JP3320762B2 - 青色顔料の製造方法及び顔料付青色発光蛍光体 - Google Patents

青色顔料の製造方法及び顔料付青色発光蛍光体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、青色顔料の製造方法、
並びに、カラーブラウン管等の蛍光体膜に適した顔料付
青色発光蛍光体に関する。
【0002】
【従来の技術】カラーブラウン管や蛍光表示管等の画像
のコントラストを向上させるために蛍光面における外光
の反射を吸収するフィルターを蛍光体表面に付着するこ
とは知られている。青色発光蛍光体においては、その発
光ピークである450nm付近における吸収ができるだ
け少なく、それ以外の波長領域における吸収ができるだ
け多い顔料を使用することが要求される。
【0003】この種の青色顔料として、特開昭54─2
8784号公報に群青(3NaAl・SiO2 ・Na2
2 )、紺青(Fe4 Fe( CN) 6 3 ・nH
2 O)、アルミン酸コバルト(CoO・nAl2 3 )
、セルリアンブルー(CoO・nSnO2 ) 、硫化銅
(CuS)等が提案されている。
【0004】しかし、一般に実用されているアルミン酸
コバルトは、体色が青色蛍光体の発光スペクトルと一致
せず、特に、490nm付近の反射率が高いためにコン
トラストの向上を目的とするときには有効でない。ま
た、一部に実用されている群青は、アルミン酸コバルト
に比べて優れた特性を有するものの、化学的安定性が極
めて乏しいために、蛍光体への付着工程やブラウン管へ
の塗布工程において退色する欠点を有している。特に、
ブラウン管を作製した後、電子線照射によって顕著にそ
の体色を変化させ、蛍光面の発光スペクトルのピークを
シフトさせるという欠点がある。
【0005】一方、先に提案した特願平3─14863
6号出願のCoO・ZnO・SiO2 系青色顔料は、顔
料付蛍光体における色調、堅牢性の点でアルミン酸コバ
ルトや群青より優れている。しかし、この種の無機酸化
物顔料は、従来、酸化物或いは炭酸塩、塩化物などの原
料を乾式で混合し、900℃以上の温度で焼成し、冷却
後粉砕する方法で製造されていたが、CoO・ZnO・
SiO2 系青色顔料をこの方法で製造すると、十分な色
調を保持したまま0.5ミクロン以下の粒子径の顔料を
得ることは困難であった。そして、これらの比較的粒子
径の大きなCoO・ZnO・SiO2 系青色顔料は、蛍
光体に対する付着力及び着色力が必ずしも十分でなく、
これを補うためには多量の顔料を付着する必要があっ
た。しかし、顔料を多量に付着すると、輝度が低下する
という問題があった。
【0006】そこで、本発明者等は、特願平3─240
237号出願において、蛍光体への付着力及び着色力に
優れ、輝度低下を招くことのないCoO・ZnO・Si
2系青色顔料の製造方法並びにその顔料を付着した青
色発光蛍光体を提案した。即ち、コバルトと亜鉛を含む
水溶液にアルカリ水溶液を添加し、コバルトと亜鉛を水
酸化物として共沈させ、有機溶媒で水を置換した後、加
水分解により酸化珪素を沈殿の表面に沈着させ、焼成す
ることを特徴とする蛍光体用CoO・ZnO・SiO2
系青色顔料の製造方法並びにその顔料を付着した青色発
光蛍光体を提案した。この製造方法は、沈殿法を採用す
るところから、従来の完全乾式法に比べて顔料の小粒子
化がある程度可能であるが、有機溶媒を用いるため、工
業的価値が低い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の製造
方法で得た青色顔料の蛍光体への付着力及び着色力を一
層改良し、高輝度を保持しながら、コントラストを向上
させ、かつ、有機溶媒を用いずに、より安価なCoO・
ZnO・SiO2 系青色顔料を製造する方法並びにその
顔料を付着した青色発光蛍光体を提供しようとするもの
である。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、CoO・Zn
O・SiO2 系青色顔料の製造方法において、コバルト
と亜鉛を含む水溶液に、それ自身、水に溶解し、コバル
ト並びに亜鉛と反応して水難溶性若しくは水不溶性物質
を生成する有機化合物を沈殿剤として添加し、コバルト
と亜鉛を共沈させ、乾燥させた後、酸化珪素を混合し、
焼成することを特徴とする青色顔料の製造方法である。
【0009】ここで、コバルトと亜鉛を含む水溶液とし
ては、塩化物、フッ化物、ヨウ化物、臭化物、硫酸塩、
硝酸塩等を使用することができ、沈殿剤としては、それ
自身、水に溶解し、コバルト並びに亜鉛と反応して水難
溶性若しくは水不溶性物質を生成する有機化合物、例え
ば、蓚酸、酒石酸等を用いることが好ましい。これらの
沈殿剤を選択する理由は、反応性が均一であり、かつ、
工業的に入手が容易で安価なためである。
【0010】なお、上記の顔料の焼成時に必要に応じて
各種の融剤やその他の元素を含有させることができる。
具体的には、Li,Na,K,Ca,Mg,Ba,F
e,Ni,Cu,Mn,Ti,V,Al,Sn,Sb,
Cr,Pr等を含有させてもよい。これらの元素は約5
重量%以下の範囲で添加することができる。これを超え
ると、青色顔料として好ましい色調を得ることができな
くなる。
【0011】酸化珪素としては、より反応性に優れた比
表面積100m2 /g以上の超微粒子の無水物を用いる
ことが好ましい。上記の比表面積を越えると、低温焼成
時に十分な反応性を得ることができない。そして、上記
のコバルト及び亜鉛の反応生成物に酸化珪素を混合した
後、空気中で900〜1000℃の範囲で焼成すること
が好ましい。この方法により、平均粒子径0.5μm以
下、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲のCoO・Z
nO・SiO2 系青色顔料を容易に製造することができ
る。
【0012】
【作用】本発明者等は、各種の青色顔料について、その
平均粒子径と付着力の関係を調べたところ、図1のよう
な関係を得た。ここで、付着力とは、界面活性剤を0.
1%加えた水中で顔料付蛍光体を振り混ぜた後、2時間
放置し、上澄みの600nmにおける透過率を測定した
ものである。数値が小さい場合は、顔料が水中で剥離さ
れ、透過率を低下させたものであり、顔料の付着力が弱
いことを示している。図1から明らかなように、顔料の
平均粒子径が0.5ミクロンを越えると付着力が弱くな
り、実用上問題があることが分かる。
【0013】本発明者等は、CoO・ZnO・SiO2
系青色顔料付青色発光蛍光体を種々検討する過程で、平
均粒子径が0.5ミクロン以下の顔料を用いると、蛍光
体への付着力と着色力が向上することを見出し、同時
に、かかる平均粒子径の顔料の製造方法も確立すること
に成功した。図2は、下記実施例で得た平均粒子径0.
14ミクロンのCoO・ZnO・SiO2 青色顔料のS
EM写真である。この写真から明らかなように、本発明
の方法で得たCoO・ZnO・SiO2 系青色顔料は、
表面が滑らかで独特の形状を有し、かつ、極めてシャー
プな粒度分布を有していることが分かる。このような形
態が、本発明の特徴である蛍光体への付着力や着色力、
さらにはコントラストの向上に寄与しているものと考え
られる。
【0014】なお、本発明で使用することのできる青色
発光蛍光体としては、380〜500nmの範囲内に発
光スペクトルの主要部を有するもので、具体的には銀付
活硫化亜鉛系蛍光体〔ZnS:Ag,X(Xはハロゲン
又はAl)、ZnS:Ag,M,X(MはGa,In
等、Xはハロゲン又はAl)〕、Y2 SiO5 :Ce、
Ca2 5 9 Cl:Eu、(Bax Mg1-x ) O・n
Al2 3 :Eu(0≦x≦1,7≦n≦8)、SrS
3 8 Cl4 :Eu、CaWO4 、CaWO4:P
b、BaFCl:Eu、Gd2 2 S:Tb、ZnS:
Zn等を挙げることができる。上記の青色顔料の付着量
は、0.3〜15重量%の範囲が好ましい。付着量が下
限値を下回るとフィルター効果が小さすぎ、また、上限
値を越えると、発光輝度が十分でなくなる場合がある。
【0015】また、上記の青色顔料は、蛍光体への適用
の他に、一般的な顔料としても、従来の青色顔料と比較
して、より小粒子であるため、例えば樹脂の着色力、隠
蔽力などが優れており、極めて広範囲な分野で有効であ
る。
【0016】
【実施例】
(青色顔料の製造例)塩化コバルト(6水和物)32部
と塩化亜鉛22.3部を脱塩水500部に溶解した。ま
た、蓚酸(2水和物)40部を脱塩水500部に溶解し
た。そして、金属塩水溶液を攪拌しながら蓚酸水溶液を
添加した。さらに、15分間攪拌を続けた後、約1時間
静置して上澄みを除き90℃で乾燥した。乾燥後、比表
面積200m2 /gの酸化珪素9.67部を乾式で混合
して1000℃で1時間焼成し、粉砕して平均粒子径
0.14μmのxCoO・yZnO・zSiO2 系青色
顔料(x=0.8,y=1.0,z=1.0)を得た。
図2はこの青色顔料の粒子構造を示したSEM写真であ
る。
【0017】(青色顔料付青色発光蛍光体の製造例)銀
付活硫化亜鉛青色発光蛍光体100部に対し、蒸留水1
00部を加えてスラリーとし、これに、上記の青色顔料
3部を加えて45℃に加温しながら、バインダーとして
ゼラチン0.36部及びアラビアゴム0.3部を水溶液
にしたものを加え、酢酸によってpHを4.1に調整し
てから室温まで放冷し、その後、50%のグルタルアル
デヒド水溶液7.5部を加えてバインダーを硬化させ
た。
【0018】(比較例)酸化コバルト60部、酸化亜鉛
103部、酸化珪素64部を乾式で混合し、空気中で1
300℃で2時間焼成し、粉砕して平均粒子径0.64
ミクロンのxCoO・yZnO・zSiO2 顔料(x=
0.8,y=1.3,z=1.0)を得た。図3はこの
青色顔料の粒子構造を示したSEM写真である。この青
色顔料を実施例と同様の条件で銀付活硫化亜鉛青色発光
蛍光体に付着した。
【0019】(フィルター効果の比較)実施例及び比較
例で得た顔料付蛍光体の拡散反射率を測定して図4に示
した。顔料を同量付着したものであるが、小粒子顔料を
付着した実施例の方が、600nm付近の反射率が低く
フィルター効果が優れていることが分かる。
【0020】
【発明の効果】本発明は、上記の構成を採用することに
より、蛍光体への付着力及び着色力の優れた平均粒子径
0.5ミクロン以下のxCoO・yZnO・zSiO2
系顔料を提供することができ、また、青色発光蛍光体に
該顔料を付着することにより、高輝度を保持しながら、
コントラストの向上を図ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】青色顔料の平均粒子系と付着力の関係を示した
グラフである。
【図2】実施例で得た平均粒子径0.14ミクロンのx
CoO・yZnO・zSiO2顔料(x=0.8,y=
1.0,z=1.0)の粒子構造を示したSEM写真で
ある。
【図3】比較例で得た平均粒子径0.64ミクロンのx
CoO・yZnO・zSiO2顔料(x=0.8,y=
1.3,z=1.0)の粒子構造を示したSEM写真で
ある。
【図4】実施例及び比較例で得た顔料付蛍光体の拡散反
射率を示したグラフである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−131652(JP,A) 特開 昭61−163123(JP,A) 特開 昭63−319216(JP,A) 特開 昭64−42324(JP,A) 特開 昭53−7169(JP,A) 特開 昭54−28785(JP,A) 特表 平6−510272(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 33/20 - 33/46 C09K 11/00 - 11/89 CA(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CoO・ZnO・SiO2 系青色顔料の
    製造方法において、コバルトと亜鉛を含む水溶液に、そ
    れ自身、水に溶解し、コバルト並びに亜鉛と反応して水
    難溶性若しくは水不溶性物質を生成する有機化合物を沈
    殿剤として添加し、コバルトと亜鉛を共沈させ、乾燥さ
    せた後、酸化珪素を混合し、焼成することを特徴とする
    青色顔料の製造方法。
  2. 【請求項2】 上記有機化合物として、蓚酸又は酒石酸
    を用いることを特徴とする請求項1記載の青色顔料の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 上記酸化珪素として、比表面積100m
    2 /g以上の超微粒子の無水酸化珪素を用いることを特
    徴とする請求項1又は2に記載の青色顔料の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方
    法で製造されたCoO・ZnO・SiO2 系青色顔料を
    青色発光蛍光体の表面に付着してなる顔料付青色発光蛍
    光体。
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