JP6567589B2 - 塩素含有架橋樹脂成形体及びその製造方法、シランマスターバッチ、マスターバッチ混合物及びその成形体、並びに、成形品 - Google Patents
塩素含有架橋樹脂成形体及びその製造方法、シランマスターバッチ、マスターバッチ混合物及びその成形体、並びに、成形品 Download PDFInfo
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Description
上記の配線材等には、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、又は、耐候性又は耐油性に優れた材料として、塩素化ポリエチレン樹脂等の塩素含有樹脂が幅広く用いられる。
例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂を架橋する方法として、電子線を照射して架橋させる電子線架橋法、また、成形後に熱を加えることにより有機過酸化物等を分解させて架橋反応させる架橋法やシラン架橋法等の化学架橋法が挙げられる。
ここで、シラン架橋法とは、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有するシランカップリング剤を樹脂にグラフト反応させてシラングラフト樹脂を得た後に、シラノール縮合触媒の存在下でシラングラフト樹脂を水分と接触させることにより、架橋した樹脂を得る方法である。
上記の架橋法のなかでも、特にシラン架橋法は特殊な設備を要しないことが多いため、幅広い分野で使用することができる。
シラン架橋法により、塩素含有樹脂をシラン架橋させることは、上記のポリオレフィン樹脂をシラン架橋させることよりも難しく、ただ単に、有機過酸化物の存在下で不飽和基を有するシランカップリング剤を塩素含有樹脂にシラングラフト反応させてシラングラフト樹脂を得た後に、シラノール縮合触媒の存在下で水分と接触させても、塩素含有樹脂の架橋体を得ることはできない。
また、特許文献1に記載された方法では、ニーダー等での溶融混練中に樹脂が架橋することがある。さらに、無機フィラーを表面処理しているシランカップリング剤以外のシランカップリング剤の大部分が揮発し、又は互いに縮合することがある。そのため、所望の引張強さを有する電線を得ることができないことがある。加えて、シランカップリング剤同士の縮合反応により、得られる電線の外観が悪化することがある。
また、本発明は、この塩素含有架橋樹脂成形体を形成可能な、シランマスターバッチ、マスターバッチ混合物及びその成形体を提供することを、課題とする。
さらに、本発明は、塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法で得られた塩素含有架橋樹脂成形体を含む成形品を提供することを、課題とする。
〔1〕塩素化ポリエチレンを50〜100質量%含有するベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.003〜0.3質量部と、無機フィラー0.5〜400質量部と、前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラフト化反応部位を有し、前記無機フィラーと結合又は吸着しうるシランカップリング剤2質量部を越え15.0質量部以下とを、前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合し、前記ベース樹脂と前記シランカップリング剤とをグラフト反応させることによりシラン架橋性樹脂を含むシランマスターバッチを調製する工程(a)と、
前記工程(a)で得られたシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを混合した後に成形する工程(b)と、
前記工程(b)で得られた成形体を水分と接触させてシラン架橋させる工程(c)と、を有し、
かつ前記塩素化ポリエチレンが、結晶融解熱が5〜60J/gである結晶性塩素化ポリエチレン7〜60質量%と、残部として非結晶性塩素化ポリエチレンとを含む、塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔2〕前記結晶性塩素化ポリエチレンでのメルトフローレート(190℃、21.6kg)が10g/10分以上である〔1〕に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔3〕前記非結晶性塩素化ポリエチレンのメルトフローレート(190℃、21.6kg)が10g/10分未満である〔1〕又は〔2〕に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔4〕前記有機過酸化物の含有量が、0.005〜0.3質量部である〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔5〕前記シランカップリング剤の含有量が、3〜12.0質量部である〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔6〕前記シランカップリング剤の含有量が、4〜12.0質量部である〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔7〕前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランである〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔8〕前記無機フィラーが、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、若しくは炭酸カルシウム又はこれらの組合せを含む〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔9〕前記ベース樹脂が前記塩素化ポリエチレン以外の塩素含有樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーを合計で0〜45質量%含有する、〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔10〕前記工程(a)における溶融混合が、密閉型のミキサーを用いて行われる〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
〔11〕塩素化ポリエチレンを50〜100質量%含有するベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.003〜0.3質量部と、無機フィラー0.5〜400質量部と、シランカップリング剤2質量部を越え15.0質量部以下と、前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラフト化反応部位を有し、前記無機フィラーと結合又は吸着しうるシラノール縮合触媒とを混合してなるマスターバッチ混合物の製造に用いられるシランマスターバッチであって、
前記塩素化ポリエチレンが結晶融解熱5〜60J/gの結晶性塩素化ポリエチレン7〜60質量%と、残部として非結晶性塩素化ポリエチレンとを含んでおり、
前記ベース樹脂の全部又は一部、前記有機過酸化物、前記無機フィラー及び前記シランカップリング剤を前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して、前記ベース樹脂と前記シランカップリング剤とをグラフト反応させて得られるシラン架橋性樹脂を含むシランマスターバッチ。
〔12〕前記ベース樹脂が前記塩素化ポリエチレン以外の塩素含有樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーを合計で0〜45質量%含有する、〔11〕に記載のシランマスターバッチ。
〔13〕〔11〕又は〔12〕に記載のシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを含有するマスターバッチ混合物。
〔14〕〔11〕又は〔12〕に記載のシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とをドライブレンドしてなるマスターバッチ混合物を成型機に導入して成形した成形体。
〔15〕〔1〕〜〔10〕のいずれか1つに記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法により製造された塩素含有架橋樹脂成形体。
〔16〕結晶融解熱が1〜10J/gである〔15〕に記載の塩素含有架橋樹脂成形体。
〔17〕前記ベース樹脂が、シラノール結合を介して前記無機フィラーと架橋してなる〔15〕又は〔16〕に記載の塩素含有架橋樹脂成形体。
〔18〕〔15〕〜〔17〕のいずれか1つに記載の塩素含有架橋樹脂成形体を含む成形品。
〔19〕前記塩素含有架橋樹脂成形体が、電線あるいは光ファイバーケーブルの被覆である〔18〕に記載の成形品。
したがって、本発明により、優れた耐油性を示し、外観にも優れた塩素含有架橋樹脂成形体及びその製造方法を提供できる。また、この塩素含有架橋樹脂成形体を形成可能な、シランマスターバッチ、マスターバッチ混合物及びその成形体を提供できる。さらには、上記塩素含有架橋樹脂成形体を含む成形品を提供できる。
〈ベース樹脂〉
本発明に用いられるベース樹脂は、塩素含有樹脂のうち、塩素化ポリエチレンを含む。ベース樹脂として塩素化ポリエチレンを含有すると、塩素含有架橋樹脂成形体に、優れた、耐油性を付与することができる。また、必要により耐熱性を付与することもできる。
結晶性塩素化ポリエチレンを、ベース樹脂の成分として用いると、押出速度を速めても外観に優れた塩素含有架橋樹脂成形体とできる。また、成形後の(未架橋)成形体表面の粘着性(タック性)を低減でき、塩素含有樹脂成形体の生産性向上に高い効果を示す。
結晶性塩素化ポリエチレンの結晶融解熱は、8〜57J/gが好ましく、15〜55J/gがより好ましい。結晶融解熱が5J/g未満であると、非結晶部分が多すぎて所望の成形性や粘着性を得ることができないことがある。また、結晶融解熱が60J/g超であると、結晶性が高すぎて所望の耐油性を得ることができないことがある。結晶融解熱は、示差操作熱量測定法(DSC法)により測定することができる。本発明では、置換ガスヘリウム50ml/min、昇温条件10℃/minにて測定して、DSCチャートより求められた融解による吸熱ピークより計算された値を結晶融解熱という。
他の樹脂としては、特に限定されないが、シランカップリング剤のグラフト化反応部位と有機過酸化物の存在下でグラフト化反応可能な部位、例えば炭素鎖の不飽和結合部位や、水素原子を有する炭素原子を主鎖中又はその末端に有する重合体の樹脂が挙げられる。例えば、熱可塑性エラストマー、エチレン系共重合体の樹脂、変性ポリエチレン、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル及び各種ゴム等が挙げられる。
また、他の樹脂として、塩素化ポリエチレン以外の塩素含有樹脂(JIS K 7229−1995に規定する樹脂)、又は、フッ素ゴム等のフッ素含有樹脂も挙げられる。すなわち、本発明において、ベース樹脂は、塩素化ポリエチレン以外の塩素含有樹脂、及び、フッ素含有樹脂の少なくとも一方を含有する態様と、上記塩素含有樹脂及びフッ素含有樹脂を含有しない態様が挙げられる。
エチレン系共重合体の樹脂としては、特に限定されないが、エチレン−α−オレフィン共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体が挙げられる。具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられる。
変性ポリエチレンは、塩素化ポリエチレン以外であれば特に限定されないが、例えば、上記エチレン系共重合体の樹脂を変性したものであればよい。例えば、ポリオルガノシロキサンで変性したエチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂、不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂、及び不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を重合又は共重合して得られる重合体であって、変性ポリエチレン、エチレン系共重合体及び変性ポリエチレン以外の重合体の樹脂であれば特に限定されるものではなく、従来、耐熱性樹脂組成物に使用されているものを使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
ゴムとしては、エチレンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、スチレンゴムが挙げられる。エチレンゴムとしては、具体的には、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム等が挙げられる。
塩素含有樹脂としては、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
有機油又は鉱物油として、大豆油、パラフィンオイル、ナフテンオイルが挙げられる。
オイルの含有率は、特に限定されないが、ベース樹脂がオイルを含有する場合、ベース樹脂100質量%中、0〜75質量%であることが好ましく、0〜60質量%であることがより好ましい。オイルの含有量があまり多すぎるとブリードしたり、強度が低下したりする。
可塑剤の含有率は、特に限定されないが、ベース樹脂が可塑剤を含有する場合、ベース樹脂100質量%中、0〜75質量%であることが好ましく、0〜60質量%であることがより好ましい。可塑剤の含有量が多すぎるとブリードしたり、強度が低下したりする。
有機過酸化物は、少なくとも熱分解によりラジカルを発生して、触媒として、シランカップリング剤の樹脂成分へのラジカル反応によるグラフト反応を生起させる働きをする。特にシランカップリング剤の反応部位が例えばエチレン性不飽和基を含む場合、エチレン性不飽和基と樹脂成分とのラジカル反応(樹脂成分からの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト反応を生起させる働きをする。
有機過酸化物としては、ラジカルを発生させるものであれば、特に制限はなく、例えば、一般式:R1−OO−R2、R3−OO−C(=O)R4、R5C(=O)−OO(C=O)R6で表される化合物が好ましい。ここで、R1〜R6は各々独立にアルキル基、アリール基又はアシル基を表す。各化合物のR1〜R6のうち、いずれもアルキル基であるもの、又は、いずれかがアルキル基で残りがアシル基であるものが好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物を加熱したとき、ある一定の温度又は温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味する。具体的には、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
本発明において、無機フィラーは、その表面に、シランカップリング剤のシラノール基等の反応部位と水素結合若しくは共有結合等、又は分子間結合により、化学結合しうる部位を有するものであれば特に制限なく用いることができる。この無機フィラーにおける、シランカップリング剤の反応部位と化学結合しうる部位としては、OH基(水酸基、含水若しくは結晶水の水分子、カルボキシ基等のOH基)、アミノ基、SH基等が挙げられる。
無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
無機フィラーについて、その作用はその名称に限定されず、例えば塩素含有樹脂の安定剤として作用してもよい。
本発明に用いられるシランカップリング剤は、有機過酸化物の分解により生じたラジカルの存在下でベース樹脂、特に塩素含有樹脂にグラフト反応しうるグラフト化反応部位(基又は原子)と、無機フィラーの化学結合しうる部位と反応し、シラノール縮合可能な反応部位(加水分解して生成する部位を含む。例えばシリルエステル基等)とを、少なくとも有するものであればよい。このようなシランカップリング剤として、従来、シラン架橋法に使用されているシランカップリング剤が挙げられる。
上記シランカップリング剤のなかでも、末端にビニル基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤がさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
シラノール縮合触媒は、ベース樹脂にグラフトしたシランカップリング剤を水分の存在下で縮合反応させる働きがある。このシラノール縮合触媒の働きに基づき、シランカップリング剤を介して、ベース樹脂同士が架橋される。その結果、優れた引張強さ又は耐熱性を有する塩素含有架橋樹脂成形体が得られる。
シラノール縮合触媒は、所望により樹脂に混合されて、用いられる。このような樹脂(キャリア樹脂ともいう)としては、特に限定されないが、ベース樹脂で説明した各樹脂成分又はゴム成分を用いることができる。
キャリア樹脂は、シランマスターバッチとの相溶性の兼ね合いで、シランマスターバッチに使用されている樹脂成分の1種類又は2種類以上の樹脂成分を含有していることが好ましい。
キャリア樹脂は、非結晶性塩素化ポリエチレンを含有していることが好ましい。
塩素含有架橋樹脂成形体等は、電線、電気ケーブル、電気コード、シート、発泡体、チューブ、パイプにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような添加剤として、例えば、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、金属不活性剤、安定剤又は、充填剤(難燃(助)剤を含む。)等が挙げられる。
本発明の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法は、下記工程(a)〜工程(c)を行う。
本発明のシランマスターバッチは下記工程(a)により製造され、本発明のマスターバッチ混合物は下記工程(a)及び工程(b)により製造される。
工程(b):工程(a)で得られたシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを混合した後に成形する工程
工程(c):工程(b)で得られた成形体を水分と接触させて架橋させる工程
上記塩素化ポリエチレンは、結晶融解熱が5〜60J/gである結晶性塩素化ポリエチレン7〜60質量%と、残部として非結晶性塩素化ポリエチレンとを含む。
ここで、混合するとは、均一な混合物を得ることをいう。
上記観点により、このシランカップリング剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して、3〜12.0質量部が好ましく、4〜12.0質量部がより好ましい。
工程(a−1):少なくとも無機フィラー及びシランカップリング剤を混合して混合物を調製する工程
工程(a−2):工程(a−1)で得られた混合物と、ベース樹脂の全部又は一部とを、有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度において、溶融混合する工程
本発明において、「ベース樹脂の一部」とは、ベース樹脂のうち工程(a−2)で使用する樹脂であって、ベース樹脂そのものの一部(ベース樹脂と同一組成を有する)、ベース樹脂を構成する樹脂成分の一部、ベース樹脂を構成する一部の樹脂成分(例えば、複数の樹脂成分のうちの特定の樹脂成分全量)をいう。
また、「ベース樹脂の残部」とは、ベース樹脂のうち工程(a−2)で使用する一部を除いた残りのベース樹脂であって、具体的には、ベース樹脂そのものの残部、ベース樹脂を構成する樹脂成分の残部、ベース樹脂を構成する残りの樹脂成分をいう。
工程(a−2)でベース樹脂の一部を配合する場合、工程(a)及び工程(b)におけるベース樹脂の配合量100質量部は、工程(a−2)及び工程(b)で混合されるベース樹脂の合計量である。
ここで、工程(b)でベース樹脂の残部が配合される場合、ベース樹脂は、工程(a−2)において、好ましくは55〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%が配合され、工程(b)において、好ましくは1〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%が配合される。
無機フィラーとシランカップリング剤を混合する方法としては、特に限定されないが、湿式処理、乾式処理等の混合方法が挙げられる。具体的には、アルコールや水等の溶媒に無機フィラーを分散させた状態でシランカップリング剤を加える湿式処理、無処理の無機フィラー中に、又は予めステアリン酸やオレイン酸、リン酸エステル若しくは一部をシランカップリング剤で表面処理した無機フィラー中に、シランカップリング剤を、加熱又は非加熱で加え混合する乾式処理、及び、その両方が挙げられる。本発明においては、無機フィラー、好ましくは乾燥させた無機フィラー中にシランカップリング剤を、加熱又は非加熱で加え混合する乾式処理が好ましい。
このようにして前混合されたシランカップリング剤は、無機フィラーの表面を取り囲むように存在し、その一部又は全部が無機フィラーに吸着又は結合する。これにより、後の溶融混合の際にシランカップリング剤の揮発を低減できる。また、無機フィラーに吸着又は結合しないシランカップリング剤が縮合して溶融混練が困難になることも防止できる。さらに、押出成形の際に所望の形状を得ることもできる。
この混合方法においては、上記分解温度未満の温度が保持されている限り、樹脂が存在していてもよい。この場合、樹脂とともに金属酸化物及びシランカップリング剤を上記温度で混合(工程(a−1))した後に溶融混合することが好ましい。
また、有機過酸化物は、他の成分と混合させたものでもよいし、単体でもよい。
混合方法としては、ゴム、プラスチック等で通常用いられる方法であれば、特に限定されない。混合装置は、例えば無機フィラーの配合量に応じて適宜に選択される。混練装置として、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等が用いられる。樹脂成分の分散性、及び架橋反応の安定性の面で、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等のうち密閉型ミキサーが好ましい。
また、通常、このような無機フィラーが、ベース樹脂100質量部に対して100質量部を超える量で混合される場合、連続混練機、加圧式ニーダー、バンバリーミキサー等の密閉型ミキサーで混練りするのがよい。
ベース樹脂の混合方法は、特に限定されない。例えば、予め混合調製された樹脂を用いてもよく、各成分、例えば塩素化ポリエチレン等の樹脂成分、オイル成分、可塑剤それぞれを別々に混合してもよい。
この場合、溶融混合時にシランカップリング剤の一部又は全部が無機フィラーに吸着又は結合する。
工程(a)において、上記添加剤、特に酸化防止剤や金属不活性剤は、いずれの工程で又は成分に混合されてもよいが、無機フィラーに混合されたシランカップリング剤の樹脂へのグラフト反応を阻害しない点で、キャリア樹脂に混合されるのがよい。
工程(a)、特に工程(a−2)において、架橋助剤は実質的に混合されないことが好ましい。架橋助剤が実質的に混合されないと、溶融混合中に有機過酸化物により樹脂成分同士の架橋反応が生じにくく、外観が優れたものになる。また、シランカップリング剤の樹脂へのグラフト反応が生じにくく、引張強さ又は耐熱性が優れたものになる。ここで、実質的に混合されないとは、不可避的に存在する架橋助剤をも排除するものではなく、上述の問題が生じない程度に存在していてもよいことを意味する。
工程(b)においては、上記工程(a−2)でベース樹脂の一部を溶融混合した場合、ベース樹脂の残部とシラノール縮合触媒とを溶融混合し、触媒マスターバッチ(触媒MBともいう)を調製して、この触媒MBを用いる。なお、ベース樹脂の残部に加えて他の樹脂を用いることもできる。
混合は、均一に混合できる方法であればよく、ベース樹脂の溶融下で行う混合(溶融混合)が挙げられる。溶融混合は上記工程(a−2)の溶融混合と同様に行うことができる。例えば、混合温度は、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃で行うことができる。その他の条件、例えば混合時間は適宜設定することができる。
このようにして調製される触媒MBは、シラノール縮合触媒及びキャリア樹脂、所望により添加されるフィラーの混合物である。
他の樹脂の配合量は、工程(a−2)においてグラフト反応を促進させることができるうえ、成形中にブツが生じにくい点で、ベース樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜60質量部、より好ましくは2〜50質量部、さらに好ましくは2〜40質量部である。
混合方法は、上述のように均一な混合物を得ることができれば、どのような混合方法でもよい。例えば、混合は、工程(a−2)の溶融混合と基本的に同様である。DSC等で融点が測定できない樹脂成分、例えばエラストマーもあるが、少なくともベース樹脂が溶融する温度で混練する。溶融温度は、ベース樹脂又はキャリア樹脂の溶融温度に応じて適宜に選択され、例えば、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜240℃である。その他の条件、例えば混合(混練)時間は適宜設定することができる。
工程(b)においては、シラノール縮合反応を避けるため、シランMBとシラノール縮合触媒が混合された状態で高温状態に長時間保持されないことが好ましい。
この成形工程は、混合物を成形できればよく、本発明の成形品の形態に応じて、適宜に成形方法及び成形条件が選択される。成形方法は、押出機を用いた押出成形、射出成形機を用いた押出成形、その他の成形機を用いた成形が挙げられる。押出成形は、本発明の成形品が電線又は光ファイバーケーブルである場合に、好ましい。
工程(b)を押出成形により行う場合、架橋性樹脂組成物の成形速度(押出速度)は、特に限定されないが、生産性のさらなる向上のため成形速度を線速で40〜200m/分の高速に設定することもできる。
このようにして、シランマスターバッチとシラノール縮合触媒とをドライブレンドしてマスターバッチ混合物を調製し、マスターバッチ混合物を成型機に導入して成形した、架橋性塩素含有樹脂組成物の成形体が得られる。
上記のように、シラン架橋性樹脂は、シランカップリング剤がシラノール縮合していない未架橋体である。実際的には、工程(b)で溶融混合されると、一部架橋(部分架橋)は避けられないが、得られる架橋性塩素含有樹脂組成物について、少なくとも成形時の成形性が保持されたものとする。
工程(b)により得られる成形体は、上記混合物と同様に、一部架橋は避けられないが、工程(b)で成形可能な成形性を保持する部分架橋状態にある。したがって、この発明の塩素含有架橋樹脂成形体は、工程(c)を実施することによって、架橋又は最終架橋された成形体とされる。
この工程(c)の処理自体は、通常の方法によって行うことができる。シランカップリング剤同士の縮合は、常温で保管するだけで進行するしたがって、工程(c)において、成形体を水に積極的に接触させる必要はない。
この架橋反応を促進させるために、成形体を水分と接触させることもできる。例えば、温水への浸水、湿熱槽への投入、高温の水蒸気への暴露等の積極的に水に接触させる方法を採用できる。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力をかけてもよい。
下記工程(A)、工程(B)及び工程(C)を有する塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法であって、工程(A)が下記工程(A1)〜工程(A4)を有する塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
工程(A):塩素化ポリエチレンを50〜100質量%含有するベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.003〜0.2質量部と、無機フィラー0.5〜400質量部と、シランカップリング剤2質量部を越え15.0質量部以下と、シラノール縮合触媒とを混合して混合物を得る工程
工程(B):工程(A)で得られた混合物を成形して成形体を得る工程
工程(C):工程(B)で得られた成形体を水と接触させて塩素含有架橋樹脂成形体を得る工程
工程(A1):少なくとも無機フィラー及びシランカップリング剤を混合する工程
工程(A2):工程(A1)で得られた混合物とベース樹脂の全部又は一部を有機過酸化物の存在下で有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する工程
工程(A3):シラノール縮合触媒とキャリア樹脂としてベース樹脂と異なる樹脂又はベース樹脂の残部とを混合する工程
工程(A4):工程(A2)で得られた溶融混合物と、工程(A3)で得られた混合物とを混合する工程
上記方法において、工程(A)は、上記工程(a)及び工程(b)の混合までに対応し、工程(B)は上記工程(b)の成形工程に対応し、工程(C)は上記工程(c)に対応する。また、工程(A1)は上記工程(a−1)に、工程(A2)は上記工程(a−2)に、工程(A3)及び工程(A4)は上記工程(b)の混合までに、それぞれ、対応する。
一般に、ベース樹脂、特に塩素化ポリエチレンに対して有機過酸化物を混合すると急激にラジカルが発生し、ベース樹脂同士の架橋反応や分解反応が生じやすくなる。これにより、得られる塩素含有架橋樹脂成形体には、ブツが発生し、物性が低下する。
しかし、本発明においては、工程(a)において、シランカップリング剤を多く配合し、さらにそのシランカップリング剤を無機フィラーとシラノール結合や水素結合、分子間結合によって予め結合させる。特に工程(a)の好ましい形態においては、この結合を生じる処理と、溶融混合処理とは、別に行う。これらにより、シランカップリング剤のグラフト化反応部位とベース樹脂、特に塩素化ポリエチレンとがグラフト反応する機会が増やされているものと考えられる。この無機フィラーに保持されたシランカップリング剤とベース樹脂に生じるラジカルの結合反応は、上記ベース樹脂同士の架橋反応や分解反応よりも、優勢になると考えられる。したがって、シラン架橋が可能となり、本反応中(工程(a))においてベース樹脂、特に塩素化ポリエチレンの分解やベース樹脂同士の架橋が生じないため、ブツの発生や物性の低下が生じにくいものと考えられる。
工程(a)において、これらが混練り(溶融混合)される際に、無機フィラーと弱い結合(水素結合による相互作用、イオン、部分電荷若しくは双極子間での相互作用、吸着による作用等)で結合又は吸着したシランカップリング剤は、無機フィラーから脱離し、結果的にベース樹脂にグラフト反応する。このようにしてグラフト反応したシランカップリング剤は、その後、シラノール縮合可能な反応部位が縮合反応(架橋反応)して、シラノール縮合を介して架橋したベース樹脂を形成する。この架橋反応により得られた塩素含有架橋樹脂成形体の耐熱性は高くなり、高温でも溶融しない塩素含有架橋樹脂成形体を得ることが可能となる。
一方、無機フィラーと強い結合(無機フィラー表面の水酸基等との化学結合等)で結合したシランカップリング剤は、このシラノール縮合触媒による水存在下での縮合反応が生じにくく、無機フィラーとの結合が保持される。そのため、シランカップリング剤を介した樹脂と無機フィラーの結合(架橋)が生じる。これによりベース樹脂と無機フィラーの密着性が強固になり、機械強さ、耐摩耗性が良好で、傷つきにくい成形体が得られる。特に、1つの無機フィラー粒子表面に複数のシランカップリング剤を複数結合でき、高い機械強さを得ることができる。
これらのシラングラフト樹脂を、シラノール縮合触媒とともに成形し、次いで水分と接触させることで、高い引張強さ又は耐熱性を有する塩素含有架橋樹脂成形体を得ることが可能となると推定される。
その理由は、詳細は不明であるが以下のように考えられる。
本発明においては、特定の結晶性塩素化ポリエチレンと非結晶性塩素化ポリエチレンとを特定の割合で混合することにより、ベース樹脂中に両者がアロイ化された状態になる。このアロイ化された状態のネットワーク構造は、架橋塩素含有樹脂成形体に優れた耐油性とを付与すると考えられる。また、このアロイ化された状態は優れた流動性を有するため外観不良の発生しやすい条件であっても、優れた押出外観を付与できると考えられる。
さらに、結晶性塩素化ポリエチレンは、タック性や接着性が小さい。そして、結晶性塩素化ポリエチレンは、高温において流動性が高い。このため、結晶性塩素化ポリエチレンが押出成形時に表面に露出しやすいことから、成形体表面のタック性を低減するものと考えられる。したがって、ベース樹脂の架橋反応が十分に進行していない段階において、ベース樹脂(シラン架橋樹脂成形体)同士が接触した状態にあっても、ベース樹脂同士が粘着しにくく、接触する前の状態(例えば形状)を維持できる。これにより、ベース樹脂の外観荒れ(外傷や破れ)を防止できる。
本発明の成形品として、例えば、耐熱性難燃絶縁電線等の電線、耐熱難燃ケーブル又は光ファイバーケーブルの被覆材料、ゴム代替電線・ケーブルの材料、その他、耐熱難燃電線部品、難燃耐熱シート、難燃耐熱フィルム等が挙げられる。また、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、パッキン、クッション材、防震材、電気・電子機器の内部配線及び外部配線に使用される配線材、特に電線や光ファイバーケーブルが挙げられる。
本発明の成形品が電線又は光ファイバーケーブル等の押出成形品である場合、好ましくは、成形材料を押出機(押出被覆装置)内で溶融混練して架橋性塩素含有樹脂組成物を調製しながら、この架橋性塩素含有樹脂組成物を導体等の外周に押し出して、導体等を被覆する等により、製造できる。このような成形品は、無機フィラーを大量に加えても架橋性塩素含有樹脂組成物を電子線架橋機等の特殊な機械を使用することなく汎用の押出被覆装置を用いて、導体の周囲に、又は抗張力繊維を縦添え若しくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより、成形することができる。例えば、導体としては軟銅の単線又は撚り線等を用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いることもできる。導体の周りに形成される絶縁層(架橋性塩素含有樹脂組成物からなる被覆層)の肉厚は特に限定しないが、通常、0.15〜5mm程度である。
表1及び表2において、各例の配合量に関する数値は特に断らない限り質量部を表す。
塩素化ポリエチレンの塩素含有量及び結晶融解熱は上記測定方法による。MFRは下記測定方法による。
〈樹脂〉
(塩素化ポリエチレン)
塩素化PE1:「エラスレン401」(商品名、昭和電工社製、塩素化ポリエチレン、塩素含有量40質量%、MFR1.6g/10分、結晶融解熱3J/g)
塩素化PE2:「エラスレン301」(商品名、昭和電工社製、塩素化ポリエチレン、塩素含有量30質量%、MFR1.2g/10分、結晶融解熱3J/g)
塩素化PE3:「エラスレン303A」(商品名、昭和電工社製、塩素化ポリエチレン、塩素含有量30質量%、MFR120g/10分、結晶融解熱3J/g)
塩素化PE4:「エラスレン402B」(商品名、昭和電工社製、塩素化ポリエチレン、塩素含有量40質量%、MFR1.2g/10分、結晶融解熱10J/g)
塩素化PE5:「エラスレン404B」(商品名、昭和電工社製、塩素化ポリエチレン、塩素含有量40質量%、MFR25g/10分、結晶融解熱29J/g)
塩素化PE6:「エラスレン303B」(商品名、昭和電工社製、塩素化ポリエチレン、塩素含有量30質量%、MFR25g/10分、結晶融解熱50J/g)
(その他の成分)
PVC:「ZEST 1400」(商品名、新第一塩ビ社製、ポリ塩化ビニル)
EVA:「EV170」(商品名、三井・デュポンケミカル社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂(EVA)、VA含有量33質量%、密度0.96g/cm3)
ポリエステルエラストマー:「ハイトレル2401」(商品名、東レ・デュポン社製、ポリエステルエラストマー)
可塑剤:「アデカサイザーC−9N」(商品名、ADECA製、トリメリット酸系可塑剤)
ハイドロタルサイト:「STABIACE HT−1」(商品名、堺化学工業社製)
炭酸カルシウム:「ソフトン1200」(商品名、備北粉化工業社製)
シリカ:「アエロジル200」(商品名、日本アエロジル社製、親水性フュームドシリカ、非結晶性シリカ)
「KBM−1003」(商品名、信越化学工業社製、ビニルトリメトキシシラン)
「パーヘキサ25B」(商品名、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、分解温度149℃)
「アデカスタブOT−1」(商品名、ADEKA社製、ジオクチルスズジラウレート)
実施例及び比較例において、ベース樹脂の一部を触媒MBのキャリア樹脂として用いた。
次いで、シランMBと触媒MBを密閉型のリボンブレンダーに投入し、室温(25℃)で5分間ドライブレンドしてドライブレンド物(マスターバッチ混合物)を得た。このとき、シランMBと触媒MBとの混合比は、表1及び表2に示す質量比である。
〈押出成形条件(1)〉
得られたドライブレンド物を、L/D(スクリュー有効長Lと直径Dとの比)=24、スクリュー直径45mmのスクリューを備えた押出機(圧縮部スクリュー温度170℃、ヘッド温度200℃)に導入した。この押出機内でドライブレンド物を溶融混合しながら、1/0.8TA導体(導体径0.8mm)の外側に被覆厚さ1mmとなるように線速10m/分押し出して、外径2.8mmの被覆導体を得た。
〈押出成形条件(2)〉
押出成形条件(1)において、線速を50m/分にしたこと以外は押出成形条件(1)と同様にして、被覆導体を得た。
被覆層としての塩素含有架橋樹脂成形体は上述のシラン架橋樹脂を有している。
1.押出外観試験1
押出外観試験1は、被覆導体を製造する際に、上記押出成形条件(1)により得られた被覆導体の外観を観察して評価した。
被覆導体の外観にブツがなく電線形状に成形できたものを「A」、ブツや肌荒れの発生を確認できたが外観に問題がない程度であり、電線形状に成形できたものを「B」、著しく外観不良が発生して電線形状に成形できなかったものを「D」とした。本試験において、評価「B」以上が合格レベルである。
2.押出外観試験2
押出外観試験2は、上記押出成形条件(2)により得られた被覆導体の外観を観察して評価した。評価基準は、押出外観試験1と同じである。
3.電線同士の耐粘着性試験(タック性)
押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いた電線をボビンから巻き返し、電線同士の粘着状態を確認して、塩素含有架橋樹脂成形体の外観を評価した。具体的には、巻き返した電線の表面を観察し、被覆層に外傷を確認できなかったものを「A」、表面にのみうっすらとした粘着(接着)跡を確認できたものを「B」、外傷を確認できたものを「D」とした。
本試験において、評価「B」以上が合格レベルである。
押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いた各電線から導体を抜き取って作製した管状片を用いて、JIS C 3005に記載の「耐油試験」を行った。耐油試験においては、浸油温度を120℃、浸油時間を18時間とし、油としてJISC3005に規定される2号油を使用した。
耐油試験後の残率が、引張強さ及び伸びのいずれについても60%以上であったものを「A」とし、60%未満であったものを「D」とした。評価「A」が本試験の合格レベルである。
押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いた各電線から導体を抜き取って作製した管状片を用いて、JIS C 3005に基づき、標線間20mm、引張速度500mm/分で引張試験を行い、引張強さを測定した。
本試験は、参考試験であるが、引張強さが11MPa以上である場合を「A」とし、11MPa未満のものを「D」とした。評価「A」が本試験の合格レベルである。
〈成形体の結晶融解熱〉
押出成形条件(1)により得られた被覆導体を用いた各電線から被覆層を採取して試料とした。試料について、示差走査熱測定装置を用い、下記条件下で測定されたDSCチャートから、結晶融解熱を求めた。
示差走査熱測定装置:メトラー・トレド社製(製品名:DSC822e)
置換ガス:ヘリウム 50ml/min
昇温条件:10℃/min
測定温度範囲:30〜190℃
結晶性塩素化ポリエチレンを含有しないベース樹脂を用いた比較例1〜4は、いずれも、押出外観試験2又は耐粘着性試験に合格しなかった。結晶性塩素化ポリエチレンが少なすぎるベース樹脂を用いた比較例5は、押出外観試験2に合格しなかった。結晶性塩素化ポリエチレンが多すぎるベース樹脂を用いた比較例6は、耐油性に劣った。塩素化ポリエチレンの合計量が少なすぎるベース樹脂を用いた比較例7は、耐油性に劣っていた。また、引張強さも劣っていた。
これに対して、結晶性塩素化ポリエチレンと非結晶性塩素化ポリエチレンを特定量及び特定の比率で含有するベース樹脂を用いた実施例1〜11はいずれも、押出外観試験1及び押出外観試験2に合格しており、押出成形時の線速を50m/分に速めても外観に優れていた。また、耐粘着性試験及び耐油性試験に合格しており、耐油性に優れた電線を、被覆層に外傷なく製造できた。さらに、引張強さも合格であった。
特に、メルトフローレートが10g/10分以上の結晶性塩素化ポリエチレン15〜50質量%とメルトフローレートが10g/10分未満の非結晶性塩素化ポリエチレンを含有する実施例2〜5、8〜11は、押出外観及び耐粘着性に優れていた。
Claims (19)
- 塩素化ポリエチレンを50〜100質量%を含有するベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.003〜0.3質量部と、無機フィラー0.5〜400質量部と、前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラフト化反応部位を有し、前記無機フィラーと結合又は吸着しうるシランカップリング剤2質量部を越え15.0質量部以下とを、前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合し、前記ベース樹脂と前記シランカップリング剤とをグラフト反応させることによりシラン架橋性樹脂を含むシランマスターバッチを調製する工程(a)と、
前記工程(a)で得られたシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを混合した後に成形する工程(b)と、
前記工程(b)で得られた成形体を水分と接触させてシラン架橋させる工程(c)と、を有し、
かつ前記塩素化ポリエチレンが、結晶融解熱が5〜60J/gである結晶性塩素化ポリエチレン7〜60質量%と、残部として非結晶性塩素化ポリエチレンとを含む、塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。 - 前記結晶性塩素化ポリエチレンのメルトフローレート(190℃、21.6kg)が10g/10分以上である請求項1に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記非結晶性塩素化ポリエチレンのメルトフローレート(190℃、21.6kg)が10g/10分未満である請求項1又は2に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記有機過酸化物の含有量が、0.005〜0.3質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記シランカップリング剤の含有量が、3〜12.0質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記シランカップリング剤の含有量が、4〜12.0質量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランである請求項1〜6のいずれか1項に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記無機フィラーが、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、若しくは炭酸カルシウム又はこれらの組合せを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記ベース樹脂が前記塩素化ポリエチレン以外の塩素含有樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーを合計で0〜45質量%含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
- 前記工程(a)における溶融混合が、密閉型のミキサーを用いて行われる請求項1〜9のいずれか1項に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法。
- 塩素化ポリエチレンを50〜100質量%含有するベース樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.003〜0.3質量部と、無機フィラー0.5〜400質量部と、前記ベース樹脂にグラフト反応しうるグラフト化反応部位を有し、前記無機フィラーと結合又は吸着しうるシランカップリング剤2質量部を越え15.0質量部以下と、シラノール縮合触媒とを混合してなるマスターバッチ混合物の製造に用いられるシランマスターバッチであって、
前記塩素化ポリエチレンが結晶融解熱5〜60J/gの結晶性塩素化ポリエチレン7〜60質量%と、残部として非結晶性塩素化ポリエチレンとを含んでおり、
前記ベース樹脂の全部又は一部、前記有機過酸化物、前記無機フィラー及び前記シランカップリング剤を前記有機過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合して前記ベース樹脂と前記シランカップリング剤とをグラフト反応させて得られるシラン架橋性樹脂を含むシランマスターバッチ。 - 前記ベース樹脂が前記塩素化ポリエチレン以外の塩素含有樹脂及び/又は熱可塑性エラストマーを合計で0〜45質量%含有する、請求項11に記載のシランマスターバッチ。
- 請求項11又は12に記載のシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを含有するマスターバッチ混合物。
- 請求項11又は12に記載のシランマスターバッチとシラノール縮合触媒とをドライブレンドしてなるマスターバッチ混合物を成型機に導入して成形した成形体。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の塩素含有架橋樹脂成形体の製造方法により製造された塩素含有架橋樹脂成形体。
- 結晶融解熱が1〜10J/gである請求項15に記載の塩素含有架橋樹脂成形体。
- 前記ベース樹脂が、シラノール結合を介して前記無機フィラーと架橋してなる請求項15又は16に記載の塩素含有架橋樹脂成形体。
- 請求項15〜17のいずれか1項に記載の塩素含有架橋樹脂成形体を含む成形品。
- 前記塩素含有架橋樹脂成形体が、電線あるいは光ファイバーケーブルの被覆である請求項18に記載の成形品。
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