JP5607434B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、モータの動力で走行する車両の制御に関する。
近年、動力源としてエンジンおよびモータを備えたハイブリッド車両が実用化されている。ハイブリッド車両を高地で走行させる場合、高地の大気圧が低地の大気圧(1気圧)よりも低いことから空気密度が小さくなるため、低地と同じ態様でエンジンを制御すると、モータの駆動電力を蓄えるバッテリから予期しない電力が放電されてしまう。
このような問題に鑑み、たとえば特開2007−216841号公報(特許文献1)には、大気圧が低下した時にエンジンの運転ポイントを変更してバッテリの過放電を防止する技術が開示されている。
特開2007−216841号公報 特開2002−291104号公報 特開2006−183523号公報
一般的に、バッテリはその充電量が所定値よりも低い状態(過放電状態)が続くと劣化して寿命が短くなるという特性を有する。したがって、充電量が低い領域では、過放電状態となることを回避すべく、バッテリの出力を制限することが望ましい。しかしながら、ユーザが緊急的な加速を要求している場合にまでバッテリの出力を制限すると、ユーザの要求に応えることができなくなってしまう。
たとえば、車両を高地で長い坂路を登坂させる場合、特許文献1に記載されているように高地では空気密度が小さくなるため、エンジンの出力が低下する。長い坂路を登坂させる場合には、このエンジンの出力低下分をモータの出力で補う状態が長く続くため、バッテリの蓄電量が低下し、モータの出力を維持できず車速が低下するおそれがある。このような場合には、ユーザの要求に応じた緊急的な加速が必要となる。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、蓄電装置が出力する電力で駆動する回転電機の動力で走行する車両において、ユーザの緊急的な加速の要求に応えつつ、蓄電装置の劣化を抑制することである。
この発明に係る制御装置は、蓄電装置と蓄電装置が出力する電力で駆動する第1回転電機とを備え第1回転電機の動力を用いて走行可能な車両の制御装置であって、ユーザによるアクセル操作量を検出するセンサと、蓄電装置と第1回転電機との間で授受される電力を制御する電力制御器と、電力制御器を制御することで蓄電装置の出力を制御する出力制御装置とを備える。出力制御装置は、センサの出力に基づいて車両の緊急的な加速が不要な通常時であるのか緊急的な加速が必要な緊急時であるのかを判定し、通常時は蓄電装置の出力を制限する第1制限制御を実行し、緊急時は蓄電装置の出力の制限を解除する解除制御を実行し、解除制御の実行中に蓄電装置の劣化の程度を表わす指標を算出し、指標が許容値を超えた時以降は解除制御の実行を停止して蓄電装置の出力を再び制限する第2制限制御を実行する。
好ましくは、出力制御装置は、第2制限制御の実行中は、第1制限制御の実行時よりも蓄電装置の出力を強く制限する。
好ましくは、出力制御装置は、第1制限制御の実行中は蓄電装置の蓄電量が第1量よりも少ない場合に蓄電装置の出力を制限し、第2制限制御の実行中は蓄電装置の蓄電量が第2量よりも少ない場合に蓄電装置の出力を制限する。第2量は、第1量よりも多い値に設定される。
好ましくは、出力制御装置は、第1制限制御を実行する場合、蓄電装置の蓄電量が第1量よりも多いときに蓄電装置の出力を所定値に制限し、蓄電装置の蓄電量が第1量よりも少ないときに蓄電装置の出力を所定値よりも小さい値に制限する。出力制御装置は、第2制限制御を実行する場合、蓄電装置の蓄電量が第2量よりも多い場合に蓄電装置の出力を所定値に制限し、蓄電装置の蓄電量が第2量よりも少ない場合に蓄電装置の出力を所定値よりも小さい値に制限する。第2量は、第1量よりも多い値に設定される。
好ましくは、指標は、蓄電装置の電圧が目標下限値を下回った時間の累積値である。
好ましくは、指標は、解除制御の実行回数または解除制御の実行時間である。
好ましくは、制御装置は、ユーザが車両を緊急的に加速させる指令を入力するためのスイッチをさらに備える。出力制御装置は、センサの出力に加えてさらにスイッチの出力に基づいて通常時であるのか緊急時であるのかを判定する。
好ましくは、出力制御装置は、アクセル操作量が所定量よりも大きくかつ車両を緊急的に加速させる指令がスイッチに入力された場合に緊急時であると判定する。
好ましくは、車両は、内燃機関をさらに備え、第1回転電機と内燃機関との少なくともいずれかの動力を用いて走行するハイブリッド車両である。
好ましくは、車両は、第2回転電機と遊星歯車装置とをさらに備える。遊星歯車装置は、第1回転電機に連結されるリングギヤと、第2回転電機に連結されるサンギヤと、サンギヤおよびリングギヤと係合するピニオンギヤと、内燃機関に連結され、ピニオンギヤを自転可能に支持するキャリアとを含む。第2回転電機は、遊星歯車装置を経由して伝達された内燃機関の動力で、第1回転電機を駆動するための電力および蓄電装置を充電するための電力を発電する。
本発明によれば、蓄電装置が出力する電力で駆動する回転電機の動力で走行する車両において、ユーザの緊急的な加速の要求に応えつつ、蓄電装置の劣化を抑制することができる。
車両の全体ブロック図である。 ECUの機能ブロック図である。 バッテリの蓄電量SOCと放電可能電力Woutとの関係を示すマップである。 ECUの処理手順を示すフローチャートである。 バッテリの蓄電量SOCの変化を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、この発明の実施の形態に従う制御装置が搭載された車両1の全体ブロック図である。なお、図1に示す車両1はいわゆるハイブリッド車両であるが、本発明はハイブリッド車両に限定されず電動車両全般に適用可能である。
図1を参照して、この車両1は、エンジン10と、第1MG(Motor Generator)20と、第2MG30と、動力分割装置40と、減速機50と、駆動輪80とを備える。さらに、車両1は、インバータ60と、平滑コンデンサC1と、コンバータ90と、バッテリ70と、電子制御ユニット(Electronic Control Unit、以下「ECU」という)150とを備える。
エンジン10は、燃焼室に吸入された空気と燃料との混合気を燃焼させたときに生じる燃焼エネルギによってクランクシャフトを回転させる駆動力を発生する内燃機関である。エンジン10は、ECU150からの制御信号S4に基づいて制御される。
第1MG20および第2MG30は、交流電動機であり、たとえば、三相交流同期電動機である。
車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する駆動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。すなわち、一方は減速機50を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、もう一方は第1MG20へ伝達される経路である。
動力分割装置40は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車から成る。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランクシャフトに連結される。サンギヤは、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤは第2MG30の回転軸および減速機50に連結される。
第1MG20は、動力分割装置40を経由して伝達されたエンジン10の動力を用いて発電する。第1MG20が発電した電力は、インバータ60を介して第2MG20に供給され、第2MG20を駆動するための電力として用いられる。また、第1MG20が発電した電力のうち、第2MG20を駆動するための電力として用いられない余剰電力は、コンバータ90を介してバッテリ70に供給され、バッテリ70を充電するための電力として用いられる。
第2MG30は、バッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動力を発生する。そして、第2MG30の駆動力は、減速機50を介して駆動輪80に伝達される。なお、図1では、駆動輪80は前輪として示されているが、前輪に代えて、または前輪とともに、第2MG30によって後輪を駆動してもよい。
なお、車両の制動時等には、減速機50を介して駆動輪80により第2MG30が駆動され、第2MG30が発電機として動作する。これにより、第2MG30は、車両の運動エネルギを電力に変換する回生ブレーキとしても機能する。そして、第2MG30により発電された電力は、バッテリ70に蓄えられる。
インバータ60は、第1インバータ60−1と、第2インバータ60−2とを備える。第1インバータ60−1および第2インバータ60−2は、コンバータ90に対して互いに並列に接続される。
第1インバータ60−1は、コンバータ90と第1MG20との間に設けられる。第1インバータ60−1は、ECU150からの制御信号S1に基づいて第1MG20の駆動を制御する。
第2インバータ60−2は、コンバータ90と第2MG30との間に設けられる。第2インバータ60−2は、ECU150からの制御信号S2に基づいて第2MG30の駆動を制御する。
バッテリ70は、代表的には、ニッケル水素またはリチウムイオン等の直流の二次電池から成る。バッテリ70の出力(放電電力)は、EUC150によって設定される放電可能電力Woutを超えないように制御される。バッテリ70の出力制御の詳細は後述する。
コンバータ90は、バッテリ70とインバータ60との間で電圧変換を行なう。コンバータ90は、バッテリ70の電圧Vb(より正確には、コンバータ90とバッテリ70との間で電力を授受するための正極線PL0および負極線GL0の間の電圧VL)を昇圧してインバータ60に出力する。コンバータ90は、ECU150からの制御信号S3に基づいてコンバータ90の出力電圧(より正確には、コンバータ90とインバータ60との間で電力を授受するための正極線PL1および負極線GL1の間の電圧VH)を制御する。これにより、バッテリ70の出力も制御信号S3に基づいて制御されることになる。
平滑コンデンサC1は、正極線PL1および負極線GL1の間に接続される。平滑コンデンサC1は、電圧VHに応じた電荷を蓄えることによって、電圧VHを平滑化する。
さらに、車両1は、温度センサ121、電圧センサ122,124、電流センサ123、アクセルペダルポジションセンサ126、緊急スイッチ127を備える。
温度センサ121は、バッテリ70の温度Tbを検出する。電圧センサ122は、バッテリ70の電圧Vbを検出する。電流センサ123は、正極線PL0を流れる電流Ibを検出する。電圧センサ124は、上述した電圧VHを検出する。アクセルペダルポジションセンサ126は、ユーザによるアクセルペダル操作量Aを検出する。これらの各センサは、検出結果をECU150に送信する。
緊急スイッチ127は、ユーザが車両1を緊急的に加速させる必要があると判断したときにユーザが車両1を緊急的に加速させる指令を入力するためのスイッチである。
なお、緊急的な加速が必要となるケースとしては、たとえば、前方を低速で走行する車両を追い越すために車両1を追越車線に移動させたが十分な加速ができずに後続車に追突される可能性が生じた、というケースが挙げられる。
また、たとえば、車両1が高地で長い坂路を登坂する場合にも、緊急的な加速が必要となる場合がある。高地では空気密度が小さくなるためエンジン10の出力が低下する。このエンジン10の出力低下分を第2MG30の出力で補う必要があるが、エンジン10の出力低下によって第1MG20の発電量も減少するので第2MG30を駆動するための電力およびバッテリ70に充電するための電力が不足する状態となる。長い坂路を登坂する時は、この状態が続くため、バッテリの蓄電量(以下、「SOC」(State Of Charge)ともいう)が下限値まで低下し、第2MG30に必要な電力を供給できなくなる。このような状態では、アクセルペダル操作量Aを最大値にしても車速を維持することが困難になるため、緊急的な加速が必要となる。
ユーザが緊急スイッチ127をオン操作すると、緊急スイッチ127は、緊急加速指令信号EをECU150に送信する。
ECU150は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵し、当該メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、所定の演算処理を実行するように構成される。そして、ECU150は、各センサなどの情報に基づいて上述した制御信号S1〜S4を生成し、その生成した制御信号S1〜S4を各機器に出力する。
ところで、バッテリ70は、SOCが所定値よりも低い状態(過放電状態)が続くと劣化して寿命が短くなるという特性を有する。したがって、SOCが低い領域では、過放電状態となることを回避すべく、バッテリ70の出力を制限することが望ましい。しかしながら、ユーザが緊急スイッチ127をオン操作して緊急的な加速を要求している場合にまでバッテリ70の出力を制限すると、ユーザの要求に応えることができなくなってしまう。
このような問題に鑑み、本実施の形態に従うECU150は、通常時は、バッテリ70の出力制限を行なうことによってバッテリ70の劣化を抑制することを優先し、緊急時はその出力制限を一時的に解除することによって車両1を緊急的に加速させることを優先する。そして、ECU150は、出力制限の解除がバッテリ70の寿命に与える影響度(出力制限の解除中のバッテリ70の劣化の程度)を表わす指標を算出し、その指標が許容値を超えた時以降は、バッテリ70の出力を通常時(出力制限解除前)よりも強く制限することによって、バッテリ70の劣化を抑制する。これらの点が本発明の最も特徴的な点である。
図2は、バッテリ70の出力制御に関する部分のECU150の機能ブロック図である。図2に示した各機能ブロックは、電子回路等によるハードウェア処理によって実現してもよいし、プログラムの実行等によるソフトウェア処理によって実現してもよい。
ECU150は、判定部151、設定部152、算出部153、制御部154を備える。
判定部151は、アクセルペダルポジションセンサ126および緊急スイッチ127の出力に基づいて、車両1の緊急的な加速が不要な通常時であるのか、車両1の緊急的な加速が必要な緊急時であるのかを判定する。判定部151は、ユーザによって緊急スイッチ127がオン操作されかつアクセルペダル操作量Aが所定量A1よりも大きい場合に緊急時であると判定し、そうでない場合に通常時と判定する。緊急時であるか否かの判定に緊急スイッチ127の出力に加えてアクセルペダルポジションセンサ126の出力をも加えることで、ユーザの誤操作等を排除して緊急時であるとの判定精度を高めることができる。なお、緊急時であるか否かの判定手法は、必ずしもこれに限定されるものではない。たとえば、緊急スイッチ127を備えない車両においては、アクセルペダル操作量Aのみに基づいて緊急時であるか否かを判定してもよい。この際、たとえば、アクセルペダル操作量Aが所定量A1を超える状態が所定時間継続した場合や、アクセルペダル操作量Aが所定量A1に達した時のアクセルペダル操作量Aの増加率が所定率を超える場合に、緊急時であると判定するようにしてもよい。
設定部152は、バッテリ70の蓄電量SOCに基づいてバッテリ70の放電可能電力Wout(以下、単に「放電可能電力Wout」あるいは「Wout」という)を設定する。なお、蓄電量SOCは、電圧Vb、電流Ib等に基づいてECU150の別の機能によって算出される。
設定部152は、判定部151による判定結果に応じて、蓄電量SOCに対する放電可能電力Woutの値を変更する。
図3は、バッテリ70の蓄電量SOCと放電可能電力Woutとの関係を示すマップである。図3に示す第1〜第3マップは、いずれも蓄電量SOCをパラメータとして放電可能電力Woutを設定する際に用いられる。なお、後述するように、第1マップ(実線)は通常時用のマップであり、第2マップ(一点鎖線)は緊急時用のマップであり、第3マップ(二点鎖線)は緊急時以降用のマップである。
判定結果が「通常時」である場合、設定部152は、第1マップを用いて蓄電量SOCに対応する放電可能電力Woutを設定する。図3に示すように、第1マップは、SOCが所定値SOC1よりも高い領域ではWoutを最大値Wmaxに設定するが、SOCが所定値SOC1よりも低い領域ではWoutを最大値Wmaxよりも小さい値にすることによってバッテリ70の出力(放電電力)を最大値Wmaxよりも小さい値に制限するように設定されている。このような出力制限によって、バッテリ70の劣化が抑制される。
一方、判定結果が「緊急時」である場合、設定部152は、第2マップを用いて蓄電量SOCに対応する放電可能電力Woutを設定する。図3に示すように、第2マップは、SOCが所定値SOC1よりも低い領域であってもWoutを最大値Wmaxに維持することによって、第1マップでの出力制限を解除する(矢印a参照)ように設定されている。このような出力制限の解除によって、バッテリ70の出力が高められ第2MG30の駆動力を増加させることが可能となるため、ユーザの緊急的な加速要求に応えることができる。
図2に戻って、算出部153は、出力制限が解除された時点(上述の第2マップを用いてWoutが設定された時点)で、出力制限の解除中のバッテリ70の劣化の程度を表わす指標の算出を開始する。以下では、その指標として、電圧Vbが目標下限値V1を下回る累積時間T1を用いる場合について説明する。なお、指標は、出力制限の解除中のバッテリ70の劣化の程度と相関関係がある値であればよく、累積時間T1に限定されるものではない。たとえば、出力制限解除の実行回数または実行時間、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
設定部152は、出力制限の解除後、算出部153が算出した累積時間T1が許容時間βを超えたか否かを監視し、累積時間T1が許容時間βを超えた時以降は、図3に示した第3マップを用いて蓄電量SOCに対応する放電可能電力Woutを設定する。
図3に示すように、第3マップは、SOCが所定値SOC2よりも高い領域ではWoutを最大値Wmaxに設定するが、SOCが所定値SOC2よりも低い領域ではWoutを最大値Wmaxよりも小さい値にすることによってバッテリ70の出力(放電電力)を再び最大値Wmaxよりも小さい値に制限するように設定されている。
ここで、所定値SOC2は、所定値SOC1によりも大きい値に設定される。すなわち、第3マップでは、第1マップと同様、Woutを最大値Wmaxよりも小さい値に設定する領域が設けられるが、その領域を第1マップよりもSOCが高い側に拡大する(矢印b参照)ことによって、バッテリ70の出力を通常時(出力制限解除前)よりも強く制限する。これにより、緊急時に一時的に出力制限を解除してバッテリ70の劣化が進んだとしても、車両1の使用期間全体で見ればバッテリ70の劣化を遅らせることができ、バッテリ70の寿命が短くなることを抑制することができる。
図2に戻って、制御部154は、バッテリ70の出力(放電電力)が設定部152が設定したWoutを超えないようにさせるための制御信号S3を生成し、コンバータ90に出力する。
図4は、上述の機能を実現するためのECU150の処理手順を示すフローチャートである。以下に示すフローチャートの各ステップ(以下、ステップを「S」と略す)は、上述したようにハードウェア処理によって実現してもよいしソフトウェア処理によって実現してもよい。
S10にて、ECU150は、ユーザが緊急スイッチ127をオン操作したか否か(すなわち緊急スイッチ127から緊急加速指令信号Eを受信したか否か)を判断する。S11にて、ECU150は、アクセルペダル操作量Aが所定値αを超えたか否かを判断する。
ユーザが緊急スイッチ127をオン操作していない場合(S10にてNO)またはアクセルペダル操作量Aが所定値αを超えていない場合(S11にてNO)、ECU150は、通常時であると判定し、S12にて、上述の第1マップを用いて放電可能電力Woutを設定する。これにより、上述したように、バッテリ70の出力が制限されることになる。その後、処理はS17に移される。
一方、ユーザが緊急スイッチ127をオン操作し(S10にてYES)かつアクセルペダル操作量Aが所定値αを超えている場合(S11にてYES)、ECU150は、緊急時であると判定し、S13にて、上述の第2マップを用いて放電可能電力Woutを設定する。これにより、上述したように、通常時に行なわれていたバッテリ70の出力制限が解除されることになる(図3の矢印a参照)。
S14にて、ECU150は、バッテリ70の電圧Vbをモニターし、電圧Vbが目標下限値V1を下回る累積時間T1を算出する。
S15にて、ECU150は、累積時間T1が許容時間βを超えたか否かを判断する。累積時間T1が許容時間βを超えていない場合(S15にてNO)、処理はS17に移される。
累積時間T1が許容時間βを超えた場合(S15にてYES)、ECU150は、S16にて、上述の第3マップを用いて放電可能電力Woutを設定する。これにより、上述したように、バッテリ70の出力が再び制限されるとともに、バッテリ70の出力が通常時よりも強く制限されることになる(図3の矢印b参照)。
S17にて、ECU150は、バッテリ70の出力がS12、S13、S16のいずれかで設定された放電可能電力Woutを超えないようにコンバータ90を制御する。
図5は、上述の機能を実現した場合のバッテリ70の蓄電量SOCの変化を示す図である。
時刻t1以前の通常時には、第1マップを用いてWoutが設定されるため、バッテリ70の出力が制限される。そのため、通常時のSOC変動領域W1は比較的高い値に維持される。
時刻t1にて緊急時と判定されると、第2マップを用いてWoutが設定されるため、バッテリ70の出力制限が解除される。そのため、バッテリ70の電力を通常時よりも急速に第2MG30に供給することが可能となり第2MGの出力が増加するので、車両1を通常時よりも加速させることが可能となる。その一方で、SOCが急激に低下するため、緊急時のSOCの変動領域W2は通常時のSOC変動領域W1よりも低SOC側に拡大し、バッテリ70の電圧Vbも低下する。
その後、時刻t2にて累積時間T1が許容時間βを超えると、第3マップを用いてWoutが設定されるため、バッテリ70の出力制御の解除が停止され、バッテリ70が再び制限される。さらに、第3マップでは第1マップよりも制限領域が高SOC側に拡大されるため、緊急時以降のSOCの変動領域W3は、通常時のSOC変動領域W1よりも高い領域かつ狭い範囲に維持される。これにより、緊急時以降のバッテリ70の劣化速度を遅らせることができる。そのため、緊急時に一時的に出力制限を解除してバッテリ70の劣化が進んだとしても、車両1の使用期間全体で見ればバッテリ70の劣化を遅らせることができ、バッテリ70の寿命が短くなることを抑制することができる。
なお、緊急時以降の出力制限を所定時間(たとえば緊急時の出力制限解除に応じた時間)継続した後に、Woutを設定するマップを緊急時以降用の第3マップから通常時用の第1マップに戻すようにしてもよい。
以上のように、本実施の形態に従うECU150は、通常時はバッテリ70の出力を制限するが、緊急時はその出力制限を一時的に解除することによって第2MG30の出力を増加させて車両1を緊急的に加速させる。
さらに、出力制限の解除後、ECU150は、バッテリ70の寿命への影響度を監視し、その影響度がしきい値を超えた時(たとえば、バッテリ70の電圧Vbが目標下限値V1を下回る累積時間T1が所要時間βを超えた時)以降は、バッテリ70の出力を通常時よりも強く制限する。これにより、緊急時以降のバッテリ70の劣化を抑制する(遅らせる)ことができる。そのため、ユーザの緊急的な加速の要求に応えつつ、車両1の使用期間全体で見れば、バッテリ70の寿命が短くなることを抑制することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、10 エンジン、20 第1MG、30 第2MG、40 動力分割装置、50 減速機、60 インバータ、60−1 第1インバータ、60−2 第2インバータ、70 バッテリ、80 駆動輪、70 バッテリ、90 コンバータ、121 温度センサ、122,124 電圧センサ、123 電流センサ、126 アクセルペダルポジションセンサ、127 緊急スイッチ、150 ECU、151 判定部、152 設定部、153 算出部、154 制御部、C1 平滑コンデンサ、GL0,GL1 負極線、PL0,PL1 正極線。

Claims (9)

  1. 蓄電装置と前記蓄電装置が出力する電力で駆動する第1回転電機とを備え前記第1回転電機の動力を用いて走行可能な車両の制御装置であって、
    ユーザによるアクセル操作量を検出するセンサと、
    前記蓄電装置と前記第1回転電機との間で授受される電力を制御する電力制御器と、
    前記電力制御器を制御することで前記蓄電装置の出力を制御する出力制御装置とを備え、
    前記出力制御装置は、
    前記センサの出力に基づいて前記車両の緊急的な加速が不要な通常時であるのか前記緊急的な加速が必要な緊急時であるのかを判定し、
    前記通常時は前記蓄電装置の出力を制限する第1制限制御を実行し、
    前記緊急時は前記蓄電装置の出力の制限を解除する解除制御を実行し、
    前記解除制御の実行中に前記蓄電装置の劣化の程度を表わす指標を算出し、前記指標が許容値を超えた時以降は前記解除制御の実行を停止して前記蓄電装置の出力を再び制限する第2制限制御を実行し、
    前記出力制御装置は、前記第2制限制御の実行中は、前記第1制限制御の実行時よりも前記蓄電装置の出力を強く制限する、車両の制御装置。
  2. 前記出力制御装置は、
    前記第1制限制御の実行中は前記蓄電装置の蓄電量が第1量よりも少ない場合に前記蓄電装置の出力を制限し、前記第2制限制御の実行中は前記蓄電装置の蓄電量が第2量よりも少ない場合に前記蓄電装置の出力を制限し、
    前記第2量は、前記第1量よりも多い値に設定される、請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. 前記出力制御装置は、
    前記第1制限制御を実行する場合、前記蓄電装置の蓄電量が第1量よりも多いときに前記蓄電装置の出力を所定値に制限し、前記蓄電装置の蓄電量が前記第1量よりも少ないときに前記蓄電装置の出力を前記所定値よりも小さい値に制限し、
    前記第2制限制御を実行する場合、前記蓄電装置の蓄電量が第2量よりも多い場合に前記蓄電装置の出力を前記所定値に制限し、前記蓄電装置の蓄電量が前記第2量よりも少ない場合に前記蓄電装置の出力を前記所定値よりも小さい値に制限し、
    前記第2量は、前記第1量よりも多い値に設定される、請求項1に記載の車両の制御装置。
  4. 前記指標は、前記蓄電装置の電圧が目標下限値を下回った時間の累積値である、請求項1〜のいずれかに記載の車両の制御装置。
  5. 前記指標は、前記解除制御の実行回数または前記解除制御の実行時間である、請求項1〜のいずれかに記載の車両の制御装置。
  6. 前記制御装置は、ユーザが前記車両を緊急的に加速させる指令を入力するためのスイッチをさらに備え、
    前記出力制御装置は、前記センサの出力に加えてさらに前記スイッチの出力に基づいて前記通常時であるのか前記緊急時であるのかを判定する、請求項1に記載の車両の制御装置。
  7. 前記出力制御装置は、前記アクセル操作量が所定量よりも大きくかつ前記車両を緊急的
    に加速させる指令が前記スイッチに入力された場合に前記緊急時であると判定する、請求項に記載の車両の制御装置。
  8. 前記車両は、内燃機関をさらに備え、前記第1回転電機と前記内燃機関との少なくともいずれかの動力を用いて走行するハイブリッド車両である、請求項1に記載の車両の制御装置。
  9. 前記車両は、第2回転電機と遊星歯車装置とをさらに備え、
    前記遊星歯車装置は、前記第1回転電機に連結されるリングギヤと、前記第2回転電機に連結されるサンギヤと、前記サンギヤおよび前記リングギヤと係合するピニオンギヤと、前記内燃機関に連結され、前記ピニオンギヤを自転可能に支持するキャリアとを含み、
    前記第2回転電機は、前記遊星歯車装置を経由して伝達された前記内燃機関の動力で、前記第1回転電機を駆動するための電力および前記蓄電装置を充電するための電力を発電する、請求項に記載の車両の制御装置。
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