JP3921706B2 - 灰溶融炉の電極シール装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ごみ焼却炉や各種焼却装置等から排出される焼却灰などを溶融処理する灰溶融炉の電極シール装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみ、下水汚泥等の各廃棄物は、焼却施設で焼却処理され、生じた焼却灰やばいじんは、従来埋め立て処分されていた。しかし、埋立処分地枯渇の問題や有害重金属類の溶出による地下水汚染の問題があるため、溶融による減量・減容化と無害化の必要性が高まっている。
【0003】
このような背景で、焼却灰中の残留炭素、コークス、灯油および電力を熱源とした、焼却炉等から排出される焼却灰などを溶融処理する灰溶融炉が提案され、一部で実処理が行われている。
【0004】
このうち、電力を熱源とした灰溶融炉には、抵抗加熱方式などがある。
【0005】
抵抗加熱方式の灰溶融炉は、溶融スラグ内に対抗電極を配置し、直流または交流通電による電気抵抗熱(ジュール熱)により焼却灰を加熱溶融するものであり、▲1▼熱効率が高い、▲2▼発生ガスが少ない、▲3▼アークを生成しないためフリッカが発生しない、▲4▼溶融スラグと溶融メタルとを分離した分割出滓ができる、という特徴がある。
【0006】
図3は従来の抵抗加熱方式の灰溶融炉の縦断面図である。図において、aは灰溶融炉である。この灰溶融炉aの炉壁bは全体に耐火レンガ等の耐火材により形成されている。焼却灰nは、この灰溶融炉aの炉蓋cに設けた灰投入管dの灰投入口eから投入される。灰溶融炉a内に投入された焼却灰nは、灰溶融炉aの炉蓋cに設けた電極挿入孔mに挿入した上部電極jおよび灰溶融炉aの炉底に埋設した炉底電極kにより加熱して溶融スラグoにするようにしている。灰溶融炉a内に溶融スラグoが所要量溜まると、溶融スラグoを自重によって加わるヘッド圧により灰溶融炉aの炉壁b下部に設けた出滓口hを通して外部に出滓するようになっている。fは灰溶融炉aの炉蓋cに設けた排気管であり、gは排気口である。pは灰溶融炉a内底部に溜まった溶融メタルで、溶融スラグoと同様に所要量溜まると、排出口iを通して外部に排出するようになっている。qは上部電極jおよび底部電極kに直流通電する電源であり、rおよびsはその電線である。なお、この従来例の他に、出滓口hを灰溶融炉aの炉壁bの高さ方向の中央部に設けて溶融スラグoを連続的にオーバーフローさせて出滓させるものもある。
【0007】
灰溶融炉aの炉壁bおよび炉蓋cには、一般に気孔率20%〜30%の高アルミナ質の耐火材が使用される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示すような灰溶融炉では、灰溶融炉をシールして密閉構造とし、炉外からの漏れによる酸素の流入を低減させて灰溶融炉内を還元性雰囲気に保ち、電極の消耗を防止するようにしているが、電極はカーボン等により形成されているため、焼却灰中に含有されている酸素によって燃焼し、電極の周面は徐々に細くなる。消耗がすすむと電極は途中で折れて焼却灰とともに灰溶融炉内に浮遊し、その折れた電極が上部電極との間でアークを発生してさらに電極を折ってしまったり、アークにより耐火材を溶解してしまう。しかも、灰溶融炉内を還元性雰囲気に保たなければならないため、焼却灰中の未燃分は燃焼しないで残留してしまう。などの問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するために創案されたもので、電極の消耗を防止するとともに、炉壁の耐火材の寿命を長くするような灰溶融炉の電極シール装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によれば、焼却灰を溶融処理する灰溶融炉の電極シール装置であって、該灰溶融炉の炉蓋の電極挿入部に、内径が電極の外径よりも大きく、上端に内方に突出した鍔を有する耐火材の円筒状部材を、下端が灰溶融炉内の溶融スラグ層内に没入するように嵌装し、かつ、焼却灰溶融時に、円筒状部材内にN2 ガス等の不活性ガスを封入するようにしたことを特徴とする灰溶融炉の電極シール装置が提供される。
【0011】
円筒状部材は、炉壁の耐火材の気孔率よりも気孔率の低い耐火材で形成されていることが好ましい。
【0012】
また、円筒状部材は、気孔率1%以下の耐火材で形成されていることが好ましい。
【0013】
さらに、前記円筒状部材を、円環状の蓋部と円筒部とに分割してもよい。
【0014】
上記本発明の構成によれば、電極の外周を、上端に内方に突出した鍔を有するか、円盤状蓋と円筒部とに分割した耐火材の円筒状部材で囲み、その下端を灰溶融炉内の溶融スラグ層内に没入するように嵌装し、かつ、焼却灰溶融時に、円筒状部材内にN2 ガス等の不活性ガスを封入するようにしたので、電極の酸化による消耗を防止することができる。また、N2 ガス等の不活性ガスは、円筒状部材と溶融スラグ層とで形成される間隙にだけ封入され、灰溶融炉のフリーボード内には流入しないので、窒素酸化物(NOx )を発生させることはない。灰溶融炉内を酸化性雰囲気に保つことができるので、焼却灰の未燃分が燃焼されるとともに、従来の灰溶融炉に必要なCOガス燃焼器を必要としない。消耗による電極の折れを防止して折れた電極と残りの電極との間で発生するアークによる耐火材の溶解を防止するので、耐火材の寿命を長くすることができる。
【0015】
また、円筒状部材は、炉壁の耐火材よりも気孔率の低い耐火材で形成するようにしたので、溶融スラグに含まれるアルカリ塩が浸透することがなく、電気の絶縁性を高く維持することができ、電極との間で短絡を起こすことがない。実験によれば、気孔率1%以下の耐火材で形成するのがよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態を示すものであり、図1は本発明による灰溶融炉の電極シール装置の縦断面図、図2は本発明の他の実施形態を示すもので、一部省略した灰溶融炉の電極シール装置の縦断面図である。
【0017】
図において、1は焼却灰を溶融処理する灰溶融炉である。1aは炉蓋3に設けた電極挿入部である。2はこの灰溶融炉1の炉壁で、全体に耐火レンガにより形成されている。3は灰溶融炉1の頂部に設けた炉蓋であり、3aはこの炉蓋3に設けた、後述する円筒状部材7の挿入口である。4は灰溶融炉1の壁部2の下部に設けられた出滓口であり、溶融スラグ14は、この出滓口4から出滓される。5は灰溶融炉1の壁部2の底部に設けられた溶融メタル排出口である。溶融スラグ14と分離して灰溶融炉1底部に溜まった溶融メタル15は、排出口5を通して外部に排出される。6は上部電極で、電極挿入部1aに嵌装した円筒状部材7の上端7bの電極挿入口8に挿入されている。6aは灰溶融炉1の底部に、上部電極6と対峙するように埋設した炉底電極である。
【0018】
円筒状部材7は、前記のとおり炉蓋3の電極挿入部1aの円筒状部材挿入口3aに嵌入されていて、内径が電極6の外径よりも大きく、上端に内方に突出した鍔7bを有する耐火材で形成されている。また、この鍔7bの中心には電極挿入口8が形成されている。円筒状部材7の下端は、灰溶融炉1内の溶融スラグ層14内に没入するようになっており、焼却灰溶融時には、円筒状部材7の内部にN2 ガス等の不活性ガスを封入するようになっている。
【0019】
また、この円筒状部材7は、アルミナセラミックス,ファインセラミックスなどのセラミックスで形成されており、炉壁2や炉蓋3に使用される耐火レンガの気孔率(通常20〜30%)よりも十分気孔率の低い耐火材が使用される。なお、実験によれば、気孔率が1%以下の耐火材を使用するのが好ましい。
【0020】
なお、円筒状部材7の上端に、外方に突出した鍔7cを形成するとともに、炉蓋3の電極挿入部1aの円筒状部材挿入口3aに、鍔7cを嵌合する段差を設けているので円筒状部材7の取り付けが容易である。
【0021】
13は灰溶融炉1頂部に設けた灰投入管9の灰投入口10から投入された焼却灰であり、未溶融の状態では溶融スラグ14の上に浮いた状態となっている。溶融メタル層15内では溶融スラグ層14に比べて電気抵抗が極端に少ないので、この部分ではジュール熱が発生せず、メタルの下面は固体で、上面だけが溶融している。16は円筒状部材7の鍔7bおよび円筒状部材7aの円盤状蓋19(図2)に設けたN2 ガス等の不活性ガス供給管であり、17はその上端に設けた開閉弁である。18は円筒状部材7および円筒状部材7aの内部に封入されたN2 ガス等の不活性ガスである。20は上部電極6および炉底電極6aに直流通電する電源であり、21および21aはその電線である。22はフリーボードである。なお、11は排気管であり、12は排気口である。
【0022】
次に実施の形態に基づく作用について説明する。
灰溶融炉1内に投入された焼却灰13を、電源20から上部電極6および炉底電極6aに直流通電し、加熱して溶融スラグ14を生成する。焼却灰13は、灰溶融炉内では1,200°Cで溶融するが、溶融スラグ14が溶融してその上面が円筒状部材7の下端よりも上方まで上昇し、円筒状部材7の下端が溶融スラグ層14内に没入したのを確認してから円筒状部材7の内部にN2 ガス等の不活性ガス18を封入する。このようにして、電極6を円筒状部材7で囲むとともに、円筒状部材7の内部にN2 ガス等の不活性ガス18を封入するようにしたので、酸化による電極6の消耗を防止することができる。また、円筒状部材7によって、N2 ガス等の不活性ガス18を灰溶融炉1内のフリーボード22に流入させないので、窒素酸化物(NOx )を発生させることはない。灰溶融炉1内を酸化性雰囲気に保つことができるので、焼却灰13の未燃分が燃焼される。上部電極6は、フリーボード22部で酸化消耗し、途中で折れて炉中に脱落することがないので、折れた電極と上部電極6との間で発生するアークによって耐火材が溶損することがない。この結果、耐火材の寿命を長くすることができる。
【0023】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の円筒状部材7に替えて、図2に示すように、円環状の蓋部19と円筒部7aとに分割するなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更し得ることは勿論である。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、上記電極を円筒状部材により囲繞してシールし、焼却灰溶融時に、円筒状部材内にN2 ガス等の不活性ガスを封入するようにしたので、電極の酸化による消耗を防止することができる。電極が消耗によって折れることがないので、折れた電極と上部電極との間で発生するアークによる耐火材の溶損を防止しているので、耐火材の寿命を長くすることができる。灰溶融炉内のフリーボードを酸化性雰囲気に保つことができるので、焼却灰中の未燃分を燃焼することができる。また、円筒状部材を、灰溶融炉の炉壁に設けた耐火材の気孔率よりも十分気孔率の低い耐火材で形成すれば、電気の絶縁性を高く維持することができ、電極との間で短絡を起こすことがない。などの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による灰溶融炉の電極シール装置の縦断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態による灰溶融炉の電極シール装置の一部省略した縦断面図である。
【図3】従来の灰溶融炉の縦断面図である。
【符号の説明】
1 灰溶融炉
1a 電極挿入部
2 炉壁
3 炉蓋
3a 円筒状部材挿入口
4 出滓口
5 メタル排出口
6 上部電極
6a 炉底電極
7 円筒状部材
7a 円筒部
7b 円筒状部材上端の鍔
7c 円筒部上端の鍔
8 電極挿入孔
9 焼却灰投入管
10 焼却灰投入口
11 排気管
12 排気口
13 焼却灰
14 溶融スラグ
15 溶融メタル
16 不活性ガス供給管
17 開閉弁
18 N2 ガス等の不活性ガス
19 円環状の蓋部
20 電源
21,21a 電線
22 フリーボード
a 灰溶融炉
b 炉壁
c 炉蓋
d 焼却灰投入管
e 焼却灰投入口
f 排気管
g 排気口
h 出滓口
i 排出口
j 上部電極
k 炉底電極
m 電極挿入口
n 焼却灰
o 溶融スラグ
p 溶融メタル
q 電源
r,s 電線
Claims (2)
- 焼却灰を電気抵抗加熱で溶融処理する灰溶融炉の電極シール装置であって、該灰溶融炉の炉蓋の電極挿入部に、内径が電極の外径よりも大きく、上端に内方に突出した鍔を有する耐火材の円筒状部材を、下端が灰溶融炉内の溶融スラグ層内に没入するように嵌挿し、かつ、焼却灰溶融時に、円筒状部材内にN2ガスなどの不活性ガスを封入してなり、封入された該不活性ガスは、円筒状部材上端では電極との間でシールされており、円筒状部材下端では溶融スラグによってシールされていて、該不活性ガスが炉外または炉内に流出しないようになっており、前記円筒状部材は気孔率1%以下の耐火材によって形成されていることを特徴とする灰溶融炉の電極シール装置。
- 前記円筒状部材を、円環状の蓋部と円筒部に分割した請求項1記載の灰溶融炉の電極シール装置。
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