JP3571626B2 - 植物賦活剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物賦活剤に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
植物の賦活技術を開発することは、穀物植物や園芸植物の供給効率を向上させる上で、非常に重要な事項である。
【0003】
植物の成長の速度を決める因子としては、温度、光、栄養分等が考えられる。植物の成長を促進させるために、目的とする植物の性質に応じた温度条件や日照条件を選択する試みは、古来から行われている。これらの温度や光以外の成長促進技術としては、施肥が代表的な技術として挙げられ、一定の効果を上げている。
【0004】
しかしながら、施肥の効果については、自ずと限界があり、用いる肥料の量を多くしても、一定以上の植物の成長の促進効果は期待できないばかりか、肥料を多く与えすぎると、かえって植物の成長に障害となり、ひいては土壌を汚染してしまうことにもなりかねない。
【0005】
特に、植物の成長初期においては、施肥による栄養障害が起こりやすく、通常は、この時期は施肥を控えるのが普通である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決すべき課題は、従来行われている植物の賦活手段とは異なる植物の賦活手段、具体的には、成長促進手段をはじめ、休眠抑制手段、乾燥や高温・低温や浸透圧等の植物のストレスに対する耐性の付与手段、抗老化手段等の植物の成長の調節手段を見出して、肥料の使用量を抑え、土壌環境を悪化させることなく、植物を賦活させることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、この課題の解決に向けて鋭意検討を行った。その結果、「花芽形成促進作用」が認められる特定のケトール脂肪酸(特開平11−29410号公報)において、驚くべきことに、ある意味では対照的な「植物賦活作用」を見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明者は、本願において、炭素原子数が4〜24のケトール脂肪酸を有効成分とする植物賦活剤(以下、本植物賦活剤ともいう)を提供する。
本発明における「植物賦活」とは、何らかの形で植物の成長活動を活性化または維持するように調整することを意味するものであり、成長促進(茎葉の拡大、塊茎塊根の成長促進等を包含する概念である)、休眠抑制、植物のストレスに対する抵抗性の付与、抗老化等の植物成長調節作用を包含する概念である。この「植物賦活」と、特開平11−29410号公報に記載されている「花芽形成促進」とは、ある意味で、対照的な概念である。花芽の形成は、植物の消極的な生命活動に伴っておこる現象であり、一般に、植物の成長が抑制されるときに花芽形成がおきることが知られている。園芸分野において、開花を望む場合には、例えば、▲1▼窒素肥料の施肥量を抑制する、▲2▼水やりを抑制する、▲3▼根を切りつめる、▲4▼幹をいためつける等の、植物の成長にとっては、消極的ともいえる手段を施すことはよく知られている。花の形成は、植物にとっては、老熟した段階での、次代に自己の遺伝子を伝えるための生殖現象の一つで、エネルギーの多くを費やす現象である。
【0009】
よって、花芽形成の促進作用が認められる上記のケトール脂肪酸に、植物賦活作用が認められたことは、全く予測の範囲外のことである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本植物賦活剤は、特定のケトール脂肪酸を有効成分とする剤である。
【0011】
このケトール脂肪酸は、上記の通り、炭素原子数が4〜24のケトール脂肪酸である(以下、このケトール脂肪酸を「特定ケトール脂肪酸」ともいう)。
すなわち、特定ケトール脂肪酸は、その炭素原子数が4〜24であることを特徴とする、アルコールの水酸基とケトンのカルボニル基とを同一分子内に有する脂肪酸である。
【0012】
また、本発明において、特定ケトール脂肪酸は、カルボニル基を構成する炭素原子と水酸基が結合した炭素原子がα位またはγ位の位置にあることが、所望する植物の賦活効果を発揮するうえで好ましく、特に、α位であることがこの観点から好ましい。
【0013】
また、特定ケトール脂肪酸には、炭素間の二重結合が1〜6か所(ただし、この二重結合数は、ケトール脂肪酸の炭素結合数を超えることはない)存在することが、所望する植物の賦活効果を発揮するうえで好ましい。
【0014】
また、特定ケトール脂肪酸の炭素原子数は18であり、かつ、炭素間の二重結合が2か所存在することが好ましい。
特定ケトール脂肪酸の具体例としては、例えば9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸〔以下,特定ケトール脂肪酸(I)ということもある〕、13−ヒドロキシ−12−オキソ−9(),15()−オクタデカジエン酸〔以下,特定ケトール脂肪酸(II)ということもある〕、13−ヒドロキシ−10−オキソ−11(),15()−オクタデカジエン酸〔以下、特定ケトール脂肪酸(III)ということもある〕、9−ヒドロキシ−12−オキソ−10(),15()−オクタデカジエン酸〔以下、特定ケトール脂肪酸(IV)ということもある〕等を挙げることができる。
以下に、特定ケトール脂肪酸(I)および同(IV)の化学構造式を記載する。
【0015】
【化1】
Figure 0003571626
【0016】
【化2】
Figure 0003571626
【0017】
なお、特定ケトール脂肪酸(II)および同(III)の化学構造式は、後述するこれらの特定ケトール脂肪酸の化学合成法についての記載の中で開示する。
特定ケトール脂肪酸のうち、少なくとも一部は動植物における脂肪酸代謝物質の中間体として知られているが、これらが直接植物において果たす役割については知られていない。
【0018】
例えば、特定ケトール脂肪酸(I)は、生体内に豊富に存在するα−リノレン酸を出発物質とする脂肪酸代謝経路の中間体として知られている。しかしながら、この特定ケトール脂肪酸(I)が直接植物において果たす役割については知られていない。
【0019】
本発明者はこれらの本発明関連ケトール不飽和脂肪酸が、植物の賦活作用を有することを見出した。
A.特定ケトール脂肪酸の製造方法について
特定ケトール脂肪酸は、所望するケトール脂肪酸の具体的構造に応じた方法で製造することができる。
【0020】
すなわち、▲1▼天然物に含まれていることが明らかな態様の特定ケトール脂肪酸は、この天然物から抽出精製することで製造することができる(以下、抽出法という)。また、▲2▼不飽和脂肪酸にリポキシゲナーゼ等の酵素を、植物体内における脂肪酸代謝経路に準じて作用させることにより特定ケトール脂肪酸を得ることができる(以下、酵素法という)。さらに、▲3▼所望する特定ケトール脂肪酸の具体的構造に応じて,通常公知の化学合成法を駆使して特定ケトール脂肪酸を得ることができる(以下、化学合成法という)。
【0021】
▲1▼抽出法について:
特定ケトール脂肪酸(I)は、ウキクサ科植物の一種であるアオウキクサ(Lemna paucicostata) から抽出・精製して得ることができる。
【0022】
この抽出法における原材料となるアオウキクサ(Lemna paucicostata) は、池や水田の水面に浮遊する、水面に浮かぶ葉状体が各々1本の根を水中に下ろす小型の水草であり、比較的増殖速度が速いことで知られている。花は、葉状体の体側に形成され、1本の雄しべだけからなる雄花2個と1個の雌しべからなる雌花が、共通した小さな苞に包まれている。
【0023】
このアオウキクサの破砕物に、遠心分離(8000×g・10分間程度)を施し、得られた上清と沈澱物のうち、上清を除いたものを特定ケトール脂肪酸(I)を含む画分として用いることができる。
【0024】
このように、特定ケトール脂肪酸(I)は、上記破砕物を出発物として単離・精製することが可能である。
そして、さらに調製効率の上で好ましい出発物として、アオウキクサを浮かばせたまたは浸漬した後の水溶液を挙げることができる。この水溶液は、アオウキクサが生育可能なものである限りにおいて特に限定されない。
【0025】
この水溶液の調製の具体例は、後述する実施例において記載する。
浸漬時間は、室温で2〜3時間程度でも可能であるが、特に限定されるべきものではない。
【0026】
また、上記した方法で特定ケトール脂肪酸(I)の出発物を調製する場合に、あらかじめアオウキクサに特定ケトール脂肪酸(I)を誘導することができる特定のストレスを与えることが、特定ケトール脂肪酸(I)の製造効率上好ましい。
【0027】
具体的には、乾燥ストレス,熱ストレス,浸透圧ストレス等を前記特定のストレスとして挙げることができる。
乾燥ストレスは、例えば、低湿度(好ましくは相対湿度で50%以下)で室温下、好ましくは24〜25℃程度で、アオウキクサを乾燥したフィルター紙上に広げた状態で放置することによって与えることができる。この場合の乾燥時間は、乾燥する対象となるアオウキクサの配置密度にもよるが、概ね20秒以上、好ましくは5分〜5時間である。
【0028】
熱ストレスは、例えば、温水中にアオウキクサを浸漬することによって与えることができる。この場合の温水の温度は、浸漬時間に応じて選択すべきものである。例えば、5分間程度浸漬する場合は、40〜65℃で可能であり、好ましくは45〜60℃、より好ましくは50〜55℃である。また、上記熱ストレス処理後は、速やかにアオウキクサを常温水中に戻すことが好ましい。
【0029】
浸透圧ストレスは、例えば高濃度の糖溶液等の高浸透圧溶液にアオウキクサを接触させることにより与えることができる。この場合の糖濃度は、例えばマンニトール溶液であれば0.3M以上、好ましくは0.5〜0.7Mであることが好ましい。処理時間は、例えば0.5Mマンニトール溶液を用いる場合は1分以上、好ましくは2〜5分間である。
【0030】
このようにして、所望する特定ケトール脂肪酸(I)を含む出発物を調製することができる。
なお、上記した種々の出発物の基となるアオウキクサの株の種類は、特に限定されないが、P441株は、特定ケトール脂肪酸(I)の製造において、特に好ましい株である。
【0031】
上記のように調製した出発物に以下のような分離・精製手段を施して、所望する特定ケトール脂肪酸(I)を製造することができる。
なお、ここに示す分離手段は例示であり、これらの分離手段に上記出発物から特定ケトール脂肪酸(I)を製造するための分離手段が限定されるものではない。
【0032】
まず、上記出発物に対して溶媒抽出を行い、特定ケトール脂肪酸(I)を含有する成分を抽出することが好ましい。かかる溶媒抽出に用いる溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、クロロホルム、酢酸エチル、エーテル等を用いることができる。これらの溶媒の中でもクロロホルムは、比較的容易に不純物を除去することが可能であるという点において好ましい。
【0033】
この溶媒抽出で得られた油層画分を、通常公知の方法を用いて洗浄・濃縮し、ODS(オクタデシルシラン)カラム等の逆相分配カラムクロマトグラフィー用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけて、花芽形成誘導活性画分を同定・単離することにより特定ケトール脂肪酸(I)を単離することができる〔特定ケトール脂肪酸に花芽形成誘導活性が認められることは、すでに公知である(特開平10−324602号公報等を参照のこと)〕。
【0034】
なお、出発物の性質等に応じて通常公知の他の分離手段、例えば限外濾過,ゲル濾過クロマトグラフィー等を組み合わせて用いることも勿論可能である。
以上、特定ケトール脂肪酸(I)を抽出法で製造する工程について説明したが、所望する態様の特定ケトール脂肪酸が、アオウキクサ以外の植物において存在する場合には、上記に準じた方法や、上記の方法の変法を駆使することにより、その特定ケトール脂肪酸を製造することが可能である。
【0035】
▲2▼酵素法について:
酵素法の出発物質として典型的なものとしては、所望する特定ケトール脂肪酸の構造に応じた位置に二重結合が存在する、その炭素数が4〜24の不飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0036】
この不飽和脂肪酸としては、例えばオレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、9,11−octadecadienoic acid 、10,12−octadecadienoic acid、9,12,15−octadecatrienoic acid 、6,9,12,15−octadecatetraenoic acid 、11,14−eicosadienoic acid、5,8,11−eicosatrienoic acid、5,8,11−eicosatrienoic acid、11,14,17−eicosatrienoic acid、5,8,11,14,17−eicosapentaenoic acid、13,16−docosadienoic acid、13,16,19−docosatrienoic acid、7,10,13,16−docosatetraenoic acid、7,10,13,16,19−docosapentaenoic acid 、4,7,10,13,16,19−docosahexaenoic acid等を挙げることができるが、これらの不飽和脂肪酸に限定されるものではない。
【0037】
これらの不飽和脂肪酸は、概ね動物・植物等に含まれている不飽和脂肪酸であり、これらの動物・植物等から通常公知の方法を通じて抽出・精製したものや、通常公知の方法により化学合成したものを用いることも可能であり、市販品を用いることも勿論可能である。
【0038】
この酵素法においては、上記の不飽和脂肪酸を基質として、リポキシゲナーゼ(LOX)を作用させて、これらの不飽和脂肪酸の炭素鎖にヒドロペルオキシ基(−OOH)を導入する。
【0039】
リポキシゲナーゼは、不飽和脂肪酸の炭素鎖に分子状酸素をヒドロペルオキシ基として導入する酸化還元酵素であり、動物・植物を問わず、またサッカロミセス属に代表される酵母においてもその存在が確認されている酵素である。
【0040】
例えば、植物であれば被子植物全般〔具体的には、後述する本植物賦活剤を適用可能な双子葉植物および単子葉植物全般〕において、その存在が確認されている酵素である。
【0041】
これらの植物の中でも特にダイズ、アマ、アルファルファ、大麦、ソラマメ、ハウチワマメ、ヒラマメ、エンドウマメ、ジャガイモ、小麦、リンゴ、パンイースト、綿、キュウリ、スグリ、ブドウ、西洋ナシ、インゲンマメ、コメ、イチゴ、ヒマワリ、茶等がリポキシゲナーゼの出所としては好ましい。また、クロロフィルがリポキシゲナーゼの上記活性を阻害する傾向が強いために、可能な限り植物におけるクロロフィルが存在しない種子、根、果実等をリポキシゲナーゼの原料として選択することが好ましい。
【0042】
本発明においてリポキシゲナーゼは、不飽和脂肪酸の炭素鎖の所望する位置ににヒドロペルオキシ基を導入することができるものであれば、その由来は特に限定されないが、特定ケトール脂肪酸(I)の場合には、可能な限り選択的にリノール酸またはリノレン酸の9位の二重結合部分を酸化するリポキシゲナーゼを用いることが好ましい。
【0043】
かかる選択的リポキシゲナーゼの代表的なリポキシゲナーゼとして、例えばコメ胚芽(rice germ)に由来するリポキシゲナーゼを挙げることができる〔Yamamoto,A.,Fuji,Y.,Yasumoto,K.,Mitsuda,H.,Agric.Biol.Chem.,44,443(1980)等〕。
【0044】
そして、この選択的リポキシゲナーゼに対する基質として選択する不飽和脂肪酸としては、リノール酸またはα−リノレン酸を用いることが好ましい。
なお、不飽和脂肪酸を基質としてリポキシゲナーゼ処理を行うに際しては、用いるリポキシゲナーゼの至適温度および至適pHで酵素反応を進行させることが好ましいのは当然である。
【0045】
また、上記のリポキシゲナーゼ反応工程により生じた、製造を企図しない夾雑物は、通常公知の方法、例えば上記▲1▼の欄で述べたHPLC等を用いることにより、容易に分離することが可能である。
【0046】
ここで用いられるリポキシゲナーゼは、通常公知の方法により、上記植物等から抽出・精製したものを用いることも、市販品を用いることも可能である。
このようにして、上記不飽和脂肪酸からヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸を製造することができる。
【0047】
このヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸は、特定ケトール脂肪酸の酵素法による製造工程の中間体として位置づけることが可能である。
このヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸としては、例えば上記特定ケトール脂肪酸(I)の中間体として、α−リノレン酸にリポキシゲナーゼを作用させて得ることができる9−ヒドロペルオキシ−10(),12(),15()−オクタデカトリエン酸を挙げることができる。
【0048】
これらのヒドロペルオキシ脂肪酸のうち、前者の9−ヒドロペルオキシ−10(),12(),15()−オクタデカトリエン酸を本発明関連ヒドロペルオキシ脂肪酸(a)として、また後者の13−ヒドロペルオキシ−9(),11(),15()−オクタデカトリエン酸を本発明関連ヒドロペルオキシ脂肪酸(b)として、これらの化学構造式を以下に記載する。
【0049】
【化3】
Figure 0003571626
【0050】
【化4】
Figure 0003571626
【0051】
次いで、このヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸を基質として、アレンオキサイドシンターゼを作用させることによって、所望する特定ケトール脂肪酸を製造することができる。
【0052】
アレンオキサイドシンターゼは、ヒドロペルオキシ基をエポキシ化を経てケトール体に変換する活性を有する酵素であり、前記リポキシゲナーゼと同様に植物,動物および酵母において存在する酵素であり、植物であれば被子植物全般〔具体的には、後述する本植物賦活剤を適用可能な双子葉植物および単子葉植物全般〕において、存在している酵素である。
【0053】
なお、このアレンオキサイドシンターゼは植物であれば、大麦、小麦、トウモロコシ、綿、ナス、アマ(種等)、チシャ、エンバク、ホウレンソウ、ヒマワリ等においてその存在が認められている。
【0054】
本発明においてアレンオキサイドシンターゼは、例えば上記の9−ヒドロペルオキシ−10(),12(),15()−オクタデカトリエン酸の9位のヒドロペルオキシ基を脱水することによりエポキシ基を形成させ、さらにOHの求核反応により、所望する特定ケトール脂肪酸を結果として得ることができる限りにおいて特に限定されるものではない。
【0055】
ところで、上記のアレンオキサイドシンターゼ処理を行うに際しては、用いるアレンオキサイドシンターゼの至適温度および至適pHで酵素反応を進行させることが好ましいのは当然である。
【0056】
また、ここで用いられるアレンオキサイドシンターゼは、通常公知の方法により、上記植物等から抽出・精製したものを用いることも、市販品を用いることも可能である。
【0057】
上記の2工程の酵素反応は、別々に行うことも、連続して行うことも可能である。さらに、上記酵素の粗精製品または精製品を上記酵素反応を進行させるために用いて、所望する特定ケトール脂肪酸を得ることが可能である。また、上記酵素を担体に固定して、これらの固定化酵素を調製してカラム処理またはバッチ処理等を基質に施すことにより所望する特定ケトール脂肪酸を得ることができる。
【0058】
また、上記の2工程に用いる酵素の調製法として、遺伝子工学的手法を用いることも可能である。すなわち、これらの酵素をコードする遺伝子を、常法により、植物等から抽出・取得し、または、酵素の遺伝子配列に基づいて化学合成することにより取得し、かかる遺伝子により、大腸菌や酵母などの微生物、動物培養細胞、植物培養細胞などを形質転換し、これらの形質転換細胞において、組換え酵素蛋白質を発現させることにより、所望する酵素を得ることができる。
【0059】
なお、エポキシ基を形成させた後のOHの求核反応(上記)により特定ケトール脂肪酸を得ようとする場合に、その求核物の上記エポキシ基付近における作用形式によっては、α−ケトール不飽和脂肪酸の他に、γ−ケトール化合物が生成する。
【0060】
このγ−ケトール化合物は、上記▲1▼の欄で述べたHPLC等の通常公知の分離手段を用いることにより、容易にα−ケトール化合物と分離することができる。
▲3▼化学合成法について:
また、特定ケトール脂肪酸は、通常公知の化学合成法を駆使することにより製造することもできる。
【0061】
例えば、その一端にアルデヒド基等の反応性基を有し、他端に保護基を結合させたカルボキシル末端を付加させた飽和炭素鎖を通常公知の方法により合成し、これとは別にcis−3−ヘキセン−1− オール等の不飽和アルコール等を出発物質として、所望の位置に不飽和基を有する反応性末端を有する不飽和炭素鎖とを合成する。次いで、上記飽和炭化水素鎖とこの不飽和炭素鎖とを反応させて、特定ケトール脂肪酸を製造することができる。なお、この一連の反応において、反応を企図しない末端に付加する保護基や反応を促進するための触媒は、具体的な反応様式に応じて適宜選択して用いることができる。
【0062】
さらに具体的には、例えば以下のような手順で特定ケトール脂肪酸を合成することができる。
i)特定ケトール脂肪酸(I)の合成
Nonanedioic acid monoethyl esterを出発原料として、N,N’−carbonyldiimidazoleと反応させ、酸イミダゾリドとした後に、低温でLiAlH還元して,対応するアルデヒドを合成する。なお、上記出発物質を例えば1,9−nonanediol等のジオールとして、同様のアルデヒドを合成することも可能である。
【0063】
これとは別に、cis−3−ヘキセン−1− オール(cis−3−hexen−1−ol)をtriphenylphosphineおよびcarbon tetrabromide と反応させ、得られた臭化化合物にtriphenyl phosphine を反応させ、さらにn−BuLiの存在下でchloroacetaldehydeと反応させることによりcis オレフィンを構築し、さらにこれにmethylthiomethyl p−tolyl sulfoneと反応後、NaH の存在下、上記のアルデヒドと反応させて誘導した2級アルコールをtert−butyl diphenyl silyl chlorid(TBDPSCl)で保護して、酸加水分解、次いで脱保護することにより、所望する特定ケトール脂肪酸(I)を合成することができる。
以下に、この特定ケトール脂肪酸(I)の合成工程の一例の簡単な工程図を示す。
【0064】
【化5】
Figure 0003571626
【0065】
ii) 特定ケトール脂肪酸(II)の合成
Nonanedioic acid monoethyl ester を出発原料として、塩化チオニルと反応させることにより、これを酸クロリドとした後で、NaBH還元を行い、酸アルコールを生成させる。次いで、この酸アルコールの遊離カルボン酸を保護した後に、triphenylphosphineおよびcarbon tetrabromide と反応させ、得られた臭化化合物にtriphenylphosphineを反応させ、さらにn−BuLiの存在下でchloroacetaldehydeと反応させることによりcis オレフィンを構築し、さらにこれにmethylthiomethyl p−tolyl sulfoneと反応後、n−BuLiの存在下で、これを別にcis−3−hexen−1−olのPCC 酸化により誘導したアルデヒドと反応させ、最後に脱保護することにより、所望する特定ケトール脂肪酸(II)を合成することができる。
以下に、この特定ケトール脂肪酸(II)の合成工程の一例の簡単な工程図を示す。
【0066】
【化6】
Figure 0003571626
【0067】
iii)本発明ケトール脂肪酸(III)の合成
Methyl vinyl ketoneを出発原料とし、LDA およびDME の存在下でtrimethylsilylchlorideを反応させ、得られたシリルエーテルを、低温(−70℃) でMCPBA およびtrimethylamine hydrofluoric acidを添加してケトアルコールを調製する。次いでこのケトアルコールのカルボニル基を保護した後に、triphenylphosphineおよびtrichloroacetoneを反応試薬に用いて、オレフィンに塩化物を付加させることなく反応させ、この反応物をtributylarsineおよびKCOの存在下で、formic acid を反応させ、trans オレフィンを構築して塩化物とする。次いで、この塩化物とcis−3−hexen−1−olのPCC 酸化により誘導したアルデヒドと反応させて、この反応物と6−heptenonic acid との結合反応を行い、最後に脱保護することにより、所望する特定ケトール脂肪酸(III)を合成することができる。
以下に、この特定ケトール脂肪酸(III)の合成工程の一例の簡単な工程図を示す。
【0068】
【化7】
Figure 0003571626
【0069】
B.本植物賦活剤について
本植物賦活剤は、これを植物に使用することにより、その植物を活性化させることが可能である。特に、本植物賦活剤は、植物の成長を、活性化の方向に向けて様々に調節し得る、植物成長調節剤としての効果を、主要な効果として奏する剤である。
【0070】
この「植物賦活作用」ないし「植物成長調節作用」の内容を、以下に、具体的に説明する。
▲1▼成長促進作用
本植物賦活剤は、これを投与することにより、その植物の成長速度を早め、収穫効率等を向上させることが可能である(前述したように、茎葉の拡大、塊茎塊根の成長促進等を期待することができる)。この意味で、本発明は、「植物の成長促進」という、より具体的な効果を奏する剤をも提供する(植物成長促進剤)。
【0071】
本植物賦活剤を、植物の成長促進の目的で用いると、これまで肥料では成長促進が困難であった、発芽後初期の植物の成長を特に促進することができる。
故に、本植物賦活剤を植物成長促進剤として用いる場合の投与は、播種時ないし発芽後の生育初期段階にすることが好ましい。
【0072】
すなわち、本植物賦活剤を、発芽後の生育初期に、噴霧等により投与するだけで、植物の成長の促進が認められ、しかも、その成長促進効果には持続性が認められる。また、前述したように、本植物賦活剤を、過剰に使用しても、施肥を過剰に行う場合のような植物の生育障害がほとんど認められず、使用量をあまり気にかけることなく用いることができる。
【0073】
園芸ないし農業の分野においては、納品後の扱いが面倒な種子ではなく、苗による流通が主流になりつつある。特に、花卉ビジネスにおいては、一般愛好家は、すでにほとんど苗を購入している。本植物賦活剤を苗の流通前に用いることにより、販売時において、苗を大きくすることが可能である。
【0074】
特に、イネ等においては、苗床により、初期の成長を果たしてから、田圃に植えつけるのが通常であるが、苗床において本植物賦活剤を投与することにより、苗の成長を促進させるだけではなく、植えつけた後の株当たりの茎数を増加させて、イネであれば、株当たりの実穂数を増加させて、収穫の効率を向上させることも可能である。また、同様に、ムギ類やトウモロコシ類の、他のイネ科植物やダイズ等のマメ科植物における収穫効率を向上させることも可能である。
【0075】
また、上述した本植物賦活剤の性質は、ホウレンソウ、レタス、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー等における収穫の増大に適している。
さらには、本植物賦活剤を、子嚢菌類や担子菌類に対して投与することにより、これらの菌類の菌糸の増殖を促進させて、子実体(キノコ:例えば、シイタケ、ヒラタケ、シメジ、マッシュルーム、ナメコ、マイタケ、エノキ等)の収穫効率を向上させることもできる。また、本植物賦活剤を用いることで、現在、人工栽培が困難な種類のキノコ(例えば、マツタケ等)における、人工栽培法の確立に寄与することができる可能性も認められる。
【0076】
▲2▼休眠抑制作用
本植物賦活剤は、これを投与することにより、植物の休眠を防止することができる。すなわち、本植物賦活剤を用いることで、植物が一定期間、その成長をストップしてしまう「休眠期間」を短縮したり終了させたりすることが可能である。
【0077】
この意味で、本発明は、「植物の休眠抑制」という、より具体的な効果を奏する剤をも提供する(植物休眠抑制剤)。
本植物賦活剤を、植物休眠抑制剤として用いる場合の投与は、植物の発芽後の早い時期に行うことで、植物の休眠を予防することができる。また、既に、休眠してしまった植物に投与して、その植物の休眠を終了させることも可能である。
【0078】
▲3▼抗ストレス作用
本植物賦活剤は、これを投与することにより、植物における様々なストレス、具体的には、乾燥ストレス、高温ストレス、低温ストレス、浸透圧ストレス等に対する抵抗性を付与することができる。すなわち、本植物賦活剤を用いることで、栽培植物の収率を低下させる原因ともなる、気候変動、種子の発芽誘導作業等に伴う、植物に対するストレスの影響を軽減することが可能である。
【0079】
この意味で、本発明は、「植物に対するストレスの抑制」という、より具体的な効果を奏する剤をも提供する(植物ストレス抑制剤)。
本植物賦活剤を、植物のストレス抑制剤として用いる場合の投与は、植物の種子を発芽させる際や、発芽後に行うことで、植物にストレスに対する抵抗性を付与することが可能である。
【0080】
また、本植物賦活剤は、これを投与することにより、その植物の老化を抑制することができる可能性が認められる。具体的には、例えば、一年草等でも見られるように、株が衰弱して枯死に向かう時期に、本植物賦活剤を投与することにより、衰弱(老化)を遅らせることも可能である。
【0081】
本植物賦活剤の有効成分である、特定ケトール脂肪酸の植物に対する投与量の上限は特に限定されない。すなわち、本植物賦活剤により、特定ケトール脂肪酸を多量に投与しても、成長阻害等の植物に対する負の効果は、ほとんど認められない。これは、従来から用いられている植物ホルモン剤を過剰投与すると、植物に対する負の効果が顕著に現れ、これらの使用に際しては、過剰投与がなされないように格別の気配りをしなければならないことと比較すると、本植物賦活剤は非常に優れているといえる。
【0082】
また、上記の特定ケトール脂肪酸の植物に対する投与量の下限は、植物個体の種類や大きさにより異なるが、1つの植物個体に対して1回の投与当り、1μM 程度以上が一応の目安である。
【0083】
本植物賦活剤における、特定ケトール脂肪酸の配合量は、その使用態様や使用する対象となる植物の種類、さらには本植物賦活剤の具体的な剤形等に応じて選択することが可能である。本植物賦活剤の態様として、特定ケトール脂肪酸をそのまま用いることも可能であるが、上記の特定ケトール脂肪酸の投与の目安等を勘案すると、概ね、剤全体に対して0.1〜100ppm 程度が好ましく、さらに好ましくは、同1〜50ppm 程度である。
【0084】
本植物賦活剤の剤形としては、例えば、液剤、固形剤、粉剤、乳剤、底床添加剤等の剤形が挙げられ、その剤形に応じて、製剤学上適用することが可能な公知の担体成分、製剤用補助剤等を本発明の所期の効果である植物の成長促進作用が損なわれない限度において、適宜配合することができる。例えば、担体成分としては、本植物賦活剤が底床添加剤または固形剤である場合には、概ねタルク、クレー、バーミキュライト、珪藻土、カオリン、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、白土、シリカゲル等の無機質や小麦粉、澱粉等の固体担体が;また液剤である場合には、概ね水、キシレン等の芳香族炭化水素類、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の液体担体が上記の担体成分として用いられる。また製剤用補助剤としては、例えばアルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等の陰イオン界面活性剤、高級脂肪族アミンの塩類等の陽イオン界面活性剤、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールアシルエステル、ポリオキシエチレングリコール多価アルコールアシルエステル、セルロース誘導体等の非イオン界面活性剤、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム等の増粘剤、増量剤、結合剤等を適宜配合することができる。
【0085】
さらに必要に応じて、一般的な植物成長調節剤や、安息香酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ピペコリン酸等を、上記の本発明の所期の効果を損なわない限度において、本植物賦活剤中に配合することもできる。
【0086】
本植物賦活剤は、その剤形に応じた方法で種々の植物に用いられ得る。例えば、本発明においては、植物の生長点のみならず、茎や葉をはじめとする植物体の一部または全体に液剤や乳剤として散布、滴下、塗布等することや、固形剤や粉剤として地中から根に吸収させること等が可能である。また、成長の促進を図る植物がウキクサ等の水草の場合には、底床添加剤として根から吸収させたり、固形剤を水中で除々に溶解させること等も可能である。
【0087】
本植物賦活剤の植物への投与頻度は、植物個体の種類や投与目的等により異なるが、基本的には、ただ1度の投与によっても所望する効果を得ることができる。複数回投与する場合には、1週間以上の投与間隔をあけることが効率的である。
【0088】
本植物賦活剤を適用可能な植物の種類は特に限定されず、被子植物(双子葉植物・単子葉植物)の他、菌類、地衣類、蘚苔類、シダ類および裸子植物に対しても、本植物賦活剤は有効である。
【0089】
被子植物のうち、双子葉植物としては、例えば、アサガオ属植物(アサガオ)、ヒルガオ属植物(ヒルガオ、コヒルガオ、ハマヒルガオ)、サツマイモ属植物(グンバイヒルガオ、サツマイモ)、ネナシカズラ属植物(ネナシカズラ、マメダオシ)が含まれるひるがお科植物、ナデシコ属植物、ハコベ属植物、タカネツメクサ属植物、ミミナグサ属植物、ツメクサ属植物、ノミノツヅリ属植物、オオヤマフスマ属植物、ワチガイソウ属植物、ハマハコベ属植物、オオツメクサ属植物、シオツメクサ属植物、マンテマ属植物、センノウ属植物、フシグロ属植物、ナンバンハコベ属植物等のなでしこ科植物をはじめ、もくまもう科植物、どくだみ科植物、こしょう科植物、せんりょう科植物、やなぎ科植物、やまもも科植物、くるみ科植物、かばのき科植物、ぶな科植物、にれ科植物、くわ科植物、いらくさ科植物、かわごけそう科植物、やまもがし科植物、ぼろぼろのき科植物、びゃくだん科植物、やどりぎ科植物、うまのすずくさ科植物、やっこそう科植物、つちとりもち科植物、たで科植物、あかざ科植物、ひゆ科植物、おしろいばな科植物、やまとぐさ科植物、やまごぼう科植物、つるな科植物、すべりひゆ科植物、もくれん科植物、やまぐるま科植物、かつら科植物、すいれん科植物、まつも科植物、きんぽうげ科植物、あけび科植物、めぎ科植物、つづらふじ科植物、ろうばい科植物、くすのき科植物、けし科植物、ふうちょうそう科植物、あぶらな科植物、もうせんごけ科植物、うつぼかずら科植物、べんけいそう科植物、ゆきのした科植物、とべら科植物、まんさく科植物、すずかけのき科植物、ばら科植物、まめ科植物、かたばみ科植物、ふうろそう科植物、あま科植物、はまびし科植物、みかん科植物、にがき科植物、せんだん科植物、ひめはぎ科植物、とうだいぐさ科植物、あわごけ科植物、つげ科植物、がんこうらん科植物、どくうつぎ科植物、うるし科植物、もちのき科植物、にしきぎ科植物、みつばうつぎ科植物、くろたきかずら科植物、かえで科植物、とちのき科植物、むくろじ科植物、あわぶき科植物、つりふねそう科植物、くろうめもどき科植物、ぶどう科植物、ほるとのき科植物、しなのき科植物、あおい科植物、あおぎり科植物、さるなし科植物、つばき科植物、おとぎりそう科植物、みぞはこべ科植物、ぎょりゅう科植物、すみれ科植物、いいぎり科植物、きぶし科植物、とけいそう科植物、しゅうかいどう科植物、さぼてん科植物、じんちょうげ科植物、ぐみ科植物、みそはぎ科植物、ざくろ科植物、ひるぎ科植物、うりのき科植物、のぼたん科植物、ひし科植物、あかばな科植物、ありのとうぐさ科植物、すぎなも科植物、うこぎ科植物、せり科植物、みずき科植物、いわうめ科植物、りょうぶ科植物、いちやくそう科植物、つつじ科植物、やぶこうじ科植物、さくらそう科植物、いそまつ科植物、かきのき科植物、はいのき科植物、えごのき科植物、もくせい科植物、ふじうつぎ科植物、りんどう科植物、きょうちくとう科植物、ががいも科植物、はなしのぶ科植物、むらさき科植物、くまつづら科植物、しそ科植物、なす科植物(なす、トマト等)、ごまのはぐさ科植物、のうぜんかずら科植物、ごま科植物、はまうつぼ科植物、いわたばこ科植物、たぬきも科植物、きつねのまご科植物、はまじんちょう科植物、はえどくそう科植物、おおばこ科植物、あかね科植物、すいかずら科植物、れんぷくそう科植物、おみなえし科植物、まつむしそう科植物、うり科植物、ききょう科植物、きく科植物等を例示することができる。
【0090】
同じく、単子葉植物としては、例えば、ウキクサ属植物(ウキクサ)およびアオウキクサ属植物(アオウキクサ、ヒンジモ)が含まれる、うきくさ科植物、カトレア属植物、シンビジウム属植物、デンドロビューム属植物、ファレノプシス属植物、バンダ属植物、パフィオペディラム属植物、オンシジウム属植物等が含まれる、らん科植物、がま科植物、みくり科植物、ひるむしろ科植物、いばらも科植物、ほろむいそう科植物、おもだか科植物、とちかがみ科植物、ほんごうそう科植物、いね科植物(イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ等)、かやつりぐさ科植物、やし科植物、さといも科植物、ほしぐさ科植物、つゆくさ科植物、みずあおい科植物、いぐさ科植物、びゃくぶ科植物、ゆり科植物(アスパラガス等)、ひがんばな科植物、やまのいも科植物、あやめ科植物、ばしょう科植物、しょうが科植物、かんな科植物、ひなのしゃくじょう科植物等を例示することができる。
【0091】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、これにより本発明の技術的範囲が限定されるべきものではない。
〔製造例〕特定ケトール脂肪酸(I)の製造
以下のようにして、特定ケトール脂肪酸(I)〔9−hydroxy−10−oxo−12 (), 15()−octadecadienoic acid 〕を酵素法により製造した。
【0092】
1.コメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの調製
コメ胚芽350g を石油エーテルで洗浄,脱脂および乾燥したもの(250g )を、0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)1.25L に懸濁し、この懸濁物をホモジナイズした。
【0093】
次いで、かかるホモジナイズ抽出液を16000rpm で15分間遠心分離し、上清(0.8L )を得た。得られた上清に硫酸アンモニウム140.8g (30%飽和)を加え、4℃で一晩放置した。その後、9500rpm で30分間遠心を行い、得られた上清(0.85L )に硫酸アンモニウム232g (70%飽和)を添加して、4℃で5時間放置した。
【0094】
次に、同様に9500rpm で30分間遠心を行い、これにより得られた沈澱物(コメ胚芽抽出液の硫安30〜70%飽和画分)を、pH4.5の酢酸緩衝液300mLに溶解し、63℃で5分間加熱処理を行った。その後、生成した沈澱物を除去して、得られた上清を、RC透析チューブ(Spectrum社製ポア4:MWCO 12000〜14000 )を用いて透析(3L ×3)により脱塩後、所望するコメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの粗酵素液を得た。
【0095】
2.アマ種子由来のアレンオキサイドシンターゼの調製
アマ種子は一丸ファルコスから購入した。このアマ種子200g に、アセトン250mLを添加してホモジナイズ(20s ×3)し、得られた沈澱物を目皿ロートで濾取し、溶媒を除去した。
【0096】
次いで、沈澱物を再びアセトン250mLに懸濁してホモジナイズ(10s ×3)し、沈澱物を得た。沈澱物をアセトンおよびエチルエーテルで洗浄後、乾燥して、アマ種子のアセトン粉末を得た(150g )。
【0097】
このアマ種子のアセトン粉末のうち20g 分を、氷冷下50mMリン酸緩衝液(pH7.0)400mLに懸濁し、これを4℃で1時間スターラー攪拌を施して抽出した。
【0098】
得られた抽出物を、11000rpm で30分間遠心し、これにより得られた上清(380mL)に硫酸アンモニウム105.3g (0〜45%飽和)を加え、氷冷下で1時間静置し、さらに11000rpm で30分間遠心して得られた沈澱物を、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)150mLに溶解し、透析して脱塩し(3L ×3)、所望するアマ種子由来のアレンオキサイドシンターゼの粗酵素液を得た。
【0099】
3.α−リノレン酸のナトリウム塩の調製
出発原料とするα−リノレン酸は、水における溶解性が著しく低いので、酵素基質として働くことを容易にするために、α−リノレン酸をナトリウム塩化した。
【0100】
すなわち、炭酸ナトリウム530mgを、精製水10mLに溶解して55℃に加温し、これにα−リノレン酸(ナカライテスク社)を278mg滴下して、3時間攪拌した。
【0101】
反応終了後、Dowex50W−X8(Hform) (ダウケミカル社製)で中和すると、沈澱物が生成した。これを濾過して樹脂を除き、MeOHで溶解後、減圧下で溶媒を留去した。
【0102】
これにより得られた生成物をイソプロパノールで再結晶し、所望するα−リノレン酸のナトリウム塩(250mg,83%)を得た。
4.特定ケトール脂肪酸(I)の製造
上記3により得られたα−リノレン酸のナトリウム塩(15mg:50μmol )を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)30mLに溶解した。次いで、この溶液に、酸素気流下、25℃で上記1により得たコメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの粗酵素液を3.18mL添加した後、30分間攪拌した後、さらに同じくコメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの粗酵素液を3.18mLを添加して、30分間攪拌した。
【0103】
この攪拌終了後、このリポキシゲナーゼ反応物に、窒素気流下で上記2で得たアレンオキサイドシンターゼの粗酵素液を34.5mL添加して、30分間攪拌した後、氷冷下希塩酸を添加して、反応溶液のpHを3.0に調整した。
【0104】
次いで、反応液をCHCl−MeOH=10:1で抽出した。得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水し、減圧下、溶媒を留去して乾燥した。
このようにして得られた粗生成物をHPLCにかけて、その特定ケトール脂肪酸(I)と認められるピーク(リテンションタイム:16分付近)を分取した。分取した画分にクロロホルムを加え、クロロホルム層を分離して水洗し、エバポレーターでこのクロロホルムを留去して、精製物を得た。
【0105】
この精製物の構造を確認するために重メタノール溶液でH,および13C−NMRスペクトルを測定した。
その結果、H−NMRにおいて、末端メチル基〔δ0.98(t) 〕,2組のオレフィン〔(δ5.25,5.40),(δ5.55,5.62 )〕,2級水酸基〔δ4.09(dd)〕および多数のメチレンに基づくシグナルが認められ、特定ケトール脂肪酸(I)であると推定された。
【0106】
さらに、13C−NMRのケミカルシフト値を比較したところ、特定ケトール脂肪酸(I)〔特開平10−324602号公報第7頁の第11欄下から第1行目以降に記載されている「製造例(抽出法)」における13C−NMRのケミカルシフト値(同公開公報第8頁第13欄第2行目以降段落番号0054・段落番号0055)〕と一致した(第1表参照のこと)。
【0107】
よって、上記のようにして得た酵素法による合成品は、確かに、9−hydroxy−10−oxo−12 (Z), 15(Z)−octadecadienoic acid であることが明らかになった。
【0108】
【表1】
Figure 0003571626
【0109】
〔試験例A〕特定ケトール脂肪酸(I)の植物の成長促進効果の検討(成長促進効果試験)
1.アサガオにおける成長促進効果の検討
9g のアサガオ(品種名:ムラサキ)の種子に濃硫酸処理を20分間施し、その後流水下で一晩放置した。次いで、種子のへその部分を上にして、湿った海砂上に24時間置いて、発根させた。これらの発根した種子を海砂中に、1.5〜2.0cm程度の深さに植え、連続光下で培養した(5日間程度)。
【0110】
この培養により開葉したアサガオの全植物体を、培養液〔KNO(250mg),NHNO(250mg),KHPO(250mg),MgSO・7HO(250mg),MnSO・4HO(1mg),Fe−citrate n−hydrate(6mg),HBO(2mg),CuSO・5HO(0.1mg),ZeSO・7HO(0.2mg),NaMoO・2HO(0.2mg),Ca(HPO・2HO(250mg) /1000mL蒸留水〕に移した。
【0111】
この培養系に、水または特定ケトール脂肪酸(I)100μM 水溶液を噴霧し、一晩(14時間)暗処理をおこなった。その後、25℃で16日間連続光で育成し、16日目の株の高さを測定した。N=8 の結果を平均した結果を第1図に示した〔図中、「I」と表記してあるのは、「特定ケトール脂肪酸(I)」の意味である(以下の図面において同様である)〕。第1図に示すように、特定ケトール脂肪酸(I)により、明らかにアサガオの株が大きくなった。
【0112】
2.レタスにおける成長促進効果の検討
レタスの播種一ヶ月後に、特定ケトール脂肪酸(I)50μM 水溶液を5日間にわたり毎日噴霧して、その後の成長(株幅)を観察した。その結果を、第2図に示す。第2図により、レタスにおける特定ケトール脂肪酸(I)による、成長促進効果が認められた。また、この成長促進効果は、試験開始48日後においても維持されていた。
【0113】
3.ソラマメにおける成長促進効果の検討
ソラマメの播種一ヶ月後に、特定ケトール脂肪酸(I)50μM 水溶液を5日間にわたり毎日噴霧して、その後の成長(株幅)を観察した。その結果を、第3図に示す。第3図により、ソラマメにおける特定ケトール脂肪酸(I)による、成長促進効果が認められた。また、この成長促進効果は、試験開始48日後においても維持されていた。
【0114】
4.ユーストマ(トルコギキョウ)における成長促進効果の検討
ユーストマの播種3ヶ月後のロゼット葉に、特定ケトール脂肪酸(I)50μM 水溶液を5日間にわたり、毎日噴霧したところ、抽苔が直ちに観察された。その後、48日間にわたり、株の成長を観察したところ、株幅はそれほどの増大を示さなかったが、草丈については48日後でも増大し続けていた。その結果(草丈)を、第4図に示す。
【0115】
5.シクラメンにおける成長促進効果の検討
シクラメンの播種後、4ヶ月経ってから、特定ケトール脂肪酸(I)50μM 水溶液を5日間にわたり、毎日噴霧した。その後、48日間にわたり、株の幅と葉枚数を観察したところ、いずれも促進効果が見られた。その結果を、第5図に示す。
【0116】
6.ジギタリスにおける成長促進効果の検討
ジギタリスの播種後、2週間経ってから、特定ケトール脂肪酸(I)80μM 水溶液を5日間にわたり、毎日噴霧した。さらに、試験開始3ヶ月後から、同じ濃度の特定ケトール脂肪酸(I)を、一週間に一度、6週間にわたり噴霧した。その5.5ヶ月後に、葉の大きさと株の高さを測定したところ、いずれにおいても成長促進効果が認められた(第6図を参照のこと)。
【0117】
7.クリサンセマム( Chrysanthemum )における成長促進効果の検討
クリサンセマムの播種後、2週間経ってから、特定ケトール脂肪酸(I)80μM 水溶液を5日間にわたり、毎日噴霧した。さらに、試験開始3ヶ月後から、同じ濃度の特定ケトール脂肪酸(I)を、一週間に一度、6週間にわたり噴霧した。クリサンセマムの栄養成長期は抽苔していないので、株の幅について、上記の最終噴霧4ヶ月後に測定したところ、有意に、クリサンセマムの株の幅が増大していることがわかった(第7図参照のこと)。
【0118】
8.ゼラニウム( Geranium )における成長促進効果の検討
ゼラニウムの播種後、2週間経ってから、特定ケトール脂肪酸(I)80μM 水溶液を5日間にわたり、毎日噴霧した。さらに、試験開始3ヶ月後から、同じ濃度の特定ケトール脂肪酸(I)を、一週間に一度、6週間にわたり噴霧した。なお、ゼラニウムについては、葉に模様があるものと、ないものの2種について、この試験を行った。上記の最終噴霧から5.5ヶ月後に葉の大きさを測定したところ、いずれの種類とも、葉の大きさに促進効果が認められた(第8図参照のこと)。
【0119】
9.プリムラ・メラコイデス( Primula melacoides )における成長促進効果の検討
プリムラ・メラコイデスの播種後、1.5ヶ月経ってから、特定ケトール脂肪酸(I)80μM 水溶液を5日間にわたり、毎日噴霧した。さらに、試験開始4ヶ月後から、同じ濃度の特定ケトール脂肪酸(I)を一週間に一度、6週間にわたり噴霧した。プリムラ・メラコイデスも栄養成長期は抽苔していないので、株の幅と葉の大きさについて、上記の最終噴霧の6.5ヶ月後に測定したところ、両者とも増大していることが認められた(第9図参照のこと)。
【0120】
10.ベゴニア・センパフローレンス( Begonia sempaflorens )における成長促進効果の検討
ベコニア・センパフローレンスの播種後、2週間経過してから、特定ケトール脂肪酸(I)80μM 水溶液を5日間にわたり、毎日噴霧した。さらに、試験開始3ヶ月後から、同じ濃度の特定ケトール脂肪酸(I)を一週間に一度、6週間にわたり噴霧した。この最終噴霧の4ヶ月後、葉の大きさを測定したところ、成長促進効果が認められた(第10図参照のこと)。
【0121】
11.カーネーション (Dianthus caryophyllus) における成長促進効果の検討
カーネーション(フィーリングスカーレット)の苗を、10月初旬に定植し、その後、常法に従って養生し、翌年の4月中旬に、特定ケトール脂肪酸(I)100μM 水溶液を、5mL/ 株の割合で噴霧して、その後の株の丈の高さを計測したところ、特定ケトール脂肪酸(I)の噴霧が1回であるにもかかわらず、投与群において、カーネーション株の成長促進効果が認められた(第11図参照のこと)。
【0122】
12.イネ (Oryza sativa L.) における成長調節効果の検討
(1)イネ(品種名:コシヒカリ)の種籾(良質のもの)200g を、水800mLに、10℃で13日間浸漬した。その後、この種籾を等しく4群に分け、特定ケトール脂肪酸(I)の水溶液(0μM 、1μM 、10μM 、100μM 溶液)各200mL中に、再び浸漬した(30℃で1.5日間)。かかる再浸漬処理済の種籾を、4分画した苗床トレイに植え、27℃、3日間の暗期を与えた後、通常の外環境に苗を晒した。
【0123】
その6日後に、各群18個体ずつを無作為に抽出して、苗の丈について計測し、その平均値を求めた。その結果を、第12図に示す。第12図に示すように、特定ケトール脂肪酸(I)の用量に依存して、イネの苗の成長促進効果が、草丈において認められた。
【0124】
これにより、上述した様々な植物における試験において認められた、本植物賦活剤による植物成長促進効果が、イネにおいても認められることが明らかになった。
【0125】
次に、イネの苗を扱う際のより実際的な事情に即して、特定ケトール脂肪酸(I)の投与の効果について検討を行った。すなわち、イネの苗に第3葉が生えそろう時点が、イネの苗を苗床から、田圃に植えつけるのに好適な時期として扱われているので、この第3葉についての成長調節効果が特定ケトール脂肪酸(I)に認められるか否かの検討を行った。この検討は、上記の明期処理3週間後に、各群の苗を、無作為に刈り取って、第2葉と第3葉の割合の平均値を算出することによって行った。その結果を第13図に示す。第13図に示すように、第3葉の成長調節効果という点についても、特定ケトール脂肪酸(I)において認められたが、上記の単純な苗の丈長と異なり、特定ケトール脂肪酸(I)水溶液の至適濃度は、1μM であった。
【0126】
この結果により、イネの苗の苗床における育成期間を短縮することを目的として、特定ケトール脂肪酸(I)を本植物賦活剤の有効成分として用いる場合に、この特定ケトール脂肪酸(I)の投与量を適切に調整することが重要であることが明らかとなった。
【0127】
(2)上記(1)の方法に準じて苗床において育苗を行ったイネ〔各群16個体で3反復(コントロール群のみ4反復)〕に対して〔上記(1)の特定ケトール脂肪酸(I)の投与は行わず、15日間10℃のイオン交換水における浸漬を行った〕、外環境に移して間もなく、特定ケトール脂肪酸(I)の噴霧投与を行った(0、25、50ppm )。また、30日後に、田圃への植付けを行ったが、その際に、25ppm の特定ケトール脂肪酸(I)の追加噴霧投与も、2群において行った(前25+25ppm 、前50+25ppm )。
【0128】
その後、常法に従って田圃でのイネの養生を行い、田圃植付け41日後の、イネの草丈と株毎の茎数(茎数/株:4本植え部分)の計測を、各群について行い、その平均値を求めた。
【0129】
まず、草丈については、無処理群が56cmであったのに対し、特定ケトール脂肪酸(I)25ppm 投与群が57cm、同50ppm 投与群が58cm、同25+25ppm 投与群が57cm、同50+25ppm 投与群が58cmであり、各群間で有意差は認められなかった。
【0130】
次に、(茎数/株)については、無処理群が34であったのに対し、特定ケトール脂肪酸(I)25ppm 投与群が38、同50ppm 投与群が38、同25+25ppm 投与群が39、同50+25ppm 投与群が37であり、投与群は、無処理群に対して、1割程度増加していた。ただし、特定ケトール脂肪酸(I)の投与形式による差異は認められなかった。
【0131】
この結果により、本植物賦活剤の有効成分である特定ケトール脂肪酸(I)による、イネに対する茎数を増加させる成長調節効果が認められた。この効果は、作付け単位当りの米の収量を向上させ得ることを意味するもので、米の生産上、極めて意義が大きい効果である。
【0132】
上述の成長促進効果試験の結果より、特定ケトール脂肪酸(I)には、優れた植物の成長促進効果等が、多くの植物一般において、多様な形態において認められることが明らかになった。特に、植物の成長初期においても、特定ケトール脂肪酸(I)の成長促進効果等が認められ、しかも、その成長促進効果等は、持続的であることが明らかになった。
【0133】
このように、本植物賦活剤の有効成分として用いられる特定ケトール脂肪酸(I)における、幅広い植物の種類に対する成長促進効果等が認められ、本植物賦活剤の有用性が明らかになった。
【0134】
以上のことから、本植物賦活剤は、植物成長促進剤ないし植物成長調整剤としての態様をとり得ることが明らかになった。
【0135】
〔試験例B〕特定ケトール脂肪酸(I)の植物の休眠抑制効果の検討(植物の休眠抑制試験)
イチゴの苗が、冬期等における低温に直接的に晒されると、休眠して生長を止めてしまう。この休眠を抑制する効果が、本植物賦活剤において認められるか否かを検討した。
【0136】
イチゴの苗に、特定ケトール脂肪酸(I)水溶液〔10μM 、100μM 、0μM (対照)〕を、8月27日(0日目)、9月3日および9月8日に噴霧投与した。その後、低温処理等の人為処理はせずに屋外で栽培し、花芽形成率を経時的に観察したところ、対照群では、全く花芽形成が認められないのに対し、特定ケトール脂肪酸(I)の噴霧投与群では、花芽形成が進行して花数が増加した(この花芽形成促進効果は、特開平11−29410号公報に記載された内容に添うものであった)。
【0137】
108日後に、イチゴの休眠率(小さな葉芽に印をして、15日後に観察したときに、葉の展開が認められない株を休眠株として求めた、試験株全体に対する休眠株の百分率)を測定したところ、対照群においては、全ての株に休眠が認められた。これに対して、特定ケトール脂肪酸(I)水溶液の噴霧投与により、イチゴの休眠が抑制されることが明らかになった。また、低濃度投与群(10μM )が、高濃度投与群(100μM )よりも休眠抑制効果が優れていることも明らかになった(第14図参照のこと)。
【0138】
すなわち、本植物賦活剤には、植物の休眠を低濃度で抑制する効果が認められ、植物の休眠抑制剤ないし植物成長調節剤としての態様をとり得ることが明らかになり、本植物賦活剤の有用性が示された。
【0139】
〔試験例C〕特定ケトール脂肪酸(I)の植物に対するストレス(乾燥ストレス)に対する抑制効果の検討
レタスの種子(1試験群当り50個)を72時間、特定ケトール脂肪酸(I)水溶液〔2μM 、10μM 、20μM 、0μM (対照)〕に浸漬した後、48時間、自然乾燥させた。これらの種子を、水を含ませた濾紙の上に配置し、発芽を進行させて、各々の試験群の種子全体に対する発芽種子の割合(%)を発芽率として求めた。
【0140】
結果を第2表に示す。
Figure 0003571626
この結果に示すように、大部分の対照群の種子は、乾燥過程における乾燥ストレスに耐えきれず、発芽に至らなかった。逆に、特定ケトール脂肪酸(I)水溶液に浸漬した種子は、ほとんどが元気に発芽した。
【0141】
これにより、本植物賦活剤には、植物の乾燥ストレスに対する抵抗性を向上させる効果が認められ、植物ストレス抑制剤ないし植物成長調整剤としての態様をとり得ることが明らかになり、本植物賦活剤の有用性が明らかになった。
【0142】
〔試験例D〕特定ケトール脂肪酸(I)の菌類に対する成長調節効果
(1)担子菌類のヒラタケ属に属するタモギダケ(食用キノコ)の菌糸増殖効果の検討
ポテト−デキストロース−寒天培地をオートクレーブ滅菌後、寒天が固まらない程度に温度が下がるのを待って、適宜希釈したメンブレンフィルターで滅菌した特定ケトール脂肪酸(I)の1mM水溶液を、培地が設定濃度(0、10、30、100μM )となるように加え、10cmプレートにおける培地の固化後、タモギダケの菌糸を1白金耳培地に接種して、37℃で培養して、菌糸の増殖を観察した(各群10プレート)。菌糸の増殖は、プレート上における増殖菌糸の直径の平均を算出して判定した。結果を、第15図に示す。第15図により、特定ケトール脂肪酸(I)の添加による、タモギダケの菌糸の増殖程度の向上が、濃度依存的に認められることが明らかになった。
【0143】
(2)シイタケの子実体成長促進効果の検討
シイタケの菌糸がまわった原木(コナラ)を、長さ15cm程度に切断し、それぞれを、10℃の水に24時間浸漬した後、高湿度のコンテナ内に立てて静置した。次に、原木6本当り、各濃度(0、3、30、100μM )の特定ケトール脂肪酸(I)水溶液を5mLずつ噴霧投与し、次いで、同コンテナ内で、18℃の弱光条件で、シイタケ子実体の培養を行った。この培養を5日間継続して、シイタケ子実体の成長度合いを観察した。第16図は、各群における培養状況における形態写真を示したものである(特定ケトール脂肪酸(I)▲1▼0μM 、▲2▼同3μM 、▲3▼同30μM 、▲4▼同100μM )。また、1株当りの平均子実体数は、無投与群においては0、3μM 投与群においては0.17、30μM 投与群においては1.0、100μM 投与群においては1.0であった。
【0144】
この結果により、特定ケトール脂肪酸(I)のシイタケの子実体の栽培時における成長促進効果が認められることが明らかとなった。
上記(1)(2)の結果により、特定ケトール脂肪酸(I)を、子嚢菌類や担子菌類に対して投与することにより、これらの菌類の菌糸の増殖を促進させて、子実体の収穫効率を向上させることが可能であることがわかる。また、本植物賦活剤を用いることで、現在、人工栽培が困難な種類のキノコ(例えば、マツタケ等)における、人工栽培法の確立に寄与することができる可能性も示唆される。
【0145】
【発明の効果】
本発明により、様々な優れた植物の成長調節効果を発揮する、植物賦活剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】特定ケトール脂肪酸(I)のアサガオにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図2】特定ケトール脂肪酸(I)のレタスにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図3】特定ケトール脂肪酸(I)のソラマメにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図4】特定ケトール脂肪酸(I)のユーストマにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図5】特定ケトール脂肪酸(I)のシクラメンにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図6】特定ケトール脂肪酸(I)のジギタリスにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図7】特定ケトール脂肪酸(I)のクリサンセマムにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図8】特定ケトール脂肪酸(I)のゼラニウムにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図9】特定ケトール脂肪酸(I)のプリムラ・メラコイデスにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図10】特定ケトール脂肪酸(I)のベコニア・センパフローレンスにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図11】特定ケトール脂肪酸(I)のカーネーションにおける成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図12】特定ケトール脂肪酸(I)のイネに対する成長促進効果を検討した結果を示す図面である。
【図13】特定ケトール脂肪酸(I)のイネ栽培の実情に即した成長調節効果を検討した結果を示す図面である。
【図14】特定ケトール脂肪酸(I)のイチゴにおける休眠抑制効果を検討した結果を示す図面である。
【図15】特定ケトール脂肪酸(I)のタモギダケの菌糸の増殖向上効果を検討した結果を示す図面である。
【図16】特定ケトール脂肪酸(I)のシイタケの子実体の成長促進効果を検討した結果を示す形態写真図面である。

Claims (11)

  1. 炭素原子数が4〜24のケトール脂肪酸の、カルボニル基を構成する炭素原子と水酸基が結合した炭素原子が、α位の位置にある、炭素原子数が4〜24のケトール脂肪酸を有効成分とする植物賦活剤(ただし、花芽形成誘導剤を除く)。
  2. 炭素原子数が4〜24のケトール脂肪酸に、炭素間の二重結合が1〜6か所(ただし、この二重結合数は、ケトール脂肪酸の炭素結合数を超えることはない)存在する、請求項1記載の植物賦活剤。
  3. ケトール脂肪酸の炭素原子数が18であり、かつ、炭素間の二重結合が2か所存在する、請求項1または2記載の植物賦活剤。
  4. 炭素原子数が4〜24のケトール脂肪酸が、9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸である、請求項1記載の植物賦活剤。
  5. 植物賦活剤が、植物成長調節剤(ただし、花芽形成誘導剤を除く)である、請求項1ないし4のいずれかの請求項記載の植物賦活剤。
  6. 植物成長調節剤が、植物成長促進剤である、請求項5記載の植物成長調節剤(ただし、花芽形成誘導剤を除く)。
  7. 植物が、菌類である、請求項6記載の植物成長促進剤。
  8. 菌類が、キノコである、請求項7記載の植物成長促進剤。
  9. 植物成長調節剤が、植物休眠抑制剤である、請求項5記載の植物成長調節剤(ただし、花芽形成誘導剤を除く)。
  10. 植物成長調節剤が、植物ストレス抑制剤である、請求項5記載の植物成長調節剤(ただし、花芽形成誘導剤を除く)。
  11. 植物ストレス抑制剤が、植物の乾燥ストレスの抑制剤である、請求項10記載の植物成長調節剤
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