JP3581744B2 - 架橋ポリオレフィン管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は架橋ポリオレフィン管に関し、更に詳しくは、給水・給湯用の配管として、好適に使用しうる架橋ポリオレフィン管に関する。
【0002】
【従来の技術】
水道水の給水・給湯管としては、銅管、亜鉛メッキ鋼管、ステンレス鋼管などの金属管が使用されてきたが、これらの金属管は錆による青水、赤水等の着色水や漏水が生じ易い上、施工性が悪いという欠点があるため、近年ではポリオレフィン管が使用されつつある。また、給水・給湯管用途には高温時の高強度性、耐クリープ性が求められているため、これらの特性が優れている架橋ポリオレフィン管を用いることが主流となっている。
【0003】
これらの管の内部を流れる水道水には殺菌のため塩素が含有されているが、この塩素は酸化剤となって働いて、管の化学劣化を引き起こす原因となっている。特に高温高圧負荷を受ける給湯設備の配管では、劣化が促進される傾向がある。このような塩素による劣化を防ぐために、ポリオレフィン樹脂に酸化防止剤または安定剤を添加して製造した架橋ポリオレフィン管が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、使用する酸化防止剤または安定剤の種類によっては、一部もしくはかなりの部分が、内部を通水する水または熱水に抽出されてしまうために、管の化学劣化の防止機能が低下し、管の破壊が早まるという問題を引き起こすことがある。
【0005】
本発明は、給水・給湯管における上記した問題を解決し、給湯設備の配管として好適に使用することができる架橋ポリオレフィン管の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、種々の酸化防止剤または安定剤を配合した架橋ポリオレフィン管をそれぞれ熱水に浸漬し、熱水浸漬前後に酸化劣化に要する時間を測定したところ、酸化防止剤または安定剤の種類によって、熱水抽出前後で酸化劣化に要する時間に大きな差があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明においては、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、ビタミンE0.05〜1重量部を含有する樹脂組成物を架橋してなることを特徴とする架橋ポリオレフィン管を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において管のベース樹脂として用いられるポリオレフィンは、管の材料として用いられるポリオレフィンであれば何であってもよく格別限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−プロピレン二元共重合体、塩素化ポリエチレンなどをあげることが出来る。
【0009】
本発明においては、上記のポリオレフィンにビタミンEが必須成分として含有されている。用いられるビタミンEとしては、α,β,γ,δの各種トコフェロール、またはこれらの塩酸塩、酢酸塩、リン酸塩などの各種の塩、およびこれらの混合物が挙げられるが、中でも特に効果が高いのはα−トコフェロールおよびその誘導体である。
【0010】
ビタミンEの配合量は、ポリオレフィン100重量部に対して0.05〜1重量部が適当である。0.05重量部未満であるとビタミンE配合の効果が不十分となり、過剰に配合してもブリードアウトしてしまい意味がない。
【0011】
このビタミンEは、発明者らの鋭意研究の結果、未架橋ポリオレフィンに配合される場合よりも、架橋ポリオレフィンに配合される場合の方が格段に耐熱水抽出性が高いことが知見された。これが何に起因するものかは定かではないが、おそらく、架橋の際にビタミンEがポリオレフィンと何らかの反応を起こし、抽出されにくくなっているものと思われる。
【0012】
本発明の架橋ポリオレフィン管は、一般的な架橋法により架橋されて製造される。すなわち、ポリオレフィンにビタミンE、シラン化合物、有機過酸化物および、シラノール縮合触媒を配合した樹脂組成物を水分の存在下で架橋するシラン架橋法、またはポリオレフィンにビタミンE、有機過酸化物を配合した樹脂組成物を加熱架橋する方法などによって、架橋されて製造される。
【0013】
シラン架橋法に用いられるシラン化合物としては、シラン架橋し得るものであれば何であってもよく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(ベータ−メトキシエトキシ)シランなどをあげることが出来る。
【0014】
このシラン化合物は後述する有機過酸化物の作用により発生したポリオレフィン内のラジカルとグラフト重合して、そのポリオレフィンに結合する成分である。
【0015】
このシラン化合物の配合量は、ポリオレフィン100重量部に対し、0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜5重量部が適当である。
【0016】
有機過酸化物としては、シラン架橋に用いられるものであれば何であってもよく、例えば、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルペルオキシド、4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)パレリック酸−n−ブチルエステル、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびジ−t−ブチルペルオキシドなどをあげることができる。
【0017】
この有機過酸化物の配合量は、ポリオレフィン100重量部に対し0.01〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部である。
【0018】
またシラノール縮合触媒としてはシラン化合物の架橋に用いられるものであれば何であってもよく、例えば、ジブチルすずジラウレート、酢酸第一すず、オクタン酸第一すず、ナフテン酸鉛、カプリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン鉄、ナフテン酸コバルトのようなカルボン酸塩;チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジイソプロピルチタネートのようなチタン酸エステルをあげることができる。
【0019】
このシラノール縮合触媒の配合量は、ポリオレフィン100重量部に対し、0.005〜5重量部に設定される。さらに好ましい配合量は、ポリオレフィン100重量部に対し0.005〜0.5重量部である。
【0020】
有機過酸化物を配合した樹脂組成物を加熱して架橋する方法で使用される有機過酸化物の配合量は、それ自体の発生ラジカルでポリオレフィンの架橋を進めるということからして、シラン架橋法における配合量よりも多くなる。すなわち、ポリオレフィン100重量部に対し、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0021】
いずれの架橋法による場合でも、以上の成分の他に公知の着色剤、充填剤、他の安定剤等の添加物が適量配合されていても良い。
【0022】
シラン架橋法により本発明の架橋ポリオレフィン管を製造する場合は、まず上記した各成分の混合物を調整し、その混合物を、配合されている有機過酸化物の分解温度以上の温度で管状に押出成形し、その後、水分の存在下で架橋処理を施す。
【0023】
また、有機過酸化物を配合した樹脂組成物を加熱して架橋させる方法では、その有機過酸化物の分解温度以上の温度で管状に押出成形して製造される。
【0024】
【実施例】
本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
【0025】
実施例1
密度0.950g/cm3、メルトフローレート2g/10分の高密度ポリエチレン100重量部とジ−t−ブチルペルオキシド0.7重量部、および、α−トコフェロール(日本ロシュ(株)製)0.7重量部を配合し、混合した樹脂組成物を単軸押出機に供給し、温度210℃で管状に押出成形し、外径10.0mm、内径7.0mmの架橋ポリエチレン管を得た。
【0026】
実施例2
密度0.930g/cm3、メルトフローレート7g/10分の線状低密度ポリエチレン100重量部、ビニルトリメトキシシラン2重量部、ジクミルペルオキシド0.06重量部、ジブチルすずジラウレート0.05重量部、α−トコフェロール0.5重量部から成る樹脂組成物を単軸押出機に供給し、温度200℃で管状に押出成形し、外径10.0mm、内径7.0mmの架橋ポリエチレン管を得た。
得られた架橋ポリエチレン管を、温度95℃の温水に3日間浸漬して架橋処理を施した。
【0027】
実施例3
用いたポリエチレンが密度0.945g/cm3、メルトフローレート4g/10分の高密度ポリエチレンであったこと、用いた有機過酸化物が1,3−ビス(t−ブチルペルオキシジイソプロピル)ベンゼン0.08重量部であったことを除いては、実施例2と同様にして架橋ポリエチレン管を製造した。
【0028】
比較例1
ビニルトリメトキシシラン、ジクミルペルオキシドおよび、ジブチルすずジラウレートを配合しないことを除いては、実施例2と同様にしてポリエチレン管を製造した。
【0029】
実施例1〜3、比較例1とも成形には、ダイ内径17.5mm、ニップル外径13.4mmの成形ダイスを用いた。
【0030】
評価
実施例1〜3および比較例1で得られたポリエチレン管を10cmの長さに切り取ったものを試料とし、試料の酸化誘導時間を熱水に浸漬前、および熱水に100時間浸漬したのちの2回にわたり測定した。酸化誘導時間の測定は、島津製作所のshimadzu DSC 50により、測定温度200℃、100ml/minの乾燥空気中で、アルミパンを使用して行った。
【0031】
結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1〜3の架橋ポリオレフィン管は、酸化防止剤としてビタミンEが含有されているので、100時間熱水に浸漬後も酸化防止剤が十分に残存し、100時間熱水浸漬後も熱水浸漬前と同程度の酸化誘導時間を保っている。
【0034】
一方、比較例1はビタミンEを含有しているもののベース樹脂が架橋されていないので、100時間熱水浸漬後には酸化防止剤の効果が激減している。
【0035】
【発明の効果】
本発明の架橋ポリオレフィン管は、熱水に対する耐抽出性に優れるビタミンEを含有しているために、長期にわたり熱水にさらされる給湯の配管材として好適に用いることができる。また、ビタミンEは人体内に摂取されても害を及ぼさないため、飲料水用の配管材としても有用である。
Claims (2)
- ポリオレフィン樹脂にビタミンEを含有させてなる樹脂組成物を架橋してなることを特徴とする架橋ポリオレフィン管。
- ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、ビタミンE0.05〜1重量部を含有する樹脂組成物を架橋してなることを特徴とする架橋ポリオレフィン管。
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