JP3575570B2 - 灰溶融炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は焼却灰やばいじんなどの灰を溶融処理する灰溶融炉に係り、特に停止後に再起動することが容易な灰溶融炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみ、下水汚泥等の各種廃棄物は焼却施設で焼却処理され、生じた焼却灰やばいじんは、従来埋め立て処分されていた。しかし、埋め立て処分地枯渇の問題や有害重金属類の溶出による地下水汚染の問題があるため溶融による減量・減容化と無害化の必要性が高まってきている。
【0003】
このような背景で灰中の残留炭素、コークス、灯油、電力を熱源とした溶融処理方式が提案され、一部で実処理が行われている。このうち、電力を熱源とした溶融炉としてプラズマアーク加熱方式と抵抗加熱方式とがある。プラズマアーク加熱方式の溶融炉は、上部炉蓋を貫通する中空黒鉛電極を設け、その先端を溶融スラグ上面近くに位置させ、電極の中空部分にArガスあるいはN2 ガスを上から流し、上部の黒鉛電極と炉底電極との間に直流通電して、プラズマ化ガス流によりアークを継続し、灰を加熱溶融するものである。電極が長寿命で溶融速度が大きく、炉をコンパクトにできるという特徴がある反面、溶融に至る前に、焼却灰やばいじんがガス流により飛散し、集塵機に大きな負担がかかるという問題がある。
【0004】
抵抗加熱方式の灰溶融炉は、溶融スラグ内に対抗電極を配置し、直流または交流通電による電気抵抗熱(ジユール熱)により灰を加熱溶融するものであり、1)熱効率が高い、2)発生ガスが少ない、3)アークを生成しないためフリッカが発生しない、4)溶融スラグと溶融メタルとを分離した分割出滓ができる、という特徴がある。
【0005】
かかる抵抗加熱方式の灰溶融炉の一例を図2に示す。図2は灰溶融炉の断面図である。図においてaは電気抵抗式の灰溶融炉である。灰jは炉蓋nに設けた灰投入口bから投入される。cは炉蓋nを貫通して昇降可能に挿入された上部電極であり、黒鉛を使用している。dは炉底に設けた炉底電極で、導電性のれんがを使用している。mは電源であり、上部電極cおよび炉底電極dに接続されている。電源mは直流または2相交流を用いる。電源mが直流である場合は、上部電極cを陽極、炉底電極dを陰極とするのが好ましい。
【0006】
次に作用を説明する。溶融炉a内に投入された灰jは電気抵抗熱により溶融する。灰溶融炉内では比重差により、下方の溶融メタル層hと上方の溶融スラグ層gに分離しており、溶融スラグ層gの上方に未溶融の灰jが浮いた状態で灰カバー層iを形成している。
【0007】
溶融スラグeは溶融スラグ出口pから外部に排出される。灰溶融炉a内で溶融スラグ層gの温度は1000°〜1200°となっている。溶融スラグeと溶融メタルfの電気抵抗は極端に異なっているので、溶融メタル層h内ではジュール熱がほとんど発生せず、従って溶融メタル層h上面の薄い層のみが溶融した状態であり残りは固体である。溶融スラグeの主成分はけい砂と石灰であり、溶融メタルfの主成分は鉄である。
【0008】
灰の溶融中に発生するガスは排気口kから排ガスrとなって外部に流出し、乾式または湿式の排ガス処理装置に導かれる。排ガスr中にはダストの外、塩化水素、一酸化炭素、酸化ナトリウムなどが含まれている。溶融スラグeは排出口pから間歇的または連続的に排出される。溶融メタル層hは溶融スラグeを排出後、溶融メタル層hと上部電極cとの間でアークを発生させて溶融し、排出口qから外部に排出される。
【0009】
かかる灰溶融炉aを起動するには、当初投入する灰jの中に鉄などの金属粉を混入して灰jを電気の良導体とし、それに通電することにより溶融する。灰jが溶融して溶融スラグeとなると電気の良導体となるので、以後は金属粉を混入することなく、連続溶融が可能になる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように灰溶融炉aを停止するとき、内部の溶融スラグ層gを完全に排出しておけば、容易に再起動を行うことができる。しかし電極電源mが停止したりしたとき溶融スラグ層gが炉内に残ると、そのままでは固体となったスラグは電気の不良導体なので、上部電極cと炉底電極dとの間で通電することができなくなり、再起動ができなくなる。
【0011】
そのため、電極電源mが停止したときにはオイルバーナでバックアップして溶融スラグeが固化しないようにして速やかに溶融スラグを炉外に排出し、溶融メタル層hに薄く膜状に残った溶融スラグeはオイルバーナにより吹き飛ばして溶融メタル層hの上面が露出した状態にする。電源mが停止したとき、溶融スラグ層gを排出しきれず、固化した溶融スラグ層gが灰溶融炉a内に残ってしまったときには、はつりによりそれを除去するか、オイルバーナで溶融させ、通電可能としてから再起動することになる。
【0012】
このように従来の灰溶融炉は再起動するために多大の労力と時間を要する問題がある。本発明は以上述べた問題点に鑑み案出されたもので、灰溶融炉が停止した後容易に再起動できる灰溶融炉を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の灰溶融炉は、炉底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した主電極と、炉底電極と主電極に接続した電源を有し、炉底電極と主電極との間で通電して電気抵抗熱により灰を溶融する灰溶融炉において、上記主電極に隣り合って炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した起動電極を設け、炉の起動時に主電極と起動電極との間に通電することができるように電源を接続したものである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、起動電極は炉蓋に設けた排気口を貫通して挿入するのがよい。
【0015】
次に本発明の作用を説明する。灰溶融炉内に固化した溶融スラグ層が残ってる場合に、次の手順で起動する。
(1)炉内に金属のスクラップを投入し、主電極の周囲を覆う。この場合上記主電極の下端は、溶融スラグ層の上方にあって電極が昇降可能になっていてもよいし、固化した溶融スラグ層内に没入していて、昇降不可能になっていてもよい。
【0016】
(2)電圧および電流値を制限して、起動電極を下げる。
(3)起動電極の下端がスクラップに接触すると、主電極と起動電極との間にアークが発生し、電極間に電流が流れる。
(4)時間の経過と共に固化した溶融スラグ層が再溶融しはじめ、さらに溶融が進むと主電極と炉底電極の間で電流が流れはじめ、主電極と炉底電極との間で抵抗加熱となる。
【0017】
(5)主電極と炉底電極との間の電流値と溶融スラグ層の温度が所定の値になったことを確認してから起動電極を引き上げる。
(6)通常運転に入る。
【0018】
なお、スクラップの代わりに金属粉を含んだ灰を用いて、その中に通電することにより起動するようにしてもよい。また起動電極を排気口を貫通させて挿入するようにすれば、起動電極を下げる際に排気口の内面に付着したダストなどの付着物を清掃することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下本発明の灰溶融炉の1実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の灰溶融炉の断面図である。図において1は灰溶融炉である。1aは炉底電極であり、導電性の耐火れんがにより形成されている。1bは炉蓋である。1cは主電極で、炉蓋1bを貫通して昇降可能に挿入されて、下端は溶融スラグ層1e内に没入している。主電極1cの材質は黒鉛である。
【0020】
1dは起動電極であり、主電極1cに隣り合って設けられており、炉蓋1bを貫通して昇降可能に挿入されている。起動電極は図に示すように炉蓋1bに設けられた排気口1hを貫通するように設けるのが好ましい。起動電極1dは通常操業時には図に実線で示すように下端は排気の邪魔にならない高い位置に留まっている。1eは溶融スラグ層、1fは溶融メタル層、1iは溶融スラグの排出口、1jは溶融メタルの排出口である。これらの排出口1i、1jは運転中は耐火マッドにより閉塞されている。
【0021】
2は電源であり、配線7により主電極1c、起動電極1d、炉底電極1aにそれぞれ接続されている。電源2は直流電源であり、主電極1cが陽極、炉底電極1aが陰極になるように接続する。電源2は電流および電圧の制限回路を内蔵している。
【0022】
3は主電極昇降装置である。ガイドパイプ3aに外嵌された電極把持部3bが、ウインチ3cによりロープ3dを介して昇降するようになっている。3eはガイドパイプ3aの上端に設けたプーリである。4は起動電極昇降装置であり、構造は主電極昇降装置3とほぼ同じである。5は電流計、6は電圧計、7は配線、8はスイッチである。
【0023】
次に溶融スラグ層1eが固化した状態で炉内に残ったまま灰溶融炉1が停止し、それを再起動する場合について、起動方法を説明する。
(1)炉内にスクラップ9を投入し、そのスクラップ9により図のように主電極1cの周囲を覆う。その場合主電極1cは図のように溶融スラグ層1e内に没入していてもよいし、上方にあって昇降可能になっていてもよい。
【0024】
(2)電源2の電圧および電流値を制限しスイッチ8をONにして起動電極1dを図の点線で示す位置に下降させる。
(3)起動電極1dの下端がスクラップ9に接触すると主電極1cと起動電極1dの間にアークが発生し、配線7aに電流I1 が流れる。
(4)時間の経過と共に固化した溶融スラグ層1eが再び溶融し始める。さらに時間が経過し、溶融が進むと、主電極1cと炉底電極1aとの間で電流I0 が流れ始め主電極1cと炉底電極1aとの間で抵抗加熱となる。
(5)主電極1cと炉底電極1aとの間の電流値Ioと、溶融スラグ層の温度が所定の値になったことを確認してからスイッチ8をOFFにし、起動電極1dを引き上げる。
【0025】
(6)通常運転にはいる。
【0026】
なお、スクラップ9の代わりに導電性のマッドを使用するようにしてもよい。起動電極1dを下げることにより、排気口1h内面の付着物を清掃することができる。
【0027】
本発明は以上述べた実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の灰溶融炉は主電極に隣り合って起動電極を設けたので以下に述べるような優れた効果がある
(1)従来の灰溶融炉で必要な再起動のためのオイルバーナなどがなくても、主電極と起動電極との間の通電により固化した溶融スラグ層を再溶融させて起動することができる。従って燃料タンクなどの設備が不要であると共に再起動の時間も短縮できる。
【0029】
(2)灰溶融炉を停止する際に溶融スラグ層を残したままにしてもよいので停止のための時間が短縮できて、操業が容易になる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の灰溶融炉の断面図である。
【図2】従来の灰溶融炉の断面図である。
【符号の説明】
1 灰溶融炉
1a 炉底電極
1b 炉蓋
1c 主電極
1d 起動電極
2 電源
Claims (1)
- 炉底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した主電極と、炉底電極と主電極に接続した電源を有し、炉底電極と主電極との間で通電して電気抵抗熱により灰を溶融する灰溶融炉において、上記主電極に隣り合って炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した起動電極を設け、炉の起動前に導電性材料を投入し、炉の起動時に主電極と起動電極との間でその導電性材料に通電することができるように電源を接続し、起動が完了したら炉底電極と主電極とに接続した電源に切換えるようにしたことを特徴とする灰溶融炉。
Priority Applications (1)
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JP14263096A JP3575570B2 (ja) | 1996-06-05 | 1996-06-05 | 灰溶融炉 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP14263096A JP3575570B2 (ja) | 1996-06-05 | 1996-06-05 | 灰溶融炉 |
Publications (2)
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JPH09324989A JPH09324989A (ja) | 1997-12-16 |
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Family Applications (1)
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1996
- 1996-06-05 JP JP14263096A patent/JP3575570B2/ja not_active Expired - Fee Related
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