JP3571423B2 - 車輪スリップ制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車輪のスリップ状態を適正状態に制御する車輪スリップ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車輪のスリップ状態を適正状態に制御する車輪スリップ制御装置において、車両が悪路を走行している場合とノイズが発生した場合とで互いに異なる制御を行うことは既に知られている。そのための車輪スリップ制御装置は、(1) 車両が悪路を走行中か否かを検出する悪路検出装置と、(2) ノイズが発生したか否かを検出するノイズ検出装置と、(3) 車両の車輪のスリップ状態を適正状態に制御するとともに、悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合とノイズ検出装置によってノイズが発生したと検出された場合とで互いに異なる制御を行うスリップ制御手段とを含むように構成される。
【0003】
例えば、特開昭60─22548号公報に記載されているアンチスキッド制御装置がその一例である。このアンチスキッド制御装置は、悪路検出装置による検出とノイズ検出装置による検出とがそれぞれ異なる時期に行われるようになっている。悪路検出装置による検出はアンチスキッド制御の開始前に行われ、ノイズ検出装置による検出はアンチスキッド制御中に行われるようになっているのである。
そのため、アンチスキッド制御開始前にノイズが発生しても、そのことがノイズ検出装置によって検出されず、ノイズが発生したとの検出結果に基づくスリップ制御(以下、ノイズ対応制御と略称する)が行われないという問題があった。
【0004】
上記アンチスキッド制御装置は本出願人らが開発したものであるが、本出願人らはまた、同種の車輪スリップ制御装置として、悪路検出装置とノイズ検出装置とを備えたトラクション制御装置も開発した。そして、このトラクション制御装置においては、トラクション制御開始前に、悪路検出装置による検出とノイズ検出装置による検出との両方が並行して行われるようにした。
このトラクション制御装置においては、トラクション制御の開始前にノイズが発生してもそのことを検出することができ、ノイズ対応制御を行うことができる。
【0005】
しかし、その後の研究により、このトラクション制御装置にも問題があることが判明した。このトラクション制御装置においては、悪路走行中であると検出されるとともにノイズが発生したと検出されることがあり、この場合には、先に検出された結果に基づいてスリップ制御が行われる。悪路走行中であると検出された後にノイズが発生したと検出された場合には悪路走行中であるとの検出結果に基づいたスリップ制御(以下、悪路対応制御と略称する)が行われ、ノイズが発生したと検出された後に悪路走行中であると検出された場合にはノイズ対応制御が行われるのであり、そのためにスリップ制御を状況に対して適正に行うことができない場合が生ずるのである。
【0006】
例えば、あるトラクション制御装置においては、ノイズが発生したと検出された場合にはトラクション制御を禁止するノイズ対応制御が行われ、悪路走行中であると検出された場合にはトラクション制御において駆動力低下量を抑制する悪路対応制御が行われるようにしたのであるが、車両が悪路に突入した瞬間にノイズ検出条件が満たされ、悪路走行中であると検出される前にノイズが発生したと検出され、あるいは悪路走行中にノイズが発生して悪路走行中であると検出されるより先にノイズが発生したと検出されることがあり、この場合にはトラクション制御が禁止されることになる。そのため、悪路対応制御が行われるべきときに行われないことがあるという新たな問題が発生したのである。
なお、トラクション制御を禁止する制御はトラクション制御の一種であると考えることができる。例えば、非トラクション制御時にトラクション制御を禁止する制御が行われなければ、トラクション制御が開始されるが、トラクション制御を禁止する制御が行われたことによってトラクション制御が開始されないのであって、これもトラクション制御の一態様であると考えることができるのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上、アンチスキッド制御装置において悪路走行検出は行われるがノイズ発生検出は行われない場合の問題と、トラクション制御装置において悪路走行検出とノイズ発生検出との両方が並行して行われる場合の問題とをそれぞれ説明したが、前者の問題はアンチスキッド制御装置において後者と同様に悪路検出とノイズ検出との両方が並行して行われるようにすれば解決できる。しかし、その場合にも後者と同様の問題は残る。
また、以上は、アンチスキッド制御装置についてもトラクション制御装置についても制御開始前の問題として説明したが、制御開始後についても悪路検出とノイズ検出との両方が並行して行われるようにすることが望ましいのであり、そのようにした場合にも、後者の問題、すなわち悪路検出とノイズ検出との両方が共に検出された場合の問題が発生する。
そこで、発明の課題は、前記(a) 悪路検出装置,(b) ノイズ検出装置および(c) スリップ制御手段を含み、悪路走行中であると検出された場合とノイズが発生したと検出された場合とで互いに異なる制御が行われる車輪スリップ制御装置において、スリップ制御が状況に応じて良好に行われるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段,作用,発明の効果】
上記課題は、車輪スリップ制御装置を下記各態様の構成のものとすることによって解決される。
(1)車両が悪路を走行中か否かを検出する悪路検出装置と、
ノイズが発生したか否かを検出するノイズ検出装置と、
前記車両の車輪のスリップ状態を適正状態に制御するとともに、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合と前記ノイズ検出装置によってノイズが発生したと検出された場合とで互いに異なる制御を行うスリップ制御手段と
を含む車輪スリップ制御装置であって、
前記スリップ制御手段が、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合には、前記ノイズ検出装置によるノイズの検出状況のいかんを問わず、悪路検出装置による検出結果に対応したスリップ制御を行う悪路検出優先スリップ制御手段を含むことを特徴とする車輪スリップ制御装置
ここで、悪路は、凹凸が大きい路面や多い路面等であり、具体的には、凹凸状態が設定凹凸状態以上の路面等である。また、ノイズは、単発的に発生するものを対象とし、連発するノイズについてはシールド対策によりノイズの混入自体を防止するなど、別の手段で対処するものとする
【0009】
本項に記載の車輪スリップ制御装置においては、悪路検出装置によって悪路走行中であると検出されるとともにノイズ検出装置によってノイズの発生が検出された場合には、悪路対応制御が行われる。
ノイズは単発的に発生するものであるため、ノイズと悪路との両方が検出された場合には悪路対応制御が行われる方がよい。その方が状況に適したスリップ制御を行うことができるのである。
また、例えば、悪路検出装置が、車輪の回転速度の一定時間当たりの変化量が、設定時間内に設定回数以上、悪路判定変化量より大きくなった場合に悪路走行中であると検出するものであり、ノイズ検出装置が、車輪の回転速度の一定時間当たりの変化量が、ノイズ判定変化量より1回でも大きくなった場合にノイズが発生したと検出するものである場合には、ノイズ検出装置による検出結果より、悪路検出装置による検出結果の方が、検出精度が高く、信頼性が高い。凹凸が非常に大きな路面を走行している場合には、回転速度変化量が非常に大きくなり、実際にはノイズが発生していないにもかかわらず発生したと誤って検出される場合があるが、悪路走行中であると誤って検出されることは殆どない。そのため、これら両方が検出された場合には悪路対応制御が行われた方が望ましい。
【0010】
例えば、前述のように、ノイズの発生が検出された場合にはトラクション制御を禁止するノイズ対応制御が行われ、悪路走行中であると検出された場合にはトラクション制御において駆動力低下量を抑制する悪路対応制御が行われるようになっている場合には、悪路走行中であると検出されるとともにノイズが発生したと検出された場合には、駆動力低下量を抑制する制御が行われる。ノイズの検出によりトラクション制御が禁止されてしまうことを回避し、悪路に適したトラクション制御を行うことができるのである。
【0011】
(2)前記ノイズ検出装置が、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置と、その回転速度検出装置によって検出された回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいてノイズが発生したか否かを判定する回転速度変化量依拠ノイズ判定手段とを含み、かつ、当該車輪スリップ制御装置が、その回転速度変化量依拠ノイズ判定手段によってノイズが発生したと判定された場合には、前記スリップ制御手段によるスリップ制御を禁止するスリップ制御禁止手段を含む(1)項に記載の車輪スリップ制御装置(請求項)。
【0012】
本項に記載の車輪スリップ制御装置においては、ノイズが発生したか否かが、回転速度検出装置によって検出された回転速度の一定時間当たりの変化量である回転速度変化量に基づいて回転速度変化量依拠ノイズ判定手段によって判定される。このように回転速度変化量に基づいてノイズの発生が検出される場合には、ノイズの発生が検出されたということは、回転速度検出装置によって検出された回転速度がノイズの影響を含んでいたことを意味する。現実の車輪の回転速度と異なった大きさの回転速度が検出されたのであり、この誤差の大きい車輪の回転速度に基づいて車輪スリップ制御が行われれば、その制御は適切なものとはならない。
そこで、本項に記載の車輪スリップ制御装置においては、ノイズの発生が検出された場合には、スリップ制御手段によるスリップ制御がスリップ制御禁止手段により禁止されるようにしたのである。これにより、現実の車輪の回転速度とは異なった大きさの回転速度に基づいて不適切なスリップ制御が行われることを回避することができる。なお、ノイズ検出装置は、単発ノイズを検出する単発ノイズ検出装置とすることができる(請求項2)。
【0013】
なお、本項に係る発明を車輪スリップ制御装置に適用するに当たり、ノイズの検出およびスリップ制御の禁止がスリップ制御の開始前と開始後との両方において行われるようにすることも、スリップ制御の開始前にのみ行われるようにすることも、スリップ制御の開始後にのみ行われるようにすることも可能である。スリップ制御の禁止がスリップ制御の開始前に行われるようにすれば、スリップ制御の開始が禁止されることとなり、スリップ制御の開始後に禁止されるようにすれば、実行中のスリップ制御が中止されることとなる。
また、スリップ制御の禁止がスリップ制御の開始前に行われるようにする態様には、ノイズが発生したか否かの検出が、スリップ制御開始条件が満たされたと判定された後に行われるようにする態様と、スリップ制御開始条件が満たされたと判定される前に行われるようにする態様とがある。
【0014】
(3)前記悪路検出装置が、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置と、その回転速度検出装置によって検出された回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいて悪路走行中か否かを判定する回転速度変化量依拠悪路判定手段とを含む(1)項または(2)項に記載の車輪スリップ制御装置。
路面に凹凸があると、車輪の一定時間当たりの回転速度変化量が大きくなる。したがって、その回転速度変化量に基づいて、車両が走行している路面が設定凹凸状態以上の凹凸がある悪路か否かを検出することができる。
(4)前記回転速度変化量依拠悪路判定手段が、前記回転速度変化量が、設定時間内に設定回数以上、悪路判定変化量を越えた場合に悪路走行中であると判定する回転速度変化頻度依拠悪路判定手段を含む(3)項に記載の車輪スリップ制御装置。
路面が悪路でない場合でも、何らかの原因で一定時間当たりの回転速度の変化量が単発的に悪路判定変化量以上になることはあるが、頻繁に悪路判定変化量を越えることは悪路以外では殆どない。したがって、設定時間,設定回数および悪路判定変化量を適切に設定すれば、設定時間内に設定回数以上、悪路判定変化量より大きい変化量が生じる場合の殆どが悪路走行時であるようにすることができ、悪路を走行中か否かの検出精度を向上させることができる。
本態様によれば、回転速度変化量が悪路判定変化量を越えた回数が、設定時間内に設定回数以上になったことが検出された場合も、回転速度変化量が悪路判定変化量を越えた回数が設定回数以上になったのが、設定時間内であることが検出された場合も、悪路走行中であると検出される。
(5)前記悪路検出装置が、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置と、その回転速度検出装置によって検出された回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいて悪路走行中か否かを判定する回転速度変化量依拠悪路判定手段とを含み、その回転速度変化量依拠悪路判定手段が、前記回転速度変化量の大きさと、回転速度変化量が設定時間内に悪路判定変化量を越えた回数との少なくとも一方に基づいて路面の凹凸状態を推定する走行路面凹凸状態推定手段を含む(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
回転速度変化量が大きいほど凹凸の差が大きい路面であると推定し得、悪路判定変化量を越えた回数が多いほど凹凸頻度が多い路面であると推定し得る。
(6)前記悪路検出装置が、非駆動輪の回転速度を検出する非駆動輪回転速度検出装置と、その非駆動輪回転速度検出装置によって検出された非駆動輪の回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいて悪路走行中か否かを判定する非駆動輪回転速度変化量依拠悪路判定手段とを含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
非駆動輪の方が駆動輪より路面の凹凸の影響を受け易く、また、駆動輪のように駆動トルク変化の影響を受けることがないため、悪路走行中か否かの検出には非駆動輪の方が向いている。
(7)前記悪路検出装置が、悪路走行中か否かを悪路検出条件に基づいて検出し、良路走行中か否かを前記悪路検出条件とは異なる良路検出条件に基づいて検出するものである(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
悪路検出条件と良路検出条件とを異なる条件とすれば、悪路走行中であるとの判定と良路走行中であるとの判定が交互に頻繁に変わることを回避し得る。
(8)前記ノイズ検出装置が、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置と、その回転速度検出装置によって検出された前記車輪の回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいてノイズが発生したか否かを判定する回転速度変化量依拠ノイズ判定手段とを含み、その回転速度変化量依拠ノイズ判定手段が、前記回転速度変化量の絶対量がノイズ判定変化量を1回越えればノイズが発生したと検出する単発ノイズ検出手段を含む(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
ノイズが発生すれば、回転速度の一定時間当たりの変化量が大きくなる。単発ノイズを検出する場合には、ノイズ判定変化量より大きい回転速度変化量が設定時間内に設定回数以上生じたか否かを検出する必要はない。
また、(7)項における場合と同様に、ノイズが発生したか否かをノイズ検出条件に基づいて検出し、ノイズの発生が解消したか否かをノイズ解消条件に基づいて検出することもでき、これらノイズ検出条件とノイズ解消条件とを互いに異なる条件とすることもできる。例えば、前記回転速度変化量の絶対量がノイズ解消変化量より小さくなった場合にノイズが解消したと検出されるようにしてもよい。
(9)前記ノイズ検出装置が、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置と、その回転速度検出装置によって検出された前記車輪の回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいてノイズが発生したか否かを判定する回転速度変化量依拠ノイズ判定手段を含み、その回転速度変化量依拠ノイズ判定手段が、前記回転速度変化量の絶対値の大きさと、その回転速度変化量の絶対値がノイズ判定変化量を越えた回数との少なくとも一方に基づいてノイズ発生の原因を推定するノイズ発生原因推定手段を含む(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
電気回路の異常等に起因する電気的ノイズが生じた場合には、回転速度変化量の絶対値の大きさが数十G(20G〜70G)ぐらいの非常に大きな値になる。それに対して、機械系の振動等に起因する機械的ノイズが生じた場合には、それほど大きな値にはならない。また、エンジンの点火に伴うノイズ等特定の場合を除いて、電気的ノイズが連続して発生することは稀であるが、機械的ノイズは連続して発生する可能性がある。したがって、回転速度変化量の大きさやそれがノイズ判定変化量を越えた頻度等に基づいてノイズ発生の原因を推定することができる。
なお、(8)項の単発ノイズ検出装置は、電気的ノイズの検出に適していることになる。また、エンジンの点火に伴うノイズが回転速度検出装置の信号に侵入することは、シールド線の使用等によりハード的に防止することが行われている。
(10)前記ノイズ検出装置が、駆動輪の回転速度を検出する駆動輪回転速度検出装置と、その駆動輪回転速度検出装置によって検出された駆動輪の回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいてノイズが発生したか否かを判定する駆動輪回転速度変化量依拠ノイズ判定手段とを含む(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
ノイズの発生は、駆動輪の回転速度の変化量に基づいて検出することも、非駆動輪のそれに基づいて検出することも可能であるが、機械的ノイズは駆動輪回転速度検出装置の信号に侵入することが多いため、電気的ノイズの発生のみならず、機械的なノイズの発生も検出する必要がある場合には、駆動輪回転速度変化量依拠ノイズ判定手段を設けることが望ましい。
(11)前記スリップ制御手段が、車輪の駆動スリップ状態が適正状態になるようにホイールシリンダ液圧とエンジンのスロットル開度との少なくとも一方を制御するトラクション制御手段を含む(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置(請求項)。
例えば、トラクション制御開始条件が満たされた場合におけるノイズの検出結果と悪路の検出結果とに基づいて、ノイズ対応制御、悪路対応制御、通常制御のいずれかが行われるようにすることができる。
(12)前記スリップ制御手段が、車輪の制動スリップ状態が適正状態になるようにホイールシリンダ液圧を制御するアンチスキッド制御手段を含む(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
スリップ制御手段は、トラクション制御手段を含むものであっても、アンチスキッド制御手段を含むものであっても、これら両方を含むものであってもよい。
(13)前記スリップ制御手段が、ノイズ検出装置によってノイズが発生したと検出された場合にノイズに対応したスリップ制御を行うノイズ対応制御手段と、悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合に悪路に対応したスリップ制御を行う悪路対応制御手段とを含む(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
(2)項のスリップ制御禁止手段はノイズ対応制御手段の一種である。
(14)前記ノイズ対応制御手段が、スリップ制御の開始を禁止するスリップ制御開始禁止手段を含む(13)項に記載の車輪スリップ制御装置。
ノイズに起因して不要なスリップ制御が開始されることを回避するために、ノイズが発生したと検出された場合には、スリップ制御の開始を禁止するのである。特に、ノイズが発生すると、検出される回転速度の大きさが、現実の車輪の回転速度より大きくなるため、駆動スリップが実際より大きくなり、不要なトラクション制御が開始されることがある。このような場合には、トラクション制御の開始がトラクション制御開始禁止手段によって禁止されることが望ましい。
(15)前記ノイズ対応制御手段が、アンチスキッド制御開始条件を、アンチスキッド制御が開始され易くなるように変更するアンチスキッド制御開始条件変更手段を含む(13)項または(14)項に記載の車輪スリップ制御装置。
ノイズが発生すると検出される回転速度が実際の車輪の回転速度より大きくなるため、その車輪について実際にはアンチスキッド制御開始条件が満たされているのに、アンチスキッド制御が開始されない場合がある。それを回避するために、アンチスキッド制御開始条件を緩め、開始され易くするのである。
(16)前記悪路対応制御手段が、スリップ制御が開始され難くなるようにスリップ制御開始条件を変更するスリップ制御開始条件変更手段を含む(13)項ないし(15)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置(請求項)。
車輪の回転速度は良路走行中もある程度ふらつく(平均的な回転速度を表す直線または曲線から上下に外れる)のであるが、悪路走行中にはふらつきの量が大きくなる。そのため、回転速度の上へのふらつきが大きくなった場合に見かけ上トラクション制御開始条件が満たされて不要なトラクション制御が開始される場合があり、回転速度の下へのふらつきが大きくなった場合に見かけ上アンチスキッド制御開始条件が満たされて不要なアンチスキッド制御が開始される場合がある。
しかし、悪路走行中においては、ノイズの発生が検出された場合とは違って、トラクション制御やアンチスキッド制御が必ず不要なわけではなく、必要な場合もある。そこで、悪路走行中であると検出された場合には、スリップ制御の開始を禁止するのではなく、開始され難くするのである。トラクション制御の開始条件を変更する手段がトラクション制御開始条件変更手段であり、アンチスキッド制御の開始条件を変更する手段がアンチスキッド制御開始条件変更手段である。
(17)前記悪路対応制御手段が、トラクション制御において、駆動力低下量を通常より少なくする駆動力低下量抑制制御手段を含む(13)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
悪路走行中には、トラクション制御の開始条件が満たされたか否かの判定の信頼性が低くなるのが普通であるため、日和見的制御とすべく、スロットルバルブを閉じる量を通常のトラクション制御におけるより少なくしたり、増圧モードが設定され難くする等によりホイールシリンダ液圧の増圧量を少なくしたりして、駆動力の低下量を小さくするのである。
(18)前記悪路対応制御手段が、アンチスキッド制御において、制動力低下量を通常より少なくする制動力低下量抑制制御手段を含む(13)項ないし(17)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
悪路走行中には、(17)項における場合と同様に、アンチスキッド制御の開始条件が満たされたか否かの判定の信頼性が低くなるのが普通であるため、通常のアンチスキッド制御におけるより、減圧モードが設定され難くする等によりホイールシリンダ液圧の減圧量を少なくして制動力の低下量を小さくするのである。
これら(17)項に記載の駆動力低下量抑制制御手段と(18)項に記載の制動力低下量抑制制御手段とを合わせてスリップ制御抑制制御手段と総称することもできる。
(19)前記回転速度検出装置が、車輪の回転に伴って交流電流を発生させる交流電流発生装置と、その交流電流発生装置によって発生させられた交流電流をその交流電流と周波数が等しい矩形波信号に変換する波形整形器と、その波形整形器によって整形された矩形波信号の立ち上がり時と立ち下がり時とにエッジ信号を発生させるエッジ信号発生器と、そのエッジ信号発生器により発生させられたエッジ信号の状態に基づいて車輪の回転速度を演算する回転速度演算手段とを含む(2)項ないし(18)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
回転速度は、例えばエッジ信号間の間隔やエッジ信号の数等に基づいて検出することができる。
(20)前記回転速度検出装置が、予め決められたサイクルタイム毎にタイマ割込み信号を発する割込み信号発生器を含み、この割込み信号発生器によって発せられたタイマ割込み信号に基づいて前記回転速度演算手段による演算が行われるものである(19)項に記載の車輪スリップ制御装置。
(21)前記スリップ制御禁止手段が、ノイズが発生したと検出された時点以後に発生させられた前記エッジ信号の数が設定エッジ数より小さい間は前記スリップ制御手段によるスリップ制御を禁止するエッジ信号数依拠スリップ制御禁止手段を含む(19)項または(20)項に記載の車輪スリップ制御装置(請求項)。
エッジ信号間の時間間隔に基づいて回転速度が検出される場合には、ノイズが検出された時点以後に発生させられたエッジ信号の数が設定エッジ数以上になれば、後に実施形態に関して詳述するように、そのノイズの影響を受けないで回転速度を検出することができるか、あるいはノイズの影響を受けても影響が小さくて済む。したがって、本態様によれば、回転速度にノイズの影響がなくなるか、あるいは影響があっても実用上問題にならない程度に小さくなるまでの最短の時間を検出することができることとなり、スリップ制御が禁止される時間を最も短くし得ることになる。
また、設定エッジ数を現実の車輪の回転速度に応じて、段階的にあるいは連続的に変更してもよい。車輪の回転速度が大きい場合には、ノイズの影響がある間のエッジ信号数は多くなる。
(22)前記スリップ制御禁止手段が、ノイズが発生したと検出された時点から設定時間が経過するまでの間、前記スリップ制御手段によるスリップ制御を禁止する設定時間依拠スリップ制御禁止手段を含む(2)項ないし(20)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
(23)前記設定時間依拠スリップ制御禁止手段が、前記ノイズ検出装置によってノイズが発生したと検出された直前の、前記回転速度検出手段によって検出された回転速度に基づいて前記設定時間の長さを決定する回転速度依拠設定時間決定手段を含む(22)項に記載の車輪スリップ制御装置。
回転速度依拠設定時間決定手段を、回転速度へのノイズの影響が少なくとも実用上問題にならなくなるまでの時間を設定時間として決定するものとするのである。前述のように、ノイズが検出された時点以後に発生させられたエッジ信号の数が設定エッジ数以上になれば、少なくとも回転速度へのノイズの影響が実用上問題にならなくなるため、上記設定時間は、ノイズが検出される直前の回転速度に基づいて決定することができる。
ノイズの発生が検出される直前の回転速度はまだノイズの影響を受けていないため、ノイズの発生が検出される直前の回転速度に基づいて設定時間を決定すれば、設定時間を適切に決定することができる。
(24)前記スリップ制御禁止手段が、ノイズが検出された時点以後に発生させられたタイマ割込み信号の数が設定信号数より小さい間は前記スリップ制御手段によるスリップ制御を禁止する割込み信号数依拠スリップ制御禁止手段を含む(20)項に記載の車輪スリップ制御装置。
タイマ割込み信号数が設定信号数より小さい間、スリップ制御を禁止してもよい。タイマ割込み信号は、予め決められたサイクルタイム毎に発せられるため、タイマ割込み信号の数が設定信号数より小さい間と、設定時間が経過するまでの間とは実質的に同じである。
なお、(23)項における設定時間は、エッジ信号数に基づく時間とする必要は必ずしもなく、本態様における設定信号数も、設定時間(エッジ信号)に基づく信号数とする必要はない。後に実施形態に関して説明するように、例えば、図7〜図11から、タイマ割込み信号数が4つより小さい間トラクション制御が禁止されるようにしてもよい。タイマ割込み信号が4つ発せられた後のサンプリング時点においては、検出された回転速度等へのノイズの影響がなくなることが明らかである。
(25)前記スリップ制御禁止手段によってスリップ制御が禁止されている間であっても、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合には、前記スリップ制御禁止手段によるスリップ制御禁止制御を終了させるスリップ制御禁止制御終了手段を含む(2)項ないし(24)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置(請求項)。
ノイズの影響がある間においても悪路走行中か否かの検出が行われるようにすることが可能である。
悪路走行中か否かの検出はノイズの影響を受けることが少ないため、そのようにしても差し支えないことが多い。例えば、悪路走行中か否かの判定が、(4)項に記載のように、回転速度変化量が、設定時間内に設定回数以上、悪路判定変化量を越えるか否かで行われる場合には、単発ノイズの発生により回転速度変化量が1回余分に悪路判定変化量を越えても、判定の大勢に影響はない。また、悪路走行中か否かは非駆動輪の回転速度の変化量に基づいて検出され、ノイズが発生したか否かは駆動輪の回転速度の変化量に基づいて検出される場合には、駆動輪の回転速度にノイズが検出されたからといって、非駆動輪の回転速度変化量にもノイズによる影響があるとは限らず、悪路検出に影響が生じるとは限らない。
その上、スリップ制御の禁止を終了させて実行される悪路対応制御においては、良路上における通常のスリップ制御に比較してスリップ抑制制御が控えめに行われるのが普通であるため、回転速度検出装置によって検出された回転速度に本当にノイズの影響があり、現実の回転速度より大きめに検出されていたとしてもその影響は小さいのが普通である。
本態様において、ノイズの影響がある間を、ノイズが発生したと読み変えれば、本態様は、(1)項においてノイズが発生したと検出されるとともに悪路走行中であると検出された場合には、悪路対応制御が行われる具体的な例でもある。
(26)前記スリップ制御禁止手段が、ノイズが発生したと検出されて以降、少なくとも回転速度にノイズによる影響がある間は前記スリップ制御手段によるスリップ制御を禁止するノイズ影響存続期間スリップ制御禁止手段を含むものである(2)項ないし(25)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置(請求項)。
ここにおいて、少なくとも回転速度にノイズによる影響がある間はスリップ制御を禁止するとは、回転速度変化量等にノイズによる影響がある間については、スリップ制御を禁止することは不可欠ではないということである。スリップ制御においては回転速度は必ず考慮されるが、回転速度変化量は考慮されない場合があり、また、回転速度の誤差の方が回転速度変化量の誤差よりスリップ制御結果に大きな影響を与える場合が多いからである。
回転速度検出装置の検出信号に単発ノイズが混入すると現実の回転速度と異なった大きさの回転速度が検出され、その誤差を含んだ回転速度に基づいてスリップ制御が行われれば適切な制御は行われない。また、回転速度に対するノイズの影響はノイズ発生時点からしばらく残る。
例えば、前記(20)項に記載のように、回転速度検出装置が、交流電流発生装置,波形成形器,エッジ信号発生器,回転速度演算手段および割込み信号発生器を含むものである場合には、ノイズの影響は、後に実施形態の説明の欄で詳細に説明するように、エッジ信号発生器によるエッジ信号の発生時期と割込み信号発生器によるタイマ割込み信号の発生時期との関係や、エッジ信号の発生周期によって決まる期間回転速度に影響を与える。
したがって、本態様の車輪スリップ制御装置においては、少なくとも回転速度にノイズによる影響がある間は、スリップ制御手段によるスリップ制御がスリップ制御禁止手段により禁止され、スリップ制御が現実の車輪の回転速度とは異なった大きさの回転速度に基づいて行われることが回避されるのである。
なお付言すれば、本態様におけるように、ノイズの発生が検出された場合にそのノイズの影響がある期間だけスリップ制御を禁止するのではなく、スリップ制御開始条件が満たされたと判定されてから一定期間は必ずスリップ制御が禁止されるようにしても、ノイズの発生に起因して不適正なスリップ制御が行われることを回避することができる。
スリップ制御開始条件は、車輪のスリップ状態が現実にスリップ制御開始条件を満たす状態になったことによって満たされるか、ノイズの発生に起因して見かけ上満たされるかのいずれかである。そのため、スリップ制御開始条件が満たされた場合に、実際にノイズが発生したか否かを問わず、ノイズの発生に起因して見かけ上満たされたものと仮定し、そのノイズの影響が実質上問題になる間はスリップ制御が禁止されるようにしておけば、ノイズに起因して不適正なスリップ制御が行われることを回避することができるのである。
しかし、そのようにすれば、実際にはノイズに起因していない場合、すなわち、現実に車輪のスリップ状態がスリップ制御開始条件を満たす大きさになった場合に、スリップ制御の開始が遅れてしまうという問題が生じる。
それに対し、本態様の車輪スリップ制御装置におけるように、ノイズが発生したと検出された場合のみにノイズの影響がある期間だけスリップ制御が禁止されるようにすれば、スリップ制御の開始が不要に遅らされることを回避することができる。
次に、回転速度変化量にノイズによる影響がある場合のスリップ制御禁止について説明する。
例えば、回転速度のみならず回転速度変化量をも考慮してスリップ制御が行われる車輪スリップ制御装置があり、この装置においては、回転速度変化量にノイズによる影響がある間にスリップ制御が行われれば、現実と異なった大きさの回転速度変化量を考慮して制御が行われることとなり、適切な制御が行われない。したがって、スリップ制御が禁止されるようにすることが必要または望ましい。また、回転速度変化量依拠ノイズ検出手段を含む車輪スリップ制御装置においては、実際にはノイズが発生していないのに、回転速度変化量にノイズによる影響が残っているために、回転速度変化量依拠ノイズ検出手段が誤ってノイズを検出することになる。その場合でも、スリップ制御が禁止されていれば、その誤ったノイズ検出結果がスリップ制御に影響を与えることはない。
回転速度変化量にノイズによる影響がなくなるためには、少なくとも2回連続してノイズによる影響がない回転速度が検出されることが必要である。したがって、ノイズが発生したと検出されてから、回転速度にノイズによる影響がなくなるまでの期間より、回転速度変化量にノイズによる影響がなくなるまでの期間の方が長くなる。
(27)前記ノイズ検出装置が、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置と、その回転速度検出装置によって検出された回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいてノイズが発生したか否かを判定する回転速度変化量依拠ノイズ判定手段とを含み、かつ、当該車輪スリップ制御装置が、その回転速度変化量依拠ノイズ判定手段によってノイズが発生したと判定された場合には、少なくとも回転速度変化量にノイズによる影響がある間は、回転速度変化量依拠ノイズ検出手段によるノイズの検出を禁止するノイズ検出禁止手段を含む(1)項ないし(20)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
回転速度変化量依拠ノイズ判定手段によるノイズの検出が行われない間は、ノイズが発生したとの検出結果が保持される。ノイズが発生したとの検出結果がノイズ検出結果維持手段によって維持されるのであり、ノイズ対応制御が継続して行われることになる。
ノイズ対応制御がスリップ制御を禁止する制御である場合には、本項に記載の車輪スリップ制御装置の作動と、(26)項に記載の車輪スリップ制御装置の作動とは同じになる。また、ノイズの検出が禁止されれば、その間はトラクション制御が禁止されることとなるため、ノイズの検出を禁止する制御をトラクション制御を禁止する制御の一態様と考えることができる。
なお、ノイズの検出を禁止する手段は(21)項,(22)項,(24)項,(26)項の各スリップ制御禁止手段に代えて採用することができる。回転速度検出装置により検出された回転速度にノイズの影響がある間は、ノイズ検出装置によるノイズの検出が、エッジ信号数依拠ノイズ検出禁止手段,設定時間依拠ノイズ検出禁止手段,割込み信号数依拠ノイズ検出禁止手段,ノイズ影響存続期間ノイズ検出禁止手段によって禁止されるようにするのである。そして、この間に悪路走行中であると検出された場合には、(25)項に記載のように、ノイズの検出がノイズ検出禁止制御終了手段によって許可されるようにすることもできる。
(28)前記ノイズ検出装置が、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置と、その回転速度検出装置によって検出された回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいてノイズが発生したか否かを判定する回転速度変化量依拠ノイズ判定手段とを含み、当該車輪スリップ制御装置が、その回転速度変化量依拠ノイズ判定手段によってノイズが発生したと判定されるとともにスリップ制御開始条件が満たされた場合には、前記スリップ制御手段によるスリップ制御の開始を、少なくとも回転速度にノイズによる影響がなくなるまで遅延するスリップ制御開始遅延手段を含む(1)項ないし(20)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置(請求項)。
ノイズが発生したと検出されるとともにスリップ制御開始条件が満たされた場合には、回転速度にノイズによる影響のある間、スリップ制御の開始が遅延させられる。その結果、スリップ制御が現実と異なった大きさの回転速度に基づいて行われることが良好に回避される。
なお、スリップ制御開始遅延手段は(21)項,(22)項,(24)項,(26)項の各スリップ制御禁止手段に代えて採用することができる。回転速度検出装置により検出された回転速度にノイズの影響がある間は、スリップ制御の開始が、エッジ信号数依拠スリップ制御開始遅延手段,設定時間依拠スリップ制御開始遅延手段,割込み信号数依拠スリップ制御開始遅延手段,ノイズ影響存続期間スリップ制御開始遅延手段によって遅延させられるようにするのである。また、その間に悪路走行中であると検出された場合には、スリップ制御の開始がスリップ制御開始許可手段により許可されるようにすることもできる。さらに、回転速度変化量にノイズによる影響がある間もスリップ制御の開始が遅らされるようにすることもできる。
(29)前記ノイズ検出装置が、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置と、その回転速度検出装置によって検出された回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいてノイズが発生したか否かを判定する回転速度変化量依拠ノイズ判定手段とを含み、前記スリップ制御手段が、前記回転速度変化量依拠ノイズ判定手段によってノイズが発生したと判定された場合には、スリップ制御の開始を禁止するノイズ対応制御手段を含み、かつ、当該車輪スリップ制御装置が、前記回転速度変化量依拠ノイズ判定手段によってノイズが発生したと判定された場合には、少なくとも前記回転速度検出装置によって検出された回転速度にノイズによる影響がある間は、前記ノイズ対応制御手段を作動状態に保つノイズ対応制御継続手段を含む(1)項ないし(20)項のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
ノイズが検出された場合に、回転速度にノイズによる影響がある間ノイズ対応制御が継続して行われることと、スリップ制御禁止手段によってスリップ制御が禁止されることとは同じことである。
なお、ノイズ対応制御継続手段は(21)項,(22)項,(24)項,(26)項の各スリップ制御禁止手段に代えて採用することができる。回転速度検出装置により検出された回転速度にノイズの影響がある間は、エッジ信号数依拠ノイズ対応制御継続手段,設定時間依拠ノイズ対応制御継続手段,割込み信号数依拠ノイズ対応制御継続手段,ノイズ影響存続期間ノイズ対応制御継続手段によりノイズ対応制御が継続して行われるようにするのである。その間に悪路走行中であると検出された場合には,ノイズ対応制御継続終了手段によりノイズ対応制御の実行が終了させられるようにすることもできる。さらに、回転速度変化量にノイズによる影響がある間もノイズ対応制御が継続して行われるようにすることもできる。
(30)車両が悪路を走行中か否かを検出する悪路検出装置と、
ノイズが発生したか否かを検出するノイズ検出装置と、
前記車両の車輪のスリップ状態を適正状態に制御するとともに、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合と前記ノイズ検出装置によってノイズが発生したと検出された場合とで互いに異なる制御を行うスリップ制御手段と
を含む車輪スリップ制御装置において、
前記スリップ制御手段を、前記悪路検出装置が悪路走行中であると検出するとともに前記ノイズ検出装置がノイズが発生したと検出した場合には、ノイズ検出装置による検出結果に対応した制御は行わないで、悪路検出装置による検出結果に対応した制御を行うものとしたことを特徴とする車輪スリップ制御装置。
(31)車輪のスリップ状態が適正状態になるように制御する車輪スリップ制御装置であって、
車両が悪路を走行中か否かを検出する悪路検出装置と、
その悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合に、悪路に対応したスリップ制御を行う悪路対応制御手段と、
ノイズが発生したか否かを検出するノイズ検出装置と、
そのノイズ検出装置によってノイズであると検出された場合に、ノイズに対応したスリップ制御を行うノイズ対応制御手段と、
前記悪路対応制御手段による制御を前記ノイズ対応制御手段による制御に優先させる悪路対応制御優先手段と
を含む車輪スリップ制御装置。
悪路検出装置による検出結果を優先してスリップ制御を行うことと、悪路対応制御を優先して行うこととは実質的に同じことである。
(32)車両が悪路を走行中か否かを検出する悪路検出装置と、
ノイズが発生したか否かを検出するノイズ検出装置と、
前記車両の車輪のスリップ状態を適正状態に制御するとともに、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合と前記ノイズ検出装置によってノイズが発生したと検出された場合とで互いに異なる制御を行うスリップ制御手段と
を含む車輪スリップ制御装置において、
前記スリップ制御手段が、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合には、前記ノイズ検出装置による検出を禁止する悪路検出時ノイズ検出禁止手段を含む車輪スリップ制御装置。
悪路走行中であると検出された場合には、ノイズが発生したと検出されても検出されなくても、その悪路走行中であるとの検出結果に基づいてスリップ制御が行われるようにする場合には、悪路走行中であると検出された際はノイズが発生したか否かを検出する必要がない。
(33)車輪のスリップ状態が適正状態になるように制御するスリップ制御方法であって、悪路走行中であれば、ノイズが発生したと検出されても、悪路に対応するスリップ制御を行うスリップ制御方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、発明の共通の一実施形態であるスリップ制御装置が搭載された液圧ブレーキ装置について図面に基づいて詳細に説明する。
図2において、10はマスタシリンダであり、12,13は、駆動輪である後輪14,15のホイールシリンダであり、16,17は、非駆動輪である前輪18,19のホイールシリンダである。マスタシリンダ10は2つの加圧室を備えたタンデム式のものであり、一方の加圧室は液通路20によってホイールシリンダ12,13に接続され、他方の加圧室は液通路22によってホイールシリンダ16,17に接続される。液通路20の途中には、プロポーショニングバルブ24が設けられており、それにより、後輪14,15のホイールシリンダ12,13には、マスタシリンダ10の液圧が設定液圧以上になると、減圧されて伝達されることになる。
【0016】
液通路20の途中には、また、方向切換弁26が設けられている。方向切換弁26は、通常は、図示するマスタシリンダ10とホイールシリンダ12,13とを連通させる第一位置にあるが、ソレノイドの励磁により、ホイールシリンダ12,13をマスタシリンダ10から遮断してマスタシリンダ10とは別の後述する副液圧源28に連通させる第二位置に切換え可能なものである。
ソレノイドは、後述するスリップ制御装置29の指令に基づいて図示しない駆動回路により制御される。
【0017】
液通路20の、ホイールシリンダ12,13と方向切換弁26との間には、3位置電磁弁30,32が設けられている。3位置電磁弁30,32は、ホイールシリンダ12,13を方向切換弁26に連通させる増圧位置と、方向切換弁26からもリザーバ36からも遮断する保持位置と、リザーバ36に連通させ、方向切換弁26から遮断する減圧位置とに切り換え可能なものである。
また、3位置電磁弁30,32をバイパスするバイパス通路の途中には、それぞれ逆止弁38,40が設けられている。逆止弁38,40は、ホイールシリンダ12,13からマスタシリンダ10への作動液の流れを許容するが、逆方向の流れを阻止するものである。バイパス通路および逆止弁38,40は、制動終了時やトラクション制御終了時やアンチスキッド制御中にブレーキペダル42の踏込みが解除された場合等に、ホイールシリンダ12,13の作動液を早急にマスタシリンダ10に戻すために設けられたものである。
【0018】
一方、リザーバ36からはポンプ通路44が延び出させられ、液通路20の前記3位置電磁弁30,32と方向切換弁26との間の部分に接続されている。ポンプ通路44の途中には、ポンプ46の他に、逆止弁48,49,アキュムレータ50が設けられるとともに、アキュムレータ50の液通路20側には、オリフィス52が設けられている。リザーバ36内の作動液は、ポンプ46によって汲み上げられてマスタシリンダ10に戻されたり、ホイールシリンダ12,13に供給されたりする。ポンプ46を駆動するモータ51は、スリップ制御装置29の指令に基づいて図示しない駆動回路によって制御されるが、アンチスキッド制御中あるいはトラクション制御中は継続して駆動される。
なお、アキュムレータ50およびオリフィス52は、ポンプ46の脈動が運転者に伝達されないようにしたり、脈動によりホイールシリンダ圧の制御精度が低下することを回避したりするために設けられたものである。
【0019】
前記副液圧源28は、ポンプ54,モータ56,チェック弁58,圧力調整弁59,リリーフ弁60,マスタリザーバ62等を含むものであり、ポンプ54はモータ56により駆動される。ポンプ54によってマスタリザーバ62の作動液が加圧され、その加圧された作動液が、チェック弁58を経てホイールシリンダ12,13に供給される。圧力調整弁59は、ポンプ54の吐出圧をトラクション制御のための必要な液圧に制御するものである。
また、マスタリザーバ62は、リザーバ通路64によりリザーバ36に接続されるが、そのリザーバ通路64の途中には開閉弁66が設けられている。開閉弁66は、常には、遮断位置にあるが、トラクション制御が行われると連通状態に切り換えられる。トラクション制御中は、リザーバ36に収容された作動液が、リザーバ通路64および開閉弁66を経てマスタリザーバ62に戻される。リリーフ弁60は、副液圧源28の異常時に作動液がリザーバ36に流出することを許容するものであり、これにより、過大な液圧の発生が防止される。
【0020】
同様に、非駆動輪としての前輪18,19のホイールシリンダ16,17とマスタシリンダ10の他方の加圧室とを接続する液通路22の途中には,3位置電磁弁70,72が設けられている。また、3位置電磁弁70,72をバイパスするバイパス通路の途中には、逆止弁74,76がそれぞれ設けられている。さらに、リザーバ78と、液通路22の3位置電磁弁70,72のマスタシリンダ10側の部分とを接続するポンプ通路80の途中には、ポンプ82,逆止弁84,85,アキュムレータ86,オリフィス88が設けられており、ポンプ82はモータ90によって駆動される。非駆動輪に対しては、トラクション制御が行われないため方向切換弁26に相当する制御弁は不要である。
【0021】
前記スリップ制御装置29は、図示しないCPU,RAM,ROM,入力部,出力部等を備えた回転速度等演算コンピュータ92,トラクション制御コンピュータ93,アンチスキッド制御コンピュータ94,悪路検出コンピュータ95,ノイズ検出コンピュータ96等の複数個のコンピュータおよび波形整形器,エッジ信号発生器,タイマ割込み信号発生器等の電子回路を備えたものである。各車輪14,15,18,19の回転速度を検出する電磁ピックアップ式の車輪速センサ101〜104から出力される交流信号が、波形整形器およびエッジ信号発生器により処理されることにより、交流信号の各ゼロクロス点に対応してエッジ信号が作成され、回転速度等演算コンピュータ92に供給される。
回転速度等演算コンピュータ92のROMには、回転速度等演算プログラム等多数のプログラムが格納されており、回転速度等演算プログラムの実行により、各車輪14,15,18,19の回転速度V,回転速度の一定時間当たりの変化量DV,推定車体速度VTO,VSO等が求められる。
【0022】
電磁ピックアップ式の車輪速センサ101〜104は、車輪14,15,18,19と一体的に回転可能に取り付けられ、外周部にセレーションを有するロータに近接した位置に静止して設けられて、セレーションの凸部の通過を電磁的に検知するものであり、ロータの回転に伴って交流信号を発生させる。ロータの回転速度が大きいほど交流信号の周波数が大きくなるため、この周波数に基づいて車輪の回転速度を演算することができる。
車輪速センサ101〜104によって発せられた交流信号は、しきい値(ここでは電圧0)を境に、正の値と負の値とに交互に変化するため、波形整形器により、図3に示すように、交流信号の電圧が正である間はハイレベル、負である間はローレベルとなる矩形波信号に整形される。そして、この矩形波信号、すなわいパルス信号が微分回路であるエッジ信号発生器により微分されることによって、パルス信号の立ち上がり時と立ち下がり時とにエッジ信号が発生させられる。このエッジ信号は回転速度等演算コンピュータ92に割込み信号として供給され、その割込時点(エッジ時点と称する)の時間が記憶されるとともにエッジ信号の数がカウントされる。連続して発せられた2つのエッジ信号間の時間間隔が短いほど交流電流の周波数が大きく、回転速度が大きい。換言すれば、一定時間当たりに発せられたエッジ信号数が多いほど回転速度は大きい。
【0023】
また、予め決められた一定時間(サイクルタイムと称する)毎にタイマ割込み信号がタイマ割込み信号発生器により発せられ、そのタイマ割込み信号が回転速度等演算コンピュータ92に供給される。回転速度等演算コンピュータ92においては、このタイマ割込み信号に応じて回転速度等の演算が行われる。図3の「△」は、タイマ割込み信号が発せられた(供給された)時点であり、回転速度の演算が行われる時点でもあるため、サンプリング時点と称する。隣接する2つのサンプリング時点間が上記サイクルタイムに対応し、本実施形態においては5msである。
サンプリング時点△においては、それの直前の2つのエッジ時点P,Qの中間時点pの時間が演算され、サンプリング時点△においては、エッジ時点Q,Rに基づいて中間時点qが求められる。そして、これら中間時点p,q間の時間tと、これらの間に発せられたエッジ信号数とに基づいて回転速度Vが演算により求められる。このように、2つの中間時点間の時間と、発せられたエッジ信号数とに基づいて回転速度が求められれば、ロータが偏心していたり、セレーションの歯形が不正確であったりすることに起因して、ハイレベルの信号の幅とローレベルの信号の幅とが等しくなくても、回転速度を精度よく検出することができる。
【0024】
そして、回転速度Vからサンプリング時点△において求められた回転速度Vを引いた値を中間時点p,q間の時間tで割ることによって、回転速度変化量DVが求められる。このようにして各車輪14,15,18,19の回転速度Vおよび回転速度変化量DVが求められたならば、それらと予め決められた規則とにより、トラクション制御用の推定車体速度VTOとアンチスキッド用の推定車体速度VSOとが求められる。前者は非駆動輪である前輪18,19の回転速度Vの平均値を平滑化して求められ、後者は4個の車輪14,15,18,19の回転速度Vうちの最大値を平滑化して求められる。
求められた各車輪14,15,18,19の回転速度V,回転速度変化量DV,推定車体速度VTO,VSOは、トラクション制御コンピュータ93,アンチスキッド制御コンピュータ94に供給され、前輪18,19の回転速度変化量DVWFが悪路検出コンピュータ95に供給され、後輪14,15の回転速度変化量DVWRがノイズ検出コンピュータ96に供給される。
【0025】
悪路検出コンピュータ95およびノイズ検出コンピュータ96の出力部には、トラクション制御コンピュータ93およびアンチスキッド制御コンピュータ94の入力部が接続され、悪路検出コンピュータ95の入力部には、トラクション制御コンピュータ93およびアンチスキッド制御コンピュータ94の出力部が接続されている。トラクション制御コンピュータ93の入力部には、他に、図示しないアクセルペダルが踏み込まれている場合にON信号を出力するアクセルスイッチ106が接続され、アンチスキッド制御コンピュータ94の入力部には、ブレーキペダル42が踏み込まれている場合にON信号を出力するブレーキスイッチ108が接続されている。これらトラクション制御コンピュータ93やアンチスキッド制御コンピュータ94の出力部には、方向切換弁26,開閉弁66および各3位置電磁弁30,32,70,72のソレノイドや各モータ51,56,90等が図示しない駆動回路を介して接続されている。トラクション制御コンピュータ93の出力部には、これらの他、サブスロットルバルブ110の開度を制御するサブスロットルバルブモータ112が駆動回路を介して接続されている。
【0026】
トラクション制御コンピュータ93のROMには、図1のフローチャートで表されるトラクション制御プログラム,図4に示すトラクション制御テーブル等が格納されている。トラクション制御コンピュータ93の指令に基づき、ホイールシリンダ12,13の液圧が、駆動輪である後輪14,15の駆動スリップ状態が適正状態になるように制御されるとともにサブスロットルバルブ110の開度が制御される。
アンチスキッド制御コンピュータ94のROMには、図示しないフローチャートで表されるアンチスキッド制御プログラムやアンチスキッド制御テーブル等が格納され、ホイールシリンダ12,13,16,17の液圧が、各車輪14,15,18,19の制動スリップ状態が適正状態になるように制御される。
【0027】
また、悪路検出コンピュータ95のROMには、図5のフローチャートで表される悪路検出プログラムが格納され、回転速度等演算コンピュータ92によって求められた前輪18,19の回転速度変化量DVWFに基づいて悪路走行中か否かが検出され、それに基づいて悪路フラグが設定される。ノイズ検出コンピュータ96のROMには、図6のフローチャートで表されるノイズ検出プログラムが格納され、後輪14,15の回転速度変化量DVWRに基づいてノイズが発生したか否かが検出され、それに基づいてノイズフラグが設定される。本実施形態においては、悪路走行中か否かの検出と、ノイズが発生したか否かの検出とは全く別個に、並行に行われる。そのため、悪路走行中であると検出されるとともにノイズが発生したと検出される場合もある。
【0028】
以下、本液圧ブレーキ装置における作動について説明する。
本液圧ブレーキ装置は、通常、図示する状態にある。ブレーキペダル42が踏み込まれればマスタシリンダ10には液圧が発せられる。マスタシリンダ10の液圧は、プロポーショニングバルブ24,方向切換弁26,3位置電磁弁30,32を経てホイールシリンダ12,13に伝達されるとともに、3位置電磁弁70,72を経てホイールシリンダ16,17に伝達される。ホイールシリンダ12,13,16,17の液圧は高められブレーキが作動させられる。
ブレーキペダル42の踏込みが緩められると、ホイールシリンダ12,13の作動液は、3位置電磁弁30,32,方向切換弁26を経て,あるいは,逆止弁38,40,方向切換弁26を経てマスタシリンダ10に戻される。ホイールシリンダ16,17の作動液も同様に、3位置電磁弁70,72を経て、あるいは、逆止弁74,76を経てマスタシリンダ10に戻される。
【0029】
後輪12,13の駆動スリップが大きくなるとトラクション制御が行われる。トラクション制御コンピュータ93においては、図1のフローチャートで表されるトラクション制御プログラムが常時実行されている。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする。)において、スリップ制御装置29に異常が生じたか否か、各モータ51,56,90に異常が生じたか否か、各車輪速センサ101〜104において断線等の異常が生じたか否か等が検出される。トラクション制御の実行を許可し得る状態にあるか否かが判定されるのである。これらに異常がない場合はトラクション制御を許可し得る状態にあるとされ、判定がYESとなり、S2以降が実行されるが、異常がある場合には許可状態でないとされ、判定はNOとなり、S2以降は実行されない。
【0030】
トラクション制御許可状態にある場合には、S2において、トラクション制御開始条件が満たされるか否かが判定される。アクセルスイッチ106の出力信号がONで、かつ、後輪12,13の少なくとも一方の車輪の回転速度VWRが、推定車体速度VT0に基づいて決定されたトラクション制御開始駆動輪速度VTBを越えたか否か(VWR>VTB)が判定されるのである。トラクション制御開始条件が満たされない間は、S3以降は実行されない。
トラクション制御開始条件が満たされると、S2における判定がYESとなり、S3において、悪路フラグが読み込まれて、セットされているか否かが判定され、S4において、ノイズフラグが読み込まれて、セットされているか否かが判定される。
本実施形態においては、トラクション制御開始条件が満たされた場合に、悪路フラグがセットされているか否か、ノイズフラグがセットされているか否かが判定されるのである。
【0031】
悪路フラグもノイズフラグもセットされていない場合には、S3,4における判定が共にNOとなり、S5において、通常のトラクション制御が行われる。モータ51,56が駆動されるとともに、方向切換弁26が第二位置に切り換えられ、開閉弁66が連通状態に切り換えられた状態において、図4に示すトラクション制御テーブルに基づいて、3位置電磁弁30,32が増圧位置,保持位置,減圧位置にそれぞれ切り換えられる。回転速度VWRの大きさが、各々の制御基準速度VT1,VT2,VT3と比較されるとともに、回転速度変化量DVWRがいずれのレベルに属するかが求められ、増圧モード,保持モード,減圧モード等各モードが決定されるのである。また、回転速度VWRが推定車体速度VT0に基づいて決定されたスロットル制御用目標回転速度VTSに近づくように、サブスロットルバルブモータ112が制御される。
そして、アクセルスイッチ106の出力信号がOFFになり、図示しないメインスロットルバルブが全閉される等トラクション制御終了条件が満たされると、S6において、トラクション制御が終了させられる。
【0032】
悪路フラグは、悪路検出コンピュータ95において、車両が悪路走行中であると検出された場合にセットされ、悪路走行中でない(良路走行中である)と検出された場合にリセットされるフラグである。悪路走行中か否かは、図5のフローチャートで示される悪路検出プログラムの実行に従って検出される。この検出はアンチスキッド制御が行われていない間に行われる。アンチスキッド制御が行われると、電気的振動や機械的振動等に起因して回転速度変化量が現実の値より大きくなるおそれがあるため、制御中には、良路走行中であっても悪路走行中であると誤って検出されるおそれがあるのである。なお、アンチスキッド制御中のみならず、トラクション制御中にも悪路検出が行われないようにしてもよい。
悪路走行中か否かは、非駆動輪である前輪18,19の少なくとも一輪についての回転速度変化量DVWFが悪路判定変化量DVn1を越えた回数が、設定時間Ta内に設定回数Ka以上になったか否か、すなわち、悪路検出条件を満たすか否かに基づいて検出される。非駆動輪の回転速度変化量に基づいて検出されるのは、非駆動輪の方が駆動輪より路面の凹凸の影響を受け易く、駆動トルクの変化を受け難いからである。
また、悪路走行中であると検出された後に良路走行に切り換わったか否かは、上述の悪路検出条件とは異なる良路検出条件に基づいて検出される。悪路判定変化量DVn1を越えた回数が、設定時間Tb経過後に設定回数Kbより小さければ、良路走行中であると検出される。
【0033】
S31において、アンチスキッド制御中か否かが判定される。アンチスキッド制御が行われている場合には、判定がYESとなり、S32においてカウンタがクリアされた後S31の実行に戻される。アンチスキッド制御が行われている間は、S31,32が繰り返し実行され、S33以降は実行されない。
アンチスキッド制御が行われていない場合には、判定がNOとなり、S33において、悪路フラグがセットされているか否かが判定される。悪路フラグがセットされていない場合には、S34以降において、悪路検出条件が満たされるか否かが判定され、セットされている場合には、S37以降において良路検出条件が満たされるか否かが判定される。
【0034】
悪路フラグがセットされていない場合には、S34において、設定時間Taが経過したか否かが判定され、S35において、カウンタのカウント値Cgが設定回数Ka以上か否かが判定される。カウンタは、回転速度変化量DVWFが、悪路判定変化量DVn1を越えた回数をカウントするものである。
設定時間Ta経過した時点において、カウント値Cgが設定回数Ka以上であれば、S34,35における判定が共にYESとなり、悪路走行中であるとされ、S36において悪路フラグがセットされる。その後、S32において、カウンタがクリアされるとともにタイマがリセットされ、S31の実行に戻される。
設定時間Ta経過した時点で、カウント値Cgが設定回数Kaより小さい場合には、S34における判定がYES、S35における判定がNOとなり、悪路走行中でないと判定され、S32において、カウンタがクリアされる。
設定時間Ta経過前の場合には、S34における判定がNOとなり、カウンタがクリアされないで、S31の実行に戻される。なお、設定時間が経過する以前において、アンチスキッド制御が開始された場合には、S31における判定がYESとなり、S32において、カウンタがクリアされる。
【0035】
また、悪路フラグがすでにセットされており、S33における判定がYESの場合には、S37において設定時間Tbが経過したか否かが判定され、S38においてカウンタのカウント値Cgが設定回数Kbより小さいか否かが判定される。設定時間Tb経過後に、カウント値Cgが設定回数Kbより小さい場合には、良路走行中であるとされ、S39において悪路フラグがリセットされる。
【0036】
ノイズフラグは、ノイズ検出コンピュータ96において、ノイズが発生したと検出されるとセットされ、ノイズが解消したと検出されるとリセットされるフラグである。ノイズが発生したか否かは、図6のフローチャートで表されるノイズ検出プログラムの実行に従って検出される。本実施形態においては、単発的なノイズが発生したか否かが検出されるのである。また、ノイズが発生したか否かは駆動輪の回転速度変化量に基づいて検出される。電気的ノイズは非駆動輪の回転速度検出装置の信号にも駆動輪のそれの信号にも同じように侵入するが、機械的ノイズは駆動輪のそれに侵入することが多いため、駆動輪の方がノイズを検出し易いのである。
【0037】
S41において、ノイズフラグがセットされているか否かが判定される。セットされていない場合には、判定がNOとなり、S42においてノイズ検出条件が満たされるか否かが判定され、すでにセットされている場合には、判定がYESとなり、S44においてノイズ解消条件が満たされるか否かが判定される。
ノイズフラグがセットされていない場合には、駆動輪である後輪12,13の少なくとも一方の回転速度変化量DVWRの絶対値がノイズ判定変化量KDVn3より大きいか否かが判定される。大きい場合には、S42における判定がYESとなり、S43においてノイズフラグがセットされるが、ノイズ判定変化量KDVn3以下の場合には、判定がNOとなり、S41の実行に戻される。ノイズフラグはリセット状態に保たれる。
【0038】
ノイズフラグがすでにセットされている場合には、ノイズが発生したと検出された方の後輪12,13の回転速度変化量DVWRの絶対値がノイズ解消変化量KDVn4より小さくなったか否かが判定される。小さくなった場合には、判定がYESとなり、ノイズが解消されたとされ、S45においてノイズフラグがリセットされ、ノイズ解消変化量KDVn4以上の場合には、ノイズフラグはセットされた状態に保たれる。ここで、ノイズ解消変化量KDVn4はノイズ判定変化量KDVn3より小さい値である。
【0039】
前記S3において、悪路フラグがセットされていると判定された場合には、S7において、トラクション制御における前記制御基準速度VT1,VT2,VT3やスロットル制御用目標回転速度VTSが大きくされた後、S5においてトラクション制御が行われる。制御基準速度VT1,VT2,VT3が大きくされれば、増圧モードが設定され難くなり、スロットル制御用目標回転速度VTSが大きくされれば、サブスロットルバルブ開度が通常トラクション制御における場合より大きめになる。このように、悪路フラグがセットされていると判定された場合には通常のトラクション制御における場合より駆動力低下量が小さくされる。
凹凸路面等悪路走行時には、車輪の回転速度のふらつき量が大きくなる(回転速度変化量が現実の車輪の回転速度変化量より大きくなる)。そのため、回転速度の上へのふらつきが大きくなった場合に、みかけ上トラクション制御開始条件が満たされて不要なトラクション制御が行われるおそれがある。そのため、日和見的な制御とされ、駆動力低下量が小さくされるのである。S7における制御基準速度やスロットル制御用目標回転速度を大きくする制御が、本実施形態における悪路対応制御である。
【0040】
また、悪路フラグがセットされていると判定された場合には、ノイズフラグがセットされているか否かが判定されないで悪路対応制御が行われる。
前述のように、本スリップ制御装置29においては、車両が悪路走行中か否かの検出とノイズが発生したか否かの検出とは、それぞれ異なるコンピュータによって並行して行われるようになっている。そのため、悪路走行中であると検出されるとともにノイズが発生したと検出される場合もある。しかし、上述のように、本実施形態においては、悪路フラグがセットされていると判定された場合には、たとえノイズフラグがセットされていても、悪路対応制御が行われるようになっている。すなわち、悪路走行中であると検出されるとともにノイズが発生したと検出された場合には、悪路対応制御が行われるのである。悪路対応制御がノイズ対応制御に優先して行われることになり、悪路検出がノイズ検出に優先して行われることになる。
【0041】
ノイズは、主として単発的に発生するものであるため、悪路走行中と、ノイズ発生との両方が検出された場合には、悪路走行中であるとの検出結果を優先して悪路対応制御が行われた方が状況に適した制御が可能となる。
また、前述のように、回転速度変化量DVWRの絶対値がノイズ判定変化量KDVn3より1回大きくなれば、ノイズが発生したとされるが、回転速度変化量DVWFが悪路判定変化量KDVn1を越えた回数が設定時間Ta経過後に設定回数Ka以上にならないと悪路走行中であると検出されない。したがって、悪路走行中であるとの検出結果の方がノイズが発生したとの検出結果より、検出精度が高く、信頼性が高い。そのため、両方が検出された場合には、悪路対応制御が行われた方が望ましいのである。
【0042】
それに対して、悪路フラグがセットされていないと判定された場合には、前記S3における判定がNOとなり、S4において、ノイズフラグがセットされているか否かが判定される。ノイズフラグがセットされていない場合には判定がNOとなり、S5において、通常のトラクション制御が行われるが、ノイズフラグがセットされている場合には判定がYESとなり、S8において、トラクション制御の開始が禁止される。
【0043】
ノイズが発生したか否かが回転速度変化量に基づいて検出される場合には、ノイズが発生したということは、回転速度がノイズの影響を含んでいたことを意味する。現実の回転速度とは異なった大きさの回転速度が検出されたのであり、この誤差の大きい車輪の回転速度に基づいてトラクション制御が行われれば、その制御は不適切なものとなってしまう。
このように不適切なトラクション制御が行われることを回避するために、ノイズフラグがセットされていると判定された場合にはトラクション制御が禁止されるのであり、このトラクション制御を禁止する制御が、本実施形態におけるノイズ対応制御である。本実施形態においては、悪路フラグがセットされていないと判定された場合にノイズフラグがセットされているか否かが判定されるようになっているのである。
【0044】
前記S8の実行後、S9において、悪路フラグが読み込まれ、セットされているか否かが判定される。ノイズフラグがセットされていると判定された場合に(回転速度変化量にノイズの影響がある場合に)も、悪路フラグがセットされているか否かが判定されるのである。悪路フラグがセットされていない場合には、S9における判定がNOとなり、S10においてノイズフラグがセットされていると判定された時点以降のエッジ信号数が設定エッジ数KE以上になったか否かが判定される。最初にS10が実行される場合には、判定はNOとなり、S8に戻される。以下、S8〜10が、悪路フラグがセットされていると判定されるか、エッジ信号数が設定エッジ数KE以上になったかのいずれか一方の条件が満たされるまで、繰り返し実行され、トラクション制御が禁止される状態が保たれる。
【0045】
エッジ信号数が設定エッジ数KEより小さい間は、回転速度や回転速度変化量にノイズの影響があるおそれがある。ノイズの影響があると、現実の車輪の回転速度や回転速度変化量とは異なった大きさの回転速度や回転速度変化量が検出され、その誤差の大きい回転速度や回転速度変化量に基づいて不適切なトラクション制御が行われることがある。また、回転速度変化量にノイズの影響がある場合には、ノイズが発生したか否かが誤って検出される場合があり、その誤った検出結果がトラクション制御に影響を及ぼす場合があるのである。
したがって、回転速度や回転速度変化量にノイズの影響があるおそれがある間、トラクション制御が禁止されれば、上述のように、不適切なトラクション制御が行われることを回避し得、誤った検出結果がトラクション制御に及ぼす影響を小さくし得る。
【0046】
S8〜10が繰り返し実行される間に、悪路フラグがセットされていると検出された場合には、S9における判定がYESとなり、S2において、トラクション制御開始条件が満たされるか否かが判定される。トラクション制御開始条件が満たされている場合にはS2における判定がYESとなり、S3における判定は、この場合、大抵YESとなるため、S7において悪路対応制御が行われ、S5においてトラクション制御が行われる。
このように、ノイズフラグがセットされていると判定されて回転速度や回転速度変化量にノイズの影響がある間も、悪路フラグがセットされているか否かが判定され、悪路フラグがセットされていると判定された場合には悪路対応制御が行われる。換言すれば、トラクション制御が禁止されている状態にあっても、悪路フラグがセットされていると判定された場合には、トラクション制御を禁止するノイズ対応制御の継続が終了させられて、悪路対応制御が実行されるのである。
【0047】
悪路走行中か否かの判定は、前記図5のフローチャートが示すように、回転速度変化量が、設定時間Ta内に、設定回数Ka以上悪路判定変化量DVn1を越えたか否かに基づいて行われる。そのため、単発ノイズの発生によって、回転速度変化量が、1回余分に悪路判定変化量DVn1を越えても、悪路走行中か否かの判定の大勢に影響はない。また、ノイズが発生したか否かは、駆動輪の回転速度変化量DVWRに基づいて検出されるが、悪路走行中か否かは非駆動輪の回転速度変化量DVWFに基づいて検出されるため、駆動輪の回転速度や回転速度変化量にノイズの影響があっても、非駆動輪のそれらに影響が生じるとは限らない。その上、悪路走行中であると検出されて悪路対応制御が実行されれば、制御基準速度VT1,VT2,VT3、スロットル制御用目標速度VTSが大きくされるため、検出される駆動輪の回転速度や回転速度変化量の大きさが実際の値と異なっていても、制御への影響は小さくなるからである。
【0048】
それに対して、ノイズフラグがセットされていると判定された以降のエッジ信号の数が設定エッジ数KE以上になれば、S10における判定がYESとなり、S2が実行される。トラクション制御が許可されたのである。
以下、ノイズフラグがセットされていると判定されてからエッジ信号数が設定エッジ数KEより小さい間は、回転速度や回転速度変化量にそのノイズの影響がある可能性が高い理由、換言すれば、エッジ信号が設定エッジ数KE以上検出されれば、現実の車輪の回転速度や回転速度変化量とは異なった大きさの回転速度や回転速度変化量等が検出される可能性が低くなる理由を、図7〜11に基づいて説明する。本実施形態においては、上記設定エッジ数KEは6であり、回転速度と回転速度変化量との少なくとも一方にノイズの影響がなくなるか、実際上問題にならなくなる数である。
【0049】
車両の発進時にトラクション制御が行われる場合のように車体速度(車輪の回転速度)が非常に小さい場合には、パルス信号とタイマ割込み信号との関係は、ケース1,2,3のいずれかに該当すると考えることができる。ケース1とケース2とでは回転速度は同じであるが、ケース1は、ノイズNを挟むエッジ信号A,B、すなわちノイズNが発生したエッジ信号A,B間にタイマ割込み信号が発せられる場合であり、ケース2は、ノイズNを挟むエッジ信号A,B間とは異なるエッジ信号間にタイマ割込み信号が発せられる場合である。ケース3は、ケース1,2における場合より回転速度が小さい場合で、隣接するエッジ信号間にタイマ割込み信号が必ず発せられる場合である。以下、各ケースにおけるノイズNの影響について説明するが、ノイズNは単発で発生し、それの近くでは他のノイズは発生しないと仮定する。
【0050】
ノイズNを挟むエッジ信号A,Bの間にタイマ割込み信号が発せられる場合としては、図7に示す〔ケース1の1〕,図8に示す〔ケース1の2〕,図9に示す〔ケース1の3〕の3種類の場合がある。
〔ケース1の1〕に示すように、タイマ割込み信号が発せられた後に、ノイズNが発生した場合には、サンプリング時点△において検出される回転速度Vおよび回転速度変化量DVは、現実の車輪の回転速度と同じであり、ノイズNの影響はない。
サンプリング時点△においては、エッジ信号B,Cのエッジ時点に基づいて中間時点bが求められ、サンプリング時点△において求められた中間時点oとの間のエッジ信号数と、中間時点o,b間の時間tとに基づいて回転速度Vが求められる。中間時点o,b間においてノイズNが発生したため、エッジ信号数が多くなり、回転速度Vは現実の車輪の回転速度より大きくなる。そして、サンプリング時点△において検出された回転速度Vとの差に基づいて回転速度変化量DVが求められるが、その回転速度変化量DVの絶対値は大きくなり、ノイズNが発生したと検出される。
【0051】
同様に、サンプリング時点△において、エッジ信号D,Eのエッジ時点に基づいて中間時点dが求められ、これら中間時点b,d間に検出されたエッジ信号数およびこれらの間の時間tに基づいて回転速度Vが検出されるが、この回転速度Vは現実の車輪の回転速度と同じであり、ノイズNの影響はない。しかし、回転速度Vは、サンプリング時点△において求められた回転速度Vより小さくなるため、回転速度変化量DVの絶対値は、現実の車輪の回転速度変化量より大きくなる。実際には、ノイズが発生していないにもかかわらず、ノイズが発生したと検出されるおそれがある。
サンプリング時点△においては、エッジ信号F,Gのエッジ時点に基づいて求められた中間時点fと、中間時点dとの間のエッジ信号数とこれらの間の時間tとに基づいて回転速度Vが検出される。サンプリング時点△において検出される回転速度Vは、実際の車輪の回転速度であり、回転速度変化量DVも、回転速度Vと回転速度Vとの差に基づいて求められるため、現実の回転速度変化量である。回転速度Vにも回転速度変化量DVにも、ノイズNの影響はない。
【0052】
このように、〔ケース1の1〕においては、ノイズNが発生したと検出されるのが、サンプリング時点△においてであり、そのノイズNの影響がある回転速度、すなわち、現実の回転速度と異なった大きさの回転速度が検出されなくなるのが、サンプリング時点△以降であり、現実の回転速度変化量と異なった大きさの回転速度変化量が検出されなくなるのはサンプリング時点△以降である。現実の回転速度変化量と同じ大きさの回転速度変化量が検出されるには、現実の車輪の回転速度と同じ大きさの回転速度が2回連続して検出されなければならない。
したがって、ノイズNが発生したと検出された時点△以降、検出されるエッジ信号数が3つ(エッジ信号D,E,F)より小さい間は、回転速度と回転速度変化量との少なくとも一方にノイズNの影響があるが、検出されたエッジ信号数が3つ以上になれば、ノイズNの影響がなくなることになる。
【0053】
次に、図8に示す〔ケース1の2〕の場合のように、タイマ割込み信号が、ノイズNが発生した時点に発せられた場合には、サンプリング時点△において、エッジ信号A,An1のエッジ時点に基づいて中間時点aが求められ、サンプリング時点△において求められた中間時点oとの間のエッジ信号数および時間tに基づいて回転速度Vが求められる。中間時点間の時間は長くなるが、それに対してエッジ信号数が多くなるため、回転速度Vは現実の車輪の回転速度より大きくなるとともに回転速度変化量DVの絶対値が大きくなり、ノイズNが発生したと検出される。
【0054】
次に、サンプリング時点△においては、同様に、エッジ信号B,Cのエッジ時点に基づいて中間時点bが求められ、中間時点a,b間のエッジ信号数および時間tに基づいて回転速度Vが求められる。中間時点a,b間においては、エッジ信号数が多くなるとともに時間が短くなるため、求められた回転速度Vは現実の車輪の回転速度より大きくなる。
サンプリング時点△においては、中間時点dがエッジ信号D,Eのエッジ時点に基づいて求められるが、中間時点bとの間においては、エッジ信号数が多くなったり、時間が短くなったりするわけではないため、求められる回転速度Vは、現実の車輪の回転速度と同じである。しかし、サンプリング時点△においては、回転速度変化量DVが回転速度Vとの差に基づいて求められるため、回転速度変化量DVの絶対値が大きくなる。そのため、ノイズが発生していないのに、ノイズが発生したと誤って検出されるおそれがある。また、サンプリング時点△において検出される回転速度Vや回転速度変化量DVは、現実のそれらと同じ大きさである。
【0055】
このように〔ケース1の2〕の場合においては、サンプリング時点△においてノイズNが発生したと検出され、回転速度にノイズNの影響がなくなるのはサンプリング時点△以降においてであり、回転速度変化量に影響がなくなるのはサンプリング時点△以降においてである。したがって、ノイズNが検出された時点△以降、検出されるエッジ信号数が6つ(エッジ信号An2,B,C,D,E,F)より小さい間は、回転速度や回転速度変化量にノイズNの影響があることになる。
【0056】
図9に示す〔ケース1の3〕の場合のように、ノイズNが発生した後にタイマ割込み信号が発せられた場合には、サンプリング時点△において、エッジ信号An1,An2のエッジ時点に基づいて中間時点aが求められ、サンプリング時点△において求められた中間時点oとの間のエッジ信号数および時間tに基づいて回転速度Vが検出される。回転速度Vは現実の車輪の回転速度より大きくなり、ノイズNが発生したと検出される。
以下、同様に、サンプリング時点△においては、中間時点a,b間のエッジ信号数および時間tに基づいて回転速度Vが検出される。回転速度Vは現実の車輪の回転速度より大きくなる。サンプリング時点△において検出される回転速度Vは、現実の車輪の回転速度であるが、回転速度変化量の絶対値は現実の値より大きくなる。サンプリング時点△において求められる回転速度や回転速度変化量には、ノイズの影響はない。
このように〔ケース1の3〕の場合においては、ノイズNが検出された時点△から、エッジ信号数が5つ(エッジ信号B,C,D,E,F)検出された後のサンプリング時点△以降においては、ノイズNの影響なく回転速度や回転速度変化量を検出することが可能となる。
【0057】
図10に示す〔ケース2〕のように、エッジ信号Bの後にタイマ割込み信号が発せられた場合には、サンプリング時点△において、エッジ信号An2,Bのエッジ時点に基づいて中間時点aが求められ、サンプリング時点△において求められた中間時点oとの間のエッジ信号数および時間tに基づいて回転速度Vが検出される。また、サンプリング時点△においては、中間時点a,c間のエッジ信号数および時間tに基づいて回転速度Vが検出される。そして、上述のケース1の各場合と同様に、サンプリング時点△以降において検出される回転速度にはノイズNの影響がなくなるが、回転速度変化量にノイズNの影響がなくなるのは、サンプリング時点△以降である。
このように〔ケース2〕の場合においては、ノイズNが検出された時点△以降、検出されるエッジ信号数が5つ(エッジ信号C,D,E,F,G)より小さい間は、回転速度と回転速度変化量との少なくとも一方にノイズNの影響があるのである。
【0058】
図11に示す〔ケース3〕のように、隣接する2つのエッジ信号間毎にタイマ割込み信号が発せられる場合についても同様に、回転速度や回転速度変化量にノイズNの影響がある場合について考える。ケース3の各場合は、ケース1の場合と同様に考えることができるため、詳細な説明は省略する。
〔ケース3の1〕における場合には、サンプリング時点△においてノイズNが発生したと検出されてから、エッジ信号が4つ(エッジ信号An2,B,C,D)検出された後のサンプリング時点△以降においては、検出される回転速度や回転速度変化量にノイズNの影響がなくなる。〔ケース3の2〕における場合には、サンプリング時点△においてノイズNが検出されてから、エッジ信号数が2つ(エッジ信号C,D)より小さい間はノイズNの影響があり、〔ケース3の3〕における場合には、ノイズNが発生したと検出されるサンプリング時点△から、検出されたエッジ信号数が3つ(エッジ信号B,C,D)より小さい間はノイズNの影響があるのである。
なお、車輪速度が、〔ケース3〕における場合より小さい場合にも、同様に、ノイズNの影響について考えることができる。
【0059】
これら図7〜11に示す各ケースにおける場合に基づいて、ノイズNが発生したと検出された後、最大でもエッジ信号が6つ検出された後のサンプリング時点においては、検出される回転速度や回転速度変化量にノイズNの影響がなくなることがわかる。そこで、本実施形態においては前記設定エッジ数KEを6としたのである。
【0060】
車輪の回転速度(車体速度)が上述の各ケースにおける場合より大きい場合には、エッジ信号が6つ検出された後のサンプリング時点においても、回転速度や回転速度変化量にノイズの影響が残る場合がある。
上述の図7〜10に示す各ケースにおいては、隣接する中間時点間に発せられるエッジ信号数が2つであったが、エッジ信号数が3以上の場合についても同様に考えることができる。図示は省略するが、エッジ信号数が3〜5つの場合には、ノイズNが検出されてからエッジ信号が6つ検出された後のサンプリング時点においては、検出される回転速度にはノイズNの影響はないが、回転速度変化量にはノイズNの影響がある場合がある。6つの場合には、回転速度にもノイズNの影響がある場合があり、この場合、最大で、現実の車輪の回転速度よりほぼ14%大きな回転速度が検出される。そして、エッジ信号数が7つ以上の場合にはノイズNの影響はあるが、その誤差の割合は小さくなる。
【0061】
このように、車輪の回転速度(車体速度)が大きい場合には、ノイズNが検出されてからエッジ信号が6つ検出された後のサンプリング時点においても、回転速度や回転速度変化量にノイズNの影響がある場合もあるが、車輪の回転速度が大きい場合にはノイズの発生に起因する回転速度の誤差割合が小さいため、ノイズNの影響を考慮する必要は必ずしもないのである。
なお、車輪の回転速度が大きい場合にも、ノイズNの影響がなくなるまでトラクション制御を禁止するようにするためには、例えば、設定エッジ数を大きくしたり、車輪の回転速度に基づいて変えたりすればよい。車輪の回転速度の増加に伴って設定エッジ信号数を大きくすれば、ノイズの影響がなくなるまで、トラクション制御を禁止することができる。しかし、設定エッジ数を大きくすれば、その分、トラクション制御を禁止する期間が長くなり、トラクション制御遅れが大きくなるという別の問題が生じる。そのため、設定エッジ数は、トラクション制御遅れと、ノイズNの影響との両方を考慮して適宜設定することが望ましく、本実施形態においては6つとしたのである。
【0062】
本実施形態においては、上述のように、トラクション制御開始条件が満たされたと判定され、かつ、ノイズフラグがセットされていると判定されてから、エッジ信号数のカウントが開始されるようになっている。ノイズが発生したと検出されれば直ちにエッジ信号数のカウントが開始されるのではないのであり、そのために、トラクション制御プログラムにおいて、エッジ信号数が設定エッジ数KE以上となったと判定され、S10における判定がYESとなった時点においては、ノイズが発生したと検出された以降に発せられたエッジ信号数は6つより多くなるのが普通である。したがって、実際にトラクション制御が許可された時点における回転速度や回転速度変化量へのノイズの影響は、一般に上述の場合より小さくなる。
【0063】
実際に、駆動輪の回転速度VWRが、図12のグラフに示すように変化した場合について説明する。後輪12,13の少なくとも一方の回転速度VWRがトラクション制御開始駆動輪速度VTBより大きくなった時点Tにおいてトラクション制御開始条件が満たされ、トラクション制御が開始されるはずであるが、それより前の時点Tにおいて、回転速度変化量DVWRの絶対値がノイズ設定変化量KDVn3より大きくなり、ノイズフラグがセットされ、その状態が時点Tに到るまで継続している。そのため、トラクション制御開始条件が満たされた時点T以降において、S4における判定がYESとなり、S8において、トラクション制御の開始が禁止されることになる。
【0064】
その後、検出されたエッジ信号数が6つより小さい間は、S8〜10が繰り返し実行され、トラクション制御は禁止されたままである。それに対して、時点Tにおいて、エッジ信号数が6つになれば、S10における判定がYESとなり、S2においてトラクション制御開始条件が満たされた状態にあるか否かが検出される。時点Tにおいては、回転速度VWRがトラクション制御開始駆動輪速度VTBより大きいため、S2における判定がYESとなり、回転速度変化量DVWRの絶対値がノイズ解消変化量KDVn4より小さく、ノイズフラグがリセットされるため、S4における判定がNOとなる。その結果、S5において、通常のトラクション制御が開始されることになる。
時点T以降においては、回転速度や回転速度変化量にノイズの影響がないため、トラクション制御を適切に行い得る。
【0065】
このように、本実施形態においては、時点Tにおいてトラクション制御開始条件が満たされても、ノイズフラグがセットされていると判定された場合にはトラクション制御が禁止される。また、トラクション制御の禁止は、エッジ信号の数が6つ検出されるまで継続されることになる。換言すれば、トラクション制御開始が、時間tだけ遅らされるのである。本実施形態においては、トラクション制御開始条件が満たされ、かつ、ノイズフラグがセットされていると判定された場合に、トラクション制御が禁止されるようになっている。そのため、トラクション制御開始条件が満たされた場合に常に、禁止されるようになっている場合に比較して、トラクション制御が不要に遅らされることを回避することができる。
なお、ここでは、悪路フラグがリセットされている場合について説明したが、ノイズフラグがセットされていると判定された以降において、悪路フラグがセットされていると判定された場合には、検出されたエッジ信号数が6つより小さくても、トラクション制御は開始される。
【0066】
非駆動輪である前輪18,19の制動スリップ状態が大きくなるとアンチスキッド制御が行われる。アンチスキッド制御コンピュータ94の指令に基づいて、ホイールシリンダ12,13,16,17の液圧が、各車輪14,15,18,19の制動スリップ状態が適正状態になるように制御されるのである。詳細な説明は省略するが、ブレーキスイッチ108の出力信号がONであり、少なくとも1つの車輪の回転速度がアンチスキッド制御開始車輪速度より小さくなる等アンチスキッド制御開始条件が満たされると、アンチスキッド制御が開始され、ブレーキスイッチ108の出力信号がOFFになる等アンチスキッド制御終了条件が満たされると、アンチスッド制御が終了させられる。
【0067】
本実施形態においては、悪路フラグがセットされていると判定された場合には、アンチスキッド制御開始条件が変更されてアンチスキッド制御が開始され難くされ、ノイズフラグがセットされていると判定された場合には、アンチスキッド制御開始条件が、アンチスキッド制御が開始され易くなるように変更される。
悪路走行中である場合には、路面の凹凸により、回転速度のふらつき量が大きくなる(回転速度変化量が通常より大きくなる)ため、回転速度の下へのふらつき量が大きくなった場合に、アンチスキッド制御開始車輪速度より小さくなるおそれがある。それを回避するために、アンチスキッド制御開始車輪速度を小さくする等アンチスキッド制御が開始され難くなるように開始条件を変更するのである。
それに対して、ノイズが発生した場合には、回転速度が実際の車輪の回転速度より大きめに検出されるため、実際にはアンチスキッド制御開始条件が満たされているにもかかわらず、満たされないと検出され、アンチスキッド制御の開始が遅れるおそれがある。このノイズに起因する遅れを小さくするために、アンチスキッド制御開始車輪速度を大きくする等アンチスキッド制御が開始され易くなるように開始条件を変更するのである。
【0068】
また、悪路走行中であると検出されるとともにノイズが発生したと検出された場合には、悪路走行中であるとの検出結果に基づいてアンチスキッド制御開始車輪速度が小さくされる等、アンチスキッド制御が開始され難くなるようにされる。ノイズは主として単発的に生じるものであり、悪路走行中であるとの検出精度はノイズが発生したとの検出精度より高いため、両方が検出された場合には、悪路走行中であるとの判定結果に基づいて制御を行った方が状況に適した制御が可能となり、望ましいのである。
【0069】
以上のように、本実施形態の車輪スリップ制御装置においては、悪路走行中であると検出されるとともにノイズが発生したと検出された場合には、悪路走行中であるとの検出結果に基づいてトラクション制御やアンチスキッド制御が行われる。そのため、スリップ制御を状況に適して行うことが可能となる。また、トラクション制御開始条件が満たされ、かつ、ノイズフラグがセットされていると判定された場合には、回転速度や回転速度変化量にノイズの影響がある間、トラクション制御が禁止されるため、トラクション制御が現実の車輪の回転速度や回転速度変化量と異なる大きさのこれらに基づいて行われることを回避することができる。さらに、現実の回転速度変化量とは異なる大きさの回転速度変化量が検出される間、トラクション制御が禁止されるため、ノイズが発生したか否かの検出結果が誤っていても、その誤った検出結果のトラクション制御への影響を小さくすることができる。
【0070】
また、上記回転速度や回転速度変化量にノイズの影響がある間が、エッジ信号数に基づいて検出されるため、ノイズの影響がある最も短い間を検出することができ、トラクション制御が禁止される時間を最も短くすることができる。さらに、トラクション制御開始条件が満たされ、かつ、ノイズフラグがセットされていると判定された場合に、トラクション制御が禁止されるため、トラクション制御開始条件が満たされた場合に常にトラクション制御を禁止する場合より、トラクション制御を不要に遅らせることを回避することができる。
【0071】
本実施形態においては、車輪速センサ101〜104,スリップ制御装置29の波形整形器,エッジ信号発生器,タイマ割込み信号発生器および回転速度等演算コンピュータ92,悪路検出コンピュータ95等によって悪路検出装置が構成され、上記車輪速センサ101〜104,スリップ制御装置29の波形整形器,エッジ信号発生器,タイマ割込み信号発生器および回転速度等演算コンピュータ92,ノイズ検出コンピュータ96等によってノイズ検出装置が構成される。そして、トラクション制御コンピュータ93,アンチスキッド制御コンピュータ94等によってスリップ制御手段が構成される。また、上記ノイズ検出装置のうち、回転速度等演算コンピュータ92,ノイズ検出コンピュータ96等によって、回転速度変化量依拠ノイズ判定手段が構成され、トラクション制御コンピュータ93のS8を実行する部分等によってスリップ制御禁止手段が構成されるのである。
【0072】
なお、上記実施形態においては、回転速度と回転速度変化量との少なくとも一方にノイズの影響がある間、トラクション制御が禁止されるようになっていたが、回転速度にノイズの影響がなくれば、回転速度変化量にノイズの影響があってもトラクション制御の開始が許可されるようにしてもよい。トラクション制御が回転速度変化量に基づいて行われない場合には、回転速度変化量にノイズの影響があっても差し支えないのである。この場合には、ノイズが検出されてから発せられたエッジ信号数が4つより小さい間、トラクション制御が禁止されることになる。
また、トラクション制御プログラムにおいて、S2における判定がNOの場合には、S1に戻されるようにしてもよい。このようにすれば、トラクション制御を許可し得る状態にあるか否かを常時検出することが可能となる。
【0073】
さらに、上記実施形態においては、悪路フラグがセットされていると判定された場合には、制御基準速度VT1,VT2,VT3とスロットル制御用目標回転速度VTSとの両方が大きくされるようになっていたが、いずれか一方が大きくされるだけでもよい。
また、悪路フラグがセットされていると判定された場合には、トラクション制御が開始され難くしてもよい。その場合には、トラクション制御が図13のフローチャートで表されるトラクション制御プログラムの実行に従って行われることになる。
S3において、悪路フラグがセットされていると判定された場合には、S71においてトラクション制御開始駆動輪速度VTBが大きくされ、S72において、再度トラクション制御開始条件が満たされるか否かが判定される。S72における判定がNOの場合には、S2において開始条件が満たされても、トラクション制御は行われない。
本実施形態においては、トラクション制御中における制御基準速度等は変更されてもされなくてもよい。
【0074】
また、トラクション制御中に、ノイズフラグがセットされているか否かを判定し、セットされていると判定された場合には、トラクション制御が禁止されるようにしてもよい。ノイズが発生すると、回転速度や回転速度変化量が現実の車輪のそれらと異なった大きさになるため、トラクション制御がこれらに基づいて行われることを回避する方がよい場合には、ノイズ対応制御が行われるようにするのである。なお、この場合には、ノイズ対応制御として、トラクション制御禁止ではなく、駆動輪の回転抑制を緩やかにする制御を採用することが望ましい。
それに対して、車輪の回転速度や回転速度変化量が現実のものと異なっても、それまでのトラクション制御を継続する方が、途中でトラクション制御を変更するより良好に走行安定性を図り得る場合にはトラクション制御中においてはノイズが発生したと検出されても、ノイズ対応制御が行われない方がよい。
【0075】
さらに、アンチスキッド制御において、悪路フラグがセットされていると判定された場合には制動力低下量が小さくされる悪路対応制御が行われたり、ノイズフラグがセットされていると判定された場合には、アンチスキッド制御を禁止するノイズ対応制御が行われたりするようにしてもよい。ノイズフラグがセットされていると判定された場合には、それ以降、回転速度や回転速度変化量にノイズの影響がある間アンチスキッド制御が禁止されるようにしてもよい。
アンチスキッド制御においては、悪路フラグがセットされているか否か、ノイズフラグがセットされているか否かの判定結果に基づいて異なる制御が行われるようにされていなくてもよい。
なお、これら種々の悪路対応制御とノイズ対応制御とを任意に組み合わせた形態で、本発明を実施することが可能である。
【0076】
また、上記実施形態においては、ノイズフラグがセットされていると判定された場合には、ノイズフラグがセットされていると判定された以降エッジ信号数が設定エッジ数より小さい間、トラクション制御が禁止されるようにされていたが、タイマ割込み信号数が設定信号数より小さい間あるいは経過時間が設定時間より短い間、禁止されるようにしてもよい。設定時間は、例えば、ノイズが発生したと検出される直前の推定車体速度に基づいて決定することができる。ノイズが発生する直前の回転速度にはノイズの影響がないため、真の推定車体速度に基づいて設定数(例えば6つ)のエッジ信号が発せられるのに必要な時間を求めることができる。タイマ割込み信号は、予め設定された時間毎に発せられる信号であるため、設定時間が決定されれば、それに基づいて設定信号数を決定することができる。
【0077】
上記設定時間やタイマ割込み信号の設定信号数を、エッジ信号数に基づいて決定する必要は必ずしもない。例えば、ノイズが発生したと検出された後、発せられたタイマ割込み信号数が4つより小さい間、トラクション制御が禁止されるようにしてもよい。図7〜図11から、ノイズNが検出された後、タイマ割込み信号数が4つ以上になった後のサンプリング時点においては、回転速度や回転速度変化量にノイズの影響がないことが明らかである。このように、タイマ割込み信号数が4つより小さい間、トラクション制御が禁止されるようにすれば、図示しない車輪の回転速度が大きい場合(車体速度が大きい場合)にトラクション制御開始条件が満たされた場合にも、回転速度や回転速度変化量にノイズの影響がある間は確実にトラクション制御を禁止し、不適切なトラクション制御が行われることを回避することができる。
設定時間は、このタイマ割込み信号数が4つ発せられる間の時間とすることも可能である。
【0078】
さらに、回転速度が小さい場合には、タイマ割込み信号数が設定信号数より小さい間トラクション制御を禁止し、回転速度が大きい場合にはエッジ信号数が設定エッジ数より小さい間禁止するようにしてもよい。回転速度が小さい場合には、図7〜11から明らかなように、エッジ信号数に基づいてもタイマ割込み信号数に基づいても、トラクション制御を禁止する期間は変わらないが、回転速度が大きい場合には、エッジ信号数に基づいて禁止した方が禁止時間をより短くすることが可能である。設定エッジ数は、上記実施形態における場合より大きな値にする。
【0079】
また、悪路検出コンピュータ95においては、設定時間Ta経過した時点において、回転速度変化量DVWFが悪路判定変化量KDVn1を越えた回数が設定回数Ka以上の場合に悪路走行中であると検出されるようにされていたが、設定回数Ka以上になったのが設定時間Ta内である場合に、悪路走行中であると検出されるようにしてもよい。その場合には、図14に示すように、図5の悪路検出プログラムを表すフローチャートにおいて、S34のステップとS35のステップとを入れ替えたプログラムとすることができる。
本実施形態における悪路検出手段によれば、カウント値Cgが設定回数Ka以上か否かが先に判定され、設定回数Ka以上であれば、設定時間Taが経過していなくても、S36において悪路フラグがセットされることになる。
カウント値Cgが設定回数Kaより小さい場合には、設定時間Taが経過したか否かが判定される。設定時間Taが経過していない場合には、カウンタがクリアされないでS31の実行に戻されるが、設定時間Taが経過した場合には、S32においてカウンタがクリアされる。
本実施形態によれば、悪路走行中か否かの検出時期を上記実施形態における場合より早めることが可能となる。
【0080】
さらに、上記実施形態においては、トラクション制御コンピュータ93において、ノイズフラグがセットされていると判定された場合に、それ以降に発せられたエッジ信号数が設定エッジ数より小さいか否かが判定され、小さい間はトラクション制御が禁止されるようにされていたが、ノイズ検出コンピュータ96において、ノイズが発生したと検出された場合に、それ以降に発せられたエッジ信号数が設定エッジ数より小さいか否かが判定され、小さい間ノイズの検出が禁止されるようにしてもよい。
ノイズが発生したと検出された後ノイズの検出が禁止されれば、ノイズ検出コンピュータ96による検出結果が、トラクション制御が禁止される以前の結果、すなわち、ノイズが発生したとの検出結果に保たれる。そのため、その検出結果に基づいてノイズ対応制御であるトラクション制御禁止制御が、エッジ信号数が設定エッジ数より小さい間継続して行われることになる。
【0081】
図15のフローチャートに示すように、S51〜55において、第一実施形態における場合と同様に、ノイズが発生したか否かが検出される。ノイズが発生したと検出された場合には、S53において、ノイズフラグがセットされるとともに、S56において、禁止フラグがセットされ、S50の実行に戻される。
禁止フラグがセットされている間は、S50における判定がYESとなり、S51以降が実行されないで、S57において、エッジ信号数が設定エッジ数KE以上になったか否かが判定される。設定エッジ数KEより小さい場合には、そのままS50の実行に戻され、以後、S50,57が繰り返し実行される。この間、ノイズが発生したか否かの判定が行われないため、禁止フラグはセットされた状態に保たれ、ノイズフラグはセットされた状態に保たれる。エッジ信号数が設定エッジ数KE以上になれば、S57における判定がYESとなり、S58において禁止フラグがリセットされる。そのため、次に、S50が実行される場合には、判定がNOとなり、S51以降において、ノイズが解消されたか否かが判定されることになる。
【0082】
この場合には、トラクション制御プログラムにおいては、S9,10のステップが不要となる。検出されたエッジ信号数が設定エッジ数KEより小さい間は、ノイズ検出結果は変わらず、ノイズフラグは常にセットされている。そのため、S4における判定は常にYESとなり、S8においてトラクション制御が禁止されることになる。
【0083】
本実施形態におけるように、ノイズが発生したと検出された後、エッジ信号数が設定エッジ数KEより小さい間ノイズの検出が禁止されるようになっている場合には、上記第一実施形態におけるように、トラクション制御開始条件が満たされ、かつ、ノイズフラグがセットされていると判定された後、エッジ信号数が設定エッジ数より小さい間トラクション制御が禁止される場合より、トラクション制御の遅れを小さくすることができる。すなわち、本実施形態において、ノイズが発生したと検出された後にトラクション制御開始条件が満たされた場合には、ノイズが発生したと検出された時点からエッジ信号数のカウントが開始されることになる。それに対して、上記第一実施形態においては、トラクション制御開始条件が満たされた後ノイズフラグがセットされていると判定された後にカウントが開始される。そのため、本実施形態における場合の方が、エッジ信号のカウント時点が早くなり、その分、トラクション制御の開始が早く許可されることになる。
【0084】
なお、本実施形態においては、回転速度や回転速度変化量にノイズの影響がある間、ノイズ検出手段による検出結果が、ノイズ検出結果維持手段によって維持されると考えることも、ノイズが発生したか否かの検出がノイズ検出禁止手段によって禁止されていると考えることもできる。
また、ノイズの検出が禁止されることによって、結果的にトラクション制御がエッジ信号数が設定エッジ数より小さい間禁止されることになるため、ノイズの検出を禁止する制御もトラクション制御禁止手段に含まれると考えることも可能である。
【0085】
さらに、ノイズ解消条件を、ノイズの影響が回転速度や回転速度変化量になくなったことを条件とすることもできる。
【0086】
また、本車輪スリップ制御装置が適用される液圧ブレーキ装置は、上記実施形態における装置に限らず、他のタイプの装置であってもよい。例えば、後輪14,15のホイールシリンダ12,13についてはローセレクト制御が行われるようになっている装置であっても、副液圧源28にアキュムレータが設けられているものであってもよい。
【0087】
さらに、3位置電磁弁の代わりに2つの開閉弁とする等、いちいち例示することはしないが、特許請求の範囲を逸脱することなく当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明に共通の一実施形態である車輪スリップ制御装置が搭載された液圧ブレーキ装置のスリップ制御装置のトラクション制御コンピュータに格納されたトラクション制御プログラムを表すフローチャートである。
【図2】上記液圧ブレーキ装置の回路図である。
【図3】上記スリップ制御装置の回転速度等演算コンピュータによって演算される回転速度を説明するための図である。
【図4】上記トラクション制御コンピュータに格納されたトラクション制御テーブルを表す図である。
【図5】上記スリップ制御装置の悪路検出コンピュータに格納された悪路検出プログラムを表すフローチャートである。
【図6】上記スリップ制御装置のノイズ検出コンピュータに格納されたノイズ検出プログラムを表すフローチャートである。
【図7】上記回転速度等演算コンピュータによって演算される回転速度や回転速度変化量へのノイズの影響を説明するための図である。
【図8】図7に示す場合とは別の場合における、回転速度や回転速度変化量へのノイズの影響を説明するための図である。
【図9】さらに別の場合における、回転速度や回転速度変化量へのノイズの影響を説明するための図である。
【図10】さらに別の場合における、回転速度や回転速度変化量へのノイズの影響を説明するための図である。
【図11】さらに別の場合における、回転速度や回転速度変化量へのノイズの影響を説明するための図である。
【図12】上記ノイズ検出コンピュータによってノイズが検出された場合の制御例を示す図である。
【図13】本発明の別の実施形態であるスリップ制御装置のトラクション制御コンピュータに格納されたトラクション制御プログラムを表すフローチャートである。
【図14】本発明のさらに別の実施形態であるスリップ制御装置の悪路検出コンピュータに格納された悪路検出プログラムを表すフローチャートである。
【図15】本発明のさらに別の実施形態であるスリップ制御装置のノイズ検出コンピュータに格納されたノイズ検出プログラムを表すフローチャートである。
【符号の説明】
29 スリップ制御装置
92 回転速度等演算コンピュータ
93 トラクション制御コンピュータ
94 アンチスキッド制御コンピュータ
95 悪路検出コンピュータ
96 ノイズ検出コンピュータ
101〜104 車輪速センサ

Claims (8)

  1. 車両が悪路を走行中か否かを検出する悪路検出装置と、
    ノイズが発生したか否かを検出するノイズ検出装置であって、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置と、その回転速度検出装置によって検出された回転速度の一定時間当たりの変化量に基づいてノイズが発生したか否かを判定する回転速度変化量依拠ノイズ判定手段とを含むものと、
    前記車両の車輪のスリップ状態を適正状態に制御するとともに、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合と前記ノイズ検出装置によってノイズが発生したと検出された場合とで互いに異なる制御を行うスリップ制御手段と
    を含む車輪スリップ制御装置であって、
    前記スリップ制御手段が、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合には、前記ノイズ検出装置によるノイズの検出状況のいかんを問わず、悪路検出装置による検出結果に対応したスリップ制御を行う悪路検出優先スリップ制御手段を含み、
    当該車輪スリップ制御装置が、前記回転速度変化量依拠ノイズ判定手段によってノイズが発生したと判定された場合には、前記スリップ制御手段によるスリップ制御を禁止するスリップ制御禁止手段を含むことを特徴とする車輪スリップ制御装置。
  2. 前記ノイズ検出装置が、単発ノイズを検出する単発ノイズ検出装置である請求項に記載の車輪スリップ制御装置。
  3. 前記スリップ制御手段が、車輪の駆動スリップ状態が適正状態になるようにホイールシリンダ液圧とエンジンのスロットル開度との少なくとも一方を制御するトラクション制御手段を含む請求項1または2に記載の車輪スリップ制御装置。
  4. 前記スリップ制御手段が、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合に、スリップ制御が開始され難くなるようにスリップ制御開始条件を変更するスリップ制御開始条件変更手段を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
  5. 前記スリップ制御禁止手段が、ノイズが発生したと検出された以降、少なくとも回転速度にノイズによる影響がある間は前記スリップ制御手段によるスリップ制御を禁止するノイズ影響存続期間スリップ制御禁止手段を含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
  6. 前記回転速度検出装置が、
    車輪の回転に伴って交流電流を発生させる交流電流発生装置と、
    その交流電流発生装置によって発生させられた交流電流をその交流電流と周波数が等しい矩形波信号に変換する波形整形器と、
    その波形整形器によって整形された矩形波信号の立ち上がり時と立ち下がり時とにエッジ信号を発生させるエッジ信号発生器と、
    そのエッジ信号発生器により発生させられたエッジ信号の状態に基づいて車輪の回転速度を演算する回転速度演算手段とを含み、
    前記スリップ制御禁止手段が、ノイズが発生したと検出された時点以後に発生させられた前記エッジ信号の数が設定エッジ数より小さい間は前記スリップ制御手段によるスリップ制御を禁止するエッジ信号数依拠スリップ制御禁止手段を含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
  7. 前記スリップ制御禁止手段によってスリップ制御が禁止されている間であっても、前記悪路検出装置によって悪路走行中であると検出された場合には、前記スリップ制御禁止手段によるスリップ制御禁止制御を終了させるスリップ制御禁止制御終了手段を含む請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
  8. 当該車輪スリップ制御装置が、その回転速度変化量依拠ノイズ判定手段によってノイズが発生したと判定されるとともにスリップ制御開始条件が満たされた場合には、前記スリップ制御手段によるスリップ制御の開始を、少なくとも回転速度にノイズによる影響がなくなるまで遅延するスリップ制御開始遅延手段を含む請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車輪スリップ制御装置。
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