以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態は、説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返されない。
図1を参照して、本実施の形態に係る車両1の全体ブロック図が説明される。車両1は、PCU(Power Control Unit)60と、メインバッテリ70と、駆動システム84と、ECU(Electronic Control Unit)200とを含む。駆動システム84は、エンジン10と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)20と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)30と、駆動輪80と、トランスミッション86とを含む。トランスミッション86は、駆動軸16と、動力分割装置40と、減速機58と、ドライブシャフト82とを含む駆動力伝達装置である。
この車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。2経路のうちの一方の経路は減速機58を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、他方の経路は第1MG20へ伝達される経路である。
第1MG20および第2MG30は、たとえば、三相交流回転電機である。第1MG20および第2MG30は、PCU60によって駆動される。
第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電してPCU60を経由してメインバッテリ70を充電するジェネレータとしての機能を有する。また、第1MG20は、メインバッテリ70からの電力を受けてエンジン10の出力軸であるクランク軸を回転させる。これによって、第1MG20は、エンジン10を始動するスタータとしての機能を有する。
第2MG30は、メインバッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくともいずれか一方を用いて駆動輪80に駆動力を与える駆動用モータとしての機能を有する。また、第2MG30は、回生制動によって発電された電力を用いてPCU60を経由してメインバッテリ70を充電するためのジェネレータとしての機能を有する。
エンジン10は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン10は、複数の気筒102を含む。さらに、エンジン10には、エンジン10のクランク軸の回転速度(以下、エンジン回転速度と記載する)Neを検出するためのエンジン回転速度センサ11が設けられる。エンジン回転速度センサ11は、検出されたエンジン回転速度Neを示す信号をECU200に送信する。
動力分割装置40は、駆動輪80を回転させるための駆動軸16、エンジン10の出力軸および第1MG20の回転軸の三要素の各々を機械的に連結する。動力分割装置40は、上述の三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間での動力の伝達を可能とする。第2MG30の回転軸は、駆動軸16に連結される。
動力分割装置40は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車機構である。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤの各々と噛み合う。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランク軸に連結される。サンギヤは、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤは、駆動軸16を介在して第2MG30の回転軸および減速機58に連結される。
減速機58は、動力分割装置40や第2MG30からの動力を駆動輪80に伝達する。また、減速機58は、駆動輪80が受けた路面からの反力を動力分割装置40や第2MG30に伝達する。
PCU60は、メインバッテリ70に蓄えられた直流電力を第1MG20および第2MG30を駆動するための交流電力に変換する。PCU60は、ECU200からの制御信号S2に基づいて制御される昇圧コンバータ62およびインバータ64を含む。
昇圧コンバータ62は、メインバッテリ70から受けた直流電力の電圧を昇圧してインバータ64に出力する。インバータ64は、昇圧コンバータ62が出力した直流電力を交流電力に変換して第1MG20および/または第2MG30に出力する。これにより、メインバッテリ70に蓄えられた電力を用いて第1MG20および/または第2MG30が駆動される。また、インバータ64は、第1MG20および/または第2MG30によって発電される交流電力を直流電力に変換して昇圧コンバータ62に出力する。昇圧コンバータ62は、インバータ64が出力した直流電力の電圧を降圧してメインバッテリ70へ出力する。これにより、第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いてメインバッテリ70が充電される。なお、昇圧コンバータ62は、省略されてもよい。
メインバッテリ70は、蓄電装置であり、再充電可能な直流電源である。メインバッテリ70は、PCU60に接続される。メインバッテリ70としては、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池が用いられる。メインバッテリ70の電圧は、たとえば200V程度である。メインバッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される。なお、メインバッテリ70は、二次電池に限らず、直流電圧を生成できるもの、たとえば、キャパシタ、太陽電池、燃料電池等であってもよい。
メインバッテリ70には、メインバッテリ70の電池温度TMBを検出するための電池温度センサ156と、メインバッテリ70の電流IBを検出するための電流センサ158と、メインバッテリ70の電圧VBを検出するための電圧センサ160とが設けられる。
電池温度センサ156は、電池温度TMBを示す信号をECU200に送信する。電流センサ158は、電流IBを示す信号をECU200に送信する。電圧センサ160は、電圧VBを示す信号をECU200に送信する。
アクセルポジションセンサ162は、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量APを検出する。アクセルポジションセンサ162は、アクセルペダルの踏み込み量Apを示す信号をECU200に送信する。
第1レゾルバ12は、第1MG20の回転速度Nm1を検出する。第1レゾルバ12は、検出された回転速度Nm1を示す信号をECU200に送信する。第2レゾルバ13は、第2MG30の回転速度Nm2を検出する。第2レゾルバ13は、検出された回転速度Nm2を示す信号をECU200に送信する。
車輪速センサ14は、駆動輪80の回転速度Nwを検出する。車輪速センサ14は、検出された回転速度Nwを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した回転速度Nwに基づいて車速Vを算出する。なお、ECU200は、回転速度Nwに代えて第2MG30の回転速度Nm2に基づいて車速Vを算出するようにしてもよい。
ECU200は、エンジン10を制御するための制御信号S1を生成し、その生成した制御信号S1をエンジン10へ出力する。また、ECU200は、PCU60を制御するための制御信号S2を生成し、その生成した制御信号S2をPCU60へ出力する。
ECU200は、エンジン10およびPCU60等を制御することによって車両1が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体、すなわち、メインバッテリ70の充放電状態、エンジン10、第1MG20および第2MG30の動作状態を制御する。
ECU200は、アクセルペダルの踏み込み量APに対応する要求駆動力を算出する。ECU200は、算出された要求駆動力に応じて、第1MG20および第2MG30のトルクと、エンジン10の出力とを制御する。
上述したような構成を有する車両1においては、発進時や低速走行時等であってエンジン10の効率が悪い場合には、エンジン10を停止させた状態で第2MG30のみによる走行が行なわれる。また、通常走行時には、たとえば動力分割装置40によりエンジン10の動力が2経路の動力に分けられる。一方の動力で駆動輪80が直接的に駆動される。他方の動力で第1MG20を駆動して発電が行なわれる。このとき、ECU200は、発電された電力を用いて第2MG30を駆動させる。このように第2MG30を駆動させることにより駆動輪80の駆動補助が行なわれる。
車両1の減速時には、駆動輪80の回転に従動する第2MG30がジェネレータとして機能して回生制動が行なわれる。回生制動によって回収した電力は、メインバッテリ70に蓄えられる。なお、ECU200は、蓄電装置の残容量(以下の説明においては、SOC(State of Charge)と記載する)が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン10の出力を増加させて第1MG20による発電量を増加させる。これにより、メインバッテリ70のSOCが増加させられる。また、ECU200は、低速走行時でも必要に応じてエンジン10からの駆動力を増加させる制御を行なう場合もある。たとえば、上述のようにメインバッテリ70の充電が必要な場合や、エアコン等の補機が駆動される場合や、エンジン10の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
以上のような車両1が悪路を走行している場合には、駆動輪80の回転状態がスリップ状態とグリップ状態とを繰り返すことによって回転変動が生じて、駆動システム84において共振が発生する場合がある。このような共振が発生した場合には、共振による過大な入力から駆動システム84の部品を保護するため、車両の駆動力を低下させることが望ましい。しかしながら、共振を検出して車両の走行路面が悪路であるか否かを判定する場合に誤判定すると、車両1が悪路を走行していないときに車両1の駆動力を低下させる場合がある。
そこで、本実施の形態においては、ECU200が、第2MG30の回転速度Nm2の変動成分の大きさの積算値が第1しきい値よりも大きい場合であって、かつ、積算値の増加傾向を示す値が第2しきい値よりも大きい場合には、駆動力を制限する点を特徴とする。第1しきい値および第2しきい値は、いずれも車両1が悪路を走行していることを判定するための値である。なお、悪路とは、地面に凹凸を有する波状路面あるいは部分的に低摩擦係数の部分を有する路面等の駆動輪がスリップ状態とグリップ状態とを交互に繰り返す状態となる路面をいう。
図2に、本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の機能ブロック図を示す。ECU200は、積算処理部350と、経過時間判定部358と、回数算出部360と、共振判定部362と、駆動力制限部364と、解除判定部366と、レート決定部368と、復帰制御部370とを含む。
積算処理部350は、バンドパスフィルタ352と、積算部354と、ローパスフィルタ356とを含む。
バンドパスフィルタ352は、第2レゾルバ13から取得した回転速度Nm2から共振周波数帯に対応する所定周波数帯の変動成分を第1フィルタ出力値Fo1として抽出する。なお、バンドパスフィルタ352の動作については、周知の技術であるため、その詳細な説明は行なわない。また、共振周波数帯に対応する所定周波数帯は、車両1の種類等によって異なるため、実験的あるいは設計的に適合されればよい。
積算部354は、現在の時点以前の所定期間Taにおける、バンドパスフィルタ352によって抽出された第1フィルタ出力値Fo1の絶対値を積算して(時間積分して)積算値Inを算出する。所定期間Taとは、たとえば、変動成分の一周期に対応する時間であることが望ましい。所定期間Taは、一定値に限定されるものではなく、たとえば、第2MG30の回転速度Nm2に応じて変化させるようにしてもよい。ローパスフィルタ356は、積算部354によって算出された積算値Inから所定周波数以上のノイズ成分を除去した第2フィルタ出力値Fo2を算出する。なお、ローパスフィルタの動作については、周知の技術であるため、その詳細な説明は行なわない。なお、ローパスフィルタ356は、省略してもよい。
たとえば、第2レゾルバ13から図3の最上段のタイミングチャートのような変化を示す第2MG30の回転速度Nm2が積算処理部350に入力された場合を想定する。
バンドパスフィルタ352は、図3の上から2段目のタイミングチャートに示すように、入力された回転速度Nm2に基づいて共振周波数帯の変動成分を第1フィルタ出力値Fo1として出力する。
積算部354は、図3の上から3段目のタイミングチャートに示すように、現在以前の所定期間Taにおける第1フィルタ出力値Fo1の絶対値を積算することによって、積算値Inを算出する。
ローパスフィルタ356は、図3の最下段のタイミングチャートに示すように、積算部354によって算出された積算値Inから所定周波数以上のノイズ成分を除去して、第2フィルタ出力値Fo2を出力する。
経過時間判定部358は、タイマカウント値Ctが初期値Ct(0)(本実施の形態においては、Ct(0)=0)にリセットされてから所定時間Tbが経過したか否かを判定する。すなわち、経過時間判定部358は、タイマカウント値Ctが所定時間Tbに対応する値Ct(1)以上であるか否かを判定する。なお、以下の説明においては、「タイマカウント値Ctを初期値Ct(0)にリセットする」ことを「タイマをクリアする」と記載する。また、本実施の形態において、所定時間Tbは、たとえば、一定値であってもよいし、あるいは、回転速度Nm2から算出される変動成分の1周期であってもよい。
タイマカウント値Ctには、計算サイクル毎に所定値A(本実施の形態においては、A=1)が加算される。なお、経過時間判定部358は、たとえば、タイマがクリアされてから所定時間Tbが経過したと判定した場合に経過判定フラグをオンするようにしてもよい。経過時間判定部358は、タイマカウント値CtがCt(1)以上であると判定した場合に、タイマをクリアする。
回数算出部360は、第2フィルタ出力値Fo2の所定時間Tbの変化量がしきい値αよりも大きくなる回数を増加傾向を示す値として算出する。
具体的には、回数算出部360は、経過時間判定部358においてタイマクリアから所定時間Tbが経過したと判定される毎に、その時点における第2フィルタ出力値(以下、今回の第2フィルタ出力値と記載する)Fo2と、所定時間Tb前の第2フィルタ出力値(以下、前回の第2フィルタ出力値と記載する)Fo2’との出力差Fo2−Fo2’がしきい値α以上であるか否かを判定する。しきい値αは、正の値であって、かつ、第2フィルタ出力値Fo2が増加傾向にあるか否かを判定するための値である。
回数算出部360は、出力差Fo2−Fo2’がしきい値α以上である場合には、増加カウント値Ciに所定値B(本実施の形態においては、B=1)を加算して、加算された値を増加傾向を示す回数として算出する。
回数算出部360は、出力差Fo2−Fo2’がしきい値αよりも小さい場合には、増加カウント値Ciを初期値Ci(0)(本実施の形態においては、Ci(0)=0)にリセットする。
たとえば、積算処理部350によって、図4の上段のタイミングチャートに示す第2フィルタ出力値が算出された場合を想定する。図4の中段のタイミングチャートに示すように、所定時間Tbが経過する毎にタイマがクリアされる。
たとえば、時間T(1)にて、経過時間判定部358が所定時間Tbが経過したと判定した場合、回数算出部360は、時間T(1)における第2フィルタ出力値Fo2(1)と、時間T(1)の所定時間Tb前の時間T(0)における第2フィルタ出力値Fo2(0)との出力差Fo2(1)−Fo2(0)を算出する。回数算出部360は、出力差Fo2(1)−Fo2(0)がしきい値α以上である場合に、現在の増加カウント値Ciに所定値B(=1)を加算する。
時間T(2)にて、経過時間判定部358が再び所定時間Tbが経過したと判定した場合、回数算出部360は、時間T(2)における第2フィルタ出力値Fo2(2)と、時間T(2)の所定時間Tb前の時間T(1)における第2フィルタ出力値Fo2(1)との出力差Fo2(2)−Fo2(1)を算出する。回数算出部360は、出力差Fo2(2)−Fo2(1)がしきい値よりも小さい場合に、増加カウント値Ciを初期値Ci(0)(=0)にリセットする。
共振判定部362は、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上であって、かつ、増加カウント値Ciがしきい値γ以上であるか否かを判定する。なお、共振判定部362は、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上であって、かつ、増加カウント値Ciがしきい値γ以上である場合に、共振判定フラグをオン状態にするようにしてもよい。また、共振判定部362は、第2フィルタ出力値Fo2が算出される毎、所定時間Tbが経過する毎に、あるいは、今回の第2フィルタ出力値Fo2と前回の第2フィルタ出力値Fo2’との出力差が算出される毎に、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上であって、かつ、増加カウント値Ciがしきい値γ以上であるか否かを判定するようにしてもよい。。しきい値β,γは、いずれも駆動システム84において車両1の悪路走行に起因した共振が発生していることを判定するための値である。
駆動力制限部364は、共振判定部362によって第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上であって、かつ、増加カウント値Ciがしきい値γ以上であると判定された場合に、駆動力の制限制御を実行する。
駆動力制限部364は、車両1に要求される要求駆動力に対して、通常時の上限値Fd(0)よりも低い値Fd(1)を上限値とした駆動力の制限制御を実行する。通常時の上限値とは、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値βよりも低い場合、あるいは、増加カウント値Ciがしきい値γよりも低い場合の要求駆動力の上限値である。
駆動力制限部364は、要求駆動力が上限値Fd(1)以下である場合には、要求駆動力を最終的な要求駆動力として、車両1(すなわち、第1MG20、第2MG30およびエンジン10)を制御する。駆動力制限部364は、要求駆動力が上限値Fd(1)よりも大きい場合には、Fd(1)を最終的な要求駆動力として車両1を制御する。
なお、駆動力制限部364は、たとえば、共振判定フラグがオン状態である場合に駆動力の制限制御を実行するようにしてもよい。また、駆動力制限部364は、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上であって、かつ、増加カウント値Ciがしきい値γ以上であると判定された時点で駆動力の制限制御を実行するようにしてもよいし、あるいは、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上であって、かつ、増加カウント値Ciがしきい値γ以上であると判定された時点から要求駆動力の上限値を時間の経過とともにFd(1)に近づくように変化させるようにしてもよい。上限値の変化の態様としては、時間の経過に対して線形に変化させてもよいし、非線形に変化させてもよい。
解除判定部366は、駆動力の制限制御の実行時に、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下であるか否かを判定する。しきい値δは、しきい値β以下の値であれば、特に限定されるものではない。なお、解除判定部366は、たとえば、共振判定フラグがオン状態である場合に、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下であるか否かを判定し、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下である場合に、解除判定フラグをオンするようにしてもよい。
レート決定部368は、解除判定部366において第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下であると判定された場合に、第2フィルタ出力値Fo2とマップ等とを用いて駆動力の復帰時における復帰レートを決定する。復帰レートとは、駆動力の制限制御からの復帰時に、要求駆動力の上限値をFd(1)からFd(0)に変化させる際の変化特性を規定する値である。
本実施の形態においては、レート決定部368は、たとえば、時間の経過とともに要求駆動力の上限値の変化量が増加していくように復帰レートを決定してもよいし、時間の経過とともに要求駆動力の上限値の変化量が減少していくように復帰レートを決定してもよいし、あるいは、時間の経過に関わらず一定の値を復帰レートとして決定してもよい。レート決定部368は、第2フィルタ出力値Fo2と復帰レート(一定値あるいは変化量)との関係が規定されたマップ、数式あるいは表等から復帰レートを決定する。
復帰制御部370は、解除判定部366において第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下であると判定された場合に、レート決定部368によって決定された復帰レートに基づいて駆動力の復帰制御を実行する。
復帰制御部370は、解除判定部366によって第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下であると判定された場合に、要求駆動力の上限値をFd(1)からFd(0)まで復帰レートに従って時間の経過とともに変化させる。復帰制御部370は、要求駆動力の上限値がFd(0)まで復帰した場合に上限値Fd(0)を維持する。
なお、復帰制御部370は、解除判定部366において第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下であると判定された時点に駆動力の復帰制御を開始するようにしてもよいし、あるいは、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下であると判定された時点から所定時間の経過後に駆動力の復帰制御を開始するようにしてもよい。
本実施の形態において、積算処理部350と、経過時間判定部358と、回数算出部360と、共振判定部362と、駆動力制限部364と、解除判定部366と、レート決定部368と、復帰制御部370とは、いずれもECU200のCPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
図5を参照して、本実施の形態に係る車両に搭載されたECU200で実行される、第2フィルタ出力値Fo2に応じて駆動力を制限するプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、第2MG30の回転速度Nm2を第2レゾルバ13から取得する。S102にて、ECU200は、取得した回転速度Nm2に対してバンドパスフィルタ処理を実行する。すなわち、ECU200は、回転速度Nm2に基づいて共振周波数帯の変動成分に対応する第1フィルタ出力値Fo1を算出する。
S104にて、ECU200は、積算値算出処理を実行する。すなわち、ECU200は、現在の時点以前の所定期間Taにおける第1フィルタ出力値Fo1の絶対値を積算して積算値Inを算出する。S106にて、ECU200は、積算値Inに対してローパスフィルタ処理を実行する。すなわち、ECU200は、積算値Inに基づいて所定周波数以上のノイズ成分を除去した第2フィルタ出力値Fo2を算出する。
S108にて、ECU200は、タイマカウント値Ctに「1」を加算する。S110にて、ECU200は、タイマカウント値Ctが所定時間Tbに対応する値Ct(1)以上であるか否かを判定する。タイマカウント値Ctが所定時間Tbに対応する値Ct(1)以上である場合(S110にてYES)、処理はS112に移される。もしそうでない場合(S110にてNO)、処理はS100に戻される。S112にて、ECU200は、タイマカウント値Ctを初期値「0」にリセットして、タイマをクリアする。
S114にて、ECU200は、今回の第2フィルタ出力値Fo2と所定時間Tb前の前回の第2フィルタ出力値Fo2’との出力差Fo2−Fo2’がしきい値α以上であるか否かを判定する。出力差Fo2−Fo2’がしきい値α以上である場合(S114にてYES)、処理はS116に移される。もしそうでない場合(S114にてNO)、処理はS118に移される。
S116にて、ECU200は、増加カウント値Ciに「1」を加算する。S118にて、ECU200は、増加カウント値Ciを初期値「0」にリセットする。S120にて、ECU200は、今回の第2フィルタ出力値Fo2をメモリに保存する。なお、保存した今回の第2フィルタ出力値Fo2は、次回の(すなわち、所定時間Tb経過後の)出力差の算出時において「前回の第2フィルタ出力値Fo2’」として用いられる。
S122にて、ECU200は、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上であって、かつ、増加カウント値Ciがしきい値γ以上であるか否かを判定する。第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上であって、かつ、増加カウント値Ciがしきい値γ以上である場合(S122にてYES)、処理はS124に移される。もしそうでない場合(S122にてNO)、処理はS100に戻される。S122にて、ECU200は、駆動力の制限制御を実行する。
次に、図6を参照して、本実施の形態に係る車両に搭載されたECU200で実行される、第2フィルタ出力値Fo2に応じて駆動力を制限するプログラムの制御構造について説明する。
S200にて、ECU200は、駆動力の制限時であるか否か、すなわち、駆動力の制限制御が実行中であるか否かを判定する。駆動力の制限時である場合(S200にてYES)、処理はS202に移される。もしそうでない場合(S200にてNO)、処理はS200に戻される。
S202にて、ECU200は、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下であるか否かを判定する。第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下である場合(S202にてYES)、処理はS204に移される。もしそうでない場合(S202にてNO)、処理はS200に移される。
S204にて、ECU200は、第2フィルタ出力値Fo2とマップとを用いて復帰レートを決定する。復帰レートの決定方法については、上述したとおりであり、その詳細な説明は繰り返さない。S206にて、ECU200は、決定された復帰レートに従って、駆動力の復帰制御を実行する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両1に搭載されたECU200の動作について図7−図9を用いて説明する。
たとえば、車両1が走行している場合を想定する。このとき、第2MG30の回転速度Nm2が取得され(S100)、取得された第2MG30の回転速度Nm2に対してバンドパスフィルタ処理が実行されることによって共振周波数帯の変動成分に対応する第1フィルタ出力値Fo1が算出される(S100)。さらに、算出された第1フィルタ出力値Fo1に基づいて所定期間Taにおける積算値Inが算出される(S104)。算出された積算値Inに対してローパスフィルタ処理が実行されることによって所定周波数以上のノイズ成分が除去された第2フィルタ出力値Fo2が算出される(S106)。
タイマカウント値Ctには、計算サイクル毎に「1」ずつ加算され(S108)、所定時間Tbが経過する毎に(S110にてYES)、タイマがクリアされるとともに(S112)、今回の第2フィルタ出力値Fo2と、所定時間Tb前の前回の第2フィルタ出力値Fo2’との出力差Fo2−Fo2’としきい値αとの比較が行なわれる(S114)。出力差Fo2−Fo2’がしきい値α以上である場合には(S114にてYES)、増加カウント値Ciに「1」が加算される(S116)。
<車両の悪路走行に起因した共振が発生した場合>
車両1が悪路で走行している場合において、駆動輪80が、スリップ状態とグリップ状態とを繰り返して、駆動システム84において共振が発生する場合を想定する。このとき、第2MG30の回転速度Nm2の共振周波数帯において回転変動が生じる。そのため、図7に示すように、第2フィルタ出力値Fo2は、時間の経過とともに増加していく。出力差Fo2−Fo2’がしきい値α以上である場合には(S114にてYES)、増加カウント値Ciには、「1」が加算される(S116)。
共振が発生した場合には、共振周波数帯においての回転変動が継続的に生じるため、出力差Fo2−Fo2’がしきい値α以上となる状態が継続する。その結果、増加カウント値Ciは、時間の経過とともに増加していくこととなる。
時間T(3)にて、増加カウント値Ciがしきい値γ以上となる場合、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値βよりも小さいため(S122にてNO)、駆動力の制限制御は実行されない。一方、時間T(4)にて、増加カウント値Ciがしきい値γ以上となる場合であって、かつ、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上となる場合には(S122にてYES)、駆動力の制限制御が実行される(S124)。
駆動力の制限制御が実行されることによって、要求駆動力の上限値がFd(0)からFd(1)に低下するため、車両1の駆動力は低下する傾向にある。そのため、駆動輪80のスリップ状態とグリップ状態とを繰り返す状態が抑制されるため、共振の発生が抑制される。その結果、駆動システム84において共振による過大な入力が抑制されるため、部品の保護が図られる。
<車両に単発的な振動が発生した場合>
車両1に単発的な振動が発生した場合には、図8に示すように、共振周波数帯においても回転変動が生じる。しかしながら、単発的な振動が発生した場合には、共振が発生した場合よりも共振周波数帯の回転変動は、一時的な発生に留まる。そのため、増加カウント値Ciは、しきい値γ以上となるまでに、出力差Fo2−Fo2’がしきい値αよりも小さくなることによって(S114にてNO)、増加カウント値Ciがクリアされる(S118)。その結果、時間T(5)にて、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上となった場合においても、増加カウント値Ciは、しきい値γよりも小さいため(S122にてNO)、駆動力の制限制御は実行されない。
<駆動力の制限制御から復帰する場合>
図9に示すように、たとえば、時間T(6)にて、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値β以上となり、増加カウント値Ciもしきい値γ以上となることによって(S122にてYES)、駆動力の制限制御が実行された場合を想定する(S124)。
このとき、要求駆動力の上限値が通常時の上限値Fd(0)からFd(1)に制限されるため、車両1に対する要求駆動力は、時間T(6)の時点から減少を開始し、時間T(7)にて、要求駆動力の上限値は、Fd(1)となる。時間T(7)よりも後においては、要求駆動力の上限値としてFd(1)が維持される。
要求駆動力の上限値が通常時よりも減少することによって、車両1の駆動力は減少することとなる。その結果、第2MG30の共振周波数帯での回転変動成分の大きさが減少する。そのため、第2フィルタ出力値Fo2は、減少していくこととなる。
時間T(8)にて、駆動力の制限制御の実行中に(S200にてYES)、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下になる場合(S202にてYES)、復帰レートが決定される(S204)。そして、第2フィルタ出力値Fo2がしきい値δ以下であると判定された時点から所定時間経過後の時間T(9)にて、駆動力の復帰制御が実行される(S206)。
決定された復帰レートにしたがって駆動力の復帰制御が実行される。そのため、要求駆動力の上限値は、Fd(1)からFd(0)に向けて時間が経過するほど上限値の変化量が増加するように変化する。時間T(10)にて、要求駆動力の上限値がFd(0)に復帰した場合には、時間T(10)よりも後においては、要求駆動力の上限値としてFd(0)が維持される。
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、第2MG30の回転速度Nm2に単発的な振動が発生して、一時的に共振周波数帯の回転変動成分の大きさが増加した場合でも、車両の悪路走行に起因した共振が発生したと誤判定することを抑制することができる。また、車両が悪路を走行していると判定された場合には、駆動力の制限制御を実行することによって、駆動システム84の部品の保護が図られる。さらに、復帰レートを第2フィルタ出力値Fo2に応じて決定することによって、悪路から抜けた場合には、すばやく駆動力の上限値を復帰させ、悪路走行の継続中の場合には、駆動力の上限値を徐々に復帰させることができる。このように、車両の走行路面に応じて駆動力を復帰させることができる。したがって、走行路面の誤判定を抑制して、走行路面に応じた駆動力制御を実現する車両および車両用制御方法を提供することができる。
本実施の形態においては、ECU200が第2MG30の回転速度Nm2を用いて第2フィルタ出力値Fo2を算出するとして説明したが、駆動輪80および駆動輪80の回転に連動して回転する部品のうちの少なくともいずれか一方の回転速度を用いて第2フィルタ出力値Fo2を算出すればよく、特に第2MG30の回転速度Nm2を用いることに限定されるものではない。
また、本実施の形態において、ECU200は、駆動力の制限制御実行時に、通常時の上限値Fd(0)よりも小さいFd(1)を要求駆動力の上限値とするとして説明したが、ECU200は、たとえば、駆動力の制限制御実行時に、要求駆動力に対して1よりも小さい係数を乗算した値を最終的な要求駆動力として車両1を制御するようにしてもよい。
なお、本実施の形態において、車両1は、ハイブリッド車両であるとして説明したが、特にハイブリッド車両に限定されるものではない。車両1は、たとえば、電気自動車であってもよいし、あるいは、内燃機関のみを動力源とする車両であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。