JP4405144B2 - 車両用アンチロック制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用アンチロック制御装置に係わり、特に、同軸上の左右車輪のブレーキ液圧を同時にセレクトロー制御する車両用アンチロック制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来一般に、車両用アンチロック制御装置として、ブレーキペダルの操作によりブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダと車輪ブレーキとをつなぐ接続路に常開型電磁弁を備えるとともに、ブレーキ液を蓄えるリザーバと車輪ブレーキとをつなぐ解放路に常閉型電磁弁を備え、車輪がロックしそうになると、常開型電磁弁を閉状態かつ常閉型電磁弁を開状態として、車輪ブレーキのブレーキ液圧を解放路を介してリザーバに解放し(減圧モード)、また、車輪ブレーキのブレーキ液圧をそのまま保持しようとするときには、常開型電磁弁および常閉型電磁弁をともに閉状態として、車輪ブレーキを接続路および解放路から遮断し(保持モード)、さらに、車輪がロックするおそれがなくなったときには、常開型電磁弁を開状態かつ常閉型電磁弁を閉状態として、マスタシリンダのブレーキ液圧を接続路を介して直接車輪ブレーキに伝達することとし(増圧モード)、以下、これらのモードを適宜に選択することにより、所謂ポンピングブレーキ的な操作を自動制御させることによって、車輪のスリップ率が所定値を大きく越えないよう制動力を調整制御するものが知られている。
【0003】
この種車両用アンチロック制御装置において、各車輪がロックしそうかどうかの判断をそれら各車輪に設けたそれぞれの車輪速度センサによる検出値をもとに計算して行い、例えば、左右の前輪はそれぞれ独立してアンチロック制御し、左右の後輪は一括して同時にアンチロック制御することで、3チャンネルによる制御を可能にしたものがあり、また、このとき左右の後輪を一括してアンチロック制御するにあたり、セレクトロー制御を採用したものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
ここでセレクトロー制御とは、同軸上の左右の車輪のうち一方がロック傾向を示してアンチロック制御に入ると、他方の車輪についても、ロック傾向を示した一方の車輪に対する制御と同様な制御を行う制御をいう。
【0004】
【特許文献1】
特表平2000−504291号(第12頁、図3)
【特許文献2】
特開20001−48000号(第4頁、図6)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の車両用アンチロック制御装置では、同軸上の左右の車輪に対しセレクトローによる同時制御を行った場合でも、ブレーキ摩擦材の偏摩耗などに起因するいわゆるブレーキの片効きや電磁弁の発熱などに起因する左右ブレーキ液圧のアンバランスが生じることがあり、片効きや左右ブレーキ液圧のアンバランスは、車両の挙動を不安定に作用させたり、ブレーキ力の損失を招いたりする問題があった。
【0006】
上記事情に鑑みてなされたもので、本発明は、同軸上の左右の車輪を一括して同時制御するにあたり、ブレーキの片効きや左右のブレーキ液圧のアンバランスによる車両挙動の不安定化の発生を未然に防止できる、車両用アンチロック制御装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の車両用アンチロック制御装置は、ブレーキ液圧発生器(例えば、実施形態のマスタシリンダ2)と、同軸上の左右輪(例えば、実施形態の車輪Wf、Wf)にそれぞれ装着される一対の車輪ブレーキ(例えば、実施形態のホイールシリンダ3a、3b)と、前記ブレーキ液圧発生器および前記各車輪ブレーキ間を接続する接続路(例えば、実施形態の接続路7)と、ブレーキ液を蓄えるリザーバ(例えば、実施形態のリザーバ9)および前記各車輪ブレーキ間を接続する解放路(例えば、実施形態の解放路10)と、前記接続路に介挿される一対の常開型電磁弁(例えば、実施形態の常開型電磁弁8)と、前記解放路に介挿される一対の常閉型電磁弁(例えば、実施形態の常閉型電磁弁11)と、前記各車輪の車輪速度を検出する一対の車輪速度センサ(例えば、実施形態の車輪速度センサ19,19)と、前記各車輪速度センサで検出された車輪速度に基づいて車輪のロック傾向を判断し、前記各車輪ブレーキのブレーキ液圧を、同時に、前記各常開型電磁弁を閉弁するとともに前記各常閉型電磁弁を開弁する減圧モードと、前記各常開型電磁弁を閉弁するとともに前記各常閉型電磁弁を閉弁する保持モードと、前記各常開型電磁弁を開弁するとともに前記各常閉型電磁弁を閉弁する増圧モードとにセレクトロー制御するアンチロック制御手段(例えば、実施形態のステップS1〜S6)と、を備える車両用アンチロック制御装置において、前記アンチロック制御手段は、保持モード中の前記各車輪速度の差が所定値以上の場合に、少なくともその保持モードに引き続く増圧モードでは車輪速度が高い側の前記車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量が、前記保持モード中の前記各車輪速度の差が所定値を超えない場合よりも増加するように前記各常開型電磁弁を個別に制御すること(例えば、実施形態のステップS18〜S31)を特徴としている。
【0008】
本発明では、アンチロック制御手段において、保持モード中で各車輪速度に差が所定値以上ある場合、少なくともその保持モードに引き続く増圧モードでは、車輪速度が高い側の車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量が所定値を超えない場合よりも増加するように各常開型電磁弁を個別に制御するから、少なくとも該保持モードに続く増圧モードでは、車輪速度が高い側の車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量が他側の車輪ブレーキ液圧へのブレーキ液圧の増圧量よりも増すこととなり、その結果、車輪速度が高い側の車輪ブレーキに対し、車輪速度が低い側の車輪ブレーキより強い制動力を働かせることが可能となる。このため、左右一対の車輪ブレーキにバランス良く制動力を働かせることができる。
請求項2に記載の車両用アンチロック制御装置では、ブレーキ液圧発生器と、同軸上の左右輪にそれぞれ装着される一対の車輪ブレーキと、前記ブレーキ液圧発生器および前記各車輪ブレーキ間を接続する接続路と、ブレーキ液を蓄えるリザーバおよび前記各車輪ブレーキ間を接続する解放路と、前記接続路に介挿される一対の常開型電磁弁と、前記解放路に介挿される一対の常閉型電磁弁と、前記各車輪の車輪速度を検出する一対の車輪速度センサと、前記各車輪速度センサで検出された車輪速度に基づいて車輪のロック傾向を判断し、前記各車輪ブレーキのブレーキ液圧を、同時に、前記各常開型電磁弁を閉弁するとともに前記各常閉型電磁弁を開弁する減圧モードと、前記各常開型電磁弁を閉弁するとともに前記各常閉型電磁弁を閉弁する保持モードと、前記各常開型電磁弁を開弁するとともに前記各常閉型電磁弁を閉弁する増圧モードとにセレクトロー制御するアンチロック制御手段と、を備える車両用アンチロック制御装置において、前記アンチロック制御手段は、保持モード中の前記各車輪速度の差が所定値以上の場合に、その後の増圧モードでは車輪速度が高い側の前記車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量が、前記保持モード中の前記各車輪速度の差が所定値を超えない場合よりも増加するように前記各常開型電磁弁を個別に制御することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の車両用アンチロック制御装置では、請求項1記載のものにおいて、前記アンチロック制御手段は、前記各常開型電磁弁に付与する電流値を異ならせるように制御することを特徴としている。
本発明では、車輪速度が高い側の車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量が他側の車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量よりも増すにあたり、各常開型電磁弁に付与する電流値を異ならせ、これにより、それら各常開型電磁弁の開度を変えることにより対処している。この結果、左右一対の車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量を個別に制御することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る車両用アンチロック制御装置の実施の形態を図面を参照しつつ以下に説明する。
【0011】
図1は本発明に係る車両用アンチロック制御装置が搭載される自動車のブレーキ装置の概略構成図、図2は常開型電磁弁および常閉型電磁弁を示す断面図、図3はアンチロック制御の内容を示すフローチャート、図4は制御モードにおける常開型電磁弁と常閉型電磁弁の制御態様を示す図、図5は制御モードを決定する一例のマップを示す図である。
【0012】
図1に示すように、ブレーキペダル1の操作によりブレーキ液圧を発生する、ブレーキ液圧発生器の一例であるマスタシリンダ2は同軸上の左右の後輪Wf,Wfにそれぞれ装着される一対のホイールシリンダ(請求項1でいう車輪ブレーキ)3a,3bに接続される出力ポート4と、左右の前輪のホイールシリンダ(図示略)に接続される出力ポート5とを備える。なお、図1において出力ポート5に属する系統は出力ポート4に属する系統と同一の構成であるので図示は省略している。
【0013】
マスタシリンダ2の出力ポート4と前記一対のホイールシリンダ3a、3bとは接続路7によって接続され、この接続路7にはホイールシリンダ3a、3bに対応するよう一対の常開型電磁弁8、8が介挿されている。また、前記一対のホイールシリンダ3a、3bとこのホイールシリンダ内のブレーキ液圧を解放するリザーバ9とは解放路10によって接続され、解放路10にはホイールシリンダ3a、3bに対応するよう一対の常閉型電磁弁11、11が介挿されている。
【0014】
リザーバ9には一対のホイールシリンダ3a、3bから送られるブレーキ液が蓄えられるが、このブレーキ液は、ポンプ12およびその上流に設けられたポンプ脈動を吸収するダンパー室13がそれぞれ介挿された戻り路14を介してマスタシリンダ2側へ戻されるようになっている。
【0015】
図1において15は、常開型電磁弁8と並列に設けられて、ホイールシリンダ3a、3bからマスタシリンダ2側へブレーキ液が流れるのを許容するチェック弁、16、17はそれぞれポンプ12の上流側および下流側に直列に設けられて、ホイールシリンダ3aからマスタシリンダ2側へブレーキ液が流れるのを許容するチェック弁、19、19は左右の後輪Wf,Wfにそれぞれ設けられて、それら各車輪Wf,Wfの車輪速度を検出する一対の車輪速度センサである。
【0016】
ここで、前記常開型電磁弁8と前記常閉型電磁弁11について詳しく説明すると、図2(a)に示すように、常開型電磁弁8は、吐出孔8aがホイールシリンダ3a,3b側に接続され、絞りを介した流入孔8bがマスタシリンダ2側に接続されている。この流入孔8bと吐出孔8aとの間に形成されている弁座面8cには、ニードル8dが対向配置されており、さらにこのニードル8dの後端にアーマチャ8eが形成されていて、このアーマチャ8eの外側先方にソレノイド8fが配設されている。
【0017】
また、前記ニードル8dと弁座面8cとの間にリターンスプリング8gが介装され、このリターンスプリング8gによってニードル8dは弁座面8cから離間する方向に付勢されている。
【0018】
従って、ソレノイド8fに通電のない状態では、リターンスプリング8gの弾性力によってニードル8dが弁座面8cから離間し、流入孔8bと吐出孔8aとは連通状態となり、マスタシリンダ2のブレーキ液圧はホイールシリンダ圧を増圧する。また、ソレノイド8fに通電があると、リターンスプリング8gの弾性力に抗してアーマチャ8eがソレノイド8f側に変位してニードル8dの先端部が弁座面8cに当接し、前記流入孔8bと吐出孔51とが遮断されてホイールシリンダ圧は保持される。
【0019】
他方、図2(b)に示すように前記常閉型電磁弁11は、流入孔11aがホイールシリンダ3a,3b側に接続され、絞りを介した逃がし孔11bがリザーバ9側に接続されている。この逃がし孔11bと流入孔11aとの間に形成されている弁座面11cには、ニードル11dが対向配置されており、さらにこのニードル11dと一体的にアーマチャ11eが形成されていて、このアーマチャ11eの外側先方にソレノイド11fが配設されている。また、アーマチャ11eの図2における上方に配置されたバネ押さえ11gと前記ニードル11dとの間にはリターンスプリング11hが介装され、このリターンスプリング11hによってニードル11dは弁座面11cに接する方向に付勢されている。
【0020】
従って、ソレノイド11fに通電のない状態では、前記リターンスプリング11hの弾性力によってニードル11dが弁座面11cに接して、逃がし孔11bと流入孔11aとは遮断状態となる。また、ソレノイド11fに通電があると、前記リターンスプリング11hの弾性力に抗してアーマチャ11eがソレノイド11f側に変位してニードル11dの先端部が弁座面11cから離間し、逃がし孔11bと流入孔11aとは連通状態となり、ホイールシリンダ3a,3bからブレーキ液が逃げてホイールシリンダ圧は減圧されるようになっている。
【0021】
なお、前述したように常開型電磁弁8は通電のないノーマル位置で常時開状態、通電による切換え位置で閉状態に移行し、常閉型電磁弁11は通電のないノーマル位置で常時閉状態、通電による切換え位置で開状態に移行するようになっているのは、異常時の作動補償、いわゆるフェールセーフの関係からである。また、常開型電磁弁8では、マスタシリンダ2側から接続路7を介してブレーキ液圧が働くとき、このブレーキ液圧はリターンスプリング8gの付勢方向と同方向、つまり開状態へ至る方向へ作用するようになっている。
【0022】
前記構成の常開型電磁弁8および常閉型電磁弁11と、前記ポンプ12を駆動する図示せぬモータとはアンチロック制御手段によって制御される。
すなわち、アンチロック制御手段は、前記車輪速度センサ19で検出された左右の後輪Wf,Wfおよび左右の前輪の車輪速度に基づいて各車輪のロック傾向を判断し、各ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧を、常開型電磁弁8を閉弁するとともに常閉型電磁弁11を開弁する減圧モードと、常開型電磁弁8を閉弁するとともに常閉型電磁弁11を閉弁する保持モードと、常開型電磁弁8を開弁するとともに常閉型電磁弁11を閉弁する増圧モードとのいずれかに制御するようになっている。
【0023】
ここで、前記左右の前輪にそれぞれ装着されたホイールシリンダは、それらホイールシリンダに対応するよう接続路に介挿された常開型電磁弁および解放路に介挿された常閉型電磁弁によって独立的に制御されるが、前記左右の後輪Wf、Wfにそれぞれ装着された一対のホイールシリンダ3a、3bは、それらホイールシリンダ3a、3bに対応するよう接続路7に介挿された一対の常開型電磁弁8および解放路10に介挿された一対の常閉型電磁弁11によって同時にセレクトロー制御される。
セレクトロー制御には、主制御手段への入力時点でロー(低)側、すなわち、より低速側の車輪速度の信号のみが入力して所定の演算処理が行われるタイプと、主制御手段への入力時点ではそれぞれ別個に複数の信号が入力し、各車輪ブレーキについてそれぞれ独立して所定の演算処理が行われた後、出力側で複数の出力信号のうちロー(低)側、すなわち、減圧側が選択されるものとがある。
【0024】
アンチロック制御手段の内容を図3のフローチャートを参照しながら説明する。アンチロック制御手段による演算処理は、所定のサンプリング時間(例えば5msec)ごとにタイマ割込処理として実行される。演算処理が開始されると、まず、ステップS1で初期化される。
次に、ステップS2へ移行して、左右の後輪Wf,Wfおよび左右の前輪それぞれに設けられた車輪速度センサ19、…によって、それら各車輪Wfの車輪速度VWが読み込まれる。
【0025】
次にステップS3へ移行し、車輪加速度ACL、推定車体速度VRO、路面摩擦係数がそれぞれ算出される。
車輪加速度ACLは、前記車速センサ19によって検出された各車輪の車輪速度VWをそれぞれ微分することにより得られる。
【0026】
推定車体速度VROは、例えば従来周知の車体速度演算処理にしたがって行われる。すなわち、各車輪Wfの車輪速度VWのうち最大値を選んで基準速度とし、この基準速度に、さらに加速側および減速側にそれぞれ勾配制限をかける演算を行う。具体的には、各処理時間ごとに加速度および減速度にそれぞれしきい値を設定し、推定後の車体速度の変化がこれらしきい値内に収まるように、言い換えれば推定車体速度変化が予め定めた加速度および減速度のしきい値を超える場合には、この設定した加速度あるいは減速度のしきい値がその処理時間の車体速度の変化であると仮定することによって推定車体速度VROを算出する。
なお、この推定車体速度VROの算出のための演算処理としては、本出願人が先に提案した特開平5−50903号公報等に開示されている。
【0027】
路面摩擦係数については、これを直接求めるのではなく、前述のように演算により求めた推定車体速度VROについて、今回求めた推定車体速度VRO(n)と前回求めた推定車体速度VRO(n-1)との速度差ΔVROを求め、この速度差ΔVROを、前回のサンプリング時期から今回のサンプリング時期までの経過時間ΔTで除することにより加減速度値(ΔVRO/ΔT)を求め、この値を路面摩擦係数に対応したものとしている。
【0028】
次にステップS4へ移行し、各車輪Wfについて車輪スリップ率SRを算出する。車輪スリップ率SRは、推定車体速度VROから車輪スリップ率を求めようとする車輪Wfの車輪速度VWを引き、その値を推定車体速度VROで除することにより求められる。
つまり式で表せば次のとおりである。
SR=[(VRO−VW)/VRO]×100
【0029】
次にステップS5へ移行し、一括制御する左右の後輪Wf、Wf並びに左右の前輪についてそれぞれアンチロック制御モードの判定を行う。アンチロック制御モードには、図4にも示すように、増圧モード、保持モード、減圧モードの他、アンチロック制御を行わない停止モードがある。さらに増圧モードは、単なる増圧モードと常開型電磁弁8に付与する制御信号をPWM(Pulse Width Modulation)制御によってデューティ比制御するデューティ増圧に分かれ、また保持モードは、単なる保持モードと、常開型電磁弁8に付与する制御信号をPWM制御によってデューティ比制御するデューティ保持モードに分かれる。
【0030】
このアンチロック制御モードは、前述のようにして求めた車輪スリップ率SRと、各車輪Wfの車輪加速度ACLを基に、例えば、図5に示すように、増圧モード、保持モード、減圧モードを判定する。このマップは、各路面摩擦係数に対応するように求めた前記加減速度値(ΔVRO/ΔT)に応じて、複数準備される。
例えば、図5に示す例のマップでは、車輪加速度がプラス側のしきい値βよりも大きいときには、車輪スリップ率SRがいかなる値でも保持モードとし、車輪加速度がプラス側のしきい値βとマイナス側のしきい値αの間にあるときには車輪スリップ率SRが設定値Sioより小さいときに増圧モード、車輪スリップ率SRが設定値Sio以上のときに減圧モード、さらに、車輪加速度がマイナス側のしきい値αより小さいときには、車輪スリップ率SRが設定値Sioより小さいときに保持モード、車輪スリップ率SRが設定値Sio以上のときに減圧モードとなる。
【0031】
前記保持モードにおいて、単なる保持モードとデューティ保持モードとの切換は、所定の条件が成立している状態のときデューティ保持モード、所定の条件が成立していない状態のとき単なる保持モードとなるように設定している。
ここで、所定の条件とは、例えば、車両用電源の電圧が予め定められた設定値以上であることや、または常開型電磁弁8へ接続される端子電圧が予め定められた設定値以上であることが挙げられ、あるいは、マスタシリンダ2で発生しているブレーキ液圧が予め定められた設定圧以下であること等が挙げられる。要は、常開型電磁弁8に定格電流値以下の所定比率の電流値が付与される状態でも、この常開型電磁弁8を十分に閉状態にさせ、また閉状態を保持できる諸条件を所定の条件という。
【0032】
また、デューティ保持モードに設定されたとき、前記常開型電磁弁8に付与する電流値は、減圧モードにおいて常開型電磁弁8に付与する電流値よりも小さくなるように制御している。
具体的には、デューティ保持モードにおいて、常開型電磁弁8に付与する制御信号のデューティ比を、減圧モードにおいて常開型電磁弁8に付与する制御信号を100パーセントとした場合の約65〜75パーセントとなるように制御する。
【0033】
前記増圧モードにおいて、算出された路面摩擦係数が所定値以下か否かを判断し、所定値以下のときは単なる増圧モードを選択し、所定値未満のときはデューティ増圧モードを選択するようにしている。
また、デューティ増圧モードのときには、常開型電磁弁8に付与する電流値を、減圧モードにおいて常開型電磁弁8に連続的に通電(オン)したときの電流値を100とし、通電を停止したとき(オフ)の電流値を0としたときに、100>D1>D2>0なる所定値D1,D2を所定の時間間隔(例えば、5msec間隔)で繰り返すこととしている。
【0034】
この実施の形態で示すアンチロック制御では、基本的に前述したように同軸上にある左右の後輪Wf、Wfを一括して同時にセレクトロー制御しているが、さらに、ここでは、保持モード中に左右の後輪の車輪速度VWの差がある値以上のときに、その後の増圧モードにおいてはそれら左右の後輪の車輪速度が一致するように、左右の後輪Wf、Wfに装着されるホイールシリンダ3a、3bへのブレーキ液圧の増圧量をそれぞれ個別に制御している。
【0035】
この左右の後輪Wf、Wfの車輪速度を一致させるためのアンチロック制御(左右差補正演算)の内容について図6および図7を参照しながら説明する。
まず、ステップS10では制御モードが停止中であるか否かを判断し、停止中であると判断したときには、ステップ11に移行して、左右の後輪Wf、Wfのホイールシリンダ3a、3bに対応する常開型電磁弁8へ付与する今回のインバルブ信号RR(n)、RL(n)をともに「0」にリセットする。その後、ステップ12に移行して、左右の後輪の平均速度差VWaveを「0」にリセットし、速度差積分値ΔVW_INTEを「0」にリセットし、デューティ保持モード時間をカウントするデューティ保持モードタイマーΔTを「0」にリセットする。
【0036】
また、ステップ10で制御モードが停止中ではなく制御中であると判断したときには、ステップ13へ移行し、ここで制御モードがデューティ増圧モードか否かを判断する。デューティ増圧モードでないと判断したときにはステップ14へ移行し、ここでさらに制御モードがデューティ保持モードが否かを判断する。
【0037】
ステップ14で制御モードがデューティ保持モードでないと判断したときには前記ステップ12へ移行し、制御モードがデューティ保持モードであると判断したときにはステップ15へ移行する。ステップ15では、デューティ保持モードタイマーΔTをインクリメントしてスタートさせる。その後、ステップ16へ移行し、右後輪車輪速度rrVWから左後輪車輪速度rlvwを引くことにより、左右後輪Wf、Wfの車輪速度差ΔVWを求める。次いで、ステップ17へ移行し、今回までの速度差積分値ΔVW_INTE(n)を、前回までの速度差積分値ΔVW_INTE(n−1)に、ステップ16で求めた車輪速度差ΔVWを足し込むことにより求める。
【0038】
一方、前記ステップ13で制御モードがデューティ増圧モードであると判断したときには、ステップ18へ移行し、ここでさらに前回の制御モードがデューティ保持モードであるか否かを判断する。そして、前回の制御モードがデューティ保持モードでないと判断したときには、ステップ25へ移行し、ここで、タイマーΔTを「0」にリセットするとともに、速度差積分値ΔVW_INTEを「0」にリセットする。
【0039】
一方、ステップ18で前回の制御モードがデューティ保持モードであると判断したときには、ステップ19へ移行して、デューティ保持モード時間を示すデューティ保持モードタイマーΔTが10msec以上か否かを判断する。10msecに満たないときには前記ステップ25へ移行し、10msec以上であるときにはステップ20へ移行する。
【0040】
ステップ20では、車輪速度差積分値ΔVW_INTEをデューティ保持モードタイマーΔTで除することによって、単位時間あたりの車輪速度差平均値VWaveを求める。次いで、ステップ21、23へ移行する。これらステップ21、23では、単位時間あたりの車輪速度差平均値VWaveが、−2km/hと2km/hの範囲に入っているか判断し、入っているときにはステップ24へ移行して左右車輪速度差補正フラグVWSLIPを「0」にリセットする。他方、車輪速度差の平均値VWaveが−2.0km/hと2.0km/hの範囲外であるときには、ステップ22へ移行し、左右車輪速度差補正フラグVWSLIPを「1」にセットする。その後、ステップ25へ移行する。
【0041】
すなわち、前回の制御モードが保持モードであって、その時間が10msec以上であり、しかもそのときの左右の後輪Wf、Wfの車輪速度差平均値VWaveが−2km/h〜2km/hの範囲を越えるときには、許容する以上の車輪速度差が出ていると判断し、それら左右の後輪Wf、Wfの車輪速度を一致させるべく、左右車輪速度差補正フラグVWSLIPを「1」にセットする。つまり、左右車輪速度差補正フラグを立てる。
【0042】
次に、図7のステップ26へ移行し、左右車輪速度差補正フラグVWSLIPが「1」にセットされているか否かを判断し、同フラグが「1」にセットされていないときにはエンドに移行し、同フラグが「1」にセットされているときにはステップ27へ移行する。
ステップ27では、前回において左右車輪速度差補正フラグVWSLIPフラグが「0」にセットされていたか否か判断し、「0」にセットされていなかったときにはエンドになり、同フラグが「0」にセットされていたときには、ステップ28に移行する。
【0043】
ステップ28では、車輪速度差平均値VWaveが2.0km/hよりも大きいか否か判断し、2.0km/hより大きいとき、つまり、右後輪の車輪速度が左後輪の車輪速度よりも車輪速度差の平均値で2.0km/h以上大きいときには、右後輪の車輪速度が左後輪の車輪速度よりも許容値(2.0km/h)より大であることを意味するから、右後輪についてのホイールシリンダ3aに対応する常開型電磁弁8へ付与する今回のインバルブ制御信号RR(n)を、前回のインバルブ制御信号RR(n−1)に補正値DD(VWave)を足し込むことで設定する。
ここで、補正値DD(VWave)は、図8に示すように、予め設定したテーブルにより、左右の後輪Wf、Wfの車輪速度差平均値VWaveに応じて決定される値である。
【0044】
次いで、ステップ30へ移行し、車輪速度が低い側である、左後輪のホイールシリンダ3bに対応する常開型電磁弁8へ付与する今回のインバルブ制御信号RL(n)については、補正値DDを足し込むことなく、前回のインバルブ制御信号RL(n−1)をそのまま設定して用いる。その後、ステップ31へ移行して左右車輪速度差補正フラグVWSLIPを「0」にリセットする。
【0045】
他方、ステップ28で、車輪速度差平均値VWaveが2.0km/hに満たないとき、つまり、このステップ28に至るときは、前提として、ステップ26の判断で左右後輪の車輪速度差平均値が−2.0km/h〜2.0km/hの範囲外であることを考え合わせると、左後輪の車輪速度が右後輪の車輪速度よりも平均速度差で2.0km/hを越えるときであり、このときにはステップ32に移行し、車輪速度が高い側である、左後輪についてのホイールシリンダ3bに対応する常開型電磁弁8へ付与する今回のインバルブ制御信号RL(n)を、前回のインバルブ制御信号RL(n−1)に補正値DD(VWave)を足し込むことで設定する。次いで、ステップ33へ移行し、車輪速度が低い側である、右後輪のホイールシリンダ3aに対応する常開型電磁弁8へ付与する今回のインバルブ制御信号RR(n)については、補正値DDを足し込むことなく、前回のインバルブ制御信号RR(n−1)をそのまま設定して用いる。その後、ステップ31へ移行して左右車輪速度差補正フラグVWSLIPを「0」にリセットして終了する。
【0046】
上記の制御内容において、ステップ31で左右車輪速度差補正フラグVWSLIPを「0」にリセットするのは、ステップ27での判断と合わせ、同フラグがセットされた初回のみ、それ以降の補正値演算ステップ(ステップ27〜33)へ進み、2回目からは補正値DDについての演算を行わないためである。したがって、一旦、補正値DDを演算すれば、次に左右車輪速度差補正フラグが「1」にセットされるまで同じ補正値DDを用いることとなる。
【0047】
上記アンチロック制御モードの判定を終えたら、次に、図3に示すステップS6へ移行し、各車輪Wfに付設される常開型電磁弁8、常閉型電磁弁11およびポンプ12を駆動するためのモータを制御する制御信号を発し、それら各機器の作動を制御する。
【0048】
次に、上記構成の車両用アンチロック制御装置の作用について説明する。
運転者がブレーキペダル1を踏むとマスタシリンダ2によって発生したブレーキ液が出力ポート4,5から出力される。アンチロック制御が行われない通常時には、アンチロック制御装置の常開型電磁弁8は開状態になっておりかつ常閉型電磁弁11は閉状態になっているため、マスタシリンダ2からのブレーキ液圧はそのままホイールシリンダ3a、3bに伝達されて車輪Wf、Wfを制動する。
【0049】
そして、例えばブレーキペダル1を強く踏む等により車輪Wfがロック傾向になって、車輪速度VWが実車体速度(実際には推定車体速度VRO)よりも低下し、車輪スリップ率SRが上がると、アンチロック制御手段からの制御信号により常開型電磁弁8を閉状態にするとともに常閉型電磁弁11を開状態にする。これにより、マスタシリンダ2からのブレーキ液圧は閉弁した常開型電磁弁8により遮断されてホイールシリンダ3a,3bに伝達されなくなり、かつホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液が開弁した常閉型電磁弁11を介してリザーバ9に排出されるため、ホイールシリンダのブレーキ液圧が減圧される。このとき、リザーバ9に排出されたブレーキ液は、ポンプ12の作動によりマスタシリンダ2側へ戻される。
【0050】
ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧が減圧され、ロック傾向が解消されると、常閉型電磁弁8に対する通電を中止してホイールシリンダ3a,3bとリザーバ9との連通を遮断することにより、ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧の保持を行う。その結果、ホイールシリンダ3a,3bの制動力が一定に保持され、低下していた車輪速度VWが回復に転じる。そして、車輪速度VWが実車体速度に近づくと、常開型電磁弁8を所定開度に開弁することにより、ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧を増圧する。このように減圧モード(保持モードを含む)とデューティ増圧モードとを含むサイクルを繰り返し行うことにより、車輪のロックを防止しながら最大限の制動力を発生させることができる。
【0051】
図9は上記車両用アンチロック制御装置によって制御されるときの実車体速度、車輪速度VWおよびホイールシリンダのブレーキ液圧(以下、ホイールシリンダ圧と省略することがある)の変化を示すタイミングチャートである。
【0052】
ここで、保持モードのときには、所定の条件を満たしているとき、つまり車両用電源の電圧が予め定められた設定値以上であることや、常開型電磁弁8へ接続される端子電圧が予め定められた設定値以上であること等のときには、PWM制御によってデューティ比が約70パーセントとなるように、常開型電磁弁8に付与される電流値が制御される。つまり、前記アンチロック制御手段は、所定の条件が成立している状態では、保持モードにおいて常開型電磁弁8に付与する電流値が、減圧モードにおいて常開型電磁弁8に付与する電流値よりも小さくなるように制御される。
【0053】
このとき、図9からも明らかなように、ホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧)は、若干上下に振れつつもほぼ一定に保たれていることがわかる。このことは、常開型電磁弁8が閉状態に保持されていることを意味する。このように、常開型電磁弁8を閉状態にするのに、デューティ比100パーセントの電流値を流すのではなく、デューティ比70パーセント程度の電流値を流すことによって閉弁させているため、デューティ比100パーセントの電流値を流す場合に比べて、消費電流を節約することができる。
【0054】
また、保持モードに引き続いて実行されがちな増圧モード(少なくとも常開型電磁弁を閉状態から開状態に切り換えることを必要とするモード)への切り換えるとき、常開型電磁弁8を必要以上の過剰励磁力で閉弁していない分、応答性を向上させることができる。
なお、保持モードに続いて減圧モードになるときは、常開型電磁弁8に100パーセントデューティ比の電流値を付与することとなるが、常開型電磁弁8は既に閉状態になっているので、減圧モードへの応答が遅れることはない。
【0055】
一方、デューティ増圧モードのときには、常開型電磁弁8に付与する電流値を、減圧モードにおいて常開型電磁弁8に連続的に通電(オン)したときの電流値を100とし、通電を停止したとき(オフ)の電流値を0としたときに、100>D1>D2>0なる所定値D1,D2を所定の時間周期(例えば、5msec間隔)で繰り返すこととしている。これにより、たとえ、マスタシリンダ2側のブレーキ液圧が変動する場合でも、その変動をデューティ比が強制的に変化することにより吸収してその影響を受けにくくしている。そして、トータル的にみた場合、安定した弁開度が得られ、これにより、増圧モードにおける増圧レートを安定させることができる。
【0056】
また、上記アンチロック制御装置において、一括して同時にセレクトロー制御される左右後輪Wf、Wfについては、それらの左右の後輪Wf、Wfの車輪速度差平均値VWaveがデューティ保持モードにおいて、予め設定された値(例えば2km/h)を越えると、そのデューティ保持モードに引き続くデューティ増圧モードでは、車輪速度が高い側のホイールシリンダへのブレーキ液圧の増圧量が増加するように各常開型電磁弁8を個別に制御するようしている。
【0057】
図10は上記車両用アンチロック制御装置によって制御されるときの左右の後輪の車輪速度VW、それら後輪にそれぞれ装着されるホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧)、制御モード、補正フラグ、並びにホイルシリンダ3a、3bに対応する常開型電磁弁8への開信号であるインバルブ制御信号の関係を表すタイミングチャートである。
【0058】
この図からわかるように、この図における当初時間は、左右の後輪Wf、Wfに装着されるホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧が、常開型電磁弁8や常閉型電磁弁11の発熱や常開型電磁弁8同士の間の特性の相違などに起因してアンバランスが生じ、このアンバランスに伴い左右の後輪Wf、Wfの車輪速度も異なっている。そして、デューティ保持モード(図中D(イ)で示す)のときに、それら左右の後輪の車輪速度差の平均値が予め設定された値(例えば2km/h)を越え、しかも、このデューティ保持モード時間が10msec以上であるときには、左右車輪速度差補正フラグが「1」にセットされ(ステップ18〜23)、このデューティ保持モードに引き続くデューティ増圧モードでは、車輪速度が高い側のホイールシリンダへのブレーキ液圧の増圧量が増加するように各常開型電磁弁8を個別に制御する。
【0059】
具体的には、左右の後輪の車輪速度の差に応じ、車輪速度の高い側のホイールシリンダに対応する常開型電磁弁8へのインバルブ制御信号として、前回に設定したインバルブ制御信号に図8に示すテーブルにより設定される補正値DDを足し込んだ値を設定し、このインバルブ信号を常開型電磁弁に付与することとしている(図10中、車輪速度の高い側のインバルブ制御信号をXa、車輪速度の低い側のインバルブ制御信号をXbで表している。)この図からもわかるように、図中最初のデューティ保持モードに続くデューティ増圧モード以降では、次に左右車輪速度差補正フラグが「1」にセットされるまで、補正値DDを足し込まれた値を、車輪速度の高い側のホイールシリンダに対応する常開型電磁弁8へのインバルブ制御信号として用いられ、左右の後輪のホイールシリンダ3a、3bのブレーキ液圧がほぼ同程度となり、同時に、左右の後輪の車輪速度も同程度になる。
【0060】
上述のように実施の形態を詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することない範囲で種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0061】
例えば、前述の実施の形態では、デューティ保持モードにおいて、同時にセレクトロー制御する、左右の後輪のホイールシリンダ圧が異なることに起因する左右の後輪の車輪速度が異なる場合の制御例をあげて本発明を説明しているが、これに限られることなく、例えば、左右の後輪のホイールシリンダ圧が同じであっても、ブレーキ摩擦材の偏摩耗等に起因して左右の後輪の車輪速度が異なる場合には、デューティ増圧のときに、わざわざ左右の後輪のホイールシリンダ圧をそれぞれ違えることにより、左右の後輪の車輪速度が同じになるよう前記同様の制御が実行される。
【0062】
また、前述の実施の形態では、デューティ保持モードに続くデューティ増圧モードにおいて、車輪速度が高い側のホイールシリンダへのブレーキ液圧の増圧量が増加するにあたり、各常開型電磁弁へのインバルブ制御信号のデューティ比を変えることによって対処しているが、車輪速度が高い側のホイールシリンダへのブレーキ液圧の増圧量を増加する手段としては、インバルブ信号のデューティ比を変える他、インバルブ信号の通電時間を変えることによっても可能である。例えば、車輪速度が高い側のホイールシリンダに付設される常開型電磁弁へのインバルブ信号の付与時間をタイマー等を利用して所定時間延長するようにしても良い。
【0063】
また、前述の実施の形態では、デューティ保持モードに続くデューティ増圧モードにおいて、車輪速度が高い側のホイールシリンダへのブレーキ液圧の増圧量を増加制御するにあたり、一度左右車輪速度差補正フラグが立った場合、次の左右車輪速度差補正フラグが立つまで、増加制御を続けているが、これに限られることなく、デューティ保持モードに続く次のデューティ増圧モードのみについてブレーキ液圧の増圧量の増加制御を行っても良い。
【0064】
【発明の効果】
以上詳述したように、本願発明の車両用アンチロック制御装置によれば、保持モード中の各車輪速度の差に基づいて少なくともその保持モードに引き続く増圧モードでは車輪速度が高い側の前記車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量が増加するように各常開型電磁弁を個別に制御するから、車輪速度が高い側の車輪ブレーキに対しより強い制動力を働かせることが可能となり、結果的に、左右一対の車輪ブレーキにバランス良く制動力を働かせることができる。このため、ブレーキの片効きや左右のブレーキ液圧のアンバランスによる車両挙動の不安定化の発生を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車のブレーキ装置の概略構成図である。
【図2】常開型電磁弁および常閉型電磁弁を示す断面図である。
【図3】アンチロック制御手段の内容を示すフローチャートである。
【図4】制御モードにおける常開型電磁弁と常閉型電磁弁の制御態様を示す図である。
【図5】制御モードを決定する一例のマップを示す図である。
【図6】アンチロック制御手段の内容を示すフローチャートである。
【図7】アンチロック制御手段の内容を示すフローチャートである。
【図8】左右後輪の車輪速度差を補正するときの補正値を決定するテーブルである。
【図9】アンチロック制御時の実車体速度、車輪加速度およびホイールブレーキ圧の変化を示す図タイミングチャートである。
【図10】アンチロック制御時の左右の後輪の車輪速度、それら後輪のホイールシリンダ圧、制御モード、補正フラグ、並びに常開型電磁弁への閉信号であるインバルブ信号の関係を表すタイミングチャートである。
【符号の説明】
2…マスタシリンダ(ブレーキ液圧発生器)
3a、3b…ホイールシリンダ(車輪ブレーキ)
7…接続路
8…常開型電磁弁
10…解放路
11…常閉型電磁弁
19…車輪速度センサ
ステップS1〜S31…アンチロック制御手段
Wf…後輪(車輪)
Claims (3)
- ブレーキ液圧発生器と、
同軸上の左右輪にそれぞれ装着される一対の車輪ブレーキと、
前記ブレーキ液圧発生器および前記各車輪ブレーキ間を接続する接続路と、
ブレーキ液を蓄えるリザーバおよび前記各車輪ブレーキ間を接続する解放路と、
前記接続路に介挿される一対の常開型電磁弁と、
前記解放路に介挿される一対の常閉型電磁弁と、
前記各車輪の車輪速度を検出する一対の車輪速度センサと、
前記各車輪速度センサで検出された車輪速度に基づいて車輪のロック傾向を判断し、前記各車輪ブレーキのブレーキ液圧を、同時に、
前記各常開型電磁弁を閉弁するとともに前記各常閉型電磁弁を開弁する減圧モードと、前記各常開型電磁弁を閉弁するとともに前記各常閉型電磁弁を閉弁する保持モードと、前記各常開型電磁弁を開弁するとともに前記各常閉型電磁弁を閉弁する増圧モードとにセレクトロー制御するアンチロック制御手段と、
を備える車両用アンチロック制御装置において、
前記アンチロック制御手段は、保持モード中の前記各車輪速度の差が所定値以上の場合に、少なくともその保持モードに引き続く増圧モードでは車輪速度が高い側の前記車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量が、前記保持モード中の前記各車輪速度の差が所定値を超えない場合よりも増加するように前記各常開型電磁弁を個別に制御することを特徴とする車両用アンチロック制御装置。 - ブレーキ液圧発生器と、
同軸上の左右輪にそれぞれ装着される一対の車輪ブレーキと、
前記ブレーキ液圧発生器および前記各車輪ブレーキ間を接続する接続路と、
ブレーキ液を蓄えるリザーバおよび前記各車輪ブレーキ間を接続する解放路と、
前記接続路に介挿される一対の常開型電磁弁と、
前記解放路に介挿される一対の常閉型電磁弁と、
前記各車輪の車輪速度を検出する一対の車輪速度センサと、
前記各車輪速度センサで検出された車輪速度に基づいて車輪のロック傾向を判断し、前記各車輪ブレーキのブレーキ液圧を、同時に、
前記各常開型電磁弁を閉弁するとともに前記各常閉型電磁弁を開弁する減圧モードと、前記各常開型電磁弁を閉弁するとともに前記各常閉型電磁弁を閉弁する保持モードと、前記各常開型電磁弁を開弁するとともに前記各常閉型電磁弁を閉弁する増圧モードとにセレクトロー制御するアンチロック制御手段と、
を備える車両用アンチロック制御装置において、
前記アンチロック制御手段は、保持モード中の前記各車輪速度の差が所定値以上の場合に、その後の増圧モードでは車輪速度が高い側の前記車輪ブレーキへのブレーキ液圧の増圧量が、前記保持モード中の前記各車輪速度の差が所定値を超えない場合よりも増加するように前記各常開型電磁弁を個別に制御することを特徴とする車両用アンチロック制御装置。 - 請求項1記載の車両用アンチロック制御装置において、
前記アンチロック制御手段は、前記各常開型電磁弁に付与する電流値を異ならせるように制御することを特徴とする車両用アンチロック制御装置。
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