JP2017141385A - 耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法、シランマスターバッチ、並びに、耐熱性製品 - Google Patents

耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法、シランマスターバッチ、並びに、耐熱性製品 Download PDF

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【課題】スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを用いた、耐熱性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体及びその製造方法、並びに、シランマスターバッチ及び耐熱製品を提供する。【解決手段】スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含有するベースエラストマー100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.5質量部と、無機フィラー0.5〜300質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部とを、有機過酸化物の分解温度以上で溶融混練し、シランマスターバッチを調製する工程(a)を有する製造方法、これにより製造される耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体、並びに、シランマスターバッチ及び耐熱性製品。【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法、その成形体を得るためのシランマスターバッチ、並びに、耐熱性製品に関する。特に、スチレン系及びオレフィン系の熱可塑性エラストマーを除く熱可塑性エラストマーの耐熱性シラン架橋成形体に関する。
熱可塑性エラストマーは、ゴムのような柔軟性と弾性を有しながら、ある特定の温度以上では流動し、熱可塑性樹脂と同様な成形加工が可能な材料であり、電気・電子機器分野をはじめ自動車用の部品など様々な分野で利用されている。
一般に高い柔軟性又は弾性が求められる用途に、ゴム組成物(例えば、EPDM、CR、NBR、ACMなど)の成形体が用いられるが、ゴム組成物を成形体として使用するためには、一般に、ゴムを架橋することが必要である。架橋されていないゴムは、流体であるため、長時間にわたって力が加わると流動し、成形体が変形してしまうためである。
ゴム組成物中のゴムを架橋する方法としては、過酸化物架橋や硫黄架橋といった化学架橋法が一般的である。しかし、化学架橋法では、ゴム組成物の成形体に高温高圧を加えた状態で比較的長い時間保持することが必要である。そのため、ゴムの架橋工程には大掛かりな設備が必要となり、製造速度が遅く、製造コスト増大の要因となっている。
これに対し、熱可塑性エラストマーは、高温で可塑化し、成形が可能であるという熱可塑性樹脂の成形性を有する一方、冷却後には架橋工程を経なくとも柔軟でかつゴム弾性を発現するという特性を有する。このことから、熱可塑性エラストマーはゴム製品に比較して一般に製造性が高く、製造コストの低減が可能となる。そのため、ゴム製品の代替として多く利用されている。
ところで、架橋したゴム(架橋ゴム)は、ゴムの分子鎖間に新たな共有結合が導入され、これにより、ゴムの流動性が損なわれ、ゴム弾性を発現する。一方、熱可塑性エラストマーは、一般に、使用温度において柔軟なソフトセグメントと、使用温度において剛直なハードセグメントから構成されており、このハードセグメントが架橋ゴムでいうところの架橋構造(例えば、上記共有結合の形成)の役割を果たしている。ハードセグメントが流動する温度以上では、その熱可塑性エラストマーが流動性を有するようになるため、高温では上記の通り熱可塑性樹脂と同様な成形性を有する。
しかしながら、熱可塑性エラストマーは、上記のような原理によりゴム弾性を発現しているため、ハードセグメントの流動温度に近づくにつれて可塑化し、流動温度近傍では使用できなくなる。このため、熱可塑性エラストマーは、耐熱性という観点では、架橋ゴムに劣る場合がある。
そこで、熱可塑性エラストマーの耐熱性を向上させるために、熱可塑性エラストマーを架橋することが検討されている。
熱可塑性エラストマーを架橋する方法としては、一般に、上述の化学架橋以外に、電子線架橋法、シラン架橋法(水架橋法ともいう)が挙げられる。中でも、シラン架橋法は、化学架橋法及び電子線架橋法と比べて特殊な設備を必要とせず、また、成形後に放置するだけでも大気中に存在する水分により架橋反応が進行するなど、特殊な架橋工程を必要としない。そのため、シラン架橋法は、製造性の観点から有利であり、熱可塑性エラストマーの高い製造性を活かすという点で、熱可塑性エラストマーを架橋する方法として適している。
熱可塑性エラストマーを架橋する方法として、例えば、特許文献1に記載の方法が挙げられる。具体的には、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに不飽和基を有するシラン化合物、遊離ラジカル発生剤及びシラノール縮合触媒を含む組成物を溶融混練することによりシラングラフト化ポリオレフィン系樹脂組成物を得て、次いで、これを成形し、その成形物を水分と接触させてシラン架橋させる方法である。
特開平10−237136号公報
しかしながら、特許文献1に記載された方法においては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに代えて、スチレン系及びポリオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを用いると、未架橋の熱可塑性エラストマーに対して耐熱性が向上し(耐熱性に優れた)、外観にも優れた熱可塑性エラストマー成形体を得ることはできなかった。
本発明は、上記の問題点を解決し、スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを用いた、耐熱性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法、及びそれにより製造される耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を提供することを、課題とする。
また、本発明は、この耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を形成可能なシランマスターバッチを提供することを課題とする。
さらに、本発明は、上記の優れた特性を有する耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を含む耐熱性製品を提供することを、課題とする。
本発明者らは、スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含むベースエラストマーであっても、後述する特定のシラン架橋法により、熱可塑性エラストマーに対するシランカップリング剤のグラフト反応を十分に生起できること、さらにこの製造方法で得られる架橋熱可塑性エラストマー成形体が優れた耐熱性及び外観を兼ね備えることを、見出した。すなわち、スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含むベースエラストマーと、有機過酸化物、無機フィラー及びシランカップリング剤とを特定の割合で含む混合物を、有機過酸化物の分解温度以上で溶融混練し、得られた組成物とシラノール縮合触媒とを混合し、成形する工程を含む特定の製造方法により、耐熱性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を製造できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の課題は以下の手段によって達成された。
(1)(a)スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含有するベースエラストマー100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.5質量部と、無機フィラー0.5〜300質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混練し、シランマスターバッチを調製する工程と、
(b)前記工程(a)で得られたシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを混合した後に成形する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程と
を有する耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
(2)前記熱可塑性エラストマーが、アミド結合、ウレタン結合、エステル結合及びイミド結合のいずれか1種類以上の結合を主鎖に有する(1)に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
(3)前記工程(b)が、
(b−1)シラノール縮合触媒とキャリアとを混合し、触媒マスターバッチを調製する工程と、
(b−2)前記マスターバッチと、前記触媒マスターバッチとを混合した後に、成形する工程と、
を有する(1)又は(2)に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
(4)前記無機フィラーが、シリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム及び三酸化アンチモンよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
(5)前記無機フィラーが、シリカを含有する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
(6)前記無機フィラーの含有量が、ベースエラストマー100質量部に対して、1〜150質量部である(1)〜(5)のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
(7)前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランからなる群から選ばれる1種類以上を含む(1)〜(6)のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
(8)前記工程(a)における溶融混練が、密閉型のミキサーで行われる(1)〜(7)のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の製造方法により製造された耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体。
(10)上記(9)に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を含む耐熱性製品。
(11)前記耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体が、電線あるいは光ファイバーケーブルの被覆である(10)に記載の耐熱性製品。
(12)スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含有するベースエラストマー100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.5質量部と、無機フィラー0.5〜300質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを混合してなるマスターバッチ混合物の製造に用いられるシランマスターバッチであって、
前記ベースエラストマーの全部又は一部、前記有機過酸化物、前記無機フィラー及び前記シランカップリング剤を、前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混練して得られるシランマスターバッチ。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明によれば、上記のシラン架橋法によって熱可塑性エラストマーを架橋することにより、耐熱性をさらに向上させることができ、しかも、例えば電線又はケーブル等に加工した際にも優れた外観を有する架橋成形体(耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体)を、製造効率よく得ることが可能である。
したがって、本発明により、スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを用いた、耐熱性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法及び耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を提供できる。また、この耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を形成可能なシランマスターバッチ、及び、上記耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を含む耐熱性製品を提供できる。
まず、本発明において用いる各成分について説明する。
<ベースエラストマー>
本発明に用いられるベースエラストマーは、スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを、少なくとも1種、含有する。
熱可塑性エラストマーは、ある所定の温度以上で可塑化して流動性を示すことにより成形可能であって、かつ、上記所定の温度未満の温度ではゴムのような弾性と柔軟性を兼ね備えた高分子材料である。熱可塑性エラストマーは、使用温度において柔軟性を有するソフトセグメントと、架橋点のように流動せず形状保持するための役割を果たすハードセグメントとを有する。ハードセグメントは使用温度域において流動性を有していない。熱可塑性エラストマーは、ソフトセグメントとハードセグメントとが一つのポリマー鎖の中に存在するブロックポリマーであってもよく、剛直なポリマー(ハードセグメント)とやわらかいポリマー(ソフトセグメント)とを混合したブレンド物であってもよい。
本発明で用いられる熱可塑性エラストマーは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びイミド結合のいずれか1種以上の結合を、熱可塑性エラストマーの主鎖に有する熱可塑性エラストマーであることが好ましく、主鎖中のハードセグメントに有することがより好ましい。
エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びイミド結合のいずれか1種以上の結合を主鎖に有する熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、それぞれ、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー及びポリイミドエラストマー等が挙げられる。
また、熱可塑性エラストマーとしては、主鎖に、上記結合を2種以上有していてもよく、上記結合と併せてエーテル結合及び/又はカーボネート結合を有していてもよい。このような熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエーテルを主鎖中のソフトセグメントに有するポリエステルエラストマー、ポリエステルを主鎖中のソフトセグメントに有するポリウレタンエラストマー、ポリエステルを主鎖中のソフトセグメントに有するポリアミドエラストマー、ポリイミドウレタンエラストマー、ポリイミドエステルエラストマー等が挙げられる。
エステル結合を主鎖の少なくとも一部に有する熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマーが挙げられる。具体的には、主鎖中のハードセグメントにエステル結合を有するエラストマー、又は、主鎖中のソフトセグメントにエステル結合を有するポリアミドエラストマー、主鎖中のソフトセグメントにウレタン結合を有するポリウレタンエラストマー、若しくは、ポリイミドエステルエラストマー等の、主鎖中のソフトセグメントにエステル結合を有するエラストマーが挙げられる。ポリエステルエラストマーは、主鎖中のハードセグメントにエステル結合を有するエラストマーが好ましく、主鎖中のハードセグメントにエステル結合を有し、主鎖中のソフトセグメントにエーテル結合又はエステル結合を有するものがより好ましい。
アミド結合を主鎖の少なくとも一部に有する熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミドエラストマーが挙げられる。ポリアミドエラストマーは、主鎖中のハードセグメントにアミド結合を有するエラストマーが好ましく、主鎖中のハードセグメントにアミド結合を有し、主鎖中のソフトセグメントにエーテル結合若しくはエステル結合又はこれらの両方を有するものがより好ましい。
ウレタン結合を主鎖の少なくとも一部に有する熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。ポリウレタンエラストマーは、主鎖中のハードセグメントにウレタン結合を有するエラストマーが好ましく、主鎖中のハードセグメントにウレタン結合を有し、主鎖中のソフトセグメントにエーテル結合若しくはエステル結合又はこれらの両方を有するものがより好ましい。
イミド結合を主鎖の少なくとも一部に有する熱可塑性エラストマーとしては、ポリイミドウレタンエラストマーが挙げられる。ポリイミドエラストマーは、主鎖中のハードセグメントにイミド結合を有するエラストマーが好ましく、主鎖中のハードセグメントにイミド結合を有し、主鎖中のソフトセグメントにウレタン結合を有するものがより好ましい。
熱可塑性エラストマーは、その溶融温度が250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましい。ここでいう溶融温度とは、融点を有する熱可塑性エラストマーにあっては融点を指し、融点を有さない熱可塑性エラストマーにあっては、流動開始温度を指す。具体的には、熱可塑性エラストマーの融点は、熱可塑性エラストマーを、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で、示差操作熱量測定(DSC)して得たDSC曲線の吸熱ピーク温度とする。流動開始温度は、高化式フローテスターにおいて昇温速度3℃/min、荷重490N(50kgf)の条件で測定を行った際に、試料が流出し始める温度とする。
熱可塑性エラストマーは、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー又はポリウレタンエラストマーであることが好ましく、ポリエステルエラストマー又はポリウレタンエラストマーであることがより好ましく、ポリエステルエラストマーであることがさらに好ましい。
このような熱可塑性エラストマーは、適宜合成したものを用いてもよく、また市販されているものを用いることができる。また、複数のグレードや異なる熱可塑性エラストマーを2種類以上用いることもできる。
2種類以上の熱可塑性エラストマーを併用する場合、熱可塑性エラストマーの組み合わせは、特に限定されず、適宜に決定される。
熱可塑性エラストマーの含有量は、ベースエラストマー100質量%中、20〜100質量%が好ましく、30〜100質量%がより好ましく、40〜100質量%がさらに好ましい。
本発明で用いられるベースエラストマーは、熱可塑性エラストマー以外に任意の樹脂等を混合して用いることができる。混合することのできる樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ゴム又はエラストマー等が挙げられる。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、エチレンーメチルアクリレート共重合樹脂(EMA)又はこれらを酸で変性した酸変性樹脂等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。ゴムとしては、例えば、アクリルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム又は塩素化ポリエチレンが挙げられる。エラストマーとしては、上述の熱可塑性エラストマー以外のものであれば特に限定されない。例えば、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
上記のポリオレフィン樹脂は、通常用いられるものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン樹脂としては、エチレンのみからなる単独重合体、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)の各樹脂を用いることができる。中でも、直鎖型低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(高圧法で重合されたものがさらに好ましい)又は高密度ポリエチレンの各樹脂が好ましい。
エラストマーについても、通常用いられるものであれば特に限定されない。例えば、スチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体のエラストマー、又は、それらの水素添加物等を用いることができる。スチレン系エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水素化SBS、水素化SIS、水素化スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)等の各エラストマー等が挙げられる。
オレフィン系エラストマーとしては、ポリプロピレン(PP)とエチレン−プロピレン(EP)ゴムの混合物(TPO、TPV)、結晶構造を制御したポリプロピレン樹脂等が挙げられる。
上記の任意の樹脂等の(合計)含有率は、特に限定されないが、ベースエラストマー100質量%中、0〜80質量%であることが好ましく、0〜70質量%であることがより好ましく、0〜60質量%がさらに好ましい。その理由は、耐熱性及び外観が損なわれるためである。
本発明において、ベースエラストマーは、さらに、オイル成分や可塑剤を含有していてもよい。
オイル成分は、特に限定されないが、有機油又は鉱物油が挙げられる。
有機油として、大豆油、エポキシ化大豆油が挙げられ、鉱物油として、パラフィンオイル、ナフテンオイルが挙げられる。
オイルの含有率は、特に限定されないが、ベースエラストマーがオイルを含有する場合、ベースエラストマー100質量%中、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。オイルの含有量があまり多すぎるとブリードしたり、強度が低下したりする。
可塑剤は、特に限定されず、熱可塑性エラストマーに通常用いられる各種のものが挙げられる。例えば、トリメリット酸トリアルキル(C8、C10)、ピロメリット酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が挙げられる。
可塑剤の含有率は、特に限定されないが、樹脂が可塑剤を含有する場合、ベースエラストマー100質量%中、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましい。可塑剤の含有量が多すぎるとブリードしたり、強度が低下したりする。
ベースエラストマーは、熱可塑性エラストマー、他の樹脂等、オイル成分や可塑剤等の各成分の総計が100質量%となるように、各成分の含有率が適宜に決定され、好ましくは上記範囲内から選択される。
<有機過酸化物>
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒として、シランカップリング剤のベースエラストマーへのラジカル反応によるグラフト反応を生起させる働きをする。特にシランカップリング剤の反応部位が例えばエチレン性不飽和基を含む場合、エチレン性不飽和基とベースエラストマー成分とのラジカル反応(ベースエラストマー成分からの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト反応を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はなく、例えば、一般式:R−OO−R、R−OO−C(=O)R、RC(=O)−OO(C=O)Rで表される化合物が好ましい。ここで、R〜Rは各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR〜Rのうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の分解温度は、80〜195℃が好ましく、125〜180℃が特に好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
<無機フィラー>
本発明において、無機フィラーは、その表面に、シランカップリング剤のシラノール基等の反応部位と水素結合若しくは共有結合等、又は分子間結合により、化学結合しうる部位を有するものであれば特に制限なく用いることができる。この無機フィラーにおける、シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミニウムウイスカ、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルクなどの水酸基あるいは結晶水を有する化合物のような金属水和物が挙げられる。また、窒化ほう素、シリカ(結晶質シリカ、非晶質シリカ等)、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
無機フィラーは、シランカップリング剤等で表面処理した表面処理無機フィラーを使用することができる。例えば、シランカップリング剤表面処理無機フィラーとして、キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、水酸化マグネシウム、協和化学工業社製等)等が挙げられる。シランカップリング剤による無機フィラーの表面処理量は、特に限定されないが、例えば、3質量%以下である。
これらの無機フィラーのうち、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム及び三酸化アンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、シリカがより好ましい。
無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
無機フィラーが粉体である場合、無機フィラーの平均粒径は、0.2〜10μmが好ましく、0.3〜8μmがより好ましく、0.4〜5μmがさらに好ましく、0.4〜3μmが特に好ましい。平均粒径が上記範囲内にあると、シランカップリング剤の保持効果が高く、耐熱性に優れたものとなる。また、シランカップリング剤との混合時に無機フィラーが2次凝集しにくく、外観に優れたものとなる。平均粒径は、無機フィラーをアルコールや水で分散させて、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置等の光学式粒径測定器によって求められる。
<シランカップリング剤>
本発明に用いられるシランカップリング剤は、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下でベースエラストマーにグラフト反応しうるグラフト化反応部位(基又は原子)と、無機フィラーの化学結合しうる部位と反応し、シラノール縮合可能な反応部位(加水分解して生成する部位を含む。例えばシリルエステル基等)とを、少なくとも有するものであればよい。このようなシランカップリング剤として、従来、シラン架橋法に使用されているシランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば下記の一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2017141385
一般式(1)中、Ra11はエチレン性不飽和基を含有する基、Rb11は脂肪族炭化水素基、水素原子又はY13である。Y11、Y12及びY13は加水分解しうる有機基である。Y11、Y12及びY13は互いに同じでも異なっていてもよい。
a11は、グラフト化反応部位であり、エチレン性不飽和基を含有する基が好ましい。エチレン性不飽和基を含有する基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p−スチリル基を挙げることができる。なかでも、ビニル基が好ましい。
b11は、脂肪族炭化水素基、水素原子又は後述のY13を示す。脂肪族炭化水素基としては、脂肪族不飽和炭化水素基を除く炭素数1〜8の1価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。Rb11は、好ましくは後述のY13である。
11、Y12及びY13は、シラノール縮合可能な反応部位(加水分解しうる有機基)を示す。例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜4のアシルオキシ基が挙げられ、アルコキシ基が好ましい。加水分解しうる有機基としては、具体的には例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アシルオキシ等を挙げることができる。このなかでも、シランカップリング剤の反応性の点から、メトキシ又はエトキシがさらに好ましい。
シランカップリング剤としては、好ましくは、加水分解速度の速いシランカップリング剤であり、より好ましくは、Rb11がY13であり、かつY11、Y12及びY13が互いに同じであるシランカップリング剤、又は、Y11、Y12及びY13の少なくとも1つがメトキシ基であるシランカップリング剤である。
シランカップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシランを挙げることができる。
上記シランカップリング剤のなかでも、末端にビニル基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランの少なくとも1種が特に好ましい。
シランカップリング剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、そのままで用いても、溶媒等で希釈して用いてもよい。
<シラノール縮合触媒>
シラノール縮合触媒は、ベースエラストマーにグラフトしたシランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、ベースエラストマー同士が架橋される。その結果、優れた耐熱性を有する耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体が得られる。
本発明に用いられるシラノール縮合触媒としては、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等が挙げられる。一般的なシラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物等が用いられる。これらのなかでも、特に好ましくは、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物である。
<キャリア>
シラノール縮合触媒は、所望によりキャリアに混合されて、用いられる。このようなキャリアとしては、特に限定されないが、ベースエラストマーで説明した、エラストマー、樹脂又はゴムを用いることができる。このキャリアは、上記ベースエラストマー、特に上述の熱可塑性エラストマーと溶融混練可能なものであることが、シランマスターバッチとの相溶性の兼ね合いの点で、好ましい。例えば、キャリアとしては、シランマスターバッチ(ベースエラストマー)に用いる熱可塑性エラストマー又は樹脂等の1種類又は2種類以上を用いることが好ましく、ベースエラストマーに用いる熱可塑性エラストマーを用いることがさらに好ましい。本発明においては、キャリアとして、エラストマーを用いる場合に加えて、エラストマー以外に樹脂又はゴムを用いる場合においても、便宜上、キャリアエラストマーということがある。
<添加剤>
耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体等は、電線、電気ケーブル、電気コード、シート、発泡体、チューブ、パイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような添加剤として、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、充填剤(難燃(助)剤を含む。)、又は、臭素系難燃剤等が挙げられる。
架橋助剤とは、有機過酸化物の存在下において、ベースエラストマーとの間に部分架橋構造を形成するものをいう。例えば、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の(メタ)アクリレート系化合物、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物等の多官能性化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤又は硫黄酸化防止剤等が挙げられる。アミン酸化防止剤としては、例えば、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等が挙げられる。フェノール酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。硫黄酸化防止剤としては、例えば、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンズイミダゾール及びその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)等が挙げられる。酸化防止剤は、ベースエラストマー100質量部に対して、好ましくは0.1〜15.0質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部で加えることができる。
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。
難燃(助)剤(下記の臭素系難燃剤を除く)、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ほう酸亜鉛、ホワイトカーボン等が挙げられる。これらの充填剤はフィラーとしてシランカップリング剤を混合させる際に使用してもよいし、キャリアに加えてもよい。
滑剤としては、炭化水素系、シロキサン系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系等が挙げられる。これらの滑剤はキャリアに加えた方がよい。
本発明に用いる臭素系難燃剤としては、難燃剤として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、臭素化エチレンビスフタルイミド及びその誘導体、ビス臭素化フェニルテレフタルアミド及びその誘導体、臭素化ビスフェノール(例えばテトラブロモビスフェノールA)及びその誘導体、1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン及びその誘導体、ポリブロモジフェニルエーテル(例えばデカブロモジフェニルエーテル)及びその誘導体、並びに、ポリブロモビフェニル(例えばトリブロモフェニル)及びその誘導体、ヘキサブロモシクロドデカン、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモベンゼン等の有機系臭素含有難燃剤が使用可能である。ここで、「誘導体」とは、アルキル基等の有機基を置換基として有するもの、又は、臭素原子の数が相違するもの等をいう。
これらの中でも、安全性の点で、臭素化ビスフェノール(特にテトラブロモビスフェノールA)、臭素化ポリスチレン、下記構造式1で表される臭素化エチレンビスフタルイミド及び下記構造式2で表される1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン誘導体が好ましく、下記構造式1で表される臭素化エチレンビスフタルイミド、下記構造式2で表される1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン誘導体がさらに好ましい。
構造式2において、nはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、好ましくは3〜5の整数である。
Figure 2017141385
次に、本発明の製造方法を具体的に説明する。
本発明の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法は、下記工程(a)〜工程(c)を行う。
また、本発明のシランマスターバッチは下記工程(a)により製造され、本発明のマスターバッチ混合物は下記工程(a)及び工程(b)により製造される。
(a)スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含有するベースエラストマー100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.5質量部と、無機フィラー0.5〜300質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混練し、シランマスターバッチを調製する工程
(b)前記工程(a)で得られたシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを混合した後にこれを成形する工程
(c)前記工程(b)で得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程
ここで、混合するとは、均一な混合物を得ることをいう。
工程(a)において、有機過酸化物の配合量は、ベースエラストマー100質量部に対して、0.01〜0.5質量部であり、0.05〜0.3質量部が好ましい。有機過酸化物の配合量が0.01質量部未満では、グラフト反応が進行せず、未反応のシランカップリング剤同士が縮合若しくは未反応のシランカップリング剤が揮発して、耐熱性を十分に得ることができないことがある。一方、0.5質量部超であると、副反応によってベースエラストマー成分の多くが直接的に架橋してブツを形成し、外観不良が生じることがある。また、押し出し性に優れたシランマスターバッチ等が得られないことがある。すなわち、有機過酸化物の配合量をこの範囲内にすることにより、適切な範囲でグラフト反応を行うことができ、ゲル状のブツ(凝集塊)も発生することなく押し出し性に優れたシランマスターバッチ等を得ることができる。
無機フィラーの配合量は、ベースエラストマー100質量部に対して、0.5〜300質量部であり、1〜150質量部が好ましい。無機フィラーの配合量が0.5質量部未満では、シランカップリング剤のグラフト反応が不均一となり、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体に優れた耐熱性を付与できないことがある。また、シランカップリング剤のグラフト反応が不均一となり、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の外観が低下することがある。一方、300質量部を超えると、成形時や混練時の負荷が非常に大きくなり、2次成形が難しくなることがある。また、耐熱性や外観が低下することがある。
シランカップリング剤の配合量は、ベースエラストマー100質量部に対して、1〜15質量部である。シランカップリング剤の配合量が1.0質量部未満では、架橋反応が十分に進行せず、優れた耐熱性を発揮しないことがある。また、シラノール縮合触媒とともに成形する際に、ブツを生じ、また押出機を止めた際にブツが多く生じることがある。これにより、外観不良を生ずる。一方、15.0質量部を超えると、それ以上の無機フィラー表面にシランカップリング剤が吸着しきれず、シランカップリング剤は混練中に揮発してしまい、経済的でない。また、吸着しないシランカップリング剤が縮合してしまい、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体に架橋ゲルブツや焼けが生じて外観が悪化するおそれがある。
上記観点により、このシランカップリング剤の配合量は、ベースエラストマー100質量部に対して、3〜12.0質量部が好ましく、4〜12.0質量部がより好ましい。
シラノール縮合触媒の配合量は、特に限定されず、好ましくは、ベースエラストマー100質量部に対して、0.0001〜0.5質量部、より好ましくは0.001〜0.2質量部である。シラノール縮合触媒の配合量が上述の範囲内にあると、シランカップリング剤の縮合反応による架橋反応がほぼ均一に進みやすく、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の耐熱性、外観及び物性が優れ、生産性も向上する。すなわち、シラノール縮合触媒の配合量が少なすぎると、シランカップリング剤の縮合反応による架橋が進みにくくなり、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の耐熱性がなかなか向上せずに生産性が低下し、又は架橋が不均一になることがある。一方、多すぎると、シラノール縮合反応が非常に速く進行し、部分的なゲル化が生じて、外観が低下することがある。また、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体(樹脂)の物性が低下することがある。
本発明において、「ベースエラストマー、有機過酸化物、無機フィラー及びシランカップリング剤を溶融混合する」とは、溶融混合する際の混合順を特定するものではなく、どのような順で混合してもよいことを意味する。工程(a)における混合順は特に限定されない。本発明においては、無機フィラーは、シランカップリング剤と混合して用いることが好ましい。すなわち、本発明においては、上記各成分を、下記工程(a−1)及び(a−2)により、(溶融)混合することが好ましい。
工程(a−1):少なくとも無機フィラー及びシランカップリング剤を混合して混合物を調製する工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた混合物と、ベースエラストマーの全部又は一部とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度において、溶融混合する工程
上記工程(a−2)においては、「ベースエラストマーの全量(100質量部)が配合される態様」と、「ベースエラストマーの一部が配合される態様」とを含む。工程(a−2)において、ベースエラストマーの一部が配合される場合、ベースエラストマーの残部は、好ましくは工程(b)で配合される。
本発明において、「ベースエラストマーの一部」とは、ベースエラストマーのうち工程(a−2)で使用する樹脂であって、ベースエラストマーそのものの一部(ベースエラストマーと同一組成を有する)、ベースエラストマーを構成する成分の一部、ベースエラストマーを構成する一部の成分(例えば、複数の樹脂成分のうちの特定の樹脂成分全量)をいう。
また、「ベースエラストマーの残部」とは、ベースエラストマーのうち工程(a−2)で使用する一部を除いた残りの樹脂であって、具体的には、ベースエラストマーそのものの残部、ベースエラストマーを構成する成分の残部、ベースエラストマーを構成する残りの成分をいう。
工程(a−2)でベースエラストマーの一部を配合する場合、工程(a)及び工程(b)におけるベースエラストマーの配合量100質量部は、工程(a−2)及び工程(b)で混合されるベースエラストマーの合計量である。
ここで、工程(b)でベースエラストマーの残部が配合される場合、ベースエラストマーは、工程(a−2)において、好ましくは80〜99質量%、より好ましくは85〜95質量%が配合され、工程(b)において、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%が配合される。
本発明においては、シランカップリング剤は、上記のように、無機フィラーと前混合等されることが好ましい(工程(a−1))。
無機フィラーとシランカップリング剤を混合する方法としては、特に限定されないが、湿式処理、乾式処理等の混合方法が挙げられる。具体的には、アルコールや水等の溶媒に無機フィラーを分散させた状態でシランカップリング剤を加える湿式処理、無処理の無機フィラー中に、又は予めステアリン酸やオレイン酸、リン酸エステル若しくは一部をシランカップリング剤で表面処理した無機フィラー中に、シランカップリング剤を、加熱又は非加熱で加え混合する乾式処理、及び、その両方が挙げられる。本発明においては、無機フィラー、好ましくは乾燥させた無機フィラー中にシランカップリング剤を、加熱又は非加熱で加え混合する乾式処理が好ましい。
このようにして前混合されたシランカップリング剤は、無機フィラーの表面を取り囲むように存在し、その一部又は全部が無機フィラーに吸着又は結合する。これにより、後の溶融混合の際にシランカップリング剤の揮発を低減できる。また、無機フィラーに吸着又は結合しないシランカップリング剤が縮合して溶融混練が困難になることも防止できる。さらに、押出成形の際に所望の形状を得ることもできる。
このような混合方法として、好ましくは、有機過酸化物の分解温度未満の温度、好ましくは室温(25℃)で無機フィラーとシランカップリング剤を、数分〜数時間程度、乾式又は湿式で混合(分散)した後に、この混合物とベースエラストマーとを、有機過酸化物の存在下で、溶融混合させる方法が挙げられる。この混合は、好ましくは、バンバリーミキサーやニーダー等のミキサー型混練機で行われる。このようにすると、ベースエラストマー成分同士の過剰な架橋反応を防止することができ、外観が優れたものとなる。
この混合方法においては、上記分解温度未満の温度が保持されている限り、ベースエラストマーが存在していてもよい。この場合、ベースエラストマーとともに金属酸化物及びシランカップリング剤を上記温度で混合(工程(a−1))した後に溶融混合することが好ましい。
有機過酸化物を混合する方法としては、特に限定されず、上記混合物とベースエラストマーとを溶融混合する際に、存在していればよい。有機過酸化物は、例えば、無機フィラー等と同時に混合されても、また無機フィラーとシランカップリング剤との混合段階のいずれにおいて混合されてもよく、無機フィラーとシランカップリング剤との混合物に混合されてもよい。例えば、有機過酸化物は、シランカップリング剤と混合した後に無機フィラーと混合されてもよいし、シランカップリング剤と分けて別々に無機フィラーに混合されてもよい。生産条件によっては、シランカップリング剤のみを無機フィラーに混合し、次いで有機過酸化物を混合してもよい。
また、有機過酸化物は、他の成分と混合させたものでもよいし、単体でもよい。
無機フィラーとシランカップリング剤との混合方法において、湿式混合では、シランカップリング剤と無機フィラーとの結力合が強くなるため、シランカップリング剤の揮発を効果的に抑えることができるが、シラノール縮合反応が進みにくくなることがある。一方、乾式混合では、シランカップリング剤が揮発しやすいが、無機フィラーとシランカップリング剤の結合力が比較的弱くなるため、効率的にシラノール縮合反応が進みやすくなる。
本発明の好ましい製造方法においては、次いで、得られた混合物とベースエラストマーの全部又は一部と、工程(a−1)で混合されていない残余の成分とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上に加熱しながら、溶融混練する(工程(a−2))。
工程(a−2)において、上記成分を溶融混合(溶融混練、混練りともいう)する温度は、有機過酸化物の分解温度以上、好ましくは有機過酸化物の分解温度+(25〜110)℃の温度である。この分解温度はベースエラストマー成分が溶融してから設定することが好ましい。上記混合温度であれば、上記成分が溶融し、有機過酸化物が分解、作用して必要なシラングラフト反応が工程(a−2)において十分に進行する。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、例えば無機フィラーの配合量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。ベースエラストマー成分の分散性、及び架橋反応の安定性の面で、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等の密閉型ミキサーが好ましい。
また、通常、このような無機フィラーがベースエラストマー100質量部に対して100質量部を超える量で混合される場合、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサー等の密閉型ミキサーで混練りするのがよい。
ベースエラストマーの混合方法は、特に限定されない。例えば、予め混合調製されたベースエラストマーを用いてもよく、各成分、例えば上述の熱可塑性エラストマー、他の樹脂等、オイル成分、可塑剤それぞれを別々に混合してもよい。
本発明において、上記各成分を一度に溶融混合することもでき、この場合、溶融混合の条件は、特に限定されないが、工程(a−2)の条件を採用できる。この場合、溶融混合時にシランカップリング剤の一部又は全部が無機フィラーに吸着又は結合する。
工程(a)、特に工程(a−2)においては、シラノール縮合触媒を実質的に混合せずに上述の各成分を混練することが好ましい。これにより、シランカップリング剤の縮合反応を抑えることができ、溶融混合しやすく、また押出成形の際に所望の形状を得ることができる。ここで、「実質的に混合せず」とは、不可避的に存在するシラノール縮合触媒をも排除するものではなく、シランカップリング剤のシラノール縮合による上述の問題が生じない程度に存在していてもよいことを意味する。例えば、工程(a−2)において、シラノール縮合触媒は、ベースエラストマー100質量部に対して0.01質量部以下であれば、存在していてもよい。
工程(a)においては、上記成分の他に用いることができる他の樹脂や上記添加物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜に設定される。
工程(a)において、上記添加剤、特に酸化防止剤や金属不活性剤は、いずれの工程で又は成分に混合されてもよいが、無機フィラーに混合されたシランカップリング剤のベースエラストマーへのグラフト反応を阻害しない点で、キャリアに混合されるのがよい。
工程(a)、特に工程(a−2)において、架橋助剤は実質的に混合されないことが好ましい。架橋助剤が実質的に混合されないと、溶融混合中に有機過酸化物によりベースエラストマー成分同士の架橋反応が生じにくく、外観が優れたものになる。また、シランカップリング剤のベースエラストマーへのグラフト反応が生じにくく、耐熱性が優れたものになる。ここで、実質的に混合されないとは、不可避的に存在する架橋助剤をも排除するものではなく、上述の問題が生じない程度に存在していてもよいことを意味する。
このようにして、工程(a)を行い、マスターバッチ混合物の製造に用いられるシランマスターバッチ(シランMBともいう)が調製される。このシランMBは、後述の工程(b)により成形可能な程度にシランカップリング剤がベースエラストマーにグラフトしたシラン架橋性熱可塑性エラストマーを含有している。
本発明の製造方法において、次いで、工程(a)で得られたシランMBとシラノール縮合触媒とを混合した後に成形する工程(b)を行う。
本発明において、工程(b)は、下記工程(b−1)及び(b−2)を有することが好ましい。
工程(b−1):シラノール縮合触媒とキャリアとを混合し、触媒マスターバッチを調製する工程
工程(b−2):得られたシランマスターバッチと前記触媒マスターバッチとを混合した後に成形する工程
工程(b−1)において、キャリアとしては、上述のように、ベースエラストマーの残部、又は、ベースエラストマーとは別のエラストマーを用いることができる。本発明においては、ベースエラストマーとは別のエラストマーを用いることが好ましい。
上記工程(a−2)でベースエラストマーの一部を溶融混合した場合、キャリアとしてベースエラストマーの残部とシラノール縮合触媒とを溶融混合し、触媒マスターバッチ(触媒MBともいう)を調製して、この触媒MBを用いることが好ましい(工程(b−1))。なお、ベースエラストマーの残部に加えて他のエラストマー等を用いることもできる。
工程(b−1)において、キャリアとしての上記エラストマーの残部とシラノール縮合触媒との混合割合は、特に限定されないが、好ましくは、工程(a)における上記配合量を満たすように、設定される。
混合は、均一に混合できる方法であればよく、樹脂の溶融下で行う混合(溶融混合)が挙げられる。溶融混合は上記工程(a−2)の溶融混合と同様に行うことができる。例えば、混合温度は、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃で行うことができる。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
このようにして調製される触媒MBは、シラノール縮合触媒及びキャリアエラストマー、所望により添加されるフィラーの混合物である。
工程(a−2)で樹脂の全部を溶融混合する場合、シラノール縮合触媒そのもの、又は、キャリアとしての他のエラストマー等とシラノール縮合触媒との混合物(工程(b−1)を用いる。キャリアエラストマーとシラノール縮合触媒との混合方法は、上記触媒MBを調製する工程(b−1)の混合方法と同様である。
キャリアエラストマーの配合量は、工程(a−2)においてグラフト反応を促進させることができるうえ、成形中にブツが生じにくい点で、ベースエラストマー100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜50質量部、さらに好ましくは2〜40質量部である。
本発明の製造方法においては、シランMBと、シラノール縮合触媒(シラノール縮合触媒そのもの、準備した触媒MB、又は、シラノール縮合触媒とキャリアエラストマー等との混合物)とを混合する。
混合方法は、上述のように均一な混合物を得ることができれば、どのような混合方法でもよい。例えば、混合は、工程(a−2)の溶融混合と基本的に同様である。DSC等で融点が測定できない樹脂成分、例えばエラストマーもあるが、少なくともベースエラストマー及びキャリアの少なくとも1成分が溶融する温度で混練する。溶融温度は、ベースエラストマー又はキャリアの溶融温度に応じて適宜に選択され、例えば、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜240℃である。その他の条件、例えば混合(混練)時間は適宜設定することができる。
工程(b)においては、シラノール縮合反応を避けるため、シランMBとシラノール縮合触媒が混合された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。
工程(b)においては、シランMBとシラノール縮合触媒とを混合すればよく、シランMBと触媒MBとを溶融混合するのが好ましい。
本発明においては、シランMBとシラノール縮合触媒とを溶融混合する前に、ドライブレンドすることができる。ドライブレンドの方法及び条件は、特に限定されず、例えば、工程(a−1)での乾式混合及びその条件が挙げられる。このドライブレンドにより、シランMBとシラノール縮合触媒とを含有するマスターバッチ混合物が得られる。
工程(b)において、無機フィラーを用いてもよい。この場合、無機フィラーの配合量は、特には限定されないが、キャリア100質量部に対し、350質量部以下が好ましい。無機フィラーの配合量が多すぎるとシラノール縮合触媒が分散しにくく、架橋が進行しにくくなるためである。一方、無機フィラーの配合量が少なすぎると、成形体の架橋度が低下して、十分な耐熱性が得られない場合がある。
本発明において、上記工程(a)及び工程(b)の混合は、同時又は連続して行うことができる。
工程(b)においては、このようにして得られた混合物を成形する。
この成形工程は、混合物を成形できればよく、本発明の耐熱性製品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。成形方法は、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた押出成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。押出成形は、本発明の耐熱性製品が電線又は光ファイバーケーブルである場合に、好ましい。
工程(b)において、成形工程は、上記混合工程と同時に又は連続して、行うことができる。すなわち、混合工程における溶融混合の一実施態様として、溶融成形の際、例えば押出成形の際に、又は、その直前に、成形原料を溶融混合する態様が挙げられる。例えば、ドライブレンド等のペレット同士を常温又は高温で混ぜ合わせて成形機に導入(溶融混合)してもよいし、混ぜ合わせた後に溶融混合し、再度ペレット化をして成形機に導入してもよい。より具体的には、シランMBとシラノール縮合触媒との混合物(成形材料)を被覆装置内で溶融混練し、次いで、導体等の外周面に押出被覆して、所望の形状に成形する一連の工程を採用できる。
このようにして、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒とをドライブレンドしてマスターバッチ混合物を調製し、マスターバッチ混合物を成型機に導入して成形した、耐熱性シラン架橋性熱可塑性エラストマー組成物の成形体が得られる。
ここで、マスターバッチ混合物の溶融混合物は、架橋方法の異なるシラン架橋性熱可塑性エラストマーを含有する。このシラン架橋性熱可塑性エラストマーにおいて、シランカップリング剤の反応部位は、無機フィラーと結合又は吸着していてもよいが、後述するようにシラノール縮合していない。したがって、シラン架橋性熱可塑性エラストマーは、無機フィラーと結合又は吸着したシランカップリング剤がベースエラストマーにグラフトしたシラン架橋性熱可塑性エラストマーと、無機フィラーと結合又は吸着していないシランカップリング剤がベースエラストマーにグラフトしたシラン架橋性熱可塑性エラストマーとを少なくとも含む。また、シラン架橋性熱可塑性エラストマーは、無機フィラーが結合又は吸着したシランカップリング剤と、無機フィラーが結合又は吸着していないシランカップリング剤とを有していてもよい。さらに、シランカップリング剤と未反応のベースエラストマー成分を含んでいてもよい。
上記のように、シラン架橋性熱可塑性エラストマーは、シランカップリング剤がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、工程(b)で溶融混合されると、一部架橋(部分架橋)は避けられないが、得られる耐熱性シラン架橋性熱可塑性エラストマー組成物について、少なくとも成形時の成形性が保持されたものとする。
工程(b)により得られる成形体は、上記混合物と同様に、一部架橋は避けられないが、工程(b)で成形可能な成形性を保持する部分架橋状態にある。したがって、この発明の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体は、工程(c)を実施することによって、架橋又は最終架橋された成形体とされる。
本発明の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法においては、工程(b)で得られた成形体を水と接触させる工程(c)を行う。これにより、シランカップリング剤の反応部位が加水分解されてシラノールとなり、成形体中に存在するシラノール縮合触媒によりシラノールの水酸基同士が縮合して架橋反応が起こる。こうして、シランカップリング剤がシラノール縮合して架橋した耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を得ることができる。
この工程(c)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。シランカップリング剤同士の縮合は、常温で保管するだけで進行する。
したがって、工程(c)において、成形体を水に積極的に接触させる必要はない。この架橋反応を促進させるために、成形体を水分と接触させることもできる。例えば、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
このようにして、本発明の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法が実施され、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体が製造される。この耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体は、(シラン架橋性)熱可塑性エラストマーがシラノール結合(シロキサン結合)を介して縮合したシラン架橋熱可塑性エラストマーを含んでいる。この耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の一形態は、シラン架橋熱可塑性エラストマーと無機フィラーとを含有する。ここで、無機フィラーはシラン架橋熱可塑性エラストマーのシランカップリング剤に結合していてもよい。したがって、熱可塑性エラストマーを含有するベースエラストマーが、シラノール結合を介して無機フィラーと架橋してなる態様を含む。具体的には、このシラン架橋熱可塑性エラストマーは、複数のシラン架橋熱可塑性エラストマーがシランカップリング剤により無機フィラーに結合又は吸着して、無機フィラー及びシランカップリング剤を介して結合(架橋)したシラン架橋熱可塑性エラストマーと、上記シラン架橋性熱可塑性エラストマーにグラフトしたシランカップリング剤の反応部位が加水分解して互いにシラノール縮合反応することにより、シランカップリング剤を介して架橋したシラン架橋熱可塑性エラストマーとを少なくとも含む。また、シラン架橋熱可塑性エラストマーは、無機フィラー及びシランカップリング剤を介した結合(架橋)と、シランカップリング剤を介した架橋とが混在していてもよい。さらに、シランカップリング剤と未反応の樹脂成分及び/又は架橋していないシラン架橋性熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。
上記本発明の製造方法は、以下のように、表現することもできる。
下記工程(A)、工程(B)及び工程(C)を有する耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法であって、工程(A)が下記工程(A1)〜工程(A4)を有する耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
工程(A):スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含有するベースエラストマー100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.5質量部と、無機フィラー0.5〜300質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを混合して混合物を得る工程
工程(B):工程(A)で得られた混合物を成形して成形体を得る工程
工程(C):工程(B)で得られた成形体を水と接触させて耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を得る工程
工程(A1):少なくとも無機フィラー及びシランカップリング剤を混合する工程
工程(A2):工程(A1)で得られた混合物と樹脂の全部又は一部を有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(A3):シラノール縮合触媒と、キャリアとして、ベースエラストマーと異なるエラストマー、又は、ベースエラストマーの残部とを混合する工程
工程(A4):工程(A2)で得られた溶融混合物と、工程(A3)で得られた混合物とを混合する工程
上記方法において、工程(A)は、上記工程(a)及び工程(b)の混合までに対応し、工程(B)は上記工程(b)の成形工程に対応し、工程(C)は上記工程(c)に対応する。また、工程(A1)は上記工程(a−1)に、工程(A2)は上記工程(a−2)に、工程(A3)及び工程(A4)は上記工程(b)の混合までに、それぞれ、対応する。
本発明の製造方法における反応機構の詳細についてはまだ定かではないが、以下のように考えられる。
本発明において、スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含むベースエラストマーと、有機過酸化物、無機フィラー及びシランカップリング剤とを特定の割合で含む混合物を、有機過酸化物の分解温度以上で溶融混練すると、好ましくは無機フィラー及びシランカップリング剤を予め混合してベースエラストマー等と溶融混合すると、シランカップリング剤は、その化学結合しうる部位で無機フィラーに結合又は吸着する。このようにして無機フィラーの結合又は吸着したシランカップリング剤がベースエラストマーにグラフト反応すると考えられる。また、このグラフト反応が生じることにより、ベースエラストマーの分解反応及び/又は架橋反応が相対的に抑制され、成形体の外観悪化及び物性低下を抑制することができたものと考えられる。
上記の溶融混合において、無機フィラーと弱い結合(水素結合による相互作用、イオン、部分電荷若しくは双極子間での相互作用、吸着による作用等)で結合又は吸着したシランカップリング剤は、無機フィラーから脱離して、ベースエラストマーにグラフト反応する。このようにしてグラフト反応したシランカップリング剤は、その後、シラノール縮合可能な反応部位が縮合反応(架橋反応)して、シラノール縮合を介して架橋した熱可塑性エラストマーを形成する。この架橋反応により得られた耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の耐熱性は高くなり、高温でも溶融しない耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を得ることが可能となる。
一方、無機フィラーと強い結合(無機フィラー表面の水酸基等との化学結合等)で結合したシランカップリング剤は、このシラノール縮合触媒による水存在下での縮合反応が生じにくく、無機フィラーとの結合が保持される。そのため、シランカップリング剤を介したベースエラストマーと無機フィラーの結合(架橋)が生じる。これによりベースエラストマーと無機フィラーの密着性が強固になり、機械強さ、耐摩耗性が良好で、傷つきにくい成形体が得られる。特に、1つの無機フィラー粒子表面に複数のシランカップリング剤を複数結合でき、高い機械強さを得ることができる。
これらのシラングラフト熱可塑性エラストマーを、シラノール縮合触媒とともに成形し、次いで水分と接触させることで、高い耐熱性、さらには耐油性をも備えた耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を得ることが可能となると、推定される。
本発明においては、ベースエラストマー100質量部に対して、有機過酸化物を0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上、また0.5質量部以下、好ましくは0.3質量部以下の割合で混合し、さらに、シランカップリング剤を、1〜15質量部の割合で無機フィラーの存在下に混合することにより、耐熱性の高い耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を得ることができる。
本発明の製造方法は、耐熱性が要求される製品(半製品、部品、部材も含む。)、さらには、柔軟性及びゴム弾性が要求される製品、強度が求められる製品、難燃性が要求される製品、ゴム材料等の製品の構成部品又はその部材の製造に適用することができる。したがって、本発明の耐熱性製品は、このような製品とされる。特に、柔軟性、ゴム弾性及び耐熱性が要求される製品とされることが好ましい。
このとき、耐熱性製品は、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を含む製品でもよく、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体のみからなる製品でもよい。
本発明の耐熱性製品として、例えば、耐熱性難燃絶縁電線等の電線、耐熱難燃ケーブル又は光ファイバーケーブルの被覆材料、ゴム代替電線・ケーブルの材料、その他、耐熱難燃電線部品、難燃耐熱シート、難燃耐熱フィルム等が挙げられる。また、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、パッキン、クッション材、防震材、電気・電子機器の内部配線及び外部配線に使用される配線材、特に電線や光ファイバーケーブルが挙げられる。柔軟性、ゴム弾性及び耐熱性が要求される製品としては、電線及び光ファイバーケーブルの中でも、テレビ用若しくは自動車用(特にブレーキ用)の電線若しくはケーブル等が挙げられる。
本発明の製造方法は、上記製品のなかでも、特に電線及び光ファイバーケーブルの製造に好適に適用され、これらの被覆材料(絶縁体、シース)を形成することができる。
本発明の耐熱性製品が電線又は光ファイバーケーブル等の押出成形品である場合、好ましくは、成形材料を押出機(押出被覆装置)内で溶融混練して耐熱性シラン架橋性架橋熱可塑性エラストマー組成物を調製しながら、この耐熱性シラン架橋性架橋熱可塑性エラストマー組成物を導体等の外周に押し出して、導体等を被覆する等により、製造できる。このような耐熱性製品は、無機フィラーを大量に加えても耐熱性シラン架橋性架橋熱可塑性エラストマー組成物を電子線架橋機等の特殊な機械を使用することなく汎用の押出被覆装置を用いて、導体の周囲に、又は抗張力繊維を縦添え若しくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより、成形することができる。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚り線等を用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いることもできる。導体の周りに形成される絶縁層(本発明の耐熱性シラン架橋性架橋熱可塑性エラストマー組成物からなる被覆層)の肉厚は特に限定しないが、通常、0.15〜5mm程度である。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1及び表2において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。
表1及び表2中に示す各化合物の詳細を以下に示す。
<ベースエラストマー>
「ハイトレル2401」(商品名、東レ・デュポン社製、ポリエステルエラストマー、ハードセグメント:ポリエステル、ソフトセグメント:ポリエーテル、融点:163℃)
「ペルプレンP40H」(商品名、東洋紡社製、ポリエステルエラストマー、ハードセグメント:ポリエステル、ソフトセグメント:ポリエーテル、融点172℃)
「レザミンP−2288」(商品名、大日精化工業社製、ポリウレタンエラストマー、ハードセグメント:ポリウレタン、ソフトセグメント:ポリエーテル、流動開始温度:170℃)
「ペバックス4033」(商品名、アルケマ社製、ポリアミドエラストマー、ハードセグメント:ポリアミド、ソフトセグメント:ポリエーテル、融点:160℃)
「エラスレン401A」(商品名、昭和電工社製、塩素化ポリエチレン、塩素含有量40質量%)
「エバフレックス EV180」(商品名、三井・デュポンケミカル社製、エチレン酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル(VA)含有量33質量%)
「セプトン4077」(商品名、クラレ社製、スチレン系エラストマー(SEPS)、スチレン含有量30質量%)
「エボリューSP1540」(商品名、プライムポリマー社製、ポリオレフィン樹脂(LLDPE))
「ダイアナプロセスオイルPW90」(商品名、出光興産社製、パラフィンオイル)
<無機フィラー>
「アエロジル200V」(商品名、日本アエロジル社製、親水性フュームドシリカ)
「マグシーズFK621」(商品名、神島化学社製、水酸化マグネシウム)
「ハイジライトH42S」(商品名、昭和電工社製、水酸化アルミニウム)
「ソフトン1200」(商品名、備北粉化工業社製、炭酸カルシウム)
<シランカップリング剤>
「KBM1003」(商品名、信越化学工業社製、ビニルトリメトキシシラン)
「KBE1003」(商品名、信越化学工業社製、ビニルトリエトキシシラン)
<有機過酸化物>
「パーヘキサ25B」(商品名、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、分解温度149℃)
「パークミルD」(商品名、日油社製、ジクミルパーオキサイド、分解温度151℃)
<酸化防止剤>
「イルガノックス1076」(商品名、BASF社製、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル)
<シラノール縮合触媒>
「アデカスタブOT−1」(商品名、ADEKA社製、ジオクチルスズジラウレート)
(実施例1〜9及び比較例2〜7)
実施例1〜9及び比較例2〜7において、ベースエラストマーの5質量%を触媒MBのキャリアとして用いた。
まず、無機フィラー及びシランカップリング剤を、表1及び表2のA欄に示す質量比で、東洋精機製10Lヘンシェルミキサーに投入し、室温(25℃)で1時間混合して、粉体混合物を得た。次に、このようにして得られた粉体混合物と、表1及び表2のA欄に示す各成分及び有機過酸化物とを、表1及び表2のA欄に示す質量比で、日本ロール製2Lバンバリーミキサー内に投入し、有機過酸化物の分解温度以上の温度、具体的には190℃において10分混練り後、材料排出温度190℃で排出し、ペレット化してシランMBを得た。得られたシランMBは、ベースエラストマーにシランカップリング剤がグラフト反応したシラン架橋性熱可塑性エラストマーを含有している。
一方、キャリアとシラノール縮合触媒と酸化防止剤とを、表1及び表2のB欄に示す質量比で、180〜190℃でバンバリーミキサーにて溶融混合し、材料排出温度180〜190℃で排出して、ペレット化して触媒MBを得た。この触媒MBは、キャリア及びシラノール縮合触媒の混合物である。
次いで、シランMBと触媒MBを密閉型のリボンブレンダーに投入し、室温(25℃)で5分間ドライブレンドしてドライブレンド物(マスターバッチ混合物)を得た。このとき、シランMBと触媒MBとの混合比は、表1及び表2に示す質量比である。
次いで、得られたドライブレンド物を、L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)=24、スクリュー直径30mmのスクリューを備えた押出機(圧縮部スクリュー温度170℃、ヘッド温度200℃)に導入した。この押出機内でドライブレンド物を溶融混合しながら、単芯導体(軟銅導体、1本/0.8mmφ)の外側にで被覆し、外径2.4mmφの被覆導体を得た。この被覆導体を温度60℃、相対湿度95%の雰囲気に1日間放置した。
このようにして、上記導体の外周面に、耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体からなる被覆層を有する電線を製造した。被覆層としての耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体は上述のシラン架橋熱可塑性エラストマーを有している。
(比較例1)
表2のA欄及びB欄に示す各成分を、実施例1で用いた上記バンバリーミキサー内に一括して投入し、過酸化物の分解温度以上の温度、具体的には190℃において10分間混練り後、材料排出温度190℃で輩出し、ペレット化した。次いで、得られたペレットを実施例1で用いた押出機(圧縮部スクリュー温度170℃、ヘッド温度200℃)に導入して、この押出機内で溶融しながら、単芯導体(軟銅導体、1本/0.8mmφ)の外側に被覆し、外径2.4mmφの被覆導体を得た。この被覆導体を温度60℃、相対湿度95%の雰囲気に1日間放置して、電線を製造した。
製造した各電線について、下記試験をし、その結果を表1及び表2に示した。
(1)電線外観試験
外観試験は、製造した電線の外観を観察して評価した。
外観は、電線の外径変動の有無、及び、表面の状態を目視により確認した。
電線の外径が変動し不安定なもの、表面に肌荒れ(目視で確認できる凹凸が連続的に認められる)が発生したもの、又は、局所的な凸部(ブツ)が多数認められ、電線形状への成形ができなかったものを「C」とし、多少の肌荒れやブツが認められるものの電線への成形が可能だったものを「B」、外径変動、肌荒れ及びブツがいずれも認められず、外観が良好だったものを「A」とした。
(2)ホットセット試験
JIS C 3660−2−1に準拠して、ホットセット試験を実施した。ただし、オーブンは200℃とした。具体的には、200℃のオーブン中で、製造した電線から導体を引き抜いた管状片の一端に、10N/cmの荷重を15分間かけたときに、管状片が切断したものを不合格「C」とし、切断しなかったが、60%伸びたものを「B」、切断せず、伸びが60%未満のものを「A」とし、「B」及び「A」を合格とした。
Figure 2017141385
Figure 2017141385
表1及び表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜9は、いずれも、電線外観試験及びホットセット試験に合格した。このように、本発明によれば、耐熱性及び外観に優れた耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を被覆として有する電線を製造できた。よって、本発明によれば、上記優れた特性を有する耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を生産性良く製造できることが分かった。
これに対して、上記の各成分を一括して溶融混合した比較例1は電線外観試験が不合格であった。また、無機フィラーの含有量が少なすぎる比較例2はホットセット試験に合格しなかった。無機フィラーの含有量が多すぎる比較例3は電線外観試験に合格しなかった。有機過酸化物の含有量が少なすぎる比較例4はホットセット試験に不合格であった。有機過酸化物の含有量が多すぎる比較例5は電線外観試験に不合格であった。シランカップリング剤の含有量が少なすぎる比較例6はホットセット試験に合格せず、シランカップリング剤の含有量が多すぎる比較例7は電線外観試験に合格しなかった。

Claims (12)

  1. (a)スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含有するベースエラストマー100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.5質量部と、無機フィラー0.5〜300質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混練し、シランマスターバッチを調製する工程と、
    (b)前記工程(a)で得られたシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを混合した後に成形する工程と、
    (c)前記工程(b)で得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程と
    を有する耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
  2. 前記熱可塑性エラストマーが、アミド結合、ウレタン結合、エステル結合及びイミド結合のいずれか1種類以上の結合を主鎖に有する請求項1に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
  3. 前記工程(b)が、
    (b−1)シラノール縮合触媒とキャリアとを混合し、触媒マスターバッチを調製する工程と、
    (b−2)前記マスターバッチと、前記触媒マスターバッチとを混合した後に、成形する工程と、
    を有する請求項1又は2に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
  4. 前記無機フィラーが、シリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム及び三酸化アンチモンよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
  5. 前記無機フィラーが、シリカを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
  6. 前記無機フィラーの含有量が、ベースエラストマー100質量部に対して、1〜150質量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
  7. 前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランからなる群から選ばれる1種類以上を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
  8. 前記工程(a)における溶融混練が、密閉型のミキサーで行われる請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法により製造された耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体。
  10. 請求項9に記載の耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体を含む耐熱性製品。
  11. 前記耐熱性シラン架橋熱可塑性エラストマー成形体が、電線あるいは光ファイバーケーブルの被覆である請求項10に記載の耐熱性製品。
  12. スチレン系及びオレフィン系以外の熱可塑性エラストマーを含有するベースエラストマー100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.5質量部と、無機フィラー0.5〜300質量部と、シランカップリング剤1〜15質量部と、シラノール縮合触媒とを混合してなるマスターバッチ混合物の製造に用いられるシランマスターバッチであって、
    前記ベースエラストマーの全部又は一部、前記有機過酸化物、前記無機フィラー及び前記シランカップリング剤を、前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混練して得られるシランマスターバッチ。
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