JP3591527B2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はアンチスキッド装置に関するものであり、特に、低速走行時における過剰な減圧に基づく制動力の不足の回避に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アンチスキッド装置は、一般に、次のように構成される。(a)液圧源と、(b)リザーバと、(c)液圧源とリザーバと車両の車輪の回転を抑制するブレーキ装置のブレーキシリンダとの間に設けられ、少なくとも、ブレーキシリンダを液圧源に連通させてブレーキシリンダの液圧を増大させる増圧状態と、ブレーキシリンダを前記リザーバに連通させてブレーキシリンダの液圧を減少させる減圧状態とに切り換わる液圧制御弁装置と、(d)車輪の速度を取得する車輪速度取得手段と、(e)車両の走行速度を取得する走行速度取得手段と、(f)それら車輪速度取得手段と走行速度取得手段とがそれぞれ取得する車輪速度と走行速度とに基づいて液圧制御弁装置を切り換え、車輪のスリップを適正範囲に制御する制御手段とを含むように構成されるのである。
【0003】
このようなアンチスキッド装置においては、低速走行時に減圧が過剰に行われ、制動力が不足する傾向がある。その原因は様々であるが、例えば、特開平3−292247号公報に記載のアンチスキッド装置においては、走行速度が車輪速度から取得されることが過剰減圧の原因となっている。走行速度が車輪速度から取得される場合、4輪の車輪速度のうち、最も速い車輪速度と前後加速度センサにより検出される減速度とに基づいて取得されるのであるが、アンチスキッド制御時にはブレーキシリンダ圧の変動により車輪速度が変動し、それに伴って走行速度も相当変動する。そして、走行速度および車輪速度が低くなれば、これらの変動の影響が大きく現れてスリップ率が大きく変動し、実際にはスリップ率が適正範囲を超えていないのに超えていると判断されて減圧が行われ、減圧過剰となる傾向があるのである。そのため、上記公報に記載のアンチスキッド装置においては、走行速度が設定値以下になった場合には、走行速度が設定値以下になったときに前後加速度センサにより検出される減速度に基づいて、車輪速度に関係なく走行速度が取得されるように構成され、減圧が過剰に行われないようにされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低速走行時に減圧が過剰となる原因には、上記公報に記載の原因の他に種々のものがある。例えば、車輪速度がパルス式回転センサの検出結果に基づいて取得されることも原因の一つとなる。パルス式回転センサは、車輪と共に回転し、周縁に多数の歯を有するロータと、車体に取り付けられたコイルおよび永久磁石と、ロータの回転に伴ってコイルに発生する交流電圧をパルス信号に変換する波形整形器とを有し、パルス信号の周期から車輪速度を演算することができる。しかし、後に実施例の項において詳細に説明するように、走行速度が低くなればパルスの周期が長くなって車輪速度の検出の遅れが大きくなり、これが過剰減圧の一因となるのである。
【0005】
このパルス式回転センサを使用することによる過剰減圧は、前記公報に記載の手段によっては防止することができない。車輪速度に基づく走行速度の取得をやめても、車輪速度をパルス式回転センサの検出結果に基づいて取得するのであれば、車輪速度の検出の遅れによる減圧過剰は回避できないからである。
本発明は、低速走行時における減圧過剰が如何なる原因で生じても制動力の不足を可及的に回避することができるアンチスキッド装置を提供することを課題として為されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上記の課題を解決するために、図1に示すように、前記(a)液圧源1,(b)リザーバ2,(c)ブレーキ装置のブレーキシリンダの液圧を制御する液圧制御弁装置3,(d)車輪速度取得手段4,(e)走行速度取得手段5および(f)制御手段6を含むアンチスキッド装置の制御手段6を、(1)ブレーキシリンダの液圧を急増圧した後に緩増圧することによって増圧制御する手段と、(2)走行速度が設定値以下の場合には、急増圧の時間を走行速度が設定値を超える場合より長くすることによって、急増圧と緩増圧とを均した増圧勾配を、走行速度が設定値を越える場合より急にする低速走行時増圧制御手段7とを含むものとしたことを要旨とする。
さらに、請求項2の発明は、低速走行時制御手段を、ブレーキシリンダの液圧の増圧勾配を前記走行速度が設定値以下であり、かつ、ブレーキシリンダの液圧の前回の減圧時間が設定時間より長い場合に急にするものとしたことを要旨とし、請求項3の発明は、低速走行時制御手段を、ブレーキシリンダの液圧の増圧勾配を減圧時間が長いほど急にする手段を含むものとすることを要旨とする。
【0007】
ブレーキシリンダの液圧の増圧勾配は、例えば、増圧が液圧制御弁装置3の増圧状態と減圧状態との切換えにより行われる場合には、各回の増圧時間を長く設定し、あるいは各回の減圧時間を短く設定し、あるいは増圧状態のみに切り換えることにより急にすることができる。また、増圧勾配は、ブレーキシリンダ圧を増圧させる間、継続して急にしてもよく、増圧開始時のみに急にしてもよい。
液圧制御弁装置3が増圧状態と保持状態と減圧状態とに切換え可能な装置であって、増圧が増圧状態と保持状態との切換えによって行われる場合も同様である。
さらに、増圧が急増圧と緩増圧とによって行われる場合には、急増圧時間を長くし、緩増圧時間を短くすることにより実質的に急にすることができる。このようにすれば、急増圧と緩増圧とからなる増圧全体の勾配が実質的に増大することになるのである。
【0008】
【作用】
このように走行速度が設定値以下の場合にブレーキシリンダの液圧の増圧勾配を急にすれば、減圧が過剰に行われても、ブレーキシリンダ圧の余分な減少を早急に取り戻すことができる。
【0009】
なお、車輪速度が設定値以下になった場合に増圧状態における増圧勾配を急にしてブレーキシリンダ圧の余分な減少を補うことも可能である。走行速度は、制動が開始され、一旦減少し始めればそのまま減少するのが普通であり、走行速度が設定値以下に達した後はアンチスキッド制御が解除されるまで増圧勾配が急にされる。それに対し、車輪速度はブレーキシリンダ圧の変動により増減するため、一旦、設定値以下になった後に再び設定値を超えることがあり、その場合には増圧勾配を急にする制御が中止されるのであるが、やがて車輪速度が設定値を超えることもなくなって増圧勾配を急にする制御が継続して行われる。したがって、車輪速度が設定値以下の場合に増圧勾配を急にすることも本発明の技術的範囲に包含されるものとする。
【0010】
【発明の効果】
このように本発明によれば、低速走行時に減圧が過剰に行われても、増圧勾配が急にされることによりブレーキシリンダ圧の余分な低下が急速に取り戻されるため、制動力の不足が小さくて済み、制動距離の延びを抑えることができ、車両を良好に停止させることができる。
また、本発明は、増圧勾配を急にすることによってブレーキシリンダ圧の不足を補うものであるため、ブレーキシリンダ圧の過剰な減圧の原因が前記公報に記載されているように車輪速度および走行速度の変動であっても、あるいはパルス式回転センサの使用による車輪速度の取得遅れであっても制動力の不足を回避することができる。
【0011】
【実施例】
以下、四輪自動車用液圧ブレーキ装置のアンチスキッド装置に本発明を適用した場合の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図2において、10は液圧源としてのタンデム型マスタシリンダである。マスタシリンダ10にはブースタ12を介してブレーキペダル14が接続されており、ブレーキペダル14の踏込み操作に応じて、マスタシリンダ10のそれぞれ独立した2つの加圧室に同じ高さの液圧が発生する。16は、マスタシリンダ10に取り付けられ、これにブレーキ液を補給するリザーバである。
【0012】
マスタシリンダ10の各加圧室に発生した液圧は、それぞれ左右前輪20,22および左右後輪24,26にそれぞれ設けられたブレーキ装置のフロントブレーキシリンダ30,32およびリヤブレーキシリンダ34,36に供給される。本実施例の液圧ブレーキ装置は前後2系統式となっているのである。前後のブレーキ系統は基本的な構成がほぼ同じであるので、以下、同様の作用を為すものについて前後の系統に共通の符号を付すとともに、前輪のブレーキ系統を主体に説明し、後輪のブレーキ系統については必要に応じて補足することとする。
【0013】
マスタシリンダ10とフロントブレーキシリンダ30,32とをつなぐ主液通路の途中には、各フロントブレーキシリンダ30,32にそれぞれ対応した2つの液圧制御弁装置としての電磁制御弁40が設けられており、それにより主液通路がマスタシリンダ側通路42とブレーキシリンダ側通路44とに分けられている。後輪24,26のブレーキ系統では、図から明らかなように電磁制御弁40がリヤブレーキシリンダ34,36に対して共通とされている。
【0014】
各電磁制御弁40は、増圧状態と保持状態と減圧状態との3つの状態に切換えが可能な切換弁である。増圧状態は、図2に示されるように、マスタシリンダ側通路42を各対応するブレーキシリンダ側通路44に連通させて、マスタシリンダ側通路42に供給されるブレーキ液によって各対応するフロントブレーキシリンダ30,32の液圧を増大させる状態である。保持状態は、マスタシリンダ側通路42,ブレーキシリンダ側通路44およびリザーバ通路48のすべてを遮断して、対応するフロントブレーキシリンダ30,32の液圧を一定に保持する状態である。また、減圧状態は、各対応するブレーキシリンダ側通路44をリザーバ通路48を介して共通のリザーバ50に連通させ、フロントブレーキシリンダ30,32からリザーバ50へのブレーキ液の流出によりフロントブレーキシリンダ30,32の液圧を減少させる状態である。
【0015】
リザーバ50に収容されたブレーキ液はポンプ52によって汲み上げられる。ポンプ52はモータ54により駆動され、リザーバ50内のブレーキ液はアキュムレータ56により脈動を緩和されつつ逆止弁58を備えたポンプ通路60を経て、マスタシリンダ側通路42へ供給される。ポンプ52の前後にはリザーバ50からアキュムレータ56へ向かう方向を順方向とする一対の逆止弁64が設けられ、ブレーキ液がリザーバ50へ逆流しないようにされている。
【0016】
また、マスタシリンダ側通路42とブレーキシリンダ側通路44との間には、各電磁制御弁40をバイパスするバイパス通路70がそれぞれ接続され、それらバイパス通路70の途中に各フロントブレーキシリンダ30,32側からマスタシリンダ10側へ向かう方向を順方向とする逆止弁72がそれぞれ設けられている。したがって、ブレーキペダル14の踏込みが解除され、マスタシリンダ液圧が低下させられた場合には、フロントブレーキシリンダ30,32から各電磁制御弁40をバイパスしてブレーキ液が速やかにマスタシリンダ10へ戻される。
【0017】
電磁制御弁40の切換えは、制御装置80によって行われる。制御装置80はマイクロコンピュータを主体とするものであり、左前輪20および右前輪22の各回転速度と左右後輪24,26の平均回転速度とをそれぞれ検出する回転センサ82の出力信号からそれら車輪20,22,24,26のスリップ状態を推定し、各電磁制御弁40のソレノイド84に対する電流の供給量を制御することにより、電磁制御弁40を前記3つの状態に切り換えて、左前輪20および右前輪22の各スリップ率と左右後輪24,26の平均スリップ率とが適正な値となるように制御する。回転センサ82はパルス式回転センサであり、車輪速度に応じた数のパルスが制御装置80に供給される。また、制御装置80には、ブレーキペダル14の踏込みを検出するブレーキスイッチ86が接続されている。
【0018】
制御装置80の主体を成すマイクロコンピュータのRAMには、図3に示すように、フラグFおよびカウンタ92がワーキングメモリと共に設けられている。また、マイクロコンピュータのROMには、図4に示すアンチスキッド制御用の制御モード選択マップが格納されている。この制御モード選択マップは、車輪速度Vが制御基準速度VSN,VSHより大きいか否か、車輪加速度V´が基準加速度G ,G より大きいか否かにより減圧か増圧か保持かを選択するマップである。制御基準速度VSHおよび制御基準速度VSNは、自動車の走行速度にそれぞれ一定の比率を掛けることにより算出され、制御基準速度VSHはVSNより低い値に設定される。また、基準加速度G は正の値であり、基準加速度G は負の値であって、これらは予め一定の値に設定されている。
【0019】
制御モード選択マップにおいて減圧モードとは、電磁制御弁40を減圧状態に切り換えたままにしてブレーキシリンダ圧を急速に減少させるモードであり、保持モードとは、電磁制御弁40を保持状態にしてブレーキシリンダ圧を一定の高さに保つ状態である。また、パルス増モードとは、電磁制御弁40を増圧状態と保持状態とに交互に切り換えることによりブレーキシリンダ圧を緩やかに増大させるモードであり、増圧状態と保持状態との時間は予め設定されている。
【0020】
さらに、ROMには、図5にフローチャートで示すアンチスキッド制御ルーチンが格納されている。以下、このフローチャートに基づいてアンチスキッド制御について説明する。
【0021】
まず、ステップ1(以下、S1と略記する。他のステップも同じ。)において回転センサ82の検出値が読み込まれるとともに、車輪速度(車輪周速度)V,車輪加速度V′,走行速度Vs,車体減速度および制御基準速度VSN,VSHが演算される。走行速度Vsは、常には4輪の車輪速度のうち最も速い速度が走行速度と推定され、その最速車輪の減速度が予め設定されている上限値を超えた後には減速度をその上限値に固定して走行速度Vsが演算される。次いでS2が実行され、フラグFがセットされているか否かの判定が行われるが、この判定結果はNOであり、S3においてアンチスキッド制御開始条件が成立したか否かの判定が行われる。
【0022】
本実施例においてアンチスキッド制御開始条件は、ブレーキペダル14が踏み込まれていること、車輪速度Vが制御基準速度VSN以下であり、かつ、車輪加速度V′が基準加速度G 以下であることである。これらのアンチスキッド制御開始条件が満たされていなければS3の判定結果はNOとなり、S6においてフラグがリセットされ、カウンタ92がクリアされるとともに電磁制御弁40が増圧状態に切り換えられてルーチンの実行は終了する。
【0023】
アンチスキッド制御開始条件が成立すればS3の判定結果はYESとなり、S4においてフラグFがセットされた後、S5が実行され、アンチスキッド制御終了条件が成立したか否かの判定が行われる。アンチスキッド制御終了条件はブレーキペダル14の踏込みが解除されたことであり、終了条件が成立すればS5の判定結果はYESとなり、S6の実行後、ルーチンの実行は終了する。
【0024】
アンチスキッド制御開始条件が成立し、アンチスキッド制御終了条件が成立していなければS7が実行され、制御モードの選択が行われる。S1で演算された車輪速度Vおよび車輪加速度V′に基づいて図4に示す制御モード選択マップに従って制御モードが選択されるのである。
【0025】
選択後、S8が実行され、選択された制御モードが減圧モードであるか否かの判定が行われる。減圧モードであればS8の判定結果はYESとなり、S9においてカウンタ92のカウント値Cが1増加させられた後、S10において減圧指令信号が出力され、それにより電磁制御弁40が減圧状態に切り換えられてブレーキシリンダ圧が減少させられ、車輪のスリップが減少させられる。減圧モードが選択される間、S1,S2,S5,S7〜S10が繰り返し実行され、カウンタ92により減圧時間が計測される。
【0026】
車輪の回転が回復し、パルス増モードあるいは保持モードが選択されればS8の判定結果はNOとなってS11が実行され、パルス増モードが選択されているか否かの判定が行われる。パルス増モードでなければ保持モードであり、S11の判定結果はNOとなり、S12において保持指令信号が出力されて電磁制御弁40が保持状態に切り換えられる。
【0027】
それに対し、選択された制御モードがパルス増モードであればS11の判定結果はYESとなり、S13が実行されて増圧開始時の急増圧時間が演算される。前述のように増圧は、電磁制御弁40を増圧状態と保持状態とに繰り返し切り換えることにより緩やかに行われのであるが、増圧開始時には、保持時間が予め設定されているより短くされ、図8(c)に実線で示すように増圧勾配が急にされて増圧の立ち上がりが良くされる。なお、図にはブレーキシリンダ圧の増大は1本の直線によって示されているが、増圧状態と保持状態との切換えが繰り返し行われていて、ブレーキシリンダ圧は実際には段階的に増大させられる。S13における増圧時間の演算は、この増圧開始時において保持時間が短くされることによる急増圧時間の演算であり、急増圧時間はカウンタ92のカウント値Cによって表される減圧時間(以下、Cで表す)に基づいて演算される。急増圧時間は減圧時間Cが長いほど長くされるのである。
【0028】
急増圧時間の演算後、S14が実行され、減圧時間Cが設定時間C以上であるか否かの判定が行われる。減圧が設定時間C以上行われた場合にはS14の判定結果がYESとなり、S15において自動車の走行速度が設定値(本実施例においては15km/h)以下であるか否かの判定が行われる。設定値以下であればS15の判定結果はYESとなり、S16においてS13で演算された急増圧時間に一定値αが加えられて低速走行時急増圧時間が求められ、S17においてカウンタ92がクリアされる。
【0029】
減圧が設定時間Cより短い時間行われたのであればS14の判定結果がNOとなり、また、減圧が設定時間C以上行われても走行速度が設定値より大きい場合にはS15の判定結果はNOとなり、S16,S17は実行されない。したがって、S14,S15のいずれかがNOの場合には、S18においては増圧指令信号およびS13で求めた急増圧時間が出力され、それにより電磁制御弁40が増圧状態に切り換えられるとともに、増圧開始時には図8(c)に実線で示すようにブレーキシリンダ圧が増大させられる。また、S14,S15の判定結果がいずれもYESとなってS16において低速走行時急増圧時間が求められた場合には、S18において増圧指令信号およびS16で求めた低速走行時急増圧時間が出力され、それにより電磁制御弁40が増圧状態に切り換えられるとともに、増圧開始時には、走行速度が設定値を超える場合より急な勾配で図8(c)に二点鎖線で示すようにブレーキシリンダ圧が増大させられる。
【0030】
上記のように自動車の走行速度が設定値以下の場合に増圧開始時の急増圧時間が一定値αだけ長くされるのは、走行速度が低い場合には回転センサ82からのパルス信号の周期が長く、車輪速度の検出に遅れが生じてブレーキシリンダ圧が過剰に減少させられることがあるからである。この検出時間の平均的な遅れTは次式によって求めることができる。
T=ΔT/2+車輪速度の演算周期/2
ただし、
ΔT:時速Akm/hの際の回転センサ82のパルスの立ち下がり時の時間間隔
【0031】
車輪速度の演算はパルス信号の立ち下がりに基づいて行われ、図6に示すa〜fの演算タイミング中、タイミングa,c,fにおいて車輪速度が演算されるのであり、相前後する立ち下がりの間に車輪速度は時々刻々変化しているが、演算によって得られる車輪速度は相前後する立ち下がり間の車輪速度の平均値であり、かつ、相前後するパルス信号の立ち下がり時間間隔の半分の時期の車輪速度が平均速度であると考えるとよく、最新の立ち下がり時に対してΔT/2の遅れが生ずることになる。また、パルス信号の立ち下がりと演算タイミングとの間には最小0,最大演算周期のずれが生ずるのであり、演算周期に基づく遅れは平均して演算周期の半分に等しいと考えてよく、車輪速度の演算遅れはこれらを合わせた時間生ずるとすることができる。例えば、ロータに歯が48個設けられている場合、時速10km/hではパルス発生間隔は13msであり、車輪速度の演算周期を5msとすれば、平均9ms(最小6.5ms,最大11.5ms)の遅れが生ずる。
【0032】
なお、図6に示す演算タイミング中、タイミングb,d,eにおいては前回の演算タイミングとの間にパルス信号の立ち下がりがなく、この場合には車輪速度は前回演算された車輪速度およびその車輪速度が得られたときの車体加速度に基づいて推定される。
【0033】
このように車輪速度の検出に遅れが生ずれば、減圧が過剰に行われる。車輪速度の検出に遅れが生じ、図7(a)に示すように増圧終了にΔt時間の遅れが生じた場合、遅れた分、ブレーキシリンダ圧が高くなる。また、図7(b)に示すように減圧終了にΔt時間の遅れが生じた場合、遅れた分、減圧が余分に行われる。これら増圧終了遅れおよび減圧終了遅れは同じ確率で生ずるが、減圧は急減圧により行われ、増圧は緩増圧で行われるため、減圧の方が大きく、ブレーキシリンダ圧が過剰に減少させられる。
【0034】
また、増圧終了に遅れが生じた場合、ブレーキシリンダ圧はそれほど過大になっていなくてもスリップは進行するため、図7(c)に示すように、その大きなスリップを減少させるために大きく減圧が行われ、これによっても減圧過剰となる。増圧終了に遅れが生じても、緩増圧によるブレーキシリンダ圧の増大は僅かであるにもかかわらず、減圧が大きく行われることにより減圧過剰となるのである。これら図7(a),(b),(c)にそれぞれ示す現象は全部あるいは一部が重畳して生じ、ブレーキシリンダ圧が過剰に減少させられる。
【0035】
このように走行速度が低い場合には車輪速度の検出遅れによってブレーキシリンダ圧が過剰に減少させられることがあるのであるが、車輪速度に検出遅れが生じても路面の摩擦係数の増大等により車輪速度が早く回復して減圧が早く終了し、あるいは車輪速度の検出遅れが比較的小さかった等の理由により減圧が過剰に行われない場合がある。このような場合にブレーキシリンダ圧の急増圧時間が長くされれば、図9に二点鎖線で示すように車輪速度および車輪加速度が急速に減少してスリップが増大することとなるが、本実施例においては減圧時間が測定され、減圧時間が設定値を超えるか否かによって減圧が実際に過剰に行われたか否かが判定されるようになっており、減圧時間が設定値を超えない場合にはS14の判定結果がNOとなって急増圧時間は長くされないため、ブレーキシリンダ圧が過剰に増大させられてスリップが進行することが防止される。
【0036】
このように本実施例においては車輪速度がパルス式回転センサ82によって検出されるようになっており、低速走行時に車輪速度の検出に遅れが生じ、減圧が過剰に行われる傾向があるが、その後の増圧時にブレーキシリンダ圧を急勾配で増大させることにより制動力が不足せず、制動距離を延ばすことなく自動車を停止させることができる。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、回転センサ82,ROMのS1を記憶する領域およびCPUのS1を実行する部分が車輪速度取得手段4を構成し、また、走行速度取得手段5を構成している。また、ROMのS2〜S8,S10〜S12,S18を記憶する領域およびCPUのそれらステップを実行する部分が制御手段6を構成し、ROMのS9,S13〜S17を記憶する領域ならびにCPUおよびRAMのそれらステップを実行する部分が低速走行時増圧制御手段7を構成しているのである。
【0038】
なお、上記実施例において低速走行時急増圧時間を算出するために増圧開始時急増圧時間に加えられるαは一定値とされていたが、減圧時間が長いときにはαを大きくするなど、状況に応じてαを変更することも可能でる。
【0039】
また、上記実施例において自動車の走行速度は、車輪速度に基づいて算出されるようになっていたが、ドップラ式の対地車速センサによって車輪速度とは関係なく取得するようにしてもよい。
【0040】
さらに、走行速度は車輪速度と車輪加速度とによって推定されるようになっており、前後加速度センサが不要であってコストおよび重量が低くて済む利点があるが、前後加速度センサを設け、アンチスキッド制御が開始された後は、開始時の走行速度および前後加速度によって走行速度を推定するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施例においては、減圧時間が設定時間より短い場合には急増圧時間が長くされないようになっており、コンピュータのROMのS9,S14およびS17を記憶する領域とCPUおよびRAMとが過剰増圧防止手段を構成していたが、このような手段を設けることは不可欠ではない。
【0042】
さらにまた、上記実施例において液圧制御弁装置が増圧状態,保持状態および減圧状態に切り換わるものとされていたが、増圧状態および減圧状態のみに切り換わるものとしてもよい。
【0043】
その他、特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例であるアンチスキッド装置を備えた四輪自動車用液圧ブレーキ装置を示す系統図である。
【図3】上記アンチスキッド装置の制御装置の主体を成すコンピュータのRAMの構成を示す図である。
【図4】上記コンピュータのROMに格納された制御モード選択マップを示す図である。
【図5】上記ROMに格納されたアンチスキッド制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】車輪速度の検出遅れの発生を説明する図である。
【図7】車輪速度の検出遅れが生じた場合に生ずるブレーキシリンダ圧の過剰な減圧を説明する図である。
【図8】上記アンチスキッド装置によってブレーキシリンダ圧を制御した場合の時間と車輪速度,車輪加速度およびブレーキシリンダ圧との関係を示すグラフである。
【図9】上記アンチスキッド装置において減圧が過剰に行われない場合に増圧勾配が急にされた場合の不具合を説明する図である。
【符号の説明】
10 マスタシリンダ
16 リザーバ
20 左前輪
22 右前輪
24 左後輪
26 右後輪
30,32 フロントブレーキシリンダ
34,36 リヤブレーキシリンダ
40 電磁制御弁
50 リザーバ
80 制御装置
82 回転センサ

Claims (3)

  1. 液圧源と、
    リザーバと、
    前記液圧源と前記リザーバと車両の車輪の回転を抑制するブレーキ装置のブレーキシリンダとの間に設けられ、少なくとも、前記ブレーキシリンダを前記液圧源に連通させてブレーキシリンダの液圧を増大させる増圧状態と、ブレーキシリンダを前記リザーバに連通させてブレーキシリンダの液圧を減少させる減圧状態とに切り換わる液圧制御弁装置と、
    前記車輪の速度を取得する車輪速度取得手段と、
    前記車両の走行速度を取得する走行速度取得手段と、
    それら車輪速度取得手段と走行速度取得手段とがそれぞれ取得する車輪速度と走行速度とに基づいて前記液圧制御弁装置を切り換え、前記車輪のスリップを適正範囲に制御する制御手段と
    を含むアンチスキッド装置において、
    前記制御手段が、 (1)前記ブレーキシリンダの液圧を急増圧した後に緩増圧することによって増圧制御する手段と、 (2)前記走行速度が設定値以下の場合に、前記急増圧の時間を前記走行速度が前記設定値を超える場合より長くすることによって、前記急増圧と前記緩増圧とを均した増圧勾配を、前記走行速度が設定値を越える場合より急にする低速走行時増圧制御手段と
    を含むことを特徴とするアンチスキッド装置。
  2. 前記低速走行時制御手段が、前記ブレーキシリンダの液圧の増圧勾配を、前記走行速度が設定値以下であり、かつ、前記ブレーキシリンダの液圧の前回の減圧時間が設定時間より長い場合に急にするものである請求項1に記載のアンチスキッド装置。
  3. 前記低速走行時制御手段が、前記ブレーキシリンダの液圧の増圧勾配を、前回の減圧時間が長いほど急にする手段を含む請求項1または2に記載のアンチスキッド装置。
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