JP3534679B2 - プラズマアーク式灰溶融炉 - Google Patents

プラズマアーク式灰溶融炉

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマアーク式
灰溶融炉およびその起動方法に関し、さらに詳しくは、
下水汚泥、都市ごみ及び産業廃棄物などの焼却灰及び事
業用火力発電プラント等の燃焼炉から排出される焼却灰
を、電気プラズマにより溶融するプラズマアーク式溶融
炉およびその起動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、下水汚泥、都市ごみ及び産業
廃棄物などの焼却灰(粉体無機物)は、その資源化、減
容化及び無害化を図るために、例えば、図4に示すよう
なプラズマアーク式灰溶融炉11によって溶融され、ス
ラグとして取り出されている。このような溶融炉11を
使用して炉本体内で焼却灰を溶融するには、ごみ焼却炉
から排出された焼却灰を乾式灰出装置よりスクリーン、
磁選器、焼却灰サイロ、計量器及び灰供給コンベヤ等の
前処理系を経て、灰供給ホッパー12から炉本体内に投
入し、投入された焼却灰を高温プラズマ20で溶融す
る。この際、上記焼却炉から排出される焼却灰には、同
様に焼却炉から排出される飛灰を、飛灰サイロや計量器
を経て混合し、灰供給コンベアから供給する。
【0003】溶融炉11内で発生した溶融スラグ21
は、出滓口23から出滓樋24を通って乾式又は湿式出
滓装置に排出され、スラグコンベヤを介してスラグ排出
系に導かれ、種々の利用に供される。炉本体11の上下
部には、直流電源装置13に接続されるプラズマ電極の
主電極18及び炉底電極3が配設され、炉本体の上部に
は窒素ガス発生装置から窒素ガスが送給されるようにな
っている。また、プラズマアーク式溶融炉11の炉本体
は、主に耐火物16とその外側を覆う水冷ジャケット
(冷却構造15)の鉄皮とによって構成されている。な
お、通常、溶融炉本体11内で発生した排ガスは出滓口
カバー26で覆われる二次燃焼室を経て、バグフィル
タ、湿式洗煙塔および煙突等からなる排ガス処理系に導
かれようになっている。そして、二次燃焼室には燃焼空
気ファンより空気が送給され、バグフィルタは溶融飛灰
処理装置等に接続されている。
【0004】ところで、溶融炉内においては、投入され
た灰が溶融してスラグ層21になっていくと同時に、通
常、溶融処理している間に、メタル層22がスラグ層2
1の下に積層されていく。よって、溶融処理運転中にお
いては、メタル層の上に溶融したスラグ層が積層した状
態であり、この溶融状態のスラグ層を介して電極間に電
流が生じている。ここで、スラグの導電率を比抵抗で表
わすと、1000℃では60Ω・mであり、1200℃
では3.0Ω・mであり、1450℃では0.5Ω・m
である。
【0005】一方、新しい炉を運転する場合のように炉
内に灰が投入される前の状態、あるいは、耐火物からな
る炉自体を解体して再構築したような状態では、溶融炉
内に炉底メタルおよびスラグ層が存在していない。この
ような溶融炉の起動(立ち上げ)に際しては、主電極
(−)と炉底電極(+)とを直接接触させてプラズマア
ークを発生させることも考えられるが、直接接触による
と炉底電極に高熱が発生してしまうので電極の消耗が激
しいという欠点がある。そこで通常、主電極(−)と炉
底電極(+)との間(炉底電極上)に起動鉄板を敷い
て、炉底電極等を保護してからプラズマアークを発生さ
せていた。しかしながら、炉底メタルのない場合の起動
に際しては、炉底電極の発熱量が増大するため、電極が
急激に消耗してしまう問題点があった。
【0006】他方、例えば3〜6ヶ月間の長期間の運転
により、炉内に溶融メタルが溜まっている状態で、溶融
炉の一時的な運転停止を行った場合、炉底メタルおよび
スラグ層のある状態で炉の再起動を行う。この場合には
導電率の極めて低い固体のスラグ層が存在するので、そ
のままの状態から再起動させることは難しい。したがっ
て、例えば起動電極(+)を用いて主電極との間で電気
を誘発させて、そこで発生する熱によりスラグ層を融解
させる方法がある。この場合、スラグ層の融解によって
導電率が高くなり、スラグ層下部のメタル層および炉底
電極にまで電気が通るような状態になったら、起動電極
(+)を引き抜く。このような溶融炉の立ち上げに際し
ては、図2のように主電極(−)近傍に起動電極(+)
を配置してスラグ上には起動鉄板7を敷き、起動鉄板7
下のスラグを溶かす方法、又は、図3のようにスラグ上
で主電極(−)と起動電極(+)とを直接接触させる方
法が挙げられる。
【0007】しかしながら、図3のように起動電極を主
電極と直接接触させる場合、輻射熱によってスラグを溶
融するために、立ち上げに時間がかかるとともに、電極
同士が融着してしまう危険性があった。また、スラグ層
レベルが変動した際には、電極同士が接触できないこと
が起こり得る。さらに、電極同士が直接接触する点以外
でも、近接した箇所ではアークが発生してしまうことが
あり、接触部下部のスラグ層に熱を伝えにくい欠点があ
った。また、図2のように起動鉄板を設置する方法によ
れば、主電極と起動電極との間での直接アークは発生し
ないものの、スラグ層が平坦でないと、鉄板を適切に設
置できず、不安定になり易い問題があった。運転を停止
した段階では、波打った状態などになっている場合が多
く、スラグ層は平坦に均一にはなり難いからである。こ
れにより鉄板を設置するには、例えばスラグ上を手作業
等で整地する工程が必要であるなどの不都合があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記問
題点に鑑み、炉底電極等の電極の長寿命化を図るととも
に、起動電極を用いた工程や作業者の手作業を必要とせ
ず、より確実に起動が可能であり起動時間のかからない
プラズマアーク式灰溶融炉を開発すべく、鋭意検討し
た。その結果、本発明者らは、メタル材を用いる特定の
配置を採用して灰溶融炉を起動させることによって、上
記問題点が解決されることを見い出した。本発明は、か
かる見地より完成されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、炉
底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通して設けた主電極
と、を有し、前記炉底電極および前記主電極の間に通電
して、灰を溶融するプラズマアーク式灰溶融炉におい
て、炉底電極上の炉底にメタル材を配置し、かつ、該メ
タル材上であって主電極の直下を除く下方周囲にスラグ
を配置し、プラズマアークによる灰溶融処理を起動させ
ることを特徴とするプラズマアーク式灰溶融炉を提供す
るものである。ここで、前記メタル材は、例えばブロッ
ク状に形成されたメタルブロックであり、該メタルブロ
ックのすき間がメタル切り屑で埋められていることが好
適である。また、メタル材は、融点の低い鋳鉄であるこ
とが好ましい。前記主電極の先端は、鋭角に削られてい
ることが電流密度を高める観点からは望ましい。
【0010】また、本発明は、炉底電極および主電極を
有するプラズマアーク式灰溶融炉の起動方法において、
炉底電極上の炉底にメタル材を敷き詰め、かつ、該メタ
ル材のさらに上には、スラグを主電極の直下を除く下方
周囲に配置した後、炉底電極と主電極との間に通電し
て、電気抵抗熱により灰を溶融するプラズマアーク式灰
溶融炉の起動方法を提供するものである。さらに、本発
明では、炉底電極および主電極を有するとともに、該炉
底電極の上にメタル層およびスラグ層が順に形成されて
いるプラズマアーク式灰溶融炉の起動方法において、炉
内への灰供給停止直前に灰中に金属を含ませ、該金属を
含ませた灰を炉底に積層させて、起動時に、灰中の金属
を介して炉底電極と主電極との間を通電して、電気抵抗
熱により灰を溶融する起動方法をも提供するものであ
る。
【0011】本発明の灰溶融炉および起動方法を用いれ
ば、炉底電極や主電極の長寿命化を図ることができ、電
極交換やメンテナンス等の負担が軽減する。また、起動
電極との予備的な加熱工程や、起動鉄板を配置する作業
者の手作業等を必要とせず、より安全で確実な溶融炉の
起動が可能である。さらに、起動に要する時間も短縮す
るので、溶融炉の運転効率も著しく向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示した実施の形
態に基づいて詳細に説明する。本実施の形態のプラズマ
アーク式溶融炉の全体は、図4に示す如く、有底円筒状
に形成された炉本体11を有しており、該炉本体2下部
側面には、溶融されたスラグ及び排ガスを抜き出す出滓
口23が設けられている。また、炉本体11の上部に
は、直流電源装置に接続されるプラズマ電極の主電極が
内部に垂下して配設されていると共に、主電極には窒素
ガス発生装置から窒素ガスが送給されるように構成され
ており、投入された廃棄物の焼却灰を高温プラズマ20
で加熱して溶融するようになっている。
【0013】上記溶融炉11は、耐火物16と、耐火物
の外側を覆う冷却ジャケットによる冷却構造15とによ
って構成されている。溶融炉2内の内壁面を構成する耐
火物には、SiC系レンガおよびカーボン系レンガ等の
非酸化物系レンガが広く用いられる。また、溶融炉11
の上部に設置される炉蓋の中央には、主電極の貫通部
(貫通孔)が穿設されており、通常、貫通部には絶縁ス
リーブ及びシールガス(窒素ガス)の吹き込みノズル
(風箱)が設けられている。付随する出滓樋24から
は、スラグを排出する場合にはオーバーフローして順次
排出される。
【0014】図1は、本発明の一実施の形態に係る灰溶
融炉の下部構造を示す図である。本発明では、炉底メタ
ルおよびスラグ層がない溶融炉内に、固体であるメタル
材5が炉底に置かれる。通常、メタル材5は炉底全体に
敷き詰められる。メタル材としては、導電率が高くて、
融点が低いメタル材料が用いられ、例えば融点の低い鋳
鉄が好適である。メタル材5の形状については特に限定
されるものではなく、炉底の略全体を覆うことが出来る
ものであれば使用できる。具体的には、例えば図1のよ
うに、ブロック状に形成されたメタルブロックを置い
て、該メタルブロックのすき間をメタル切り屑で埋める
態様が好適に挙げられる。
【0015】上記メタル材5の上には、塊状のスラグが
主電極の直下を除く箇所、下方周囲に配置される。具体
的には、例えば図1に示すようにスラグと破砕された小
ブロックとを敷き詰めることができる。一般に、メタル
材5と主電極2との間でアークが発生して運転が開始さ
れると、当初は安定しない状態が継続する。そこに灰が
投入されると、炉内温度が低下して灰は不安定なまま、
溶融炉の中を飛散するような状態になり易い。そこで、
本発明のようにスラグ4をメタル上に設置すると、この
スラグ4は温度の上昇とともに融解していき、安定した
スラグ層が形成される。そこに、灰が投入されるとスラ
グ層と融和して安定した灰処理が可能となるのである。
また、固体のスラグは溶融前には電気を通しにくいの
で、主電極(−)2の下方の直下ではスラグを除いてお
き、その周囲のメタル上にスラグを敷いて、メタルへの
アークが発生しやすいような状態にしておく。このよう
にスラグを配置することにより、必要とされる熱容量を
確保することができ、灰投入したときの炉内温度の変化
を小さくすることができる。
【0016】本発明の溶融炉に用いられる主電極は、図
1に示すようにその先端は鋭く加工して、鋭角に削られ
ていることが好ましく、これによって電流密度を高くす
ることができる。このような図1に示す下部構造におい
て、溶融炉を起動した場合には、当初は主電極2とメタ
ル材5との間でプラズマアークが発生し、その後に周囲
の温度が上昇して主電極2下方周囲のスラグ4が融解し
始める。投入される灰は、この融解したスラグ層に溶け
て処理が行われることになる。
【0017】本発明の灰溶融炉の起動方法では、炉底電
極3上の炉底にメタル材5を敷き詰め、かつ、該メタル
材5のさらに上には、スラグ4を主電極の下方周囲に配
置した後、炉底電極3と主電極2との間に通電して、電
気抵抗熱により灰を溶融する。この際、メタル材5およ
びスラグ4を配置した後、バーナー等の加熱装置によっ
て溶融炉1内部を加熱しておくことが好ましい。その
後、電極間に電流を流して、プラズマアークを発生させ
る。また、炉底電極3の上にメタル層(メタル材)およ
びスラグ層が順に形成されている灰溶融炉の起動方法に
おいては、炉内への灰供給停止直前に灰中に金属を含ま
せ、この金属を含ませた灰を炉底に積層させて、起動時
に、灰中の金属を介して炉底電極と主電極との間を通電
して、電気抵抗熱により灰を溶融することもできる。こ
の場合には、上記金属は図4に示す灰ホッパ12におい
て投入することができる。投入する金属としては、鉄や
銅などが挙げられる。
【0018】以上、本発明の実施の形態につき述べた
が、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではな
く、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変
形及び変更を加え得るものである。
【0019】
【発明の効果】本発明のプラズマアーク式灰溶融炉によ
れば、炉底電極や主電極の長寿命化を図ることができ、
電極交換やメンテナンス等の負担が軽減する。また、メ
タル層がスラグに覆われている場合のように起動電極を
必要とせず、一方、起動鉄板の設置のような作業者の手
作業を必要とせず、より安全で確実な溶融炉の起動が可
能となる。さらに、起動に要する時間も短縮するので、
溶融炉の運転効率も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラズマアーク式灰溶融炉の下部
構造の一例を示した図である。
【図2】従来の起動電極を用いた場合の溶融炉下部構造
の一例を示した図である。
【図3】従来の起動電極を用いた場合の溶融炉下部構造
の他の例を示した図である。
【図4】プラズマアーク式灰溶融炉およびそれに付随す
るシステムの概略を示す構成図である。
【符号の説明】
1、11 溶融炉 2、18 主電極(−) 3 炉底電極(+) 4 スラグ 5 メタル材 6 起動電極(+) 7 起動鉄板 8 メタル層 9、16 耐火物 12 灰ホッパ 13 電源 14 灰投入口 15 冷却構造 17 スリーブ 20 プラズマアーク 21 溶融スラグ 22 溶融メタル 23 出滓口 24 出滓樋 26 出滓口カバー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−72519(JP,A) 特開 平10−253266(JP,A) 特開 平11−237025(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F23J 1/00 F27B 3/08 F27D 11/08

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炉底に設けた炉底電極と、炉蓋を貫通し
    て設けた主電極と、を有し、前記炉底電極および前記主
    電極の間に通電して、灰を溶融するプラズマアーク式灰
    溶融炉において、炉底電極上の炉底にメタル材を配置
    し、かつ、該メタル材上であって主電極の下方周囲にス
    ラグを配置し、プラズマアークによる灰溶融処理を起動
    させることを特徴とするプラズマアーク式灰溶融炉。
  2. 【請求項2】 前記メタル材が、ブロック状に形成され
    たメタルブロックであり、該メタルブロックのすき間が
    メタル切り屑で埋められていることを特徴とする請求項
    1記載のプラズマアーク式灰溶融炉。
  3. 【請求項3】 前記メタル材が、融点の低い鋳鉄である
    ことを特徴とする請求項1記載のプラズマアーク式灰溶
    融炉。
  4. 【請求項4】 前記主電極の先端が、鋭角に削られてい
    ることを特徴とする請求項1記載のプラズマアーク式灰
    溶融炉。
  5. 【請求項5】 炉底電極および主電極を有するプラズマ
    アーク式灰溶融炉の起動方法において、炉底電極上の炉
    底にメタル材を敷き詰め、かつ、該メタル材のさらに上
    には、スラグを主電極の下方周囲に配置した後、炉底電
    極と主電極との間に通電して、灰を溶融するプラズマア
    ーク式灰溶融炉の起動方法。
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