
【0006】
また、近年、液晶ディスプレイの需要が急速に伸びているが、そのバック照明には冷陰極管に代表される小型の蛍光ランプが用いられている。この種の蛍光ランプも白色系の三波長混合蛍光体等、複数種の蛍光体が使用されている。このようなディスプレイに使用する蛍光ランプの発光色差の許容幅は、一般照明用の蛍光ランプに比べ狭く設定され、これの目的に用いられる小型蛍光ランプにはさらなる色差の改良が切望されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、複数種の蛍光体からなる蛍光体層を有する蛍光ランプの両端に発生する発光色差を小さくできる蛍光ランプの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【発明を解決するための手段】
本発明者等は上述した問題を解決するために鋭意検討した結果、このような蛍光ランプの両端に発生する発光色差と、蛍光体塗布懸濁液を調合する時に用いる蛍光体の流動性の間に強い相関関係があることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の蛍光ランプの製造方法は、透光性ガラス容器内面に複数種の蛍光体が混合されている蛍光体層を具備する蛍光ランプの製造方法において、蛍光体塗布懸濁液調合時に、安息角が70度以下である蛍光体を全蛍光体重量の2%以上混合することを特徴とする。
【0010】
粉体の流動性の測定には、タッピング充填過程、粉体層のせん断応力、安息角、運動角、圧縮率、或いはホッパからの流出速度の測定などがあり、これらは何れも粉体の流動現象の一面をとらえた測定であって、本質的には互いに関連している。本発明においては、この中で特に、古くから粉体の流動性の測定法として広く利用され、比較的簡便な安息角の測定を採用した。
【0011】
安息角の測定には、図1に示すような装置を用いる。蛍光体粉末(1)を、バイブレーター(2)で振動させた100メッシュの篩い(3)の上に徐々に投入し、3mmφの孔(4)より測定台(5)の上に静かに落下させ、ほぼ円錐状の蛍光体粉末の山(6)を作る。この円錐の5カ所について安息角(7)を測定し平均する。流動性が大きい蛍光体ではこの安息角が小さくなる。
【0012】
通常の蛍光ランプ用蛍光体の安息角の測定をすると、80度以上と殆ど流動性がない。蛍光体に流動性を持たせる方法として、蛍光体粒子表面に微粒子の物質を付着させる方法、蛍光体粒子を粉砕する方法、蛍光体粒子表面を酸などにより腐食する方法が適用できる。
【0013】
蛍光体粒子表面に付着させる微粒子の平均粒径は10nm〜2μmの範囲がよく、10〜100nmの範囲が少量で安息角の低下効果があるためにより好ましい。
【0014】
微粒子の付着量は蛍光体に対し1ppm以上が必要で、好ましくは3ppm以上10%以下であるが、実際の添加量は色差改良だけでなく、蛍光ランプの発光輝度、光束維持率等の発光性能についても考慮される。
【0015】
微粒子は紫外から可視域までの光を効率的に反射する白色物質であることが好ましい。しかし、顔料粒子のように蛍光ランプを着色するという別の目的から蛍光体塗布懸濁液に添加する場合、白色物質でなくても使用できることはいうまでもない。
【0016】
微粒子は化学的に安定であり、しかも、蛍光ランプの放電動作中において経時的に変化しないものが好ましい。例えば、アルカリ金属酸化物などは、蛍光ランプ中の水銀と容易に反応しアマルガムを形成し、蛍光ランプの外観を損ない、また、硫酸塩は白色物質であっても蛍光体を酸化する場合があり、避ける方が良い。
【0017】
このような条件を満たす物質として、SiO2、Al2O3、MgO、TiO2、Sb2O3、希土類金属酸化物等の酸化物、Al(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、他にはアルカリ土類金属硼酸塩、ピロリン酸カルシウム等蛍光ランプ用の結着剤として実用されている物質などがある。
【0018】
これら微粒子を蛍光体粒子表面に付着させるのには、乾式法、湿式法がある、乾式法は、蛍光体と微粒子物質をボールミル等で混合する方法で、湿式法は、蛍光体及び微粒子を水、或いは有機溶剤中で混合し、脱溶媒、乾燥する方法であり、蛍光体粒子表面に微粒子物質をより均一に付着させることができる。また、湿式法において、微粒子と蛍光体とを強固に結合させるバインダー物質を用いることで、蛍光体塗布懸濁液を長寿命化でき、結果として蛍光ランプの品質を向上できる。
【0019】
バインダーとして、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、希土類水酸化物等の多価金属イオンが好ましく用いることができる。蛍光体、及び微粒子物質の懸濁液に塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の水溶性多価金属イオンの塩を加え、アンモニア水等の塩基性物質を加えることで、これら多価イオンは水酸化物となって、微粒子物質を、蛍光体粒子表面に抱き込みつつ析出する。
【0020】
また、アクリル樹脂エマルジョン、アラビアゴムとゼラチンのコアセルベーションによる凝集、カゼイン、ペクチン、及びアルギン酸亜鉛の凝集を利用するなどの有機バインダーを用いることもできる。
【0021】
蛍光ランプに流動性を与える別な方法として、蛍光体粒子を粉砕する方法がある。例えば、蛍光体をセラミックポットに入れ、強くボールミルすることで蛍光体は粉砕され、非常に多くの微粒子が生成する。この微粒子は蛍光体表面に付着して存在し、そのことで蛍光体の流動性は大きく改善される。しかし、この微粒子の生成は多くの場合、蛍光ランプ用蛍光体にとって発光性能を著しく低下することがある。微粒子は蛍光体励起に有用な紫外線を吸収するが殆ど発光しないからである。従って、このような方法が適さない蛍光体もある。
【0022】
蛍光体に流動性を与える他の方法として、蛍光体粒子表面を酸などにより腐食する方法がある。例えば、蛍光体水懸濁液に塩酸を加えpHを1以下にして、数時間〜数十時間保持し、洗浄し、乾燥すると非常に流動性の高い蛍光体を得ることはできる。この表面の腐食条件は蛍光体の組成による。
【0023】
これら上述した方法により、蛍光体の粒子表面に微粒子を形成し、そのことにより、蛍光体の流動性を大きく改善することができ、その結果、従来80度以上であったランプ用蛍光体の安息角を容易に70度以下にし、流動性の高い蛍光体を得ることができる。
【0024】
本発明には蛍光ランプ用蛍光体として通常用いられるものであれば適用できる。蛍光ランプ用蛍光体として、例えば、(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu、BaMg2A16O27:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、LaPO4:Ce,Tb、MgAl11O19:Ce,Tb、Y2O3:Eu、Y(PV)O4:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn、Sr10(PO4)6FCl:Sb,Mn、(SrMg)2P2O7:Eu、Sr2P2O7:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb、MgWO4、(BaCa)5(PO4)3Cl:Eu、Sr4Al14O25:Eu、Zn2SiO4:Mn、BaSi2O5:Pb、SrB4O7:Eu、(CaZn)3(PO4)2:Tl、LaPO4:Ce等の組成の蛍光体が使用できる。
【0025】
例えば3種類の蛍光体の発光を出力する蛍光ランプを得たい場合、少なくとも1つの蛍光体成分の安息角が70度以下であり、その蛍光体の割合が蛍光体全量の2%以上である必要がある。安息角が70度以下の蛍光体の割合がこれより少なくなると発明の効果が認められなくなる。また、安息角が70度以下の蛍光体成分数は1種よりも2種が好ましく、3種全部に安息角が70度以下の蛍光体を採用するのが最良である。
【0026】
さらに、各成分の安息角の値が互いに近似するように選択するのがより好ましく、5度以内のものが最も好ましい。
【0027】
蛍光体の成分数について、3種類の場合を例に取り説明したが、本発明は蛍光体の成分が2種類でも、4種類以上でも同じような作用を示す。
【0028】
本発明の蛍光ランプの製造方法は、蛍光体粒子に流動性を与える以外通常の蛍光ランプの製作方法がそのまま適用できる。例えば、微粒子を付着した蛍光体を含む蛍光体を、ニトロセルロース/酢酸ブチルバインダー溶液に仕込み、アルミナ、ピロリン酸カルシウム、或いはカルシウムバリウムボレート等の結着剤を必要量添加し、懸濁させて蛍光体塗布懸濁液を調製する。ここで、結着剤を加えるのは、蛍光体表面に付着した微粒子には結着剤としての効果がないためである。得られた蛍光体塗布懸濁液をガラス管の内面に流し込み、その後これに温風を通じることで乾燥させ、ベーキング、排気、フィラメントの装着、口金の取り付け等、通常の手順に従って本発明の蛍光ランプを仕上げる。
【0029】
また、本発明はカルボキシメチルセルロース、アンモニウムポリメタアクリレート或いはポリエチレンオキサイドのような水溶性バインダーを用いた水性塗布懸濁液を用いても同様に作用するが、特に有機溶媒を用いた場合に比べそれほど大きな効果を発揮しない。これは水性塗布の場合、一般に塗布懸濁液の粘度が油性塗布の場合に比べると大きく、その結果ガラス管への塗布工程において蛍光体が分離しにくく、蛍光ランプの両端色差はそれほど大きな問題にならないからである。
【0030】
【作用】
微粒子としてSiO2を任意の量付着させたBaMg2A16O27:Eu蛍光体(以下BAMと称す)を調製し、これを用いて安息角を測定した結果を図3に示す。SiO2を付着していない蛍光体の安息角が82度であるのに対し、わずか1ppm付着されることにより、安息角は70度に低下している。添加量が増加するに従い安息角は低下している。
【0031】
上記したSiO2を付着することで安息角を低下させ流動性を改善したBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLaPO4:Ce,Tb蛍光体(以下LAPと称す)を3g、安息角81度のY2O3:Eu蛍光体(以下YOXと称す)を5gを1%にニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、十分混合し、200メッシュのフルイを通し蛍光体塗布懸濁液を調製し、得られた蛍光体懸濁液を図2に示すように外径4mmφ長さ300mmのガラス管に流し込みその内面に塗布し、温風を通じて乾燥した。
【0032】
得られた蛍光体層を形成されたガラス管から、上下端より50mmの部分(図2中の点線部分)を割り出し、その部分に蛍光体層に254nmの紫外線を直接照射して蛍光体を励起し、得られる発光を入射と反対方向で受け、上部、下部の割り出した部分のCIE表色系の発光色度を測定する。次に、x,y座標上の色差△x、△yをそれぞれ計算し、その距離の1000倍値rを次式に従い算出した。結果を図4にプロットする。
r=1000×(△x2+△y2)1/2
【0033】
図4より、安息角70度以下で色差rは改善され、特に安息角60度以下では色差rは極めて小さくなる。安息角50度以下では色差rは従来品の10分の1になり、それ以上安息角を低下させてもその効果はほぼ飽和している。
【0034】
蛍光体粒子の流動性が改善されることにより、蛍光ランプの両端に形成される蛍光体層の蛍光体成分差が小さく抑えられ、その結果、蛍光ランプの色差を小さくすることがきた。
【0035】
【実施例】
[実施例1]
BAM蛍光体100gを、純水200gに懸濁させる。次にその中に日産化学製スノーテックスN(粒子径が10〜20nm)をSiO2として0.01gを添加し、5%硫酸亜鉛を14g加え、アンモニア水を加えて、pHを弱アルカリ性に調整することで、SiO2を蛍光体上に析出させ、BAM蛍光体表面に100ppmのSiO2を付着させた。これを水洗、分離、乾燥後、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果55度であった。
【0036】
上記した方法で得られたBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLAP蛍光体を3g、安息角81度のYOX蛍光体を5gを1%ニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、十分混合し、200メッシュのフルイを通し蛍光体塗布懸濁液を調製した。得られた蛍光体懸濁液を外径4mmφ長さ300mmのガラス管に流し込みその内面に塗布し、その後これに温風を通じることで乾燥させ、ベーキング、排気、フィラメントの装着、口金の取り付け等、通常の手順に従って本発明の蛍光ランプを仕上げた。
【0037】
蛍光ランプの両端の色差の測定については、前述したように蛍光体が塗布されたガラス管を割り出し、それに紫外線を照射し、得られる発光色を評価する方法で行った。rの値を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
LAP蛍光体に同様な方法で100ppmのSiO2を付着し、安息角57度のLAP蛍光体を得、それ以外実施例1と同様にして、蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表1に示す。
【0039】
[実施例3]
LAP蛍光体に同様な方法で100ppmのSiO2を付着し、安息角57度のLAP蛍光体を得、YOX蛍光体に同様な方法で100ppmのSiO2を付着し、安息角60度のYOX蛍光体を得、それ以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例4]
LAP蛍光体の代わりに、MgAl11O19:Ce,Tb蛍光体(安息角80度)(以下CATと称す)を仕込む以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表2に示す。
【0043】
[比較例2]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体を用いる以外実施例4と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
[実施例5]
BAM蛍光体の代わりに、同様な方法で1000ppmのSiO2を付着し、安息角42度の(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl蛍光体(以下SCAと称す)を仕込む以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表3に示す。
【0046】
[比較例3]
何の処理も施されていない安息角が82度のSCA蛍光体を用いる以外実施例5と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
[実施例6]
BAM蛍光体100gを、純水200gに懸濁させ、塩化ランタン水溶液をLaCl3として0.39gを添加し、アンモニア水を加えて、pHを10に調整することで、BAM蛍光体表面に3000ppmのLa(OH)3を析出させ、これを水洗、分離、乾燥後、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果60度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0049】
[実施例7]
BAM蛍光体100gにデグサ社製アロンCを1gをボールミルにより乾式混合し、Al2O3が表面に1%付着したBAM蛍光体を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果55度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0050】
[比較例4]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLAP蛍光体を3g、安息角81度のYOXを5gを1%ニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、これに、デグサ社製のアロンCをニトロセルロース/酢酸ブチル溶液にボールミルにより分散させた10%結着剤スラリーを、アルミナ固形分が蛍光体重量に対し1%になるように1.0g添加する以外、実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0051】
[実施例8]
BAM蛍光体100gを、純水200gに懸濁させ、塩化マグネシウム水溶液をMgCl2として0.49gを添加し、アンモニア水を加えて、pHを10に調整することで、BAM蛍光体表面に3000ppmのMg(OH)2を析出させ、これを水洗、分離、乾燥後、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果57度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0052】
[実施例9]
BAM蛍光体100gに日亜化学製ピロリン酸カルシウム結着剤NP−970−10を1gをボールミルにより乾式混合し、ピロリン酸カルシウムが表面に1%付着したBAM蛍光体を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果48度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0053】
[比較例5]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLAP蛍光体を3g、安息角81度のYOXを5gを1%ニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、これに、日亜化学製ピロリン酸カルシウム結着剤NP−970−10をニトロセルロース/酢酸ブチル溶液にボールミルにより分散させた10%結着剤スラリーを、ピロリン酸カルシウム固形分が蛍光体重量に対し1%になるように1.0g添加する以外、実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0054】
[実施例10]
BAM蛍光体100gに日亜化学製カルシウムバリウムボレート結着剤NP−970−05を1gをボールミルにより乾式混合し、カルシウムバリウムボレートが表面に1%付着したBAM蛍光体を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果50度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
[比較例6]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLAP蛍光体を3g、安息角81度のYOXを5gを1%ニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、これに、日亜化学製カルシウムバリウムボレート結着剤NP−970−05をニトロセルロース/酢酸ブチル溶液にボールミルにより分散させた10%結着剤スラリーを、カルシウムバリウムボレート固形分が蛍光体重量に対し1%になるように1.0g添加する以外、実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
[実施例11]
内容量2リットルのセラッミックポットにBAM蛍光体100gと、10mmφのアルミナボールミルを500g入れ、60rpmの回転速度で20時間粉砕し、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果60度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表5に示す。
【0057】
[実施例12]
BAM蛍光体100gを、純水200gに懸濁させ、濃塩酸を10g添加して5時間攪拌した。その後、デカンテーションによりpHが5以上になるまで水洗し、アンモニア水を加えて、pHを弱アルカリ性に調整し、水洗、分離、乾燥後、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果58度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、複数種の蛍光体からなる蛍光体層を有する蛍光ランプの製造方法において、安息角を低下させ流動性を改善した蛍光体を使用することにより、蛍光ランプ上部下部の蛍光体層の蛍光体成分比のズレを小さくでき、その結果両端色差の小さな蛍光ランプを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】蛍光体の安息角を測定する方法を示す斜視図。
【図2】本発明の蛍光ランプの塗布及び塗布膜の割り出し部分を示す斜視図。
【図3】蛍光体のシリカ付着量と安息角の関係を示す特性図。
【図4】安息角と蛍光ランプ両端の色差の関係を示す特性図。
【符号の説明】
1・・・・・蛍光体
2・・・・・バイブレーター
3・・・・・篩い
4・・・・・3mmφの孔
5・・・・・測定台
6・・・・・蛍光体粉末の山
7・・・・・安息角
【産業上の利用分野】
本発明は、複数種の蛍光体からなる蛍光体層を有する蛍光ランプの両端色差の小さな蛍光ランプを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛍光ランプにはその目的に応じ、蛍光体層に複数種の蛍光体を有するものがある。その代表例として、三波長形蛍光ランプ、或いはSDL、EDLタイプの高演色形蛍光ランプなどがある。このような種類の蛍光ランプにおいて、特に蛍光ランプの両端で大きな発光色の色差が発生することがしばしば問題となる。
【0003】
この色差が発生する原因は、蛍光ランプの製造工程中、ガラス管に蛍光体を塗布する工程で完全に均一に混合された蛍光体塗布懸濁液を用いても、乾燥され蛍光体層が形成される時にガラス管の塗布上部と、下部で、蛍光体層中の蛍光体成分の成分比がずれてしまうことによる。
【0004】
このような色差に対し、特公昭63−52736号公報には比重の大きな蛍光体ほど粒径を小さくすることで改善できることが述べられている。また、特公昭4−43380号公報には蛍光体の最大平均粒径と最小平均粒径との比を2.5以下にする方法について書かれている。
【0005】
しかし、蛍光体が完全な球形であり、しかも表面的性質がすべて同じならば、このような方法のみにより改善されるであろうが、現実の蛍光体の形状は球形からかなり逸脱し、静電気的性質等その蛍光体独特の表面的性質を有する。それで、このような手段だけでは両端の色差において満足できる蛍光ランプを得ることはできなかった。
【0006】
また、近年、液晶ディスプレイの需要が急速に伸びているが、そのバック照明には冷陰極管に代表される小型の蛍光ランプが用いられている。この種の蛍光ランプも白色系の三波長混合蛍光体等、複数種の蛍光体が使用されている。このようなディスプレイに使用する蛍光ランプの発光色差の許容幅は、一般照明用の蛍光ランプに比べ狭く設定され、これの目的に用いられる小型蛍光ランプにはさらなる色差の改良が切望されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、複数種の蛍光体からなる蛍光体層を有する蛍光ランプの両端に発生する発光色差を小さくできる蛍光ランプの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【発明を解決するための手段】
本発明者等は上述した問題を解決するために鋭意検討した結果、このような蛍光ランプの両端に発生する発光色差と、蛍光体塗布懸濁液を調合する時に用いる蛍光体の流動性の間に強い相関関係があることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の蛍光ランプの製造方法は、透光性ガラス容器内面に複数種の蛍光体が混合されている蛍光体層を具備する蛍光ランプの製造方法において、蛍光体塗布懸濁液調合時に、安息角が70度以下である蛍光体を全蛍光体重量の2%以上混合することを特徴とする。
【0010】
粉体の流動性の測定には、タッピング充填過程、粉体層のせん断応力、安息角、運動角、圧縮率、或いはホッパからの流出速度の測定などがあり、これらは何れも粉体の流動現象の一面をとらえた測定であって、本質的には互いに関連している。本発明においては、この中で特に、古くから粉体の流動性の測定法として広く利用され、比較的簡便な安息角の測定を採用した。
【0011】
安息角の測定には、図1に示すような装置を用いる。蛍光体粉末(1)を、バイブレーター(2)で振動させた100メッシュの篩い(3)の上に徐々に投入し、3mmφの孔(4)より測定台(5)の上に静かに落下させ、ほぼ円錐状の蛍光体粉末の山(6)を作る。この円錐の5カ所について安息角(7)を測定し平均する。流動性が大きい蛍光体ではこの安息角が小さくなる。
【0012】
通常の蛍光ランプ用蛍光体の安息角の測定をすると、80度以上と殆ど流動性がない。蛍光体に流動性を持たせる方法として、蛍光体粒子表面に微粒子の物質を付着させる方法、蛍光体粒子を粉砕する方法、蛍光体粒子表面を酸などにより腐食する方法が適用できる。
【0013】
蛍光体粒子表面に付着させる微粒子の平均粒径は10nm〜2μmの範囲がよく、10〜100nmの範囲が少量で安息角の低下効果があるためにより好ましい。
【0014】
微粒子の付着量は蛍光体に対し1ppm以上が必要で、好ましくは3ppm以上10%以下であるが、実際の添加量は色差改良だけでなく、蛍光ランプの発光輝度、光束維持率等の発光性能についても考慮される。
【0015】
微粒子は紫外から可視域までの光を効率的に反射する白色物質であることが好ましい。しかし、顔料粒子のように蛍光ランプを着色するという別の目的から蛍光体塗布懸濁液に添加する場合、白色物質でなくても使用できることはいうまでもない。
【0016】
微粒子は化学的に安定であり、しかも、蛍光ランプの放電動作中において経時的に変化しないものが好ましい。例えば、アルカリ金属酸化物などは、蛍光ランプ中の水銀と容易に反応しアマルガムを形成し、蛍光ランプの外観を損ない、また、硫酸塩は白色物質であっても蛍光体を酸化する場合があり、避ける方が良い。
【0017】
このような条件を満たす物質として、SiO2、Al2O3、MgO、TiO2、Sb2O3、希土類金属酸化物等の酸化物、Al(OH)3、Mg(OH)2等の水酸化物、他にはアルカリ土類金属硼酸塩、ピロリン酸カルシウム等蛍光ランプ用の結着剤として実用されている物質などがある。
【0018】
これら微粒子を蛍光体粒子表面に付着させるのには、乾式法、湿式法がある、乾式法は、蛍光体と微粒子物質をボールミル等で混合する方法で、湿式法は、蛍光体及び微粒子を水、或いは有機溶剤中で混合し、脱溶媒、乾燥する方法であり、蛍光体粒子表面に微粒子物質をより均一に付着させることができる。また、湿式法において、微粒子と蛍光体とを強固に結合させるバインダー物質を用いることで、蛍光体塗布懸濁液を長寿命化でき、結果として蛍光ランプの品質を向上できる。
【0019】
バインダーとして、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、希土類水酸化物等の多価金属イオンが好ましく用いることができる。蛍光体、及び微粒子物質の懸濁液に塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の水溶性多価金属イオンの塩を加え、アンモニア水等の塩基性物質を加えることで、これら多価イオンは水酸化物となって、微粒子物質を、蛍光体粒子表面に抱き込みつつ析出する。
【0020】
また、アクリル樹脂エマルジョン、アラビアゴムとゼラチンのコアセルベーションによる凝集、カゼイン、ペクチン、及びアルギン酸亜鉛の凝集を利用するなどの有機バインダーを用いることもできる。
【0021】
蛍光ランプに流動性を与える別な方法として、蛍光体粒子を粉砕する方法がある。例えば、蛍光体をセラミックポットに入れ、強くボールミルすることで蛍光体は粉砕され、非常に多くの微粒子が生成する。この微粒子は蛍光体表面に付着して存在し、そのことで蛍光体の流動性は大きく改善される。しかし、この微粒子の生成は多くの場合、蛍光ランプ用蛍光体にとって発光性能を著しく低下することがある。微粒子は蛍光体励起に有用な紫外線を吸収するが殆ど発光しないからである。従って、このような方法が適さない蛍光体もある。
【0022】
蛍光体に流動性を与える他の方法として、蛍光体粒子表面を酸などにより腐食する方法がある。例えば、蛍光体水懸濁液に塩酸を加えpHを1以下にして、数時間〜数十時間保持し、洗浄し、乾燥すると非常に流動性の高い蛍光体を得ることはできる。この表面の腐食条件は蛍光体の組成による。
【0023】
これら上述した方法により、蛍光体の粒子表面に微粒子を形成し、そのことにより、蛍光体の流動性を大きく改善することができ、その結果、従来80度以上であったランプ用蛍光体の安息角を容易に70度以下にし、流動性の高い蛍光体を得ることができる。
【0024】
本発明には蛍光ランプ用蛍光体として通常用いられるものであれば適用できる。蛍光ランプ用蛍光体として、例えば、(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu、BaMg2A16O27:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、LaPO4:Ce,Tb、MgAl11O19:Ce,Tb、Y2O3:Eu、Y(PV)O4:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn、Sr10(PO4)6FCl:Sb,Mn、(SrMg)2P2O7:Eu、Sr2P2O7:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb、MgWO4、(BaCa)5(PO4)3Cl:Eu、Sr4Al14O25:Eu、Zn2SiO4:Mn、BaSi2O5:Pb、SrB4O7:Eu、(CaZn)3(PO4)2:Tl、LaPO4:Ce等の組成の蛍光体が使用できる。
【0025】
例えば3種類の蛍光体の発光を出力する蛍光ランプを得たい場合、少なくとも1つの蛍光体成分の安息角が70度以下であり、その蛍光体の割合が蛍光体全量の2%以上である必要がある。安息角が70度以下の蛍光体の割合がこれより少なくなると発明の効果が認められなくなる。また、安息角が70度以下の蛍光体成分数は1種よりも2種が好ましく、3種全部に安息角が70度以下の蛍光体を採用するのが最良である。
【0026】
さらに、各成分の安息角の値が互いに近似するように選択するのがより好ましく、5度以内のものが最も好ましい。
【0027】
蛍光体の成分数について、3種類の場合を例に取り説明したが、本発明は蛍光体の成分が2種類でも、4種類以上でも同じような作用を示す。
【0028】
本発明の蛍光ランプの製造方法は、蛍光体粒子に流動性を与える以外通常の蛍光ランプの製作方法がそのまま適用できる。例えば、微粒子を付着した蛍光体を含む蛍光体を、ニトロセルロース/酢酸ブチルバインダー溶液に仕込み、アルミナ、ピロリン酸カルシウム、或いはカルシウムバリウムボレート等の結着剤を必要量添加し、懸濁させて蛍光体塗布懸濁液を調製する。ここで、結着剤を加えるのは、蛍光体表面に付着した微粒子には結着剤としての効果がないためである。得られた蛍光体塗布懸濁液をガラス管の内面に流し込み、その後これに温風を通じることで乾燥させ、ベーキング、排気、フィラメントの装着、口金の取り付け等、通常の手順に従って本発明の蛍光ランプを仕上げる。
【0029】
また、本発明はカルボキシメチルセルロース、アンモニウムポリメタアクリレート或いはポリエチレンオキサイドのような水溶性バインダーを用いた水性塗布懸濁液を用いても同様に作用するが、特に有機溶媒を用いた場合に比べそれほど大きな効果を発揮しない。これは水性塗布の場合、一般に塗布懸濁液の粘度が油性塗布の場合に比べると大きく、その結果ガラス管への塗布工程において蛍光体が分離しにくく、蛍光ランプの両端色差はそれほど大きな問題にならないからである。
【0030】
【作用】
微粒子としてSiO2を任意の量付着させたBaMg2A16O27:Eu蛍光体(以下BAMと称す)を調製し、これを用いて安息角を測定した結果を図3に示す。SiO2を付着していない蛍光体の安息角が82度であるのに対し、わずか1ppm付着されることにより、安息角は70度に低下している。添加量が増加するに従い安息角は低下している。
【0031】
上記したSiO2を付着することで安息角を低下させ流動性を改善したBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLaPO4:Ce,Tb蛍光体(以下LAPと称す)を3g、安息角81度のY2O3:Eu蛍光体(以下YOXと称す)を5gを1%にニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、十分混合し、200メッシュのフルイを通し蛍光体塗布懸濁液を調製し、得られた蛍光体懸濁液を図2に示すように外径4mmφ長さ300mmのガラス管に流し込みその内面に塗布し、温風を通じて乾燥した。
【0032】
得られた蛍光体層を形成されたガラス管から、上下端より50mmの部分(図2中の点線部分)を割り出し、その部分に蛍光体層に254nmの紫外線を直接照射して蛍光体を励起し、得られる発光を入射と反対方向で受け、上部、下部の割り出した部分のCIE表色系の発光色度を測定する。次に、x,y座標上の色差△x、△yをそれぞれ計算し、その距離の1000倍値rを次式に従い算出した。結果を図4にプロットする。
r=1000×(△x2+△y2)1/2
【0033】
図4より、安息角70度以下で色差rは改善され、特に安息角60度以下では色差rは極めて小さくなる。安息角50度以下では色差rは従来品の10分の1になり、それ以上安息角を低下させてもその効果はほぼ飽和している。
【0034】
蛍光体粒子の流動性が改善されることにより、蛍光ランプの両端に形成される蛍光体層の蛍光体成分差が小さく抑えられ、その結果、蛍光ランプの色差を小さくすることがきた。
【0035】
【実施例】
[実施例1]
BAM蛍光体100gを、純水200gに懸濁させる。次にその中に日産化学製スノーテックスN(粒子径が10〜20nm)をSiO2として0.01gを添加し、5%硫酸亜鉛を14g加え、アンモニア水を加えて、pHを弱アルカリ性に調整することで、SiO2を蛍光体上に析出させ、BAM蛍光体表面に100ppmのSiO2を付着させた。これを水洗、分離、乾燥後、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果55度であった。
【0036】
上記した方法で得られたBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLAP蛍光体を3g、安息角81度のYOX蛍光体を5gを1%ニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、十分混合し、200メッシュのフルイを通し蛍光体塗布懸濁液を調製した。得られた蛍光体懸濁液を外径4mmφ長さ300mmのガラス管に流し込みその内面に塗布し、その後これに温風を通じることで乾燥させ、ベーキング、排気、フィラメントの装着、口金の取り付け等、通常の手順に従って本発明の蛍光ランプを仕上げた。
【0037】
蛍光ランプの両端の色差の測定については、前述したように蛍光体が塗布されたガラス管を割り出し、それに紫外線を照射し、得られる発光色を評価する方法で行った。rの値を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
LAP蛍光体に同様な方法で100ppmのSiO2を付着し、安息角57度のLAP蛍光体を得、それ以外実施例1と同様にして、蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表1に示す。
【0039】
[実施例3]
LAP蛍光体に同様な方法で100ppmのSiO2を付着し、安息角57度のLAP蛍光体を得、YOX蛍光体に同様な方法で100ppmのSiO2を付着し、安息角60度のYOX蛍光体を得、それ以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例4]
LAP蛍光体の代わりに、MgAl11O19:Ce,Tb蛍光体(安息角80度)(以下CATと称す)を仕込む以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表2に示す。
【0043】
[比較例2]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体を用いる以外実施例4と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
[実施例5]
BAM蛍光体の代わりに、同様な方法で1000ppmのSiO2を付着し、安息角42度の(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl蛍光体(以下SCAと称す)を仕込む以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表3に示す。
【0046】
[比較例3]
何の処理も施されていない安息角が82度のSCA蛍光体を用いる以外実施例5と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
[実施例6]
BAM蛍光体100gを、純水200gに懸濁させ、塩化ランタン水溶液をLaCl3として0.39gを添加し、アンモニア水を加えて、pHを10に調整することで、BAM蛍光体表面に3000ppmのLa(OH)3を析出させ、これを水洗、分離、乾燥後、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果60度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0049】
[実施例7]
BAM蛍光体100gにデグサ社製アロンCを1gをボールミルにより乾式混合し、Al2O3が表面に1%付着したBAM蛍光体を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果55度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0050】
[比較例4]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLAP蛍光体を3g、安息角81度のYOXを5gを1%ニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、これに、デグサ社製のアロンCをニトロセルロース/酢酸ブチル溶液にボールミルにより分散させた10%結着剤スラリーを、アルミナ固形分が蛍光体重量に対し1%になるように1.0g添加する以外、実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0051】
[実施例8]
BAM蛍光体100gを、純水200gに懸濁させ、塩化マグネシウム水溶液をMgCl2として0.49gを添加し、アンモニア水を加えて、pHを10に調整することで、BAM蛍光体表面に3000ppmのMg(OH)2を析出させ、これを水洗、分離、乾燥後、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果57度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0052】
[実施例9]
BAM蛍光体100gに日亜化学製ピロリン酸カルシウム結着剤NP−970−10を1gをボールミルにより乾式混合し、ピロリン酸カルシウムが表面に1%付着したBAM蛍光体を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果48度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0053】
[比較例5]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLAP蛍光体を3g、安息角81度のYOXを5gを1%ニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、これに、日亜化学製ピロリン酸カルシウム結着剤NP−970−10をニトロセルロース/酢酸ブチル溶液にボールミルにより分散させた10%結着剤スラリーを、ピロリン酸カルシウム固形分が蛍光体重量に対し1%になるように1.0g添加する以外、実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0054】
[実施例10]
BAM蛍光体100gに日亜化学製カルシウムバリウムボレート結着剤NP−970−05を1gをボールミルにより乾式混合し、カルシウムバリウムボレートが表面に1%付着したBAM蛍光体を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果50度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
[比較例6]
何の処理も施されていない安息角が82度のBAM蛍光体2gと、何の処理も施されていない安息角85度のLAP蛍光体を3g、安息角81度のYOXを5gを1%ニトロセルロース/酢酸ブチル溶液10gの中に仕込み、これに、日亜化学製カルシウムバリウムボレート結着剤NP−970−05をニトロセルロース/酢酸ブチル溶液にボールミルにより分散させた10%結着剤スラリーを、カルシウムバリウムボレート固形分が蛍光体重量に対し1%になるように1.0g添加する以外、実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
[実施例11]
内容量2リットルのセラッミックポットにBAM蛍光体100gと、10mmφのアルミナボールミルを500g入れ、60rpmの回転速度で20時間粉砕し、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果60度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表5に示す。
【0057】
[実施例12]
BAM蛍光体100gを、純水200gに懸濁させ、濃塩酸を10g添加して5時間攪拌した。その後、デカンテーションによりpHが5以上になるまで水洗し、アンモニア水を加えて、pHを弱アルカリ性に調整し、水洗、分離、乾燥後、200メッシュのフルイを通し蛍光体製品を得た。得られた蛍光体の安息角を測定した結果58度であった。この蛍光体を用いる以外実施例1と同様にして蛍光体塗布懸濁液を調製し、蛍光体層を塗布し蛍光ランプを作製した。同部分の発光色度を測定し、rの値を算出し結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、複数種の蛍光体からなる蛍光体層を有する蛍光ランプの製造方法において、安息角を低下させ流動性を改善した蛍光体を使用することにより、蛍光ランプ上部下部の蛍光体層の蛍光体成分比のズレを小さくでき、その結果両端色差の小さな蛍光ランプを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】蛍光体の安息角を測定する方法を示す斜視図。
【図2】本発明の蛍光ランプの塗布及び塗布膜の割り出し部分を示す斜視図。
【図3】蛍光体のシリカ付着量と安息角の関係を示す特性図。
【図4】安息角と蛍光ランプ両端の色差の関係を示す特性図。
【符号の説明】
1・・・・・蛍光体
2・・・・・バイブレーター
3・・・・・篩い
4・・・・・3mmφの孔
5・・・・・測定台
6・・・・・蛍光体粉末の山
7・・・・・安息角
Claims (3)
- 透光性ガラス容器内面に複数種の蛍光体が混合されている蛍光体層を具備する蛍光ランプの製造方法において、蛍光体塗布懸濁液調合時に、安息角が70度以下である蛍光体を全蛍光体重量の2%以上混合することを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
- 蛍光体粒子表面に付着させる微粒子の平均粒径は10nm〜2μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
- 前記微粒子の付着量は蛍光体に対し1ppm〜10%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
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