JP2020203943A - イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】ストレス栽培や多収品種を使用しなくとも、イチゴに適宜散布または灌注することでイチゴ果実の成長促進およびイチゴの花芽形成促進を図ることのできるイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤を提供することを目的とする。【解決手段】式:HOOC−(R1)−C=C−C(=O)−R2(I)(式中、R1:直鎖または分岐の、炭素数6〜12のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の二重結合を含んでいてもよく、R2:炭素数2〜8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)の構造式を有するオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を有効成分として含むことを特徴とするイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤。【選択図】なし
Description
本発明は、イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤に関する。
イチゴの可食部は、古くから嗜好性の高い果物として、世界中の食品市場においてスイーツや菓子、飲料やジャムなどとして親しまれている。しかしながら、その食感や果実外観の見た目などの果実品質を保持しつつ、イチゴの可食部の成長を促進させることは、従来のイチゴの施設栽培や栽培方法では困難であった。そこで、イチゴの可食部の成長を促進させるための提案がなされている。
特許文献1には、希少糖を有効成分とする植物生長調節剤を用いることによって、イチゴの果実数や果実重量を増加させたことが記載されている。また、特許文献2には、天然単糖を有効量でイチゴに投与することにより、イチゴの果実数や果実重量が増加したことが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の植物生長調節剤、および、特許文献2に記載の植物生長調節方法は共に、イチゴに適用された場合イチゴの総収穫量としてせいぜい1倍強〜2倍弱程度改善するものにすぎず、イチゴ果実の成長促進を十分に促すものではなかった。
一般的に総収穫量はイチゴ果実の個あたりの重量が多いほど、また、イチゴの株あたりのイチゴ果実の結実個数が多いほど増加する。従来技術では、株あたりのイチゴ果実の結実個数、すなわち着果前に株につく花の個数を増やす(花芽分化促進)効果によりイチゴの総収穫量を十分に増大させることは難しかった。
例えば、結実個数が2倍になれば、たとえ個あたりの果実重量がさほど変わらなくてもイチゴ果実の総収穫量としては容易に2倍となる。このように果実重量と共に結実個数を増加させて、イチゴ果実の総収穫量を増やすことのできるようなイチゴの成長促進剤が広く望まれている。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたもので、イチゴに適宜散布または灌注することで安全に、イチゴの花芽分化促進を促すことのできるイチゴの花芽形成促進剤、そしてイチゴの花芽分化の促進により結果的にイチゴ果実の結実個数の大幅な増加を図ることのできるイチゴ果実の成長促進剤を提供することを目的とする。
本発明は、以下の式:
HOOC−(R1)−C=C−C(=O)−R2 (I)
(式中、
R1:直鎖または分岐の、炭素数6〜12のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の二重結合を含んでいてもよく、
R2:炭素数2〜8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を有効成分として含むことを特徴とするイチゴ果実の成長促進剤に関する。
HOOC−(R1)−C=C−C(=O)−R2 (I)
(式中、
R1:直鎖または分岐の、炭素数6〜12のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の二重結合を含んでいてもよく、
R2:炭素数2〜8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を有効成分として含むことを特徴とするイチゴ果実の成長促進剤に関する。
前記オキソ脂肪酸誘導体が、前記オキソ脂肪酸誘導体のR1のアルキル基の炭素数が8〜10であり、R2のアルキル基の炭素数が4〜6であるオキソ脂肪酸誘導体であるイチゴ果実の成長促進剤が好ましい。
前記オキソ脂肪酸誘導体が、前記オキソ脂肪酸誘導体のR1が式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含むオキソ脂肪酸誘導体であるイチゴ果実の成長促進剤が好ましい。
前記オキソ脂肪酸誘導体が、前記オキソ脂肪酸誘導体のR1が、炭素数9のアルキル基であり、R2が、炭素数5のアルキル基であるオキソ脂肪酸誘導体であるイチゴ果実の成長促進剤が好ましい。
前記オキソ脂肪酸誘導体が、13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸またはその塩であるイチゴ果実の成長促進剤が好ましい。
前記イチゴ果実の成長促進剤が、イチゴの茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として用いられるイチゴ果実の成長促進剤が好ましい。
本発明によれば、イチゴ果実の個当たりの重量を増加させることができると共にイチゴ果実の結実個数も増加させることができ、株あたりのイチゴの総収量を向上させることができる。
本発明は、また、以下の式:
HOOC−(R1)−C=C−C(=O)−R2 (I)
(式中、
R1:直鎖または分岐の、炭素数6〜12のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の二重結合を含んでいてもよく、
R2:炭素数2〜8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を有効成分として含むことを特徴とするイチゴの花芽形成促進剤に関する。
HOOC−(R1)−C=C−C(=O)−R2 (I)
(式中、
R1:直鎖または分岐の、炭素数6〜12のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の二重結合を含んでいてもよく、
R2:炭素数2〜8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を有効成分として含むことを特徴とするイチゴの花芽形成促進剤に関する。
前記オキソ脂肪酸誘導体が、前記オキソ脂肪酸誘導体のR1のアルキル基の炭素数が8〜10であり、R2のアルキル基の炭素数が4〜6であるオキソ脂肪酸誘導体であるイチゴの花芽形成促進剤が好ましい。
前記オキソ脂肪酸誘導体が、前記オキソ脂肪酸誘導体のR1が式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含むオキソ脂肪酸誘導体であるイチゴの花芽形成促進剤が好ましい。
前記オキソ脂肪酸誘導体が、前記オキソ脂肪酸誘導体のR1が、炭素数9のアルキル基であり、R2が、炭素数5のアルキル基であるオキソ脂肪酸誘導体であるイチゴの花芽形成促進剤が好ましい。
前記オキソ脂肪酸誘導体が、13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸またはその塩であるイチゴの花芽形成促進剤が好ましい。
前記イチゴ果実の成長促進剤が、イチゴの茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として用いられるイチゴの花芽形成促進剤が好ましい。
本発明によれば、イチゴの株あたりの果実収穫個数を増加させることができ、株あたりのイチゴの総収量を向上させることができる。
本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤は、特殊な栽培方法や特別な品種を使用しなくともイチゴに適宜散布または灌注することで、イチゴ果実の成長およびイチゴの花芽形成を促進して、株あたりのイチゴ果実の総果実重量を増加させることができる。
イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤
本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤は、オキソ脂肪酸誘導体であって、以下の式:
HOOC−(R1)−C=C−C(=O)−R2 (I)
(式中、
R1:直鎖または分岐の、炭素数6〜12のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の二重結合を含んでいてもよく、
R2:炭素数2〜8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を有効成分として含むことを特徴とする。本発明はまた、すべての幾何異性体および立体異性体を含む式(I)の化合物またはその塩を有効成分として含むイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤に関する。なお、本発明におけるイチゴ果実の「成長促進」とは、イチゴの開花・結実の促進、結実個数の増加およびイチゴ果実の肥大などの作用を意味するものである。
本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤は、オキソ脂肪酸誘導体であって、以下の式:
HOOC−(R1)−C=C−C(=O)−R2 (I)
(式中、
R1:直鎖または分岐の、炭素数6〜12のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の二重結合を含んでいてもよく、
R2:炭素数2〜8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を有効成分として含むことを特徴とする。本発明はまた、すべての幾何異性体および立体異性体を含む式(I)の化合物またはその塩を有効成分として含むイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤に関する。なお、本発明におけるイチゴ果実の「成長促進」とは、イチゴの開花・結実の促進、結実個数の増加およびイチゴ果実の肥大などの作用を意味するものである。
オキソ脂肪酸誘導体またはその塩をイチゴの茎葉または根の一部に接触させることで、株あたりのイチゴ果実の総果実重量を増加させることができる。オキソ脂肪酸誘導体またはその塩をイチゴの茎葉または根の一部に接触させることで、一般的に行われるストレス栽培において増加する成分と同じ成分の、イチゴ果実内での増大が確認できることから、本発明のオキソ脂肪酸誘導体またはその塩は、イチゴに吸収されることによって、本来イチゴ内で環境ストレスによりシグナルとして産生され作用する分子と同様の作用をイチゴ内で行う物質および/またはその前駆体を含んでいると考えられる。この結果、イチゴの花芽形成が促進される。さらに、イチゴ果実の個あたりの成長促進効果も確認できることから、本発明のオキソ脂肪酸誘導体またはその塩には、イチゴ果実の果実肥大を促進する物質も含まれていると考えられる。
オキソ脂肪酸は、不飽和脂肪酸代謝の中間体として生成されることが知られているいわゆる希少脂肪酸である。これら希少脂肪酸は、特にその生理活性などの様々な産業利用への応用という点から注目を集めている物質である。本発明においてオキソ脂肪酸誘導体またはその塩の一例として用いられる13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸は、酵素反応やその他の手段によって、不飽和脂肪酸であるリノール酸から生成されるオキソ脂肪酸であり、希少脂肪酸の一つである。13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸は、天然ではトマトなどの植物中に存在していることが知られている。13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸は、脂質代謝改善等の生活習慣病を改善する活性が見いだされたことから、顕著な脂肪燃焼効果を示す機能性成分として、内外で活発な研究が行われている。
しかしながら、13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸などのオキソ脂肪酸誘導体またはその塩に、イチゴ果実の成長を促進させる効果があることは知られていなかった。
本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤には、オキソ脂肪酸誘導体またはその塩が含まれていればよく、それらの由来などは特に限定されるものではない。すなわち、オキソ脂肪酸誘導体またはその塩としては、市販品を用いてもよいし、トマトなど植物中に含まれているものをそのまま、または、抽出および/または精製して用いてもよい。あるいは、オキソ脂肪酸誘導体またはその塩は、上述のように、酵素、例えば微生物由来の酵素を不飽和脂肪酸などの基質に作用させて得られるものであってもよいし、また、例えば化学合成によって得られるものでもよく、さらに微生物を用いて製造されるものなどであってもよい。例えば、オキソ脂肪酸誘導体またはその塩は、原料としてリノール酸を用いて、リポキシゲナーゼ(LOX)および/または脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)、例えばアルコール脱水素酵素(ADH)などの作用により酵素的に変換することによって、または、金属触媒を用いた触媒反応を介して、製造され得る。このようにして得られたオキソ脂肪酸誘導体またはその塩は、必要に応じて、所望の濃度で、または、適度に希釈されて、イチゴ果実の成長促進およびイチゴの花芽形成促進のために使用することができる。
なお、オキソ脂肪酸には、上述のように、(E,E体)、(Z,E体)、(E,Z体)、(Z,Z体)などの異性体が存在することが知られているが、これら異性体のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤における効果は同様である。したがって、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤に含まれるオキソ脂肪酸がどのような異性体として存在していても、同様の本発明の効果が得られ得る。
また、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤には、所望の濃度のオキソ脂肪酸誘導体またはその塩が含まれていればよい。例えばオキソ脂肪酸誘導体またはその塩として、オキソ脂肪酸誘導体を含有する混合物が使用されてもよい。
本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤には、オキソ脂肪酸誘導体が塩の形で存在していてもよく、塩としては例えば、アンモニウム塩、金属塩などが挙げられる。金属塩としては1価の金属イオンを生成するものが望ましく、例えばこれらに限定される訳ではないが、ナトリウム塩およびカリウム塩が好適に用いられ得る。
本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤は、天然物であるオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を含むことを特徴とするため、土壌汚染や毒性に関わる問題を引き起こすことなく、イチゴ果実の成長およびイチゴの花芽形成を促進させることができ、株あたりのイチゴ果実の総果実重量を顕著に増加させることができる。すなわち、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤を用いることによって、安全かつ簡便に、イチゴの収量を増大させることができる。
本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤は、施用されるイチゴにおいてある種のストレス応答遺伝子の発現を誘導することができる。この結果、イチゴの種類・品種や生育ステージ、また栽培環境や季節に依存して、毛根発生促進、抗酸化物質の生成量増加、水分蒸散防止機能の促進、茎が太くなる、花芽分化の活性化などが起こる。すなわち、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤は、イチゴが本来有しているストレス耐性機能を強化する。したがって、ストレス栽培を用いずとも、イチゴ果実の果実品質を維持しつつ、イチゴ果実の花芽形成を顕著に促進させ、イチゴ果実の総収量を増大させることができる。ストレス栽培を行った場合に発生する収量の低下や、多収品種を使用した場合に発生する病害虫に対する抵抗性の低下といった問題が生じることがない。
したがって、本発明において、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤を用いることによって、多収品種やストレス栽培を使用することなく、すなわち栽培品種や従来の栽培方法を変えることなく、簡便な処理によって、イチゴ果実の株あたりの結実数を増加させることができる。その結果、株あたりのイチゴ果実の総果実重量の増加が達成でき、優れた高収量性が得られると考えられる。
本発明を適用することのできるイチゴの品種としては、バラ科オランダイチゴ属の品種が挙げられる。特に限定されるわけではないが、例えば、紅ほっぺ、章姫、とちおとめ、あまおう、さがほのか、とよのか、美濃娘、濃姫、華かがり、アイベリー、スカイベリー、ひのしずく、桃薫、もういっこ、さちのか、女峰、やよいひめ、あかねっ娘などのイチゴに好適に適用できる。
イチゴはどのように栽培されていてもよく、すなわち土壌に植え付けられていても、水耕液に浸して栽培されていてもよく、また、高設栽培であってもよい。本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤は、任意の方法で施用することができ、例えば、イチゴの茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として使用され得る。また、育苗培土に混和されてイチゴの苗生産に使用されてもよい。特殊な設備等を用意せずとも、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤を散布等するだけで安全に、イチゴ果実の総果実重量を増加させることができるため、本発明は非常に有利である。
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤の調製
原料として、純度80%のリノール酸(和光純薬工業株式会社製)2.8gを用い、これに炭酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)7g、および、蒸留水300mlを加えて反応溶液を調製した。この時の反応溶液のpHは11であった。
原料として、純度80%のリノール酸(和光純薬工業株式会社製)2.8gを用い、これに炭酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)7g、および、蒸留水300mlを加えて反応溶液を調製した。この時の反応溶液のpHは11であった。
反応溶液にリポキシゲナーゼ(シグマアルドリッチ社製、Glycine max由来)を0.2mg添加し、30℃で24時間反応させたのち、反応混合物を90℃の湯浴中に5分間置いて、酵素を失活させた。
酵素を失活させた反応溶液を室温に戻した後に、アルコール脱水素酵素(和光純薬工業株式会社製、Yeast由来)を0.2mg添加し、30℃にてさらに24時間反応させた。
反応終了後の反応溶液中の生成物を、ケイマンケミカル社製の13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸を標準物質としてMS2スペクトル解析を用いてLC−MSにて同定し、検出波長 UV 272nmで、絶対検量線法により定量を行った。
(E,E体)、(E,Z体)などの異性体の合算収率として、3.5%の収率で13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸を得た。なお、収率(%)は以下の式に基づいて求めた。
収率(%)=(生成した13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸のwt%)/(使用した原料リノール酸の初期wt%)
収率(%)=(生成した13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸のwt%)/(使用した原料リノール酸の初期wt%)
製造された13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸およびその異性体を用いて約300ppmのカリウム塩水溶液を調製し、試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤とした。
イチゴ果実の成長促進効果およびイチゴの花芽形成促進効果
・実施例
イチゴ(品種:紅ほっぺ)を土耕栽培、一般肥料溶液灌注により7〜9株栽培した。開花結実が始まる直前に、6日に一度の頻度で、上記試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤を水で4000倍希釈した希釈液を1株あたり約100mlの割合で株元に灌注した。イチゴの果実を3日おきに5回収穫し、収穫されたイチゴ果実の重量と収穫個数とを記録した。
・比較例
試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤の代わりに、灌注する溶液を水とした以外は、実施例と同様に試験を行ってイチゴ果実の重量と収穫個数とを調べた。
・実施例
イチゴ(品種:紅ほっぺ)を土耕栽培、一般肥料溶液灌注により7〜9株栽培した。開花結実が始まる直前に、6日に一度の頻度で、上記試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤を水で4000倍希釈した希釈液を1株あたり約100mlの割合で株元に灌注した。イチゴの果実を3日おきに5回収穫し、収穫されたイチゴ果実の重量と収穫個数とを記録した。
・比較例
試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤の代わりに、灌注する溶液を水とした以外は、実施例と同様に試験を行ってイチゴ果実の重量と収穫個数とを調べた。
実施例および比較例でそれぞれ得られた、株あたりの収穫されたイチゴ果実の個数(収穫個数)およびイチゴ果実の個当たりの重量(重量/個)を表1に示した。また、これらの値から株あたりのイチゴ果実の収穫重量すなわち株あたりの総果実重量を求めた。さらに、統計的検定(表中、Nは検体数)を用いて、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤によるイチゴ果実の数量および重量増加効果を評価した。結果を表1に示した。
表1に示されるように、試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤で処理したイチゴは、比較例で本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤を施用されずに栽培されたイチゴと比較して、株あたりの収穫重量が2.5倍と顕著に増加した。また、株あたりの収穫個数も、比較例で栽培されたイチゴと比較して2.2倍と大幅に増加していた。イチゴ果実一個あたりの重量は、比較例で栽培されたイチゴと比較して、1.1倍の増大であったことから、イチゴ果実の株あたりの結実個数が増加したことが収量増加の主な要因であると考えられる。
また、イチゴは一般的に、個あたり6g以上の重量の果実が商品果とされるが、試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤で処理したイチゴでは、株あたりのイチゴの結実個数に対する、6g以上の重量のイチゴの個数は約94%であった。これに対し、比較例で栽培されたイチゴでは、6g以上の重量のイチゴは、株あたり結実個数の約82%であった。すなわち、試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤によって、結実個数に占める商品果の割合、すなわち市場価値のある果実の収穫率が顕著に向上された。したがって、試験用イチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤は、表1に示されるように株あたりのイチゴ果実の収穫個数を増大させつつ、イチゴ果実の成長を促進してそれぞれの果実重量も増加させていることがわかる。すなわち、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤によれば、結実されるイチゴ果実の総数が増加しても収穫されるイチゴ果実の大きさが小さくなることはない。
したがって、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤は、イチゴ果実の成長を活性化する物質を含んでおり、イチゴ果実の成長を顕著に促進することのできる、および、イチゴの花芽形成を促進してイチゴ果実の結実個数を増加することのできるイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤として機能していることがわかる。
上記の結果より、本発明のイチゴ果実の成長促進剤およびイチゴの花芽形成促進剤が、イチゴ果実の成長促進効果およびイチゴの花芽形成促進効果に優れたイチゴの花芽形成促進であることがわかる。
Claims (12)
- 以下の式:
HOOC−(R1)−C=C−C(=O)−R2 (I)
(式中、
R1:直鎖または分岐の、炭素数6〜12のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の二重結合を含んでいてもよく、
R2:炭素数2〜8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を有効成分として含むことを特徴とするイチゴ果実の成長促進剤。 - 請求項1記載のイチゴ果実の成長促進剤であって、前記オキソ脂肪酸誘導体の、
R1のアルキル基の炭素数が8〜10であり、
R2のアルキル基の炭素数が4〜6である。 - 請求項1または2記載のイチゴ果実の成長促進剤であって、前記オキソ脂肪酸誘導体の、
R1が、式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含む。 - 請求項3記載のイチゴ果実の成長促進剤であって、前記オキソ脂肪酸誘導体の、
R1が、炭素数9のアルキル基であり、
R2が、炭素数5のアルキル基である。 - 請求項4記載のイチゴ果実の成長促進剤であって、前記オキソ脂肪酸誘導体が、13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸またはその塩である。
- イチゴの茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載のイチゴ果実の成長促進剤。
- 以下の式:
HOOC−(R1)−C=C−C(=O)−R2 (I)
(式中、
R1:直鎖または分岐の、炭素数6〜12のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の二重結合を含んでいてもよく、
R2:炭素数2〜8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸誘導体またはその塩を有効成分として含むことを特徴とするイチゴの花芽形成促進剤。 - 請求項7記載のイチゴの花芽形成促進剤であって、前記オキソ脂肪酸誘導体の、
R1のアルキル基の炭素数が8〜10であり、
R2のアルキル基の炭素数が4〜6である。 - 請求項7または8記載のイチゴの花芽形成促進剤であって、前記オキソ脂肪酸誘導体の、
R1が、式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含む。 - 請求項9記載のイチゴの花芽形成促進剤であって、前記オキソ脂肪酸誘導体の、
R1が、炭素数9のアルキル基であり、
R2が、炭素数5のアルキル基である。 - 請求項10記載のイチゴの花芽形成促進剤であって、前記オキソ脂肪酸誘導体が、13−オキソ−9,11−オクタデカジエン酸またはその塩である。
- イチゴの茎葉もしくは根に接触させる噴霧剤もしくは浸漬用薬剤、または、土壌灌注用薬剤として用いられる請求項7〜11のいずれか1項に記載のイチゴの花芽形成促進剤。
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2020
- 2020-09-17 JP JP2020156629A patent/JP2020203943A/ja active Pending
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