JP7423580B2 - 熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体 - Google Patents

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Description

本発明は熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体に関する。
従来、ウォーキング、ジョギング、ランニング等に利用される靴底用部材として、低反発発泡体と高反発発泡体を積層したものがある(特許文献1)。
また、EVAやポリウレタン発泡体、ゴム等を組み合わせて靴底を構成したものも知られている。
しかしながら、バレーボール、バスケットボール、サッカー、陸上競技の跳躍競技などのように跳躍が重要とされるスポーツ、あるいはジョギングやランニング等に用いられるスポーツ靴には、より軽量で反発弾性が高く、かつ圧縮永久歪み(ヘタリ)が小さい靴底用部材が求められている。なお、軽量化を図るために発泡体の発泡倍率を高くすると、反発弾性が低下するようになり、軽量化と反発弾性の両方を向上させることができなかった。これは、無理に発泡倍率を高くすると、セル構造が不均一かつ粗大になったり、セルが集合して鬆(す)が多く発生したりしてその結果反発弾性が低下すると考えられる。
特許第5257714号公報
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、跳躍が重要とされるスポーツ、あるいはジョギングやランニング等に用いられるスポーツ用靴の靴底部材などに好適な、軽量で反発弾性が高く、かつ圧縮永久歪み(ヘタリ)が小さい熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体及びその材料の提供を目的とする。
第1の発明の態様は、熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体において、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体が、シロキサン結合による架橋構造を有し、片面または両面にスキン層が形成された独立気泡構造からなり、圧縮永久歪みが50%以下であることを特徴とする。
第2の発明の態様は、第1の発明の態様において、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体には、溶融粘度調整剤が添加されていることを特徴とする。
第3の発明の態様は、第1または第2の発明の態様において、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体が、靴底用部材としてミッドソールにおける足裏の踏みつけ部とかかと部に対応する部位に設けられるものであることを特徴とする。
第4の発明の態様は、第1から第3の発明の態様の何れか一において、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体の発泡倍率は、2.5倍~10倍であることを特徴とする。
本発明によれば、軽量で反発弾性が高く、かつ圧縮永久歪み(ヘタリ)が小さく、靴底用部材として好適な熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体が得られる。
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を靴底用部材として用いた靴の斜視図である。 同靴のミッドソールの平面図及び断面図である。 実施例1~13の配合・製造条件・物性等を示す表である。 実施例14~20及び比較例1~3の配合・製造条件・物性等を示す表である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体は、シロキサン結合による架橋構造を有し、密度が0.1~0.4g/cm、反発弾性が60%以上、圧縮永久歪みが50%以下であり、軽量性及び反発弾性に優れ、かつ圧縮永久歪み(ヘタリ)が小さく、スポーツ用靴に好適である。
密度は、JIS K7222:2005に基づいて測定された値である。反発弾性は、JIS K6400-3:2011に基づいて測定された値である。圧縮永久歪みは、JIS K6262:2013 A法に基づいて測定された値である。
前記圧縮永久歪みの具体的な測定方法は次の通りである。まず、温度23±2℃、湿度50±10%の環境下で3時間放置した測定用サンプルの試験前の厚みh0を測定する。次に測定用サンプルを試験前の厚みh0に対して50%圧縮し、予め温度50℃、湿度50%の状態に保持した恒温恒湿槽へ測定用サンプルを組込んだ圧縮装置を投入し6時間静置する。この時使用するスペーサ(測定用サンプルの試験前の厚みh0に対して50%の厚み)の厚みh2を測定する。圧縮状態で6時間経過後、恒温恒湿槽から圧縮装置を取出し、圧縮状態を解放し、温度23±2℃、湿度50±10%の環境下で30±3分後に、測定用サンプルの試験後の厚みh1を測定する。圧縮永久歪み(%)は次式で算出される。
圧縮永久歪み(%)=[(h0-h1)/(h0-h2)]×100
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体の製造方法について説明する。本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体の製造方法は、グラフト化工程と、発泡工程と、静的架橋工程とを有する。
グラフト化工程では、熱可塑性ポリエステルエラストマーと変性シランカップリング剤を溶融混練することにより、前記熱可塑性ポリエステルエラストマーに前記変性シランカップリング剤の変性部をグラフト化させ、アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレットを作製する。その際、溶融粘度調整剤を配合してもよい。
熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)は、ハードセグメントとソフトセグメントを有するものであり、本発明では特に限定されない。ハードセグメントとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルが挙げられる。ソフトセグメントとしては、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類、ポリカプロラクトンやポリブチレンアジペート等のポリエステル等が挙げられる。
変性シランカップリング剤の変性部(官能基)は、エポキシ変性、アミン変性、ビニル変性等を挙げることができるが、熱可塑性ポリエステルエラストマーとの反応性が高いエポキシ変性シランカップリング剤がより好ましい。エポキシ変性シランカップリング剤の配合量は、熱可塑性ポリエステルエラストマー100重量部に対して0.1~5重量部が好ましく、0.1~2重量部がより好ましく、0.1~1重量部が特に好ましい。
さらに、グラフト化促進触媒を配合してグラフト化反応を促進させてもよい。グラフト化促進触媒は、第3級アミンやオニウム塩等が挙げられる。第3級アミンとして、N,N-ジメチルアミノピリジンやN-メチルイミダゾール等が挙げられ、オニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムブロミドやテトラプロピルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。グラフト化促進触媒の配合量は、熱可塑性ポリエステルエラストマー100重量部に対して0.1~5重量部が好ましく、0.5~3重量部がより好ましい。
溶融粘度調整剤としては、変性スチレン-アクリル共重合体やアクリル変性ポリテトラフルオロエチレン、高分子量ポリエステルエラストマー等を挙げることができる。前記溶融粘度調整剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
溶融粘度調整剤は、変性スチレン-アクリル共重合体またはアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを使用することがより好ましい。
前記変性スチレン-アクリル共重合体の場合、前記熱可塑性ポリエステルエラストマーのエステル基と変性部(イソシアネート基やエポキシ基等の官能基)が反応し、高分子量化することにより、溶融粘度を高くすることができる(変性スチレン-アクリル共重合体は、鎖延長剤または架橋剤として機能する)。
前記アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンの場合、剪断力によりポリテトラフルオロエチレンの繊維の束がほぐれ(フィブリル化)、繊維状のネットワーク構造を形成することにより、溶融粘度を高くすることができる。ポリテトラフルオロエチレンをアクリル変性することにより、前記熱可塑性ポリエステルエラストマーへの分散性が向上し、かつフィブリル化を効率よく発生させることができる(アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンは、チクソトロピー剤として機能する)。
変性スチレン-アクリル共重合体の変性部(官能基)は、エポキシ基であることが好ましい。エポキシ変性スチレン-アクリル共重合体としては、エポキシ当量が200~2800であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が2000~25000であることが好ましく、エポキシ当量が250~1800であり、かつ、重量平均分子量が(Mw)が4000~15000であることがより好ましい。前記エポキシ変性スチレン-アクリル共重合体のエポキシ当量が200未満の場合、十分な粘度調整効果が得られず、エポキシ当量が2800を超えた場合、過度に粘度が上昇し、成形性に悪影響を及ぼすことがある。また、前記エポキシ変性スチレン-アクリル共重合体の重量平均分子量が2000未満の場合、成形中に揮発したり、成形品の表面にブリードアウトする等、前記発泡体の表面が汚染されるおそれがある。一方、重量平均分子量が25000を超える場合、前記熱可塑性ポリエステルエラストマーのエステル基との反応性が低下し、適切に粘度調整が行えなかったり、該熱可塑性ポリエステルエラストマーとの相溶性が悪化するおそれがある。なお、エポキシ当量は、JIS K7236:2001に準拠して測定を行った。
溶融粘度調整剤を配合する場合の配合量は、熱可塑性ポリエステルエラストマー100重量部に対して0.05~1.5重量部が好ましく、0.1~1重量部がより好ましい。0.05重量部未満では、粘度の調整効果が小さく、一方、1.5重量部を超える場合は熱可塑性ポリエステルエラストマーの粘度が高くなり過ぎ、成形性が悪くなる傾向となる。
溶融粘度調整剤の熱可塑性ポリエステルエラストマーへの配合方法としては、熱可塑性ポリエステルエラストマーと変性シランカップリング剤と溶融粘度調整剤とを配合・溶融混練してペレット(最終ペレット)を作製する方法、熱可塑性ポリエステルエラストマーと変性シランカップリング剤のみ配合・溶融混練して一次ペレットを作製し、作製した一次ペレットに溶融粘度調整剤を配合・溶融混練して最終ペレットを作製する方法、熱可塑性ポリエステルエラストマーと溶融粘度調整剤のみ配合・溶融混練して一次ペレットを作製し、作製した一次ペレットに変性シランカップリング剤を配合・溶融混練して最終ペレットを作製する方法等が挙げられる。熱可塑性ポリエステルエラストマーと変性シランカップリング剤及び溶融粘度調整剤とを二軸押出機で溶融混練できれば、何れの方法で最終ペレットを作製してもよいが、最終ペレットの作製工程を単純化するためには、熱可塑性ポリエステルエラストマーと変性シランカップリング剤と溶融粘度調整剤とを一度に配合・溶融混練して最終ペレットを作製することが好ましい。
グラフト化工程における温度は、熱可塑性ポリエステルエラストマーが溶融する温度以上であればよいが、温度が高すぎると熱可塑性ポリエステルエラストマーが熱分解を起こす可能性があるため、200~300℃が好ましく、200~250℃がより好ましい。
発泡工程では、前記グラフト化工程により得られたアルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーを発泡させ、アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を作製する。
発泡工程においては、溶融粘度調整剤を配合したペレット(最終ペレット)を使用することが好ましい。溶融粘度調整剤を配合したペレットを使用することにより、より均一なセルを有する発泡体が得られるようになり、反発弾性をより高めることができるようになる。
発泡方法としては、化学発泡法、物理発泡法、あるいは超臨界発泡法等、公知の発泡方法が挙げられる。化学発泡法は、アゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を用いる発泡方法である。物理発泡法は、高圧下で樹脂に液化ガス等の物理発泡剤を溶解させ、圧力低下または加熱によって気泡を生成させる発泡方法である。超臨界発泡法は、高圧下で樹脂に超臨界流体を溶解させ、圧力低下によって気泡を生成させる発泡方法である。特に超臨界発泡法が好ましい。
静的架橋工程では、前記発泡工程で得られた前記アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体と水成分とを静的に反応させ、前記アルコキシシリル基をシラノール基化させ、次いで前記シラノール基同士を縮合反応によりシロキサン結合を形成させ、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を作製する。本発明における静的な反応とは、前記アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体と水成分を混練装置の外部で接触されることをいう。
静的架橋工程では、シラノール化を促進させるためのシラノール化促進触媒を配合しておくのが好ましい。シラノール化促進触媒を配合しない場合、反応時間が長くなり、非効率である。シラノール化促進触媒の配合量は、熱可塑性ポリエステルエラストマー100重量部に対して0.01~2重量部が好ましく、0.1~1.5重量部がより好ましい。
シラノール化促進触媒は、触媒マスターバッチ化して用いるのが好ましい。マスターバッチ用樹脂としては、ポリエステル系ポリマーが好ましく、熱可塑性ポリエステルエラストマーがより好ましく、特にメインの熱可塑性ポリエステルエラストマーと等しくするのが好ましい。触媒マスターバッチは、マスターバッチ用樹脂100重量部に対して触媒の量を0.1~10重量部とするのが好ましく、0.5~5重量部がより好ましい。また、触媒マスターバッチの配合量は、樹脂の種類や樹脂と触媒の配合比率により最適量が異なるが、好ましい例としてメインの熱可塑性ポリエステルエラストマー100重量部に対して1~20重量部、より好ましい配合量として3~15重量部を挙げる。
静的架橋工程におけるアルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体と水成分との静的な反応は、アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体と水成分を接触させることにより行う。アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体と水成分との接触方法は、水成分が接触する方法であればよく、特に限定されず、水中に浸す、蒸気を当てる、空気中の水成分を使用する等を挙げることができる。例えば、水中に浸す場合、50℃~95℃程度の温水にアルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を10分~6時間程度浸せば、架橋反応が速やかに進み架橋時間を短縮することができ、好ましい。また、蒸気を当てる場合、オートクレーブ(加熱圧力釜)を使用すれば、温水よりも高い温度・高い圧力の条件の下で処理ができるため、架橋時間を更に短縮することができる。
前記熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体の製造は、前記グラフト化工程、前記発泡工程、及び前記静的架橋工程を連続して行う連続工程により、あるいは非連続で行う非連続工程により行うことができる。
連続工程の場合、熱可塑性ポリエステルエラストマーと変性シランカップリング剤とシラノール化促進触媒等を初めから配合してニ軸押出機に供給し、前記ニ軸押出機によりグラフト化し、アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーのペレットを作製する。その後、前記ペレットを射出成形機で発泡させ、次いで水成分と静的に接触させて架橋を行い、シロキサン結合による架橋構造を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を得る。
前記ペレットを射出成形機で発泡させる方法について、公知の超臨界ガス射出成形法で行う場合を説明する。
溶融状態の熱可塑性ポリエステルエラストマーと、変性シランカップリング剤と、シラノール化促進触媒と、超臨界状態の物理発泡剤と、適宜の溶融粘度調整剤とを溶融混合して金型のキャビティに射出し、次いで金型をコアバックすることにより発泡させて発泡体を形成する。発泡倍率は、コアバック前のキャビティ内に充填する熱可塑性ポリエステルエラストマー等の合計重量および金型をコアバックさせる量で調整することができる。コアバック後の最終的なキャビティの容量を大きくすることで、発泡倍率を大きくすることができる。発泡体の発泡倍率は、2.5倍~10倍が好ましく、より好ましくは3倍~9倍である。
コアバック前のキャビティ内に充填する樹脂等の合計重量は、キャビティ容量と等しいフルショットでも、キャビティ容量よりも少ないショートショットでも、どちらでもよい。ショートショットの場合、キャビティ容積に充填可能な樹脂等の合
計重量に対して、5~20%少ない量をキャビティに射出する。
コアバックによる発泡後、金型内で発泡体を冷却させ、発泡体を金型から取り出す。金型から取り出したアルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を90℃程度の温水に60分程度浸して静的架橋することにより、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にはスキン層を有する独立気泡構造からなる本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体が得られる。
このようにして得られた、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体に対し、厚みをそのままにして所定の大きさに裁断することにより、シロキサン結合による架橋構造を有し、スキン層を両面に有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体が得られる。一方、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体に対して、その厚みを二分割等し、所定の大きさに裁断することにより、シロキサン結合による架橋構造を有し、スキン層を片面に有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体が得られる。
超臨界ガス射出成形法において使用する物理発泡剤としては、窒素や二酸化炭素等を挙げることができる。なお、物理発泡剤に替えて、アゾジカルボンアミド(ADCA)などの化学発泡剤を使用した場合、得られる発泡体のセル構造が粗大となる傾向にあり、物理発泡剤を使用する方が好ましい。
前記連続工程の場合のメリットは、連続工程でシロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を製造することができ、効率的なことである。一方、デメリットは、熱可塑性ポリエステルエラストマーと変性シランカップリング剤とシラノール化促進触媒を初めから配合しておくため、アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーのアルコキシシリル基が空気中の水成分と接触し、架橋反応(アルコキシシリル基がシラノール基を経てシロキサン結合を形成)が起こり、原料のポットライフが短いことである。
非連続工程の場合、まず、熱可塑性ポリエステルエラストマーと変性シランカップリング剤をブレンダーで混合し、一軸混練押出機、二軸混練押出機、バンバリーミキサー等の混練装置で溶融混練してグラフト化し、ペレットを作製する。その後にペレットと触媒マスターバッチを用いて、射出成形機により金型に射出し、アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を得た後、前記発泡体と水成分と接触させて、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を得る。
なお、本明細書では、ペレットは、アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーを、触媒マスターバッチは、シラノール化促進触媒のマスターバッチをそれぞれ指す。
非連続工程の場合のメリットは、触媒マスターバッチを発泡工程の直前に配合するため、連続工程の場合と比べて原料のポットライフが長いことである。一方、連続工程の場合と比べて効率が悪く、さらにペレットが空気中の水成分等と接触し、加水分解反応や縮合反応等の反応が起こらないように保管等に注意が必要となることである。
次に、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体の使用例を示す。図1に示す靴10は、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を靴底用部材41、43として用いた例である。符号11はアッパー、21はミッドソール、31はアウトソールであり、前記ミッドソール21と前記アウトソール31が靴底を構成する。
図2に示すように、前記ミッドソール21の上側の面には、足の裏における踏みつけ部とかかと部に対応する部位に、本発明の一例の靴底用部材41、43が埋設されている。踏み付け部に対応する部位に設けられている靴底用部材41は、跳躍やランニング等において着地等の際に足の指の付け根付近に加わる衝撃を緩和すると共に、地面を蹴る際の力を反発力で高める作用をする。一方、かかと部に対応する部位に設けられている靴底用部材43は、跳躍やランニング等において着地等の際にかかと付近に加わる衝撃を緩和する作用をする。
前記踏み付け部に対応する部位に設けられている靴底用部材41は、足の親指の付け根から小指の付け根の範囲に対して作用するように、横長な長方形からなる。一方、かかと部に対応する部位に埋設されている靴底用部材43は、かかと部の中央に対して作用するように、略円形からなる。前記ミッドソール21の上面に埋設される靴底用部材41、43の厚みは、ミッドソール21の厚みにもよるが、好ましい範囲として2~20mm程度を挙げる。なお、前記靴底用部材41、43は、ミッドソール21の上下を貫通するように埋設されたり、あるいはミッドソール21の上面または下面に配置されたりしてもよい。
前記靴底用部材41、43を構成する本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体は、片面または両面に存在するスキン層により、発泡体の引張強度などの機械的強度や摩耗性などの表面強度が向上し、さらに、発泡体に加わる荷重を面で受けることができるため、荷重が分散され発泡体のヘタリが防止され、高い反発弾性が得られる。さらに、前記靴底用部材41、43を構成する本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体は、シロキサン結合による架橋構造を有するため、圧縮永久歪み(ヘタリ)が小さく、良好な耐久性が得られる。
次の熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)、シランカップリング剤、溶融粘度調整剤、シラノール化促進触媒を図3及び図4の配合にし、ニ軸押出機によりペレットを作製し、作製したペレットを用いて超臨界ガス射出成形法により、実施例1~実施例20及び比較例1~比較例3の各発泡体を製造した。
・TPEE-1(熱可塑性ポリエステルエラストマー1);品名:ペルプレンP-30B、東洋紡社製
・TPEE-2(熱可塑性ポリエステルエラストマー2);品名:ペルプレンP-40B、東洋紡社製
・シランカップリング剤-1;3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、品名:KBE-403、信越化学工業社製
・シランカップリング剤-2;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;品名:KBM-303、信越化学工業社製
・溶融粘度調整剤;エポキシ変性スチレン-アクリル共重合体、エポキシ当量=714、重量平均分子量=9700
・シラノール化促進触媒-1;ジブチル錫ジアセテート、東京化成工業社製
・シラノール化促進触媒-2;ジブチル錫ジラウレート、東京化成工業社製
・物理発泡剤:窒素ガス
シラノール化促進触媒-1及びシラノール化促進触媒-2は、それぞれ配合するメインの熱可塑性ポリエステルエラストマーと同一の熱可塑性ポリエステルエラストマーを用いてマスターバッチ化して使用した。図3及び図4の表におけるTPEE-1及びTPEE-2欄の「樹脂成分」は、樹脂として使用したメインのTPEEの割合を示し、一方「MB成分」は、マスターバッチ化したシラノール化促進触媒に含まれるTPEEの割合を示す。
射出成形機は電動射出成形機を用い、また、金型は可動型と固定型間のキャビティが100×200mmで初期厚みを0.5mmから5.0mmまで可変できるように構成されたものを用いた。
窒素ガスを、超臨界供給装置を用いて超臨界状態とした後、射出成形機のシリンダ内に注入し、シリンダ内で溶融状態とした各成分を結晶融点180℃以上とし、前記窒素ガスを分散溶融混合させた。その後、金型のキャビティに射出し、次いで可動金型をコアバックさせ、冷却させた後に脱型して発泡体を得た。前記発泡体を90℃の温水に60分間浸した後に温水から取り出して実施例1~20及び比較例1~3のサンプルを作製した。なお、実施例1~20では、前記脱型により、アルコキシシリル基を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を得、得られた発泡体を温水に浸すことにより、シロキサン結合による架橋構造を有する熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体が得られる。
実施例1~4は、熱可塑性ポリエステルエラストマーとしてTPEE-1を用い、マスターバッチによる樹脂の割合を10%(10重量部)、シランカップリング剤-1(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)の配合量を0.1~5重量部、シラノール化促進触媒-1(ジブチル錫ジアセテート)の配合量を0.5重量部とし、キャビティ空間の初期の厚み(初期厚み)を2mmにし、樹脂をキャビティ容積に対して100%充填(フルショット)し、その後、コアバック量8mmで型を開き、温水に浸すことにより、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。なお、充填する樹脂は比重を1と仮定して重量を容量に換算し、キャビティ容積に対する充填割合(充填率)を計算した。
実施例5は、シランカップリング剤-1(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)とシランカップリング剤-2(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)を各1重量部配合した以外は実施例1と同様にして、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。
実施例6~8は、マスターバッチによる樹脂の割合を2~30%(2~30重量部)、シラノール化促進触媒-1(ジブチル錫ジアセテート)の配合量を0.1~1.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。
実施例9は、マスターバッチによる樹脂の割合を20%(20重量部)、シランカップリング剤-1(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)の配合量を1重量部、シラノール化促進触媒-1(ジブチル錫ジアセテート)とシラノール化促進触媒-2(ジブチル錫ジラウレート)の配合量を各0.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。
実施例10~13は、シランカップリング剤-1(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)の配合量を1重量部、溶融粘度調整剤の配合量を0.05~1.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。
実施例14は、熱可塑性ポリエステルエラストマーとしてTPEE-2を用い、マスターバッチによる樹脂の割合を10%(10重量部)、シランカップリング剤-1(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)の配合量を1重量部とし、他は実施例1と同様にして、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。
実施例15は、熱可塑性ポリエステルエラストマーとしてTPEE-1を40重量部とそのマスターバッチによる樹脂として10重量部、及びTPEE-2を50重量部、シランカップリング剤-1(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)の配合量を1重量部とした以外は実施例1と同様にして、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。
実施例16~20は、シランカップリング剤-1(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)の配合量を1重量部とし、コアバック量を3~16mmとした以外は実施例1と同様にして、シロキサン結合による架橋構造を有し、表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率2.5~9倍)を、厚み5~18mmで製造した。
比較例1は、熱可塑性ポリエステルエラストマーとしてTPEE-1を用い、他の成分を配合せず、その他は実施例1と同様にして表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。
比較例2は、熱可塑性ポリエステルエラストマーとしてTPEE-1とTPEE-2を併用し、他の成分を配合せず、その他は実施例1と同様にして表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。
比較例3は、熱可塑性ポリエステルエラストマーとしてTPEE-2を用い、他の成分を配合せず、その他は実施例1と同様にして表面にスキン層を有する独立気泡構造の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体(発泡倍率5倍)を、厚み10mmで製造した。
各実施例及び各比較例の各サンプルについて、密度、反発弾性、圧縮永久歪みを測定し、また外観を目視で判断した。結果は図3及び図4に示す。
密度は、各実施例及び各比較例のサンプルから、裁断によって直径29mm×各サンプル厚みの密度測定用サンプルを作成し、JIS K 7222:2005に基づいて測定した。なお、密度測定用サンプルは、両面にスキン層を有する。
反発弾性は、密度と同様に、各実施例及び各比較例のサンプルから、裁断によって100mm角×各サンプル厚みの反発弾性測定用サンプルを作製し、測定用サンプルの合計厚みが10mm未満の場合、複数枚重ねて10mm以上とし、JIS K 6400-3:2011に基づいて測定した(実施例16~18の各サンプルは、2枚重ねてサンプルの合計厚みを10mm以上とした)。なお、反発弾性測定用サンプルは、両面にスキン層を有する。
圧縮永久歪みは、JIS K6262:2013 A法に基づき、次のように測定した。まず、各実施例及び各比較例のサンプルから直径29mmに打ち抜いて圧縮永久歪み測定用サンプルを作製し、温度23℃、湿度50%の環境下で3時間放置した後、ノギスを用いて測定用サンプルの試験前の厚みh0を測定した。測定用サンプルを二枚のステンレス鋼板からなる圧縮板(圧縮装置)で厚み方向に挟み、試験前の厚みh0に対して50%の厚みになるように圧縮し、予め温度50℃、湿度50%の状態に保持した恒温恒湿槽へ測定用サンプルを組込んだ圧縮装置を投入し6時間静置した。この時使用するスペーサ(測定用サンプルの試験前の厚みh0に対して50%の厚み)の厚みh2を測定する。6時間経過後、恒温恒湿槽から圧縮装置を取出し、圧縮状態を解放し、温度23℃、湿度50%の環境下で30分後に測定用サンプルの試験後の厚みh1を測定した。次式にしたがって圧縮永久歪みを算出した。
圧縮永久歪み(%)=[(h0-h1)/(h0-h2)]×100
外観は、セル構造が不均一の場合、表面に鬆や筋が現れるため、外観に鬆や筋が殆ど見られない場合(セル構造が均一な場合)に「〇」、鬆や筋が少し見られる場合(セル構造が僅かに不均一な場合)に「△」、鬆や筋が多く見られる場合(セル構造が著しく不均な場合)に「×」とした。
実施例1~実施例20は、密度が0.11~0.40g/cmであり、かつ反発弾性が63~74%、圧縮永久歪みが19~34%であり、軽量で反発弾性が高く、かつ圧縮永久歪み(ヘタリ)が小さいものであった。
一方、熱可塑性ポリエステルエラストマーのみを使用し、シランカップリング剤等の他の成分を配合していない比較例1~3は、密度及び反発弾性については実施例1~20と同等であったが、圧縮永久歪みが68~70%と極端に大きく、圧縮永久歪み(ヘタリ)が大きいものであった。
このように、各実施例は、軽量で反発弾性が高く、かつ圧縮永久歪み(ヘタリ)が小さく、靴底用部材として好適なものである。
なお、靴底用部材は、ミッドソールの一部に設けるものに限られず、全面または広範囲に設けてもよく、さらに他の靴底構成部材に設けてもよい。
また、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体は、靴底用部材以外の用途として、家具、家電製品、事務用機器等の各種電化製品の弾性足(足ゴム)やロボットや工作機械等の各種産業用機械のダンパー材等として利用することができる。
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体は、発泡体を得た後に架橋処理を行っており、グラフト化工程や発泡工程では架橋反応が起こらない。これに対し、過酸化物や硫黄等を用いて架橋を行う場合、グラフト化工程や発泡工程での加熱により、架橋反応が起こる可能性があり、架橋反応をコントロールすることが難しい。グラフト化工程や発泡工程で架橋反応が起こった場合、マトリクス全体が架橋してしまい、熱可塑性ポリエステルエラストマーの成形自体が行えなくなる。
10 靴
21 ミッドソール
41、43 靴底用部材

Claims (2)

  1. シロキサン結合による架橋構造を有し、密度が0.1~0.4g/cm 、反発弾性が60%以上、JIS K6262:2013 A法に基づく圧縮永久歪みが50%以下であることを特徴とする熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体。
  2. 請求項1記載の熱可塑性ポリエステルエラストマー発泡体を備える靴底用部材。
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