JP3583445B2 - 水性塗料用樹脂組成物及び塗料 - Google Patents

水性塗料用樹脂組成物及び塗料 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は耐熱水性、加工性に優れた熱硬化性の水性塗料用樹脂組成物及び塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル樹脂あるいはアクリル樹脂とアミノ樹脂を組み合わせて得られる熱硬化性水性樹脂塗料は、塗装時の有機溶剤の揮散を低減できるため省資源、低公害の塗料として、缶、自動車、家電製品等の塗装分野で注目されている。
ポリエステル樹脂は、顔料分散性、加工性が優れており、一方アクリル樹脂は硬度、耐薬品性、耐汚染性、耐候性に優れている。特開平1−129072号公報には、水酸基を含むポリエステル樹脂と酸および水酸基を含むアクリル樹脂とを別々に合成した後に混合し180〜280℃の高温でエステル化あるいはエステル交換反応により反応させてポリエステル−アクリル樹脂を得ている。この樹脂は、ポリエステル、アクリル、両者の特徴を併せ持っていると述べられている。しかしながら両者を別々に合成した後混合反応させる3段合成法であり、混合反応は高温が必要であり、また、反応の制御が難しく、部分ゲルやゲル化が生じ易い。
特開平3−72577号公報には、水性塗料組成物として酸モノマー、水酸基含有モノマー、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドを含む水性アクリル樹脂が見い出される。この塗料組成物は、120℃以上の耐熱水性が優れているが、加工性については不十分である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題点を解決するものであり、アクリル樹脂の耐水性、ポリエステル樹脂の加工性を併せ持ち、しかも両者の欠点の影響をうけることがなく、その上容易に製造できる塗料用樹脂組成物及び塗料を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) 不飽和ジカルボン酸を酸成分として使用して得られるポリエステル樹脂10〜80重量%の存在下に、
(2) α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸 1〜15重量%、
(3) 水酸基を有するα,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシ
アルキルエステル 5〜25重量%、
(4) 炭素数4以下のアルキル基を有するN−アルコキシメチル(メタ)アク
リルアミド 0〜25重量%、
(5) その他の共重合可能な不飽和単量体 5〜70重量%
を(1)〜(5)の合計が100重量部となるように配合し、重合させた後、塩基により中和して得られる樹脂を含有してなる水性塗料用樹脂組成物及びこれを用いてなる塗料に関する。
【0005】
本発明におけるポリエステル樹脂(1)は、酸成分として不飽和ジカルボン酸を必須成分とし、その他、多塩基酸、多価アルコール等を配合し反応させて得られる。
不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等があげられ、これらの一種以上を全原料成分に対して0.5〜10重量%使用するのが好ましい。0.5重量%未満ではアクリルとのグラフト化反応が充分で無く樹脂が濁り易い。一方、10重量%を越えるとグラフト反応が進みすぎ、ゲル化し易い。
【0006】
多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の二塩基酸、トリメリット酸等の三塩基酸の一種以上が使用できる。必要によっては、安息香酸、p−ターシャリブチル安息香酸等の一塩基酸も使用できる。
【0007】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,2′−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等あるいはジメチロールプロピオン酸等を一種以上使用することができる。
更に必要に応じて、バーサチック酸のグリシジルエステル、あるいは、大豆油、アマニ油、サフラワー油、脱水ヒマシ油、ヤシ油等の油及びその脂肪酸を用いることができる。
【0008】
かかるポリエステル樹脂は、前記の酸成分、アルコール成分を公知の方法によりエステル化反応させて得られる。得られるポリエステル樹脂の数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で500〜10,000が好ましい。
【0009】
本発明におけるα,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸(2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などがあり、これは(1)〜(5)の合計に対し、1〜15重量%使用する。1重量%未満では、水性化が困難であり、一方、15重量%を越えると塗膜の耐水性が劣る。
【0010】
水酸基を有するα,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシエステル(3)としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタアクリレートを意味する)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等があり、これは(1)〜(5)の合計に対し、5〜25重量%使用する。5重量%未満では、架橋密度が低く、耐薬品性、対汚染性、硬度、耐水性が劣る。一方、25重量%を越えると架橋密度が高くなり、加工性が劣る。
【0011】
炭素数4以下のアルキル基を有するN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド((メタ)アクリルアミドとはアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する)(4)としては、N−メトキシメチルアクリル(メタ)アミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルメチル(メタ)アクリルアミドがあり、これは(1)〜(5)の合計に対し、0〜25重量%使用する。好ましくは、これを必須成分とするのがよく、その場合2重量%以上が好ましい。25重量%を越えると架橋密度が高くなり、加工性が劣る。一方、2重量%未満では、耐水性が劣る傾向にある。
【0012】
その他の共重合可能な不飽和単量体(5)としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル等があり、これらの一種以上を、(1)〜(5)の合計に対し、5〜70重量%使用する。この範囲外では加工性又は耐水性が劣る。
【0013】
本発明においてポリエステル樹脂(1)の存在下での(2)〜(5)の重合は、例えば重合触媒を用いて約80〜150℃の温度で溶液重合することによって得ることができる。重合触媒としては、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、キュメンパーオキサイド等のパーオキサイド、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾビス系化合物などがある。溶液重合に用いる溶媒としては、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノールなどがある。
【0014】
このようにして得られた樹脂は、次いでアンモニウム、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアミンで中和し、その後、水を加え水溶性あるいは水分散型の水性塗料用樹脂組成物とすることができる。このとき、樹脂組成物のpHを7〜9程度になるようにアミン量を調整するのが好ましい。
【0015】
本発明により得られる水性塗料用樹脂組成物は、アミノ樹脂を硬化剤として、熱硬化性塗料として用いることができる。アミノ樹脂としては、メチル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂、メチル化ベンゾグアナミン樹脂等のアルキル化ベンゾグアナミン樹脂、メチル化スピログアナミン樹脂等がある。
また、必要に応じて、他のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。
【0016】
また、顔料として二酸化チタン、カーボンブラック、沈降性硫酸バリウム等の顔料が使用できる。さらに必要に応じて、分散剤、消泡剤、レベリング剤、硬化触媒等の添加剤を使用できる。
本発明の水性塗料用樹脂組成物及び塗料は、ロールコート、スプレー等の公知の手段により、金属、プラスチツク、木などに塗装できる。
【0017】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明する。
ポリエステル樹脂の製造例
撹拌機、温度計、還流脱水装置及び不活性ガス導入管のついたフラスコにバーサチツク酸のグリシジルエステル50重量部、トリメチロールプロパン39重量部、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール281重量部、ヘキサンジオール200重量部、イソフタル酸520重量部、無水マレイン酸15重量部を仕込み220℃に昇温し、酸価25まで縮合を進め、数平均分子量(GPC法)1,100のポリエステル樹脂を得た。
【0018】
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却器、不活性ガス導入管のついたフラスコに、前記ポリエステル樹脂30重量部、3−メチル3−メトキシブタノール45重量部を仕込み、110℃に昇温した。これにスチレン20重量部、ブチルアクリレート23重量部、N−ブトキシメチルアクリルアミド10重量部、β−ヒドロキシエチルアクリレート10重量部、アクリル酸7.0重量部、アゾビスイソブチロニトリル1.1重量部、過酸化ベンゾイル4.5重量部の溶液を3時間かけて滴下し、さらに2時間保温し反応を終了させた。冷却後トリエチルアミン9.0重量部、水101重量部を加えて中和し、固形分40重量%の透明な水性樹脂1を得た。
【0019】
実施例2、比較例1〜5
実施例1に準じて、表1に示したモノマ組成にて実施例2及び比較例1〜5を得た。なお、比較例3の場合、トリエチルアミンは25重量部使用した。
【0020】
メチルエーテル化アミノ樹脂の製造例
撹拌機、還流冷却器及び温度計の付いたフラスコに80%パラホルムアルデヒド187.5g、メタノール480.0g及び50%水酸化ナトリウム水溶液0.3gを入れ、40℃でパラホルムアルデヒドを溶解させた後、ベンゾグアナミン130.9g及びメラミン37.8gを加え、60℃で3時間付加反応を行った。その後、62%硝酸を1.3g加え、酸性条件下で60℃で2時間30分反応させた。反応終了後、再び50%水酸化ナトリウム水溶液1.5gを加え、反応液をアルカリ性にして、減圧下(50torr)で濃縮した。終点は、フラスコ内温度が130℃に達した時であった。終点と同時にブチルセロソルブ130gを加え、加熱残分が70重量%になるように調整した。生成メチルエーテル化アミノ樹脂の量は、約430gであり、粘度はガードナー粘度でZであった。
【0021】
塗料の製造
次に実施例1〜2、比較例2〜5の各水性樹脂175重量部に上記メチルエーテル化アミノ樹脂42.9重量部を加え、これに水を加えて固形分35重量%に調整した。ブリキ板上に乾燥膜厚7μmになるよう塗布し、180℃10分間焼付けた。塗膜試験の結果を表1の下段に示した。
【0022】
塗膜試験方法
・耐水性試験
塗装パネルを水中に浸漬し、125℃、30分間の熱処理を行った後塗膜の状態を観察した。
〇:異常なし。
△:白化又はブリスタが少し発生。
×:白化又はブリスタが著しく発生。
・加工性試験−エリクセン試験
JIS−K5400に準じて試験した。
・鉛筆硬度
JIS−K5400鉛筆引っかき試験法に準じて行った。
・耐酸性
1N酢酸溶液中に40℃4時間浸漬後、塗膜の状態を観察した。
〇:異常なし。
△:白化又はふくれが少し発生。
×:白化又はふくれが著しい。
・マジック汚染性
マジツクインキ赤で染め、24時間放置後、ブタノールで拭きとり、汚染跡を観察した。
〇:跡が残らない。
△:跡が少し残る。
×:跡が著しく残る。
【0023】
【表1】
Figure 0003583445
【0024】
実施例、比較例から明らかなように、実施例1〜2は、耐水性、加工性、鉛筆硬度、耐酸性及び汚染性に優れる。
比較例1は特開平3−72577号公報に準じた水性アクリル樹脂であるが、加工性に劣る。比較例2はアクリル樹脂成分が少ない場合であるが、加工性以外の耐水性、鉛筆硬度、耐酸性、マジック汚染性が劣る。比較例3、4、5では、各々、酸モノマ、水酸基モノマ、ブトキシメチルアクリルアミドが過剰に入った場合であるが、鉛筆硬度、汚染性以外は充分な特性が得られない。
【0025】
【発明の効果】
本発明の水性塗料用樹脂組成物及び塗料は、塗膜の耐水性、加工性、硬度、耐酸性、汚染性等において優れる。

Claims (2)

  1. (1) 不飽和ジカルボン酸を酸性分として使用して得られ
    るポリエステル樹脂30〜80重量%の存在下に、
    (2) α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸 1〜15重量%、
    (3) 水酸基を有するα,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシ
    アルキルエステル 5〜25重量%、
    (4) 炭素数4以下のアルキル基を有するN−アルコキシメチル(メタ)アク
    リルアミド 〜25重量%、
    (5) その他の共重合可能な不飽和単量体 5〜70重量%
    を(1)〜(5)の合計が100重量%となるように配合し、重合させた後、塩基により中和して得られる樹脂を含有してなる水性塗料用樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物と、硬化剤としてアミノ樹脂を組み合わせてなる塗料。
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