JP3709945B2 - 灰溶融炉のレベル検出方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は焼却灰やばいじんなどの灰を溶融処理する灰溶融炉に係り、特に炉内の溶融スラグや溶融メタルのレベルを検出する検出方法および検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみ、下水汚泥等の各種廃棄物は焼却施設で焼却処理され、生じた焼却灰やばいじんは、従来埋め立て処分されていた。しかし、埋め立て処分地枯渇の問題や有害重金属類の溶出による地下水汚染の問題があるため溶融による減量・減容化と無害化の必要性が高まってきている。
【0003】
このような背景で灰中の残留炭素、コークス、灯油、電力を熱源とした溶融処理方式が提案され、一部で実処理が行われている。このうち、電力を熱源とした溶融炉としてプラズマアーク加熱方式や抵抗加熱方式などがある。
【0004】
抵抗加熱方式の灰溶融炉は、溶融スラグ内に対抗電極を配置し、直流または交流通電による電気抵抗熱(ジユール熱)により灰を加熱溶融するものであり、1)熱効率が高い、2)発生ガスが少ない、3)アークを生成しないためフリッカが発生しない、4)溶融スラグと溶融メタルとを分離した分割出滓ができる、という特徴がある。
【0005】
かかる抵抗加熱方式の灰溶融炉の一例を図2に示す。図2は灰溶融炉の断面図である。図においてaは電気抵抗式の灰溶融炉である。灰jは炉蓋nに設けた灰投入口bから投入される。cは炉蓋nを貫通して昇降可能に挿入された上部電極であり、黒鉛を使用している。dは炉底に設けた炉底電極で、導電性のれんがを使用している。mは電源であり、上部電極cおよび炉底電極dに接続されている。電源mは直流または2相交流を用いる。電源mが直流である場合は、上部電極cを陽極、炉底電極dを陰極とするのが好ましい。
【0006】
次に作用を説明する。溶融炉a内に投入された灰jは電気抵抗熱により溶融する。灰溶融炉aの内では比重差により、下方の溶融メタル層hと上方の溶融スラグ層gに分離しており、溶融スラグ層gの上方に未溶融の灰jが浮いた状態で灰カバー層iを形成している。
【0007】
溶融スラグeは溶融スラグ出口pから外部に排出される。灰溶融炉a内で溶融スラグ層gの温度は1100°〜1200°Cとなっている。溶融スラグeと溶融メタルfの電気抵抗は極端に異なっているので、溶融メタル層h内ではジュール熱がほとんど発生せず、従って溶融メタル層h上面の薄い層のみが溶融した状態であり、残りは固体である。溶融スラグeの主成分はけい砂と石灰であり、溶融メタルfの主成分は鉄である。
【0008】
灰の溶融中に発生するガスは排気口kから排ガスrとなって外部に流出し、乾式または湿式の排ガス処理装置に導かれる。排ガスr中にはダストの外、塩化水素、一酸化炭素、酸化ナトリウムなどが含まれている。溶融スラグeは排出口pから間歇的または連続的に排出される。溶融メタル層hは溶融スラグeを排出後、溶融メタル層hと上部電極cとの間でアークを発生させて溶融し排出口qから外部に排出される。
【0009】
かかる灰溶融炉aを起動するには、当初投入する灰jの中に鉄などの金属粉を混入して灰jを電気の良導体とし、それに通電することにより溶融する。灰jが溶融して溶融スラグeとなると電気の良導体となるので、以後は金属粉を混入することなく、連続溶融が可能になる。
【0010】
以上述べたように灰溶融炉aを停止するとき、内部の溶融スラグ層gを完全に排出しておけば、容易に再起動を行うことができる。しかし電極電源mが停止したりしたとき溶融スラグ層gが炉内に残ると、そのままでは固体となったスラグは電気の不良導体なので、上部電極cと炉底電極dとの間で通電することができなくなり、再起動ができなくなる。
【0011】
そのため、電極電源mが停止したときにはオイルバーナでバックアップして溶融スラグeが固化しないようにして速やかに溶融スラグeを炉外に排出し、溶融メタル層hに薄く膜状に残った溶融スラグeはオイルバーナにより吹き飛ばして溶融メタル層hの上面が露出した状態にする。電源mが停止したとき、溶融スラグ層gを排出しきれず、固化した溶融スラグ層gが灰溶融炉a内に残ってしまったときには、はつりによりそれを除去するか、オイルバーナで溶融させ、通電可能としてから再起動することになる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べた灰溶融炉において、溶融スラグや溶融メタルの出滓のタイミングなどを決定するため、炉内に貯留する溶融スラグ層gの上面のレベルおよび溶融メタル層h上面(即ち、溶融メタル層hと溶融スラグ層gの境界)のレベルを正確に検出する必要がある。しかし従来これらのレベルを検出する適当な方法がなかった。たとえば、主電極cを下降させつつ通電状況を計測すれば、主電極cの下端が、溶融スラグ層g上面に達すれば通電が開始するし、電源mに定電流回路を設けておいて、主電極cの下端が溶融メタル層h上面に達すれば、電圧が0になるので、それによって溶融スラグ層gおよび溶融メタル層hのレベルが検出できると考えられる。しかし主電極cは黒鉛製で操業中に常時消耗して短くなるので、操業中の正確な長さがわからず、従ってこのような方法では溶融スラグ層gおよび溶融メタル層hのレベルの検出はできない。
【0013】
本発明は従来技術のかかる問題点に鑑み案出されたもので、主電極に隣り合って昇降可能に設けられたレベル検出用電極を利用して溶融スラグ層gおよび溶融メタル層hのレベルを検出することのできる灰溶融炉のレベル検出方法および装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本願第1発明の灰溶融炉のレベル検出方法は炉底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した主電極と、主電極に隣り合って炉蓋を貫通して昇降可能に挿入したレベル検出用電極とを有し、主電極と炉底電極との間で通電して電気抵抗熱により灰を溶融する灰溶融炉において、炉内に貯留した溶融スラグ層およびその下方に貯留した溶融メタル層のレベルを検出する灰溶融炉のレベル検出方法であって、レベル検出用電極と炉底電極との間で通電すべく、定電流回路を有する電源を接続し、電流と電圧とを計測しつつ、レベル検出用電極を昇降させ、昇降の過程で、電圧の電流に対する比が不連続に変化するレベル検出用電極の位置を検出することにより、溶融スラグ層および溶融メタル層のレベルを検出するものである。
【0015】
また本願第2発明の灰溶融炉のレベル検出方法は炉底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した主電極と、主電極に隣り合って炉蓋を貫通して昇降可能に挿入したレベル検出用電極とを有し、主電極と炉底電極との間で通電して電気抵抗熱により灰を溶融する灰溶融炉において、炉内に貯留した溶融スラグ層のレベルを検出する灰溶融炉のレベル検出方法であって、レベル検出用電極と主電極との間で通電すべく、定電流回路を有する電源を接続し、電流と電圧とを計測しつつ、起動電極を昇降させ、昇降の過程で、電圧の電流に対する比が不連続に変化する起動電極の位置を検出することにより、溶融スラグ層のレベルを検出するものである。
【0016】
さらに本願第3発明の灰溶融炉のレベル検出装置は炉底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した主電極と、主電極に隣り合って炉蓋を貫通して昇降可能に挿入したレベル検出用電極とを有し、主電極と炉底電極との間で通電して電気抵抗熱により灰を溶融する灰溶融炉において、炉内に貯留した溶融スラグ層およびその下方に貯留した溶融メタル層のレベルを検出する灰溶融炉のレベル検出装置であって、主電極とレベル検出用電極とに定電流回路を有する電源を接続する回路と、該回路内に設けられた電流計および電圧計と、電流計および電圧計の出力から電圧の電流に対する比を計算するV/I演算器と、レベル検出用電極の位置を検出する位置検出器とを有するものである。
【0017】
次に本発明の作用を説明する。レベル検出用電極と炉底電極との間で通電できるように定電流回路を有する電源を接続し、レベル検出用電極を最も高い位置(待機位置)から徐々に降下させる。レベル検出用電極の下端が溶融スラグ層の上面に到達する前には回路は開いた状態なので当然電流Iは0であり、電圧Vは一定値なのでV/Iは無限大(∞)である。レベル検出用電極の下端が、溶融スラグ層の上面に到達すると回路が閉じ、レベル検出用電極と炉底電極との間に電流Iが流れ始め、V/Iは有限の値となり、従って、起動電極のこの位置でV/Iは不連続に変化する。さらにレベル検出用電極を降下させると、レベル検出用電極下端と炉底電極との距離が狭まり、電気抵抗が減少するので、定電流回路が有るため電圧Vが低下し、従ってV/Iも低下する。
【0018】
レベル検出用電極が溶融メタル層上面(溶融スラグ層と溶融メタル層との境界面)に到達すると電気抵抗が極端に減少する。即ち、溶融スラグ層の抵抗率ρ(Ω・cm)はρ=0.1〜0.5であるのに対し、溶融メタル層の抵抗率ρ=10-6〜10-8である。定電流回路があるので、電圧は略0になり、V/Iも0になる。従ってレベル検出用電極のこの位置でもV/Iは不連続に変化する。
【0019】
レベル検出用電極は通常の操業時には最も高い位置で待機しており、消耗しないので、レベル検出用電極昇降装置の起動電極把持部と下端との距離が予めわかっている。従って、レベル検出用電極昇降装置に起動電極の位置検出器を設けておけば、上述のV/Iの不連続点の位置から溶融スラグ層および溶融メタル層のレベルを検出することができる。
【0020】
また、主電極とレベル検出用電極との間で通電できるように定電流回路を有する電源を接続しておけば、同様に溶融スラグ層のレベルを検出することができる。但し、この場合は、溶融メタル層のレベルの検出はできない。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下本発明の1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の灰溶融炉のレベル検出装置の一部断面側面図である。図において1は灰溶融炉である。1aは炉底電極であり、導電性の耐火れんがにより形成されている。1bは炉蓋である。1cは主電極で、炉蓋1bを貫通して昇降可能に挿入されて、下端は溶融スラグ層1e内に没入している。主電極1cの材質は黒鉛である。
【0022】
1dは起動電極であり、主電極1cに隣り合って設けられており、炉蓋1bを貫通して昇降可能に挿入されている。レベル検出用電極1dは図に示すように炉蓋1bに設けられた排気口1hを貫通するように設けるのが好ましい。レベル検出用電極1dは通常操業時には図に実線で示すように下端は排気の邪魔にならない高い位置に待機している。1eは溶融スラグ層、1fは溶融メタル層、1kは未溶融の灰が浮いた状態の灰カバー層、1iは溶融スラグの排出口、1jは溶融メタルの排出口である。これらの排出口1i,1jは運転中は耐火マッドにより閉塞されている。
【0023】
2は定電流回路を内蔵する電源であり、配線9により主電極1c、レベル検出用電極1d、炉底電極1aにそれぞれ接続されている。電源2は直流電源であり、主電極1cが陽極、炉底電極1aが陰極になるように接続する。なお、電源は直流に限らず交流でもよい。
【0024】
3は主電極昇降装置である。ガイドパイプ3aに外嵌された電極把持部3bが、ウインチ3cによりロープ3dを介して昇降するようになっている。3eはガイドパイプ3aの上端に設けたプーリである。4はレベル検出用電極昇降装置であり、構造は主電極昇降装置3とほぼ同じである。
【0025】
5は電流計であり、主電極用5aとレベル検出用電極用5bとからなる。6は電圧計である。7はレベル検出用電極の位置検出装置であり、ウインチ4cの回転数を検出するロータリエンコーダを使用する。8はスイッチ、9は電線である。
【0026】
10は電流計5bおよび電圧計6の出力をそれぞれ入力し、電圧Vの電流Iに対する比(V/I)を演算するV/I演算器である。11はレベル検出用電極1dの位置信号7aとV/I演算器10の出力信号10aとを入力し、横軸にレベル検出用電極1dの位置、縦軸にV/Iの値をそれぞれ取り、その間の関係を表示器に表示するべく信号11aを発信するレベル検出器である。
【0027】
次に溶融スラグ層1eおよび溶融メタル層1fのレベルの検出方法について説明する。レベル検出用電極1dと炉底電極1aとの間で通電することができるように電気回路を設定する。即ち、スイッチ8aおよびスイッチ8cは開とし、スイッチ8dおよびスイッチ8bは閉とする。レベル検出用電極1dが図の実線の位置、即ち、最上位にある状態では電流計5bには電流は流れていない。レベル検出用電極1dを下降させ、下端が溶融スラグ層1eの上面のレベルまで達すると、電流計5bに電流が流れ始める。即ちV/Iは無限大から有限の値に不連続に変化する。
【0028】
さらにレベル検出用電極1dを下降させ、下端が溶融メタル層1fに到達すると電気抵抗が極端に低下するので、電源2の定電流回路の働きにより、電圧は0になり従ってV/Iも0になる。即ちV/Iは不連続に変化する。以上の説明をグラフ化したのが図3であり、縦軸にV/I、横軸にレベル検出用電極の位置Xを取って示している。横軸Xはレベル検出用電極の最も高い位置をX0 とし、溶融スラグ層上面L1 の位置をX1 、溶融メタル層上面L2 の位置をX2 として示している。
【0029】
次に主電極1cとレベル検出用電極1dとの間で通電するように回路を設定して、溶融スラグ層1eの上面L1 の位置X1 を検出する方法について説明する。スイッチ8aおよびスイッチ8cを閉じ、スイッチ8bおよびスイッチ8dは開とする。この状態でレベル検出用電極1dを位置X0 から下降させる。下端が位置X1 に到達すると主電極1cとレベル検出用電極1dとの間に電流が流れ始める。これを図3(B)に示す。
【0030】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。先に、本願出願人が行った特許出願(特願平8−142630号(未公開))に示されている起動電極をレベル検出用電極として使用出来ることは勿論のことである。
【0031】
【発明の効果】
本発明は以上説明したようにレベル検出用電極を昇降する際下端の位置が溶融スラグ層上面の位置および溶融メタル層上面の位置に到達したとき、V/Iの値が不連続に変化することに着目し、それにより溶融スラグ層上面の位置および溶融メタル層上面の位置を正確に検出することができる。従って溶融スラグや溶融メタルの出滓のタイミングを適正に決定できるし、溶融スラグを連続出滓している場合であっても、適正なスラグレベルで操業が行われているか否かを正確に知ることができる、などの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の灰溶融炉のレベル検出装置の一部断面側面図である。
【図2】従来の灰溶融炉の断面図である。
【図3】V/Iとレベルとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 灰溶融炉
1a 炉底電極
1b 炉蓋
1c 主電極
1d レベル検出用電極
1e 溶融スラグ層
1f 溶融メタル層
2 電源
5 電流計
6 電圧計
7 レベル検出用電極の位置検出器
10 V/I演算器
11 レベル検出器
Claims (3)
- 炉底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した主電極と、主電極に隣り合って炉蓋を貫通して昇降可能に挿入したレベル検出用電極とを有し、主電極と炉底電極との間で通電して電気抵抗熱により灰を溶融する灰溶融炉において、炉内に貯留した溶融スラグ層およびその下方に貯留した溶融メタル層のレベルを検出する灰溶融炉のレベル検出方法であって、レベル検出用電極と炉底電極との間で通電すべく、定電流回路を有する電源を接続し、電流と電圧とを計測しつつ、レベル検出用電極を昇降させ、昇降の過程で、電圧の電流に対する比が不連続に変化するレベル検出用電極の位置を検出することにより、溶融スラグ層および溶融メタル層のレベルを検出することを特徴とする灰溶融炉のレベル検出方法。
- 炉底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した主電極と、主電極に隣り合って炉蓋を貫通して昇降可能に挿入したレベル検出用電極とを有し、主電極と炉底電極との間で通電して電気抵抗熱により灰を溶融する灰溶融炉において、炉内に貯留した溶融スラグ層のレベルを検出する灰溶融炉のレベル検出方法であって、レベル検出用電極と主電極との間で通電すべく、定電流回路を有する電源を接続し、電流と電圧とを計測しつつ、レベル検出用電極を昇降させ、昇降の過程で、電圧の電流に対する比が不連続に変化するレベル検出用電極の位置を検出することにより、溶融スラグ層のレベルを検出することを特徴とする灰溶融炉のレベル検出方法。
- 炉底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通して昇降可能に挿入した主電極と、主電極に隣り合って炉蓋を貫通して昇降可能に挿入したレベル検出用電極とを有し、主電極と炉底電極との間で通電して電気抵抗熱により灰を溶融する灰溶融炉において、炉内に貯留した溶融スラグ層およびその下方に貯留した溶融メタル層のレベルを検出する灰溶融炉のレベル検出装置であって、主電極とレベル検出用電極とに定電流回路を有する電源を接続する回路と、該回路内に設けられた電流計および電圧計と、電流計および電圧計の出力から電圧の電流に対する比を計算するV/I演算器と、レベル検出用電極の位置を検出する位置検出器とを有することを特徴とする灰溶融炉のレベル検出装置。
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