JP3590243B2 - 電気式溶融炉の炉壁冷却構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば都市ごみや産業廃棄物等の焼却炉から排出される焼却残滓や飛灰を溶融処理する際に用いられる電気式溶融炉の炉壁冷却構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市ごみ等の焼却炉から排出される焼却残滓や飛灰等の被溶融物(以下単に灰という)の減容化及び無害化を図る為、灰の溶融固化処理法が注目され、現実に実用に供されている。灰は、溶融固化する事に依りその容積を1/2〜1/3に減らす事ができると共に、重金属等の有害物質の溶出防止や溶融スラグの再利用や最終埋立処分場の延命等が可能であるからである。
【0003】
而して、前記灰の溶融固化処理方法には、アーク溶融炉、プラズマアーク炉、電気抵抗炉等を使用して電気エネルギーに依って溶融固化する方法と、表面溶融炉、旋回溶融炉、コークスベッド炉等を使用して燃料の燃焼エネルギーに依って溶融固化する方法とが多く利用されて居り、都市ごみ焼却設備に発電設備が併置されている場合には、前者の電気エネルギーを用いる方法が、又、発電設備が併置されていない場合には、後者の燃焼エネルギーを用いる方法が夫々多く採用されている。
【0004】
図3は、従前のごみ焼却処理設備に併置した電気溶融炉として直流アーク放電黒鉛電極式プラズマ溶融炉の一例を示す説明図である。
図3に於て、50は電気溶融炉設備、51は灰コンテナ、52は灰供給装置、53は溶融炉本体、54は主電極(黒鉛)、55はスタート電極(黒鉛)、56は炉底電極、57は炉底冷却ファン、58は直流電源装置、59は窒素ガス供給装置、60は溶融スラグ流出口、61はタップホール、62は燃焼室、63は燃焼空気ファン、64はガス冷却塔、65はバグフィルタ、66は誘引通風機、67は煙突、68は溶融飛灰コンベア、69は飛灰だめ、70はスラグ水冷槽、71はスラグ搬出コンベア、72はスラグだめ、73はスラグ冷却水冷却装置である。
【0005】
灰は、灰コンテナ51に貯えられ、灰供給装置52に依り溶融炉本体53に連続的に供給される。溶融炉本体53には、炉頂部より垂直に下され、溶融スラグとの間に一定の距離を設けた主電極54(−極)と、炉底に設置された炉底電極56(+極)との間に、直流電源装置58より供給された600〜1000kw/灰tonの直流電力に依って電極と溶融スラグ面の間にプラズマアークが発生し、それに依って、灰は1400〜1600℃に加熱されて溶融状態のスラグとなる。但し、炉の始動時は、灰には導電性がない為、スタート電極55を炉内に挿入して+極となし、主電極54との間で通電し、灰が溶融するのを待つ。灰が溶融すると、導電性を持つので、+極は炉底電極56に切替える。溶融炉本体53の内部は、還元性雰囲気とする為、窒素ガス供給装置59より窒素ガスを中空の筒状に作った主電極54及びスタート電極55の中空孔より炉内に供給する。尚、炉底では、炉底冷却ファン57に依り炉底電極56部分が空冷される。
【0006】
灰の溶融に依って、灰中にあった揮発成分や炭素が一部酸化した一酸化炭素はガス体になると共に、鉄を始めとする金属、ガラス、砂等の不燃性成分は溶融状態になる。
ガス体は、溶融スラグ流出口60の上部から燃焼室62に入り、ここで燃焼空気ファン63から送入された燃焼用空気に依って未燃分が完全燃焼する。この時の発生熱は、溶融スラグがスラグ水冷槽70に入るまでの間に冷却して固化し流路を塞ぐ事を防止する。完全燃焼したガスは、ガス冷却塔64で冷却され、バグフィルタ65を経て誘引通風機66に依り煙突67から排出される。バグフィルタ65で捕捉された溶融飛灰は、溶融飛灰コンベア68に依り飛灰だめ69に送られる。
一方、溶融スラグは、溶融スラグ流出口60から連続的に溢出し、水を満たしたスラグ水冷槽70内に落下して水砕スラグとなり、スラグ搬出コンベア71に依ってスラグだめ72に送られる。
溶融炉底部には、比重差に依りメタルが堆積して行く為、タップホール61からメタルを適時抜き出す。
【0007】
而して、従来の炉壁冷却構造つまり溶融炉本体53は、例えば図4に示す如く、溶融炉内74を形成する炉壁75と、これの外側に設けられてこれを冷却保護する水冷壁76とから構成されている。
炉壁75は、1600℃の高温に耐えるカーボン系レンガやSiC系レンガ等の耐火材77と、これの外周を覆う電気絶縁性耐火材78とから成っている。
水冷壁76は、ジャケット式、つまり水冷ジャケットにしてあり、鋼板製のジャケット79と、この内部に供給される冷却水80とから成っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この様な炉壁冷却構造では、水冷壁が腐蝕したり、或は炉壁が焼損して水冷壁が高温に晒される事に依り水冷壁が破損して冷却水が溶融炉内へ漏洩した場合には、冷却水が溶融スラグに巻き込まれて水蒸気爆発を起こす危険性があった。
本発明は、叙上の問題に鑑み、これを解消すべく創案されたもので、その課題とする処は、水冷壁に依る炉壁の冷却効果が損なわれる事がないと共に、水冷壁の破損に依って水漏れが起こっても水蒸気爆発の起生を未然に防止する事ができる電気式溶融炉の炉壁冷却構造を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気式溶融炉の炉壁冷却構造は、基本的には、炉壁と、炉壁の外側に設けられる水冷壁と、炉壁と水冷壁との間に設けられて水冷壁に依る炉壁の冷却を許容すると共に水冷壁から炉壁への冷却水の漏洩を遮断する遮断層と、から構成した事に特徴が存する。
【0010】
水冷壁が腐蝕したり、或は炉壁が焼損して水冷壁が高温に晒される事に依り水冷壁が破損したりすると、水冷壁の冷却水が炉壁を経て溶融炉内へ漏洩しようとするが、炉壁と水冷壁との間には、遮断層が設けられているので、水冷壁から炉壁への冷却水の漏洩が遮断される。この為、水冷壁の破損事故に依って水漏れが起こっても直ぐに溶融スラグと接触する事がなく、冷却水が溶融炉内の溶融スラグに巻き込まれて水蒸気爆発を起こす事を防止する事ができる。従って、電気式溶融炉の運転の安全性を確保する事ができる。
遮断層は、水冷壁に依る炉壁の冷却を許容するので、炉壁の冷却効果が損なわれる事がない。
【0011】
遮断層は、熱伝導の良い金属等の粉体や粒体を充填した層、凝固体より成る層又は板体(鉛等の低融点金属を溶かし鋳込んだものを含む)に依り形成されているのが好ましい。
【0012】
水冷壁から遮断層に達した水蒸気を外部に導く導路を設けると共に、導路からの水蒸気を検知する検知器を設けるのが好ましい。この様にすれば、水冷壁からの水漏れを検知する事ができる。
【0013】
遮断層の温度を検出する検出器を設けるのが好ましい。この様にすれば、溶融炉からの溶湯漏れを検知する事ができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一例に係る炉壁構造を示す要部縦断面図である。
【0015】
炉壁冷却構造1は、炉壁2、水冷壁3、遮断層4とからその主要部が構成されて居り、電気式溶融炉50に適用される。
【0016】
炉壁2は、炉壁冷却構造1の基本部分を為して溶融炉内5を形成するもので、この例では、1600℃の高温に耐えるカーボン系レンガやSiC系レンガ等の耐火材6と、これの外周に設けられてこれを覆う電気絶縁性キャスタブル等の電気絶縁性耐火材7とから成っている。
【0017】
水冷壁3は、炉壁2の外側に設けられるもので、この例では、ジャケット式、つまり水冷ジャケットにしてあり、内外二重壁を備えたジャケット8と、これの内部に供給される冷却水9とから成っている。ジャケット8は、熱伝導性の優れた鋼板等の金属板に依り作製されている。
【0018】
遮断層4は、炉壁2と水冷壁3との間に設けられて水冷壁3に依る炉壁2の冷却を許容すると共に水冷壁3から炉壁2への冷却水9の漏洩を遮断するもので、この例では、内外二重壁を備えた容器10と、これの内部に充填される銅粉等の充填物11とから成っている。容器10は、熱伝導性に優れた鋼板等の金属板に依り作製されて居り、その外壁がジャケット8の内壁と兼用されている。充填物11は、熱伝導性に優れていると共に、容器10に充填される事に依り多数の迂曲した細い通路が形成されて滲水性に優れたものになっている。
【0019】
而して、炉壁冷却構造1には、水冷壁3から遮断層4に達した水蒸気を外部に導く導路12が設けられていると共に、導路12からの水蒸気を検知する検知器13が設けられ、然も、遮断層4の温度を検出する検出器14が設けられている。
つまり、遮断層4の随所には、導路12を形成する導管15が設けられている。導管15は、水冷壁3を水密状態に貫通して設けられて居り、内端が充填物11が充填された遮断層4内に連通されていると共に、外端には、水蒸気を検知する検知器(水蒸気センサ、湿度計)13が接続されている。遮断層4には、ここの温度を検出する検出器14が設けられて居り、外部からモニタリングできる様になっている。
【0020】
次に、この様な構成に基づいて作用を述解する。
水冷壁3のジャケット8が腐蝕したり、或は炉壁2の耐火材6や電気絶縁性耐火材7が焼損して水冷壁3のジャケット8が高温に晒される事に依り水冷壁3のジャケット8が破損したりすると、水冷壁3の冷却水9が炉壁2を経て溶融炉内5に漏洩しようとするが、炉壁2と水冷壁3との間には、遮断層4が設けられているので、水冷壁3から炉壁2への冷却水の漏洩が遮断される。つまり、水冷壁3のジャケット8の内壁が破損して冷却水9が遮断層4の充填物11に流入した場合、冷却水9又はこれが水蒸気になったものが充填物11に滲んで拡散される。そして、最寄りの導路12に達してここから水蒸気として外部へ発散される。導路12には、検知器13が設けられているので、これに依って出て来た水蒸気を感知して、タップホール61から溶融物を抜き出すと直ぐに電気式溶融炉50を安全の為に緊急停止させる。
【0021】
これに依り冷却水9が溶融炉内5の溶融スラグに巻き込まれて水蒸気爆発を起こす事を防止する事ができる。
遮断層4は、水冷壁3に依る炉壁2の冷却を許容するので、炉壁2の冷却効果が損なわれる事がない。
溶融炉内5の溶融スラグに依り炉壁2の耐火材6や電気絶縁性耐火材7が侵食されて遮断層4の内壁が破損された場合には、遮断層4の充填物11の温度が上昇するので、これを検出器14に依りモニタニングして置く事で溶湯(溶融スラグ)洩れを検出でき、上述の緊急停止が作動される。
【0022】
次に、本発明の第二例を、図2に基づいて説明する。
第二例は、水冷壁3を炉壁2の外側に設けられた水管16と、この内部に供給される冷却水9とから成る水管式にした点、遮断層4を炉壁2の外側に設けられて水管16を収容する内外二重壁を備えた容器10と、水管16を除く容器10の内部に充填された銅粉等の充填物11とで構成した点、が第一例と異なる。
この様なものは、第一例と同様の作用効果を奏する事ができる。
【0023】
尚、遮断層4の充填物11は、先の例では、銅粉等の粉体であったが、これに限らず、例えば粒体であったり、凝固体(鉛等の低融点金属を溶かし鋳込んだもの)等でも良い。
【0024】
【発明の効果】
以上、既述した如く、本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 炉壁、水冷壁、遮断層とで構成し、とりわけ炉壁と水冷壁との間に水冷壁に依る炉壁の冷却を許容すると共に水冷壁から炉壁への冷却水の漏洩を遮断する遮断層を設けたので、水冷壁に依る炉壁の冷却効果が損なわれる事がないと共に、水冷壁の破損に依って水漏れが起こっても水蒸気爆発の起生を未然に防止する事ができる。この為、電気式溶融炉の運転の安全性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一例に係る炉壁構造を示す要部縦断面図。
【図2】本発明の第二例に係る炉壁構造を示す要部縦断面図。
【図3】電気式溶融炉の一例を示す縦断図。
【図4】従来の炉壁構造を示す要部縦断面図。
【符号の説明】
1…炉壁冷却構造、2,75…炉壁、3,76…水冷壁、4…遮断層、5,74…溶融炉内、6,77…耐火材、7,78…電気絶縁性耐火材、8,79…ジャケット、9,80…冷却水、10…容器、11…充填物、12…導路、13…検知器、14…検出器、15…導管、16…水管、50…電気溶融炉、51…灰コンテナ、52…灰供給装置、53…溶融炉本体、54…主電極、55…スタート電極、56…炉底電極、57…炉底冷却ファン、58…直流電源装置、59…窒素ガス供給装置、60…溶融スラグ流出口、61…タップホール、62…燃焼室、63…燃焼空気ファン、64…ガス冷却塔、65…バグフィルタ、66…誘引通風機、67…煙突、68…溶融飛灰コンベア、69…飛灰だめ、70…スラグ水冷槽、71…スラグ搬出コンベア、72…スラグだめ、73…スラグ冷却水冷却装置。
Claims (2)
- 炉壁と、炉壁の外側に設けられる水冷壁と、炉壁と水冷壁との間に設けられて水冷壁に依る炉壁の冷却を許容すると共に水冷壁から炉壁への冷却水の漏洩を遮断する遮断層と、から構成し、水冷壁から遮断層に達した水蒸気を外部に導く導路を設けると共に、導路からの水蒸気を検知する検知器を設けた事を特徴とする電気式溶融炉の炉壁冷却構造。
- 遮断層の温度を検出する検出器を設けた請求項1に記載の電気式溶融炉の炉壁冷却構造。
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